JATA経営フォーラム2024基調講演 「価値循環」から考える旅行業界の新成長戦略

2024年2月28日(水) 配信

松江英夫氏が基調講演を行った

 日本旅行業協会(JATA、髙橋広行会長)は2月27日(火)から「JATA経営フォーラム2024」をWeb開催している。全体のテーマを「旅行業の『高付加価値化』への挑戦」とし、旅行業ならではの価値を考える機会として、講演やセミナー、パネルディスカッションなど10プログラムを用意した。

 基調講演では、デロイトトーマツグループ執行役兼デロイトトーマツインスティテュート代表の松江英夫氏が登壇し、付加価値を高める成長への発想の転換の考え方として「価値循環」のコンセプトに基づき、旅行業界が進むべき方向性を提言した。

 松江氏は冒頭、日本の成長に向けて取り組むこととして、「過去からの供給過剰と将来の需要不足」という構造課題を克服する必要があると指摘した。「日本の労働生産性の低さの要因は、自前・個別の最適・部分最適が根付いてしまっているところ。人口減少下にあるなかでこの非効率さが目立ってしまっている。日本の旧来の商慣習・価値観・仕組みをいかに崩して、個人でやる部分と全体で実施している部分を切り分けていくかが重要になる」とした。

 今後、旅行業が成長していくには、3つの壁である「ガラパゴス化」「共創不足」「同族経営」を打破していく必要があると説明した。松江氏は、「海外の目をきっかけに、観光資源やサービスを再評価・再設計する。また、地域を引っ張っていってくれる地域オーガナイザーの確立によるプロデュースを行うこと。そして、人材循環の3層モデルを通じた価値提供力向上などが勝ち筋となる」と持論を展開した。

デジタルノマドビザ制度設計と、二地域居住について議論 ワーケ議連第5回総会

2024年2月28日(水) 配信

(左奥から)鶴保庸介会長、武井俊輔事務局長

 自民党のワーケーション推進議員連盟(鶴保庸介会長)は2月28日(水)、第5回総会を開いた。内閣官房、厚生労働省、観光庁、総務省、外務省、国税庁、環境省、農水省などが出席し、デジタルノマドビザや二地域居住について、法務省出入国在留管理庁(入管庁)や、国土交通省国土政策局、RULEMAKERS DAOが説明した。また、今総会で「ワーケーション・二地域居住推進議員連盟」に名称を変更した。

 デジタルノマドは、国際的なリモートワーカーであり、世界に3500万人以上、7870億㌦(日本円で約120兆円)の市場規模を持つとされている。地域の消費拡大や地域人材との協働を通じたイノベーション創出への貢献に期待が寄せられ、諸外国ではビザ・在留資格の整備が進められている。

 日本では、2023年6月に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」において、海外企業家・投資家の誘致拡大として、デジタルノマドの呼び込みに向け、ビザ・在留資格について本年度中に制度化を行う方針を示している。

 入管庁が示したデジタルノマド向け在留資格案では、査証免除対象である国・地域かつ、租税条約締結国などの国籍を有している国際リモートワーカーやフリーランスに向け、在留資格「特定活動」として6カ月を付与する。なお、要件として、申請の時点で年収が1000万円以上であることや、民間医療保険に加入していることが必要となる。

 デジタルノマド誘致によるメリットとして、RULEMAKERS DAO地域subdao担当の牧野裕貴氏は、「観光立国の起爆剤となり、日本のイノベーション促進や、日本が共生社会になるための第一歩となる。また、訪問地の活性化や関係人口の増加が期待される」と説明した。

 一方で、韓国や台湾の制度と比較すると、韓国が最大2年で収入が約915万円以上、台湾が最大3年で収入が約882万円以上であることから、海外デジタルノマドからは「6カ月以上の長期滞在をしたい」といった声が多かったという。

 入管庁は、「所得税や住民税などが掛からないよう、利用者と市町村の手間を極力なくした制度設計を検討している。どのくらい利用されるかを注視し、好評であればより緩和の検討も進める必要があろうかと思われる」とした。

 国土政策局は地域居住について「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の一部を改正する法律案」として、二地域居住について説明した。都道府県が二地域居住に係る広域的地域活性化基盤整備計画を作った際、市町村は特定居住促進計画を作成できる。この計画では、二地域居住者向けに空き家を改修する・コワーキングスペース整備などについて支援する。また、首長は、二地域促進に関する活動を行う法人や民間企業などを、支援法人として指定できる。

 これにより、二地域居住の促進によって、地方への人の流れの創出・拡大をはかる。

 質疑・意見交換では、「国内でデジタルノマドが盛んなのはニセコ市と福岡市。成功事例の共通項や事例を共有し、詳細に分析することが必要」「二地域居住について、ゴミ捨ての問題など自治体のインフラサービスをどこまで受けられるかや、二地域居住者の生活に係るコスト問題について、居住実態の調査とともに慎重に検討していかなければならない。また、住民税を徴収しない代わりにふるさと納税の活用も考えられる」など、活発な意見が交わされた。

北陸応援割は3月16日(土)~4月26日(金)実施 石川は12日(火)、富山新潟福井は8日(金)から予約開始

2024年2月28日(水) 配信

北陸4県は3月16日~4月26日に、北陸応援割を実施する

 北陸4県はこのほど、令和6年能登半島地震の影響により、被災地域に観光需要の落ち込みが見られることから、観光需要喚起策「北陸応援割」を実施する。石川県・富山県・新潟県・福井県の4県がキャンペーン名と実施期間を発表した。

 4県はそれぞれ、「いしかわ応援旅行割」「とやま応援キャンペーン」「にいがた応援旅割キャンペーン」「ふくいdeお得キャンペーン」と題して、3月16日(土)~4月26日(金)宿泊分までCPを実施する。予算額に達し次第終了となる。

 予約開始日は、富山県・新潟県・福井県が3月8日(金)から。石川県は3月12日(火)から。予約開始日以降に申し込んだ旅行・宿泊が対象となる。

 予約・申し込みは、各県のCP登録宿泊施設か、CP登録旅行会社で受け付ける。

 対象者は国内旅行者および訪日旅行者。なお、ビジネス利用は対象外。

 割引額は、旅行・宿泊代金の50%とした。

山陽電車が来春からタッチ決済を開始 万博向け利便性向上

2024年2月28日(水) 配信

クレジットカードなどのタッチ決済に対応した改札機(イメージ)

 山陽電気鉄道(上門一裕社長、兵庫県神戸市)は2025年春から、全駅でタッチ決済による乗車サービスを開始する。25年の大阪・関西万博に向けたキャッシュレス・チケットレス改札の取り組みの1つ。従来よりスムーズな乗車が可能になり、国内外の幅広い乗客の利便性向上を狙う。

 決済は三井住友カードが提供する公共交通機関向けソリューション「stera transit」を活用したタッチ決済対応のカードや、同一カードが設定されたスマートフォンなどを利用。三井住友カードのほか、ビザ・ワールドワイド・ジャパン、みなとカード、ジェーシービー、日本信号、QUADRRACが連携する。

 対象は山陽電車の全49駅で、各改札口に対応改札機を1台設置する。

JTB、観光で復興を応援 「日本の旬 北陸」4月から

2024年2月28日(水) 配信

石川県・ひがし茶屋街(イメージ)

 JTB(山北栄二郎社長)は4月1日(月)~9月30日(月)まで、国内旅行キャンペーン「日本の旬 北陸」を展開する。3月16日(土)、北陸新幹線が金沢―敦賀間で延伸・開業となる。これを機に福井県、石川県、富山県の北陸3県を対象に、地域の旬の魅力を掘り起こす旅行商品を展開し、観光による復興を応援し、北陸地域の活性化をはかる。

 同CPは、北陸地域の伝統とモダンが織りなす「食」「温泉」「自然」「まち歩き」の新たな魅力を発信する。芸術・歴史・文化が宿る観光資源を開発、活用していき、北陸新幹線の延伸・開業と連動した新たな人流創出に取り組む。キャッチコピーは「つながる北陸 新しいと出会う旅 福井 石川 富山」。CPロゴは、北陸3県と北陸新幹線の路線図を、春夏の明るい季節感をイメージしたシンプルで華やかな線で表現した。

キャンペーンロゴ

 「日本の旬 北陸」専用宿泊プランで利用できる特典として、北陸を代表する魅力を7つのカテゴリーに分け、「7つのお楽しみ」として新たに設定した。北陸各地の絶景スポットにあるカフェのひとときや北陸3県の春夏の旬の料理、環境への配慮ができるサステナブルなグルメサービスなどを受けられる。

 あわせて、宿泊施設での食事のグレードアッププランとして「地産地消応援プラン」も設定。北陸3県のブランド牛や旬の地魚へのグレードアップで、地元の食材をさらに楽しめる。

 このほか、CP期間中にJTB日本の旬公式インスタグラムを活用し、フォトコンテストやタイアップ企画、北陸のJTB店舗社員による北陸の魅力や復興応援につながる情報を発信していく。

茨城県が台湾交流イベント開く 宣伝大使の渡辺直美さんが登場

2024年2月28日(水) 配信

最後は渡辺さんがアシカと共に会場へ投げキッス

 茨城県は2月24日(土)、アクアワールド茨城県大洗水族館で台湾からの誘客促進のため、交流イベントを開いた。「台湾いばらき宣伝大使」の渡辺直美さんを招き、台湾からの旅行者や日本在住の台湾の人々、台湾メディア、インフルエンサーなど約550人が参加した。

 同県は台湾をインバウンドの重点市場と位置付け、2022年度から「開運茨城IBA-LUCKY」をテーマに誘客プロモーションを実施している。23年夏以降、台湾からの旅行客はコロナ前を上回るペースで推移し、好調という。今後さらなる誘客を目指そうと今回イベントを実施した。

 当日は台湾生まれ、茨城育ちの渡辺さんが県産品のメロンをイメージした衣装で登場。観光名所の大洗磯前神社や牛久大仏などのほか、「茨城のフルーツは激ウマです。とくにメロンがおすすめで『メロンまるごとクリームソーダ』は絶品です」など名産品をアピールした。全員参加のクイズ大会も行い、正解者には常陸牛など県産品をプレゼントするなど会場は盛り上がった。

 なお、イベントのようすは近日中にプロモーションの特設ウェブサイトで公開予定という。

㈱福井県旅行業協会、JALのCA同乗する商品を催行へ タクシーで嶺北と嶺南地域巡る

2024年2月28日(水) 配信

商品のチラシ

 ㈱福井県旅行業協会(髙井良民雄社長)と日本航空北陸支店(糸数寛支店長)は4月6日(土)から、福井県と連携し、県の嶺北と嶺南地域のそれぞれを巡るタクシーに日本航空の客室乗務員で構成しているJALふるさと応援隊が一緒に乗る観光商品「JALふるさと応援隊と行く福井いいとこ巡り」を催行する。

 JALふるさと応援隊では、全国各地域の活性化をキメ細かく応援するため、社内公募で選ばれた客室乗務員が活動している。同商品では客室乗務員が、車内で利用客とコミュニケーションをとり、旅の雰囲気を盛り上げる。観光案内はドライバーが行う。

 商品のうち、嶺北コースは景勝地東尋坊(坂井市)のほか、永平寺(永平寺町)を巡る。昼食はけんぞう蕎麦(同)で手打ち十割蕎麦を堪能する。所要時間は約6時間30分。料金は1人2万5000円(税込)から。

 嶺南コースは赤レンガ倉庫(敦賀市)や人道の港 敦賀ムゼウム(同)のほか、三方五胡を一望できるレインボーライン山頂公園(美浜町)を訪れる。昼食は味一休(同)で炭火焼うな重を楽しむ。所要時間は5時間10分ほど。料金は1人2万7000円(税込)から。

 ㈱福井県旅行業協会の髙井良社長は「北陸新幹線が3月に福井県まで延伸するなか、県の観光業界をさらに盛り上げたい。利用者には県の魅力を認知してもらい、リピーターになってほしい」と期待を寄せる。

オーバーツーリズム共同研究の成果発表(JRC、東京観光財団、台東区)

2024年2月27日(火) 配信

JRCはこのほど、オーバーツーリズムに関する共同研究の研究成果を発表した

 じゃらんリサーチセンター(JRC、沢登次彦センター長)はこのほど、東京観光財団や東京都台東区と共に、オーバーツーリズムに関する共同研究を実施し、この研究成果を発表した。

 コロナ禍後の旅行需要が急速に回復したことにより、オーバーツーリズム問題が注目を集めている。

 3者は、観光産業の発展・成長と、持続可能な地域づくりの両立を目指し、オーバーツーリズムの問題が発生するメカニズムや地域特性、旅行者行動意識などを検証することで、観光地がオーバーツーリズム対策の優先順位を検討するための観点や考え方を整理した。

 この研究では、オーバーツーリズムの発生パターンを、定義・地域性・住民感情などの観点から分類し、観光地がとるべき対策の方向性を示した。

 また、「住民感情」について、住民が観光に対してネガティブな印象を抱くきっかけなど、仮説を立てたうえで、海外・国内の複数都市と比較しながら検証を行った。

 また、台東区・浅草を中心に、住民・旅行者双方の視点から台東区の状況を検証した。

 この結果により、「オーバーツーリズムはさまざまな要因が複合的に関係するため観光セクターだけでは解決できない」ことや、「発生する地域の特性によって懸念される課題が大きく異なる」「対策の重要性や優先順位が住民感情に大きく左右される」などの点が挙げられ、「地域で発生している課題の一つひとつについてさまざまなデータを比較し、住民とコミュニケーションをはかりながら丁寧に根本要因を特定していく必要がある」とまとめた。

ゆこゆこ、「リトリート」開始 企業合宿で宿の稼働率向上へ

2024年2月27日(火)配信

サービスの流れ

 温泉宿の電話予約サービスを提供するゆこゆこ(徳田和嘉子社長、東京都中央区)は2月27日(火)、企業合宿と宿泊施設をマッチングして稼働率向上を目指す新サービス「リトリート」を始めた。宿泊施設の代わりに合宿利用の企業を募り、部屋割りや食事条件、交通手段の手配、会議に必要な設備や研修講師の調整まですべて無料(送客手数料除く)でサポートする。

 ゆこゆこはこれまでの送客のノウハウを生かし、平日稼働率の向上を目指す宿泊施設と、経営合宿やオフサイトミーティングなど社員が一堂に会する場を必要とする企業をマッチング。受け入れ対応の人手が足らない宿泊施設に代わり、合宿の受け入れからアフターフォローまで、あらゆる業務をワンストップでサポートし、企業合宿というカタチで新たな賑わいを創りながら宿泊施設の課題解決を目指す。

 なお、宿泊施設のリピート利用につなげるための施策も提案する。要望があれば、合宿利用企業へ手書きによる御礼メッセージの送付(有料)のほか、宿泊予約サービス「ゆこゆこ」のクーポン発行も行い、リピート利用を促すとした。

JATA経営フォーラム開く 髙橋会長「海旅復活のフォローウィンドが吹いている」

2024年2月27日(火) 配信

JATAの髙橋広行会長

 日本旅行業協会(JATA、髙橋広行会長)は2月27日(火)、第32回JATA経営フォーラム2024を配信した。プログラムはWeb開催となっているが、同日、髙橋会長のトップリーダーメッセージと、デロイトトーマツグループ執行役兼デロイトトーマツインスティテュート代表の松江英夫氏による基調講演の公開収録を行った。

 髙橋会長は冒頭、コロナ禍以降、ここ数年間で会員企業による不正事案が複数発生していることを受け、有識者委員会を立ち上げたことに触れ、「専門的見地からご指導、ご助言をいただき、徹底した再発防止策に努めていく。今回のフォーラムでも、コンプライアンスに対する意識をさらに高めるために、弁護士によるセミナーを設けている。また、4月から障害者差別解消法の合理的配慮の提供義務化に合わせて、ユニバーサルツーリズムの分科会も設定をしているため、積極的に活用してほしい」と呼び掛けた。

 また、海外旅行の回復については、2024年はフォローウィンドが吹いてきているとして、「今年下半期の海外旅行団体の受注が、コロナ前を超えたという声があった。将来的には個人旅行市場にも良い影響を与えるものと期待している。今年は海外旅行自由化60周年を迎える特別年であり、日米観光交流年でもある。日米両国間の観光やビジネス、スポーツなど、双方向交流の促進を目指し、海外旅行復活の大きな一助となれば」と話した。このほか、「トルコとの外交関係樹立100周年や、パリオリンピック・パラリンピックなど、海外旅行活性化につながる大きな好機になる。これを機に、三位一体のバランスの取れたツーリズムの復活を実現したい」と力を込めた。

 会長あいさつを含めた11本の各講演やセミナーは動画配信となり、4月5日(金)まで自由に視聴できる。参加費は無料。