羽田空港第2ターミナル、7月19日(水)から供用再開 急激な旅客の回復に対応

2023年5月22日(月) 配信

羽田空港第2ターミナル(イメージ)

 日本空港ビルデングと東京国際空港ターミナルは7月19日(水)から、コロナ禍の影響で閉鎖していた第2ターミナルの供用を再開する。

 第2ターミナルは、従来国内線専用だったターミナルに国際線出発・到着フロアや免税店などを設置し、第3ターミナルの拡張とともに、国際線の増便に対応し、豊富な国内線ネットワークとの乗継機能の強化をはかっていた。

 コロナ禍の影響で2020年4月から閉鎖していたが、新型コロナの分類が5類に変更されたことを受け、旅客の急激な回復に対応するために、施設の供用再開を決定した。

 運用開始は7月19日(水)午前5時から。運用時間は午前5時~午後1時半まで。

フォーティーズ、わかやま日帰りバスツアー販売 高野山や精進料理堪能

2023年5月22日(月) 配信

料金は全国旅行支援を利用で6400円となる
 フォーティーズ(岡武史社長、大阪市鶴見区)はこのほど、同社のホームページで6月17日(土)に催行するわかやまリフレッシュプラン日帰りバスツアーの販売を始めた。
 
 同ツアーは、高野山の総本堂である「金堂」や高さ50㍍の多宝塔「根本大塔」などの建物が並ぶ高野山壇上伽藍和(和歌山県・高野町)に訪れる。その後、高野山の奥之院参道入口に位置する一の橋 天風(同)で精進柿の葉寿司や旬のお惣菜などの精進料理を堪能する。JA紀の里の直売所「めっけもん広場」(同紀の川市)にも立ち寄る。

 出発地は大阪駅。料金は全国旅行支援を利用した場合、6400円となる。地域クーポン1000円分が付く。最少催行人員は30人。

 

23年1~3月期、初めてコロナ前の水準上回る 国内旅行消費額速報値(観光庁)

2023年5月22日(月) 配信

観光庁の資料を基に編集部が作成

 観光庁はこのほど、「旅行・観光消費動向調査」の2023年1~3月期(速報)を発表した。日本人国内旅行消費額は、前年同期比80・2%増、19年同期比0・5%増の4兆2331億円となった。20年以降、初めてコロナ前の水準を上回る結果となった。このうち、宿泊旅行消費額は同87・3%増(19年同期比6・1%増)の3兆4469億円、日帰り旅行が同54・5%増(19年同期比18・3%減)の7862億円だった。

 日本人国内延べ旅行者数は、同55・2%増(19年同期比17・1%減)の1億13万人。うち宿泊旅行が同60・9%増(19年同期比9・4%減)の5802万人、日帰りが同48・1%増(19年同期比25・8%減)の4211万人となった。

 日本人国内旅行の1人1回当たりの旅行単価は、同16・1%増(19年同期比21・2%増)の4万2277円となった。宿泊旅行は同16・1%増(19年同期比17・1%増)5万9413円、日帰りが同4・3%増(19年同期比10・0%増)の1万8669円だった。

ON・ガス推進機構正会員の取り組み 「食」をテーマに認知度が低い地域への注目度を高める (ぐるなび)

2023年5月22日(月) 配信

西原史郎氏

 16の企業会員が参画するONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構。各会員企業は自社のもつコンテンツとONSEN・ガストロノミーツーリズムを掛け合わせ、同ツーリズムの普及と磨き上げを進めている。

 今回はぐるなびの取り組みについて、国内のガストロノミーツーリズムの展望と合わせ、食と観光企画部の西原史郎氏に話を聞いた。

 

◇  ◇
 

――ぐるなびは機構設立時から会員として参画されています。その狙いを教えてください。

 我われは「食でつなぐ。人を満たす」を企業の存在意義に掲げ、各地の地産品を地域固有の歴史・文化を背景に発信しています。

 一方で食に関する情報は有していますが、地域に埋もれている素材の掘り起こしとなると単独で行うのは難しい状況でした。そこで地域の方々や交通事業とも連携し、共に掘り起こし、広めていくことで、地方に人が訪れるきっかけをつくりたいと考え、機構への参画を決めました。

 ――これまでぐるなびはどのような活動をされてきましたか。

鹿児島の美味しい飲食店を紹介(出典「銭湯・ガストロノミーホッピングin鹿児島市リーフレット」)
ホッピング期間中に行われたモニターツアー(写真提供:ON・ガス推進機構)

 機構が観光庁の補助事業で2022年秋に実施した「銭湯・ガストロノミーホッピングin鹿児島市」において、企画に参加する飲食店を誘致。各メニュー情報を収集し、観光客に対して鹿児島の“食”の魅力を訴求することに取り組みました。

 ――観光業界の中でガストロノミーツーリズムへの注目度が増していますが、定着、活用をはかるうえで大切なことは。

 歴史や文化、季節などとその土地の食の関わりについて、受け入れる側も学び続けていくことが大切です。それでなければガストロノミーツーリズムが中身の伴わないモノになってしまうので、コンテンツやツアーなどを造成する側と地域が連携することが要になります。

 そのうえで、地域の子供たちへの食育や、シェフの育成をはかり地域文化を守り、育てるところまで取り組みを進められるのが理想です。

 ――今後の機構会員として挑戦していきたいことはありますか。

 地域での取り組みを進めるなかで、「食」をテーマにすることで、「認知度が低い地域への注目度を高められるのでは」という思いが強くなってきています。

 豊かな食のコンテンツを持つ地方に着目し、地方にある良い店に付加価値を付け、売り出していくこと。これによって、飲食業界の生産性の向上や地域の活性化に寄与することが、重要だということを強く感じています。そのためには富裕層への「食」のPRも重要だと思います。

ヘリで新たな食の感動体験を

  そこで我われは、22年に価値のある「おいしい」を提供する有料会員制サービス「PREMIUM GOURMET CLUB」を立ち上げ、そのなかで新たな食の感動体験としてヘリコプターを利用した特別体験ツアーも行っています。

 今後会員企業の皆様とは、高付加価値型のイベントの開催についても議論ができればと思っています。併せて、地域に点在する伝統食や野菜などの固有の財産をガストロノミーでつなぎ合わせる方法もともに考えていきたいです。

――ありがとうございました。

東武グループ 栃木市、國學院大と観光まちづくりで協定結ぶ

2023年5月22日(月) 配信

左から東武トップツアーズの竜江義玄取締役執行役員、大川秀子栃木市長、東武鉄道の本保芳明執行役員待遇、國學院大學観光まちづくり学部の西村幸夫学部長

 東武鉄道(根津嘉澄社長)と東武トップツアーズ(百木田康二社長)は5月16日(火)、栃木県栃木市(大川秀子市長)、國學院大學観光まちづくり学部(西村幸夫学部長)と「持続可能な観光まちづくりに関する協定書」を締結した。同日、栃木市役所で締結式を行った。

 各者はアフターコロナにおける栃木市の観光振興を考えるうえで、従来の日帰りを中心とした誘客に加え、持続可能な観光の視点を取り入れた街づくりが重要となると考えている。今回、産官学の連携による同協定の締結を機に、連携・協力して「持続可能な観光まちづくり」に向け、さらなる沿線価値向上に向けた施策に取り組む。

 連携によって、栃木市での現地調査やヒアリング調査の実施、観光まちづくりに関する現況把握をはじめ、他地域における事例調査の実施など、「持続可能な観光まちづくり」に関する調査研究を実施する方針だ。

 栃木市は、黒塗りの重厚な見世蔵や白壁の土蔵群などが今もなお残り、「蔵の街とちぎ」として歴史的風致と懐かしさを今に伝えている。「太平山」や「三毳(みかも)山」、ラムサール条約湿地に登録された「渡良瀬遊水地」などの豊かな自然があり、そのなかでのアクティビティや農産物など、多くの観光資源を有している。さらには、市内外から多くの観光客が訪れる祭りやイベントも開催され、多彩な魅力にあふれている。

高千穂峡の奥地巡るツアー開始 ゴムボートで幻の滝目指す (高千穂アドベンチャーツーリズム協議会)

2023年5月22日(月) 配信

ツアーのイメージ

 高千穂町旅館業組合や高千穂町企画観光課などで構成する高千穂アドベンチャーツーリズム協議会(福島優会長)はこのほど、宮崎県・高千穂峡の奥地を巡る完全プライベートのパックラフトツアーの提供を始めた。

 パックラフトは持ち運ぶことができ、空気で膨らますゴムボートで、カヤックなどを持って行けない自然の奥地で楽しむことができる。同プログラムでは高千穂峡の約5㌔上流部に位置し、奥高千穂峡と呼ばれる「尾橋渓谷」に位置する幻の滝を目指す。道中ではガイドが紹介する高千穂の歴史や暮らしを楽しみながら、阿蘇山の火砕流が流れる水で削られて形成した峡谷を冒険感覚で進むという。

 ツアーの料金は1万5000円(税込)。九州在住者が参加するグループには20%割り引く。定員は2~8人。午前9時にスタートし、午後零時ごろ解散する。申し込みは同協議会のホームページで受け付けている。

子供向け学習型ツアー「フレテミーナ」夏の10コース発売 JR東日本ら

2023年5月22日(月) 配信

一般非公開の青森空港の裏側を見学

 東日本旅客鉄道(JR東日本)とJR東日本びゅうツーリズム&セールスはこのほど、子供向け学習型ツアー「フレテミーナ」で夏の特別プランとして、10コースを売り出した。 一般には立ち入り禁止や公開していない場所を訪れるツアーもあり、「フレテミーナ」でしか体験できないプランを用意した。

 同企画は次世代を担う子供たちに向けて、「鉄道の旅」と「旅を通じたさまざまな本物の体験」を提供することで、子供たちの成長と家族の思い出づくりを応援する取り組みを行っている。なお、フレテミーナは小・中学生と大人の組み合わせで申し込む商品で、乳幼児は参加できない。

 例えば、7月8日からの1泊2日ツアー「一般公開していない『青森空港』裏側見学と『盛岡新幹線車両センター青森派出所』特別見学」は、飛行機も新幹線も楽しめる、乗り物好きにぴったりの企画。東京発の1日目は「青森ねぶた」の制作現場見学や、元機関ガイドさんによる八甲田丸の案内、のっけ丼の昼食と青森を満喫する。旅行代金は東京駅発が大人1人7万800~7万1800円、小学生が1人5万7800~5万8800円。

 このほか、「秘境の地『只見町』で自然散策と『フルーティアふくしま』でデザートタイム」は8月26日出発の1泊2日のツアー。今年で引退する「フルーティアふくしま」を貸し切り、車内でフルーツを楽しむ。また、専門ガイド同行で「癒しの森」トレッキングや、手漕ぎの船で只見川を巡る「霧幻峡の渡し」など只見を周遊する。代金は大人1人6万800~6万2800円、小学生1人5万4800~5万6800円。

【ANTA支部長から~届けメッセージ~】東京都支部 村山吉三郎支部長 「自社の存在価値をお客様に」

2023年5月22日(月) 配信

村山吉三郎支部長

 今号から全国旅行業協会(ANTA)の各都道府県支部長が本紙で提言やメッセージを発信する連載「ANTA支部長から届けメッセージ」がスタートする。第1回は、東京都支部の村山吉三郎支部長からの発信だ。

 2020年春から徐々に蔓延し始めた新型コロナウイルス。最初はこの流行も直ぐに終了すると考えていましたが、全世界へと広がりを見せ、異常な雰囲気のなか、あっという間に3年目になりました。我われの旅行業界も人の移動が禁止され、売上の減少が続きました。

 その間の流れを考えてみると、旅行に行くにあたりワクチンの予防接種3回以上の接種証明書が必要で、宿泊するのにも乗り物にも乗るのにもマスク着用が求められ、旅行に行く楽しさが制限されたのは事実です。

 今、旅行と言えば個人旅行が主体です。団体の旅行は未だ自粛ムードが続いています。

 団体旅行の代表格の社員旅行は、会社全体で行くのではなく、課やグループ単位での参加へと変化してきました。

 さらにコロナ過後は、社員旅行が「家族単位で参加する」といったように大きく変わりつつあります。

 原因はホテルの部屋に他人と入るよりも家族単位の方が、感染リスクが低いことも要因の1つかと思います。

 最近、個人旅行が多いのも社員旅行を中止して会社が旅行代金を家族旅行に充てているからだとの情報もあります。

 我われ旅行会社が、新たな企画とアイデアを見つけることができるかが大きな課題です。

 1泊2日のバス旅行にしても、家族が楽しめる施設の選択や、食事のスタイルなども考えなければなりません。これまでのような宴会形式だけではなく、ビュッフェスタイルの食事会場も必要になります。

 宿泊先までの行程では、途中にカラオケ大会やサロンルームを作って酒盛りも少なくなると感じています。

 このままではOTA(オンライン旅行会社)にどんどん顧客を取られる時代になります。防衛策としては、ホームページの作成など企業努力で個人客の集客にも力を入れる工夫も必要だと感じます。

 最後に、自社の存在価値をお客様に知っていただける努力が一番大事になるかと思います。

「観光人文学への遡航(35)」 秘密曼荼羅十住心論⑥空海と最澄とが決別した理由

2023年5月21日(日) 配信

 空海の「秘密曼荼羅十住心論」を第9住心まで見てきた。ここで、ざっとこの境地に至るまでの差異をおさらいしてみる。

 

 まず、第1住心は、動物と同じく欲望の赴くままに生きる様である。宗教以前の段階である。

 

 第2住心は、道徳心が生まれてくるが、一方で人からよく思われたい、人に認めてもらいたいといった子供じみた考えで、儒教はこの段階に位置づけられる。

 

 第3住心は、宗教心に目覚めてくるが、神様・仏様が守ってくれているから安心と思っている。道教やヒンドゥー教がこの段階である。現代的な癒し系とかスピリチュアルなことに興味を持っている人などはこの段階である。

 

 第4住心は、自分の存在を客観視できる状態であり、そうなると今までの幼かった自分を否定する。でも、やっぱり関心事は自分に留まっていて、自己の救済ばかりが目的化している。小乗仏教はこの段階である。

 

 第5住心も小乗仏教の段階で、己の無知を取り除くために修行をして涅槃を目指す行動を起こす。しかし、この段階でも、自己一身のためであり、人の役に立つという発想はない。

 

 これらの自己満足の段階から抜け出して、誰かのために自分を役立てたいという発想が生まれてきたら、それが大乗仏教である。

 

 第6住心は、どんな人にも差別なく愛する心を持つことを目指すようになる。しかし、それには厳しい修行と膨大な時間がかかる。そして、まだその境地に至っていない人々に対して見下し、区別してしまう。

 

 第7住心は、一切は空であり、差別や区別を越える段階である。また第4住心と同様、すべてを否定することになるのだが、ここでは虚無主義に陥りやすい。

 

 第8住心は、否定ではなくすべてを肯定する。あらゆる存在に仏性が宿ると考え、どんな人でもすべてに救われる可能性があるということを知る段階である。これが天台宗の教えである。

 

 そして、第9住心は、あらゆる対立を越える境地に至る。全体が一つになっているという感覚を知る。だから、極楽に行くということは究極ではなく、もし極楽にたどり着いたらまたすぐ現実世界に帰ってくることを求めている。それを往相と還相と言う。涅槃にとどまらず、生死の世界に戻って人々に教えを広める活動をしなければならない。この段階は華厳宗である。

 

 華厳宗は天台宗がまだ足りないものがあると言い、最澄は、次に解説する第10住心の密教と天台宗は同じくすると考えていた。それを空海は、天台宗を華厳宗の下の段階に置いた。こういうことからも、最澄と空海が決別に至った原因なのではなかろうか。

 

 では、その華厳宗でも見えていない密教の真理とはいかなるものか、それをいよいよ来月から解き明かしていく。

 

島川 崇 氏

神奈川大学国際日本学部・教授 島川 崇 氏

1970年愛媛県松山市生まれ。国際基督教大学卒。日本航空株式会社、財団法人松下政経塾、ロンドンメトロポリタン大学院MBA(Tourism & Hospitality)修了。韓国観光公社ソウル本社日本部客員研究員、株式会社日本総合研究所、東北福祉大学総合マネジメント学部、東洋大学国際観光学部国際観光学科長・教授を経て、神奈川大学国際日本学部教授。教員の傍ら、PHP総合研究所リサーチフェロー、藤沢市観光アドバイザー等を歴任。東京工業大学大学院情報理工学研究科博士後期課程満期退学。

全国運輸環境協会、感染者搬送の需要獲得 “安心な旅”の環境整備へ

2023年5月20日(土) 配信

竹島美香子会長と搬送に使用したバス(消毒済み)

 全国運輸環境協会(竹島美香子会長、東京都新宿区)は、旅行新聞新社が取材活動などを通じて観光業界の取り組みの中から、創意工夫の見られるものを独自に選び、表彰する「日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー2022」(2022年12月11日発表)の特別賞を受賞した。コロナ禍で旅行会社とバス会社の団体客が減るなか、新たな需要の獲得に取り組んだ。竹島会長に詳しい話を聞いた。

【木下 裕斗】

 ――これまでの活動について教えてください。

 全国運輸環境協会は2014年8月に、全国女性バス運転士会として発足しました。
 当時、男女共同の更衣室やトイレのみ設けられていた事業所が多く、子育てとの両立も難しいなか、女性の労働環境を改善するために、全国の旅行会社やバス会社が情報交換をする場として設立しました。

 会員数は23年5月現在、法人会員60社とバス会社に勤務する個人会員1人の計61会員。主な会員は、全国旅行業協会(ANTA)に入会している旅行会社をはじめ、バス会社やこれらの会社に向けた業務効率システムを開発する企業などが加入しています。

 これまで、6―8人程度の女性運転手によるパネルディスカッションや、パーティーなどのイベントを実施し、改善に努めてきました。イベントには、会員各社から平均50―60人の参加がありました。

 ――コロナウイルスの感染者の搬送事業を展開した理由は。

 日本で新型コロナウイルスの感染が拡大した20年1―2月、旅行需要が減るなかで、外出の自粛を強く求められていた感染者の搬送でバスの稼働率向上を望む声が会員から挙がりました。併せて、会員のスター交通(碓氷浩敬社長、群馬県・大泉町)が20年2月14日、大黒ふ頭(神奈川県横浜市)から、船内での集団感染が確認されたダイヤモンドプリンセス号の乗客を政府の用意した宿泊施設までバスで送りました。

 スター交通はバス会社でありながら、緊急性の低い傷病者を「民間救急」として救急救命士と看護師の資格を保有する従業員が搬送してきたノウハウも有しています。その後、各自治体から軽症者を療養施設まで送迎する業務を委託されています。
 そのようななか、スター交通に要請が集中し、すべての依頼を受けることが難しい状況にありました。これを受け、全国運輸環境協会では、スター交通のノウハウを中心とした感染防止策についての勉強会を10回以上実施。添乗員や乗務員が厳格な感染対策を実施しながら、搬送を行う手順をまとめたマニュアルやチェックリストも作成しました。

 協会では20年1月に、感染者相談窓口を設置。国や各自治体をはじめ、旅行や出張中に感染し、帰宅できなくなった軽症者などの搬送を請け負ってきました。依頼は参画する会員企業10社に振り分け、全15台を稼働させてきました。

 旅行会社は、自治体などからの受注とバスの手配を行っています。バス会社は現場での搬送業務を担います。

 ――感染者の搬送事業における今後の方針は。

 コロナ禍以降の修学旅行では、感染者の搬送用の小さな10人乗り程度のバスを随行できるサービスを展開してきました。

 万が一、学生や教員が旅の途中で感染が疑われる症状を発した場合、病院や自宅など希望する場所へ送り届けます。また、バスの乗務員は感染防止対策を学んでいるほか、随行車両には防護服や抗原検査キット、酸素メーターなどをセットにしたコロナ99セットを搭載していますので、ほかの参加者から隔離して、簡易的な検査を行います。これにより、発症していない学生は、修学旅行を継続することもできます。

 今後は、このサービスを全国の旅行会社に提案することで、コロナウイルスの感染拡大が終息しないなかでも、安心して旅行できる環境を整えたい。利用客が宿泊施設で感染が疑われる症状を発症した場合に、添乗員や乗務員が対処するためのマニュアルも作成しています。

 団体旅行について、感染リスクが高いイメージが定着するなか、隔離の方法や宿の従業員の感染について、不安を覚える宿にこれからも、過度に意識することなく受け入れてもらいたいと考えています。

 ――宿泊施設の入会など組織拡大の予定は。

 これまで、旅行やバス会社の感染対策について、情報交換を行ってきましたが、旅行中に滞在時間の長い宿泊施設の意見も踏まえることで、消費者の安心感を高めたい。このため、今後はホテル・旅館の入会も促す予定となっています。

 また、引き続き労働環境の改善にも取り組んでいきます。現在は、観光業界全体で人材が不足するなか、協会としてできることについて会員から意見や提案をしていただいています。さらに成功事例を募集し、会員間でセミナーなどを通じて、共有していきます。

 同じサービス業であるホテル・旅館に入会していただいた際は、より多くの情報交換を行いたいですね。

 また、観光業界は今後も、環境への配慮など新たな課題を抱えていくでしょう。旅行やバス、宿泊業界などから解決方法を挙げてもらい、業界全体の発展に貢献する協会として、役割を果たしたいと思います。