宿泊販売3500億円目指す、JTB旅ホ連 理事・監事数を削減

福田朋英会長
福田朋英会長

 JTB協定旅館ホテル連盟(福田朋英会長、4093会員)は6月6日、ホテルイースト21東京(江東区東陽)で2012年度通常総会を開き、規約・規定の改定で理事・監事の人数を減らし、常務理事を廃止することなどを決めた。12年度の宿泊販売は3500億円を目指す。

 今年度は「活発な支部活動、元気な地域づくり」をテーマに掲げ、(1)宿泊増売(2)人財育成(3)組織の安定・強化に尽力する。福田会長は「予約の早期化と、地域の魅力づくり、新たなライフスタイルの提案の3方針へ取り組み、宿泊販売目標3500億円へ向け、JTBとともに歩んでいく」と力を込めた。

 11年度の宿泊販売実績は、前年度比1・7%減の3206億円と4年連続目標未達に終わった。旅ホ連名誉会長のJTB田川博己社長は「4―6月累計で前年度比16%のマイナスと第1四半期の落ち込みが非常に大きく、7月以降7カ月連続で前年度実績を上回るも、挽回できなかった。4年連続で目標未達となったのは大変残念」と話した。

JTBの田川博己社長
JTBの田川博己社長

 今年度の目標は同9・0%増の3500億円。14年度の4千億円を目指し、尽力する。また、中期課題検討推進プロジェクトの報告により、規約・規定の改定が議題に上がり、連盟の理事を92人以内から71人以内に、監事を3人から2人に、理事のうち35人を選考していた常務理事を廃止することが決まった。

 田川社長は先日発表したジェットスターを利用した初となるLCC商品の造成について触れ「航空運賃が安くなる分、地域でお金を使ってほしい。地域経済の活性化、地域とともに発展する会社を目指す」と力を込めた。

 そのほか役員改選では、髙橋広行副会長がJTB西日本社長への就任にともない連盟副会長を退任。新たに、JTBグループ本社執行役員で旅行事業本部長の大谷恭久氏が連盟副会長に就任した。

 来年の総会は6月5日に京王プラザホテル(東京都新宿区)で開かれる。

震災前の同月水準に、井手長官「巻き返し簡単ではない」

 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)が発表した4月の訪日外客数推計値は、前年同月比163・9%増の78万800人。震災前の2010年に比べ、4月単月で0・9%減、2012年1―4月累計ベースで4・0%減となり、震災前のレベルまでほぼ回復した。

 各市場の動向をみると、韓国は前年同月比139・1%増の15万2500人。多くのLCC新規就航で座席供給量が拡大するなどプラス要因もあるが、円の高止まりの影響が大きく、震災前の2010年と比べて19・6%減と震災からの回復は鈍い。

 中国は、桜の時期に向けたプロモーション効果などで観桜ツアーへの関心が高まり、2010年比0・8%減、2011年比96・4%増の14万9600人と、4月単月の過去最高に迫る数値となった。

 台湾は、オープンスカイによる新規路線就航や増便で日台間の航空座席供給量が増加し、2010年比26・5%増、2011年比287・7%増の13万8800人と4月単月の過去最高に迫る数値。

 香港は継続的な規模の大きい地震の報道の影響を受け2010年比5・1%減、2011年比665・5%増の4万4200人と10年より少し落ち込んだ。

 そのほかでは、タイが訪日旅行プロモーションの効果で2010年比10・8%増、2011年比409・9%増の4万800人と単月で過去最高を記録。インドも2010年比9・8%増、2011年比29・4%増の6100人と4月として過去最高を記録した。

 井手憲文観光庁長官は5月24日の会見で訪日外客数について「4月単体でみると2010年比で0・9%のマイナスとほぼ震災前の水準に戻っているが、1年の3分の1に当たる1―4月の数字でマイナス4%というのは結構大きく、巻き返しは簡単ではない」とコメント。「訪日の絶対数が一番多い韓国がなかなか回復しないのは厳しい。韓国に対してはこれまでもいろいろな対応を行い、5月にも観光庁でソウルへ行き、旅行会社やクルーズ船へ日本の安全・安心の発信やプロモーションを行ったり、スカイツリーにスポットを当てた韓国TVの番組作りを提案したりもしているが、すぐに回復するものでもないので、楽観的には捉えていない」と厳しい現状認識を語った。

 なお、出国日本人数は、2010年同月比15・0%増、2011年同月比25・1%増の139万5千人。4月として過去最高を記録し、10カ月連続の増加となった。

旅行作家の会、年に一度の大集会開く

高峰温泉の後藤英男社長
高峰温泉の後藤英男社長

 旅行作家の会(代表=野口冬人氏、竹村節子氏)は6月5日、東京・池袋のホテルメトロポリタンで第27回「年に一度の大集会」を開き、80人を超える旅館経営者らが一堂に会した。

 開会のあいさつで野口冬人氏は「昨年は東日本大震災の影響で中止となったが、『今年はぜひ開いてください』という声を全国の皆さんからたくさんいただき、開くことができた。今後も互いに協力しながら旅行業界の発展に尽くしていきたい」と語った。

 講演会では、長野県・高峰高原の「ランプの宿高峰温泉」社長の後藤英男氏が「高峰温泉再建と時代に合わせた経営」について講演した。

 後藤氏は火災により、宿も顧客名簿もすべて焼けてしまった状態から、一通のお客様のお手紙によって勇気づけられ、再建に向かった話や、現在5千人のファンづくりを行っており、「時代や景気に流されない顧客づくりに取り組んでいる」と話した。

女将も壇上にずらり
女将も壇上にずらり

 続いて桜美林大学名誉教授で観光アドバイザーの内藤錦樹氏が「最近の旅行動向」について講演した。内藤氏は「今後、付加価値のある滞在型宿泊旅行が伸びて行くのではないか」と展望したほか、「現在は女性のひとり旅が多く、宿は採算の取れるしくみづくりが必要」と述べた。

移住・交流センター開設、首都圏の受け入れ拠点に

移住・交流センター開設

 長野県は5月25日、東京交通会館(東京都千代田区)の長野県東京観光情報センター内に「長野県移住・交流センター」を開設した。「職」と「住」の相談にワンストップで対応できるよう、移住専門相談員とIターン相談員をほぼ常駐で配置。首都圏における信州・長野への移住・交流の拠点として、移住希望者と市町村や各関係団体を横断的につないでいく。

 長野県観光部の野池明登部長は、開設にあたり「ふるさと回帰の傾向もあるなか、長野には自然や温泉、人情などさまざまな魅力がつまっている。移住に向けた情報を発信し、具体的な要望に応えていきたい」と意気込みを述べた。また移住推進にあたり、本年4月からは県観光部内に移住・交流課を新設。既設の「楽園信州」推進協議会とともに、市町村や民間団体など幅広いネットワークによるフォローを強化していく。

 2010年度、長野県及び市町村の移住相談対応の移住者・Iターン就職者実績は396人(240件)。5年後の17年度に1千人を目指す。

 開設時間は日曜、祝日を除く午前10時から午後6時。

 問い合わせ=電話:03(3214)5655。 

カード型旅行券、旅行業界初の販売

 JTB(田川博己社長)はこのほど、旅行業界では初となる切符の購入や宿泊、国内・海外旅行などの支払いに利用できるカード型旅行券「JTBトラベルギフト」の販売を始めた。取扱目標は2012年度が15億円、16年度が90億円。

 販売金額は1―50万円まで自由に設定可能。有効期限は発行開始日から2年間で有効期限内であれば残高の範囲で繰り返し利用できる。同カード券は、JTBグループ販売店や電話販売での旅行代金の支払いに充当でき、今後はWebサイトで取り扱う旅行商品の支払いにも利用できるようにするという。

 カードデザインは基本デザインとオーダーメイドデザインの2種類。オーダーメイドでは贈るシーンに合わせてカード券面に手持ちの写真やメッセージを添えたオリジナルのデザインで作れる。購入は、JTBグループ店舗をはじめとする全国の販売店や、JTBホームページから。 

中東のファッションショーを開く

吉永 恵(よしなが・めぐみ)さん
吉永 恵 さん
(よしなが・めぐみ)

 7月15日に、東京の日本橋三井ホールで、本格的(500人規模)な中東のファッションショーを開く。実行委員長の吉永恵さんは、19歳の早稲田大学の学生。

 日本にとって中東やアラブは遠い存在。石油以外のイメージはあまりない。加えて、9・11以降はネガティブな印象が強い。吉永さんは、今年2月から約1カ月間かけて、アラビア半島を1周する旅をした。イスラム文化と、もてなしの素晴らしさに魅了され、この感動を何らかの形で日本で発信したいと思った。その切り口として、若者に関心の高いファッションショーを通じて発信しようと考え、即実行に移した。「中東のファッションショーは、日本では初めての開催で、非ムスリム(イスラム教信者)では世界で初めてなんです」と語る。

 ファッションショーはすべて、学生だけで運営。40人のモデルはレッスン中で、衣装はドバイの高級ブランドから直輸入する。当日は、中東と日本の学生による文化をテーマとしたパネルディスカッションも予定している。

 「国家ではなく、草の根レベルの国際交流が目的。日本の若い世代に中東のことを知ってもらえるきっかけになればいい。中東の方々は日本に対してとても友好的なんです」。

 生まれは中国・ハルビンで両親とともに日本国籍を取得。「色々な方々の援助を受けて育った。だから、その恩返しとして国際機関で働くことが夢でした」。でも、今回のイベントを企画してから、「自分がファッションがこんなにも好きだったと改めて気づいた」と話す。「将来はファッションブランドを立ち上げたいですね」。

【増田 剛】

 吉永 恵(よしなが・めぐみ)=早大とWディグリー(双方向学位制度)を行う北京大学に今年8月から学ぶ。「出発前に日本で何らかの形で社会貢献したい」。

“外出楽しむ”きっかけにも、化粧の力でサポート

肌の状態に合った美容ケアを アドバイスする
肌の状態に合った美容ケアを
アドバイスする

<資生堂 ライフクオリティービューティーセンター>

 「旅をすること」は、少なからず「人前に出ること」でもある。ときに疾患や薬の副作用による美容上の悩みは、外出の際の大きなハードルとして我われの前に立ちはだかる。化粧品の製造・販売を行う資生堂(本社・東京都中央区)は2006年、CSR活動の一環として「資生堂ライフクオリティービューティーセンター」を設立。医療機関と連携しながら専門技術を活かし、美容ケアの提供を行ってきた。〝一瞬も一生も美しく〟を掲げサポートを進める、同社の取り組みを取材した。

【森山 聡子】

 

<一人ひとりの肌に対応>

 あざや白斑、やけど、傷あとなど、一般的な化粧品ではカバーが難しい肌悩みは意外に多い。治療が長期に及んだり、完治に至らないケースも少なくない。このような声に応え「資生堂ライフクオリティービューティーセンター」(東京都品川区)では、専門の技術教育を受けたスタッフによるカバーメーキャップやアドバイスを無料で行っている(要事前予約制)。

 医療機関からの紹介や同社ウェブサイトの告知等により、子供から高齢者まで年間約500人が来所。センターでメーキャップを担当する資生堂CSR部の鈴木淑子さんは、「メーキャップで少しでも自分らしさを取り戻せるような提案を心掛けています」と話す。

 センター内にはプライバシーが保たれた個室を完備。カウンセリングに基づき、肌の状態や色見に適した化粧品によるメーキャップの施術やアドバイスを、「お客様1人に対し、基本的にスタッフ2人体制で対応しています」と鈴木さんは続ける。「1人はメーキャップを担当、1人はポイントを記したアドバイスプランの作成を行い、お客様が帰宅後もご自身でメーキャップを実践できるようサポートします」。

<化粧が持つ「心理的効果」>

 近年では治療のクオリティーをより高くするパートナーとして、カバーメーキャップを薦める医療機関も増えている。なかでも注目されるのが、美容ケアを通じた患者の「心理的効果」だ。同社では、がん治療中に化粧が及ぼす心理的効果を、医療機関とともに研究。通院で化学療法中の乳がん患者に対し実際に美容ケアアドバイスを行い、患者が自身で美容ケアを継続することで、抑うつや治療への取り組み意欲が改善されることのエビデンスを得ている。

 同社CSR部の提橋義則グループリーダーは「治療中はもちろん、治療後も薬の副作用等で肌悩みは残ってしまうこともある。本取り組みが少しでも、患者様のQOL(Quality of Life=生活の質)の向上につながれば」と力を込める。

効果的にカバーできる自社ファンデーションを用意
効果的にカバーできる自社ファンデーションを用意

<医療機関でも活動推進>

 同社では昨年10月から、抗がん剤治療の副作用に対応した無料メーキャップアドバイスの提供を医療機関でも開始。現在、東京近郊の計63のがん診療連携拠点病院を対象に病院からの依頼に基づき、院内で医療関係者の立ち会いのもと実施することとしている。

 化粧療法という言葉もあるが、鈴木さんは「直接的にメーキャップで疾患が治るわけではない」と冷静に分析する。「ただ患者様の治療に対するモチベーションが上がったり、何よりメーキャップ後『あきらめていたが、来てよかった』と晴れやかな表情で帰られる姿を見ると、化粧の持つ力を感じます」と語る。

 年齢や病に関係なく「美しくありたい」という思いは、多くの人の本心として存在する。資生堂では今後も、美容ケアアドバイスを行う地域や医療機関数を広げていく予定だ。

 問い合わせ=電話:03(3494)8090。※利用に際し治療中の方は、事前に主治医の許可が必要です。

国交相に羽田雄一郎氏、「観光に積極的に取り組む」

羽田雄一郎氏
羽田雄一郎氏

 野田佳彦内閣総理大臣は6月4日、内閣改造人事を発表した。参議院で問責決議を受けた前田武志国土交通大臣に変わり、後任には羽田孜元内閣総理大臣を父に持つ羽田雄一郎参議院国対委員長が就任した。

 羽田 雄一郎氏(はた・ゆういちろう) 1967年生まれ(44歳)。92年玉川大学文学部芸術学科卒業後、伊藤忠記念財団勤務。97年4月羽田孜衆議院議員秘書、99年10月参議院議員当選、05年9月参議院国土交通委員長、07年7月参議院議員3期目当選、10年7月民主党参議院国会対策委員長。

 羽田大臣は就任会見で「被災地の観光、振興を含めて全国的な観光に積極的に取り組んでいかなければならない」と語っている。

 

<安全安心な国作りへ責任果たせる体制を ― 前田前国交相>

前田武志前国交相
前田武志前国交相

 辞職する前田武志国土交通大臣は6月4日、臨時閣議後に退任の会見を開き、「東北の復興なくして、日本の再生はない」と語り、「国土交通省の仕事である安全安心な国作りと緊急時の危機対応に、しっかりと責任を果たしていく体制を作り上げることが重要だと身にしみて感じていた」と話した。また国土交通省の仕事について「観光を含め国交省の仕事は、短期的に成果が上がるものではなく、先行きを把握し時間をかけて行う長期的な仕事」と語った。

 
 
 
 
 
 

5泊以上長期滞在モニター募集

  北海道観光振興機構は6月1日から、北海道以外に住む人を対象に「北海道長期滞在モニター」1000人の募集を始めた。長期滞在型観光地としての体制づくりを進めるため、長期宿泊客をモニターとして呼び込み、受入地での課題やニーズを分析・検証する。

 7―9月の期間、北海道観光を目的に対象の宿泊施設に5日以上連泊し、アンケートに答えると、大人1人3万円、3歳以上小学生以下は1万5000円を旅行実施後にキャッシュバックする。旅先は、道内32地域から選べる。

 詳細情報については、特設WEBサイト(http://longstay.visit-hokkaido.jp/)へ。

プレスツアーのコース ― 人工的な公園よりも……(6/11付)

 今や、多くの地域が観光PRに熱心で、プレスツアーを行い、テレビや新聞、雑誌、ブログなどに観光素材をアピールしてもらおうという動きが活発化している。現地の行政トップや観光担当者、事業者との懇談会を設定し、忌憚のない意見を集めて、地域の観光に生かしていこうとする姿勢には、積極的な意欲と、柔軟さが感じられ、すごく好感を持ってしまう。

 けれど、自治体が主催するプレスツアーのコース設定に少し疑問を持つことがある。残念でもある。招待されておきながら、「つまらない」などと言うことは、大変口幅ったいことではあるが、でも、本気で地域観光に取り組もうとされるのならば、次のようなところはコースから外した方がいいのではないか。あえて言わせてもらえば、自治体が出資している○○公園や、○○交流館、資料館、記念館のようなものである。

 すべての地方に行っているわけではないので、当然例外があることは百も承知なのだが、基本的にそれら建物は綺麗で清潔感があり、予算が潤沢にあれば世界的な有名建築家、そうでなければ地元の建築家がデザインしたすっきりとした建物である。館内に入ると、大きなパネルの写真や年表などがガラスケースの中で展示され、中には電飾の装置が付いた大がかりな仕掛けで説明してくれたりする。また、公園の方は、敷地面積が広大で、壮麗な噴水があり、憩いの広場がコンクリートと芝生などで整備されている。ゴミもあまり落ちていないし、何かのイベントをやっていない時期には地元住民もあまり訪れない。観光客の姿など滅多に見かけない。そのような空間に、東京から飛行機やら新幹線やらを乗り継いで、大型バスからぞろぞろとカメラとメモ帳を持った記者やジャーナリスト、ブロガーが降りて周りを見回す。自治体の観光担当者が、公園の説明を20分ほどして、隅々まで1時間ほど散策するという流れだ。

 記者たちが本当に見たいのは、綺麗に整備された広大な公園などではない。このような公園は、各市町村に必ず一つはある。遠い未知なる地域を訪れたときは無機質で人工的な公園ではなく、魅力溢れる宝に会いたい。せっかく予算を使うのなら、ツアー参加者に「私たちのまちの何を見たいか」を、事前に聞いた方が効果的かもしれない。

(編集長・増田 剛)