今年も東北支援強化

JATA・菊間会長
JATA・菊間会長

JATA菊間会長“旅の力が社会的に認知”

 日本旅行業協会(JATA)は1月11日、2013年初の定例会見を開き、菊間潤吾会長が今年の事業方針などを語った。そのなかで、国内旅行は昨年末に1千人を東北に派遣した東北復興プロジェクトの評価が高かったことから、今年も引き続き東北への支援を強化することなどを強調した。

 菊間会長は昨年について、「震災後、どうなるかと思案したが、旅行という商品の根強さを実感し、国内外ともに前年を上回る数字となった。国内は、スカイツリーの開業や東京駅の復原があり、海外はLCCの就航や円高で数字が伸びた。また、東北復興のなかでも旅の力というものが社会的にも認知されてきた年となった」と語る一方、「旅行の安全確保の問題で、旅行会社の責任を深く考えさせられる年だった」と述べた。

 JATAの活動については昨年6月の会長就任後、「旅行業界のプレゼンスをどのようにもう一度高めていくのか、見直しを行った」とし、「環境の変化が速いことからスピード感を持って施策を行っていく必要がある。今後の方向性の確認とその準備期間の半年だった」と振り返った。今年は、昨年設置した政策検討特別委員会でまとまった課題に対し、アクションプランを持って実現させていくという。

 そのなかでも旅行業法や約款について「今年は検討が進んでいくものと考えている。課題を整理し、消費者と我われ業者にとってよいかたちに改善を要望していきたい」と強調。長谷川和芳事務局長は、法政委員会内の研究会で、観光庁にもオブザーバー参加をしてもらい、検討していることを補足し、観光庁の「観光産業政策検討会」と連動して進めていくことを語った。

 また、菊間会長は各分野についても所感を述べ、国内旅行の取り組みに対し「会員の6割は国内を扱っているので、国内に力を入れることが会員のためになる」とし、「各委員会のなかでも国内旅行委員会はアクティブに動いている」と評価。宿泊キャンペーンの「もう一泊、もう一度」の拡大などを行っていく意向を示した。東北復興支援については「昨年の1千人プロジェクトは、受け入れ側の評価が高く、参加者からも継続してほしいという要望があった」と報告。国内を扱う会員会社だけではなく、海外専門の会社からの興味も高く、今後も現地視察などを検討していきたいとした。

 海外旅行は「今年は日本ASEANの友好協力40周年、日豪観光交流の年でもある。我われとしては自分たちでどのようにマーケットを作り上げ、提案していくのかを試みる最初の年になるだろう」とし、数字に対しても2016年に2千万人達成の目標に意欲をみせた。一方、中国・韓国との領土問題は「中国、韓国は大きな市場。どのタイミングで問題解決をしていくかがカギとなる。個人的意見として、春の3、4月ごろには復調していくのではないか」と予測した。

 さらに、訪日外国人旅行は、第三者機関が評価するランドオペレーターの品質認証制度をJATAが進めていることに触れ、「4月を目途に募集を行う予定。今、そのルール作りの最終段階を迎えている」と報告。「今後は認証制度のメンバーらと共に、積極的に訪日プロモーションを行っていきたい」と述べた。 

宿の個性で日本一競う

横山公大部長があいさつ
横山公大部長があいさつ

2月20日、第1回旅館甲子園

 宿の個性で日本一を競う「第1回旅館甲子園」が2月20日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開かれる。

 主催する全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部(横山公大部長)は1月10日、東京都千代田区の全旅連本部で旅館甲子園の説明会とプレゼン順の抽選会を行った。

 旅館甲子園は、これまで表舞台に出ることのなかったスタッフにスポットを当て、旅館が守り続けてきた大切な日本文化を若い世代や海外に伝え、業界や地域の活性化を目的として生まれた大会。来場者は700人を予定、全国から選び抜かれた旅館の経営者とスタッフがプレゼン方式で宿の個性「日本一」の取り組みや魅力的な部分をアピールし競い合う。

プレゼン順が決まった5軒の旅館代表者
プレゼン順が決まった5軒の旅館代表者

 本大会出場を決めた5軒の旅館代表者たちはくじ引きにより(1)越後湯沢HATAGO井仙(新潟県)(2)鬼怒川温泉ホテル(栃木県)(3)竹と茶香の宿 旅館樋口(島根県)(4)和歌の浦温泉 萬波MANPA RESORT 日本スタイル(和歌山県)(5)流辿別邸 観山聴月(宮城県)の順で発表することに決定した。

 本大会のプレゼンテーションでは、各宿15分間の持ち時間が与えられ、採点方法は100点満点のうち、書類審査10点、決勝審査として観光庁長官や旅館関係者、コンサルタントなど専門家による審査で80点、残りの10点を会場の来場者にコインを配布しての投票方式となっている。

 協賛企業はリクルートや第一興商など、またドリームスポンサーとして多くの企業も参加している。優勝した宿には、「じゃらん」での特集記事など、さまざまな特典が与えられる予定で、観光庁長官賞も別途用意されている。

 横山部長は「全旅連の青年部長を目指した理由の一つに、旅行甲子園を開催させることが大きな夢だった」と話し、「この旅館甲子園は居酒屋甲子園をモデルとし『それぞれの旅館には日本一が何かひとつは必ずある』をコンセプトに掲げている」と説明した。

 さらに、「我われが旅館の魅力と文化をスタッフと共に誇りを持ち、多くの同業者の皆さんに勇気と希望を与えていく場になればいい。そして来場する若者、若いスタッフに『私たちも旅館経営をしたい、一生旅館で働きたい、もっと旅行に行きたい』と思ってもらえるような大会にしたい。旅館甲子園は2回、3回と継続し発展させていく」と熱く語った。

【内川 久季】

一足早い、「成人式」(はとバス)

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 はとバス(東京都大田区)は1月11日、恒例のバスガイド成人式を行った。祝日にあたる成人の日が業務多忙で、各自治体で行う式典に参加できない場合もあるため、同社独自の成人式を毎年開催している。今年で52回を迎える。

 新成人となるガイドは1都14県出身の19人。当日は、はとバス本社車庫で「祝はとバス成人式」とペイントされたバスの前での記念撮影の後、明治神宮に参拝した。19人の入社は東日本大震災の直後。東北出身のガイドには被災者も数人。とくに宮城県気仙沼市出身の西條麻理さんは自宅が震災し、1人だけ約2週間遅れの入社。「不安いっぱいだったが、周囲の支えで今日を迎えることができた」と語った。

本紙が台湾「旅奇」と提携

 台湾を代表する旅行専門誌「旅奇」を発行する旅奇廣告有限公司(何昭璋社長、本社・台北市)と「旬刊旅行新聞」を発行する旅行新聞新社(石井貞徳社長、本社・東京都)は1月18日、「第38回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」表彰式の前に、両紙が提携紙として今後相互の記事提供や、さまざまな事業連携を行い、協力し合うことで合意した。

 今回の第38回「100選」表彰式・パーティーには、来賓として何社長、劉厚志国際市場部長、蔡雅ブン記者の3氏が出席し、「旅奇」の紙面でも特集企画として紹介される予定だ。

 何社長と石井社長は「今後、台湾で日本の旅行商談会を開くなどさまざまな可能性が考えられる」と握手した。

観光関連に27億円、目利きの観光地強化事業も(12年度第1次補正予算)

 2012年度第1次補正予算が1月15日に閣議決定され、観光関係予算は観光庁計上の25億7千万円と、復興庁計上の2億1千万円の合計27億8千万円となった。事業別にみると、観光庁関係では「訪日個人・ビジネス関係旅行者等誘致の強化事業」に10億円と、「官民協働した魅力ある観光地の再建・強化」に15億7千万円を計上した。

 「訪日個人・ビジネス関係旅行者等誘致の強化事業」では、桜の季節とその後の需要喚起や地域経済の活性化をはかり、主要市場からの個人旅行促進と、東南アジア市場の拡大を通じた送客元の多様化、会議分野での訪日など、地域と連携しつつ積極的な取り組みをはかることでリスクに強い訪日外客構造への転換を促進していく。

 このうち、(1)ウェブ広告などのネット上での情報発信(2)航空会社やクルーズ会社、宿泊・旅行予約サイトなどでの個人旅行特化型共同広告(3)訪問地の多様化をはかる地域と連携した旅行会社の招聘――などの「訪日個人旅行の促進事業」に7億円。高い経済成長やマルチビザの導入などを背景に、高い伸びを示す東南アジア市場で、露出の拡大と商品造成を通じた誘客に取り組むためにメディアや旅行会社の招聘などを行う「東南アジアからの誘客促進事業」に1億円。(1)ミーティングプランナー、インセンティブキーパーソンなどに対するプロモーション(2)モニターツアーの実施(3)ユニークベニューの利用促進――などを行い、企業などの会議や報奨・研修旅行を中心としたビジネス観光の誘致をはかる「ビジネス観光の促進」に2億円を計上した。

 また、「官民協働した魅力ある観光地の再建・強化」では、地域の特色ある素材の発掘や地域と旅行会社、交通事業者、旅行メディアなどの総力結集による確実な商品化と情報発信を行い、魅力ある観光地づくりを推進するため、(1)地域から提案を公募し(2)旅行会社のバイヤーや地域活性化プランナーなどの目利きが選定し(3)目利きを地域に派遣し資源を磨き上げ(4)試行ツアーの造成と情報発信(5)旅行会社と旅行メディアなどへ対して商談会――などを行う。

 一方、復興庁に計上した「東北地方における旅行需要創出事業」では、デスティネーションとしての太平洋沿岸エリアの認知度向上と福島県への旅行需要喚起のため、広報やイベントを開催していく。

 なお、各事業は12年度予算のため、早急に企画・準備を進め、年度内である3月末までに実施する予定だ。

第38回「100選」盛大に祝う

表彰を受ける総合1位の加賀屋
表彰を受ける総合1位の加賀屋

加賀屋、33年連続1位

 旅行新聞新社が主催し、全国旅行業協会(ANTA)と日本旅行業協会(JATA)が後援する新春恒例のイベント「第38回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」および「第33回プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」「第22回プロが選ぶ優良観光バス30選」の表彰式と祝賀パーティーが1月18日、東京都新宿区の京王プラザホテルで開かれた。ホテル・旅館総合100選では石川県和倉温泉の加賀屋が33年連続の1位を獲得。表彰式では「もてなし」「料理」「施設」「企画」の各部門の入選施設も表彰された。表彰式後の祝賀パーティーには約650人の業界関係者が出席し受賞を祝った。

 受賞者や関係者など総勢320人ほどが参列した表彰式の冒頭で、旅行新聞新社の石井貞德社長は「年末に安倍晋三内閣総理大臣に変わり、経済活性化へエンジンをかけ、観光業界を応援していこうという言葉もいただき、観光業界の賀詞交歓会では太田昭宏国土交通大臣が(1)国内観光の充実(2)インバウンド事業の促進(3)東北観光の復興――の3本柱を掲げ、観光に注力することを語っていた。しかし、それを形にするのは、皆さんの弛まない1歩1歩の努力。巳年は脱皮して新しいものが生まれるといわれるが、足下を見直し、考え、スピード感を持って実行に移すことが大切」と語った。「業界の垣根を超えて全国の病院に観光業界のより多くの正しい情報を伝えたいとの思いから、昨年ピンクリボンのお宿ネットワークを立ち上げた。皆さんと一緒になってすべての人が幸せになる旅づくりをしていきたいのでぜひご協力を」と呼びかけた。

 審査委員を代表して、M2代表の三堀裕雄氏は「何としても100選に入りたいという努力の結果、今年は5つの宿が新しく総合100選に入選した。そして9割以上の宿が100選入選を維持し、これは経営者の日頃の弛まぬ努力の賜物だ」と祝辞を述べた。「東北は100選でも健闘が光り、現地でも元気に営業を再開した宿がぞくぞくと出てきている。必死にがんばっている東北を皆でぜひ盛り上げていきましょう」と呼びかけた。

 表彰では、総合、もてなし部門1位の加賀屋(石川県・和倉温泉)、料理部門1位のホテル秀水園(鹿児島県・指宿温泉)、施設部門1位の白玉の湯泉慶・華鳳(新潟県・月岡温泉)、企画部門1位の日本の宿古窯(山形県・かみのやま温泉)ら上位10軒のホテル・旅館に表彰状と記念の楯が贈られた。

 観光・食事、土産物施設100選では浅間酒造観光センター(群馬県・長野原)が9年連続で両部門1位に、優良観光バス30選でははとバス(東京都大田区)が12年連続の1位獲得となった。

≪650人の出席者でにぎわう

 会場を移した新春祝賀パーティーでは、旅行会社や案内所、一般関係者も加わり、各施設の受賞を祝い、今年のさらなる飛躍へ交流をはかった。

 後援団体を代表して全国旅行業協会の鈴木明治副会長は受賞施設へ祝辞を述べ、「38年という長きに渡り100選イベントを続けているという業績に敬意を表したい。このランキングは旅行会社や関係団体にとって本当に役立ち、大いに利用させてもらっている」と旅行会社を代表して語った。さらに、「温泉・旅館は日本の誇りであり、日本文化の象徴。旅館・ホテルのスタッフ、2次交通機関の皆さんと一丸となって、観光業界が盛り上がるよう努力していきたい」と今年の飛躍へ力を込めた。

 来賓の観光庁の志村格次長は「入選された施設と、100選事業など観光業界を盛り立てている旅行新聞新社に敬意を表したい」と祝辞を述べ、「今年は観光立国から10年。東北の観光復興を始めとする国内観光の活性化と、インバウンドでは東南アジアを主要ターゲットに力を入れてく。今日集まった宿泊施設や旅行業者、交通機関のみなさんと一体となり、観光立国実現に向けてがんばっていきたい」と力を込めた。

 安倍晋三自民党総裁からは「観光振興や地域の特色を生かした地域活性化は、日本経済の活性化に向けて必要不可欠な重点課題であり、将来が期待される最も有望な成長分野なので、国も惜しみなく支援していきたい」との祝辞が披露され、そのほか、山本一太参議院議員と丸川珠代参議院議員からの祝辞も披露された。

 33年連続でホテル・旅館の総合1位に輝いた石川県和倉温泉加賀屋の手島孝雄総支配人は「この33年連続1位という結果におごることなく、宿屋という原点に戻り日々精進していきたい」と喜びを語った。

 観光・食事と土産物部門で9年連続1位に輝いた浅間酒造観光センターの櫻井芳樹代表は「足下を見つめ、お客様の目線で考え、初心を忘れずに邁進したい」と喜びを語った。

 優良観光バス部門で12年連続の1位を獲得したはとバスの金子正一郎社長は、「このたびの受賞はドライバー含め社員一同の励みになる。弊社は今年65周年を迎えたので、この受賞を機に気持ちを新たに、お客様により一層評価いただけるよう努めていきたい」とさらなる飛躍を誓った。

 続いて、選考審査委員特別賞「日本の小宿」の表彰式が行われ、やどや三平(秋田県・小安峡温泉)、紀伊之国屋別亭(千葉県・安房温泉)、里山のオーベルジュ薪の音(富山県・南砺市)、了山(岐阜県・鬼岩温泉)、湊のやど 汀家(静岡県・焼津)、湯之上館(島根県・出雲湯村温泉)に表彰状と記念の楯が贈られた。

No.330 新石垣空港、3月7日開港 - 八重山、沖縄観光の将来像語る

新石垣空港、3月7日開港
八重山、沖縄観光の将来像語る

 沖縄県・石垣島に3月7日、新石垣空港が開港する。島東部に整備された新空港は、中型機の就航が可能な2千メートルの滑走路や国際線ターミナルなどを備える。新空港計画から34年。地元の悲願とも言える新空港開港は、八重山観光、沖縄観光にどのような変化をもたらすのか。中山義隆石垣市長、安里繁信沖縄観光コンベンションビューロー会長、宮平康弘石垣市観光協会会長の3氏に、将来像を語り合ってもらった。

【司会=本紙関西支社長・有島誠、構成=土橋孝秀】

沖縄観光拡大の起爆剤に

≪開港後5年で100万人目指す ― 中山

≪オール沖縄でセールス展開 ― 安里

≪八重山全体で「星の島」PR ― 宮平 

 ――沖縄県観光全体の現状は。

安里:2012年の観光入込客数は、11月末までの集計で対前年比が国内6・3%、海外31・7%それぞれ増加した。国内外累計では7・9%の増加だ。12月も順調に推移した。ただ、10月の週末に台風が集中したこともあり、トータルでは600万人弱くらいになるだろう。国内10%、海外50%増の目標設定には届いていないが、確実に成長している手ごたえがある。

 ――八重山観光の状況は。

宮平:年間約78万人の観光客を集めた07年のピーク以降、経済環境や大震災の影響、航空運賃の割高感などで数字が下がり、11年は約66万人まで落ち込んだ。12年は新石垣空港開港プロモーションを、北海道から九州、沖縄までの国内各地、そして海外は台湾、香港、韓国で展開した。その効果もあり、目標としていた70万人の回復は達成できたとみている。V字回復への足がかりになったのではないか。

 ――新石垣空港がいよいよ開港する。

中山:30年以上待ち望んだ新空港開港だ。2千メートルの滑走路を備え、中型機の就航が可能となり、直行便の増便が期待できる。この開港を起爆剤として、観光振興に結び付ける。航空運賃の割高はこれまで指摘されてきたが、直行便就航で、運賃が下がることに期待する。観光客の輸送だけでなく、地元農産物の大量輸送が可能になるなど、さまざまな効果もある。

 

※ 詳細は本紙1491号または2月7日以降日経テレコン21でお読みいただけます。 

空港のレストラン ― もったいない不調和

 早朝、羽田空港に到着した。フライト時刻まで少し時間があったので、レストランでコーヒーを飲みながら飛行機を眺めていた。すると、スーツ姿の若いサラリーマン3人が近くの席でカツカレーを食べ始めた。「仕事に立ち向かう前の早朝からカツカレーを食すとは、素晴らしい姿勢だ」と感心していた。

 間もなく、そのうちの1人の青年が席を立ち、カウンターの女性に向かって歩いて行った。「本当は全部食べたいのだけど、カレーが少なすぎるので……」と、毅然とした態度で半分以上も残っているまっ白いご飯を返却したのだ。見渡せば、残りの2人の男も、別のテーブルでカツカレーを食べている男の皿も皆カレーが極端に少なく、ご飯だけが残っていた。早朝からカツカレーを注文するということを考えれば、皆お腹は減っているのだ。3人の男たちのグループの別の1人は、カレーの無くなったむき出しのカツだけで白いご飯を食べていた。

 私はこのような風景を何度も目にしてきたし、実際自分も似たような経験を多々しているので、ご飯を半分以上残してカウンターに返しに行った青年の無念な気持ちがすごくわかる。本当は、余程の場合でない限り、注文した料理を半分も残して返却なんかしたくはないのだ。

 今さら言うまでもないことだが、カツカレーは、カレーとカツとご飯のハーモニーを楽しむもので、どれか一つでも不完全であれば、すべてが台無しになってしまうという見かけ以上にデリケートな料理である。カレー専門店が出すカツカレーと、トンカツ屋さんが出すカツカレーも、それぞれ重きの置き方に微妙な差があるから面白い。

 空港内のカツカレーは決して安くはない。私なんかは「どうしてこのお店はお客を笑顔にするために、カレーをもう少したっぷりかけてあげないのだろう?」と悔しい気持ちになってしまった。店員だって決して悪気があったわけではない。カウンターの女性は顔を真っ赤にして丁寧に謝り、厨房から今度はカレーがたっぷりとかかったカツカレーが出てきたのだから。

 冷静にしっかりと自分の気持ちを伝えた青年の態度は立派だと思った。しかし、料理屋さんにとって、このテの客との不調和は非常にもったいない。一度でもこういうことがあると、客は二の足を踏んでしまうものなのだ。

(編集長・増田 剛)

外客にWiFi提供、カードで2週間無料に

ID/Passカード
ID/Passカード

みなかみ町、61カ所で

 群馬県みなかみ町(岸良昌町長)は東日本電信電話(NTT東日本)群馬支店と協力し、昨年12月21日から、短期滞在の外国人観光客向けに、Wi―Fiのインターネットが利用できる「ID/Passカード」の提供を開始した。

 NTT東日本のWi―Fiサービス「光ステーション」設置エリアで、2週間無料で接続が可能になる。配布場所は町内の旅館や土産物店など61カ所。

 同町は、昨年8月に開始した「みなかみハピネス・光Wi―Fiタウン観光活性化計画」の第2弾施策として、外国人観光客の受け入れ促進をはかる。同カードの提供は山梨県、長野県長野市に続き、全国で3番目。群馬県内では初めてとなる。なお、福島県ではイベント時に配布した実績があるという。

 接続時はカードに記載されているID・パスワードを利用する。対象は、90日以内の日本入国履歴をパスポートで確認できる外国人旅行者。

第3回かながわ観光大賞、最優はカップヌードルM

表彰を受けるカップヌードルくん
表彰を受けるカップヌードルくん

 神奈川県(黒岩祐治知事)は昨年12月14日、「第3回かながわ観光大賞」の表彰式を行った。グランプリには開館1年足らずで来館者100万人を達成した「カップヌードルミュージアム」が輝いたほか、3部門の大賞と審査員特別賞がそれぞれ選ばれた。

 黒岩知事は「どれも大賞に値するほど素晴らしく、悩みに悩んだ」と審査の過程を振り返った。とくに、グランプリのカップラーメンミュージアムについては「横浜の新しい観光名所として大人気だ。来館すると、インスタントラーメンを発明した安藤百福さんのクリエイティブシンキングが伝わり、勇気づけられる。意義あるミュージアム」と絶賛した。

受賞者と黒岩知事(中央)
受賞者と黒岩知事(中央)

 昨年11月に登場したキャラクター“カップヌードルくん”と表彰を受けたカップラーメンミュージアムの筒井之隆館長は「海外からのお客様にも来ていただきたかったので、国際都市の横浜を選んだが、地元に評価していただいたことは大変名誉なこと。心から嬉しく思う」と喜びを語った。

 審査委員を代表し、東海大学・菅井克行教授は応募全体の印象について「民間レベルで大きな推進力があったことや地域自らが主体となった問題解決型のもの、地域や民、行政が三位一体で地域活性化に取り組んでいる事例が多かった」と今回の特徴を述べた。そのなかで精神性や地域性、創意工夫、集客実績、経済波及効果などをもとに審査を行ったと説明し、各賞の講評を行った。

 グランプリ以下の賞は次の通り。

 【魅力ある観光地づくり部門大賞】小田急箱根ホールディングス「箱根スイーツコレクション」スイーツを切り口に、箱根エリアが一丸で取り組むことで、若い世代など新たな観光客の獲得や上質なイメージ醸成に取り組んだ【観光による地域活性化部門大賞】一夜城ヨロイヅカファーム「一夜城ヨロイヅカファームプロジェクト」パティシエの鎧塚俊彦氏と地元農家、小田原市が連携して施設をオープン。地域の農産物を活用したスイーツショップやレストラン、マルシェなどがあり、月に約1万人が来訪【外国人観光客部門大賞】富士箱根ゲストハウス代表・高橋正美氏「外国人観光客の受け入れを通じた国際観光まちづくり・人づくり」箱根で経営する民宿で、28年間にわたり、75カ国・11万人を超える外国人観光客を受け入れた。「VISIT JAPAN大使」に任命されている【審査委員特別賞】秦野市観光協会「新しい協働型観光振興事業」職員を民間企業経験者で構成。観光資源の発掘やオリジナリティある事業で財源確保に努め、自立した観光協会を目指している。