11月の宿泊業倒産は4件 2年ぶり、通期は100件下回る見通し(東京商工リサーチ調べ)

2021年12月13日(月) 配信

東京商工リサーチはこのほど、2021年11月の宿泊業倒産を発表した

 東京商工リサーチがこのほど発表した2021年11月の宿泊業倒産は4件(前年同月は8件)だった。このうち新型コロナ関連倒産は3件となった。3カ月連続で前年同期を下回った。21年1~11月の倒産件数は累計82件で、前年同期の113件を下回る。コロナ禍前の19年通期(1~12月、75件)は上回ったが、同社は、「21年通期は2年ぶりに100件を下回る見込みだ」とした。

 

 11月の宿泊業倒産の負債総額は6億900万円(前年同月比61・7%減)で、2カ月ぶりに前年同月を下回った。また、負債5億円以上の倒産が発生しなかった。

 今年1~10月の累計負債総額は1393億6200万円。7月に発生した東京商事の負債総額(負債1004億8300万円)が全体を押し上げた。

 原因別として、販売不振がすべてを占めた。形態別ではすべて破産。地区別では関東2件、東北と中国が各1件発生した。

 おもな倒産事例として、「いいで旅館」(山形県・飯豊町)が11月18日(木)、山形地裁米沢支部から破産開始決定を受けた。負債は約3億8000万円。

 同社は、1954年創業の「がまの湯温泉飯豊旅館」を運営し、地元食材を用いた郷土料理や、自家製「がまのどぶろく」などが人気でリピーターを生むなど、最盛期の2002年12月期には売上高4億4000万円を計上していた。16年には旅行新聞新社が主催する「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」の特別賞「日本の小宿」に選ばれた。

 しかし、近年は慢性的な赤字体質に陥り、新型コロナ感染拡大の影響で業績が悪化。21年5月頃から休業していたが、事業再開の目途が立たず、今回の措置となった。

 広島県三原市の「本郷ホテル」は、JR本郷駅前の「本郷グランドホテル」を経営し、96年6月期には売上高8500万円を計上していた。2018年7月西日本豪雨災害での浸水被害や、20年からの新型コロナ感染拡大の影響による利用客減少などで、昨年末には事業を停止していた。今年の10月22日(金)に広島地裁尾道支部から破産手続き開始決定を受けた。負債は約1億2000万円。

 今年11月の旅行業倒産は4件(前年同月は2件)発生し、2カ月ぶりに前年同月を上回った。このうち新型コロナ関連倒産は2件。

 21年1~11月の累計倒産件数は29件(前年同期26件)で、前年通期の26件を既に上回った。また、このうち新型コロナ関連倒産は累計24件にのぼり、旅行業倒産の8割を占めた。

 負債総額は9億9900万円で、2カ月ぶりに前年同月を上回った。

JTBなど、新潟・雪国観光圏内でMaaS実証実験始める

2021年12月13日(月)配信

まつだい・松之山周遊・AI乗合タクシーのチラシ

 JTB(山北栄二郎社長)は12月9日(木)から、新潟県南魚沼市・湯沢町・十日町エリアで、「究極の雪国ものがたり~絶景と薬湯とにいがた清酒を愉しむ旅」の交通実証実験を始めた。同エリアの観光地域づくり法人「雪国観光圏」をはじめ、越後湯沢温泉観光協会、松之山温泉合同会社まんまと連携して実施する。

 地域ならではの雪道での運転や2次交通の課題に対して、新ルートバスやAI乗り合いタクシーの交通手段を用意。スマートフォンアプリ1つで予約・決済できる「JTB MaaS API Gateway」を活用し、越後湯沢温泉から宿・スキー場へは無料のシャトルバスも運行する。

 また、同エリアに点在する魅力的な観光スポットを知ってもらうため、アプリに観光レコメンド機能も順次実装し、域内周遊を促す見通しだ。

 新ルートバスは、越後湯沢駅から道の駅南魚沼や六日町温泉を巡る「魚沼雪里ライナー」と、越後湯沢駅から清津峡や松之山温泉を巡る「雪国豪雪ライナー」を運行する。一方のタクシーは、まつだい駅から松之山エリアに設定された乗降ポイントを周遊運行するタクシーと、AIを活用したタクシー配車サービスを利用するAI乗り合いタクシーを利用できる。

 運行期間はどれも来年2月13日(日)までだが、運休日はそれぞれ異なるため「雪国観光圏 究極の雪国ものがたり」特設サイトで要事前確認。旅行代金は500円から。

【会員募集中】観光の力で東北を元気に 「TOHOKU Fan Club」を設立 東北観光推進機構

2021年12月13日(月)配信

会員登録(無料)は「TOHOKU Fan Club」の公式ホームページから

 東北観光推進機構はこのほど、一般を対象とした会員組織「TOHOKU Fan Club」を設立した。「観光の力で東北を元気に!」する活動を、機構と一緒に応援するファン組織で、登録は無料。現在、会員を募集している。

 会員サービスとして、東北のおすすめ情報やお得な情報をメールや会員サイトでいち早く届けるほか、ギフトカードなどと交換できるポイントが貯まるアンケートも実施する。ポイントは、東日本大震災への復興支援やSDGsの取り組みを支援する団体へ寄付することもできる。

 「TOHOKU Fan Club」の設立を記念して、新規入会キャンペーンも企画している。新規会員登録をしてアンケートに答えるともれなく20ポイント(1ポイント=1円相当)がもらえるほか、抽選で100人にAmazonギフト券(1000円分)をプレゼントする。
 
 東北観光推進機構では、東北観光の目指す姿として「世界が訪れたくなる『東北(TOHOKU)』、住みたくなる『東北(TOHOKU)』」をビジョンに掲げ活動している。東北に訪れたことがある人も、訪れたことがない人も、東北に住んでいる人も、住んでいない人も、東北を元気にする活動を一緒に応援してくれるファンを募集している。

ラグーナテンボス、イルミ開催中 中部で最大級ランタンも

2021年12月13日(月) 配信

ランタン「光のラグーン」のイメージ

 ラグーナテンボス(小寺康弘社長、愛知県蒲郡市)は2022年2月28日(月)まで、イルミネーションとマッピングショー、クリスマスマーケット、エンターテイメントショーなどを行う「ラグーナ イルミネーション」を開催している。

 今年は、中部エリアでは最大級のスケールでランタンオブジェがラグナシアに新たに登場。超巨大ランタン「光のラグーン」では、サンゴ礁や海の生き物などを出現させ、カラフルな光のファンタジーの世界観を演出する。さらに、100 万球を超えるイルミネーションアーチ「幸運のレインボーアーチ」なども設置している。

 12月24日(金)~26日(日)には、花火イベント「ミスティノーチェ」も開く。同イベントは花火をはじめ、噴水や映像などを組み合わせたショーとなる。

JTBなど、沖縄県で実証実験 レンタカーで地域貢献へ

2021年12月13日(月) 配信

運転の注意喚起と、安全運転をした人に賞品を進呈する

 JTBは、トヨタ・モビリティ基金、矢崎総業、トヨタレンタリース沖縄と交通事故削減と地域活性化を目標に事業連携を開始。12月9日(木)から沖縄県でレンタカーの安全運転を心掛けた優良ドライバーに対し、那覇空港で使えるクーポンを渡し、地域貢献できる仕組みづくりの実証実験を始めた。

 レンタカーでの観光が主流となる沖縄県や北海道はコロナ禍以前、国内外からの旅行客によるレンタカー運転中の事故、交通渋滞が地域の課題となっていた。こうした地域課題に対し、業界を越えて4社が連携することで、交通事故の未然防止と地域活性化を目指す。

 同実証実験は、レンタカーの走行データやインタラクティブ動画を活用した注意喚起をはじめ、安全運転を心掛けた利用客に、那覇空港で利用できるクーポンを渡す。地域内消費額の向上を狙うなど、旅先での楽しい安全運転を促進することで地域貢献につなげる新しい仕組み。この実証実験で蓄積したデータは、アフターコロナでの増加が見込まれる訪日外国人客の安全運転支援にも役立てることとしている。

 加えて協力パートナーとして、全日本空輸(ANA)、日本航空(JAL)、ANA FESTA、JALUXエアポートと連携。車載の運転診断アプリで安全運転度合いを診断し、この評価による抽選で協力パートナーの往復航空券や商品、全員にクーポンを渡す。

 実証実験の対象エリアは沖縄県本島、対象者はトヨタレンタリース沖縄那覇空港店でインタラクティブ動画の視聴者と、同店で実証実験に同意したレンタカー利用客。期間は2022年5月31日(火)までを予定する。

日本遺産・小松の石文化 工場開放で「ものづくりのまち」PR

2021年12月13日(月)配信

高さ50㍍を超す石壁は圧巻(観音下石切り場)

 石川県小松市の「石文化」は2016年4月、「『珠玉と歩む物語』小松~時の流れの中で磨き上げた石の文化~」として、文化庁から日本遺産認定を受けた。そのストーリーを紐解くと、直径2㍉の碧玉の管玉に1㍉の孔を開けるなど、2300年前から行われてきた加工技術に驚かされる。その技巧は現在にも受け継がれ、九谷焼や繊維、鉄工業などさまざまな産業が盛んだ。今年11月には「日本遺産サミットin小松」開催に合わせ、市内の工場や工房を一般開放する「GEMBAモノヅクリエキスポ」を企画するなど、新しい取り組みも始まっている。石文化を中心に「ものづくりのまち小松」の魅力を紹介する。

【鈴木 克範】

 市内西尾地区にある観音下(かながそ)石切り場は、日本遺産認定を受けた「石文化」を代表する構成文化財だ。ここで採れる黄色みがかった日華石(にっかせき)は建築用石材として重宝され、国会議事堂にも使われている。現在、石切り場としての役目は終えたが、露天掘りによってできた高さ50㍍を超える石壁は圧巻。英国の女性アーティスト、ジュリーブルックさんの作品「上昇」も展示されている。日本遺産サミットではサテライト会場となり、ボランティアガイドによる解説も行われた。

 石川県を代表する伝統工芸・九谷焼も石文化を語るうえで、欠かせない。その原料となる「花坂陶石」は小松市が産地だ。江戸後期に興った「再興九谷」の地・若杉地区の製土所をリニューアルした九谷セラミック・ラボラトリー(通称:CERABO KUTANI)は、ギャラリーや体験工房も加わり、産業観光の拠点として蘇った。採掘した石が、粉砕され陶土になる工程を間近で見学できる。建築家・隈研吾氏設計の建物も必見だ。入館料は一般300円、学生(高校生以下)150円。

 九谷焼の陶土ができるまでを見学したら、色鮮やかな絵付けの現場も訪ねたい。その1つ徳田八十吉陶房は、「GEMBAモノヅクリエキスポ」の工房ツアーでも、満員御礼になるほどの人気だ。ここで創作に取り組むのは陶芸家の四代徳田八十吉さん。父であり人間国宝の三代徳田八十吉氏が生み出した、釉薬の調合による色の濃淡で作品を仕上げる技法「彩釉(さいゆう)」を受け継ぎ、女性ならではの感性を生かした作品を発表している。一方、ユーチューブで「九谷やそちゃんねる」を開設し、動画で九谷の魅力を発信するなど、作家とは別の一面も。「創作の現場を身近に感じてもらいたい」という。

陶房で九谷の魅力を語る四代徳田八十吉さん

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 「GEMBAモノヅクリエキスポ」は市や事業所などでつくる「こまつものづくり未来塾」が、小松ならではの魅力を発信したいと企画した。期間限定だが、「うちの工場、のぞいてみんけ?」と呼び掛け、普段はなかなか見ることのできないモノづくりの現場を公開した。「今回の取り組みを契機に、ものづくりのまち小松の魅力に触れてもらえる仕組みづくりを進めたい」(市観光交流課)という。

〈観光最前線〉日本全国の魅力に触れて

2021年12月12日(日)配信

美しい景観

 10月から12月にかけて、出張と個人旅行が重なり、日本全国を飛び回った。糠平温泉、八戸、鶴岡、大洗、幸田、雲仙、八女など、移動距離が気になり、宿や主要観光地と家の距離をグーグルマップで調べたら、日本一周と同程度の距離を移動していた。

魅惑の一品

 これだけ短期間に全国を巡ったことで、食や気候、地形などの多様性を明確に比較できたことが最大の収穫。幸田町のように地域を誇りに思う人が輝いている場所が、有名観光地に負けない魅力を生み出していた。また、アニメファンが多く集まる大洗では、作品が地域に利益をもたらす方法を学べた。今回巡った場所の多くは有名観光地ではないけれど、それに負けない輝きがあった。「書を捨てよ 町へ出よう」。本当に、今回は人との出会いが多くの気付きにつながった。

【後藤 文昭】

「観光人文学への遡航(18)」 ホスピタリティを人文学から捉える試み

2021年12月12日(日) 配信

 
 色々あった2021年も終わりを告げつつあるが、中でも東京オリパラのぐだぐだは、日本の劣化を象徴した出来事だった。思えば、東京開催が決定してからすぐエンブレムの盗作問題が持ち上がり、当初からぐだぐだ状態でスタートしていた。

 
 さらに遡って、誘致の段階では、滝川クリステル氏の「お・も・て・な・し」が話題となったが、この演説で「おもてなし」が過大評価をされすぎてしまったように感じる。日本のおもてなしは世界最高だと根拠のない自信を持ってしまい、果たして本当におもてなしが最高のホスピタリティなのかということを検証もせずに神話のように信じ切ってしまっている。

 
 以前このコラムで、カントのホスピタリティ論に触れた。カントのホスピタリティは「心からのおもてなし」「感動のサービス」「博愛精神」といった情緒的な概念ではなく、お互いが友好的な関係を構築する前提として認められるべき権利として捉えられている。

 
 ちなみに、ホスピタリティの語源は、ラテン語のhospesであり、この語から派生した語には、hospitalやhostだけでなく、hostile(敵)という語も出てきていることからも、来訪者との関係性の構築という概念が当初のホスピタリティの持つ意味であった。

 
 カントのホスピタリティ論は、情緒的なおもてなし論を超えて、対人間の関係性の構築であることを私たちに知らせてくれている。この関係性の構築という点からホスピタリティを紐解いていくと、私たち日本人が世界一と信じて疑っていない「おもてなし」が、案外表面的であるということがわかってくる。

 
 22年からは、人文学の分野からホスピタリティを紐解いていく。これを私の次のライフワークにしていくと決めた。というのが、このコロナ禍で多くの観光従事者がこの世界を去った。去った人々は、機会があれば戻りたいと思っている人もいるし、もう戻りたくないと思っている人もいる。戻りたくないと思っている人はホスピタリティ疲れを訴えている。

 
 学界では、肉体労働、頭脳労働に加えて感情労働という第3の労働形態として、感情をすり減らして稼いでいるという見方をしている学説がある。ただ、本当に観光従事者はみな感情をすり減らしているのだろうか。最前線を知らない学者ほどこの学説を支持する。しかし、最前線では、まったくすり減らすことなく、この仕事を天職としてまっとうしている人も多く存在する。

 
 観光産業が人の感情をすり減らすようでは、コロナ禍が収束しても人は戻ってこない。すり減らさない生き方とはどういうものかを人文学の見地から検証する。コロナ禍が収まり、多くの笑顔であふれる観光地が復活するためにも、観光従事者の心のありようを今のうちに考えておきたい。

 

コラムニスト紹介 

島川 崇 氏

神奈川大学国際日本学部・教授 島川 崇 氏

1970年愛媛県松山市生まれ。国際基督教大学卒。日本航空株式会社、財団法人松下政経塾、ロンドンメトロポリタン大学院MBA(Tourism & Hospitality)修了。韓国観光公社ソウル本社日本部客員研究員、株式会社日本総合研究所、東北福祉大学総合マネジメント学部、東洋大学国際観光学部国際観光学科長・教授を経て、神奈川大学国際日本学部教授。日本国際観光学会会長。教員の傍ら、PHP総合研究所リサーチフェロー、藤沢市観光アドバイザー等を歴任。東京工業大学大学院情報理工学研究科博士後期課程満期退学。

〈旬刊旅行新聞12月11・21日合併号コラム〉2021年の観光業界を振り返る――「日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー」創設

2021年12月11日(土) 配信

 
 2021年の観光業界は、20年に引き続き、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた。本紙6~7面で「見出しと写真で振り返る2021年の観光業界」を掲載しているので、ぜひ紙面を開いてみてほしい。

 
 振り返ってみると、緊急事態宣言に明け暮れた。東京都では、新年早々の1月8日から3月21日まで2回目の緊急事態宣言が発令された。

 
 3月22日~4月11日まで束の間、解除されたが、ゴールデンウイークを目前に、4月12~24日までまん延防止等重点措置が適用され、翌25日から6月20日まで、3回目となる長い緊急事態宣言下の生活が続いた。

 
 その後、6月21日~7月11日までまん延防止等重点措置が適用。翌12日~9月30日まで4回目の緊急事態宣言が出された。

 
 1年延長された東京オリンピックは緊急事態宣言下での開催となった。「開催するのか、否か」、「有観客か無観客か」で結論が直前まで先送りされた。IOC(国際オリンピック委員会)など国内外のさまざまなしがらみや、批判的な声に思い切った決断ができず、不完全燃焼のまま幕を閉じた印象だった。

 

 
 緊急事態宣言が全面的に解除された10月以降は、新型コロナウイルスの感染者数は激減した。「どうして急速に減少したのか」専門家ですら明確な答えが出ないなか、現時点では感染者数は少ないままだ。

 
 一方で、「このままコロナが終息してほしい」という人々の願いが実を結ぶかに思われた11月に、新たな変異株「オミクロン株」が南アフリカで見つかった。日本政府は水際対策措置の強化策として、11月30日以降、外国人の新規入国を原則停止している。

 

 
 こうしてみると、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の繰り返しで、2年連続でコロナに翻弄され続けたが、コロナ禍でもできることはやった。

 
 12月1日には瀬戸川礼子氏が記した書籍「おもてなしの原点 女将さんのこころ その三」を出版した。55人の女将の生き方や考え方がぎっしりと詰まっており、多くの観光業界の方々に読んでほしい1冊だ。

 
 また、旅行新聞新社はこのほど「日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー」を創設した。日々の取材活動を通じて創意工夫の見られる取り組みを独自に選び、毎年12月に表彰する試みだ。

 
 2021年のグランプリには「リーガロイヤルホテル東京」を選出した。コロナ禍であったが、同ホテルはドラマ撮影などロケ誘致に力を入れるとともに、撮影時の独自ガイドラインを作成するなど、窮地を逆手に取った取り組みで大きな成果を上げた。

 
 優秀賞には「札幌観光バス」と「SUWAガラスの里」の2社を選んだ。

 
 「札幌観光バス」は、乗務員と事務職が1つの「チーム」をつくり、「バスガイド付き貸切バスの楽しさを伝え、北海道のファンになってもらう」ことを目的に、アイデア溢れる取り組みを継続している。

 
 「SUWAガラスの里」は、感染症拡大で作品の発表機会が激減するなか、展示販売スペース「アーティストスクエア」を新設し、地域交流や活性化にも貢献した。

       

 
 厳しい経営環境でも観光業界には、アイデアや知恵を出して頑張っている人たちがいる。日々の取材で見つけていきたいと思う。

 

(編集長・増田 剛)

「日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー」創設 2021 グランプリは「リーガロイヤルホテル東京」 優秀賞「札幌観光バス」、「SUWAガラスの里」

2021年12月11日(土) 配信

【グランプリ】リーガロイヤルホテル東京 ガーデンラウンジ

 旅行新聞新社(石井貞德社長)は12月11日(土)、取材活動などを通じて見聞きした観光業界の取り組みの中から、創意工夫の見られるものを独自に選び、表彰する「日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー」を創設した。第1回となる2021年のグランプリは感染症拡大を受け営業休止を余儀なくされた館内施設で、ドラマ撮影などのロケ誘致に従来以上に力を入れ、大きな成果を上げた「リーガロイヤルホテル東京」を選んだ。優秀賞には「札幌観光バス」と、「SUWAガラスの里」を選出した。

 
 栄えある日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー2021のグランプリに輝いた「リーガロイヤルホテル東京」(中川智子社長、東京都新宿区)は、新型コロナウイルス感染症の流行拡大により、営業ができなくなったバーやレストランを、撮影用に積極的に貸し出すだけではなく、ロケ用に独自のガイドラインも作成。20年度のロケ誘致での収益は約2000万円にも上った。
 
 また、ホテル内にある「中国料理 皇家龍鳳」が某バラエティ番組のロケに使われた際に、番組で提供した料理の一部でコース料理を仕立て提供したところ、大きな反響があったという。ロケ誘致に取り組む他の施設との連携も積極的に進め、観光業界全体の活性化や、新たな客層の開拓にも取り組んでいる点を高く評価した。
 

【優秀賞】札幌観光バス YouTubeちゃんねる「なまらさっかんさん」

 優秀賞の「札幌観光バス」(福村泰司社長、北海道札幌市)は20年10月、社内組織に新しい部署「ファンづくり課」を設置。乗務員と事務職が1つの「チーム」となり、旅行会社の先にいる消費者に向けて、「バスガイド付き貸切バス旅行の楽しさを伝え、北海道のファンになってもらう」取り組みを行っている。
 
 公式ユーチューブちゃんねる「なまらさっかんさん」の運営や、オンラインバスツアーの開催、大型バスの運転体験日帰りバス旅行、バスガイドによる音声番組(Podcast)配信など、さまざまな活動を展開している。
 

【優秀賞】SUWAガラスの里「アーティストスクエア」

 同じく優秀賞の「SUWAガラスの里」(岩波太佐衛門尚宏社長、長野県諏訪市)は、コロナ禍で発表する機会がなくなってしまったアーティストや商店を救済する目的で、新しい発表・販売の場を提供して地域活性化に貢献している。「アーティストスクエア」は50人のクラフト作家の作品を館内に展示し、アーティスト1人あたり90㌢四方のブースを用意。ガラスに限らない作品を広く公募して、展示販売の場とした。
 
 アーティストとの出会いの場としても、新しい可能性を提案している。「SUWAレイクマルシェ」はSUWAガラスの里の敷地を開放して、地域の人々にフリーマーケット会場を提供。コロナ禍では地元の人々の貴重な交流の場となった。

22年1月14日に 「100選」会場で表彰 

 

 日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー2021のグランプリ(1社)と、優秀賞の受賞者(2社)は、22年1月14日に京王プラザホテル(東京都新宿区)で開催する旅行新聞新社主催「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」などの表彰式会場で表彰する。受賞者の取り組みについては、順次、旬刊旅行新聞紙上で詳しく紹介していく。
 なお、「日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー2022」は、来年12月1日に発表する予定。