民泊問題 危機を共有、桑田体制“集大成の場”に

桑田雅之部長が開会のあいさつ
桑田雅之部長が開会のあいさつ

全旅連青年部、前橋で全国大会

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の青年部(桑田雅之部長)は10月13日、群馬県前橋市のグリーンドーム前橋で第23回全国大会を開いた。2015年4月からスタートした桑田体制の集大成の場として、各委員会が分科会を行った。今期の最重要課題の民泊問題について、桑田部長は民泊問題の危機を共有し、「青年部が決起大会を起こそう」と呼びかけた。また、次期青年部長の西村総一郎政策担当副部長をステージ上で紹介し、2人は握手を交わした。
【増田 剛】

 今回の全国大会は民泊問題に重きを置いた。桑田部長は「私は昨年9月ごろから“民泊王子”と言われるほど、調べている」と語り、「(民泊先進都市)のフランス・パリでも、当初は『民泊など大したことはないだろう』との認識だった。しかし、いつの間にか宿泊業を圧迫。今ではパリのホテルは1日に1軒の割合で潰れている」と紹介。昨年11月にパリで発生したテロの首謀者らが民泊を利用していたことを例に挙げ、誰がどこに泊まっているかわからない“匿名性”の危険も強調した。桑田部長は「政府も匿名性を排除するために一生懸命取り組んでいる。この全国大会を機に47都道府県の皆さんが一つの想いになって、我われの目の前にある脅威と戦うことを決意してほしい」と訴えた。一方、「ホームステイ型の民泊については安全安心がしっかりと担保できるため、我われも推奨してもいいと思っている」との認識を示した。さらに、「政府や国会議員、各省庁にも民泊問題について説明してきたが、残念なことに『地元から声が上がっていない』と言われることが多い」と報告。「地元選出の議員に直接会ってお願いをしてほしい。賃貸不動産業は賃貸住宅対策議連に猛烈な政治活動を行い、180日以内での営業範囲という閣議決定をくつがえそうとしている」と語り、「我われ青年部が決起大会を起こすべき」と呼びかけた。

西村総一郎次期部長(左)と桑田部長
西村総一郎次期部長(左)と桑田部長

 大会では桑田部長が西村総一郎次期青年部長を紹介。西村氏は「国も観光に大きな目標を掲げ、支援もしていただいている。日本を活性化していくのは、観光を支える宿泊業の私たちだ」とあいさつした。

 その後、宿の未来事業創造委員会の「宿は人なり! 旅館から日本を元気に!」、流通対策委員会&インバウンド対策委員会の「どうなる? 海外OTAが見たこれからのニッポン!」、旅館アカデミー委員会の「今こそ学ぶ事業継承~知っておかなければいけないこと」――の3分科会が開かれた。

青年部長賞(グランプリ)の熊本県・阿蘇支部青年部
青年部長賞(グランプリ)の熊本県・阿蘇支部青年部

褒賞グランプリは熊本県・阿蘇支部

 全国の青年部活動で優れた取り組みを表彰する「全国大会褒賞」の発表と表彰も行われた。今回は、事前の褒賞審査会で得点の高かった2地域がプレゼンテーションを行い、5人の審査委員が投票。この結果、熊本県・阿蘇支部青年部の「外国人に優しい街づくり Flat内牧事業」が青年部長賞(グランプリ)の栄冠を手にした。

 準青年部長賞(準グランプリ)は福島県・土湯温泉支部青年部の「土湯温泉 若旦那図鑑」が受賞した。

 このほかにも、青年部OB賞、マスコミ各社賞、優秀賞も発表。旅行新聞新社賞は、山形県青年部の「『個』を鍛え、和を学び、地域を伝える! ワンフォアやまがた・オールフォア若旦那プロジェクト」が受賞した。

旅行新聞新社賞の山形県青年部
旅行新聞新社賞の山形県青年部

外客消費額が減少、影響受けにくい構造を(田村長官)

 田村明比古観光庁長官は10月19日に行った会見で、7―9月期の訪日外国人旅行消費額が前年同期比2・9%減の9717億円と、19四半期(2011年10―12月期以来)ぶりにマイナスになったことについて、「日本円ベースでの1人当たりの旅行支出の減少には、為替の円高傾向が影響している。今後、為替に影響されにくい観光消費構造をつくるためには〝日本でしか買えないもの〟を売り出していかなければならない」と語った。

 また、費目別に訪日外国人旅行消費額を見たときに、前年に比べ宿泊料金や飲食費の構成比が拡大していることについて田村長官は、「それぞれの地域が、その土地の食材を使った料理を提供したり、各観光施設が、その場所に長く滞在してもらうために、見せ方や解説の仕方などを工夫したりなどの努力をしていく必要がある」と述べた。

 9月から1カ月にわたり行ってきた「ジャパン・トラベル・マンス」の今後の課題などについては、「今年はキックオフとして捉え、来年以降は地域イベントなどを旅行商品に組込んでいくことが重要」と話した。

9月の訪日19%増、中国中心に寄港数増加

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 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)がこのほど発表した9月の訪日外客推計値によると、9月の訪日外客総数は前年同月比19・0%増の191万8200人となり、9月として過去最高を記録した。台風の影響によりキャンセルが重なったが、中国を中心に70隻以上のクルーズ船の寄港があったことが、訪日外客数の増加の下支えとなった。

 市場別では、韓国が同42・8%増と熊本地震の発生以降、初めて40%を超える高い伸びを記録。そのほか、インドネシア、タイやフィリピンでも伸び率が30%を超えるなど、東南アジアも総じて好調に推移し、ロシアを除く19市場で9月として過去最高を記録した。

 9月の重点市場の動向をみると、韓国は同42・8%増の43万600人で、9月として過去最高を記録。秋夕(旧盆休暇)で外国旅行者数全体が増える傾向にあるなかで、航空路線の新規就航などによる座席供給量の増加が、訪日需要増加に結びついた。

 中国は同6・3%増の52万2300人と9月として過去最高を記録し、1月からの累計で5百万7200人となり、昨年の年計499万3689人を3カ月早く超えた。9月は台風の影響などで、伸び率は1ケタ台にとどまった。

 台湾は同14・7%増の34万7500人で、9月として過去最高を記録。今年は中秋節が昨年よりも長い4連休であったことが、外国旅行重要を押し上げた。

 香港は同13・6%増の13万900人で、9月として過去最高を記録した。海外旅行のオフシーズンだが、中秋節の3連休や、航空路線の新規就航・増便が、訪日旅行の需要増加の追い風になった。

 そのほか、東南アジア諸国は、タイが同30・0%増、シンガポールは同17・0%増、ベトナムは同24・0%増、インドは同11・0%増などと軒並み大幅増。

 ベトナムは9月として過去最高を記録。国慶節が昨年よりも長い3連休だったことや、LCCの新規就航などが訪日需要を押し上げた。

 なお、出国日本人数は同1・3%増の154万5千人となった。

ONSEN RYOKAN山喜

 一度泊まってみたかった栃木県・那須塩原市の板室温泉「ONSEN RYOKAN山喜」に宿泊してきた。現代建築の外観で全8室という小さな温泉宿だが、館内のあらゆるところに「こだわり」が感じられた。

 泉質の違う2種類の自家源泉を持つ温泉は、露天と内湯以外に板室温泉古来の伝統的な入浴法「立湯」を再現。地元の旬の素材を活かした料理も絶品で、食後にはラウンジ奥にあるプライベートバーで同館の主である山口忠孝社長と語り合いながら飲んだバーボンの美味しかったこと!

 可能であれば、源泉かけ流しのビューバス付き客室をお薦めしたい。湯が溢れ出る音を聞きながら眠りにつくのは最高の贅沢。目が覚めたらそのままザブンと入浴でき、目を閉じれば至福の瞬間が待ち構えている。

【古沢 克昌】

インバウンド観光のベンチャーピッチ、日観振

久保成人理事長
久保成人理事長

 日本観光振興協会(山口範雄会長)は10月18日に、インバウンド観光ベンチャーピッチを東京都内で開いた。当日は、ベンチャーの支援に尽力するトーマツベンチャーサポート(吉村孝郎社長、東京・八重洲)が、進行役を担当した。プレゼンテーションを行ったのは、百戦錬磨とシュアール、ナイトレイ、Nextremer、MATCHA、Paykeの6企業。民泊から聴覚障がい者対応まで、情報通信技術(ICT)を活用したソリューション提供を担う注目のベンチャーが集まった。

 日本観光振興協会の久保成人理事長は、「今回は、ベンチャーピッチという形で企業連携を深める場を設けることができた。ぜひ積極的な交流を行っていただきたい」とあいさつした。

 合法民泊の先駆者として有名な百戦錬磨の上山康博代表は、「Web上でのマーケティングをしっかり行っていくことも大切。外国語で発信される趣味嗜好に関するワードを、丁寧にリスティングしていく必要がある」と語った。民泊解禁新法の提出は、2017年の通常国会へと先送りされたが、インバウンド取り込み増を狙うためにも、民泊への期待は依然大きい。

シュアールの大木洵人代表
シュアールの大木洵人代表

 厚生労働省認定の手話通訳士による遠隔手話通訳サービスを提供するシュアールの大木洵人代表は、「現在、ホテルや駅、金融機関などでサービスが利用されている。インバウンド対策にも対応していきたい」と語った。同サービスは、コールセンターにいる通訳士と、手話利用者をWebカメラ搭載の端末を使いオンラインで結ぶもの。通訳士を通じて、自治体や企業は、手話利用者と円滑なコミュニケーションを行うことができる。JR東京駅でも同サービスは活用されている。

 現在国連が中心となって、手話通訳サービス事業者の連携を促す取り組みが行われており、例えば、タイ語の手話からタイ語、日本語の順番で翻訳を行うことも可能だという。

 高度な位置情報データの解析技術を有するナイトレイの石川豊社長は、インバウンドの行動傾向を可視化する“inbound insight”を紹介した。

 MATCHAの青木優社長は自社のWebマガジンを、Paykeの古田奎輔CEOは、既存の商品バーコードをスキャンするだけで、商品情報を利用者の母国語に翻訳できる技術について解説した。

東京グッドを世界へ、マナー向上PJ始動

(左から)左京氏、伏谷氏、古田氏、 伊藤氏、新津氏、岡島氏、渡辺氏
(左から)左京氏、伏谷氏、古田氏、
伊藤氏、新津氏、岡島氏、渡辺氏

 国際都市・東京を舞台に、新しいかたちのマナー向上プロジェクトの推進母体として、9月1日Tokyo Good Manners Project(TGMP)が設立した。TGMPは、東京で暮らす一人ひとりが自分たちのグッドマナーに誇りを持ち、東京を訪れる世界中の人々に文化としてのグッドマナーを楽しんでもらうべく、〝TOKYO GOOD〟をコンセプトに掲げ、さまざまなアクションを実施する。

 TGMPの具体的な活動内容として、コンセプトである〝TOKYO GOOD〟を具現化する施策として、東京をかたちのない美術館に見立て、東京のグッドマナーやそれらを構成するヒト・モノ・コトを「作品」と定義して収蔵し、世の中に発信する活動「TOKYO GOOD MUSEUM」を展開していく。

 東京にあるグッドマナーを作品としてコンテンツ化し発信。都民や訪日観光客などからの推薦や投稿によって作品化を行う「マナーキュレーション」、マナー課題を解決するアイデアを創発し、グッドマナーを生み出していく「マナークリエーション」の2つをミュージアムという枠を通して世の中に提示していく。同ミュージアムの作品ナンバーワンに認定されたのは「羽田空港」。同空港は2013年、14年、16年の計3回、世界で最もきれいな空港に選ばれており、空港で働いているスタッフ全員が同じ志を持ち、常にきれいな空港を保つため、日々業務を行っているという。

 発足記者会見には、ディレクター・編集者の伊藤総研氏と、タイムアウト東京社長の伏谷博之氏、TGMP理事で丸の内朝大学プロデューサーの古田秘馬氏、シブヤ大学学長の左京泰明氏、自由大学事務局長の岡島悦代氏、日本橋街大學事務局の渡辺健太氏、日本空港テクノで環境マイスターを務める新津春子氏が登壇した。同プロジェクトには現在朝日新聞社と、ウィラーエクスプレスジャパン、産経新聞社、シブヤ大学、自由大学、タイムアウト東京、東京新聞、日本空港ビルデング、日本経済新聞社、日本航空、日本たばこ産業、日本橋街大學、日本旅行業協会、毎日新聞社、丸の内朝大学、三菱地所、読売新聞社がプロジェクトパートナーとして参加。TGMP理事で丸の内朝大学プロデューサーの古田秘馬氏は、今後の展望について、「来年の4月からは、プロジェクトパートナーである4つの大学が連携して、マナーについて考える、マナークリエーションを行っていく」と今後の活動に意欲を見せた。

初の装着確認機能、100台まで拡大し標準車両へ(クラブツーリズム)

新型クラブツーリズム号
新型クラブツーリズム号

 クラブツーリズム(小山佳延社長、東京都新宿区)は10月13日に東京都内で、「新型クラブツーリズム号」の試乗会を行った。日本初の「シートベルト装着確認システム」を導入。安全性を追求した。現在、多くの観光バスは11列55席だが、快適性を求め9列36席で1席の空間にゆとりを持たせた。バスツアーの標準車両を目指し、2018年度に100台まで拡大する予定だ。

 「ラグジュアリーでなく、あくまで安全性と快適性を追求した」と担当者。観光バス車両初の、前方に座席が動く「電動リクライニング機能」も取り入れた。後部座席を気にすることなく、簡単に座席を倒せる。

 同日に記者向けに試乗会を開催し、10分ほど運行。車内の床は木目調で、段差をなくしフラットにした。座席はシートピッチが90センチと広く、全席が3点式シートベルト。車内最後部に、化粧台付き化粧室を設置した。主要顧客層のシニア女性へ厚く配慮した車両となっている。

赤と青のランプで着脱が一目で分かる
赤と青のランプで着脱が一目で分かる

 同社は今年、社内規定で「国内貸切バス安全運行基準」を改めて見直し、強化をはかった。安全なバスツアーが求められるなか、客に見えない部分でも取り組みを強化した。衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報装置、運転注意力モニター、車間距離警報装置など最先端の安全機能を搭載している。

 10月15日からは、新型クラブツーリズム号(運行委託)でバスツアーを始めた。安全性と快適性を担保し、バスツアーの品質を高め、バスツアーの楽しさを提供していく。

ロボット研究や開発を、海外企業と提携進む(ハウステンボス)

大迫力の「光のドラゴンロボット」(提供:ハウステンボス)
大迫力の「光のドラゴンロボット」(提供:ハウステンボス)
澤田秀雄社長
澤田秀雄社長

 ハウステンボス(HTB、長崎県佐世保市)の澤田秀雄社長は10月17日、年明けまでに本格的なロボット会社を設立することを明らかにした。すでに準備会社は設立済み。海外企業と提携、人材調達も始めている。設立後はHTBで提携先とロボット研究や実用実験、販売などを行う。将来的には製作、開発も行う考え。

 昨年7月から約1年間で変なホテルとロボットの王国を開業し、多くのロボットが集まった。環境と材料が整い研究が可能になったことで、設立へとつながった。澤田社長は「世界有数の総合的なロボット会社に育てたい」としたうえで、「一大観光ビジネス都市を目指す」と強調した。

 一方で「このままでは敷地の面積が狭い」と述べ、今年1月に同県・大村湾の無人島を購入し、規模の拡大をはかった。無人島は最新のAR(拡張現実)技術を導入し「ジュラシック・パークのような施設も検討中」と可能性を示唆した。

 また同日、「光のドラゴンロボット」と「光の王国」に関する記者会見が開かれた。今回のドラゴンロボットは約3年の構想を経て、数億円を投資して作り上げた。

 (1)全長13メートル、高さ6・5メートル(2)LEDで輝き移動(3)6人が搭乗可能(4)長さ3メートルの炎を噴く――これらを満たしたものは世界初で、世界最大。搭乗料金は写真付きで2千円。1日2回、日没後に約7分間のショーを行う。

 7年目を迎えた光の王国は、世界最大の1300万球のイルミネーションが見どころ。全国イルミネーションランキング3年連続の1位で、「光の宮殿」などリニューアルし、さらなる磨きをかけた。

 人気のため期間を延長し、2016年10月29日―2017年5月7日まで開催する。

天・地・人がそろう土地、「エーデルワイン」(花巻市大迫町(おおはさままち))

大迫のブドウ栽培はこの木から
大迫のブドウ栽培はこの木から
でき立てのワイン
でき立てのワイン

 岩手県花巻市大迫町にあるエーデルワイン(藤舘昌弘社長)は10月13、14日の2日間、ワイン専門紙と観光専門紙の記者向けのプレスツアーを行った。大迫町は、ワインの味を左右する天(土地独特の気候)と、地(土壌の成分の特徴)、人(栽培する人の個性)がそろう地。「いいワインはいいブドウから」を掲げ、地元のブドウでワイン醸造を行う同社と、大迫市の魅力を紹介する。
【後藤 文昭】

 エーデルワイン
 エーデルワインは、ジャパンワインチャレンジ2016で国内最高賞「トロフィー」を受賞した「ハヤチネゼーレ ツヴァイゲルトレーベ樽熟成」など、さまざまなコンテストでの受賞歴があるワインを醸造。そのほかにも、「森のアダージョ」というホットワイン専用のワインなどあり、50種類にのぼる。

 大迫町のブドウ栽培の歴史は、1947年のカスリン台風と48年アイオン台風が始まり。両台風は大迫町に深刻な被害を与え、多くの住民が生活基盤を失う結果になった。当時の国分謙吉岩手県知事は同町を訪れ復興策を練るなかで、「大迫はボルドー(フランス)に似ている」と直感し、ブドウの栽培を奨励した。その後、ブドウの有効活用のために大迫町と大迫農協が62年に「岩手ぶどう酒醸造合資会社」を設立。74年に「エーデルワイン」が設立され、75年に同合資会社を吸収合併。81年には町でワイン専用品種の栽培がスタートした。

エーデルワインの個性的なワインたち
エーデルワインの個性的なワインたち

 同社はワインに使われるブドウの産地を大迫町産、もしくは岩手県産のみとし、とくに地域生産者とのつながりを大切にしている。例えば、各農家が栽培したブドウを同社が醸造し、それぞれのワインにし、生産者が直接消費者に振る舞う試飲会を行っている。生産者は、「直に感想を聞くことができるから励みになる」と歓迎している。畑の土質が違うだけで同じ品種でもワインの味が変化することを体感できるのも、この取り組みの面白いところだという。

 また大迫中学校の3年生は総合学習の一環として、年に3回「花巻市葡萄が丘農業研究所」(藤根勝榮所長)で栽培管理体験を行う。同社では収穫したブドウを醸造しワインに加工、5年後の成人式でプレゼントする。

 早池峰神楽と遺跡

 大迫町のもう1つのシンボルは、「早池峰神楽」(岳【たけ】と大償【おおつぐない】の2つの神楽の総称)。大迫には早池峰山があり、山岳信仰の場所であったことから、今日までこの地で伝承されてきた。また、2009年にはユネスコ無形文化遺産に登録されている。

 花巻市総合文化財センター(中村良幸所長)は、花巻市内約1千カ所の遺跡から出土した埋蔵文化財の収蔵保管と調査研究、市内の文化財の展示公開、情報発信を行う施設。常設展示室は「早池峰の自然と文化」をテーマに、自然と文化、歴史、人の4つの分野にまとめて紹介。神楽の面を見ることもできる。

「行きやすい街」、首都圏で魅力PR(名古屋市)

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 名古屋市東京事務所は10月17日、本紙を訪れ名古屋市の魅力をPRした。来社したのは名古屋市東京事務所主事で企業誘致・調整・ナゴヤ魅力向上を担当する近藤真由美氏と同主事の小林勇太氏、名鉄東京センター所長の町田正和氏。

 名古屋市は名古屋市観光文化交流局が7月に行った「都市ブランド・イメージ調査」で、8都市中(札幌市と東京都区、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、福岡市)「最も魅力に乏しい都市」という結果が出た。これに対し近藤氏は、「私たちは名古屋市に対して、誇りを持つべき。薦められる見どころは沢山あるので、今後のPRを頑張っていく」と力強く回答。また小林氏は、「名古屋は行きやすい街なので、気軽に来てほしい。実際リピーターになってくれる人は多いので」と、魅力をアピールした。

 名古屋市内の観光では、味噌カツやひつまぶしなどの「名古屋めし」と呼ばれる食べ物に関係する問い合わせが多いという。また、訪日外国人観光客の「熱田神宮」と「名古屋城」を訪れる人数も多い。一方で、「方向性がバラバラで、核が欠けているのでは」という課題も聞かれるという。また市内には外に発信しきれていない魅力的な観光資源が沢山あることに触れ、「外に発信するのが苦手な市民性もあるかもしれない」と、今回の結果を振り返った。

 名古屋市内では10月29日から、「やっとかめ文化祭」が始まった。期間は11月20日までで、「時をめぐり、文化を旅する、まちの祭典。」をテーマに市内各地でミニツアーや辻狂言などのイベントを行う。詳しくはやっとかめ文化祭実行委員会ホームページ(http://yattokame.jp)まで。

(左から)近藤真由美氏、町田正和氏、小林勇太氏
(左から)近藤真由美氏、町田正和氏、小林勇太氏