入会金改定と定款変更、新副会長に國谷氏(栃木県)、ANTA

二階俊博会長
二階俊博会長

 全国旅行業協会(二階俊博会長、5387会員)は6月30日、東京都内で2015年度の定時総会を開いた。今年度は入会金改定や定款の一部変更を行った。任期満了にともなう役員改選では二階会長が再任、副会長は國谷一男氏(栃木県)が新任、加藤正明氏(愛知県)と近藤幸二氏(岡山県)が再任した。

 15年度事業計画では昨年に引き続き、近隣諸国との双方向の人的交流促進に取り組むほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックなどのメガイベントに会員が対応できる事業環境作りを進める。入会金の一部変更については第1種旅行業会員の入会金を150万円から225万円に増額することを決めた。定款の一部変更については、役員規定を「幹事2人」から「常任理事10人以内、幹事3人以内」とした。

 来賓の久保成人観光庁長官は「地域創生や国内観光振興には地域に根差した協会の皆様と地域の協力による『地旅』の取り組みが重要になってくる」と期待を述べた。

 懇親会から参加の二階会長は、同協会会員の日中・日韓の交流団参加について改めて感謝の意を述べ、「我われは誰かのために仕事をしているのではないので、皆が協力し、理想の方向に足を進めることが大事。協会の活動が日本の観光政策のなかで大きな役割を果たせるよう、皆で頑張ることを誓う」と力を込めた。

 太田昭宏国土交通大臣は「観光は日本経済の牽引力であると同時に外交関係にも大きく寄与する」と述べ、2千万人時代に向かう観光への一層の協力を求めた。日本旅行業協会(JATA)会長の田川博己会長は「JATAとANTAが協力し、国内・海外・インバウンドの三位一体で訪日客2千万人時代の課題を解決し、新しい時代の観光立国を目指したい」と意気込みを語った。

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【西村明宏国土交通副大臣に聞く】旅館が“一極集中”緩和、雪で広域ルート可能性も

西村明宏国土交通副大臣
西村明宏国土交通副大臣

 西村明宏国土交通副大臣が6月16日に開いた記者会見(7月1日号既報)で、西村副大臣は今年度の「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」で掲げる2千万人時代への備えの強化について説明した。また、同件に関連して、旅館の活用による宿泊施設の都市一極集中緩和やスノーリゾートの広域観光ルート化の可能性などについても意見を述べた。

 インタビュー内容は次のとおり。

 ――宿泊客の都市一極集中問題について。

 東京や大阪など都市部にあるホテル客室の年間稼働率はすでに80%を超えており、集中を地方に広げることが求められているが、そのほかにも都市部の旅館が活用できることにも注目したい。ホテル客室稼働率は東京で84・2%、大阪で86・7%と非常に高いが、旅館になると東京で41・8%、大阪が39・7%となっている。今後は旅館の魅力を発信し、宿泊整備を進めたい。

 ――旅館業法が適用されない「宿泊マッチングサービス」について。

 このまま既成事実として広がっていくのはいかがなものかと思う。衛生面や安全面、防犯面で問題になる可能性もあるため、最低限のラインを設ける必要がある。基準を設けることは宿泊希望者のニーズに合わせた選択肢を作ることにもなる。

 ――「スノーリゾート」をテーマとした広域観光周遊ルート案について。

 スノーリゾート地域の活性化に向けた検討会を立ち上げ、新たな観光ルート化を目指している。外国人に日本での観光目的を聞くと「買い物」と「食べ物」が多いが、それ以外では「スノーリゾート」がトップに出ており、とくに中国・韓国・台湾で人気がある。東京・大阪圏以外の地方の集客の力になる。

 ――東北方面の観光について。

 被災地復興が進み、インフラ整備が整った地域では仕事が無くなり、働き手が離れている。若者は市街地に移ってしまい、沿岸部にはお年寄りが残されている。地域の魅力を発信し、仕事を生みだし、また人々を定着させたい。

15年度管理者試験の受付開始、試験は10月11日(JATA)

 日本旅行業協会(JATA)は7月2日から、2015年度の総合旅行業務取扱管理者試験の受け付けを開始した。JATAは観光庁長官の試験事務代行機関として、10月11日に管理者試験を実施する。

 試験会場は札幌と仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、那覇の8都市で東京は2会場を用意する。試験科目は旅行業法と各種約款、国内旅行実務、海外旅行実務の4科目。受験料は6500円。願書は郵送が8月7日の消印まで、持参は8月3―7日までJATA本部で受け付ける。(http://www.jata-net.or.jp/seminar/)。

17年、オープン予定、飯能にムーミンパーク、「メッツア」

6月30日の会見には「ムーミン」も登場
6月30日の会見には「ムーミン」も登場

 北欧フィンランド生まれの人気キャラクター・ムーミン谷の仲間たちをモチーフとしたテーマパーク「Metsa(メッツア)」が、埼玉県飯能市に誕生することが6月30日、東京都内の会見で発表された。ムーミンの作者トーベ・ヤンソンの故郷フィンランドにある「ムーミンワールド」を除き、「ムーミン」のテーマパークができるのは世界初。2017年の早い時期にオープン予定で、宮沢湖の湖畔や周辺の森林を活用し、ムーミン谷の世界観を再現する。

 同パークを開設するフィンテックグローバルの玉井信光社長は「森林と人とのより豊かな関係を築く、まさにムーミン谷の世界を体現するのに相応しい土地。熱心な誘致を受けた飯能市と地方創生に関する基本協定を締結し、今後も連携協力しながら展開していきたい」と語る。パークは、東京ドーム約4個分の広さがある宮沢湖周辺の土地約18万7千平方メートルを西武鉄道から6億円で購入して展開。施設名称「メッツア」はフィンランド語で「森」を意味し、美術館、リゾート、公園、レジャー施設など、あらゆる要素が融合した今までにない施設を目指す。

2017年オープン予定のムーミンテーマパーク(埼玉県飯能市)
2017年オープン予定のムーミンテーマパーク(埼玉県飯能市)

8月15日-17日開催「三島夏まつり」をPR(静岡県三島市)

名物「みしまコロッケ」も無料配布
名物「みしまコロッケ」も無料配布し、夏の三島をPR

 静岡県の三島市観光協会は7月14日、静岡県東京案内所(東京・千代田区)にて、8月15日から17日に開かれる「三島夏まつり」のPRと、箱根西麓三島野菜等の物産販売を行った。

 当日は観光パンフレットと、三島馬鈴薯を使った名物の「みしまコロッケ」を先着80人に無料配布。夏の行楽シーズンに向けて誘客をアピールした。

 「三島夏まつり」は三島市の夏を彩る一大イベントで、三嶋大社の例大祭に合わせて毎年8月15日から17日に行われる。期間中は三嶋大社から三島広小路駅を中心に、山車やシャギリ、郷土芸能農兵節やみしまサンバパレードなど、さまざまな行事が繰り広げられる。

 8月16日には、メインイベント「頼朝公旗挙げ行列」が行われ、今年は源頼朝役に俳優の筧利夫さんが出演。平治の乱で伊豆に流された頼朝が源氏の再興を三嶋大社に祈願したのち挙兵し、全国を平定した故事に由来し、市民も参加し当時を再現する勇壮なパレードは圧巻だ。17日のパレードを紹介するMCには、ドラえもんの声で知られる声優の水田わさびさんが登場する。

書籍『女将さんのこころ その二』(瀬戸川 礼子著)発売!

「おかみさんのこころ-その二」表紙
「おかみさんのこころ-その二」表紙

旅行新聞HPで申込受付中

 さて、大変お待たせいたしましたが、旅行新聞新社はこのたび目出度く書籍「おもてなしの原点 女将さんのこころ その二」(瀬戸川礼子著)を発刊することができました。ハードカバー(240ページ)の緑色の表紙で、「その一」の赤色と合わせて素敵な色となっています。

 本書は、旅行新聞新社のホームページからも販売しております。

 定 価:本体1800円(税込8%で1944円)送料実費
 販売元:(株)旅行新聞新社

お申込みは随時受付中 問い合わせ=電話:03(3834)2718。

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詳細ページ

<内容紹介>
全国55人の女将さんが顔写真とともに4ページずつ登場します。
旅館の紹介に留まらず、女将さん個人にスポットライトを当て、
一人の女性としての考え方や生き方までを紹介。
普段、あまり聞くことのない女将さんのこころの声は、
志、勇気、明るさ、覚悟、哲学、教育、文化、地域貢献など
多方面の気付きを与えてくれます。
一人一人読み切りで読みやすく、プレゼントにも喜ばれています。
なお本書は、『旬刊旅行新聞』で2000年から連載中の
コラム「女将のこえ」を加筆・修正し、最新の内容としてまとめたものです。
『女将さんのこころ その一』も好評発売中です。

55人の女将さんは次の方々です。

◆北海道・東北
・須賀 紀子さん(滝乃家)北海道登別温泉・・・「女将は半襟であれ」
・三浦 公子さん(ホテル三浦華園)北海道滝川市・・・「背負える荷物」
・浅利 スエさん(ホテル網走湖荘)北海道網走湖温泉・・・「雪国に魅せられて」
・林 晶子さん(四季亭)岩手県繋温泉・・・「未来に繋がる目」
・杉澤 知恵さん(ホテルグランメール山海荘)青森県鯵ヶ沢温泉・・・「観光を盛り上げる使命」
・西﨑 貴美子さん(黄金崎不老ふ死温泉)青森県下黄金崎温泉・・・「半分漁師、半分女将」
・佐藤 洋詩恵さん(日本の宿 古窯)山形県かみのやま温泉・・・「ハンサムウーマン」
・小松 由美子さん(小松館好風亭)宮城県松島温泉・・・「好風の地で思い新たに」
・一條 千賀子さん(湯主一條)宮城県鎌先温泉・・・「一條の森へようこそ」
・若松 佐代子さん(雨情の宿 新つた)福島県いわき湯本温泉・・・「明るく楽しく元気に」
・渡邉 和子さん(八幡屋)福島県母畑温泉・・・「社員第一主義」
・渡辺 いづみさん(山水荘)福島県土湯温泉・・・「上も見ず、下も見ず」
◆関東
・田村 久美子さん(四万やまぐち館)群馬県四万温泉・・・「女将を生きる」
・櫻井 悠子さん(草津温泉ホテル櫻井)群馬県草津温泉・・・「きっとこれから」
・宮嵜 正子さん(つつじ亭)群馬県草津温泉・・・「ないないづくしの宿」
・吉田 淑江さん(満ちてくる心の宿 吉夢)千葉県小湊温泉・・・「天の命ずるままに」
・桐谷 宣子さん(蓬莱屋)千葉県鴨川市・・・「みんなで楽しく笑売」
・高尾 葉子さん(季粋の宿 紋屋)千葉県南房総市・・・「赤ちゃんと泊まれる宿」
・望月 安代さん(助六の宿貞千代)東京都浅草・・・「浅草で江戸情緒を」
・中村 典子さん(七沢荘)神奈川県七沢温泉・・・「ゼロ磁場の恵み」
・太田 成美さん(四季の湯座敷 武蔵野別館)神奈川県箱根温泉・・・「風を送り続ける」
◆甲信越
・岡 マキ子さん(柳屋)山梨県湯村温泉・・・「まだまだともう少し」
・渡辺 利子さん(若草の宿 丸栄)山梨県富士河口湖温泉・・・「お客さまに育てられて」
・湯本 英里さん(湯本旅館)長野県渋温泉・・・「病気に感謝して」
・山崎 圭子さん(ホテル玉之湯)長野県浅間温泉・・・「ふれあいのバリアフリー」
・富岡 洋子さん(中棚荘)長野県中棚温泉・・・「体験の贈り物」
・荒木 弥栄子さん(環翠楼)新潟県村杉温泉・・・「みんなの厨房サロン」
・永松 祥子さん(湯本舘)新潟県今板温泉・・・「あったかい宿を一緒に」
・飯田 美紀子さん(白玉の湯 華鳳)新潟県月岡温泉・・・「たとえ変われても」
・井口 真奈美さん(HATAGO井仙)新潟県湯沢温泉・・・「人と宿を育てる」
◆東海・中部
・山口 恵子さん(招福の宿ゑびすや)静岡県伊豆長岡温泉・・・「おかえりなさい」
・加藤 典子さん(ホテル天遊)静岡県西伊豆堂ヶ島温泉・・・「すべては心が決める」
・清水 由子さん(湊のやど汀家)静岡県黒潮温泉・・・「淡々と二十年後も」
・住 育乃さん(高山観光ホテル)岐阜県飛騨高山温泉・・・「飛騨高山おもてなでしこ」
・日下部 つや子(ホテルくさかべアルメリア)岐阜県下呂温泉・・・「喜びを表現する使命」
・長坂 正惠さん(しょうげつ)岐阜県下呂温泉・・・「常に止まらずに」
・加藤 慎子さん(はづ別館)愛知県湯谷温泉・・・「自然なバトンタッチ」
・前川 裕子さん(鯛屋)三重県松阪市・・・「導かれた女将の道」
◆北陸
・多田 佐永子さん(多田屋)石川県和倉温泉・・・「和顔施でおもてなし」
・松崎 富志永さん(やさしさの宿まつさき)石川県辰口温泉・・・「情けは人のためならず」
・奥村 智代さん(べにや)福井県あわら温泉・・・「競争よりも共創」
・山岸 和恵さん(四季彩の宿花椿)福井県小浜市・・・「働く人を大切に」
・齊藤 美華子さん(松風樓)富山県南砺市・・・「あたわりをいただいて」
◆近畿・四国
・岡本 尚子さん(不死王閣)大阪府伏尾温泉・・・「主婦感覚を生かして」
・堀部 寛子さん(炭屋)京都府中京区・・・「茶の湯のこころ」
・奥村 純子さん(松園荘保津川亭)京都府湯の花温泉・・・「兼愛交利」
・當谷 泰子さん(銀水荘兆楽)兵庫県有馬温泉・・・「いつか言われたい言葉」
・菊池 博子さん(あづまや)和歌山県湯の峰温泉・・・「生きる原点・熊野」
・岩村 玉希さん(岩惣)広島県宮島・・・「もみじ谷にて」
・峯平 滋子さん(湯郷グランドホテル)岡山県湯郷温泉・・・「『また来るね』のために」
◆九州・沖縄
・大河内 はるみさん(洋々閣)佐賀県唐津市・・・「唐津の海と共に」
・坂本 悦子さん(料亭御宿 坂本屋)長崎県長崎市・・・「旅館は精神の支え」
・桑野 和泉さん(由布院 玉の湯)大分県由布院温泉・・・「由布院があってこそ」
・後藤 辰子さん(旅館山河)熊本県黒川温泉・・・「七回生まれ変わったら」
・国吉 佳奈子さん(リーフイン国吉)沖縄県渡嘉敷島・・・「ケラマブルーに抱かれて」

著者について
瀬戸川礼子 (せとがわ・れいこ)
ジャーナリスト、中小企業診断士。業界誌 『週刊ホテルレストラン』 の副編集長を経て2000年に独立。旅館に限らずあらゆる業種業態の企業に赴き、2500人以上の経営者、それ以上の社員に出会ってきた。その過程で、「成功にはコツがある」と気付く。これを広めるため、取材、講演、コンサルタント活動を行なっている。法政大学専門職大学院卒(経営学修士号)。
平成24~25年、経済産業省「おもてなし経営企業選」 選考委員。温泉ソムリエ。
著書に、『グレート スモール カンパニー』(現代書林)、『顧客満足度を生み出す仕組み』(同友館)などがある。

No.406 対談「和食文化を語る」、道場六三郎氏×吉本加代子女将

対談「和食文化を語る」
道場六三郎氏×吉本加代子女将

 7月14日、石川県金沢市のホテル日航金沢で「全国旅館おかみの集い―第26回全国女将サミット2015金沢」が開かれる。今回のテーマは「あなたに逢いたい~人つどい 人うるおす、魅力ある宿を求めて」。開催を前に、石川県・山中温泉の出身で、日本を代表する日本料理の料理人・道場六三郎氏と同温泉地の旅館の女将で、道場氏と長年の交流がある今大会の吉本加代子運営委員長(お花見久兵衛女将)の対談が実現。和食文化の素晴らしさなどを語り合った。
【司会=旅行新聞新社社長・石井 貞德、構成=飯塚 小牧】

 

 

 ――現在の和食について、どうご覧になっていますか。

■道場:基礎は揺るぎませんが、当然、時代の変遷はあります。食材も海外からさまざまなものが入ってきたので、それから随分と変わりました。また、私は料理の鉄人以来、フレンチ、イタリアン、中華の料理人との交流が深くなりました。例えば、異ジャンルの料理人の方々と話をしていると、料理の手法も食材の種類も、新しい知識が広がって楽しいのです。今は垣根を飛び越え「地球の料理」というか「宇宙から見た料理」のように変わってきたのではないでしょうか。

 今は食事のスタイルがテーブルになってきているので、お膳の上で映える器とテーブルで映える器も変わってきています。そういう点でも料理は変わります。でも私はこれも、自然の成り行きでいいのではないかと思います。

 一方で、昔からある白和えや、地で採れたワラビの浸しなど、ホッとする一品は、今のお客様にも喜んで頂けます。こうしたものを献立の合いの手として挟むと変化に富みますし、「これ昔、おばあちゃんが作ってくれた」と懐かしい思い出話にもつながります。また、今は食事の前に野菜を食べるといいと報道されていますが、こうしたテレビの情報などにも影響されます。ですから、「不易流行」で変わらないものは変わらず、そのなかで時代の流れに乗るということです。流れとケンカしても勝てないので、流れをよく見ながら、変えるべきところは変えていかなければなりません。

■吉本:一昔前は、団体の宴会料理ばかりだった旅館の料理も変わってきました。

■道場:昔は茶碗蒸しと天ぷら、コンロが三種の神器でしたね。

■吉本:そうです。お酌して回ってきて、冷たくなった天ぷらを食べなくてはならないような状態でも、それが旅館の料理というような時代がありました。…

 

※ 詳細は本紙1593号または7月16日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

不安定化の中で観光は―― ― 世界の動きと連動して刻一刻と変化

 JTBが発表した今年の夏休み(7月15日―8月31日)の旅行動向によると、国内旅行は前年同期比0・2%増の7561万人、海外旅行は同1・9%減の255万人。総旅行人数は同0・1%増で過去2番目の7816万人と、好調に推移すると予想している。

 また、9月19―23日には5連休(シルバーウイーク)も控えている。期間中の予約状況は、ルックJTBは同80%増、エースJTB(首都圏発)は同188%増と、夏休みが終わった後の予約も絶好調だ。JTBは雇用環境の好転や、夏期ボーナスの増加などが好調の要因と見ており、国内旅行は今年4月から順次全国で販売された「ふるさと旅行券(プレミアム付き旅行券)」が各地で売り切れになるなど、地域への旅行需要喚起に貢献していることも挙げる。

 方面別では、北陸新幹線効果で依然と北陸が好調のほか、16年5月のサミット開催が決まった伊勢志摩への注目も高まっている。旅の目的では「帰省、離れて住む家族と過ごす」「温泉でゆっくりする」などが多いという。一方、円安傾向に加え、国際情勢や感染症への不安から、海外旅行は昨年よりも減少する見通しだ。ハワイや台湾への人気は継続しており、航空路線の拡大でオーストラリアも増加が見込まれている。

 しかし、最近の国際情勢を見ると、さまざまな不安を抱いてしまう。ギリシャのユーロ離脱危機や、急落する中国の株式市場、ロシア・ウクライナ問題、南沙諸島周辺での緊張関係、過激派組織「イスラム国」を巡る動きなど、世界は不安定な状態にあり、強いストレスを感じ合っている。それらすべてがつながっており、何か一つの些細な出来事や、“思い違い”がきっかけで、国際秩序が一気に瓦解してしまう脆弱さを感じる。MARSなど感染症の拡大も人々を無意識のうちにも緊張させている。

 国内を見渡しても、火山活動の活発化により、観光客が著しく減少しているエリアが点在している。また、新幹線火災事件など、好調が予想される国内旅行にも水を差すような事件も発生している。不安定化する時代であるが、どの時代であれ、運命的に出会った時代を逞しく生きていくより仕方がない。

 「観光立国」を目指す日本は、これら世界の動きと複合的に連動しながら、刻一刻と状況が変わりゆくことを認識しなくてはならなくなった。また、これまで以上に観光産業の経済的な存在感や、“地域創生への役割”が大きくなってきたことで、国際政治における「駆け引き」にも大きな影響を与えるようになった。リーディング産業としての責任も求められてくる。

 このほど、「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録が決まり、長年準備を続けてきた地元の方々の喜びも伝えられた。一方で、韓国との間で「強制労働」について対立し、後味の悪さも残した。世界中の人々に地元の優れた自然や文化を知ってもらえるチャンスである「世界遺産登録」だが、政治的な問題に発展してしまうことは本意ではない。比較的近代の登録については、そのようなリスクが含まれていることを、地元民や観光関係者も考えていかなければならない。また、登録によって一時的に大きな注目を浴びるが、その後の永続的なビジョンへの視点が、より大事になってくる。

(編集長・増田 剛)

「国内は順調に推移」、海外旅行は1つの区切り(JATA・田川会長)

田川博己会長
田川博己会長

 日本旅行業協会(JATA)の田川博己会長は7月1日、JATA本部で会見を開き、現況の市場動向や先般、観光庁に提出した政策提言のポイントなどを語った。国内市場については、「各社の数字を見ると順調に推移している」とした。

 国内旅行は、北陸新幹線の開業で東京―大阪間に新たな流れができはじめていることや、9月のシルバーウイークなど好材料があることから「8月、9月は流れがいい」と感触を語った。一方で、東北への送客はまだ十分ではないとし、今後も東北の宿泊旅行拡大に取り組んでいく方針を示した。

 訪日旅行は「フォローの風が吹き、絶好調。円安やビザの緩和、免税拡大など今後も中国を中心に東アジアからの訪日が拡大するだろう」とし、今年は2千万人に近づくと予測。旅行業界としての取り扱いは小さいが、宿泊業や飲食店をはじめ、波及の裾野が広く、日本経済への影響は大きいことを強調した。

 喫緊の課題となっている海外旅行は「6月期の市場動向でも震災後で最も厳しい数字。シルバーウイークを除くと夏も数字が上がっていない」と報告した。現況の数字は円安や社会情勢などの要因が影響しているが、さらに大きな観点から「海外旅行自由化から50年が経ち、1つの区切りがつき始めているのではないか」と持論を展開。「海外旅行をする意味を含めて、次の時代の海外旅行を考えていかなければならない。価値創造にしっかり対応していく」と述べた。

 提言のなかでは、国際化による地方創生やクルーズ施設の整備、休暇制度の普及、安心・安全な旅の推進をポイントにあげ、「今年度は提言の実現に向け着実に前に進んでいく。想定外のことが起きることを予測しながら取り組んでいく」と意気込みを語った。

元気を前面に発信、「東北篇」動画を公開へ、JATA国内CP

 日本旅行業協会(JATA)は7月1日から、国内宿泊拡大キャンペーン「ニッポンを、遊びつくせ!」の2015年度第2弾として、「東北篇」動画を公開した。引き続き、ダンスユニット「WORLD ORDER」を起用し、東北の元気を前面に発信している。

 6月25日の定例会見で国内・訪日旅行推進部の興津泰則部長は「復興支援というよりも、元気な東北を世界に発信していきたい」とし、地元の人との触れ合いを象徴するような各地の人々の笑顔や安心・安全な食にフォーカスした内容に仕上げた。10月には東北メイキング版を配信予定で、来年度も今回とは異なる東北地域の動画を制作する予定だという。

 キャンペーンの動向は、4月から公開している九州篇の動画が、6月20日時点で約5万回再生されたことを報告。また、海外からの視聴が約43%を占め、国別で再生回数が多いのは台湾、米国、タイと訪日旅行が多い国となっており、訪日旅行の促進にもつながっているという。なお、カウントには入っていないが、中国は同国ナンバーワンの動画サイト「ヨーク」で62万回以上再生されている。

 また、同キャンペーンの大きな狙いである若年層への旅行需要喚起については、モバイルからのアクセスが昨年の38%から46%へ増加していることや、フェイスブックサイトのファンのうち、35歳以下が48・9%と、昨年から1万7175人増加していることなどから、訴求の拡大ができてきているとみる。