クラツーのサブスク、11月に13本のオンライントークライブ開く 著名人の生出演など

2021年11月2日(火) 配信

11月のオンライントークイベントのイメージ

 クラブツーリズム(酒井博社長、東京都新宿区)がサービスを手掛けるサブスクリプションサービス「クラブツーリズムパス」は11月、主要サービスの「オンライントークライブ」で13本のオンライントークライブを開く。

 オンライントークライブは、著名人やその分野に明るいゲストが生出演する趣味のオンラインライブイベント。「歴史」「鉄道」「登山」など13種類のテーマ(趣味)で開き、クラブツーリズムパス会員ならどのテーマでも参加し放題となる。各テーマは、未経験者を想定した「初心者」の視点からもトークを展開するうえ、詳しいゲストから発信されるリアルな情報とともに、ライブ感も楽しめる。

 マラソン部が主催の「半端なくない 大迫家の食卓」は13日、元トップアスリートの大迫傑選手の妻・大迫あゆみさんをゲストに迎え、アスリートに必要な栄養素や食事の摂り方をアメリカから生中継で紹介する。開催時間は午前10:00~11:00。

 歴史部が主催の「今さら聞けない学校では教えてくれないシリーズ第2回」は24日、お笑い芸人のフルーツポンチ・村上健志さんやお城インスタグラマーKAORIさんなどをゲストに、源頼朝について掘り下げていく。開催時間は午後6:30~7:15。

 また、野球部(野球だいすきクラブ)が開く「栄光の90年代 野村克也“ID野球の真髄とは?ヤクルト黄金時代ナイト」が29日、90年代を支えた元選手の飯田哲也さんと川崎憲次郎さんをゲストに迎えるなど、好きな趣味を楽しめるコンテンツを用意している。開催時間は午後6:00~7:00。

11月のオンライントークライブ予定

 クラブツーリズムパスは、KDDIと協業で2021年10月からスタートしたサブスクリプションサービスで、「趣味」「生活」「旅行」の3ジャンルにおいて、オンラインサービスを提供している。「趣味」のジャンルでは、趣味のオンデマンド講座「学び放題」と、生配信の「オンライントークライブ」、各テーマに紐づいたリアルイベント「オフ会」の3本柱で展開していく。月額利用料550円。

「観光革命」地球規模の構造的変化(240) 岸田政権と観光立国

2021年11月2日(火) 配信

 岸田文雄首相は内閣発足から10日後の10月14日(木)に衆議院を「奇襲解散」した。解散から10月31日(土)の投開票まで17日間という戦後最短の短期決戦になる。この原稿は衆院選の真っ最中に執筆しているが、多くのメディアの報じるところによると、今回の衆院選では自公による与党体制の継続が確実視されている。そのために岸田政権の継続を前提にして観光立国の行方を探ってみたい。

 岸田首相は「分配なくして、次の成長はなし。成長と分配の好循環を実現する」と述べて、効率と競争を優先する新自由主義路線の見直しを提唱し、「新しい資本主義の実現」を経済政策の柱にしている。

 9年近く続いたアベノミクスの恩恵は大企業や富裕層に偏り、格差の拡大を助長したために実質賃金の下落が続き、消費不振と低成長が生じた。岸田首相は自民党総裁選の際に中間層への所得配分を強化する「令和版所得倍増」を目指すと訴えていた。コロナ禍で疲弊する国民生活を立て直すためには、アベノミクスで広がったとされる所得格差の是正が不可欠である。

 岸田首相は衆院選の前に首相直属の機関として「新しい資本主義実現会議」を設置し、ポストコロナ時代の経済社会ビジョンを策定し、具体的な政策の立案を行う体制を整えている。既に15人の有識者が会議メンバーとして公表されている。

 安倍政権や菅政権でブレーンとして重用され、訪日観光立国政策の旗振り役を担ってきた竹中平蔵氏やデービッド・アトキンソン氏などはメンバーに入っていない。さらに自公政権の中枢で長らく「観光立国」政策を力強く推進してきた菅義偉氏と二階俊博氏が官房長官・首相や自民党幹事長などの要職を離れたので、今後の観光立国政策は大きな変化を被る可能性が大である。

 新しい資本主義実現会議のメンバー構成を見ていると、観光立国を強力に応援する人は居ないようである。従って、これまでのようなインバウンド観光に力点を置いた「観光の量的拡大」ではなく、地域主導による地域資源の活用に力点を置いた「観光の質的向上」にシフトしていくべきだ。ポストコロナ時代における日本観光の安定的発展のためには国内旅行の充実化が不可欠であり、その前提として岸田政権による「中間層の所得倍増」の成否が注目される。

 

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

 

全旅連、福島県で全国大会開く コロナでも持続可能な宿へ

2021年11月2日(火) 配信

会場のようす。感染防止のため、各都道府県の理事長など約70人が出席

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(多田計介会長、1万5288会員)は10月25日(月)、福島県いわき市のスパリゾートハワイアンズで第99回全旅連全国大会を開いた。

 新型コロナウイルス感染防止のため、各都道府県の理事長など約70人が出席。会員にはユーチューブのライブ配信で会場のようすを伝えた。コロナ禍でも持続可能な宿を目指すことはじめ、旅館業法や風営法の見直しなど、方向性を確認し、大会宣言・決議としてまとめ、結束を強めた。

 多田会長は冒頭、47都道府県の各支部が組合員の要望をまとめた冊子を10月31日(日)に投開票された衆議院選挙の一部立候補者へ渡したことに触れ、「選挙後の補正予算編成で業界への補助を検討してもらえる」と厳しい経営環境下でも同会に入会する意義を説いた。

 さらに、「年内までに需要が戻らない場合、一部組合員が事業継続を諦める」との危機感から、「今後、Go Toトラベルキャンペーンの早期再開を強く求めていく」と方針を示した。

 多田会長はこれまで、関係省庁への要望で違法民泊が拡大するなかで民泊新法が制定されたことや、人手不足解消のために外国人労働者の受入態勢の整備に向けた「宿泊業技能試験センター」の設置などを振り返り「Go To再開も、一致団結して要望すれば、希望が叶う」と自信を見せた。

 今年、災害時に宿泊施設を避難所として活用する協定を47都道府県と結んだことについても語り、「7月に静岡県熱海市で発生した土砂災害時には、協定が生かされ、組合員の宿が被災者を受け入れた」と報告。今後、宿泊施設が地域住民の生活に欠かせないことが社会に広まった際には、「旅館業法や風営法の改正につなげることができる」との見方を示した。

 同大会の開催地は東日本大震災から10年を迎えた福島県の復興状況を体感するために選ばれた。

 多田会長は「参加した組合員は、ほかの宿泊施設の従業員に『福島県が安全であること』を広く伝えてほしい」と話した。

 第24回「人に優しい宿づくり賞」は、ホテルゆがふいんおきなわの「インクルーシブな社会実現に向けて、デュアルシステム教育で学校と企業の連携」が受賞した。

 100回となる次回は来秋に、東京都千代田区のホテルニューオータニで開催することが決まった。

福島第一原発を視察 敷地の96%平服可に

 福島県の復興状況をより理解しようと同会は全国大会の翌日、東日本大震災で水素爆発を起こし、大量の放射能を放出した福島第一原子力発電所を視察した。

 参加者20人は、宿泊地のスパリゾートハワイアンズを午前8時に出発した。

 9時には、廃炉資料館に到着。廃炉作業に8兆円掛かり、終了目途を2050年度に設定していることや、一部の核物質を取り除いた処理水を陸地から約1㌔の海に流す計画、敷地の96%が平服で過ごせることなど説明を受けた。

 10時には、東京電力が用意したバスで帰宅困難区域にある同原発に着いた。1人ひとりが線量計を携帯しながら、大事故を起こした第1―4号機を約20㍍離れた場所から作業のようすを見学したほか、処理水タンクや津波で損傷した鉄塔、震災当時に現場の指揮を執った免震重要棟なども巡った。

 すべての見学場所を巡ったあとには、視察で被爆した放射線量が、歯科医院でのレントゲン約1回分のほか、病院で上半身をX線で撮影した際に浴びる量の10分の1程度に当たる0・01~0・02マイクロシーベルトだったことを確認した。

 参加者は「テレビで見るよりも事故の悲惨さを感じた」や「近くまで行っても、日常生活で被爆する量と変わらないことから、原発から離れた地域は安全だと感じた」などと述べた。

 なお、同県が安全であることを多くの人に知ってもらうため、東京電力は、原発の視察を受け付けている。旅行会社が催行する団体旅行も受け入れてきた。

 これまで、1カ月当たり約1千人が訪問している。

山代温泉  無料バスなど運行 ライトアップイベントも

2021年11月2日(火) 配信

温泉街を幻想的に彩る「やましろナイトプロムナード2021秋」

 石川県加賀市の山代温泉は秋から冬にかけて、加賀温泉駅と温泉街を結ぶ無料シャトルバスや、近隣観光も楽しめる送迎フリー観光バス・グランキャブの運行、温泉街のライトアップと、充実のおもてなしで観光客を迎え入れる。

 同シャトルバスは11月30日まで、参画旅館宿泊者を対象に毎日運行する。加賀温泉駅からは午後2時10分発と3時10分発、4時10分発と1日3便運行する。予約不要で各便先着20人限定。温泉街では、山代温泉東口、山代温泉総湯・古総湯、山代温泉桔梗が丘の3カ所に停車する。所要時間は約20―40分。

 北陸3県送迎フリー観光バスは、山代温泉への送迎を兼ねて、富山や福井、金沢などの近隣観光が一緒に楽しめるお得なバス。参画旅館を利用する10人以上の団体が対象で、昼食などの日帰りでも利用できる。

 山代温泉発着で、山中や片山津、橋立など加賀・小松エリアを周遊するものや、金沢発でひがし茶屋街や兼六園・金沢城などを巡り、山代温泉にチェックインするルート、山代温泉をチェックアウト後、砺波チューリップ公園や五箇山合掌造り集落を回り、富山駅へ向かうルートなど、発着のいずれかが参画旅館になっていれば、コースは自由に組み立てが可能。

 利用するには宿泊施設に事前予約が必要。バス運賃は無料だが、行程で発生する有料道路料金や駐車代、施設入館料、食事代などは別途負担となる。

 6人までの小グループや個人客向けには、グランキャブ(高級ミニバン)を利用した「ラグジュアリートリップ」も実施。送迎フリー観光バス同様、発着のいずれかが参画旅館になっていれば、コースの組み立ては自由自在。革張りシートやフリーWi―Fiを完備した豪華仕様の車両で、家族や恋人、親しい仲間内だけの優雅な旅を満喫することができる。

 こちらも参画旅館宿泊者限定で利用は無料。宿泊旅館に事前申し込みが必要となる。送迎フリー観光バス、グランキャブともに、来年2月末まで運行。ただし、予算に達し次第終了となる。

 また、温泉街では11月28日まで、光と音で幻想的な空間を創出するイベント「やましろナイトプロムナード2021秋」を実施している。

 山代温泉のシンボル「湯の曲輪」につながる温泉通り中ほど(葉渡莉前)をプロジェクションマッピングで演出。花や水、幾何学模様など、和と伝統をテーマにした幻想的な映像が、音楽に合わせて温泉街を照らし出す。同会場では、伝統芸能「一向一揆太鼓」のパフォーマンスも行う。実施時間は午後8時20分から9時20分まで(雨天中止)。

23年日本発着クルーズの販売開始、10周年でプレゼントCPも プリンセス・クルーズ

2021年11月1日(月) 配信

23年は日本発着クルーズ就航10周年

  プリンセス・クルーズは、11月1日(月)から2023年日本発着クルーズの一般販売を開始した。23年日本発着クルーズは、23年3月15日~11月9日出発の期間で、全22コース、32 出発日を設定し、韓国、台湾、ロシアを含む計4カ国35港を訪れる。また、2023年は日本発着クルーズ就航開始から10周年を迎える。これを記念し、抽選で10組20人に23年日本発着クルーズが当たる、「日本発着クルーズ就航10周年記念 豪華クルーズ旅行プレゼントキャンペーン」を実施する。

  13年に、サン・プリンセスの就航で運航を開始した日本発着クルーズは、14年には日本で建造され、日本の顧客向けにカスタマイズされた客船、ダイヤモンド・プリンセスが就航し、その後外国客船として定期的な日本発着クルーズの運航を続けてきた。これまでプリンセス・クルーズが日本発着クルーズで訪れた日本の寄港地は、母港である横浜と神戸を含む全国43港。

  23年日本発着クルーズは、横浜と神戸を母港として、四季折々の風情と日本の魅力を再発見できるクルーズを用意する。沖縄と台湾を訪れるリゾートクルーズや、北海道とロシアを巡る人気の定番コースに加え、桜の時期に合わせて北日本を巡る4月29日横浜発「ゴールデンウィーク 花時の北日本と韓国 9日間」が登場。また、夏を代表する人気の高いコースの4つの夏祭りを一度に巡る8月4日横浜発「日本の夏!竿燈・ねぶた・よさこい・阿波おどりに沸く周遊クルーズ・韓国 11日間」や、熊野の大花火を船上からゆったり鑑賞する8月14日横浜発「熊野大花火と四国・九州と韓国 10日間」、日本三大祭の1つである天神祭で活気あふれる大阪を訪れる7月19日発「天神祭で華やぐ大阪と九州・韓国 9日間」も取りそろえる。

  クルーズをより多くの人に楽しんでもらおうと、5泊6日のショートクルーズを4出発日で用意したほか、ゴールデンウイークとシルバーウイークの時期に合わせたコースは、クルーズ初心者や現役世代にも参加しやすく設定した。船上でも快適なインターネット環境を提供する洋上最速クラスのWi-Fiサービス「メダリオン・ネット」を活用し、ワーケーションも実現できる。

 また、 22年の運航再開に合わせて導入する最先端テクノロジー「メダリオン」により、船内での位置情報や各施設の混雑状況の確認、各種デバイスや客室のテレビから専用アプリを通じた食事や飲み物、船内ショップの商品などの注文ができ、物理的な接触機会を減らすことができる。事前にチェックイン時間を選択することで、乗船時のソーシャルディスタンスを確保し、スムーズな乗船手続きを実現するなど、新型コロナウイルス感染症対策を強化。安心して過ごせる船上体験の提供をはかる。

  なお、11月30日(水)までの早期予約で、特典などが付くキャンペーンを用意しているという。

〈旬刊旅行新聞11月1日号コラム〉代替が利かない―― 組織の中で守備範囲の広いスタッフ

2021年11月1日(月) 配信
 
 

 最近、血圧が高くて、裏通りの古びた病院に通っている。外観は昭和的。担当の女性医師も、このIT社会全盛のなか、すべてアナログで通している。私の話したことをパソコンに打ち込むのではなく、小さな文字でノートに書き写す。

 
 そして、手元にある分厚い医薬書をめくり、きっちりと読み込んでから適当と思われる薬を処方してくれる。先生が医薬書のページを指先でめくる間、手持ち無沙汰な私はつい、先生の横顔を盗み見している。

 
 いや、でも、懐かしい風景である。今は何でもスマートフォンで調べてしまうが、医療の専門家であるのに、昭和の中学生のように真面目に書物をめくる白衣の姿は、とても誠実で、信頼できるように映ってしまう。

 

 
 私の三男坊は航海士で、海図など専門的な書籍が山ほど積み重ねている。義理の妹は看護師で、医療関係の書籍がたくさんあった。こういった特別の知識と経験が必要な道を歩む人たちは、何となく生きてきて、これからも何となく生きていく私には、どこか羨ましく思える存在なのだ。

 
 先日、カスタム専門のバイク屋に行った。そこの店は、通常はやってくれない難易度の高いカスタムにも相談に乗ってくれるので、心強い。私の最も苦手分野である複雑な電気の配線なども見事に仕上げてもらえる。さすが専門家だと感心してしまう。

 
 また、現在、書籍の出版に向けて表紙デザインや色指定で、デザイナーに依頼した仕事が数点あったが、配色などプロの仕事ぶりに魅了されてしまった。やはり素人があれこれ悩むより、その道の専門家に頼んだほうが安心だし、仕事も早いと再認識した日々だ。

 

 
 特殊で高度な知識と技量を持つ専門家は、その専門性ゆえに、一般的に報酬も高い。では、サービス産業はどうだろうか、と考えてしまう。

 
 例えば、旅館やホテル、レストランや飲食店などのホールスタッフは、それほど特殊な技量や知識がなくても仕事は可能だ。花形は、シェフや調理長であり、ホールスタッフは、いくらでも代替が利く存在として扱われることもあるのではないだろうか。

 
 しかし、今やサービス業ではマルチタスク化が一般化してきている。一方で専門性の高い分野では仕事がさらに細分化されている弊害もあると聞く。

 
 そうすると、守備範囲が広いスタッフのほうが、組織的な動きの中では、重宝されるべき存在なのではないかと思う。

 
 電話や接客、レジ、清掃、苦情対応も、臨機応変に動けるスタッフは一見、スター性はないかもしれない。だが、代替が利くのは、むしろシェフの方かもしれない。

 

 
 医師やエンジニアなどは特殊な技術を持っているが、同様の技術を有する別の人でも依頼できる。しかし、日常的な業務をそつなくこなし、大変そうな素振りもみせない人は、突然いなくなったときに機能不全を起こし、穴の大きさに気づく。

 
 スポーツの団体戦を見ても、サッカーのボランチ、野球のショートストップ、バレーボールのレシーバーが窮地を救う守備範囲の広さに感動する。

 
 サービス業も繁忙時間はさながら戦場だ。足を止めず、視野と守備範囲が広いスタッフがいるだけで、現場の士気は高まる。

 

(編集長・増田 剛)

【特集No.595】箱根塔ノ沢温泉「一の湯」 マニュアル化で業務工程を明確に

2021年11月1日(月) 配信 

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その人気の秘訣を探っていく対談シリーズ「いい旅館にしよう! Ⅲ」の9回目は、神奈川県・箱根塔ノ沢温泉「一の湯」社長の小川尊也氏が登場。一の湯は、スタディスト(鈴木悟史社長)のマニュアル作成・共有システム「ティーチミー・ビズ」を活用し、毎日マニュアルを更新している。内藤氏と「マニュアル化で業務工程を明確化する」取り組みについて語り合った。

【増田 剛】

 ――小川社長は一の湯に帰る前は何をやられていたのですか。

 小川:大学を卒業後、イタリアンレストランチェーンのサイゼリヤで7年間、店長など店舗オペレーションに携わっていました。
 2015年に箱根は噴火の警戒レベルが上がり、先代(父)から「戻ってきてほしい」と言われました。「跡を継いでくれ」とは一度も言われたことは無かったのですが、その一言が胸に響き、即座に宿に帰ることを決意しました。
 15年から1年間、一の湯の現場で商品開発部の立ち上げや、PB(プライベート・ブランド)などにも着手しました。17年に16代目の社長に就任しました。

 内藤:なぜサイゼリヤに入社したのですか。

 小川:一の湯がサイゼリヤと同じように旅館をチェーン展開していることは、子供のころから知っていました。セントラルキッチンが存在し、予約センターが分離しているなど、普通の旅館とは違うことは意識していました。「チェーンストアを自ら経験してみたい」という思いがあり、さまざまな選択肢の中で、食を通して日常の豊かさを提案するサイゼリヤの理論やビジョンに惚れて入社しました。

 内藤:サイゼリヤでは具体的にどのようなことをやられていたのですか。

 小川:店長としてお客様と対峙しながら、現場のコントロールや「どうしたらお客様に喜んでいただけるか」を追求していました。「何があっても、お客様、従業員、取引先、株主のために動く」という、理念にブレがないことを徹底的に学びました。
 一の湯に入って内部を見ると、まったく違っていました。全社員に「一の湯の経営理念は?」と質問しましたが、誰1人言えませんでした。サイゼリヤでは新卒を大量採用し、入社後1カ月間はホテルに「館詰」で徹底的に教育していきます。

 内藤:当時の一の湯を、あえて批判的に課題を挙げていただくと、他の旅館も共通した課題として参考にもなります。

 小川:3S主義という部分、つまり「標準化(Standardization)」「単純化(Simplification)」「徹底化(Specialization)」が何一つできていませんでした。
 業務マニュアルは一応ありましたが、我流でやっていました。どこの店舗に行っても物の配置が異なっていました。調理方法や、道具もバラバラでした。「これが正しい」という1本の軸、「正解」を作ってあげないと、商品の品質がブレますし、お客様の印象も変わってきます。
 まずは経営理念とマニュアルを作ることからスタートしました。マニュアルをバインダーにしていましたが、常に差し替えていくべきものが、2015年に宿に入ったとき、前回の更新が06年というような状態でした。

 内藤:盛り付け方がバラバラなど、実際にクレームなど問題は起こっていましたか。

 小川:現場で問題が発生していたかどうか、それすらも分かっていなかったと思います。「報告する」という概念がなかったので、トラブルは現場で対応して、それで完結していたと思います。今はクレームを含め、お客様の声が現場からたくさん上がってきます。
 離職の問題もありました。新入社員も2、3年で辞めてしまう理由は「ずっと放置され、教育をされないから」です。
 教育にもつながることですが、一の湯には、セントラルキッチンに板前がいますが、各店舗にはいません。そのうえで、原材料の段階から消費者にわたるまで全責任を一貫して持つ「バーティカル・マーチャンダイジング」の考え方を取り入れ、産地から食材を探し、自分たちが提供したい商品を創る「商品開発部」を立ち上げました。
 そこでカタチになったのがコーヒーやカレー、ラーメンなどの自社独自の商品開発です。夕食も朝食も「我われが本当に出したいものを出す」方向に動いています。

 内藤:バーティカル・マーチャンダイジングは面白い考え方だと思います。チェーンストアでは当たり前の考え方ですが、旅館業界ではこれまであまり議論されることはありませんでした。

 小川:もう1つ、離職の課題解決には、朝働いて、中抜けで5―6時間休憩して、夜働くというのが旅館の一般的な働き方ですが、中抜けを無くしました。「朝、昼働いて帰る」「昼、夜働いて帰る」というシフトに変えています。

 内藤:中抜けは問題だと感じたのですか。

 小川:若い人たちは目を輝かして入社しますが、2、3年経つと身体的な疲れと、精神的にも放置され、次第に目標を失っていく姿が伝わってきます。しっかりと教育ができる環境を整え、愛情をかけてあげるというのがテーマです。
 清掃はアウトソーシングしていたものを内製化しています。中抜け対策の1つとして、昼の時間帯に働けるイタリアンレストランも始めています。現在は、長い中抜け休憩が無い8時間勤務で帰れるようにしています。

 内藤:必然的にマルチタスク化になります。

 小川:フロントだけ、キッチンだけ、という概念がない会社ですので、マルチタスク化への抵抗はありませんでした。

 内藤:以前は表の仕事がマルチ化だったと思いますが、清掃など裏側の仕事もマルチ化されているのですね。
 フロントなどのスタッフに清掃業務もやるように言われたときの反応はどのようでしたか。

 小川:抵抗なくやってくれました。旅館業のサービスでは、「お客様の滞在時間が最も長いのが客室です。その客室を綺麗にするというのは、一番のサービスです。やりがいをもってやってほしい」とスタッフには伝えています。
 アウトソーシングしていたときに、客室に髪の毛が落ちているなどクレームがたくさんありました。現場のスタッフはとても困っていたので「清掃を自分たちでやることでお客様が喜んでくれる」とやりがいを感じていると思います。

 内藤:まったく同感です。清掃する人がいるから、フロントはお客に客室を渡すことができる。マルチ化するということは「同一労働同一賃金に近づけていかなければならない。仕事の上下はない」ということです。
 生産性を上げていき、ムダがなくなっていくと、1つの仕事が欠けるだけでプロセスが止まってしまいます。すると、「フロントが上で、清掃が下」などという概念はなくなります。すべてが歯車となって動いていく状態では、同一労働同一賃金にせざるを得なくなります。コロナ禍でそのことに気づいた宿は多いのではないでしょうか。

 小川:例えば、小柄な女性が清掃に入るときに、手が届かなかったり、体力的にムリが出たりするケースがあります。そういうスタッフには、朝はセントラルキッチン、午後は盛り付けをやってもらうなど、総合的なマルチタスクを実現しており、多様な人が働ける環境になっているのが、強みだと思います。

 内藤:中抜けをしなくて済むように、色々な仕事を作っていったということですね。今でもアウトソーシングしているものはありますか。

 小川:船盛の段階で納品されてくる刺身くらいです。

 内藤:セントラルキッチンはどのくらいの作業行程を残しているのですか。

 小川:野菜を切って10人前のパックにまとめる。店舗が発注して40人前であれば4つを当日に店舗に納品する。そして店舗では皿に盛り付けて、冷たいものは冷たく、温かいものは温かく提供する。

 内藤:夕食で提供される蒸し物や揚げ物はどうしているのですか。

 小川:各店舗にスチームコンベクションがあるので、具材をまとめてパック状態にし、最終的な加熱工程だけを現場で行うようにしています。天ぷらも現場にフライヤーがあるので、現場で衣をつけて揚げます。

 内藤:わりと多くの工程を現場に残してあるのですね。

 小川:それもこれから無くすことを検討しています。セントラルキッチンですべての盛り付けを終わらせて、皿ごと配送することを実験的にやっています。店舗の労働時間を削って、盛り付けの時間を、お客様への接客時間に充てるという考えです。

 内藤:効果はありそうな感じですか。

 小川:朝食の皿をすべて同じにし、小鉢を大量に出すスタイルに変えました。和食は形の違うお皿がたくさんあり、効率が悪かったのですが、松花堂弁当のように箱に小鉢が並ぶようにし、それを作って配送すれば効率が良くなるのではないかという仮説のもと、実験しています。

 内藤:食器洗浄はどちらがやっていますか。

 小川:店舗で少しやったあとに、セントラルキッチンで最終的な洗浄を行っています。

 内藤:工程を分割して現場に持っていくものと、集約するものに分けるのは面白いですね。

 小川:皿の移動はムダな部分があるので、まだ実験の結果はわからないです。

 内藤:セントラルキッチンで盛り付けが多ければ体積は大きくなるので運搬量は増えていく。一般的な1軒の旅館であれば、「盛り付け工程をいかに食事処に近づけるか」を自分は考えます。調理工程はダクトの問題もあり、すぐには解決できませんが、盛り付けは衛生管理をしっかりとやれば、現場に近い方がいいと思っています。

 小川:「仙石原ススキの原」の店舗は67室あり、盛り付けは2人で4時間×2(本館と別館)でやっています。その1日の16時間の労働時間をセントラルキッチンでまとめてやれば、3―4時間で終わる。配送の分を加味しても10時間くらいの削減はできるのではないかとの考えです。失敗したら別のやり方に柔軟に対応していこうと考えています。

 内藤:私が心配しているのは、体積の膨張による「運搬中の崩れ」の問題です。従来型の大型旅館がまとめて盛り付けして、ラップを掛けて温蔵庫に入れるやり方に近いなと感じた部分もあります。ですが、多くの宿が料理人任せにしている部分をしっかりと考えてチャレンジしていますね。

 ――宿に帰ってくる前とその後では1店舗当たりのスタッフの数に変化はありますか。

 小川:標準店舗というものを3店舗定めていて、その3店舗の生産性は、とても高いです。なぜかというと、フロントとキッチンが真横にあるので、キッチン作業をしていても、いつでもフロントに駆け込めるように動線が短い。一方、一の湯本館のように古い建物や、保養所を買収した施設などは人時生産性の数値は高くありません。
 先代がつくり上げた標準店での人数の掛け方は素晴らしいものがあると思っています。

 ――一の湯の教育とはどのようなものですか。

 小川:前提として、現在の10店舗という規模ではなく、将来的には200店舗への拡大を目指しており、そのためにはスペシャリストの人材が大量に必要になってきます。ヘッドハンティングするのも1つの手法ですが、我われが人材を育てていかないと、この先はないと思っています。
 長期的な視点で見ていくと、今教育体制を構築していかなければ間に合わないので、投資をしていく考え方です。各店舗を任せられる総支配人や、その仕組みを作る間接部門なども、配置転換しながら育てていかなければなりません。
 私の側近に8人ほどの幹部がいます。私の想いを伝え、それを翻訳していくというかたちです。

 内藤:OJTもやられていると思いますが、現場の支配人に対する評価指標は変えたのですか。

 小川:評価指標自体は変えていませんが、教育プログラムは変えました。マニュアルの全項目がチェックリストになっています。入社半年後、1年、2年目にも段階的に課題を与え、副支配人になるためにクリアすべき課題も提示しています。
 目標を明確に設定し、意欲がある人は良い点を取りますし、意欲のない人は点数が低い。ステップアップを目指す人と、現状のままで良いという人がいます。例えば、「主任になればこれだけ給料が上がります」、「順調に昇進していけば10年後にはこれだけの給料になります」と示しています。やるかやらないかは本人次第です。

 内藤:とても分かりやすいですね。

 ――宿に入られて6年の間に順調に改革は進んでいますか。

 小川:順調だったのですが、台風や新型コロナで大打撃を受け続けています。私が帰ってきて3店舗増え、あと2店舗増える予定でしたが、この2年間で計画変更を余儀なくされました。
 人件費が頭でっかちになっている部分もありますが、ここ数年、短期的に見るとこれを圧縮していかなければならないと考えています。社員教育の流れを止めることはありませんが、一時的に採用をストップさせざるを得ないと思っています。

 内藤:現在箱根に10店舗ですが、将来的には箱根を出ていくということですか。

 小川:その思いはあります。箱根で温泉旅館を展開していますが、温泉旅館に限らず、シティホテルや、ビジネスホテルなどさまざまな宿泊形態がありますので、それぞれにブランド展開をしていきたいと考えています。分かりやすく言えば、外資系ホテルチェーンのように複数のブランドを保持し、それぞれにセグメントやコンセプトが異なる宿泊施設を展開して、お客様のニーズに応じた商品提案をする。もちろん、創業してから391年続けてきた温泉旅館の強みも生かしていきたいと考えています。
 今は資産を持っていますが、将来的にはオペレーター(運営会社)になりたいと思っています。

 内藤:極端に言えば、マニュアルと支配人1人を施設に送り込むイメージですね。

 ――ではマニュアルについてのお話をお願いします。

 内藤:サービス業では「アンチマニュアル化」の人が多いのが特徴です。「ホスピタリティはマニュアル化できない」と言われます。一方で、「皆が好き勝手にやってバラバラでいいのか」と言えば、それも否定される。
 おそらく、個別対応が大事なサービス業にとって、マニュアル化は画一化と勘違いされています。「個別対応をするためのマニュアル化」と捉えるべきです。
 マニュアル化するということは、「業務プロセスを明確化する」ことなので、マニュアルがないと教育ができない。IT化や評価もできない。教育とIT化と評価は、マニュアル化するうえで最も大事なことです。
 画一化とはまったく関係ありません。

 小川:時間を掛けてお客様と相対する時間を設けるために、作業を単純化、標準化、徹底化していく。作業とサービスは別で、作業の部分をマニュアル化するという考えです。

 内藤:一方で、どの経営者も「マニュアルを作れ」と言っていると思います。
 一の湯でも、何年もマニュアルが変更されていない。そこを変えようと、スタディストのマニュアル作成・共有システム「Teachme Biz」(ティーチミー・ビズ)という仕組みに出会い、コラボレーションをしてきたというところですか。

 小川:一の湯に帰って「1年でマニュアルを作成しよう」との思いがあり、すべての作業を洗い出して作りました。冊子で作ったので、ものすごい大量になりました。
 1年に1度更新するにしても、全店舗200冊分を更新しないと改善活動につながらない。「これは大変だ」と悩んでいたときに、ある勉強会でスタディスト(東京都千代田区)の鈴木悟史社長の講演を聴き、「これだ」と思いました。幹部を全員引き連れて体験会に行き、すぐに契約しました。

 内藤:今はどのようなに、日常的に使われていますか。

 小川:すべてです。何かあればティーチミー・ビズを開いています。この10月に朝食と夕食もメニュー内容を変更しましたが、盛り付けの行程も、ティーチミー・ビズで通達し、共有しています。

 内藤:1年に1度更新するという話でしたが、今はどうですか。

 小川:毎日更新しています。何か問題があれば、すぐに実験・検証してマニュアルの文章を削除して、加えるという作業をしています。

 内藤:実験・検証するには良い・悪いという一次元の軸が必要です。「考え方の違いです」というのは検証になりません。どういう風に検証されるのですか。

 小川:例えば、スプーン1杯の調味料を入れる場合、グラム数がブレる可能性があるケースでは、違う道具を使って検証してみます。15㌘を計れる道具があれば、そちらに変える。
 紙のマニュアルでは、1年後に更新するためのチェックリストを作っていましたが、膨大な分量になって頭を抱えていました。

 内藤:製造業の場合は、「時間が短い方が身体的にもラクで、良いこと」という軸があります。また、常に「作業時間を入れなさい」と言われます。そのような評価基準は各ページに入れてあるのですか。

 小川:「なんのためにする作業か」という、目的と意義は項目の頭に記してあります。マニュアルには標準作業時間も明記しています。

 内藤:品質の平準化のために、マニュアルを作っているということですね。

 小川:この人の料理は美味しいけど、この人が作ったものは不味いというのが一番良くないと思っています。ティーチミー・ビズを導入して劇的に変わりました。

 ――スタディストが提供する「ティーチミー・ビズ」とはどのようなサービスですか。

 鈴木:小川社長の話を聞いて、マニュアルがあるべき姿になっていて、とてもうれしく思っています。
 マニュアルはその内容が再現され、改善され続けて、初めて役に立つものです。残念ながら多くの経営者はマニュアルを作ることが目的になっています。
 ティーチミー・ビスはマニュアル作成・共有システムで、リアルタイムのマニュアル更新や共有に特化したサービスです。写真や動画など視覚に訴える分かりやすいマニュアルを簡単に作成できるのが特徴です。
 各社がスタッフに支給するスマートフォンにティーチミー・ビズのアプリケーションを入れると、作業の合間にも確認できます。マニュアルの作成権限や閲覧権限を細かく設定することも可能です。
 新たなマニュアルが作成されたときには、プッシュ通知でタスクとして配信もでき、閲覧、完了状況を本社で把握することで、作業指示の徹底や実行管理にも役立ちます。
 ある会社では、新人スタッフに「1回しか教えないからな」という先輩の言葉にプレッシャーを感じていた状況がありました。しかし、ティーチミー・ビズを導入すると、スマートフォンなど手元のデバイスで、必要なときにビジュアルで業務手順を確認することができるので、「教育の効率と標準化が飛躍的に進んだ」と報告されました。

 ――現在、ティーチミー・ビズを導入している企業はどのくらいありますか。

 鈴木:約2千社で製造業が最も多く、小売業が続きます。拠点が多く人の入れ替わりの多いところと相性がいいですね。
 費用は月額10万円。つまりアルバイト1人分で、「全社員に分かりやすく手順を説明できるスタッフを雇った」と考えたら安いと思います。
 最初は世の中のハウツーが集まり、共有できるようなサービスを作れないかと思いました。
 ティーチミーとは、「あなたの知っている手順を瞬時に教えて」という意味が込められています。BtoBとBtoCの両面を狙い、趣味で料理の仕方や、ネイルの塗り方、キャラ弁の作り方などを投稿してもらうスタイルからのスタートでした。「ビジュアルベースの手順書を瞬時に共有できる」という価値を広めたい――この熱意だけでアプリを自社開発し、2年掛けてリリースしました。
 社内の業務手順の標準化を決めても、第三者に伝わらなければ何の価値もありません。アプリ上で動画や画像を仕様書で共有することで、全体のスキルアップにつながります。

 内藤:一の湯でも何か問題があれば、ティーチミー・ビズに戻るという日常になっているのですね。

 小川:月ごとの設備点検レポートでも、劣化した箇所の写真を撮って共有、対応状況をコメント機能で報告するなど、役立てています。清掃の悪いところを写真で撮って赤でマーカーして指摘し、全スタッフに共有するといった多様な使い方ができます。
 一の湯ではお客様もこのマニュアルが見られるようにし、「浴衣はここにありますよ」「大浴場は〇〇時まで」など店舗の情報はすべてQRコードを貼り付けて、お客様が自らティーチミー・ビズにアクセスするというスタイルです。
 客室に置いている紙のファイルだと入れ替える手間も生じます、今はそれがありません。

 鈴木:工場の壁にQRコードを複数貼り、設備が故障したときに、ファイルを探しに行くのではなく、スマートフォンをQRコードにかざしたら、自分が知りたい設備のメンテナンスの手順が出てくる仕組みなので、どんどん活用すべきだと思います。

 小川:温泉設備のハンドルや配管のところにQRコードを貼るということを、今まさにやろうとしています。緊急性があったときにすぐに見られるというのがいいですね。手順書を探している時間がないですから。

 内藤:ハサミを置くときに、ハサミの型を作って置くことがありますが、「型」というのは「情報」なのです。現場に情報を埋め込むという考え方で、これはとても大事なことです。
 実際の効果はどのようなものですか。

 小川:以前は使われていなかったマニュアルが今、使われているというのは間違いないですね。皆自分のデバイスを見ながら業務を行っています。

 内藤:セントラルキッチンでの調理や、盛り付けの手順も入っているのですか。

 小川:すべての手順が入っています。調理人ではないスタッフも、デバイスを見ながら天ぷらを揚げています。

 内藤:「マニュアル」=「作業を固定するもの」というこれまでの考え方に対し、「マニュアル」=「業務改善の道具」という考え方に変えているわけですね。

 ――ありがとうございました。

安来市観光協会 ICカードセミナー 車社会でJR利用促す

2021年11月3日(水) 配信

ICカードやネット予約などを学んだ

 島根県の安来市観光協会は9月25日と10月9、30日の3日間、地域住民に向け、JRの交通ICカードの使い方やお得な切符などをレクチャーするセミナー「JRを使いこなすには?(入門編)」を実施した。安来商工会議所が主催する「安来まちゼミ」のなかの1コマ。車社会の山陰エリアでJRの利用を促した。

 同セミナーはJR安来駅に隣接した観光交流プラザ2階のギャラリースペースで行い、各回6人が参加した。安来駅の清水久年駅長が講師となり、ネット予約の仕方や遠隔による窓口サービスでの切符の発見方法などをレクチャーしたほか、観光列車「あめつち」のお見送りなどを体験した。

 参加者は「コロナが落ち着いたらお得なきっぷで旅行したい」「あめつちに乗りたい」などセミナーに満足したようすだった。

 同観光協会の門脇修二事務局長は「知っているようで知らないことを学べたと好評だった。今後も安来駅と連携しながらさまざまな取り組みを進めていきたい」と話した。

大阪観光局 NMB48を起用 教育旅行の広報動画

2021年11月5日(金) 配信

右から溝畑理事長、泉さん、塩月さん

大阪観光局(溝畑宏理事長)は10月8日、体験型教育旅行プログラム「大阪B&S(Brother&Sisters)プログラム」の広報動画に、アイドルグループNMB48のメンバーを起用したと発表した。

 同プログラムは昨年11月、大阪観光局とJTB、留学生支援コンソーシアム大阪の3者で始めた。大阪を訪れる国内外の教育旅行団体に、大阪で学ぶ大学生や留学生がガイド役となり、兄弟姉妹のように交流しながら、大阪の魅力を紹介する。コロナ禍で教育旅行の中止や延期が相次いだが、収束後に向け、広報動画を活用し、PRを強化する。

 動画はNMB48のメンバー5人が学生役となり、留学生のガイド役のもと道頓堀や大阪城、通天閣・新世界などの観光スポットを体感する内容だ。同局の公式ページで公開している。

 同日開いた記者会見に、NMB48の泉綾乃さんと塩月希依音さんが出席。泉さんは「留学生と楽しくコミニュケーションできた。このプログラムを通じて大阪の人の優しさが伝わるのではないか」。塩月さんは「もっと長い時間、留学生と一緒に過ごして違った文化を学びたいと思った」などと話していた。

 なお、同プログラムでは校外学習を含め今年度と来年度で計6校の実施が決定している。第1弾として、10月下旬に大阪府下の私立高校が、コロナ禍で海外への語学研修ができないため、代替として同プログラムを利用し、まち歩きを実施した。

「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(201)」 日本遺産サミットと地域連携(石川県小松市)

2021年10月31日(日) 配信

「こまつの石」などを常設展示する小松市博物館

 2016年から始まった「日本遺産サミット」。今年は11月13~14日の両日、石川県小松市で開催される。

 日本遺産サミットは、日本遺産の意義とストーリーを地域の人々に身近に理解して頂くとともに、各認定地域の交流を通じて、日本遺産活用の事業手法などを相互に学び研修するという2つの意義を持っている。

 従って例年、講演やシンポジウムのほか、参加地域による公開講座やPRブースの設置など、日本遺産ブランドの広報活動が展開されてきた。今年の小松サミットでは、これらの定番プログラムに加えて新たに2つの取り組みが展開される。

 1つは、古くからの「ものづくり」技術をもとに、小松の現代の産業をアピールする「GENBAプロジェクト」の開催である。これは九谷焼をはじめ、古くからある多様な工場・工房のオープンファクトリー化の事業であり、3年前から準備を進めてきた。

GENBAプロジェクト拠点の一つ「EATLAB」

 小松の「石の文化」は、地元八日市遺跡など、約2300年前から続く碧玉、瑪瑙(メノウ)、水晶などものづくり加工技術を起源とする。良質の凝灰岩石材や九谷焼原石の陶石など優れた石の加工技術も生み出された。石の加工技術は、古墳の石室にも見られるが、近世以降は城郭や石蔵・石塀などの都市づくり技術にも多用された。今でも石材を切り出す幻想的な石切り場も残る。近世になると、金や銅鉱脈の存在から尾小屋鉱山や遊泉寺鉱山などの鉱山経営も盛んになる。これらの鉱山用の機械を製造した小松鉄工所が、今日の世界的重機メーカー、コマツの原点でもある。

 加賀前田家3代利常公は、産業政策とともに文化を重視し、九谷焼をはじめ瓦、茶、畳表、加賀羽二重(絹織物)などを奨励した。とくに絹織物(小松絹)は機業地としての勧業奨励が大きな後押しとなった。これらの産業をルーツとする現代の工場・工房を開放する「GENBAプロジェクト」は、今回の小松サミットの大きな特色である。

 もう一つは、日本遺産物語として共通テーマをもつ地域同士の研究交流分科会の開催である。小松の石の文化とも共通する宇都宮市、福井市・勝山市、笠岡市など備讃諸島、八代市などの「石の文化」。繊維・織物の文化をもつ八王子市、桐生市、与謝野町、倉敷市、十日町市などの「繊維・織物文化」。多様な食文化物語のある小浜市、北総4都市、湯浅町、高知県中芸、長崎市などによる「食の文化」である。

 日本遺産は地域の文化財などをつなぐ歴史文化物語であるが、これらは、もともと地域を越えて深いつながりを持ってきた。北前船のような「交易」をテーマとする物語だけでなく、それぞれの地域が今回のような機会をきっかけに研究を通じた地域間交流をするきっかけとしてほしい。

 小松の日本遺産サミットの「現場」に是非ともご参加頂きたい。

(日本観光振興協会総合研究所顧問 丁野 朗)