岩手で「学ぶ防災」

田老の防潮堤で津波の被害を視察

全国商工会議所観光振興大会の分科会

 日本商工会議所は全国商工会議所観光振興大会前の7月4―5日、岩手県内で分科会を実施した。分科会は東日本大震災で被害が大きかった大船渡、釜石、宮古、久慈、気仙沼の5つのコースに分けて行われ、商工会議所会員と観光産業関係者らが参加した。宮古コースの「三陸鉄道と観光船から見る復興地と、そこに暮らす人々とふれあう」を紹介する。

【内川 久季】

 1日目は盛岡駅から出発し、宮古駅、田老地区、浄土ヶ浜園を巡り、2日目は浄土ヶ浜、宮古市魚菜市場などを視察した。

 集合場所の盛岡駅は、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」人気の影響からか多くの観光客が行き交う姿もあり、震災の影響は見てとれなかった。

 盛岡駅から宮古駅まではバスで移動し、車内では震災当時の宮古市や宮古商工会議所、会員の被災状況などが説明され、宮古・田老地区の津波の映像も上映された。

(1番上)落ちないにゃんこ

 三陸鉄道の宮古駅のホームに着くと、猫のマスコットが駅の梁に片手でぶら下がっていた。震災時も微妙なバランスを保ち落ちなかったことから受験生の間で「絶対落ちない」と話題となり、昨年6月には「落ちないにゃんこ神社」がホーム上に設置され、観光客たちから人気を博していた。

 三陸鉄道は、津波により線路や駅舎が流されるなど甚大な被害を受け、一時は全線不通となったが、震災5日後に北リアス線の久慈―陸中野田区間が復旧し、現在は一部区間を除いて運転を再開している。また、不通区間も来年春には復旧し、全線再開する予定だ。

 田老地区では、宮古観光協会の「学ぶ防災」のガイドたちが田老の防潮堤と、たろう観光ホテルを案内した。

 田老は、昔から津波被害に数多くあってきたが、子供たちへの防災教育や年1回の避難訓練、巨大な防潮堤の建設など「防災の町」として有名だった。しかし、予測を超えた大津波は全長2433メートル、海面高さ10メートルの防潮堤を乗り越え、田老の町を飲み込んだ。この津波で、地区人口4434人のうち、死亡・行方不明者は約200人となった。「立派な防潮堤があるという安心感から、津波から逃げ遅れた人もいる」というガイドの話は印象的で、「自分で自分の命を守る意識」がいかに大切かを再認識させられた。

1、2階部分が抜けたたろう観光ホテル

 たろう観光ホテルは、6階建ての建物だが、津波被害で1―2階のフロアはすべて抜け落ち、外壁は鉄骨がむき出しの状態となっている。4階以上の部分は営業当時のままの姿で残っており、現在は6階の客室で津波の映像の上映会場として使用されている。この映像は、同ホテルの松本勇毅社長が撮影したもので、「現地(たろう観光ホテル)に来て、当時のようすを体感してほしい」という社長自身の思いからマスコミには公開せず、同ホテルのみで上映している。映像を見終わった参加者は、撮影場所となった6階の客室の窓から田老の町を見下ろした。

 グリーンピア三陸みやこ(岩手県宮古市)の敷地内に「たろちゃんハウス」と名付けられた商店街がある。同商店街は、2011年9月にオープンした3棟2階建ての仮設店舗。飲食物の販売店や、雑貨や家電などの物品販売店、理容室、学習塾など22の店舗が入っている。主な利用者は同じ敷地内にある仮設住宅の住人や近隣住人で、観光客の数は少ない。今後は、田老に「学ぶ防災」で訪れた人たちや、観光客への利用にも力を入れていくという。

浄土ヶ浜で開かれた交流会

 浄土ヶ浜園では、宮古商工会議所の花坂康太郎会頭をはじめ多くの人が集まり交流会が行われ、美しい景観のなかで三陸の新鮮な魚介類が振る舞われた。

 2日目は、大津波から1隻だけ残った観光船で海へ出発し、被災地域を展望。宮古市魚菜市場では、市民や観光客に人気の商業スポットを視察した。

 そのほかのコースは次の通り。

 大船渡コースは、震災直後から市民に親しまれた「奇跡の一本松」を見学。大船渡市中心商店街では、仮設商店街などを訪れ、地元の人たちとの交流を深めた。

 釜石コースは、鵜住居地域の小中学生が自らの判断で高台まで避難し、津波から逃れた「釜石の奇跡」を現地で紹介し、避難行動を学んだ。

 久慈コースは、「あまちゃん」の主要ロケ地として活気を取り戻しつつある現場を訪れ、小袖海岸などを視察した。

 気仙沼コースは、気仙沼港から内陸800メートルの陸地に打ち上げられた巨大漁船を見学し、津波による被害の大きさを目の当たりにした。

「1年1度は長旅へ」、1ウィークバカンスCP開始(日観振)

キャンペーンキャラの「たび坊」

 日本観光振興協会は7月19日から、長期連続休暇の取得促進と国内観光旅行の振興をはかるため、2013年度「1ウィークバカンス」キャンペーンを開始した。「『1年1度は長旅へ』~長期連続休暇でいつもと違う『長旅』に出かけよう!!~」をキャッチフレーズに、来年3月31日まで展開する。

 具体的な取り組みは、昨年好評だった「旅行川柳コンテスト」の第3回を実施する。国内旅行のさらなる振興と1ウィークバカンスを身近に感じてもらうことが狙い。優秀作品には、同CPに賛同している企業が提供する旅行券や航空券などが贈られる。川柳の募集期間は8月20日から9月30日までの予定。

 また、1ウィークバカンスの魅力や対応旅行商品などを紹介する専用のCPウェブサイト(http://1wv.jp )を開設しているほか、全国の主要駅などにCPポスターを掲出し、広く発信する。ホームページやポスターには昨年、公募で名前が決定したマスコットキャラクターの「たび坊」が登場してPRする。

 CPには31の企業・団体が賛同。各社は長期滞在や連泊などに対応した商品を展開している。

業界人必聴!!、「業界日セミナー」参加募る(JATA旅博2013)

昨年のセミナーのようす

 日本旅行業協会(JATA)は9月12―15日、東京ビッグサイトで「JATA旅博2013」を開催する。このうち、13日は業界日として設定し、旅行業界のさまざまな職域で役立つ業界人必聴の「業界日セミナー」を展開する。旅行業関係者の入場料は無料。

 業界日セミナーは、日常業務にすぐに役立つ最新情報を多彩な講師陣が発信・解説する。今年は、ITセミナーや苦情対策セミナーのほか、世界文化遺産登録で注目が集まる富士山観光の可能性や問題点、人気上昇中のデスティネーション紹介など17のテーマを設定。営業や企画、カウンター、総務などすべての職業領域の現場に対応する話題を盛り込んだ。

 このなかで、メインステージEastで行う「ツアーコンダクター・オブ・ザ・イヤー2013表彰式&添乗シンポジウム」は、日本添乗サービス協会(TCSA)が12年度にツアーコンダクターの模範として多大な貢献をした人を表彰する。“ナニワのカリスマ添乗員”の日本旅行・平田進也氏が添乗員の本音を語るプログラムも設定する。定員は200人。

 また、メインステージWestでは、「四位一体(地域+空港+航空会社+旅行会社)の地域ツーリズム」と題したセミナーを行う。LCCの参入など空港、航空ビジネスを巡る状況の急速な変化や、インバウンド誘致など今後の市場を見据えて地域が動き出すなかで、地域と空港、航空会社、旅行会社の4者はどのような協働ができるのかを討論する。定員は200人。

 今年話題のセミナーは「富士山の現状と課題について―合力の取り組み―」。世界文化遺産登録で、日本の山から世界の山になった富士山にさまざまな来訪者が訪れるなか、今後の対策などを現地エコツアーガイドの視点を通じて伝える。定員は100人。

 デスティネーションセミナーの注目は、「未知の国 トルクメニスタン」。カスピ海の東に位置する国で、今までほとんど観光情報がなかったが、今年初めてブース出展が決定した。このタイミングに合わせて観光大臣も来日し、現地観光事情を紹介する。定員は60人。

 業界日セミナーの開催時間は午前11時から午後6時。会場は東京ビッグサイト東1・2・3・6ホールに設置したメインステージWest/EastとセミナールームA―C、G―H、J―K。事前登録は、旅博公式ウェブサイト業界向けページ(https://www.b.tabihaku.jp/form/prior )から。なお、同日は有料プログラムの「国際観光フォーラム2013」も開催しており、8月23日まで参加者を募集している。

訪日上半期22・8%増、6月は4月に続く90万人超(JNTO)

 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)がこのほど発表した6月の訪日外客数推計値は、前年同月比31・9%増の90万1100人。4月に続いて90万人を突破し、単月ベースで過去2番目、6月として過去最高となった。また、13年上半期(1―6月)の累計は同22・8%増の495万4600人となった。

 6月は訪日旅行の閑散期であるが、円高の緩和により生じた旅行費用面での割安感により大きな伸びを示した。市場別では、唯一マイナスとなった中国を除く、ほとんどの国で2ケタ台の増加。台湾、香港が単月として過去最高を記録したほか、韓国、タイ、シンガポール、マレーシア、ベトナム、インド、フランスが6月として過去最高を更新した。

 また、上半期の累計では台湾、香港、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、ベトナム、インド、オーストラリア、フランスが過去最高を記録している。

 市場別にみると、韓国は同39・0%増の21万1500人で、6月として過去最高を記録。訪韓日本人の減少で、韓国発航空券のプロモーション運賃が設定され、訪日旅行への誘因となった。上半期累計では同38・4%増の132万200人。

 中国は、同21・4%減の9万9千人と、依然として団体旅行を中心に減少が続くが、マイナス幅は徐々に少なくなってきている。上半期累計では同27・0%減の53万6200人。

 単月として過去最高を更新した台湾は、同80・6%増の22万7千人となった。需要が高いため航空券やホテルなどの仕入れ価格が高く、ツアー料金が値上がり傾向だが、引き続き訪日旅行数は増加中。上半期累計では同49・4%増の102万9700人。

 香港は、同69・0%増の7万4700人。都市圏へのショッピング目的の旅行者が多く、単月として過去最高を更新した。上半期累計では43・1%増の33万6100人。そのほかでは、タイが同50・6%増の2万500人と、12年4月以降、15カ月連続で各月の過去最高を更新中だ。シンガポールは同64・2%増の2万1700人、マレーシアは同16・0%増の9800人、ベトナムは同78・5%増の6300人、インドは同24・6%増の7千人とそれぞれ6月として過去最高を更新。放射能の影響の強かったフランスも同31・5%増の1万1400人と、6月として過去最高を記録し好調となった。

 なお、出国日本人数は同11・9%減の130万6千人と、5カ月連続で前年同月を下回った。

観光庁長官に久保成人氏

久保成人長官

 8月1日付で4代目となる観光庁長官に久保成人氏が就任した。

 久保 成人氏(くぼ・しげと)。大阪府出身の59歳。1977年京都大学法学部卒業後、同年運輸省入省。鉄道、航空、海事など運輸畑を歩み、07年鉄道局次長。09年海上保安庁次長、10年鉄道局長、12年大臣官房長を経て、13年8月観光庁長官就任。

トップツアー、東武の子会社に、東武鉄道が株式取得へ

訪日、団体旅行強化へ

 東武鉄道(根津嘉澄社長)は7月31日に開いた取締役会で、トップツアー(石川邦大社長)の持株会社のティラミス・ホールディングス(飯沼昭社長)の全株式を取得することを決めた。これにより、トップツアーは東武鉄道グループの子会社になる。株式譲渡実行日は8月30日の予定。

 東武鉄道は、昨年開業した「東京スカイツリー」などが好調に推移し、さまざまな事業に好影響を与えていることから、観光事業の強化を持続的成長に重要なものとして位置付けている。この点で、トップツアーは全国116カ所に加え、北米、アジア、欧州、豪州のネットワークを持つため、今回の子会社化で、これまで関東に集中していた東武グループの旅行サービスの存在感を全国に広めることが可能になるという。また、トップツアーは訪日旅行や団体旅行の分野で強みを有しているため、全国や海外から東武沿線への観光客誘致を期待する。

 一方、東武グループには旅行会社の東武トラベルがあるが、株式移行後も両社は現行体制を維持する。東武鉄道グループ事業部の福水正徳部長は「両社の旅行会社は得意な分野も違うため、当面は独自に運営を行うが、シナジー効果を得るにはどのような方向や枠組みが最も効果的なのか、今後検討していきたい」とし、協力できる分野は連携をはかっていくという。

No.348 全国女将サミット2013福島 - 昨年に続く東北観光復興大会

全国女将サミット2013福島
昨年に続く東北観光復興大会

 「全国旅館おかみの集い」運営委員会と旅行新聞新社は7月24日、福島県郡山市の郡山ビューホテルアネックスで「全国旅館おかみの集い―第24回全国女将サミット2013福島―」を開いた。「感謝そして未来へ~笑顔と交流、勇気と前進~」をテーマに、昨年の仙台開催に続く東北の観光復興大会として、全国から約130人の女将が福島に集まった。開会式には内閣総理大臣夫人の安倍昭恵氏も駆けつけたほか、夕方からのパーティーには多数の来賓を含む約250人が参加した。

 

女将のための 女将による 女将の会議、約130人の女将が参加

 小口潔子運営委員長(福島県・四季彩一力)は「今回は昨年に続き、東北復興支援大会で、まだ大震災の爪痕癒えぬ福島での開催となった。地震、津波、原発事故という大きな試練を受けた福島の女将たちは未来に光を見出すよりも、不安をひた隠しながら、日常の仕事の処理に追われる日々が続いていたが、お客様の『ありがとう』という一言が心に灯を灯してくれることに気がついた。そこで、その言葉に感じた自分たちの心を大会のテーマに選んだ」とあいさつ。このほかにも、震災を体験した運営委員の女将たちのつぶやきをすべて盛り込み、「感謝そして未来へ―笑顔と交流、勇気と前進―」というテーマに決定したことを紹介した。
 

 

※ 詳細は本紙1512号または8月23日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

都市と農村の提携 ― 対極の相互補完関係を

 尾道の志賀直哉旧居から穏やかな尾道水道を挟んだ向島を眺めていたとき、「あの島の安い宿に滞在して、魚釣りをしながらのんびりしたいな」と思った記憶がどこかに残っていて、この夏、尾道を再訪し、向島の一軒家を借りて過ごした。広島ではもう1カ所滞在した。潮待ちの港だったことでも知られ、瀬戸内海に面した大崎下島で重要伝統的建造物群保存地区にも指定されている御手洗地区の船宿に泊まった。現在は橋が架かり、呉市内から車でも行けるようになった。遊郭・女郎文化の面影を残す「なごみ亭」という1日1組限定の宿に宿泊した。ここでも釣りを楽しんだ。

 瀬戸内海の美しい小島を幾つか訪れ、のどかな夏を感じる時間の中で、都会と田舎の相互補完関係が進めば、もっと観光産業も活躍する場があるのではないか、体力が自慢のイキの良い若い警察官と、知恵と経験豊かな老警察官がいつもペアであるように、都市と農村が対極の補完関係を築けば、問題点は少しずつ解消されていくのではないか……と風情のある町並みと静かな海を眺めながら思った。

 類似性のある海外都市との姉妹提携に加え、国内では都市と農村が越県して連携を進めているようだ。たとえば、東京都港区と岐阜県郡上八幡市は徳川家康の家臣・青山家が江戸時代、美濃郡上藩の藩主になったことを縁に、交流基本協定を結んでおり、双方の子供たちが地元ではできない体験・交流を促進する事業が行われている。

 社会全体にとっても相互にメリットは大きい。役所や民間企業も人材交流を行うことで、新たな価値観を発見する機会を得るかもしれない。希望者には、移住しやすい環境を整えることも有効だ。農産物の流通経路の確立、不足しがちな医師や弁護士の派遣制度など、双方の強みが、弱みを補完し合える。

 この都市と農村の提携は、災害時にも大きな力を発揮する。東京都渋谷区では、災害時相互応援協定を鹿児島市(鹿児島県)、大館市(秋田県)、飯田市(長野県)、河津町(静岡県)などと結んでいる。大災害が発生した際には、優先的に物資を送ったり、被災者を積極的に受け入れることで、相互の住民に安心感が与えられる。

 一つの自治体ではすべてを満たすことは不可能だ。都市と農村の補完関係のさらなる増加を望む。

(編集長・増田 剛) 

2014年度版「プロが選んだ日本のホテル・旅館100選」書籍発売!

 みなさま、おまたせしました!!
2014年版の「プロが選んだ日本のホテル・旅館100選」書籍が自由国民社さんから本日8月9日に発売されました。定価 は2,000 円(本体 1,905 円 + 税5%)、A4変形判、オールカラー 176ページです。

当社が主催し、今年1月に発表した「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」に入選したホテル・旅館の施設や温泉、食事について詳しくご紹介しています。今年度版は一部のお宿については携帯電話で読みとる「2次元バーコード」や「おすすめプラン」も掲載しました。さらに、「100選」の選考審査委員が選んだ「和風の宿」も紹介しています。

巻末には「総合」のほか「もてなし」「料理」「施設」「企画」各100選の入選施設一覧をリストとして掲載しました。まさに、ホテル・旅館のガイドの決定版!といえる本です。ぜひお手にとってご覧ください。

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