地熱問題など情報交換、県温泉協会連絡会議開く

地熱問題など情報交換
 日本温泉協会(大山正雄会長)は3月7日、東京都内で第4回県温泉協会連絡会議を開き、全国の各エリアで課題となっている地熱開発問題や、温泉地の地域振興などの現状報告と今後の課題について意見交換した。

 大山会長は「温泉が日本の観光産業に大きな役割を果たしている一方で、地熱開発などの問題について各地域の温泉地がどのように対応していけばいいのか、この会合でお互いに情報交換をしながら、今後ますます重要になる温泉資源の保護や観光産業を支えていくうえでの対応を探っていきたい」とあいさつした=写真。

 同会には環境省の担当官も出席し、14年度予算に新規事業として16億円を計上している「地熱・地中等の利用による低炭素社会推進事業」を説明した。また、今年1月から2月にかけて温泉法における禁忌症、入浴や飲用上の注意などに関するパブリックコメントを行い、約50件の意見が集まったことを紹介。温泉の一般的禁忌症については、現行では「妊娠中(とくに初期と末期)」が含まれているが、科学的な根拠が認められないことから、削除される見通しであることも報告した。

 さらに、「温泉資源の保護に関するガイドライン」の改訂案についても今年2月にパブリックコメントを実施。今後、3月に検討会で取りまとめを行い、4月に中央環境審議会温泉小委員会に報告したのち、各都道府県に地方自治法に基づく技術的助言として発出していくことなどを報告した。一方、日本温泉協会の佐藤好億副会長は「高齢化、人口の大幅減少時代を迎える状況にあって、(温泉資源枯渇の危険性のある大規模な地熱開発による)再生可能エネルギーの必要性が本当にあるだろうか」と根本的な疑問を投げかけた。

グラバー園40周年、記念さるくが登場

世界遺産候補の構成資産となった「旧グラバー住宅」
世界遺産候補の構成資産となった「旧グラバー住宅」

春満喫のイベントも

 今年で開園40周年を迎える長崎県のグラバー園。その中心施設が、1863年に建てられた独特のバンガロー風様式が特徴的な日本最古の木造洋風建築である「旧グラバー住宅」。世界遺産候補として2015年の登録を目指す「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」の構成資産にもなっている。

 今年4月からは、長崎市のまち歩き観光「長崎さるく」に「グラバー園開園40周年記念さるく」として、旧グラバー住宅をはじめ、市内にある8つの構成資産などを紹介する「長崎『明治日本の産業革命遺産』―世界遺産候補探訪―」コースが登場する。

 園内にあるドッグハウスや旧リンガー住宅、旧グラバー住宅など、幕末・明治期の貴重な洋館群を散策し、長崎港や三菱重工業長崎造船所にある構成資産を園内から望む、同園ならではの魅力が詰まったコースだ。トーマス・ブレーク・グラバーをはじめ、日本の産業革命に先駆的な役割を果たした長崎ゆかりの人物の秘話なども、さるくガイドが紹介してくれる。

 参加費は、中学生以上で1人1千円。数量限定の記念グッズももらえる。

 また、同園では4月1日から6月30日まで、「春浪漫フェスティバル」を開催する。期間中の土日祝日には、キャンドル作り体験や園内ツアーなどを行うほか、4月5日にはパレードや龍踊りステージ、4月26日から5月5日までは夜間開園を実施する。4月20日、5月18日、6月15日には、バックヤードツアーも開く。

 期間中は、南山手グラバー通りの参画施設で割引などの特典が受けられるクーポンを配布。長崎市内では「帆船まつり」(4月27日―5月1日)や、「紫陽花まつり」(5月24日・6月15日)など、イベントも目白押しだ。

慶良間が国立公園に、27年ぶりの国公認定

 慶良間諸島が国立公園に――。沖縄県の慶良間諸島とその周辺海域が3月5日、慶良間国立公園として認定された。国立公園の認定は1987年の釧路湿原国立公園以来、27年ぶり。国立公園の数は31になった。

 慶良間諸島国立公園は陸域が3520ヘクタール、海域が9万475ヘクタール。「ケラマブルー」と称される透明度の高い海やサンゴ礁、さらにザトウクジラの繁殖地としても知られている。

「藤岡弘、」さんが隊長に、群馬探検隊を発足(群馬県)

ぐんまちゃん、藤岡さん、大澤正明知事(左から)
ぐんまちゃん、藤岡さん、大澤正明知事(左から)

 群馬県は3月4日から、俳優・武道家の「藤岡弘、」さんを隊長に起用した「群馬探検隊」を発足し、PR活動を開始した。

 同日には東京・銀座のぐんま総合情報センター「ぐんまちゃん家」で藤岡さんの群馬探検隊隊長任命式が行われ、大澤正明群馬県知事から任命書が授与された。

 群馬県は豊富な観光資源に恵まれ、数えきれないほどの名産品や人気の観光地を有するにも関わらず、魅力度の都道府県ランキングでは「最下位争い」の常連に甘んじ、ネット上では群馬は「未開の地」「秘境」などと皮肉られてきた。さらに近年では大分県が「おんせん県」、香川県が「うどん県」を名乗るなど、群馬の有力な観光資源はすでに他県が大々的にPRしており、群馬県は後手に回っていた。

 群馬探検隊は、群馬の名産品や人気の観光地、都市伝説を藤岡さんが「探検」して発見していく設定。藤岡さんが登場する劇画タッチの漫画をインターネット上の特設ページで順次公開するなど、新たな手法で群馬の魅力を発信していく。今後は「群馬の逆襲」と題し、大分県や香川県との「対決企画」なども予定しているという。

日・英のHP作成、寄港地周辺の観光発信(観光庁港湾局)

 観光庁と港湾局はこのほど、全国クルーズ活性化会議と連携して、寄港地からアクセスできる観光スポット情報を提供するウェブサイト「CRUISE PORT GUIDE OF JAPAN」の日本語版と英語版を作成し公開した。

 近年、日本へのクルーズ船の寄港回数は増加傾向にあり、クルーズ振興による観光立国の実現や地域振興の寄与に期待が高まっている。日本への寄港を検討するクルーズ船社から、クルーズ船を降りてからアクセスできる寄港地周辺の観光スポット情報を得たいという要請があり、同サイト開設に至った。

 同サイトは、クルーズ振興を通じての地域振興を推進する「全国クルーズ活性化会議」の会員のうち掲載希望のあった全国72の港湾と、その周辺の観光スポットを紹介している。

温泉利用の相談会、ピンクリボンの日開く(吉川屋)

講演会のようす
講演会のようす

 ピンクリボンのお宿ネットワーク(リボン宿ネット)の会員施設の「匠のこころ吉川屋」(福島県・穴原温泉)は3月9日、乳がんで乳房を失った女性に気軽に温泉を利用してもらうための相談会「第1回吉川屋のピンクリボンの日」を開いた。参加は無料で、65人が集まった。

 当日は、オーダーメイドの人工乳房を製作している池山メディカルジャパン(愛知県名古屋市)の池山紀之社長が「乳房再建の最新情報」をテーマに講演を行い、乳がんの再建手術について最新事例を挙げながらわかりやすく解説した。

 昼食時には、吉川屋の隈本辰利料理長がこの日のために特別に調理した限定メニュー「からだの中から美しく元気になるランチ(1人3千円)」を希望者に提供し、色鮮やかなオリジナル創作料理膳に参加者から感嘆の声が上がった。お品書きの可愛らしいイラストは絵心もある隈本料理長が自ら筆をふるった。

美しく元気になれるランチ
美しく元気になれるランチ

 午後は池山メディカルジャパンの協力で人工乳房を装着しての温泉入浴体験のほか、入浴着(湯あみ着)やウィッグを着用しての入浴体験、個別の相談会などを行った。

 なお、同相談会には福島県郡山市の星総合病院に勤務する乳がん看護認定看護師2期生の藤田由紀さんも参加した。

 問い合わせ=電話:024(542)2226。

着地型旅行の紹介も、地域活性化へパネル議論

地域活性化の事例を紹介
地域活性化の事例を紹介

がんばる中小企業、フォーラム開く

 中小企業基盤整備機構は3月3、4日、グランドプリンスホテル新高輪(東京都港区)で「がんばる中小企業・小規模事業者・商店街フォーラム」を開き、経済産業省中小企業庁が昨年12月に選定した「がんばる中小企業・小規模事業者300社」と「がんばる商店街30選」の表彰式や、選定事業者や商店街によるパネルディスカッションを行った。「地域活性化」のパネルディスカッションでは、愛知県丹羽郡にある旅行会社が、地元国宝犬山城城下町で実施する着地型旅行を紹介した。

 地域活性化のテーマでは、明治大学政治経済学部の森下正教授をコーディネーターに、北海道札幌市で地域素材を活用した創作豆菓子を開発し、地域経済活性化に貢献する池田食品の池田光司代表と、群馬県佐波郡で中高年齢者や知的・身体障がい者などの社会的弱者の雇用創出を行う企業組合群馬中高年雇用福祉事業団の吉田英樹代表理事、愛知県丹羽郡の国宝犬山城城下町で地域観光資源を活用した着地型旅行を行うツアーステーションの加藤広明代表がパネリストとして登壇し、各社の事例を紹介した。

 ツアーステーションは、着地型旅行を「お客様良し、地域良し、事業者良し」の持続可能な新しい概念の旅のスタイルとし、国宝犬山城や城下町、国指定無形民俗重要文化財の犬山祭り、からくりなど、有形・無形の資源を観光資源として磨き、地元の人とともに城下町文化再発見の着地型旅行を企画している。加藤代表は「地元の人が宝と思っていない宝が埋もれていることが多い。原石を磨き、それを地域活性化につなげるのが着地型旅行」と紹介。「私たちはあくまでプロデュースをするだけで、主役は地元の人たち。彼らが“語り部”として旅行客と向き合うことが着地型の魅力」と語った。

 そのほか、「サービス・小売」「商店街」「ものづくり」をテーマにしたパネルディスカッションや、財部誠一経済ジャーナリストによる「勝ち残る会社の条件」と題した講演も行った。

No.365 東日本大震災から3年 - 観光で「東北復興支援」加速を

東日本大震災から3年
観光で「東北復興支援」加速を

 国土交通省観光庁や東北6県などが主催する「東日本大震災から3年~東北観光がんばります!!」シンポジウムが3月2日、宮城県仙台市で開かれた。青森、岩手、秋田、宮城、山形、福島の東北6県の知事が一堂に会したパネルディスカッションでは、東北観光の現状や復興状況を報告。また、国土交通大臣政務官の土井亨氏とともに、今後の展開や、風評被害対策、さらには観光によって「東北復興」に取り組んでいくことなどを熱く語り合った。その一部を紹介する。

【増田 剛】

 
 
 
≪「官民一体で復興に取り組む」 ―観光庁長官 久保成人氏≫

 観光庁の久保成人長官は主催者あいさつとして「東日本大震災から3年が経とうとしている。震災は被災地域の観光資源や、観光産業にも甚大な被害を与えた。その後、風評被害も追い打ちをかけ、国内外の観光客が減少し深刻な影響を及ぼした。一方で、国内、海外から寄せられた復興に向けた支援の輪は、ボランティアと地元の方々との間に多くの交流も生み出した」と振り返り、「震災から3年が経った今、観光というソフトの面からの復興支援、東北支援に官民が一体となって加速化し、取り組むときだ」と力強く語った。

≪東北6県の知事登壇「東北観光がんばります!!」≫
 

情報発信の予算増強を ―青森県知事 三村 申吾

4月三陸鉄道全線開通 ―岩手県知事 達増 拓也

仙台空港民営化を計画 ―宮城県知事 村井 嘉浩

文化やスポーツと一体 ―秋田県知事 佐竹 敬久

「雪」で東北周遊可能に ―山形県知事 吉村 美栄子

福島の元気教育旅行で ―福島県知事 佐藤 雄平

「東北は安心」強力発信 ―国土交通大臣政務官 土井 亨

 

※ 詳細は本紙1537号または3月17日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

東日本大震災から3年 ― 観光は大きな“地域回復力”を持つ

 未曾有の大災害となった東日本大震災から3年が経った。大きな犠牲と引き換えに、大きな教訓を得た。2011年3月11日の「あの日」まで気づかなかったことや、「あの日」を境に知ったこと、見えるようになったものが、たくさんある。

 3月2日、宮城県仙台市で東北6県の知事が一堂に会したシンポジウム「東北観光がんばります!!」に参加した。現実的な課題を山のように抱えながら、各県の知事は、しっかりと前を向き、自らがセールスマンとなって観光による地域復興の意気込みを熱く語っていた。NHKが放映したドラマ「八重の桜」や「あまちゃん」が人気を博し、全国から多くの観光客が集まった事例についても、知事たちはうれしそうに話した。「物語」が持つ力の大きさを感じ取った。

 JR各社は震災後から東北各エリアでデスティネーションキャンペーンを展開し、多くの観光客を東北に送って来た。さまざまなイベントや企画を行い、大々的な観光PRを今も継続的に行っている。また、全国の旅行会社や、航空会社なども東北復興ツアーを造成し、協力もしてきた。4月には三陸鉄道が全面開通する。日本中をつなぐ新幹線の「希望を乗せる」力、そして、小さなローカル鉄道が地域の人々の生活や、街に活力を与える役割の大きさも、震災によって改めて知ったことの一つだ。

 さらに、エネルギー問題も震災後、大きな問題として浮かび上がってきた。観光業界では国際観光施設協会が唱える「省エネ化ではなく、消費エネルギー自体を小さくする小エネ化」への取り組みの必要性が今後ますます高まる。とくに旅館・ホテルでは、自然との共生を考慮しながら、知恵と工夫による「小エネ」の研究や取り組みを、今後一層進めてほしいと思う。

 震災から3年が経った今、観光客が被災地を訪れることがこれまで以上に重要になっている。東北各県の知事は外国人観光客が未だ震災以前の水準に戻っていないことを課題に挙げ、国にも積極的な情報発信を強く要望した。震災後から、大きな文化・スポーツイベント、国際会議を東北で開く努力を官民一体で行ってきたが、今後も継続的に取り組むことが重要だ。

 東北の魅力あふれるツアーを作ることは、旅行会社や鉄道会社、航空会社の腕の見せどころである。JR九州の豪華観光列車「ななつ星」が九州を一つのブランドとしてまとめる一端を担っているように、「東北を一つ」に結びつける創造性あふれるアイデアや、より強力な連携が必要になるだろう。

 被災した地域を復興に導く原動力となるのは、観光による人の交流である。観光が持つ地域経済の回復力がこれほどまでに大きいことを、東日本大震災から3年が経過した今、改めて気づかされる。想像してほしい。被災地に誰一人訪れることのない姿を。これほど空しい風景はない。旅行業界は「モノ」を売る商売ではない。売る「モノ」は何もない。けれど、一見何もないところにも「価値を生み出す」魔法の力を持っている。日常生活の中ではこの素晴らしい魔力は鳴りを潜めている。埃を被っている。だが、大きなものを失い、未来の再生に向け立ち上ろうとするとき、この不思議な力が鮮やかな虹のように希望をもたらし、大きな力を発揮するのだ。

(編集長・増田 剛)

社員の満足度も大事、加賀屋・小田女将が語る(おもてなし研究会)

加賀屋の小田真弓女将が講演
加賀屋の小田真弓女将が講演

 観光庁と日本観光振興協会は2月7日、東京都内で地域の観光協会などの現状や求められる役割について議論する「観光おもてなし研究会」を開いた。2回目となる同研究会では、「おもてなし」を理解するために、石川県和倉温泉の加賀屋の小田真弓女将を招き、小田女将が「お客様の満足度だけでなく社員の満足度も大事」など加賀屋流のおもてなしについて講演した。

 小田女将は「お客様のニーズは多様化しており、これといった100点満点のおもてなしはない」と語り、顧客のニーズを読み取ることや、時代・年齢・国籍などにあわせたおもてなしをするために事前に勉強しておくことなどを述べた。また、「笑顔が出るような職場作りのためには、お客様の満足度だけでなく、社員の満足度も大事だ」など、社員への気配りがおもてなしにつながることも強調した。

 講演についての意見交換で、新たに研究会のメンバーに加わった新潟観光カリスマでフリーバスガイドのなぐも友美氏が、顧客のニーズを読み取る難しさについて小田女将に質問。小田女将は利用客の動きやコミュニケーションのなかから顧客のニーズを探すことなどを挙げた。また臨機応変に即応することも強調した。同メンバーで日中コミュニケーション取締役の可越氏は小田女将の講演から「おもてなしとは、喜んでもらうためにいかに心を込めるかということではないか。文化や宗教が違っても一生懸命な姿が伝われば相手は感動してくれる」と意見を述べた。

 同研究会委員長で首都大学東京都市環境学研究科観光科学域特任准教授の矢ケ崎紀子氏は総括として、「観光に携わる人自身がやりがいをもって仕事ができているか」など課題を挙げ、事業者の仕事に対する満足度や、利用客について勉強をすることの重要性を確認した。

 3月はおもてなしの総論、4月はテーマを絞った討議を行っていく予定。同研究会の模様は第1回と同様に動画配信サイトのニコニコチャンネルで生中継された。