沖縄リゾートウェディング2012、過去最高の9118組に

リゾートウェディングの風景
リゾートウェディングの風景

13年の目標は1万500組

 沖縄県はこのほど、家族や知人など比較的少人数で参加するリゾートウェディングの挙式数が2012年は9118組となったと発表した。県が1999年から挙式事業に取り組み始めて、過去最高の数字となった。

 目標の9600組は下回ったものの、前年比では2・8%(246組)増となった。このうち国内挙式組数が同0・2%(25組)増、海外挙式組数は同86%(221組)増と大幅に伸びた。海外カップルの半数以上は香港が占め、要望が高い「リーガルウェディング」も増えた。

 スタイルは「チャペル」が全体の8割を占め、沖縄の海や白い砂浜を背景にした「フォトウェディング」も増加しているという。国内の地域別では関東が約4割で近畿が2割と続く。

 平均参列者数は19人で、新郎新婦を合わせると1組当たり21人。挙式での訪問客は総計では19万1千人と推計している。

 また、挙式費用の約55万円と観光客1人の消費額6・8万円を元に推計した県内消費額は180億円とはじき出した。

 昨年、県ではマスメディアを活用した広報の強化や映像プロモーションツールの制作、東京、大阪での沖縄リゾートウェディングフェアの開催などを積極的に展開。

 2011年にはブライダル事業者を中心にした「沖縄リゾートウェディング協会」が設立され、毎月22日を「沖縄リゾートウェディングの日」と設定し、那覇空港での出迎え行事などを実施している。

 県では13年の挙式目標を1万500組と設定し、国内と海外では香港、上海、台湾を中心にプロモーションを強化する。

「ピンクリボンのお宿ネットワーク」鼎談、医療現場から観光業界への期待

鼎談は3月20日に行われた
鼎談は3月20日に行われた

「ピンクリボンのお宿ネットワーク」の会員施設の情報を掲載する冊子。問い合わせ=事務局・旅行新聞新社 ☎03(3834)2718。
「ピンクリボンのお宿ネットワーク」の会員施設の情報を
掲載する冊子 問い合わせ=
事務局・旅行新聞新社 ☎03(3834)2718。

 「ピンクリボンのお宿ネットワーク」(会長=畠ひで子・匠のこころ吉川屋女将)が昨年7月設立した。同ネットワーク副会長で医療機関との橋渡し役を務める池山メディカルジャパン社長の池山紀之氏と、乳がん患者さんの乳房再建の第一人者でもある市立四日市病院(三重県四日市市)形成外科部長の武石明精氏、総合病院土浦協同病院(茨城県土浦市)の乳がん看護認定看護師の関知子氏は3月20日、医療現場から見た観光業界への期待や課題などについて語り合った(本文の一部は3月31日付臨時増刊タブロイド版「第24回全国女将サミット2013福島特集号」で掲載)。
【増田 剛】

≪治療後の生活まで考える ― 武石氏≫
≪冊子で温泉旅行が現実味 ― 池山氏≫
≪観光と医療をつなぐ文化 ― 関氏≫

 

 

池山 紀之氏
池山 紀之氏

池山:「ピンクリボンのお宿ネットワーク」が昨年7月に発足しました。昨年12月には、会員施設の情報を掲載した冊子も発行し、会員のお宿や全国約550の主要病院、個人の希望者にも配布しています。医療機関では現在、約5万部が患者さんなどに配布されました。武石先生の市立四日市病院や、関さんの土浦協同病院にも置いています。
現場から見て、患者さんの冊子に対する反応はどうですか。

:実際、毎日接している患者さんたちの温泉に対する関心はすごく高いですね。

武石:四日市市民病院ではあっという間になくなりました。どんどん事務局に補充をお願いしています。

 
 

関 知子氏
関 知子氏

池山:乳がん患者さんを切り口に、「すべての人が旅や温泉を楽しんでもらえるように」と、ピンクリボンのお宿ネットワークが設立されたのですが、お二人は医療現場から見て、ピンクリボンのお宿ネットワークに一番期待されることはどのようなことでしょうか。

武石:実際に温泉に入浴できるということでは、患者さんに「癒し」が得られます。しかし、患者さんがそこに一歩踏み出す勇気を、「ピンクリボンのお宿」というネットワークの名前自体が与えてくれるのです。患者さんは身体的だけでなく、傍から見ている以上に、精神的なハンディを背負っています。
乳がんの患者さんは医療に関することは相談できますが、「温泉に行くことを病院の先生に相談してはいけないのではないか」と思われるケースも多く、我われから温泉に関する情報を提供することによって、患者さんが一歩踏み出す勇気を与えてあげることができるので、すごく素晴らしい取り組みだと思います。

武石 明精氏
武石 明精氏

池山:この冊子はネットワークの会員となっている旅館のガイド冊子なのですが、病院の先生が旅館のガイド冊子を患者さんに直接手渡すことに抵抗はありませんか。

武石:乳がんの患者さんにどこまで踏み込んでいるかによると思うのですが、乳がんを専門としている医師には抵抗はあまりないと思います。とくに乳腺や形成外科医は、乳房を再建したあと患者さんが温泉に入ることまでを考えますから、抵抗はないと思います。

池山:乳がんの患者さんにとっては、術後に以前と同じような生活を送ることができるかが大きな関心事で、看護師さんも患者さんから術後の生活について相談されることが多いですよね。

 

:退院指導のときに患者さんには、「温泉にも行けますよ」とお話をするのですが、「ウソでしょう」と本気にしてもらえないことが多々あります。「ピンクリボンのお宿が紹介されていますよ」と、冊子を配布するようになってから、「本当に温泉に行ってもいいんだな」と話される患者さんもいます。言葉だけでなく冊子をお渡しすることで患者さんはより現実的に実感できるみたいですね。もっとネットワークを広げてもらえたらいいなと思います。
患者さんからは「どういうサービスをしてくれるのでしょうか」と聞かれることが多いですね。冊子に割引クーポンなどを付けてもらえると、患者さんや、患者さんのご家族もすごく参加しやすくなるのではないでしょうか。

池山:掲載されている施設にも温度差があるのは事実で、これから横のネットワークを広げるだけでなく、旅館の意識の向上も重要な課題になってきます。会員旅館が増えてくれば、冊子も改訂版を出していく予定ですので、患者さんや医療現場の方々のさまざまな意見を反映していければと思っています。

武石:家族風呂や、貸切風呂がある施設もありますが、患者さんが口をそろえて希望するのは「以前と同じように大浴場に入りたい」ということです。患者さんは傷を人に見られることを非常に気にされるので、洗い場などに仕切りがあれば大浴場に入る時にすごく安心されます。脱衣所や洗い場が工夫されている会員旅館さんの状況を分かりやすく提示していただけると、とても喜ばれると思います。

:武石先生がおっしゃったように、患者さんは温泉に入っているときよりも脱衣所や洗い場の方が気になるので、さりげなく目隠しになっている配慮や工夫があるといいですね。乳がん患者さんだけでなく、さまざまな理由で目隠しがあることで大浴場に入りやすい人が多いと思います。

武石:大浴場が比較的空いている時間帯を冊子で案内したり、夕食時間をずらすことで対応するのも一つのアイデアではないでしょうか。

:昨日お会いした患者さんは「水着を着たまま入れる温泉しか行かない」と言っていました。でも、大部分の患者さんは「裸でそのまま大浴場に入りたい」というのが本音なのです。

池山:日本では現在、年間約5万人が乳がんの手術を受け、術後の生活をされている患者さんも数10万人います。その方々がなかなか温泉に行けない。私の妹のときもそうでしたが、家族や友人も温泉旅行に行けないのです。この現状を観光業界が真剣に受け止め、「温泉に行きたくなったら誰でも行ける」という環境を整備していくことが、需要拡大に向けてプラスに働くと思います。温泉は日本の文化であり、我われ医療という別の業界にいながら「もったいない」という思いを強く持っています。

:うちの病院では人工肛門を装着されている患者さんの会があって、年に1回、日帰り温泉旅行を20年近く実施しています。

池山:大腸がんの患者さんも乳がんの患者さんと同じ規模の年間約5万人ほどなのです。

武石:患者さんのツアーでは参加できる人は多いのですが、家族では行ったことがないという人が多い。一番行きたいのは家族との旅行なんです。

池山:毎年10月は「乳がん月間」ですが、愛知県の湯谷温泉は「ピンクリボン癒しの郷(さと)」として、今年10月1日を「ピンクリボンの日」として、同温泉地の全旅館が乳がん患者さんだけを受け入れることを決めました。

:患者さんは自分の体の傷を他人に見せることで驚かせてしまったり、不快にさせたくないという思いが強いですね。

武石:旅館は一般のお客さんにも「乳がん患者さんを受け入れています」というアナウンスがあればもっといいと思いますね。

池山:その意味も含めて各会員の施設に「ピンクリボンのお宿ネットワーク」のプレートや、冊子を置いています。

武石:脱衣所の照明を少し暗くしたり、洗い場の仕切りを作ることも大切ですが、それ以上に宿のスタッフ全員が「乳がん患者さんを受け入れる宿だ」という意識を共有することが大事だと思います。不安ながらも患者さんがお宿を訪れて、客室係のスタッフに相談したとき、「わかりません」と言われてしまっては「やっぱり駄目だった」と、がっかりすることになります。

池山:本格的な高齢化社会を迎え、乳がん患者さんに限らず、体の不自由な方、高齢者が旅館を訪れるケースはこれからますます増えていくなかで、社員教育の一環として医療現場の声を伝えることも必要になると思います。

 ピンクリボンのお宿ネットワークが昨年12月に新潟県瀬波温泉で実施した「第1回ピンクリボンのお宿セミナー」のような大規模なものではなくても、全国に187人いる認定看護師さんや、武石先生のような医師の方々にもセミナーや講習会にも参加していただいて、観光業界と医療業界の垣根をなくし、連携を強めていけたらいいなと思います。

 

武石:乳がん治療というのは手術だけではなく、その後も治療は継続されます。化学療法や放射線療法、ホルモン療法などさまざまな治療法があり、患者さんの症状もそれぞれ異なります。そのことを知るだけでも、お宿さんにとっては大きな前進だと思います。

:ホルモン治療をしている人は発汗量が多かったり、体温調整が難しかったりするので、タオルや浴衣を数枚使えるように用意してあげると、きっと喜ばれます。

武石:QOL(クオリティー・オブ・ライフ)という言葉が使われだしてから長い年月が経ちますが、医療現場として「患者の病気を治した」「命を救った」で終わりというのは、もう時代遅れです。患者さんの病気が治った後の生活が、病気になる前と比べてどこまで回復しているかに重点が置かれています。

 

 現在のQOLはまだ、「職場に復帰した」「普段の生活は大体できるようになった」というレベルですが、これからは、我われの意識をもっと上げていかなくてはならないと思っています。

 娯楽スポーツも含めて「遠くまで旅行にいけるようになった」「温泉に行けるようになった」「以前のようにスポーツやハイキングができるようになった」というレベルまで考えていく必要があると思います。そのためには我われ医療現場にいる人間はほかの業種の方々とも関わっていかなくてはならないし、その現場のことをもっと勉強していかなくてはならないのです。

池山:そうですね。「ピンクリボンのお宿ネットワーク」は日本の観光と医療をつなぐ新しい文化と歴史をつくっているのだと思います。

【18面に関連記事】

〈鼎談出席者

武石 明精氏:市立四日市病院(三重県四日市市)

 関 知子氏:総合病院土浦協同病院(茨城県土浦市)

池山 紀之氏:池山メディカルジャパン(愛知県名古屋市)

国内旅行は過去最高、景気回復ムードで前向き(JTB GW動向)

 JTBがこのほど発表した今年のゴールデンウイーク(4月25日―5月5日)の旅行動向によると、国内旅行が好調で、総旅行人数は過去最高の2279万6千人が見込まれる。景気回復ムードにより、旅行消費に前向きな傾向がうかがえる。国内旅行は、前年比1・0%増の2223万人で過去最高の見込みで、首都圏・関東方面が人気のほか、大河ドラマなどの影響で東北方面の旅行が増加する傾向だ。海外旅行は、同5・0%減の56万6千人で、過去最高だった昨年に次いで2番目の水準だが、連休が取りづらい曜日並びや、国際関係の影響で伸び悩んでいる。同旅行動向は、JTBグループの販売状況や予約状況、航空会社の予約状況、業界動向、1200人へのアンケート調査などから推計した。

 今年のGWは4月27―29日の3連休と、5月3―6日の4連休に分かれ、連休の間の平日が昨年より1日長く、前半と後半に分散する傾向が強い。国内旅行は、5月3、4日の宿泊が中心。海外旅行は、遠距離の欧州、米国、ハワイが4月27日、近隣アジアやグアム・サイパン方面は5月2、3日が出発のピークとなっている。

 国内旅行の平均費用は同2・9%増の3万5900円。海外旅行は同6・4%増の22万3400円といずれも増額の予想。旅行支出に対する意向は「支出を増やしたい」が25・1%で、前年比12・4ポイント増と大幅に増えた。

 国内旅行は、昨年5月に開業した東京スカイツリーや、東京ディズニーリゾートの30周年記念、今年3月にオープンした東京駅前の商業施設「KITTE」(旧東京中央郵便局舎を一部保存・再生)など、東京方面の人気が引き続き高い。また、大河ドラマ「八重の桜」の放映により会津や、NHK朝ドラマの「あまちゃん」の舞台である三陸など、東北方面の観光客増加が期待される。さらに今年は、伊勢神宮で20年に一度の「式年遷宮」、出雲大社で60年ぶりの「平成の大遷宮」が行われる。同年に伊勢神宮と出雲大社の遷宮が重なるのは史上初のできことで、伊勢志摩方面や山陰方面にも注目が集まっている。

 海外旅行は、昨年伸長した韓国、中国が国際関係の影響で、一部は国内や他国にシフトすると考えられる。方面別では、昨年に引き続きハワイ、シンガポール、タイ、台湾の人気が高く、昨年の同時期よりも1ドル10円以上の円安となるものの、影響は見られない。円安傾向や日並びの悪さに関わらず、欧州は堅調。ルックJTBの売れ筋コースは、イタリア、ドイツで、昨年ロンドン五輪で注目されたイギリスが例年以上に伸びている。なお、ヨーロッパの出発日は4月27日がピーク。 

国内も最低価格保証、国内宿泊1円CPを実施(エクスペディアジャパン)

三島健代表
三島健代表

 世界30カ国でオンライン旅行サイトを展開するエクスペディアジャパンはこのほど、海外ホテルに続き、取り扱うすべての国内ホテルでも最低価格保証を始めた。

 同一条件での比較で、他サイトよりもホテルの値段が高かった場合、予約後30日以内に申請すると、差額の返金に加え、エクスペディアで次回の海外ホテル、海外ツアー予約時に使える5千円分のクーポンがプレゼントされる。対象ホテルはエクスペディアジャパンのサイト上で予約可能なすべての国内ホテル。ただし、JTBとの提携で今夏から提供を始める宿泊施設7千軒については、別サイトを作る予定で、最低価格保証の対象外となる。価格比較の対象となるウェブサイトは日本円で料金を提供しているサイトで、即時予約が可能なホテル、部屋が対象。

 4月8日の会見で、エアアジアエクスペディアジャパンの三島健代表は、同社サイトを利用した国内宿泊旅行者は毎年2倍の勢いで伸びていることを報告。提供施設数については「数千軒」と言明を避けたが、「年々増えている」と自信をのぞかせた。価格勝負ができる理由に、「世界で3兆円を超える取扱量」と「スケールの大きさ」をあげた。また、ネットエージェントのシェアについては「まだまだシェアについて話せるほどまでには至っていない」としたが、「3―4年後には国内のプレイヤーの一角にはなりたい」と展望を語った。

 エアアジアエクスペディアジャパンマーケティングディレクター東アジアの木村奈津子氏は「これまでは、安いホテルをボトム価格で提供しているというイメージを持たれがちだったが、今回の最低価格保証制度で今まで手が届かなかった高級ホテルにも手ごろな最低価格で泊まってもらいたい」と語った。木村氏によると、提供施設は現在、シティホテルが中心で旅館は含まれていないというが、「今後は旅館なども含めて提供施設を拡大していきたい」と話す。

 なお、返金差額はホテル側ではなく同社が負担をするが、今後はその差額を考慮したうえでホテル側と料金設定の交渉をしていくという。

 同社では、国内最低価格保証を記念し、現在全国5都市・限定300室を対象とした「国内ホテル1円セール」を実施中だ。第1弾の東京、第2弾の京都・大阪に続き、第3弾の沖縄・札幌は4月22日の午前0時に発売を開始する。

“コード”を業界全体に、旅行会社が取り組むべきCSR

JATA・米谷氏
JATA・米谷氏

JATA CSRセミナー

 日本旅行業協会(JATA)は3月14日、東京都港区のユニセフハウスで、「持続的な企業発展のために旅行会社が取り組むべきCSRとは」をテーマにセミナーを開いた。国際連合児童基金(ユニセフ)などが観光地などでの子供買春を根絶するために推進する、旅行会社の取り組み「コードプロジェクト」に関連する講演などを実施し、実態を学んだ。日本では2005年からコードを開始し、現在はJATA会員を中心に約90社が参加しているが、今後、JATAは会員をはじめ、業界全体に取り組みを広げていきたい考えだ。
【飯塚 小牧】

 冒頭、JATAの米谷寛美総合企画部長(開催時役職)はコードの経緯などを説明。それによると、国際的な取り組みの始まりは、1996年にストックホルムで開かれた旅行・観光での性的搾取から子供を保護するための行動規範に関する国際会議。そのなかで、悪の根源はインターネットと旅行会社だという意見や、その最たる国は日本だという声もあったという。報告を受けたJATAは反論していたが、それだけではなく、積極的に根絶に向けた取り組みを行い、企業的責任を果たしたうえで、世界の観光の健全な発展に資するべきだと判断。2005年に世界のコード機関と合意書を取り交わし、日本でコードの取り組みを開始した。

 米谷部長は「世界的に子供の人身売買や児童ポルノの事件・ニュースは後を絶たない。海外の調査で日本は子供を人身売買から守る法的な枠組みや政策、国際基準が不十分で意識も低いと指摘されている」と社会全体の問題点を示した。旅行業にとっては旅先で顧客が知らない間に犯罪に関与するケースもあり、「無関心では企業イメージのダウンや損失につながる可能性がある」と言及。「ボランティア色の強かったCSRから一歩踏み込んだ活動だが、率先して旅行業全体で取り組み、子供の悲劇を少しでも減らしたい」と意気込みを語った。

原幸太郎氏
原幸太郎氏

 セミナーは3人の講師が登壇し、現状や取り組みについて講演した。1人目の講師は警察庁生活安全局少年課児童ポルノ対策官の原幸太郎氏。原氏は「児童ポルノ」に関する検挙件数が2002年の189件から10年後の2012年には1596件に増加し、そのうちインターネット関連事件が84・5%を占める現状などを報告。被害児童の約半数が13歳以下の低年齢児童で、その8割は強姦・強制わいせつのうえに画像を撮影されている悲惨な実態を示し、「ネットのなかの画像はコピーが世界中に渡ってしまうこともあり回収が困難で、長年にわたり精神的苦痛が続く」と語った。

 児童ポルノの取り締まりにおける日本の課題は単純所持の処罰化だ。国会でも度々議論されているが、現行の法律では個人的な所持は処罰の対象とはならない。一方、欧米諸国では単純所持も処罰化しているため、「例えば海外でツアー顧客のなかに所持している人がいた場合、旅行会社の皆さんの関与も確認される場合がある。海外はコンプライアンスを重視するので、『顧客の手荷物検査はできない』と訴えても、それが重なれば評価が下がることは否定できない」と注意を促した。

吉田奨氏
吉田奨氏

 2人目の講師、ヤフー政策企画本部ネットセーフティ企画室室長の吉田奨氏は青少年が安心して利用できるインターネット環境づくりに向けた取り組みを紹介。同社は広告やコミック、動画、オークションなどそれぞれのサービスで適正化と悪用防止対策を実施している。業界全体では、主要なプロバイダー企業やモバイル企業など87社が加盟する「インターネットコンテンツセーフティ協会」で取り組みを推進。吉田氏が事務局長を務める同協会は、児童ポルノ画像が掲載されたサイトのアドレスリスト作成・管理や提供などを行い、インターネット上の児童ポルノ画像の流通や閲覧防止対策を国などと連携して行っている。

 吉田氏はこのような取り組みに力を入れる理由について「日本でサービスを提供している以上、『児童ポルノ大国』という批判に対し、仮に国内サーバーにデータが蔵置されているのであれば地道に消すなど世界に誇れる対策で汚名を返上したい。また、ネットに対する批判は長期的に見てビジネスを阻害する要因になると考えている。CSRの観点でも、例えば植林よりも、本業領域で我われにしかできないことのほうが優先されるのではないか」と述べた。今後についても「業界内では積極的でないところもあるが、引きずってでも参画してもらわないと、ネット全体が批判を受ける。業界のリーディングカンパニーとして、積極的にイニシアティブを取っていく」と強調した。

佐伯摩耶氏
佐伯摩耶氏

 最後は、日本ユニセフ協会広報・アドボカシー推進室アドボカシー担当の佐伯摩耶氏が、世界の企業が子供の権利をどのように考え、企業活動を行っているかを語った。

 佐伯氏はコードの主旨を「加害者や特定の誰かを責めるものではない。大切なのはどうやって子供を守るのか。いくらでも止める機会はあるはずだ」と前置きしたうえで、コードの取り組みが進んでいるドイツの推進体制を紹介。政府をあげて取り組んでいるドイツは、3つの省庁が協力してバックアップしているほか、民間でも旅行会社の約80%がコードに参加している。その背景には国民の意識の高さがあり、顧客が旅行会社の窓口で「あなたの会社は、コードをしているか」と尋ねるほどだという。

 そのなかでも、ドイツの旅行会社で世界企業のTUIは熱心で、担当者のショーン・オーウェンズ氏が自社内の年次報告を世界中から集め、編集して世界のコード機関に提出している。「彼になぜそこまでするかを聞くと『私たちの大切なお客様が訪れようとする国や地域が“子供売春地”として有名だったら私たちが困る。私は世界の“風景”を変えたい』と答えが返ってきた」と印象的なエピソードを語った。

 講演を受け、米谷部長は「現状、広がりが見えていないので、活動をリセットし、日本の旅行業全体で契約を結び活動を進めたい。少なくともJATAの会員には意識を持ってもらい、参加してもらうように呼び掛けていく。厳しい情勢で意識が向かないという現実も分かるが、将来を考えれば積極的に推進するべきだ」と力を込めた。

旅行新聞創刊1500号あいさつ

業界のオピニオン紙として

旅行新聞新社代表取締役 石井 貞徳
旅行新聞新社代表取締役
石井 貞徳

 本紙は1975(昭和50)年の4月に創刊以来、2013年4月21日号をもちまして1500号を迎えることになりました。これも、ひとえに観光関係者のご支援ご鞭撻の賜物と深謝申し上げます。

 創刊時は国内・海外の情報を掲載する観光業界の週刊専門紙として発行致しました。この間、紆余曲折を経て、現在は“業界人のための業界専門紙”として月3回、旬刊「旅行新聞」を発行しており、多くの観光業界人に評価をいただけるようになりました。

 現在は韓国の「旅行新聞」、台湾の「トラベルリッチ・旅奇」など海外メディアとも連携しており、今後はワールドワイドの記事を提供していきたいと考えております。

 また、新聞発行の周知をはかるため、創刊翌年の76年1月に第1回「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」をスタートさせ、今年で38年目を迎えることができました。観光業界において長い歴史を刻むことができた「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」は、現在「プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」や「プロが選ぶ優良観光バス30選」「選考審査委員特別賞 日本の小宿」そして「もてなしの達人」「優秀バスガイド」と幅広い賞を持つイベントとして育って参りました。

 このほかにも、「全国旅館おかみの集い(全国女将サミット)」や「売り場が変わるプロジェクト」「ピンクリボンのお宿ネットワーク」などを展開しており、今後もウェブへの取り組み強化など、事業を拡大し、観光業界発展のために努力していきたいと考えております。

 今、日本経済の活性化に必要不可欠なのは観光振興です。今後の国内の人口減少・高齢化を考えると、観光での交流人口拡大による地域活性化や諸外国への幅広い対応なくして成長は見込めません。我われはその一助となるべく、観光業界のオピニオン紙として、さまざまな情報や、動向、調査データを的確に報道し、識者などの意見を取り上げ、問題点を明らかにして業界発展のために寄与して参ります。

 1500号の節目にあたり、観光立国の実現に向けて、社員一同、今一度初心にかえり、皆様方のご期待にお応えできますよう邁進致す所存でございます。

 今後とも何卒倍旧のご高配を賜りますよう、伏してお願い申し上げます。

No.338 「女将のこえ」150回記念 第1弾 - 150人に30項目のアンケート実施

「女将のこえ」150回記念 第1弾
150人に30項目のアンケート実施

 本紙で連載中の「女将のこえ」(毎月21日付)が、今年3月に150回を迎えた。女将の方々の協力のもと、2000年6月の初回からさまざまな女将人生を紹介し、共感を得てきた。人の喜びを自らの喜びとする心は不変である一方、13年間で旅館・ホテルを取り巻く環境は様変わりしてきた。そこで、連載150回を機に、筆者の瀬戸川礼子氏と本紙編集部の共同企画として、30項目にわたるアンケートを実施。分析・発表することで、よりよい経営に役立ててもらうことを目的とした。瀬戸川氏の執筆で3回に分けて紹介する。今回は第1弾。

【編集部】

【瀬戸川礼子氏と本紙編集部 共同企画】

≪女将100人の回答を分析≫

 「女将のこえ」150回記念アンケートは、女将の手元に届いた140通を母数とすると、71・4%もの高い回収率となった。多忙ななか、30項目にもわたる質問に快く回答いただいたことを改めて感謝したい。

 アンケートには、日ごろの女将インタビューを通じて得られた「ほかの人はどう考えているのか」、「実際はどうなのか」といった疑問も盛り込んだ。分析・まとめを発表することで協力に報いたいと思う。

瀬戸川 礼子氏:ジャーナリスト・中小企業診断士。初回から本紙「女将のこえ」を担当。女将取材をライフワークとする。また、社員満足・顧客満足を主題に、あらゆる業種・企業の取材・講演・コンサル活動を行なっている。著書に『顧客満足を生み出す仕組み』(同友館)、『グレートスモールカンパニー』(現代書林)ほか。

※ 詳細は本紙1500号または4月25日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

のんびりできない温泉地 ― 弱点の昼間で勝負決まる

 「温泉地でのんびりしたい」と思うのは、きっと多くの人々の共通の願いである。しかし、現実は、ほとんどの温泉地ではのんびりなどできないのである。悲しいけれど、むしろ東京や大阪のほうが、のんびり、ゆったりできる。

 私はドライブ旅行が好きで、日本中、あちこち旅をする。とくに好きなのは田舎道である。クルマの窓を開け、季節を感じる風の匂いを吸い込みながら、ゆっくりと走るのが好きである。温泉も大好きなので、道路脇の看板に温泉地の地名が現れると、寄らずにいられない。古くから湧く温泉地の歴史の象徴である共同浴場や、秘湯と呼ばれる宿で個性的な湯を自然の中で楽しむ。そこまでは、文句のつけようのない半日である。

 旅の大きな楽しみの一つに食事がある。ハンドルを握りながら、「何か美味しいものを食べよう」と道の左右を探すのだが、いつだってチェーン店以外はあまり見つからない。幾つかの廃屋になったままのレストランが続き、やがて山の中に向かい、温泉地に到着する。「温泉地には1軒くらいまともなレストランはあるだろう」と淡い期待をしながら探すのだが、大抵、見事にその期待は裏切られてしまう。温泉地で美味しいランチを食べるということは、それほど難しいことなのである。

 ミシュランも、東京や関西をはじめ、主要都市部・観光地で星付きレストランを紹介しているが、日本の田舎道で“きらりと光る”レストランを網羅するのはまだまだ時間がかかる。

 温泉地の弱点は昼間である。観光地としては、最も多くの人でにぎわうはずの時間帯が、“ゴーストタウン化”してしまっている温泉地を数多く見てきた。夕方遅くお客が来て、早朝に去って行く。温泉地は夜だけの顔で今後も存続していけるのだろうか。活気のある温泉地は、昼間だってにぎわっている。

 長野県・戸倉上山田温泉は、4月から毎月26日の昼間に、旅館のお風呂を無料開放する。旅館にとってのメリットは何か。滝の湯の武井功氏は「昼間の時間帯に温泉街に活気が出る。宿が地元の食事処のマップを配ることで、滞在時間が増える。また、地域の人にも自分の宿を知っていただく機会となり、旅人との会話の中で宿を紹介してもらえる」と語る。勝負の分かれ目は、午前10時から午後3時である。

(編集長・増田 剛)

銀座に旗艦店オープン、ウェディング4社と共同で(JTB首都圏)

生田亨JTB首都圏社長
生田亨JTB首都圏社長

 JTB首都圏(生田亨社長)はこのほど、ウェディング専門店「ウエディングプラザ銀座本店」をオープンした。同店は、1都3県の主要エリアの店舗内にあるウエディングプラザ、ウエディングデスク10拠点の旗艦店としての機能を担う。

 同店は、海外現地で運営しているウェディング会社のワタベウェディング、アールイズウエディング、ワールドブライダル、TAKAMI BRIDALと共同で運営。生田社長は「式場を決めるまではJTBが強いが、ドレスや食事などパーツは専門のウェディング会社の方が情報をたくさん持っており、4社と共同でより多くの情報を提供していきたい」と語った。1つの店舗で旅行と挙式の両部門をトータルにサポートできる体制を目指し、7つのブースとウェディング会社それぞれ1ブースずつの計11ブースで対応をする。

 JTB首都圏の取り扱いは、方面別ではハワイが61%、グアムが24%、バリが5%と、リゾートウェディングだけで9割を占める。同店オープンにより、3年後にはウェディングを年間取り扱い3千組から4千組、ハネムーンを2万組から2万5千組への大幅アップを目指す。

観光地支援の公募、締切4月19日まで(観光庁)

 観光庁はこのほど、13年度新規事業となる、地域独自の「ブランド」の確立を通じた日本の顔となる観光地域創出に向けた地域の取り組みを支援する「観光地域ブランド確立支援事業」の公募を始めた。

 補助額は、観光地域ブランド基盤づくり支援に係る経費補助が上限500万円で、観光地域ブランド確立支援に係る経費補助が事業費の4割。補助対象事業者は、観光圏整備法にもとづき作成され、認定を受けた観光圏整備実施計画に記載されている「観光地域づくりプラットフォーム」。締め切りは4月19日で、補助金交付の決定は5月を予定している。

 同事業は、13年度予算で3億4300万円を計上。国内外から選好される国際競争力の高い魅力ある観光地域づくりの促進を狙う。