2021年11月1日(月) 配信

高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その人気の秘訣を探っていく対談シリーズ「いい旅館にしよう! Ⅲ」の9回目は、神奈川県・箱根塔ノ沢温泉「一の湯」社長の小川尊也氏が登場。一の湯は、スタディスト(鈴木悟史社長)のマニュアル作成・共有システム「ティーチミー・ビズ」を活用し、毎日マニュアルを更新している。内藤氏と「マニュアル化で業務工程を明確化する」取り組みについて語り合った。
【増田 剛】
◇
――小川社長は一の湯に帰る前は何をやられていたのですか。
小川:大学を卒業後、イタリアンレストランチェーンのサイゼリヤで7年間、店長など店舗オペレーションに携わっていました。
2015年に箱根は噴火の警戒レベルが上がり、先代(父)から「戻ってきてほしい」と言われました。「跡を継いでくれ」とは一度も言われたことは無かったのですが、その一言が胸に響き、即座に宿に帰ることを決意しました。
15年から1年間、一の湯の現場で商品開発部の立ち上げや、PB(プライベート・ブランド)などにも着手しました。17年に16代目の社長に就任しました。
内藤:なぜサイゼリヤに入社したのですか。
小川:一の湯がサイゼリヤと同じように旅館をチェーン展開していることは、子供のころから知っていました。セントラルキッチンが存在し、予約センターが分離しているなど、普通の旅館とは違うことは意識していました。「チェーンストアを自ら経験してみたい」という思いがあり、さまざまな選択肢の中で、食を通して日常の豊かさを提案するサイゼリヤの理論やビジョンに惚れて入社しました。
内藤:サイゼリヤでは具体的にどのようなことをやられていたのですか。
小川:店長としてお客様と対峙しながら、現場のコントロールや「どうしたらお客様に喜んでいただけるか」を追求していました。「何があっても、お客様、従業員、取引先、株主のために動く」という、理念にブレがないことを徹底的に学びました。
一の湯に入って内部を見ると、まったく違っていました。全社員に「一の湯の経営理念は?」と質問しましたが、誰1人言えませんでした。サイゼリヤでは新卒を大量採用し、入社後1カ月間はホテルに「館詰」で徹底的に教育していきます。
内藤:当時の一の湯を、あえて批判的に課題を挙げていただくと、他の旅館も共通した課題として参考にもなります。
小川:3S主義という部分、つまり「標準化(Standardization)」「単純化(Simplification)」「徹底化(Specialization)」が何一つできていませんでした。
業務マニュアルは一応ありましたが、我流でやっていました。どこの店舗に行っても物の配置が異なっていました。調理方法や、道具もバラバラでした。「これが正しい」という1本の軸、「正解」を作ってあげないと、商品の品質がブレますし、お客様の印象も変わってきます。
まずは経営理念とマニュアルを作ることからスタートしました。マニュアルをバインダーにしていましたが、常に差し替えていくべきものが、2015年に宿に入ったとき、前回の更新が06年というような状態でした。
内藤:盛り付け方がバラバラなど、実際にクレームなど問題は起こっていましたか。
小川:現場で問題が発生していたかどうか、それすらも分かっていなかったと思います。「報告する」という概念がなかったので、トラブルは現場で対応して、それで完結していたと思います。今はクレームを含め、お客様の声が現場からたくさん上がってきます。
離職の問題もありました。新入社員も2、3年で辞めてしまう理由は「ずっと放置され、教育をされないから」です。
教育にもつながることですが、一の湯には、セントラルキッチンに板前がいますが、各店舗にはいません。そのうえで、原材料の段階から消費者にわたるまで全責任を一貫して持つ「バーティカル・マーチャンダイジング」の考え方を取り入れ、産地から食材を探し、自分たちが提供したい商品を創る「商品開発部」を立ち上げました。
そこでカタチになったのがコーヒーやカレー、ラーメンなどの自社独自の商品開発です。夕食も朝食も「我われが本当に出したいものを出す」方向に動いています。
内藤:バーティカル・マーチャンダイジングは面白い考え方だと思います。チェーンストアでは当たり前の考え方ですが、旅館業界ではこれまであまり議論されることはありませんでした。
小川:もう1つ、離職の課題解決には、朝働いて、中抜けで5―6時間休憩して、夜働くというのが旅館の一般的な働き方ですが、中抜けを無くしました。「朝、昼働いて帰る」「昼、夜働いて帰る」というシフトに変えています。
内藤:中抜けは問題だと感じたのですか。
小川:若い人たちは目を輝かして入社しますが、2、3年経つと身体的な疲れと、精神的にも放置され、次第に目標を失っていく姿が伝わってきます。しっかりと教育ができる環境を整え、愛情をかけてあげるというのがテーマです。
清掃はアウトソーシングしていたものを内製化しています。中抜け対策の1つとして、昼の時間帯に働けるイタリアンレストランも始めています。現在は、長い中抜け休憩が無い8時間勤務で帰れるようにしています。
内藤:必然的にマルチタスク化になります。
小川:フロントだけ、キッチンだけ、という概念がない会社ですので、マルチタスク化への抵抗はありませんでした。
内藤:以前は表の仕事がマルチ化だったと思いますが、清掃など裏側の仕事もマルチ化されているのですね。
フロントなどのスタッフに清掃業務もやるように言われたときの反応はどのようでしたか。
小川:抵抗なくやってくれました。旅館業のサービスでは、「お客様の滞在時間が最も長いのが客室です。その客室を綺麗にするというのは、一番のサービスです。やりがいをもってやってほしい」とスタッフには伝えています。
アウトソーシングしていたときに、客室に髪の毛が落ちているなどクレームがたくさんありました。現場のスタッフはとても困っていたので「清掃を自分たちでやることでお客様が喜んでくれる」とやりがいを感じていると思います。
内藤:まったく同感です。清掃する人がいるから、フロントはお客に客室を渡すことができる。マルチ化するということは「同一労働同一賃金に近づけていかなければならない。仕事の上下はない」ということです。
生産性を上げていき、ムダがなくなっていくと、1つの仕事が欠けるだけでプロセスが止まってしまいます。すると、「フロントが上で、清掃が下」などという概念はなくなります。すべてが歯車となって動いていく状態では、同一労働同一賃金にせざるを得なくなります。コロナ禍でそのことに気づいた宿は多いのではないでしょうか。
小川:例えば、小柄な女性が清掃に入るときに、手が届かなかったり、体力的にムリが出たりするケースがあります。そういうスタッフには、朝はセントラルキッチン、午後は盛り付けをやってもらうなど、総合的なマルチタスクを実現しており、多様な人が働ける環境になっているのが、強みだと思います。
内藤:中抜けをしなくて済むように、色々な仕事を作っていったということですね。今でもアウトソーシングしているものはありますか。
小川:船盛の段階で納品されてくる刺身くらいです。
内藤:セントラルキッチンはどのくらいの作業行程を残しているのですか。
小川:野菜を切って10人前のパックにまとめる。店舗が発注して40人前であれば4つを当日に店舗に納品する。そして店舗では皿に盛り付けて、冷たいものは冷たく、温かいものは温かく提供する。
内藤:夕食で提供される蒸し物や揚げ物はどうしているのですか。
小川:各店舗にスチームコンベクションがあるので、具材をまとめてパック状態にし、最終的な加熱工程だけを現場で行うようにしています。天ぷらも現場にフライヤーがあるので、現場で衣をつけて揚げます。
内藤:わりと多くの工程を現場に残してあるのですね。
小川:それもこれから無くすことを検討しています。セントラルキッチンですべての盛り付けを終わらせて、皿ごと配送することを実験的にやっています。店舗の労働時間を削って、盛り付けの時間を、お客様への接客時間に充てるという考えです。
内藤:効果はありそうな感じですか。
小川:朝食の皿をすべて同じにし、小鉢を大量に出すスタイルに変えました。和食は形の違うお皿がたくさんあり、効率が悪かったのですが、松花堂弁当のように箱に小鉢が並ぶようにし、それを作って配送すれば効率が良くなるのではないかという仮説のもと、実験しています。
内藤:食器洗浄はどちらがやっていますか。
小川:店舗で少しやったあとに、セントラルキッチンで最終的な洗浄を行っています。
内藤:工程を分割して現場に持っていくものと、集約するものに分けるのは面白いですね。
小川:皿の移動はムダな部分があるので、まだ実験の結果はわからないです。
内藤:セントラルキッチンで盛り付けが多ければ体積は大きくなるので運搬量は増えていく。一般的な1軒の旅館であれば、「盛り付け工程をいかに食事処に近づけるか」を自分は考えます。調理工程はダクトの問題もあり、すぐには解決できませんが、盛り付けは衛生管理をしっかりとやれば、現場に近い方がいいと思っています。
小川:「仙石原ススキの原」の店舗は67室あり、盛り付けは2人で4時間×2(本館と別館)でやっています。その1日の16時間の労働時間をセントラルキッチンでまとめてやれば、3―4時間で終わる。配送の分を加味しても10時間くらいの削減はできるのではないかとの考えです。失敗したら別のやり方に柔軟に対応していこうと考えています。
内藤:私が心配しているのは、体積の膨張による「運搬中の崩れ」の問題です。従来型の大型旅館がまとめて盛り付けして、ラップを掛けて温蔵庫に入れるやり方に近いなと感じた部分もあります。ですが、多くの宿が料理人任せにしている部分をしっかりと考えてチャレンジしていますね。
――宿に帰ってくる前とその後では1店舗当たりのスタッフの数に変化はありますか。
小川:標準店舗というものを3店舗定めていて、その3店舗の生産性は、とても高いです。なぜかというと、フロントとキッチンが真横にあるので、キッチン作業をしていても、いつでもフロントに駆け込めるように動線が短い。一方、一の湯本館のように古い建物や、保養所を買収した施設などは人時生産性の数値は高くありません。
先代がつくり上げた標準店での人数の掛け方は素晴らしいものがあると思っています。
――一の湯の教育とはどのようなものですか。
小川:前提として、現在の10店舗という規模ではなく、将来的には200店舗への拡大を目指しており、そのためにはスペシャリストの人材が大量に必要になってきます。ヘッドハンティングするのも1つの手法ですが、我われが人材を育てていかないと、この先はないと思っています。
長期的な視点で見ていくと、今教育体制を構築していかなければ間に合わないので、投資をしていく考え方です。各店舗を任せられる総支配人や、その仕組みを作る間接部門なども、配置転換しながら育てていかなければなりません。
私の側近に8人ほどの幹部がいます。私の想いを伝え、それを翻訳していくというかたちです。
内藤:OJTもやられていると思いますが、現場の支配人に対する評価指標は変えたのですか。
小川:評価指標自体は変えていませんが、教育プログラムは変えました。マニュアルの全項目がチェックリストになっています。入社半年後、1年、2年目にも段階的に課題を与え、副支配人になるためにクリアすべき課題も提示しています。
目標を明確に設定し、意欲がある人は良い点を取りますし、意欲のない人は点数が低い。ステップアップを目指す人と、現状のままで良いという人がいます。例えば、「主任になればこれだけ給料が上がります」、「順調に昇進していけば10年後にはこれだけの給料になります」と示しています。やるかやらないかは本人次第です。
内藤:とても分かりやすいですね。
――宿に入られて6年の間に順調に改革は進んでいますか。
小川:順調だったのですが、台風や新型コロナで大打撃を受け続けています。私が帰ってきて3店舗増え、あと2店舗増える予定でしたが、この2年間で計画変更を余儀なくされました。
人件費が頭でっかちになっている部分もありますが、ここ数年、短期的に見るとこれを圧縮していかなければならないと考えています。社員教育の流れを止めることはありませんが、一時的に採用をストップさせざるを得ないと思っています。
内藤:現在箱根に10店舗ですが、将来的には箱根を出ていくということですか。
小川:その思いはあります。箱根で温泉旅館を展開していますが、温泉旅館に限らず、シティホテルや、ビジネスホテルなどさまざまな宿泊形態がありますので、それぞれにブランド展開をしていきたいと考えています。分かりやすく言えば、外資系ホテルチェーンのように複数のブランドを保持し、それぞれにセグメントやコンセプトが異なる宿泊施設を展開して、お客様のニーズに応じた商品提案をする。もちろん、創業してから391年続けてきた温泉旅館の強みも生かしていきたいと考えています。
今は資産を持っていますが、将来的にはオペレーター(運営会社)になりたいと思っています。
内藤:極端に言えば、マニュアルと支配人1人を施設に送り込むイメージですね。
――ではマニュアルについてのお話をお願いします。
内藤:サービス業では「アンチマニュアル化」の人が多いのが特徴です。「ホスピタリティはマニュアル化できない」と言われます。一方で、「皆が好き勝手にやってバラバラでいいのか」と言えば、それも否定される。
おそらく、個別対応が大事なサービス業にとって、マニュアル化は画一化と勘違いされています。「個別対応をするためのマニュアル化」と捉えるべきです。
マニュアル化するということは、「業務プロセスを明確化する」ことなので、マニュアルがないと教育ができない。IT化や評価もできない。教育とIT化と評価は、マニュアル化するうえで最も大事なことです。
画一化とはまったく関係ありません。
小川:時間を掛けてお客様と相対する時間を設けるために、作業を単純化、標準化、徹底化していく。作業とサービスは別で、作業の部分をマニュアル化するという考えです。
内藤:一方で、どの経営者も「マニュアルを作れ」と言っていると思います。
一の湯でも、何年もマニュアルが変更されていない。そこを変えようと、スタディストのマニュアル作成・共有システム「Teachme Biz」(ティーチミー・ビズ)という仕組みに出会い、コラボレーションをしてきたというところですか。
小川:一の湯に帰って「1年でマニュアルを作成しよう」との思いがあり、すべての作業を洗い出して作りました。冊子で作ったので、ものすごい大量になりました。
1年に1度更新するにしても、全店舗200冊分を更新しないと改善活動につながらない。「これは大変だ」と悩んでいたときに、ある勉強会でスタディスト(東京都千代田区)の鈴木悟史社長の講演を聴き、「これだ」と思いました。幹部を全員引き連れて体験会に行き、すぐに契約しました。
内藤:今はどのようなに、日常的に使われていますか。
小川:すべてです。何かあればティーチミー・ビズを開いています。この10月に朝食と夕食もメニュー内容を変更しましたが、盛り付けの行程も、ティーチミー・ビズで通達し、共有しています。
内藤:1年に1度更新するという話でしたが、今はどうですか。
小川:毎日更新しています。何か問題があれば、すぐに実験・検証してマニュアルの文章を削除して、加えるという作業をしています。
内藤:実験・検証するには良い・悪いという一次元の軸が必要です。「考え方の違いです」というのは検証になりません。どういう風に検証されるのですか。
小川:例えば、スプーン1杯の調味料を入れる場合、グラム数がブレる可能性があるケースでは、違う道具を使って検証してみます。15㌘を計れる道具があれば、そちらに変える。
紙のマニュアルでは、1年後に更新するためのチェックリストを作っていましたが、膨大な分量になって頭を抱えていました。
内藤:製造業の場合は、「時間が短い方が身体的にもラクで、良いこと」という軸があります。また、常に「作業時間を入れなさい」と言われます。そのような評価基準は各ページに入れてあるのですか。
小川:「なんのためにする作業か」という、目的と意義は項目の頭に記してあります。マニュアルには標準作業時間も明記しています。
内藤:品質の平準化のために、マニュアルを作っているということですね。
小川:この人の料理は美味しいけど、この人が作ったものは不味いというのが一番良くないと思っています。ティーチミー・ビズを導入して劇的に変わりました。
――スタディストが提供する「ティーチミー・ビズ」とはどのようなサービスですか。
鈴木:小川社長の話を聞いて、マニュアルがあるべき姿になっていて、とてもうれしく思っています。
マニュアルはその内容が再現され、改善され続けて、初めて役に立つものです。残念ながら多くの経営者はマニュアルを作ることが目的になっています。
ティーチミー・ビスはマニュアル作成・共有システムで、リアルタイムのマニュアル更新や共有に特化したサービスです。写真や動画など視覚に訴える分かりやすいマニュアルを簡単に作成できるのが特徴です。
各社がスタッフに支給するスマートフォンにティーチミー・ビズのアプリケーションを入れると、作業の合間にも確認できます。マニュアルの作成権限や閲覧権限を細かく設定することも可能です。
新たなマニュアルが作成されたときには、プッシュ通知でタスクとして配信もでき、閲覧、完了状況を本社で把握することで、作業指示の徹底や実行管理にも役立ちます。
ある会社では、新人スタッフに「1回しか教えないからな」という先輩の言葉にプレッシャーを感じていた状況がありました。しかし、ティーチミー・ビズを導入すると、スマートフォンなど手元のデバイスで、必要なときにビジュアルで業務手順を確認することができるので、「教育の効率と標準化が飛躍的に進んだ」と報告されました。
――現在、ティーチミー・ビズを導入している企業はどのくらいありますか。
鈴木:約2千社で製造業が最も多く、小売業が続きます。拠点が多く人の入れ替わりの多いところと相性がいいですね。
費用は月額10万円。つまりアルバイト1人分で、「全社員に分かりやすく手順を説明できるスタッフを雇った」と考えたら安いと思います。
最初は世の中のハウツーが集まり、共有できるようなサービスを作れないかと思いました。
ティーチミーとは、「あなたの知っている手順を瞬時に教えて」という意味が込められています。BtoBとBtoCの両面を狙い、趣味で料理の仕方や、ネイルの塗り方、キャラ弁の作り方などを投稿してもらうスタイルからのスタートでした。「ビジュアルベースの手順書を瞬時に共有できる」という価値を広めたい――この熱意だけでアプリを自社開発し、2年掛けてリリースしました。
社内の業務手順の標準化を決めても、第三者に伝わらなければ何の価値もありません。アプリ上で動画や画像を仕様書で共有することで、全体のスキルアップにつながります。
内藤:一の湯でも何か問題があれば、ティーチミー・ビズに戻るという日常になっているのですね。
小川:月ごとの設備点検レポートでも、劣化した箇所の写真を撮って共有、対応状況をコメント機能で報告するなど、役立てています。清掃の悪いところを写真で撮って赤でマーカーして指摘し、全スタッフに共有するといった多様な使い方ができます。
一の湯ではお客様もこのマニュアルが見られるようにし、「浴衣はここにありますよ」「大浴場は〇〇時まで」など店舗の情報はすべてQRコードを貼り付けて、お客様が自らティーチミー・ビズにアクセスするというスタイルです。
客室に置いている紙のファイルだと入れ替える手間も生じます、今はそれがありません。
鈴木:工場の壁にQRコードを複数貼り、設備が故障したときに、ファイルを探しに行くのではなく、スマートフォンをQRコードにかざしたら、自分が知りたい設備のメンテナンスの手順が出てくる仕組みなので、どんどん活用すべきだと思います。
小川:温泉設備のハンドルや配管のところにQRコードを貼るということを、今まさにやろうとしています。緊急性があったときにすぐに見られるというのがいいですね。手順書を探している時間がないですから。
内藤:ハサミを置くときに、ハサミの型を作って置くことがありますが、「型」というのは「情報」なのです。現場に情報を埋め込むという考え方で、これはとても大事なことです。
実際の効果はどのようなものですか。
小川:以前は使われていなかったマニュアルが今、使われているというのは間違いないですね。皆自分のデバイスを見ながら業務を行っています。
内藤:セントラルキッチンでの調理や、盛り付けの手順も入っているのですか。
小川:すべての手順が入っています。調理人ではないスタッフも、デバイスを見ながら天ぷらを揚げています。
内藤:「マニュアル」=「作業を固定するもの」というこれまでの考え方に対し、「マニュアル」=「業務改善の道具」という考え方に変えているわけですね。
――ありがとうございました。