来年は日本開催決定、ルレ・エ・シャトー世界大会

 国際的に権威ある高級ホテルや一流レストランが加盟する組織「ルレ・エ・シャトー」(本部=仏・パリ)は、2016年11月に開催予定の世界大会を日本(東京)で開くと発表した。アジア・パシフィック地域での開催は、1954年の協会設立以来、初めて。

 世界大会は毎年開催で3日間にわたり年次総会やガラパーティーなどのソーシャルイベントを催し、メンバー間の交流や結束を深める。

 2016年の東京開催では、世界各国から400―450人のメンバーおよび関連スタッフ、メディアの誘致を目指し、各イベントでは日本メンバーによる日本が誇る「おもてなし」で世界のメンバーを魅了するという。また、東京だけでなく、日本の各地方が放つその土地ならではのジャパンブランドを、世界の本物を知り尽くしたルレ・エ・シャトー加盟のシェフ・ホテルオーナーへ発信する機会にもしたい考えだ。

 現在、ルレ・エ・シャトーには、世界62カ国・約540軒が加盟。協会加盟には厳格な審査があり、ホスピタリティの高さを象徴する協会として知られる。日本加盟メンバーは1975年にアジア・パシフィック地域1号メンバーの加盟以降、現在はホテル・レストラン部門が7軒、レストラン部門が8軒の計15軒。

 加盟施設は次のとおり。

【ホテル・レストラン部門】
別邸仙寿庵(群馬・谷川温泉)
強羅花壇(神奈川・強羅温泉)
あさば(静岡・修善寺温泉)
扉温泉 明神館(長野・扉温泉)
べにや無何有(石川・山代温泉)
神戸北野ホテル(兵庫・神戸)
忘れの里 雅叙苑(鹿児島・妙見温泉)

【レストラン部門】
レストランモリエール(北海道・札幌)
オトワレストラン(栃木・宇都宮)
オテル・ドゥ・ミクニ(東京・四ツ谷)
レストランサンパウ(東京・日本橋)
青柳(東京・麻布台)
ヒカリヤニシ(長野・松本)
柏屋(大阪・吹田)
ラ・ベカス(大阪・淀屋橋)

2016年度版「プロが選んだ日本のホテル・旅館100選」書籍発売!

16年度版100選本、8月から全国書店発売

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 2016年版「プロが選んだ日本のホテル・旅館100選&日本の小宿」の書籍が、8月から全国の書店で発売されました。定価 は2,160 円(本体 2,000 円 + 税8%)、A4変形判、オールカラー 168ページ。発売元は自由国民社(東京都豊島区)です。

 今年1月に発表した「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」入選施設と、選考審査委員特別賞「日本の小宿」を受賞した歴代の宿、計109軒をセレクト。料理やもてなし、温泉など、各施設の魅力をカラー誌面でご紹介しています。一部の宿で「2次元バーコード」も掲載したほか、弊社が事務局を務める「ピンクリボンのお宿ネットワーク」加盟施設はロゴマークを付けてご紹介しています。

 巻末には「総合100選」のほか「もてなし」「料理」「施設」「企画」各100選の入選施設一覧をリストとして掲載しました。まさに、ホテル・旅館のガイドの決定版!といえる本です。ぜひお手にとってご覧ください。

 全国の書店、当ホームページ上部の「刊行物お申込み」から購入できるほか、
アマゾンや楽天
(自由国民社様の本書紹介ページへリンクしています)でもご購入いただけます。

上期訪日客914万人、主要19市場で過去最高(JNTO)

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 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)がこのほど発表した6月の訪日外客推計値によると、6月の訪日外客総数は前年同月比51・8%増の160万2200人となり、5割以上の増加で6月の過去最高を更新した。1―6月の上期累計では、前年同期比46・0%増の913万9900人と過去最高だった2014年を約290万人上回った。

 6月の市場別では、中国が全市場を通じ単月として過去最高を更新。また、米国は欧米豪市場で初めて単月で10万人を超えた。台湾、香港が単月として過去最高、インドネシア、英国、ロシアを除く17市場が6月として過去最高を記録した。

 上期でみると、過去最高を記録した市場は、ロシアを除く19市場。

 6月の重点市場の動向をみると、韓国は同21・2%増の25万1500人と過去最高を記録したが、15年上期で最も低い伸び率となった。中東呼吸器症候群(MERS)の感染拡大で外出自体が控えられ、海外旅行需要全体が鈍化したことが要因。

 中国は、同167・2%増の46万2300人で、単月として過去最高を記録し、全市場を通じて初となる単月50万人に迫る勢い。クルーズ市場も好調で、30本が寄港した。

 台湾は、同35・8%増の34万5200人で、単月として過去最高を記録した。格安航空会社(LCC)との共同広告や旅行博出展などの訪日プロモーションと、継続する円安傾向や航空路線の増便などにより、安定した需要を確保した。香港は、同75・4%増の13万7千人と大幅に増加し、単月過去最高を更新。旅行価格の高騰を避けて夏休み前に訪日した旅行者や、韓国でのMERSの感染拡大を受けて訪問先を日本に変更した旅行者が需要を押し上げた。

 そのほか、東南アジア諸国の好調な伸びも継続し、タイは同19・5%増、シンガポールは同25・3%増、ベトナムは同52・7%増、インドは同15・9%増など。ベトナムは42カ月連続で各月の過去最高を更新。福島へのチャーター便がホーチミンから3便、ハノイから1便運航され、訪日客数増加に貢献した。

 なお、出国日本人数は同7・8%減の118万9千人となった。

ナショナルスタジアム ― 過去の記憶のない“未来型”は虚しい

 先日、埼玉スタジアム2002に末っ子の息子を連れて浦和レッズVSサンフレッチェ広島の一戦を観に行った。小学校も夏休みに入ったし、「たまには父親らしいこともしなければ」と思い、うだるような暑さのなか、神奈川県の相模原から埼玉県の浦和まで行ったのであった。通常は日産スタジアムで横浜マリノスのホームゲームに来る鹿島アントラーズ戦を観に行くことが多いのだが、Jリーグ日程表を見ると、マリノスのホームゲームはなく、近くでは味の素スタジアムでのFC東京VSモンテディオ山形戦も脳裏に浮かんだが、浦和レッズのホームゲームのサポーターの熱気を体感したい思いが勝った。

 スタジアムに着くと、当日券を購入した。アーチ状になったメインスタンドの最上部に近い座席だったので、遠くに東京スカイツリーも見えた。そういえば、旧国立競技場も最上部にいると、新宿の高層ビル群が見えた。埼玉スタジアム2002はアジア最大級のサッカー専用スタジアムなので、陸上トラックがない分だけ、選手を真上から眺めるアングルで臨場感があった。甲子園球場のアルプススタンドのような高さも心地よく、時折風が吹き抜けると、巨大スタジアムの壮大なスケールが持つ爽快感を覚えた。

 試合は浦和レッズが前半に先制点を取ったが、後半に入りサンフレッチェ広島が2点を奪い返し、逆転勝利を収めた。圧倒的なレッズサポーターに囲まれたスタジアムの中で、サンフレッチェがゴールを奪った瞬間、紫色のサポーターが歓喜する姿に「きっと首都圏で生活している広島出身の人がたくさんいるのだろう」と思った。アウェイゲームのため、数は少なかったがサポーターに愛されるサンフレッチェの選手たちは幸せだなと感じた。そして、目当てだった浦和レッズのサポーターの熱狂度はやはり日本を代表するもので、埼玉スタジアム2002は、まさにレッズサポーターの聖地と化していた。

 折も折、ザハ・ハディド氏による新国立競技場のデザイン案が白紙撤回になった。流線形が未来を感じさせるが、「未来型は流線型でなければならない」との厳格なルールでもあるのだろうかと思ってしまうほど、未来型は決まって無個性な流線形になってしまう。愛されるデザインの深部には個人、あるいは民族の記憶が織り込まれている。私は新国立競技場のデザインに、何の記憶も呼び起こされなかった。ツルンとした無色無臭のプラスチックのカプセルを手にしたように、脳を、胸を、刺激しなかった。

 個人的には10万人が入れば、シンプルなデザインでいいと思う。しかし、何が何でも莫大な金額を投入したいというのなら、日光東照宮の陽明門のような微に入り細を穿つ豪華絢爛さ、あるいは金閣寺のような凛々しき黄金のスタジアムの方がまだマシだ。日本建築の粋は細部に宿る。100年間愛されるナショナルスタジアムのデザインは日本人のDNA、記憶に響くものを望みたい、と書きながら未来型のデザインが嫌いな理由がわかった。それは過去から未来へのつながりの中に見出す現在性が存在しないからだ。過去と切り離されたデザインはどこか画一的で、一様に虚しい。それを新国立競技場のデザインに感じた。流線形の、いかにも未来型に惑わされてはいけない。

(編集長・増田 剛)

No.408 LCH「変なホテル」開業、“世界一高い生産性を追求する”

LCH「変なホテル」開業
“世界一高い生産性を追求する”

 ハウステンボス(澤田秀雄社長、長崎県佐世保市)は7月17日、“世界一高い生産性を追求する”ローコストホテル(LCH)を開業した。変化、進化し続けることを名前に込めた「変なホテル」は、サービスロボットを導入し、普通のホテルと比べ人件費を4分の1まで削減する。風や太陽光のコントロール、断熱材の使用など省エネルギー化を実現したほか、建設コストの削減を企図した世界展開可能な工法の導入など画期的なホテルとして誕生。開業2日前に現地で取材した。

【増田 剛】

 
 
 
 
 世界にも類を見ないロボットホテル「変なホテル~変わり続けることを約束するホテル」がハウステンボスの隣接地に7月17日、オープンした。「変なホテル」は軽量鉄骨造の2階建て3棟で計72室。敷地内にレストラン棟も備えている。客室は3つのグレードがあり、最も安い時期のシングル1泊朝食付で基本料金9千円からの設定だ。

 まず館内に入って驚くのが、フロントのロボットがチェックインからチェックアウトまで自動で行うシステムだ。

 女性の人型、テーマパークを意識した恐竜型、マスコット型の3体のロボットが宿泊客を出迎える。ロボットの前に立つと、センサーが働く。顔認証されるとキーレス、カードレスで滞在できる。顔認証を望まなければ、非接触ICカードキーの利用も選択できる。フロントのロボットは日本語と英語で対応。近く中国語、韓国語への対応も予定している。…
 

※ 詳細は本紙1595号または8月5日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

秋葉原らしい体験を、爆買い客で免税店一色が課題

吉岡有一郎社長(右)と槇野汐莉旅行事業部部長
吉岡有一郎社長(右)と槇野汐莉旅行事業部部長

変貌する観光地・秋葉原

 東京都・秋葉原は東京の一大観光地でありながら、電気街、オタク街、そして外国人旅行者の「爆買いの街」へと変化を続ける観光地でもある。連日話題となる一方で、買い物の街へのシフトは「爆買い客ばかりの秋葉原は本当に観光地と言えるのか」という課題も浮上させる。秋葉原周辺を報道し、観光業も展開する「Akiba.TV」社長の吉岡有一郎氏と旅行事業部部長の槇野汐莉氏に変貌する秋葉原について聞いた。

【丁田 徹也】

 ――「爆買い」と呼ばれる外国人旅行者の大量購入現象で秋葉原はどのように変わったか。

■槇野:中央通りが免税一色に染まり、表に並ぶ取扱商品が大きく変わりましたね。かつてコスチュームを着た店員がゲームを販売していた店の売り場は、赤ちゃん用品コーナーになっています。ゲームソフトがあった場所におむつが陳列されているのです。サブカルチャー色が強い秋葉原が好きで外国から移住してきた方は「免税店だらけで秋葉原らしくなくなった」と嘆いていました。たしかに、免税店ばかりだと、空港の一角に見えるのかもしれません。

 ――訪日客の影響力は今後も一層大きくなるのでは。

■吉岡:2020年の東京オリンピックが近づくにつれ増加する外国人の半分くらいが秋葉原に来ると考えると、買い物をはじめとして大きな影響力を持つと思いますが、爆買いして通り過ぎるだけの街にはなってほしくありません。

 秋葉原はサブカルチャーの街なので、興味深い文化変遷の歴史を多く持ち合わせています。歴史を活かした観光を強化し、秋葉原という街のファンを増やしていきたいです。

 観光の課題としては、秋葉原を楽しむには外国人にとってはまだまだ情報が足りないことが挙げられます。たとえば、秋葉原に来るのであれば、外国人でもコスプレに憧れを持つと思います。しかし、どこでその服が買えるのか、そもそも街中でコスプレをしても良いのか、という基本情報すら持っていないことが多いです。「Akiba.TV」の旅行部門「Akiba Deep Travel」では、外国人対応の観光ガイドもいますので、秋葉原観光のハードルを下げたいですね。

 ――体験型の観光が増えるなかで、買い物メインの秋葉原はこれからの観光に対応できるのか。

■槇野:秋葉原を「体験する」動きがここ最近で出てきています。秋葉原の大手マンガ販売会社が新たに会社を立ち上げ、「アキバ的」な趣味のカルチャースクールを開いています。漫画の描き方やコスプレの着飾り方、フィギュア写真撮影など、秋葉原らしい体験を提供しています。

■吉岡:我われ秋葉原の事業者もこれからの秋葉原の在り方や街の活性を目的とした会議を行っています。最近では、外国人観光客対応の会議や、SNSでのPRについての検討会を開きました。

 ――秋葉原の新たなブームの兆しは。

■槇野:よく聞かれることですが、今後どうなるかはわかりません。秋葉原は雑多な街で、色々なものがあり、自然と面白いものが残っていく仕組みになっています。だからこそ、私たちは秋葉原に埋まっている多くの面白いものを掘り起こしているのです。

 ――ありがとうございました。

アートの夏

 青空の下、アートイベントが各地で開かれている。今年は、今や世界最大規模の芸術祭と称される「越後妻有アートトリエンナーレ」(新潟)や9月から始まる「中之条ビエンナーレ」(群馬)などの開催年で、芸術や文化による地域活性が盛況を見せる。

 先月18日に開幕した大分県別府市の芸術祭「混浴温泉世界」は、そのタイトルに「老若男女や地域・国籍、宗教も関係なく、服を脱ぎ武器を持たず、各々の人生のある時を共有する」というメッセージを込める。実際にアジアをはじめ、海外観光客も多い同地。言葉を持たぬアート作品たちは、来訪者にその土地の魅力をそっと語りかける。

 アートを入口に、人々が集い、地域と向き合う。紡がれるコミュニケーションは、その土地の大切な財産となる。

【森山 聡子】

経産省が補助金、海外展開に60億円、コンテンツ活用で獲得可

J-LOP+(ジェイロップ  プラス)ロゴ
J-LOP+(ジェイロップ プラス)ロゴ

 経済産業省が「日本のコンテンツ」を活用した海外展開に補助金60億円――。経産省は今年3月に「地域経済活性化に資する放送コンテンツ等海外展開支援事業費補助金(J‐LOP+)」を設置し、日本のテレビ番組やキャラクターなどのコンテンツを有効活用した海外展開事業に、対象経費の最大3分の2を補助している。自社コンテンツを持たずとも「活用」することで補助金申請ができるため、訪日観光PR目的の行政や観光団体が国際展示会の出展などに利用している。補助金申請は16年1月31日までで、補助金60億円がなくなり次第終了。7月15日時点での申請状況は、申請428件に対し採択326件。交付決定金額は30億5898万2千円。「J‐LOP+」事務局を務める映像産業振興機構(VIPO)協力のもと、全3回で補助金について紹介する。

 「J‐LOP+」が活用できる事業は、海外発信のための「プロモーション(国際見本市などの出展)」と「ローカライズ(翻訳や字幕)」。イベントでのゆるキャラ出演や日本のテレビ番組放送など、「日本のコンテンツを有効活用すること」が補助金獲得の条件。

 補助対象のコンテンツとは、映像・音楽・ゲーム・出版・キャラクターとその他審査で特別に認められたもの。補助費用の対象となるのは、旅費・運営費・広報宣伝費・ローカライズ費・法務費。
(詳細は次回)

 補助金申請者はテレビの放送局やアニメ制作会社、ゲーム開発会社などのコンテンツホルダーのほかに、旅行会社や行政、観光団体の申請がある。「J‐LOP+」は、前身にあたる助成金事業「J‐LOP」(13年3月―15年3月)に比べて地方発コンテンツの強化や支援対象の拡大をはかっており、観光関連事業者の参入がより容易になっている。今年は「東北復興祭りパレードinミラノ万博」(主催=同実行委員会)が地域経済活性化にとくに資する事業として対象経費の3分の2が補助された。
(活用事例は第3回)

 補助金の相談は「J‐LOP+」ホームページ(http://plus.j-lop.jp/)、またはVIPO内J‐LOP+事務局で受付中。

 問い合わせ=電話:03(3248)5567。

 ※次回は補助金制度の仕組みについて詳しく解説する。

伊でRYOKAN紹介、青年部がミラノ博参加(全旅連)

安倍昭恵さんを囲んで
安倍昭恵さんを囲んで

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の青年部(桑田雅之部長)は、訪日外国人観光客のさらなる誘致に向けて、「RYOKAN」を日本固有の宿泊文化として世界に発信する事業を行っている。7月2―13日には、イタリア・ミラノで開かれたミラノ国際博覧会にともなう日本単独PR会場「ジャパンサローネ」の政府展示エリアで、観光庁、日本政府観光局(JNTO)と連携し、ブース内でイベント、広報活動に協力した。

 期間中、青年部員14人と全旅連女性経営者の会(JKK)の2人が参加し、イタリア人を中心とした約1200人に対して、浴衣の試着体験や折り紙体験、茶道の披露など日本文化を実際に体験する機会を提供した。

 11日には、日本をPRするメインイベント「ジャパンデー」が行われ、青年部はイタリアの旅行会社やメディア、観光業界関係者など約60社を招待したセミナーで、英語によるRYOKAN紹介、着物や浴衣を着た若旦那・女将によるおもてなしを行った。回廊にあるブースには、内閣総理大臣夫人の安倍昭恵さんや、政府関係者なども多く訪れ、「青年部のRYOKANブランドを海外でPRする事業に高い関心を持っていただいた」(インバウンド対策委員会)としている。

JATA国内・訪日旅行推進部長 興津 泰則氏、“料金値上の広報積極的に”

興津泰則氏
興津泰則氏

バス会社とはウィンウィン

 貸切バスの新運賃・料金制度が昨年4月に施行されたが、各所からさまざまな意見が聞こえる(4月21日号特集)。これを受け、国土交通省自動車局は、貸切バス運賃・料金制度ワーキンググループのフォローアップ会合を開いているところ。担当者によると開催期限は設けず、必要に応じて順次開催し、議論を深めて問題に対応していくという。会合にオブザーバーとして参画している、日本旅行業協会(JATA)国内・訪日旅行推進部の興津泰則部長に旅行会社の現状や方向性を聞いた。
【飯塚 小牧】

 今回の制度改正は、安全を担保するために行うということだったので、JATAとしては、そのことを否定するものではない。会員各社に対し、新制度を遵守するように強くお願いをしている。

 ただ、実情としては費用が高騰したこともあって、日帰りバス旅行の値ごろ感のある商品が作れなくなった。1人の運転手が昼間は原則500キロまでしか運行できないなど交替運転手の配置基準の厳格化もあり、もう1人ドライバーをおかなくてはならない方面は非常にコストが上がり、企画が中止になることも多い。貸切バス専業の会社にとっては大変手痛い状況になっている。また、その距離にある観光施設も悲鳴を上げているのが実態だ。長野の一定地域は東京や名古屋、大阪の大都市圏すべてからその距離にあり、国土交通省などに陳情を出されている。長野だけではなく、全国でそういう現象が起こっている。地域にとっては死活問題だ。

 消費者にとっても、急に値段が高くなったという印象だ。バス会社は料金が上がることへの広報活動をもっと積極的に行ってほしい。インバウンドでは、海外から「なぜそんなに高くなったのか」といわれる。安全に関わるコストだと説明し少しずつ理解を得てきたが、国内も同様だ。エンドユーザーと接するのは我われだが、当事者ではないので「旅行会社が勝手に値段を上げた」と誤解を受けやすい。根拠となるものをしっかり広報していただき、我われがお客様に説明しやすいようにしてほしい。これが相互協力の重要なところではないか。

 料金を上げることを批判する気は毛頭なく、経営の安定化や従業員の確保、安全性の向上の3つを捉えたときにはやむを得ない判断だと思う。問題は、需要喚起の議論がまったくなされていないことだ。国交省の検討会では、運賃やバス会社の企業としてのあり方は検討されるが、需要喚起について議論する場ではないので、なおざりにされている。これを横に置いていては、さまざまな問題が生じるのではないか。需要が伸びていかなければ、いくら料金の制度が改正されても、バス会社にとって、企業としてのメリットが継続的に出てくるのか疑問だ。値段が上がりお客様が買わなければ商品を作れなくなるという実態からすれば、我われも縮小せざるを得ない場面が多々出てくる。現に、東京都内ではバスを使わない教育旅行も出てきている。本来の趣旨が「バス事業者は安定的な経営のもとに健全な地域に根差した会社を目指す」ということならば、需要喚起も本格的に取り組まなければまったく意味がない。それを旅行会社やバス事業者、国、地域と官民でしっかり議論していくべきだ。

 また、現状、標準運賃の下限割れ運賃も認められてきており、せっかく変更した制度が形骸化し、昔に戻ってしまうのではないかと懸念している。制度が遵守されているかどうかきちんとチェックをしてほしい。我われが襟を正さなければならない問題もあり、会員会社にはバス会社と問題のないビジネスをするようにと、今年の2月に再度お願いしたところだ。自らしっかり制度を守ることが、お客様への安心・安全の提供につながると考えている。

 以前から強く訴えているが、バス事業者とは過去も現在も将来もウィンウィンで、共に観光業全体を繁栄させていく大きな柱となっていかなくてはいけない産業だ。これからも関係をしっかり持って、お互いに協力していかなければならない。過去に後戻りして業界が乱れることがあってはいけないと思う。

 国交省ではフォローアップ会合が開かれ、問題に対する議論の場が設けられているので、それらの機会を生かし、いい方向に進むように今後も努力していく。