インターンシップ有償で、跡見女子大とKNT

 跡見学園女子大学マネジメント学部観光マネジメント学科と、近畿日本ツーリスト(KNT)はこのほど、長期人材プログラムの一環として、有償のインターンシップ研修プログラムを共同開発した。 今春卒業の大学生の就職率は4月1日現在、前年比0・8ポイント減の91・0%と過去最低となっている。このような厳しい就職戦線のなか、同大観光マネジメント学科では、大学の授業で学んだ理論を、自分でできる力に変える「実学」を重視した新たな業界研究カリキュラムや、研修メニューを開発した。一方、KNTも、企画提案型需要開発へとセールス基盤をシフトするなか、旅行需要を創出できる若い人材の育成が不可欠との考えから、今回の共同企画が実現した。
 インターンシップ研修プログラムは、観光マネジメント学科に在籍し、将来観光産業に就職を希望する2年生を対象としている。8月22―31日までKNTで研修を行い、その後、添乗員研修や観光まちづくりのノウハウを実務体験する。台湾での海外研修や、会津若松での現地研修も予定している。9月21日に総括をする。

36%減で回復鈍化、7月の訪日外客数

 日本政府観光局(JNTO、間宮忠敏理事長)が発表した2011年7月の訪日外客数推計値は、前年同月比36・1%減の56万1700人。東日本大震災の発生から6月まで、減少幅は徐々に縮小傾向にあったものの、7月は回復が鈍化する結果となった。 各市場の動向をみると、6月までの間に被災地以外への渡航勧告が解除された韓国は、同40・7%減の14万100人。震災後縮小が続いていた日韓航空便の一部に回復が見られるも、日本国内の牛肉から放射性物質が検出された問題で、食に対する不安が増した。
 中国は、夏休みシーズンを機に航空運賃の上昇により回復が鈍化し、同47・2%減の8万7100人。一人っ子政策により子供の安全を重視し、日本への家族旅行・教育旅行が敬遠されている。台湾は、着実に減少幅を縮める回復傾向にあったが、航空運賃の上昇などにより回復が鈍化し、同25・8%減の11万3500人となった。訪日教育旅行は8月まで禁止されており、同旅行需要は皆無。香港は、同41・2%減の4万500人と、依然として前年を大きく下回る状態。6月までに被災地以外への渡航勧告が解除されたが、夏休みの家族旅行では日本を敬遠する傾向が強い。
 そのほかは、米国が同23・4%減の5万2100人、英国が同23・0%減の1万2500人、タイが同14・1%減の1万2200人、豪州が同35・1%減の1万100人、フランスが同43・8%減の9100人、カナダが同44・7%減の8千人、シンガポールが同31・6%減の7900人など。
 なお、出国日本人数は、同4・5%増の146万9千人で、震災後5カ月ぶりに増加に転じた。

VJ事業、CP展開、総予算は20億円強に

 観光庁はこのほど、10月からビジットジャパン(VJ)事業のキャンペーンを本格的に再開することを発表した。総予算は20億円強と、大型予算を組んでいる。 観光庁では通年で計画していたVJ事業のキャンペーンを、3月の震災後は費用対効果を鑑みて控えていた。今回、震災から半年というタイミングで、10月から本格的にVJ事業のキャンペーンを再開することを決定。中国8億円、韓国4億円、香港1・5億円、台湾1・5億円、そのほかの地域で5億円強と、東アジア4地域を中心とする総額20億円強の大型予算を組み、震災後落ち込んだ訪日外国人数の回復に向け、巻き返しをはかる。これから詳細を決めていく段階だが、訪日旅行を喚起する共同広告や情報発信、トップセールスなど、今のタイミングに合った方法で行うという。
 8月19日に開かれた会見で観光庁の溝畑宏長官は、「震災後に行っていたベース事業にプラスして、大規模に展開する予定。日本が元気になった姿を世界にアピールしたい」と力を込めた。

<中国個人ビザ緩和「訪日客増に期待大」>

 9月1日から訪日中国人個人観光ビザの発給要件が緩和されることを受け、溝畑長官は「作年7月からの用件緩和の試行期間にビザの発給件数が大幅に増加した。今回も訪日外客数の増加へ大きな弾みとなるだろう」と期待を語った。
 JNTO発表による7月の訪日外客数は、前年同月比36・1%減の56万1700人。3月12―31日が同72・7%減、4月が同62・5%減、5月が同50・4%減、6月が同36・0%減と着実に減少幅を縮小してきたが、7月は減少幅が横ばいとなった。溝畑長官は「訪日外客数が着実に回復してきていたが、ここにきて回復が停滞している。訪日送客のポテンシャルの高い中国は秋の国慶節を迎えるに当たって、ビザの用件緩和が大きな追い風となることを期待している」と話した。

<原子力賠償、範囲拡大「支払いを迅速に」>

 また、8月5日に原子力損害賠償紛争審査会から「原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」が出され、観光業の賠償が福島県から茨城県、栃木県、群馬県まで、インバウンド客のキャンセルについては全国へと、損害認定の範囲が大幅に拡大。溝畑長官は「観光業への賠償範囲が大幅に拡大されたことは、大変ありがたい。今後の最重要課題はホテル・旅館などに対し、東電の賠償が適切かつ迅速に支払われること。観光庁でもできる限りのバックアップをしていきたい」と話した。

No.288 観光と防災 - 津波災害の問題点を検証

観光と防災
津波災害の問題点を検証

 東日本大震災発生から約6カ月。今回の大災害は、地震そのものよりも、その後に押し寄せた巨大津波による被災が大きかった。9月1日の「防災の日」に合わせ、気象と防災の専門家である気象情報システム代表取締役の高津敏氏に、今回の甚大な津波被害をさまざまな角度から検証してもらった。過去の津波災害が教訓となっていなかった点、防災情報の伝達方法の問題点などを指摘。さらに、防災意識を持つことで防げる災害や、今後のまちづくりのヒントなどを聞いた。

【増田 剛】

「命を救う」一点に集中
助かったのはたまたまではない

 3月11日、午後2時46分ごろ、宮城県沖を震源にマグニチュード9・0の地震が発生した。この地震は、現存している人にとって最大級の地震だった。

 通常、気象庁は震源地や震度などが確定(発生から3―4分後)したのち地震情報を発信するのだが、3・11の地震では気象庁は地震情報が確定する前の、発生から約3分後に岩手3メートル、宮城6メートル、福島3メートルの大津波があると第1報の大津波警報を出していた。

気象情報システム代表取締役
高津敏氏

 気象庁はその第1報から「ただちに避難してください。大きな津波は第一波ではなく、あとから来ることがあります」と繰り返し警戒を呼び掛けた。ところがその後、「午後2時59分に大船渡で20センチ」「午後3時1分に釜石沖で30センチ」など、気象庁が随時発表する細かな観測数値データが、メディアを通じてそのまま流れた。

 そうすると、「なんだ、20―30センチの津波じゃないか。いつもの大したことのない津波かもしれない」と認識された面も否定できない。一度避難したにも関わらず、また高台から戻って来た人もいる。避難の遅れや、誤った「安心感」を与えてしまい、被害を大きくした可能性も高い。気象庁の数値的な発表の仕方については、侃々諤々議論されており、今後の重要な課題となっている。

 

 

※ 詳細は本紙1432号または日経テレコン21でお読みいただけます。

いびつな日本社会 ― 高齢者を羨む若年層 (9/1付)

 東日本大震災後に、日本人の意識や価値観が大きく変わったと言われている。リクルートが発刊する男性ビジネスマン向けフリーマガジン「R25」と、若者層のマーケティング調査機関「M1・F1総研」が、若手ビジネスマンを対象に、震災による意識変容調査を行った。 調査では、25―34歳の男性会社員の51・2%が「世の中に対する関心が高まった」と回答。具体的には「日本の将来が不安になった」(89・8%)、「政治への関心が高まった」(80・9%)、「血縁を大切に思うようになった」(80・1%)など。また、「自分の将来が不安になった」(75・0%)よりも、日本の将来に対する関心の方が高まっている結果から、「内向き志向」と評された20―30代男性が、震災のショックで外の世界に目が向き、世の中への関心に“目覚めた”のではないか――と分析している。ボランティア希望者が増えたこともその一因と捉えている。
 震災を機に、若年層の意識が「外向き」になったのは当然である。震災前の日本は大多数の人たちにとって、“安全”であり、少なくとも、よく知らない海外よりも快適であった、はずだ。しかし、3・11以降、毎日地面は揺れ続け、原発事故後は「自国が安全」とは程遠いことを思い知らされたのだから。
 そんなことよりも、気になるのが、「自分たちの世代は上の世代より損している」と考える人が、74・6%を占めることだ。若年世代に「世代間格差の被害者」意識を抱く人が多いというのだ。「高齢層の多い日本では、高齢層に都合の良い政策ばかりが優遇される」と考える人が67・2%と、全体の3分の2を占めている。
 僕が若かりし頃、戦時中に生まれた父や、戦時を生き抜いた祖母の世代から、「お前は幸せな時代に生まれた」と羨まれた。その高齢層を、若年層が羨む時代になった。世代別人口が逆ピラミッド型のいびつな日本社会。社会のマジョリティー化する高齢層に対し、ますます少数派に向かう若年層の恨み。
 先日、静岡県熱海駅のホームは観光用の特急列車に乗る旅行者で溢れかえっていた。ホームの端から端時まで歩き、数百人がホームにいたのだが、それら人々の平均年齢は70歳を超えていた。この異様さこそが、今の日本の現状であり、観光の現状なのだ。
 

(編集長・増田 剛)

自転車で国境を越えろ-信玄VS家康-

 静岡市と身延町は10月9日、交流イベントとして自転車レース「ツール・ド・安倍峠」を開催する。2008年から始まり、今年で4回目を迎える。8月30日から参加者を募集している。

レースは、静岡市と身延町の両地点からそれぞれ出発し、安倍峠の頂上を目指す。ただし、今回のレースは台風6号の被害で身延町側からのコースが通行できないため静岡市側からのコースのみの開催となる。かつて戦国大名の武田信玄や徳川家康は、本拠地から東海・甲州方面に進出するときにこの峠を越えたと言われている。静岡市側のコースでは個人戦に加え、家康チーム、信玄チームに分かれてのチーム戦も行う。レース終了後は参加者と地元住民との交流会も予定されている。

9時30分に梅ヶ島コンヤの里テニス場を出発し、延長13.6キロのゴールである安倍峠を目指す。標高差は850メートルと激しいので、距離以上にハードなレースとされる。参加資格は18歳以上、参加費は5千円。家康チーム100人、信玄チーム100人を募集する。10月3日まで。

参加方法はホームページを確認しましょう。www.city.shizuoka.jp/deps/kouiki/minobu-kouryu2

鹿児島市、観光フォーラム参加者を募集

 鹿児島県鹿児島市は9月5日まで、福岡と広島、大阪の3都市で開く「鹿児島市観光フォーラム」の参加者を募集している。3月に全線開業した九州新幹線で各都市から近くなった鹿児島市の魅力を紹介する。各会場で、自然や歴史についての講演とコンサートを行う。入場は無料。鹿児島市への旅行券が当たる抽選会も実施する。

 応募方法は、ハガキに参加希望地と参加希望者の名前(2人まで)、住所、電話番号を明記し、〒890-0055鹿児島市上荒田町22-3育英ビル4階 (株)KCR内「鹿児島市観光フォーラム」事務局に送付する。9月5日の消印有効。
 会場とプログラムは以下の通り。

【福岡】ぽんプラザホール 9月15日、午後6時00開場
【広島】ゲバントホール 9月17日、午後1時30分開場
【大阪】大阪国際交流センター 9月18日、午後1時開場。

第1部 NPO法人桜島ミュージアム理事長・福島大輔氏の自然講演会「桜島の魅力発見!」▽第2部 NPO法人かごしま探検の会代表理事・東川隆太郎氏の歴史講演会「行ってみたくなる鹿児島歴史物語」▽第3部 NHK大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」「篤姫」の音楽担当、吉俣良氏によるコンサート「江~篤姫へ」

山口県、国際観光職員を公募

 山口県は8月31日まで、国内観光客誘致や国際観光推進業務を担当する任期付職員を公募している。受験資格は、日本国籍を持ち、民間企業などで旅行商品の企画や国際観光関係の職務経験が5年以上ある人。 体験型旅行の誘致や、国内観光客誘致、施策の企画立案、国際観光の推進、中国・韓国・台湾など東アジア地域からの観光客の誘致などを担当する。任用期間は2012年1月1日―14年12月31日。給与は経歴に応じて決定(【例】大学卒、経験8年、30歳で24万5千円程度。大学卒、経験18年、40歳で32万円程度など)。所定の受験申込書と受験票に加え、これまでの業務で自分の果たした役割や印象的な体験など、業務実績を1千字以上で記載した業務実績紹介書を用意し、山口県地域振興部観光交流局観光交流課へ提出する。合格発表は10月下旬を予定。
 詳しくはURL=(http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a16200/ninkituki/boshuu.html)。

古代と現代の時空を旅する(ホツマ観光研究会)

天橋立を背景にホツマ観光研究会のメンバー
天橋立を背景にホツマ観光研究会のメンバー

 ホツマ観光研究会(会長=原祥隆帝京大学非常勤講師)は7月16、17日の2日間、京都府の竹野神社(京丹後市)や比沼麻奈為神社(同)、元伊勢内宮皇大神社(福知山市)など、アマテルカミ(天照大神)と縁の深い神社や土地を観光で訪れ、古代の日本を想像しながら現地体験をした。

 ホツマ観光研究会は、「ホツマツタエ」を研究し記述された地域を観光することによって、日本の地方に脈々と息づく伝承に触れ、真の日本、東アジアの古代史を紐解くことを目的としている。毎月1回東京都文京区の東洋大学(事務局は島川崇研究室)で、ホツマツタエの研究者・一糸恭良氏(東神商事代表取締役社長)を中心に、有志の研究会員約10人が学んでいる。

 「ホツマツタエ」は1966(昭和41)年に故松本善之助氏(現代用語の基礎知識・自由国民社初代編集長)によって再発見(最初の発見は江戸時代)された未確定の歴史書。現在、古事記・日本書紀の原書として研究が進んでいる。ホツマツタエは古代文字で書かれ、記紀が神話(天孫降臨伝説)とした世界を、神話ではなく、人の営み(実話)として描いている。

 ホツマ観光研究会は、ホツマツタエの記述をもとに、全国各地を観光し、地域のホツマツタエの伝承を調べ現地体験することで、これまで解明されていなかった縄文時代前期以降の歴史に、新たな足跡を見出していこうとする、“古代と現代の時空を旅する観光”を楽しむ会である。

【増田 剛】

ジャパンホリデートラベル、HISと業務提携へ

ANTA・二階会長
ANTA・二階会長

“最強コンビ”で訪日拡大

 中国からの訪日旅行を専門に扱うジャパンホリデートラベル(呉煜康社長、大阪市中央区)は8月2日、大阪市内のホテルで全国の旅館・ホテルや自治体関係者を招き、懇親パーティーを開き、旅行業大手のエイチ・アイ・エス(HIS、平林朗社長)との業務提携を発表。海外戦略のエキスパートとインバウンドのエキスパートの「最強コンビ」誕生を演出した。

 呉社長はまず、2010年と11年のインバウンド実績を報告した。それによると、10年の取扱人員は7万3349人で、7、8月が単月で1万2千人突破と過去最高を記録。ただ、9月以降は尖閣問題で大幅ダウンとなった。

 11年の1、2月は上向き傾向にあったが、3月以降は東日本大震災と福島原発で大幅減。「4、5月がほぼゼロ。6月以降は回復傾向にあり、5―7月は対前年で回復率40%まで戻した」(呉社長)という。1―7月の取扱総計は2万人となった。8―12月は毎月7千人を目標に、年間取扱人員5万5千人を見込んでいる。

 同社の新規取り組みでは、九州・沖縄の市場拡大を目指し、3月に福岡事務所(三浦隆司所長、福岡県福岡市中央区)を開設。豪華クルーズの取り組み強化など、9月から本格営業を開始する。

 7月1日には同社の北京、上海、広州、成都、浙江、武漢の6支店に続き黒龍江、吉林、遼寧の東北3省の営業拠点として、瀋陽事務所を開設した。4月1日には全国の自治体、民間とタイアップして、中国への観光プロモーションに取り組む会社「JPHグローバルマネージメント」(呉煜康社長)も設立している。

 HISとの業務提携では(1)中国や東南アジアからの訪日ツアー強化(2)豪華客船クルーズへの取り組み(3)合同手配や企画・仕入れ体制の構築(4)各拠点での相互間チャーター(5)日本以外の米国、ハワイ、アジアなどでの中国人受入れ体制構築――に取り組む。