「オンリーワンのまち」認定第2号、御前崎市(静岡県)観光協会に(ふるさとICTネット)

津田理事長(左)と御前崎市観光協会・下村会長

NPO法人ふるさとICTネット(津田令子理事長)はこのほど、「オンリーワンのまち」として静岡県御前崎市の御前崎市観光協会(下村裕会長)が活動するアカウミガメの産卵の保護の取り組みなど「地形を生かしたまちづくり」を第2号認定した。11月9日には同観光協会で認定証授与式を行った。「オンリーワンのまち」は、そのふるさとにしかない独特の風土や伝統文化、産物、無形のおもてなしなどに光を当て、全国ブランドの観光資源に育てることで、継続的な地域活性化に結びつけることを目的としている。
【増田 剛】

海・風・波 地形を生かしたまちづくり

御前崎市は、静岡県の南端に位置する。三方が海に囲まれており、自然の恵みと、地形的特徴である「海」と「風」と「波」を生かしたまちづくりに取り組んでいる観光協会の姿勢が、ふるさとICTネットの「オンリーワンのまち」第2号として認定された。国際的な絶滅危惧種として指定されている「アカウミガメ」が、産卵のために上陸してくる日本の北限として貴重な場所であり、国の天然記念物として指定を受けて、同市教育委員会から保護監視員として受託し、保護活動に真剣に取り組む活動も評価された。

青い海と太平洋側で最大の砂丘「浜岡砂丘」

また、御前崎は東に突き出る形で伸びる岬。このため、遠州灘側は強い湾岸流により砂丘が続き、とくに10月から4月にかけて偏西風が吹くことによって、海岸線には風成樹林と呼ばれる木々が並ぶ。砂丘においても風紋と呼ばれる模様が形成されるのも特徴的だ。さらに、ウインドサーフィンをはじめとするマリンスポーツのメッカとして、世界中の競技者や愛好者に愛されている。過去にも「サムタイムワールドカップ」というウインドサーフィンの世界大会が10年余り開催された実績を持つ。

御前崎市観光協会で記念撮影

ふるさとICTネットは認定件名を「地形を生かしたまちづくり~海と風と波と~」とし、認定授与式には、同観光協会からは会長の下村裕(ゆたか)氏をはじめ、前会長の松井利彦氏、事務局長の小野木邦治氏、ふるさとICTネットからは同事業の公式メディアとして参加する旅行新聞新社社長の石井貞徳氏らが出席するなかで、津田令子理事長から御前崎市観光協会に認定証が渡された。

下村会長は「『オンリーワンのまち』に認定していただき、大変喜んでいる。住民のまちを愛する気持ちや、多くの先輩の活動を通じて私たち観光協会も御前崎市とともに魅力あるまちづくりに向けて歩んできた」とし、「これからもオンリーワンのまち、素晴らしいまち・御前崎となるように精進していきたい」と謝辞を述べた。

ふるさとICTネットは昨年9月に千葉県鎌ヶ谷市の「雨の三叉路」を「オンリーワンのまち」の第1号として認定しており、津田令子理事長は「今後、春と秋の年2回『オンリーワンのまち』に認定していき、3年後には10カ所程度の認定を目指す」と話している。

問い合わせ=事務局・旅行新聞新社(公式メディア) 電話:03(3834)2718。

旅フェアと旅博を統合、日観振とJATA

「ツーリズムEXPO ジャパン」開催へ握手する菊間会長(左)と 山口会長(右)

世界への発信力強化へ

日本観光振興協会(山口範雄会長)と日本旅行業協会(JATA、菊間潤吾会長)は11月8日、東京都内で会見を開き、両者がそれぞれ開催している「旅フェア日本」と「JATA旅博」を統合し、2014年から「ツーリズムEXPOジャパン」として開くことを発表した。統合で、名実ともにアジア最大の旅のイベントとして世界への発信力を強めるのが狙い。

日観振の山口会長は「観光振興は経済活性化に大きな効果を持ち、各国とも大変力を入れている。日本の行政もビザの緩和など取り組んでいるが、こういったことを積み重ね、この分野でもグローバル競争に勝ち抜いていく必要がある」と背景を語ったうえで、「旅フェアと旅博を統合し、オールジャパンで需要開拓をしっかりしていきたい」と述べた。統合については、以前から両者で意見が出ていたが、11年に日本で開催されたWTTCグローバルサミットを機に、グローバル競争への問題意識が高まったことが大きいという。

新ロゴマーク

JATAの菊間会長は「長年の夢が叶い、感無量の思い」と喜びを表現。「五輪開催などを前に2つの旅行イベントが1つになることで相乗的に効果が発揮され、アジアのなかで観光における日本の地位が大きく向上することを望んでいる。『ツーリズムEXPOジャパンに来ればアジアの観光動向が分かる』『日本の観光の新しい魅力が発見できる』と世界中から人が集まり、商談や情報交換ができる場にしていきたい」と意気込んだ。今年の旅博で国連世界観光機関(UNWTO)と包括パートナーシップを結び、UNWTOが旅博へ継続的に参画する覚書も交わしていることも紹介し、「新たなスタートを切る大きな力。舞台は整った」と述べた。

一方、今後のイベントの展開について山口会長は「観光産業のみならずあらゆる分野のプレイヤーの連携が重要。地域の力も結集する必要がある」と言及。また、菊間会長は来場人数を「15万人」としたが、多くなると入場規制をせざるを得ない状況も説明し、「箱のなかにどれだけ集まるかよりも、箱の外にいかに発信するか。発信力を高めることが目的だ」と強調した。さらに、海外と国内、訪日の総合イベントとするうえで、日本政府観光局(JNTO)との連携について聞かれると「JNTOのトラベルマートも一緒に開催することが望ましいと思う。私としては(JNTOの)決断を待っている」と語った。

「ツーリズムEXPOジャパン2014」は14年9月25―28日の4日間、東京都港区の東京ビッグサイトで開く。観光会議と展示、商談会、顕彰事業、前夜祭の5つのプログラムで構成する。運営は、山口会長が委員長を務める「ツーリズムEXPOジャパン」組織委員会が行い、組織委員会の下に設置された実行委員会は菊間会長が委員長を務める。

No.357 47都道府県観光アンケート - 「観光」重視はどの自治体だ!?

47都道府県観光アンケート
「観光」重視はどの自治体だ!?

 「観光立国」宣言から10年が経ち、経済成長への寄与や雇用造成、地域振興など、「観光」への期待が高まるなか、予算額の少なさがたびたび指摘されてきた。旅行新聞新社では47都道府県へ(1)13年度観光関連予算(2)13年度一般会計予算総額における観光関連予算の比率(3)13年度の重点施策――に関するアンケートを実施した。補正予算や人件費の扱いなど各都道府県により条件が異なるので一概に比較はできないが、1つのデータとして紹介したい。

【伊集院 悟】

 47都道府県の2013年度一般会計予算総額における観光関連予算の比率をみると、高い順に、石川県、沖縄県、鳥取県、高知県、青森県、香川県、和歌山県、山梨県、鹿児島県、富山県と並ぶ。

 トップの石川県は2・3%で、観光関連予算額でも123億6637万円と1位になった。ただし、新幹線開業PR推進ファンド造成にかかる貸付金100億円を含んでいるので、それを差し引くと予算額は4位になる。重点施策では、15年の北陸新幹線金沢開業に向けた観光交流施策の戦略的な推進や、開業効果の全県波及に向けた地域の魅力向上をあげるなど、新幹線開業関連に注力している。また、外国人観光客を10倍に増やす「海外誘客10倍増構想」も掲げている。

 

※ 詳細は本紙1525号または11月27日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

カジノ法案提出へ、免許制度で民設民営 (IR議連)

11月8日、自民党本部で行われた観光立国調査勉強会

カジノの解禁を目指す超党派の議員で構成される「国際観光産業振興議員連盟」(IR議連、細田博之会長)は11月12日に開いた会合で、今臨時国会の会期末までにカジノ設置の推進法案を提出することを確認した。来年の通常国会での審議を経て成立を目指す。また、推進法施行後、1年以内に実施法案をまとめる考えだ。

11月8日には、自民党本部で開かれた観光立国調査会勉強会で、IR議連幹事長の岩屋毅衆議院議員が「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(カジノ法案)について説明した。岩屋幹事長は「統合型リゾート(IR)は観光、地域振興につながる成長戦略の一つのツールである」とし、IRの設置数や設置区域は明確に限定し、慎重かつ段階的に導入することを基本的な考え方として示した。

さらに、「大都市型」と「地方型」の2類型で構想することが望ましいとし、「地方公共団体の申請に基づいて、国がIRの設置区域・地点を指定する」とした。

また、カジノの施行は民設民営を基本とし、区域指定を受けた地方公共団体が民間事業者を選定する。これは「民間活力を入れなければ魅力ある施設にならない」という考えからだが、選定された民間事業者は別途、国から免許を取得しなければならない。国は国民の不安などを払拭するために、規制と監視のために内閣府の外局に「カジノ管理委員会」を設置する。同委員会は、立法府、行政府から独立した権限を保持する国の機関として、運営の詳細に関する規制を定め、カジノ施設や運営主体の免許・認証付与、認可に加え、カジノ施行の監視、監督、違法行為の摘発などを担う。

カジノ施行者の売上は一定率を国に納付することが義務付けられ、社会保障の充実など使い道は今後検討される。地方公共団体も、国とは別に条例に定めることで納付金として徴収できるようにする。

青少年への悪影響などの懸念に対しては、入口でIDチェックを行い、未成年の入場を厳格に防止するほか、賭博依存者症患者への対策としては、家族などからの申請があれば入場させない手段も講じる考えだ。

岩屋幹事長は「IR議連は現在約160人の会員を200人まで拡大し、体制の強化もはかっていく」としている。

「カジノ解禁」の動き活発化 ― 観光振興には多面性と懐の深さも

 カジノ解禁への動きが活発化してきた。超党派の議員で構成される「国際観光産業振興議員連盟」(IR議連)は、カジノ設置に向けた推進法案を今臨時国会に提出し、来年の通常国会での成立を目指している。

 カジノ推進派にとって、東京オリンピック開催決定は大きな追い風だ。カジノ導入に向けては2002年に自民党内で野田聖子衆議院議員が初代会長となって、カジノを含むIRについての勉強会がスタートしてから11年が経つ。そんななか、今年9月に2020年の東京五輪開催が決まった。今後多くの外国人が日本を訪れることが予想されるなかで、外客受入整備の一環として、ホテルや大型国際会議施設、飲食店、ショッピング施設などにカジノを含める「統合型リゾート」(IR)の必要性は、より現実味を持つ。

 カジノにも光と影の部分がある。カジノ設置の利点は、観光振興や税収効果、建設や運営にともなう雇用効果などがある。日本は現在、13年9月まで15カ月連続で貿易赤字である。加えて、来春の消費税増税により景気が冷え込めば、税収増加も難しい。外国人観光客を主な対象としたカジノ導入によって、税収効果を高めて行く考え方は十分に理解できる。

 一方、影の部分としては「犯罪の温床になる」といった、マネーロンダリング(資金洗浄)や青少年などへの悪影響を懸念する意見もある。貴重な指摘であり、一つひとつ検証しながら対応を考えていく必要がある。

 カジノは約120カ国で行われているという。カジノ設置の際には、国際的な競争になることは必至で、魅力と競争力のある施設でなければ意味がなく、国の厳しい免許制度のもとで「民設民営」を認める方針だ。

 シンガポールでは、入場料は自国民に対して7千―8千円を課している。これは、一定の抑止効果にもなる。また、カジノの入口で厳格なIDチェックを行うことで、未成年が入り込めないようにすることもできる。

 どこの国であろうと、賭博(ギャンブル)依存症患者は一定の割合で出てくる。スイスなど諸外国では、自己排除プログラムや、家族強制排除プログラムなどを有しており、本人や家族から「入口で入場を拒否してくれ」と事前に申告するシステムを取り入れている。IDチェックによる入場回数の制限も可能だ。

 運営事業者が儲かりすぎた結果、「カジノ王」が生まれないように、国や地方自治体の取り分と、民間運営会社の収益のバランスも重要な課題の一つだ。

 さらに、「現状では地下カジノが横行している。むしろ合法化し、国がコントロールした方が資金の流れが格段にクリアになる」という意見もある。英国では厳しい国のライセンス制度によって、反社会的勢力が入ることができず、上流階級の社交場となっているという。

 世界中でクルーズ旅行が人気を集め、市場が拡大しているなか、日本は伸び悩んでいる。世界的な観光クルーズ隆盛の流れから取り残されている現状の改善策として、カジノ導入の必要性を唱える声も大きい。

 日本を訪れる外国人観光客は、日本の伝統文化やアニメ、料理やショッピングなど目的はさまざまだ。世界中のカジノ巡りを楽しむ愛好者もいる。観光振興には多面性と、何よりも“懐の深さ”が必要だ。存外「案ずるより産むが易し」かもしれない。

(編集長・増田 剛) 

日本観光ポスコン、作品を募集中、12月27日まで

 日本観光振興協会は12月27日まで、「第62回日本観光ポスターコンクール」の作品を募集している。今年1月から12月までの間に制作された(制作される予定も含む)観光ポスターが対象。前回は234点の応募があった。

 作品は地域の観光宣伝に活用され、地域の観光振興につながることが明確に読み取れるものなどの条件を満たすもの。応募資格は応募作品の企画者(発注者)か制作会社。制作会社の場合は、事前に企画者の許可を得る必要がある。

 応募方法は、コンクールWebサイトの応募フォーム(http://compe.japandesign.ne.jp/poscon2013/ )から、ポスターの画像データを提出する。サイズはA0、A1、B0、B1判で、応募点数の制限はないが、組作品は1点につき3枚まで。12月27日の午後5時30分まで受け付ける。

 なお、来年1月中旬に第1次審査を行う予定。1次審査通過作品は後日、ポスターの実物を提出する。

10月、ピンクリボン月間、乳がんテーマに温泉地でイベント

湯谷温泉の旅館を飾るピンクの風船

湯谷、指宿、武雄で開催

乳がん検診の早期受診と治療の大切さを訴える10月の「ピンクリボン月間」に、全国の温泉地でさまざまなイベントが行われた。

1日は愛知県新城市の湯谷温泉で、9軒の旅館などが中心になり「ピンクリボンの日」を初めて開催した。同温泉の旅館では乳がん手術の傷跡を気にして温泉に行けない女性のために、洗い場の仕切や脱衣所の目隠しなど工夫し、旅行が楽しめる環境づくりを進めている。

昨年7月には、同温泉女将会が乳がん経験者に優しい「ピンクリボンのお宿ネットワーク」(事務局・旅行新聞新社)にも加盟し、活動内容を全国に発信している。

この日は乳がん経験者や家族、友人などを対象に、1日湯谷温泉を無料開放。午前11時から午後4時まで無料参加の湯めぐりや人工乳房装着入浴体験、ウイッグ相談会、保険相談会、看護士によるアロマリンパドレナージ体験、美容師によるヘッドスパなど実施。平日の温泉街が約200人の女性たちでにぎわった。

各旅館では玄関や館内にピンクリボンやハート形の風船を飾り、特製のオリジナルランチも用意。乳房再建体験者を囲むお話し会も開いた。

各旅館を巡るスタンプラリーに参加した静岡県の夫婦は、「初めて温泉に来ました。とても楽しかった。また来たい」と嬉しそうに話した。

美塾篤姫フォーラム

一方、鹿児島県の指宿温泉では、指宿の素材を使い、女性の心と体の美を追求する活動を行うグループ「美塾篤姫」が10月8日、指宿市内で乳がんをテーマにフォーラムを開いた。乳がん経験者の講演やパネルディスカッションを行い、乳がんへの知識を深めるとともに、乳がん経験者に優しい温泉地・指宿の取り組みなどについて参加者と意見を交わした。

京都屋ピンクリボンの日

また、佐賀県武雄温泉の旅館・京都屋では10月15日を女性限定の貸切宿にする「ピンクリボンの日」を設定。男女の大浴場を開放し、食事会やミニコンサートを開催。3人の乳がん経験者を交えた茶話会も開き、30人が参加した。同館では6月にも2回同様の会を開いている。女将の前田明子さんは「来年は年4回開く予定です。武雄温泉全体に広がるようにしたい」と話していた。

海外ステイ147万人、国内ステイにも期待高まる(ロングステイ財団調査)

竹内理事長

ロングステイ財団(舩山龍二会長)は10月16日、「ロングステイ調査統計2013」を発表した。同財団独自の推計で、2週間以上滞在する「海外ロングステイ」の2012年人口は147万人(11年141万6千人)となった。近年のロングステイ市場は、シニアに加え、30―40代の若年層が関心を示しているほか、1週間以上の滞在か繰り返し滞在を定義としている「国内ロングステイ」への期待感が高まっているという。

同日、報道関係者を対象に開いた発表会であいさつに立った竹内征司理事長は「長年、調査を行っているとそこからさまざまなことを読み取ることができる。20年前のロングステイ先はハワイやヨーロッパが人気だったが、今は東南アジアが優勢だ。我われの宣伝効果だと思っていたが、ロングステイに関心のない一般の人への調査では20年前と変わっていない。まだまだ我われの努力不足だと私なりに解釈している」と分析した。

弓野理事・事務局長

また、弓野克彦理事・事務局長と山田美鈴主席研究員が登壇し、最新のロングステイ動向や財団の今後の展望などを語った。そのなかで、弓野理事・事務局長は「旅行産業は経済状況などに左右されやすいが、ロングステイ市場は実績をみると影響なく順調に伸びている。市場は安定感があり、ますます大きくなると考えている」と市場の成長に期待感を示した。

トレンドとしては、グローバル化を背景に若年層やファミリー層の関心度が上がったことや、アクティブシニアの増加などで「ロングステイ市場の第2次ブームが到来したといわれている」と紹介。国内ロングステイについても、長期滞在型の旅行商品の見直しの動きがあるなど期待が高まっているとした。

一方、国内ロングステイは「1泊2日の旅行が主流だったため、施設が不足している」ことが課題だという。今後は、国内長期滞在施設の調査や国内ロングステイの基準づくり、新規サービスの開発に取り組む。

将来的には、これまでの海外ロングステイと10年から調査を開始した国内ロングステイに加え、インバウンドロングステイを含めた「マルチロングステイ」を推進していく方針で、日本の国際化と地域活性化に貢献していくことを目指す。

国内ロングステイに関する調査では、人気のステイ先は4年連続で1位が沖縄、2位が北海道、3位が京都、4位が長野だった。滞在施設への希望は、海外では常識だという1部屋単位の料金や週単位・月単位の料金提示などがあがった。

道の駅、20年で1千カ所、全国年間売上げ2100億円

自治体の首長ら約800人が参加

連絡会が総会開く

全国1千を超える道の駅が連携して、その役割や質の確保、地域振興、利用者サービス向上などを目指し、昨年12月に設立した全国「道の駅」連絡会の第2回総会が10月29日、佐賀県鹿島市で開かれた。関係者や駅がある自治体の首長など約800人が参加した。

道の駅は1992年に、通過する道路使用者へのサービス拠点としてスタート。当初100程度だった駅の数も、20年経過して1014カ所(10月現在)にまで拡大している。全国年間購買客数は2億2千万人、全国年間売り上げは2100億円と大手コンビニチェーン並の売り上げを達成している。

総会であいさつに立った本田敏秋会長(岩手県遠野市長)は、「命をつなぐ道路。東北では復興復旧に向けて懸命に取り組んでもらった。道の駅が誕生して20年経過し、その必要性、位置づけをどのようにするか。地域の活性化にいかに結びつけるかだ」と今後の課題を提起。「単なる点にしては駄目だ。1千のネットワークを力にして、光り輝くプロジェクトとして前進させたい」と力強く訴えた。

来賓の国土交通省の徳山日出男道路局長は「20年が経過して、道の駅も第2ステージに入ってきた。駅も近年は農業、観光、福祉、防災、文化など地域の個性、魅力を活かしたさまざまな取り組みが進んでいる。東日本大震災でも道の駅が大きな役割を果たした」と紹介。

「今後は道の駅が目的地となるよう育てることが大事」と強調し、「地域の拠点としての機能を強化し、駅に関わる関係者のネットワークを作り、駅全体の魅力を高めることが必要」と結んだ。

さらに国と地方公共団体とのコミュニケーションを密にするため、国交省道路局内に「地方道交流倶楽部」を9月30日に設置したことも明らかにした。

総会では事業計画として、各ブロック「道の駅」連絡会事務局などの組織体制を把握し、今後の全国連絡会事務局体制のあり方を検討していく組織体制検討会を設置することなどを決めた。

役員改選では群馬県藤岡市の新井利明市長、佐賀県鹿島市の樋口久俊市長が副会長に就任。また、次期総会開催地は栃木県那須町で決定した。

総会終了後にシンポジウムも開催。都市ジャーナリストの森野美徳氏の講演、道の駅5カ所からの報告、6人のパネリストを迎えてのパネルディスカッションも行われた。

JTB代表取締役専務 日比野 健氏「ITの脅威 峠を越えた」

日比野健氏

東南アジアに210億円投資へ、日本国際観光学会開く

日本国際観光学会(会長=松園俊志・東洋大学国際地域学部国際観光学科教授)は10月26日、玉川大学キャンパス(東京都町田市)で第17回全国大会を開いた。「グローバル化とツーリズム」をテーマに、7分科会46件の発表を行った。

基調講演「ツーリズム産業のグローバル化にむけて」では、JTB代表取締役専務で、JTB総合研究所代表取締役社長の日比野健氏が登壇した。

日比野氏は、「インターネット取引が拡大するなかであっても、ネットで調べ、コールセンターで話を聞き、店頭で契約するという動きも出てきている」として、「インターネット・コールセンター・店頭の3つの結びつきを強化する『クロスチャネル戦略』が必要」との考えを示し、JTBグループではコールセンターを熊本に開設し、現在約300人が在籍していると報告した。

また、グーグルでは60%の契約がコールセンター抜きでは成立しないことや、エクスペディアでも旅行の契約が成立するまでに70%がコールセンターを一度は利用する――などの状況のなかで、日比野氏は「ITの脅威も峠を越えた」とし、「経常利益150億円ベースを今後も安定的に出していけるのではないか」と語った。

今後は「グローバル事業への投資を拡大していく」とし、投資額は2013―15年度に東南アジアを中心に最大210億円規模を予定しているという。さらに、JTBがグローバル企業へと進化していくためのビジョンとして、「アジアの経済成長を梃子にインバウンド、アウトバウンド、業務渡航、MICE、Web事業に加え、それら周辺ビジネスを展開し、グローバルレベルでの交流文化を担う企業グループを形成していく」方針で、インバウンド事業については2020年度に取扱額1千億円を目標に据える。

日比野氏は、「中期目標として、グローバル事業でJTBグループの利益の3分の1を確保できる規模を目指す」と語った。