女将130人が福島に集結、第24回「全国旅館おかみの集い」盛大に開く

参加女将が記念撮影

 「全国旅館おかみの集い」運営委員会と旅行新聞新社は7月25日、福島県郡山市の郡山ビューホテルアネックスで「全国旅館おかみの集い―第24回全国女将サミット2013福島―」を開いた。昨年の仙台開催に続く東北復興大会で、全国から約130人の女将が参加した。
(次号詳細)

 小口潔子運営委員長(四季彩一力)は今回のテーマ「感謝そして未来へ~笑顔と交流、勇気と前進~」に触れ、「震災を経験した運営委員の女将たちのつぶやきをすべて盛り込んだ。被災地以外からお越しいただいた皆様には違った角度からご意見をいただきたい」とあいさつした。

 夕方からは懇親パーティーを開き、来賓を含む約250人が参加した。

No.347 割烹の宿 美鈴 - 段階的に宿泊単価10倍に上昇

割烹の宿 美鈴
段階的に宿泊単価10倍に上昇

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客様の強い支持を得て集客している宿がある。なぜ、支持されるのか、その理由を探っていく「いい旅館にしよう!」プロジェクトのシリーズ第14弾は、三大民宿の一つとしても名高い「割烹の宿 美鈴」の主人・中野博樹氏が登場。工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏との対談で、“陸の孤島”とまで言われた三重県・紀伊長島の僻地で、宿泊料金を10倍にまで高めた料理などについて語り合った。

【増田 剛】

〈「いい旅館にしよう!」プロジェクトシリーズ(14)〉 割烹の宿 美鈴

■内藤:1泊2500円からスタートした宿泊料金が約40年かけて約10倍になった「割烹の宿 美鈴」。宿のスタートはどのようなものでしたか。

■中野:もともとは民宿を経営する予定ではありませんでした。名古屋の大学を卒業して、高校教師や水泳のコーチなどの道もあったのですが、大学時代に結婚した妻との間に子供が生まれたこともあり、地元の漁業組合長をやっていた漁師の父の跡を継ぐことを決意しました。

 

※ 詳細は本紙1511号または8月7日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

旅行ガイドブック ― ロマンチシズムの香りを

 自慢ではないが、子供のころ、授業の予習は一度もやったことがない。しかし、こんな私でも、旅をする前にはガイドブックを買って来て、旅先の地理や歴史、食文化などの予習を楽しみながらしてしまう。ガイドブックは「旅の先生」である。さらに、旅というものは、経済波及効果よりも、文化波及効果の方に、より大きな貢献をしていることを感じるのだ。

 今の時代、飲み会の居酒屋もスマートフォンで探すし、旅先だってその延長線上にある。スマホが登場する前から、旅行ガイドブックの販売不振は言われていたが、今後はさらに厳しい状況になるかもしれない。でも、先に述べたように、私なんぞは今でも旅行する前には、律義にガイドブックを購入し、出立の数日前はペラペラとページをめくりながら、いつの間にか読み込んでいる風情なのだ。そして、旅の間はいつも肌身離さず一緒だ。困ったときには旅行鞄から取り出し相談する。

 ガイドブックも千差万別である。しかし、古代から未踏の地を冒険する旅の必需品として、良質ではない紙に貴重な文字情報、地図が手書きで記された「案内書」(ガイドブック)を片手に分け入って進んだ、あの“ロマンチシズム”の香りが、DNAとして残されていないならば、残念なことである。

 最新情報という観点では、インターネットに道を譲る。また、具体的な旅行者視点の情報では、トリップアドバイザーなど「口コミ」サイトに軍配が上がる。では、旅行者は、この前時代的な旅行ガイドブックに何を期待しているのだろうか。

 限りある紙幅の中で個性が競われるが、私はやはり、情報量の多さを求める。濃密な情報量が、最終的に勝敗を分ける。ガイドブックはその土地の辞書であるべきだと思う。旅行者と同じ視線から語られる口コミ情報とは立ち位置が異なる。詳細で見やすい地図や、危険情報など旅行者に必要な情報を的確に提供し、プロのガイド(案内役)に撤することが求められる。

 「良書は人生の最良の友」という言葉があるが、良いガイドブックは、旅の最良のパートナーであり、親友でもある。書店でガイドブックを手に取る多くの旅行者は旅の友を探しているのだ。旅を終え、ボロボロのガイドブックの姿を見たとき、改めて親友の存在のありがたさを知る。

(編集長・増田 剛)

【8/31まで】みしまコロッケスタンプラリー実施

箱根西麓・三島馬鈴薯を使った「みしまコロッケ」をPRする静岡県三島市は、8月31日まで、市内のみしまコロッケ販売店をめぐるスタンプラリーを実施している。みしまコロッケは市内散策する観光客に三島特産のメークインの美味しさを味わってほしいと、市民・商店主・生産者などの協働のもと、5年前に誕生したご当地グルメ。市内には約40店のみしまコロッケ認定店があり、食べ歩きやイートインで楽しむことができる。

8月15日から17日まで「三島夏まつり」が開催され、1年で最も盛り上がる季節を迎える三島エリア。PRのため静岡県東京観光案内所を訪れた三島市観光協会の山口賛事務局長は、「ぜひ、みしまコロッケスタンプラリーとともに、市内観光を楽しんでいただければ」とアピールする。スタンプラリーでは集めた数に応じて、マグネットやストラップ、キーホルダーなど、みしまコロッケオリジナルグッズをプレゼントする。

問い合わせ=みしまコロッケの会事務局 ☎055(983)2656。

ローソンと販売提携、日本初の航空券コンビニ販売(ジェットスター・ジャパン)

巨大Loppiを挟み右が鈴木社長、左が玉塚COO

 ジェットスター・ジャパン(鈴木みゆき社長)はこのほど、コンビニエンスストアを展開するローソン(新浪剛史社長)と販売提携し、7月4日から全国のローソン1万38店舗でジェットスター国内線航空券の予約・決済を開始した。航空会社がコンビニで航空券を直接販売するのは日本で初めて。

 航空券購入は、ローソンの店舗に設置しているマルチメディア端末「Loppi」を操作して予約し、レジで決済する。決済は現金のみで、1搭乗1人につき630円の取扱手数料がかかる。7月中の手数料は販売開始記念で特別価格の420円。インターネットが利用できない場合や、クレジットカードを持っていない人でも購入できる環境を整えることで、利用者の拡大を狙う。

 同日、会見を開いた鈴木社長は前日の7月3日に就航1周年を迎え、合計160万人が利用していることを報告。「提携はさらなる飛躍の新しい一歩。オンライン販売を強みとしている当社が全国に1万店舗以上展開しているローソンと提携することは非常に意義がある。日常に密着したサービスを展開するローソンと提携することで、航空券の購入方法の新たな選択肢を提供することができ、当社を身近に感じていただく機会が増えると思う。空の旅が電車やバスのように日常的な交通手段により近づける」と期待した。

 また、ローソン取締役代表執行役員の玉塚元一COOは「ジェットスター・ジャパンは創業1周年だが大変急成長しており、間違いなくお客様のニーズがある」とし、「今回『Loppi』の操作はなるべく分かりやすく、簡易なかたちでお年寄りの方にも操作しやすいように設計した。スタッフもアシストしながら、ジェットスターの航空券購入拡大を広めていきたい」と語った。

 発表後は、一般消費者を対象に、セレモニー用の巨大Loppiを使用した抽選会を実施し、提携をアピールした。

おもてなし企業選50社、冊子で取り組み紹介(経産省)

経済産業省が冊子を発行

 経済産業省は今年3月、2012度の「おもてなし経営企業選」として50社を選出した。旅館業では新潟県湯沢温泉「HATAGO井仙」を経営する「いせん」が選出された。同事業は「おもてなし経営」を広く紹介し、他企業の経営改革のきっかけ作りになることが目的。サービス事業者に対し、選出企業がビジネスモデルの1つとして普及することで、経営改革の促進や、地域経済の活性化を目指している。

 経産省はこのほど、選出50企業の取り組みを紹介する冊子(A4判、158ページ)を発行した=写真。冊子には先進的モデル企業として、時音の宿湯主一條(宮城県)や、王宮〈道頓堀ホテル〉(大阪府)、向瀧(福島県)、加賀屋(石川県)、鶴雅グループ(北海道)など旅館業の取り組みも紹介している。 

 問い合わせ=経済産業省商務情報政策局サービス政策課 電話:03(3580)3922。    

 「先進的モデル企業」22社と、ポイントは次の通り。

 【ヤマグチ(でんかのやまぐち)】(東京都)量販店に負けない便利な電気屋「トンデ行くヤマグチ」▽【ネッツトヨタ南国】(高知県)“最幸”おもてなしを生み出す社員の人間力▽【一條旅館(時音の宿 湯主一條)】(宮城県)歴史と伝統を大切にしながら、顧客目線を継続する老舗旅館▽【デリコム】(宮城県)本当に欲しいものを提供し、喜ばれる自動販売機の追求▽【えちぜん鉄道】(福井県)地域と人とをつなげる触媒としてのローカル鉄道の役割▽【吉本興業】(大阪府)「笑い」を通して人と地域をつなぎ、心のインフラを創造する▽【王宮(道頓堀ホテル)】(大阪府)「単なる宿泊の場」から「心に残る思い出づくり」へ▽【徳武産業】(香川県)「履ける靴がほしい」高齢者に真心を込めた商品で応える▽【マミーズファミリー】(愛媛県)お母さんを日本一元気にして、子どもたちを日本一可愛がる▽【万協製薬】(三重県)経営品質を高める取り組みと地域・社会への貢献▽【沖縄教育出版】(沖縄県)I am OK! You are OK! We are OK! 相互理解をして強みを活かす▽【島根電工】(島根県)建設業からサービス業へ「住まいのおたすけ隊」が秘訣▽【向瀧】(福島県)空間と人間が洗練された老舗旅館 改革によって生まれた顧客視点▽【加賀屋】(石川県)先代女将から受け継がれる思い おもてなしを科学して感動へ▽【ビューティフルライフ】(大分県)高齢者、体の不自由な方の生きがいを生み出す理美容業▽【セブンプラザ】(鹿児島県)顧客と末長くお付き合いする「面倒見の差別化」戦略▽【ISOWA】(愛知県)気楽にまじめな話ができる、世界一社風のいい会社を目指す▽【スギホールディングス】(愛知県)顧客、患者の幸せを願い、地域貢献できる会社づくりを▽【芝寿し】(石川県)電気炊飯器販売から始まった「ごはん文化創造企業」▽【エイム】(石川県)「お客様の目的を達成する」健康な社会の創造に貢献▽【ラッキーピエログループ】(北海道)地域密着、地産地消、環境に優しい「おもてなし経営」を目指す▽【鶴雅グループ】(北海道)「地の物語」を森と湖の国、北海道から全国へ届ける

 「おもてなし経営企業選」50社と、ポイントは次の通り。

 【エコノス】(北海道)合併後、理念で組織を一つにつなぐ北海道発の環境貢献事業に▽【櫻井千田】(北海道)人の嫌がる仕事こそ喜びとして実行 「我社以外に我を生かす道なし」▽【医療法人社団北星会】(北海道)全スタッフがインカムを着用 患者の「快適性」を徹底追求▽【ホリ】(北海道)北海道・砂川のおもてなし製造工場 「お菓子づくりは笑顔づくり」▽【一心亭】(青森県)仕事はたのしいか、やりがいはあるか スタッフと共に心を一つに▽【佐市】(宮城県)全国から仙台まで買いに来るおはぎで知られる「主婦の店」▽【清月記】(宮城県)最後のお別れに最高のおもてなしを 葬祭業は究極のサービス業▽【峯田電器】(山形県)商いの考え方を重視した「御用聞き営業」で地域に密着▽【アイエスエフネット】(東京都)障がい者など就労困難者も歓迎 「働く喜び」と生きがいを提供▽【あきゅらいず美養品】(東京都)多様性を尊重しながら働く場所 社会が求める新しい事業を創造▽【石坂産業】(埼玉県)「製造業」という誇りを胸に 地域の支持を得る産業廃棄物会社▽【いせん】(新潟県)顧客・社員・社会の「三輪の和」 旅籠で地域活性化し日本を元気に▽【伊那食品工業】(長野県)関わるすべての人たちが、みな幸せになる「いい会社をつくりましょう」▽【エー・ピー カンパニー】(東京都)「生販直結モデル」で「食のあるべき姿」を追求する▽【大里綜合管理】(千葉県)「環境整備」で心を育み、「地域活動」で感謝を伝える▽【大麦工房ロア】(栃木県)健康と食育に適う素材 「大麦」は地球を救う▽【JR東日本テクノハートTESSEI】(東京都)日本の新幹線運行を支える心 さわやか・あんしん・あったか▽【新日本ビルサービス】(埼玉県)平均年齢58・6歳、「さわやか社員」は最前線で現場を支える宝▽【生活の木】(東京都)「自然」「健康」「楽しさ」で生活を豊かにする「コトショップ」▽【DIOジャパン】(愛媛県・東京都)「震災被災地雇用促進」で地域から社員まで喜びを創造▽【日本レーザー】(東京都)社員一人ひとりが経営者。気付きをもとに、組織風土を形成する▽【坂東太郎】(茨城県)「女将さん、花子さん」の存在でスタッフの士気向上▽【ベアーズ】(東京都)「ベアーズレディ」は新しい市場を創造する日本の縁の下の力持ち▽【平成建設】(静岡県)社員大工を育て、顧客ニーズに対応 日本の職人文化の復興を目指す▽【水上印刷】(東京都)顧客の“面倒くさい”ワンストップサービスですべて解決する▽【都田建設】(静岡県)人生最大のお買いもので人生最高の感動を演出▽【武蔵境自動車教習所】(東京都)10分間の朝礼で方向性をともに 「共尊共栄」の在り方を追求▽【オートセンターモリ】(三重県)「車のことなら何でもおまかせ」、お客さまの安心が社員の誇り▽【日本ウエリントン】(岐阜県)「再生・リサイクル業」で循環型社会と障がい者雇用に貢献する▽【兵吉屋】(三重県)海女文化の発信と保全、地元資源を活用した地域活性化への貢献▽【物語コーポレーション】(愛知県)個性豊かな社員が集まることで素敵な「会社物語」が生まれる▽【イノブン】(京都府)各店・各人に権限委譲し、地域に適した魅力的な売り場をつくる▽【伍魚福】(兵庫県)「珍味を極める=珍極」と「おもしろい」売り場づくり▽【ノアインドアステージ】(兵庫県)7つの「ノアイズム」の実践により顧客満足を向上させる▽【ハッピー】(京都府)3千項目をチェックする電子カルテ「ハッピーケアメンテサービス」▽【びわこホーム】(滋賀県)「日本一感動する家づくり」を実現する理念共有とアフターサービス▽【オタフクソース】(広島県)「お好みソース」で地元広島の「お好み焼き」文化を発信する▽【社会福祉法人こうほうえん】(鳥取県)地域住民との互恵互助を大切に 総合福祉サービスを提供▽【サマンサジャパン】(山口県)施設を利用する「真のお客さま」に感動を届けるパート社員▽【トゥモロー】(広島県)現場直行の事故対応で、顧客満足度と生産性向上を実現▽【北四国グラビア印刷】(香川県)グラビア印刷の自社一貫製造体制 それぞれの部門が柔軟に連携▽【四国管財】(高知県)クレームはラッキーコール かかわるすべての人を幸せに▽【ファースト・コラボレーション】(高知県)年3回の360度評価で人間性向上 このメンバーなら成功できる▽【一蘭】(福岡県)アルバイトに社員同様の研修を実施 全員で「おもてなし」を実践▽【九州壹組】(福岡県)感謝し合う組織風土が人を育て、社員の成長が顧客満足を高める▽【共栄資源管理センター小郡】(福岡県)生活支援サービス「お!仕事人」でみんなの生活を快適に▽【スターフライヤー】(福岡県)「人」と「心」を大切に 「感動のあるエアライン」を実現▽【不動産中央情報センター】(福岡県)「不動産業から、くらしサービスへ」充実した社内の取り組みでサービスを革
新する▽【みたのクリエイト】(沖縄県)おもいやりとサプライズ 理念と利益を両立させる仕組み▽【琉球光和】(沖縄県)徹底した情報共有化と教育で「医療を支え、健康を支える」

飯坂でサンバパレード、ほろ酔いウォークと共催

温泉街に元気を届けた

 福島県の飯坂温泉で7月12、13の両日、夏の恒例行事「第27回ほろ酔いウォーク2013」が開かれ、2日間で約2千人が参加した。14日にはサンバパレード「飯坂deサンバ」も行われ、温泉街は熱気と歓声にあふれた。

 震災後、復興支援の一助として実施した「飯坂deサンバ」は、今年で3回目を迎えた。浅草サンバカーニバルの常連チーム「アレグリア」のメンバー約50人が、温泉街を約1キロに渡りパレードした。

 陽気なリズムに誘われ、大勢の観客が沿道に繰り出した。今年も温泉街に帰ってきたダンサーや鼓笛隊に、たくさんの拍手と応援の声が送られた。一緒に踊る観客もいて、約1時間のパレードは盛り上がりを見せた。

 夕刻からは夏の風物詩「ほろ酔いウォーク」が開かれた。税込3500円(当日券は同4千円)で、45軒の協賛店から6軒を選び、ギョウザや寿司など、各店独自のセットメニューを楽しむ飯坂温泉の人気企画。参加者は受付後、早速目当ての店に向かっていった。

【鈴木 克範】

ネットワークの輪 102会員に広がる、ピンクリボンのお宿ネットワーク第2回総会開く(7月3日、東京都港区・浜松町東京會舘)

第2回ピンクリボンのお宿ネットワーク総会

10月のピンクリボン月間に新冊子発行

畠 ひで子会長

 「ピンクリボンのお宿ネットワーク」(略称・リボン宿ネット、会長=畠ひで子・匠のこころ 吉川屋女将、事務局=旅行新聞新社)は7月3日、東京都港区の浜松町東京會舘で第2回総会を開いた。昨年7月に設立以降、ネットワークの輪は広がり、会員数は発足時の倍の102会員となった。今年度は、10月のピンクリボン月間に合わせて「ピンクリボンのお宿」の新冊子を発行するほか、全国の病院や医療関係者、乳がん患者団体と連携し、シンポジウムや勉強会などを行い、理解を深め受け入れ環境を整えていく。

 畠会長は冒頭のあいさつで、「日本人女性の16人に1人が乳がんになるといわれ、毎年約5万人の女性が胸の切除や温存手術を受けている。8割以上の方が回復するが、そのことで旅を諦めるのは残念でならない。今後も宿での快適な環境作りに向けて努力し、業界のみならず広く社会に向けて啓発の輪を拡大していきたい」と意欲を示した。

来賓の長嶋秀孝氏

 また、「匠のこころ 吉川屋」で今年5月に開いた社員対象の勉強会についても報告した。「乳がんについて理解したうえでお客様をもてなすことが大切」と畠会長は、フロントや接客業務のスタッフだけでなく、調理などの裏方スタッフも含め、社員全員の参加にした。「乳がんは女性の病気というイメージが強いが、毎年、2千人の日本人男性が乳がんになっている。男性スタッフはその事実を知ると驚きつつ、より真剣に耳を傾けていた」と会でのようすを話した。さらに、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、自身の乳がん予防のため両乳房切除と再建手術を受けたことを公表した件にも触れ、「日本でも予防手術をする人が増えるかもしれない。乳がんに対して注目される機会になったと思う」と述べた。

 来賓には、日本観光振興協会から長嶋秀孝常務理事と、企画本部の森岡順子広報課長の2氏が出席。長嶋氏は、「日観振のウェブでもリボン宿ネットの取り組みを紹介していきたい。有力な需要層として、各施設は無理のない範囲で受け入れてほしい」と話した。

旅行新聞新社・石井貞徳社長が
開会のあいさつ

 昨年12月に発行した「ピンクリボンのお宿」冊子は現在、会員宿のほか、全国約800カ所の病院で無料配布し、冊子を手にした人から感謝の声が寄せられている。新冊子は、ピンクリボン月間の10月に発行予定だ。

 リボン宿ネットは、ネットワークの拡大をはじめ、乳がんの早期発見につなげるための啓発活動などにも注力していく。

 役員は次の各氏。
【会長】畠ひで子(匠のこころ 吉川屋)【副会長】石井貞德(旅行新聞新社)▽池山紀之(池山メディカルジャパン)【委員】浅野謙一(夕映えの宿 汐美荘)▽松﨑久美子(ふもと旅館)▽中尾徹也(斎藤ホテル)▽清水隆太郎(結びの宿 愛隣館)【監事】西川丈次(観光ビジネスコンサルタンツ)▽湯通堂温(ホテル秀水園)【事務局長】有島誠(旅行新聞新社)【事務局担当】野村一史(同)▽森山聡子(同)

 13年7月12日現在の宿会員は81、団体会員は6、企業会員は11、賛助会員4の合計102。

【交流会で歓談】

お茶とお菓子で交流会

 


 【4旅館が取り組み事例を発表】

総会後に4旅館の事例発表を行った

会場の出席者と意見交換も

渡邉 二郎氏

 事例紹介では、鷹泉閣岩松旅館(宮城県作並温泉)取締役の渡邉二郎氏、湯本旅館(長野県渋温泉)女将の湯本英里氏、ホテルくさかべアルメリア(岐阜県下呂温泉)常務取締役の日下部聡子氏、大正浪漫の宿 京都屋(佐賀県武雄温泉)女将の前田明子氏の4人が各施設の取り組みを発表した。

 鷹泉閣岩松旅館では4月10日、乳がん手術を受けた人と乳がん治療中の女性限定に「全館貸切ピンクリボンデー」を実施した。当日は、女性スタッフのみで接客し、男性スタッフはお客様の目につかない裏方に徹するなど、人員配置にも細かく配慮。婦人科クリニックの女性医師を招いた講演会は、「良かった」との声が多かった反面、「もっと乳がんに絞った話を聞きたかった」との意見があったという。渡邉さんは、「ホームページなどでプラン販売の告知を行ったが、予約は3件のみで、当日は6人のお客様を80人のスタッフで迎えることになった」と結果を報告した。2回目の「全館貸切ピンクリボンデー」は11月13日に実施予定で、講演会には女性医師との対談も行う。

湯本 英里氏

 湯本旅館は、女将の湯本さんが2010年に乳がん患者となったことをきっかけに、毎月第3金曜日を「ピンクリボンの日」に設定。乳がん患者の利用は毎月1組程度だが、女将が湯本旅館のホームページ上で「闘病日記」などを記していることから問い合わせの電話もあるという。「乳がんの方から、渋温泉にある他の施設でも入浴着を着て温泉に入ることは可能かとの問い合わせがあり、その方には『私が責任を持ちますのでぜひお越し下さい』と伝えたところ、渋温泉で9つの温泉を制覇していた」とのエピソードを語った。また、湯本さんが乳がんになってからの旅行経験談では、「温泉の洗い場に高いイスしかなく、鏡に映る自分の体を改めて見るのが悲しかった」と患者目線での感想を述べた。

日下部 聡子氏

 ホテルくさかべアルメリアは、一般客にも入浴着を着ての大浴場利用を理解してもらうため、脱衣所にポスターを掲示。脱衣所では、術後の痕を気にする人の目隠しとして簡易衝立を設置し、タオルは通常よりも多めに用意するなど配慮している。日下部さんは、「高額な出費は難しいので、ポスターは当館の自作です。ポスターを見ていただくことで入浴着への理解や乳がんに対する啓発にもなればと思う」と話した。「リボン宿ネットの講演会で、患者さんから『タオルが多めに用意されているだけでうれしい』と聞いたので、できることから始めた。今年は、食事を見直すことが目標」と語った。

 

前田 明子氏

 京都屋は6月5・19日を「ピンクリボンの日」に設定。館内を女性限定の貸し切りにし、男性大浴場も開放した。夕食は地元の食材で健康メニューの会席料理を提供。プランは、1泊2食付の宿泊プラン、日帰りプラン、講演プランの3つを用意し、5日は講演会とコンサート、茶話会、19日は、ミニ武雄ツアーと蛍鑑賞会を実施した。

 女将の前田さんは、4年前に卵巣腫瘍で左卵巣と子宮の摘出手術を経験し、自身の体には術後の痕も残っている。「個室露天風呂も大浴場の洗い場の間仕切りもない宿ですが、何かできることがあるだろうと思い、ピンクリボンの日を設定した」と話した。「ピンクリボンの日は来客数100人を目標にしたが、5日の宿泊は10人、日帰り32人、講演会70人、19日は宿泊3人、日帰り10人、講演会20人の参加となり、広報とプランニングの力不足を感じた」と述べた。参加者からは、「女性貸切でなければ夫に車で連れてきてもらえたのに」との意見や、「乳がん患者同士で、友達になりたいと思って来たのに参加者が少なくて残念」との声も紹介した。

 事例紹介後は、会場の出席者との意見交換を行った。

 「簡易衝立はとても良いアイデア。さっそく取り入れたい」「リボン宿ネットの活動だけではなく『ピンクリボン』の趣旨も伝える活動や広報も必要ではないか」などの意見があがった。

 また、「宿から病院にピンクリボンプランのDMを送ってもいいのか」の質問に、池山紀之副会長(池山メディカルジャパン社長)は、「『ピンクリボンのお宿』冊子を置いている病院は、リボン宿ネットのことを認知しているので、DM発送は構わない」と述べた。

 会員宿の女将からは、「プラン名などに『ピンクリボン』というワードを使えば、乳がん患者のお客様は宿で自らの病について告知することになる。患者さん自身、プラン名などで『ピンクリボン』を使うことに抵抗感はないのだろうか」との意見に湯本さんは、「私自身が乳がん患者であることを隠していない」との理由から、ピンクリボンの名称を使うことに賛成の立場を示した。さらに、「当館がリボン宿ネットの会員と分かるよう、リボン宿ネットの缶バッチを衣服に着けてお客様をお出迎えしている」と話した。

中小へ情報還元を、越智新事務局長が会見(JATA)

越智良典氏

 日本旅行業協会(JATA)は7月3日、定例会見を開き、6月19日の今年度総会で理事・事務局長に選任された越智良典氏が就任に対する所感を述べた。越智事務局長は中小企業の会員への情報還元やメディアへの情報発信に注力していくことを語った。

 日本全体の観光については、近畿日本ツーリスト時代にグローバル戦略を担当していたことなどを踏まえ、国家ブランド指標を示しながら見解を述べた。国家ブランド指標の全体で日本は5位、観光項目は8位となっているが、隣の韓国は32位から順位を上げるため、観光戦略に韓流スターを起用するなど意識的な戦略を行っているとし、「日本もオールジャパンで戦わないと世界のブランド競争に負けてしまう」と危機感を示した。

 JATAの事務局長としては「観光の裾野が広がっているなかで、経済界や学界など連携の枠を広げ、観光のリーダーシップを旅行会社が取れるようにするのが夢だ」と想いを述べた。

 また、就任前の2年間はKNT子会社の社長を務めた経験から、「非常に個性ある中小の企業が専門分野でしっかりお客様を握っていると実感した」と語り、「JATAの会員も大手もあれば中小もあり、多様性があるのが日本の旅行業界の強みだ」と語った。そのため、「委員会など人を出せるのは大手で、情報が大手に還元されがちだが、今後は『中小』『全国』をキーワードに会員に広く情報やサービスを還元していかなければならない」と強調。「PRと2つのMR、メンバーシップリレーションとメディアとのリレーションシップを大切にしていきたい」と意気込んだ。

 一方、国内旅行については自身の考えとして、既存旅行会社が持つ強みとして鉄道会社との関係をあげ、「できることはまだある。宿泊旅行の促進に向けJATAで『もう一泊、もう一度』キャンペーンを実施しているが、泊まるだけでは旅行会社の特徴が出しにくいのであれば、違ったキャンペーンもあるのではないか」と語った。

国内旅行人数 過去最高に、総旅行消費額も最高、JTB夏休み旅行動向

 JTBがこのほど発表した2013年の「夏休み旅行動向」(7月15日―8月31日までに1泊以上の旅行に出かける人)によると、国内旅行は前年同期比2・2%増の7624万人と過去最高となる見通し。海外旅行は同5・8%減の260万人と、円高の追い風を受けた昨年と比べ減少が見込まれるが、11年に並ぶ高い水準となる。国内旅行の好調が牽引し、総旅行人数も同1・9%増の7884万人と過去最高を記録しそうだ。

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 同調査は、JTBグループの販売状況、航空会社の予約状況、1200人のアンケートなどから推計した。今夏は総旅行人数に加え、総旅行消費額も同4・7%増の3兆3016億円と過去最高になる。「支出を増やしたい」意向が前年同期と比べ0・2ポイント増加し、16・6%と旅行消費意欲も高まっている。国内旅行消費額は同6・1%増の2兆6693億円、海外旅行消費額は同1・0%減の6323億円を見込む。

 国内旅行の旅行日数の平均は同0・24日減の2・2日。2泊3日、3泊4日が増加する一方で、5泊6日と8泊以上が減少している。旅行の特徴としては、「海辺で保養・海水浴」が同32・4%増と増加しており、東日本大震災後に減少傾向だった海水浴目的の旅行が回復傾向にある。また、LCCの浸透によって、飛行機利用が同2・7%増加し、19・9%と高まっている。「遷宮」人気の伊勢志摩、出雲のほか、昨年に引き続き東京人気が根強い。さらに、富士山の世界遺産登録により、周辺エリアの富士五湖や伊豆などへの波及効果も見込まれる。出発のピークは8月10―12日としている。

 海外旅行は中国・韓国が低調な一方、タイ、マレーシア、カンボジア、ベトナムなど東南アジアが好調だ。座席供給数の増加や世界遺産、リゾートの両方を楽しめることから、ファミリー層や女性グループなどの人気を集めている。ハワイは堅調に推移し、フランスやイタリア、イギリスなどヨーロッパも好調だ。

 昨年ほど海外旅行に追い風が吹かない要因に円高の進行がある。また、昨年に比べ燃油サーチャージが減額になっているとはいえ、8月発券分ではハワイで1人往復2万7千円、欧州は4万2千円と依然高水準にあることがあげられる。海外旅行の出発のピークは8月10―11日という。