全旅連、第100回全国大会開く 菅義偉前首相が基調講演 約100人の国会議員も出席

2022年9月14日(水) 配信

約850人の組合員が集まった

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(多田計介会長、1万5081会員)は9月13日(火)、東京都千代田区のホテルニューオータニで第100回記念の全国大会を開いた。約850人の組合員が出席。基調講演には菅義偉前首相が登壇したほか、自由民主党を代表して、麻生太郎副総裁が祝辞を述べた。大懇親会には約100人の国会議員も出席し、100年の歴史や観光立国に向けて関係を育んだ。

多田計介会長

 多田会長は「コロナ禍でも宿泊業の火を消さないことを尊敬する」と組合員の苦労を労った。そして、「全旅連は次の100年へ、社会にとって存在意義のある組織に成長していきたい」と強調した。

 来賓の自民党観光産業振興議員連盟の細田博之会長は入国者数の上限などを設けられていることから、「(観光業界は)不況を乗り越えておらず、多くの借金を抱えている。返済を免除できるよう党内で働き掛けていく」と話した。

細田博之会長

 自民党を代表して出席した麻生太郎副総裁は「(野党となったときなど)自民党が厳しいときも支えてもらっている」と謝辞を述べた。感染拡大が落ち着いてきたため、「我われも戦略を練り直して、訪日観光客を4000~5000万人に増やしていくことも考えている」と語った。

麻生太郎副総裁

 基調講演には安倍晋三元首相を予定していたが、当日は菅義偉前首相が登壇。ふるさと納税の寄付金額は設立当初、100億円程度だったなか、第2次安倍政権で法改正を実施した以降は、「毎年約1000億円ずつ増えた。2019年には約83倍となる8300億円となり、地方財源を増やした」と官房長官として2人3脚で取り組んだ地域活性化政策について話した。

菅義偉前首相

 また、「円安であるため、1日も早く水際措置を緩和する機会であることを政府に訴えていく。実行するには皆さんの声が不可欠だ」と一層の協力を求めた。「(全国旅行支援や補助金の創設など)皆さんの声も早急に実現できるよう取り組んでいく」との姿勢を示した。

 第25回「人に優しい地域の宿づくり賞」では、厚生労働大臣賞に、富士レークホテル(山梨県・河口湖町)の「東京2020パラリンピック受入れ」が受賞した。

富士レークホテルの井出泰済社長(中央)

 全旅連会長賞には、山代屋(奈良県奈良市)の「地域活性化として宿での子ども食堂(次世代に継ぐ食育の発信)」が選出。選考委員会賞では、なにわ一水(島根県松江市)の「1人でも多くのお客様に優しくありたい宿」が選ばれた。その後、大会宣言と決議が採決された。

 次回の全国大会開催地は23年6月14日に、愛媛県・道後温泉、全国大会前夜祭(13日)は同今治市での開催を予定している。テーマは「地方観光復活元年」。大会は四国4県の都道府県組合が行う。

 愛媛県を代表して大木正治副会長が「次の100年への最初の大会として引き締まる思いだ。来年は出向から30年となるので、皆様へのお返しとしても出迎えたい」と語った。

懇親会には約100人の国会議員も参加した

 その後、大懇親会が開かれ、自民党観光産業振興議員連盟の細田会長など約100人の国会議員が参加し、交流を深めた。

 

EXPO2022の見どころを紹介 サステナブル観光がテーマ(ツーリズムEXPOジャパン)

2022年9月14日(水) 配信 

ツーリズムEXPOジャパン2022 キービジュアル

 ツーリズムEXPOジャパン推進室アシスタントマネージャー・広報担当の石井悦子氏(日本旅行業協会)は9月14日(水)に開いた日本旅行業協会の定例会見で、9月22(木)~25日(日)に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開かれるツーリズムEXPOジャパン2022の国内・海外・企業出展ブースの見どころを紹介した。今大会は4年ぶりの東京開催となり、コロナ禍の中で世界70カ国・地域が出展する予定だ。

 今大会のテーマは、「新しい時代へのチャレンジ~ReStart~」。ウィズコロナ・ポストコロナを見据え、新しい時代におけるサステナブル・ツーリズムや多様性、さまざまな旅のカタチを情報発信していく。

 石井氏は、「4年前の東京大会とはガラッと変わった展示が見られる。ライフスタイルや旅行のカタチなど、コロナ禍を経て変化を強いられたものがたくさんあるが、どの展示もそれらを前向きに捉えている。新しい観光の広まりを感じて、楽しんでほしい」とコメントした。

 

国内ブース

白川郷(イメージ)

 

 SDGsをコンセプトに、「和」をテーマとしたエコツーリズムを展開するグランピング施設である「マウントフジ里山バケーション&緑やマウントフジエコツアーズ」(静岡県)。初出展となるこのブースでは、富士山のふもとの里山を巡るエコツアーで使用されるE―バイクの展示や、サウナテント体験をプレゼントする企画を用意する。

 農林水産省は「農泊~Countryside Stays~」として、農山漁村滞在型旅行の「農泊」の魅力を全国599地域の中から選りすぐって紹介する。プレゼンテーションステージでは、農泊地域と会場をオンラインでつなぎ、現地のようすを中継で伝える。また、スペシャルゲストに旅好きで知られるタレントの眞鍋かをりさんを招き、トークショーを開く。

 岐阜県・白川村ブースでは、新たな観光の魅力と観光マナーなどをまとめたルールブックを設置し、白川村が取り組んでいるサステナブル・ツーリズムを、地域ならではのコンテンツとともに展示する。

 

海外ブース

サウジアラビア(イメージ)

 

 初出展となるサウジアラビア政府観光局。サウジアラビアは19年にビザが解禁され、海外からの観光客の受け入れが始まるなど、新しいサービスや規制緩和が進んでいる。クロマキー撮影(グリーンバックなどでの背景合成を使った撮影方法)のフォトブースを用意し、日本にいながらサウジアラビアの雄大な風景をバックに写真撮影ができる。

 南アフリカ観光局ブースでは、「ンデベレアート」やビーズアクセサリーが制作できるワークショップのほかにも、ワイン&ルイボスティーの試飲、バーチャルサファリ体験など、コンテンツが盛りだくさん。同国の観光親善大使を務める女優の高橋ひとみさんのトークショーも予定している。

 

企業ブース

 日本旅行は、協業しているガイアリンクのメタバースプラットフォーム「バーベラ」を体験できるエリアを設置した。アバターを用いて、3D仮想空間の「ガイアタウン」を自由に散策し、会議や研修などに活用可能なバーチャルオフィスを見学することができる。気軽にメタバース空間にアクセスできる新しいコミュニティのカタチの体験を提供する。

 

70カ国参加、訪日観光再開へ ツーリズムEXPOジャパン2022(JATA)

2022年9月14日(水) 配信

日本旅行業協会・志村格理事長

 日本旅行業協会(JATA、髙橋広行会長)は9月14日(水)に開いた会見で、9月22(木)~25日(日)に開かれるツーリズムEXPOジャパン2022の概要を説明した。18年以来、4年ぶりとなる東京開催の今期は「水際対策が緩和され、海外旅行やインバウンドの需要拡大が広がり本格的な観光再開が期待されるなかでの開催で重要な意義を持つ」(EXPO推進室)。

 47都道府県と世界70カ国・地域が軒を連ね、1100小間以上のブース展示が行われる。参加企業・団体数は1000ほど。このうち初出展は、国内は79企業・団体、海外は17企業・団体としている。

 概要を説明したツーリズムEXPOジャパン推進室の早坂学室長は、「世界的に入国制限が緩和されつつあるとはいえコロナ禍の状況で、海外70カ国・地域から出展していただけたのは奇跡と言われている。日本に対する世界からの期待を感じるとともに、日本の観光のポテンシャルの高さを実感する」とコメントした。

 JATAの志村格理事長は「今月末に全国旅行支援の実施や、個人の訪日旅行の解禁も見込まれており、EXPOの時期に重なったのは良いタイミングだった」としたうえで、水際対策の緩和は大きな進展と評価した。

 一方、G7並みと言いながら3回のワクチン接種を要求しているほか、クルーズ船の検疫官の数が足りず、コロナ前は900万人が来ていた数字がゼロになっているため、「今の改正でやる限りは玄関があまりにも足りない。航空規模も東アジアはコロナ前の4割程度、日中路線に至っては1割の復便に留まっている。このような残された問題も、今大会のなかで議論していければ」と述べた。

 

JTB 、JA全農福島と連携 アグリワーケーションツアー発売

2022年9月14日(水)配信

農業体験のりんご収穫イメージ

 JTB(山北栄二郎社長)はこのほど、全国農業協同組合連合会福島県本部(JA全農福島)と連携。9月14日(水)から、ワーケーションと農作業を組み合わせた「JTBアグリワーケーション 福島県に泊まる農作業(りんご収穫)」ツアーを売り出した。

 「JTBアグリワーケーション」は、農業生産者と旅先で働きたい人をマッチングさせる新たな農業支援の取り組みで、商品化は今回が初めて。

 ツアーは10月22日(土)~29日(土)の7泊8日で、内訳は農作業5日間、自由行動1日、移動2日間。農作業のほか、福島観光やリモートワークなどで過ごすことで、地域とのつながりや、魅力的な食や観光を実体験できる内容を提供する。

 旅行代金は大人6980円。募集定員10人。

ピンクリボンのお宿ネットワーク第11回総会 さらなる情報発信で、認知拡大へ 諦めず、楽しい旅と温泉を

2022年9月14日(水) 配信 

ピンクリボンのお宿ネットワークは8月25日(木)、第11回通常総会を開いた

 ピンクリボンのお宿ネットワーク(会長=畠ひで子・匠のこころ吉川屋女将、事務局=旅行新聞新社)は8月25日(木)、東京會舘 LEVEL21(東京都千代田区)で2022年度第11回通常総会を開いた。新型コロナの影響を受けながらも、3年ぶりの対面での総会となった。新年度事業では、マスコミへのさらなる情報発信と、会員や観光関係者、医療関係者、乳がん患者団体などを対象にしたシンポジウム開催や勉強会を開き、社会全体に向けた啓発活動を続けていく。

 

 畠ひで子会長は冒頭のあいさつで、「コロナ禍も3年目。社会は行動制限に振り回され、観光業は最も痛手を受けた。新型コロナの影響で退会・休会をする会員が増えたが、宿泊施設が98軒、旅館組合・女将会が6軒、企業が14社、賛助会員が1社の合計119会員に継続していただいている」と現状を報告した。

 「会が発足した2012年は、日本人女性の乳がん罹患率は16人に1人だったが、今では9人に1人だと言われており、年々その割合は高まっている」と話し、「乳がんを患い手術や治療を受けて回復の道を歩みながらも、術後の痕を気にして旅を諦めてしまう女性の皆さんにもう一度誰の目も気にせず旅に出掛けて、旅館や温泉を楽しんでいただきたい」と会の理念を改めて強調した。

 これに加え、「患者さんや体験者が宿を利用するとき、恥ずかしくて言い出せずサービスを使わないまま貸切風呂を利用する場合もある。正確なデータは取れないが、周知拡大と宿の新規入会にご協力をいただきたい」と呼び掛けた。

あいさつする畠ひで子会長

 会員報告では、21年度総会後に、バスタイムトップスを開発したGSIクレオス(東京都)が入会。22年度の新規会員には、夕日ヶ浦温泉 風香(京都府)と、白浜温泉旅館協同組合(沼田久博理事長、和歌山県)が入会した。

 会の活動としては、「ピンクリボンのお宿」冊子10万部の発行・配布をしたほか、今年の5月30日(月)に開かれたピンクリボンのお宿シンポジウム(石川県・加賀屋グループ あえの風)では、同県すべての地方放送局や地方新聞から取材を受けたことにより、大きな宣伝となったことを報告した。

 また、JTBガイアレックのWeb商品との連携では、ピンクリボンのお宿送客実績が、20年度が31軒692人、21年度が26軒682人だったのに対し、今年度は26軒891人を達成した。

 新年度事業計画として、「第9回ピンクリボンのお宿」シンポジウムは、結びの宿 愛隣館(岩手県)で来年5月下旬に開く予定。

 会員拡大に向けた取り組みとして、総会やシンポジウム開始を記事にして読者に入会を案内するほか、病院への冊子配布と併せて、協力会員の案内を行う。

 23年度版ピンクリボンのお宿冊子は、会員宿の温泉情報やクーポンを記載し、10万部を発行する。全国800カ所の病院や47都道府県の福祉課、患者団体、看護師会、全国の主要な図書館などの協力を得て大浴場利用、患者や関係者に配布する。発行日は、今年10月初旬。入浴着を着用して大浴場利用することへの理解を求める、ポスター作製配布についても新規事業として決定した。

 総会後は別会場で茶話会を開いた。出席した会員らは各宿の取り組みなどを語り合い熱心に交流を深めた。

総会後は茶話会を行った

クラツー、北海道と沖縄の最果て 6日間で一気に巡るツアー

2022年9月14日(水)配信

左から最北端の地・宗谷岬、最南端の有人島・波照間島

 クラブツーリズム(酒井博社長、東京都新宿区)は9月14日(水)、北海道・沖縄の地域企業・地域経済の発展を目指す「どさんこしまんちゅプロジェクト」と連携したプロジェクト公式ツアーを売り出した。北海道と沖縄に位置する日本の「最東西南北端」を6日間で一気に巡る、東京・関西発ツアーを販売する。

 今回の企画は、同プロジェクトが大阪・あべのハルカス近鉄本店と合同で開催する「どさんこしまんちゅフェスティバル(9月14日(水)~20日(火))」の開催を記念し、プロジェクト公式ツアーとして発表するもの。毛ガニや炉端焼き、あぐー豚のしゃぶしゃぶなどの日本の最果てグルメを堪能できるほか、一生に一度は訪れたい北海道から沖縄までの日本の最果てを効率良く巡ることができる。

 さらに、コラボ特典として、オリジナルの最東西南北到達証明書とコラボ銘菓がもらえる。

 出発日は2023年1月15日(日)、3月19日(日)。旅行代金は40~43万円。

プライベート感を高めた、より特別感のあるおもてなしでリラックスできる施設へ深化 はつはなリニューアルオープン 

2022年9月14日(水) 配信

全室に温泉露天風呂を完備

 小田急電鉄と小田急リゾーツは9月11日(日)、箱根湯本のホテル「はつはな」をリニューアルオープンした。

 1993年の開業以来初となる大型改装。「女性にやさしい宿」から、「心と五感が満ちる静かなとき」にコンセプトを変更した。約30年間積み重ねてきた経験やスキルを踏襲しつつ、プライベート感を高めた、より特別感のあるおもてなしでリラックスできる施設へ深化させた。

 全室に温泉露天風呂を完備した和風モダンの客室は、従来の47室から35室に縮小し、各客室の面積を拡張。全卓個室仕様のダイニングでは、相州牛など地元神奈川の食材を中心に用いた懐石料理に洋の要素を加えた「モダン懐石」の夕食を、ソムリエのワインペアリングとともに提供する。また朝食は、和食、洋食の2パターンを用意、小田原産のお米などを味わえる。

大浴場
貸し切り風呂 川音の湯

 館内には2カ所の大浴場に加え、趣向の異なる4カ所の温泉貸し切り風呂も新設。宿のなかで湯巡りが楽しめるようにしたほか、湯坂山の景色を眺めながら、自然の風を感じられる「展望テラス」なども備える。

 9月7日(水)に行われた内覧会で岩見修副支配人は、コンセプトに関し、「箱根の自然のにおいや鳥のさえずり、料理の味わい、温泉のぬくもり、そういったものに心に響くおもてなしを加え、お客様に満足してもらえる宿を目指す」と思いを語った。

「鉄道開業150周年を契機に~寄稿シリーズ⑦」 菅建彦氏「世界遺産もある欧州山岳鉄道と保存鉄道」

2022年9月14日(水) 配信

オーストリア・ザルツブルク近郊のシャーフベルク鉄道
菅 建彦氏 公益財団法人交通協力会顧問、日本鉄道保存協会顧問

 日本の鉄道は今年開業150年を迎えるが、2025年には英国が鉄道開業200年を迎え、30年代になると欧州主要国の鉄道が相次いで開業200年を迎える。

 今ヨーロッパの中心をなす英、独、仏、ベルギーなどの国々は地形平坦のため、車窓風景が変化に乏しい。日本にないヨーロッパ鉄道の魅力は、山岳鉄道と保存鉄道であろう。

 ヨーロッパ鉄道の最高地点は標高3454㍍(日本の最高地点は小海線野辺山駅付近の標高1535㍍)、ユングフラウ鉄道(スイス)のユングフラウヨッホ駅、ここから見る氷河の眺めは素晴らしい。最急250パーミルという急勾配の狭軌鉄道で、車輪とレールの摩擦力だけでは登れないから、ラックレールと車両側の歯車(ピニオン)を噛みあわせるシュトループ式の歯軌条鉄道である。

 昔、信越線の碓氷峠で使われ今も大井川鐵道井川線が使っているアプト式と同類と思えばよい。スイスをはじめオーストリア、フランスなどアルプス沿いの国にはこの種の登山鉄道が普及しているが、国際列車が行き交う幹線にも壮大な山岳路線がある。

 ウィーンからゼメリング峠を越えて、アドリア海のトリエステ(イタリア、かつてはオーストリア領)に至る鉄道は、最初に開通したアルプス越えの鉄道で、連続する急カープと石造の高架橋が見事な景観をなし、世界遺産となっている。

 スイス東部とイタリアを結ぶ狭軌のレーティッシュ鉄道も世界遺産である。スイス中部のサン・ゴッタルド峠を経て南ドイツと北イタリアを結ぶゴッタルド鉄道は、峠の直下、標高1150㍍の山腹を15㌔の複線トンネルが貫き、その前後はループ線やヘアピンカーブが連続し、息を呑む「絶景」に富む。

 ゴッタルド鉄道の魅力を知ってしまうと上越線の清水峠越えも肥薩線の矢岳越えも色褪せて見えるほど、スケールの大きい山岳鉄道である。2016年、勾配緩和のため掘削したゴッタルド基底トンネル(長さ57㌔。青函トンネルを抜き現在世界最長)が開通したが、幸い1882年に完成した旧線も廃止されずに残っている。

 1950年代初頭、英国ウェールズの廃止された狭軌のTalyllyn鉄道(ウェールズ語でタリスリンと読む)を惜しむ人々が拠金して買い取り、線路と車両を復元して営業を再開した。これを嚆矢として、保存鉄道は英国だけでなく豪州、北米、欧州一円に広がった。

 英国では1960年代、ビーチング国鉄総裁の時代に赤字線の大削減を行った結果、皮肉にも100を越える保存鉄道が生まれた。 

 英国保存鉄道協会(Heritage RailwayAssociation)のホームページを見ると、保存鉄道が国中に広がっているのが分かる。大規模な保存鉄道は20㌔程度の路線に動態保存機関車を10両以上も保有、多数の客車を使って毎日数往復の列車を運行し、立派な車両検修設備まで持っている。日本のローカル線よりもはるかに立派な鉄道がボランティアの力と支援者の寄付で運営され、観光客を引きつけて地域振興の中核になっている。

「近代化遺産 全国一斉公開2022」に向け 全国近代化遺産活用連絡協議会が魅力を東京でPR 

2022年9月14日(水) 配信

福岡県大牟田市の展示

 全国近代化遺産活用連絡協議会(会長=多々見良三舞鶴市長)は9月8日(木)~11日(金)、千代田区丸の内・東京シティアイ パフォーマンスゾーン(KITTE地下1 階)で「近代化遺産フォーラム2022」を行った。10月1日(土)~11月30日(水)にかけて行われる「近代化遺産 全国一斉公開2022」のキックオフイベント。

 三重県桑名市の近代化遺産「六華苑」に関連する実物資料の展示や、専門家によるトークセッションを通じ、参加者に近代化遺産の魅力を発信。京都府舞鶴市や兵庫県朝来市、福岡県大牟田市など8自治体が近代化遺産に関わる物品などの展示と観光施設などのパンフレットの配布を行った。

多々見良三会長

 8日(木)に行われたオープニングセレモニーで多々見会長は「近代化遺産の価値や魅力を広く一般的に訴求する活動を行い、皆様のご尽力により、近代化遺産は地域の近代史を物語る個性ある文化財として急速に社会的関心を集めるようになった」と同協議会の活動の成果を語った。

 同協議会は重要文化財旧下関英国領事館(山口県下関市)でも10月21日(金)~30 日(日)まで、同様のイベントを開催。全国の近代化遺産に関するパネル展示とパンフレット配布などに加えトークイベントを開く。10日(月)~30日(日)には旧秋田商会ビル内でプロジェクションマッピングの上映も行う。

【精神性の高い旅~巡礼・あなただけの心の旅〈道〉100選】-その17-石山寺&蓮如堂巡り(滋賀県大津市) 女流作家に愛された石山寺 蓮如上人ゆかりのお堂

2022年9月14日(水) 配信

 
 滋賀県には比叡山延暦寺、琵琶湖に浮かぶ竹生島の宝巌寺、今回取り上げる石山寺など、日本有数の美風景ともいうべき、自然と融合している寺院が多く、心の洗濯や目の保養に訪れたくなります。

 
 また、「近江八景」という8つの名勝があります。「石山の秋月」「比良の暮雪」「粟津の晴嵐」「堅田の落雁」「唐崎の夜雨」「矢橋の帰帆」「瀬田の夕照」「三井の晩鐘」です。石山寺の境内には、「月見亭」があり、そこから見る月はとても心潤される美しさがあるそうです。

 
 大津市にある石山寺は、1年を通じて季節の花々が絶えない「花の寺」としても知られています。桜の季節も素晴らしいですが、私は紅葉の彩りに満ちあふれているときが、極上の石山寺を味わえると感じました。艶やかで燃えるような赤やしっとりとした鈍い黄色や緑で、私たちを魅了してくれます。

 
 紅葉の石山寺は、山門をくぐると浄土のような別世界が広がり、異次元空間に迷い込んだような夢心地になれるでしょう。どの季節に訪れても、梅や桜、ツツジ、牡丹などの花の寺ですから、心身ともに幸福感を与えてくれると思います。

 
 その石山寺は、琵琶湖の南側近くにあり、東寺真言宗の大本山の寺院であり、山号は石光山、ご本尊は如意輪観音様、そして西国三十三ヶ所第13番札所でもあります。交通アクセスはJR京都駅からJR石山駅まで新快速で約13分であり、そこからバスで10分程度。

紫式部像(石山寺)

 石山寺は平安時代から女流作家たちが、競うように石山詣をしていました。「源氏物語」の紫式部、「蜻蛉日記」の藤原道綱の母、「枕草子」の清少納言、「更級日記」の菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)、「和泉式部日記」の和泉式部などです。

 
 紫式部は石山寺に参籠しているとき、8月15日の満月が琵琶湖に映えて、「源氏物語」のアイデアが浮かび、須磨・明石の巻を書いたといわれています。

 
 都を離れて、女流作家たちは、この別世界のような美に満ちた石山寺を詣でることにより、インスピレーションを養うことができたのかもしれません。

 
 話は変わりますが、開運スポット的にも、石山寺はとても氣の良い場所といわれていて、とくに境内中心部にある巨大な岩山の「珪灰石(けいかいせき)」です。人生を楽しむためのすべての運を活性化するパワーがあるとのこと。

 
 その珪灰石の近くにある「蓮如堂」も、ぜひとも訪れてみてください。真言密教寺院に、浄土真宗の蓮如上人ゆかりのお堂なのですが、その蓮如上人と生母の哀しいお話が秘められているといいます。

蓮如堂(石山寺)

 女性に大変人気のある蓮如上人は、法然・親鸞の念仏の教えを広く多くの人たちに伝えたといわれています。情的で人の心の中に、自然と上手に溶け込める力があったのでしょう。

 
 さて、蓮如上人の母は正妻ではなかったため、幼い蓮如上人を残して、別れなければならなかったそうです。生き別れという苦しみを蓮如上人は、幼くして経験したのです。しかし、幼いときのこの哀しい経験こそ、その後の念仏の教えを多くの大衆の人たちの心に深く響かせるキッカケになったのかと思います。

 
 蓮如堂には、蓮如上人の遺品として、6歳のときの御影と鹿子の小袖があります。そういったところから、蓮如上人の母は石山の人であり、蓮如上人の父が石山寺に詣でたときに出逢って、蓮如上人が生まれたともいわれています。また、蓮如上人の母は、石山観音の化身だったという話も残されているとのこと。蓮如上人の想いにも触れられる場所なのです。

 
 石山寺のご本尊の如意輪観音様の大きく寛大な愛情に包まれながら、美しい風景で一息し、悩み多き現在の場所から離れて、聖なるひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。

 

 

旅人・執筆 石井 亜由美
東洋大学国際観光学部講師、カラーセラピスト。精神性の高い観光研究部会メンバー。グリーフセラピー(悲しみのケア)や巡礼、色彩心理学などを研究。