国産畳が急減 ― 天然い草の畳表か 人工の化学表か?

 「畳ワールドin東京」という珍しいイベントが東京・池袋で開かれたので、メモ帳を持って取材に行ってみた。今まで知らなかったが、春の4月29日と秋の9月24日は、年2回の「畳の日」であるとのことだ。春は、畳の原材料である「い草」が田園を緑一面に染めて育つ春の記念日として、秋は冬の衣替えを前に、大掃除を推奨する日として設定されている。

 国内における畳表の年間需要枚数は、1993年には4500万枚あったものが、20年後の2012年には1490万枚と、3分の1まで減少している。この状況に危機感を抱く全国畳産業振興会が「国産畳をおもいっきり満喫してもらおう」と東京でイベントを開いた。

 畳表の材料となる「い草」の栽培も大きく変動している。1955年には岡山県が54・4%でシェア1位を誇った。2位は熊本県の12・5%だったが、2013年には熊本県が全国の96・5%を占め、2位は福岡県の1・4%、3位は沖縄県の1・1%。国内では熊本県が、い草の栽培の圧倒的多数を占めている。畳表の国内生産量の減少とともに、自給率も下がっている。1996年には自給率が70%だったが、近年は輸入の割合が増え国内の自給率は20%強で推移している。

 “い草博士”の異名を持つ北九州市立大学の森田洋教授は、い草の良さとして「色」「足元」「香り」の3つをあげた。い草の黄緑色は視覚的にも安心感を与え、畳の上では靴を脱ぐことにより体感温度を下げる。さらに、森林の香りであるフィトンチッドが多く含まれることも、リラックス効果を増幅させるという。

 このほかにも、畳にはフローリングなどに比べて「吸音性」や「弾力性」が高いことから、柔らかい空間を作ることができる。「吸湿性」や「放湿性」にも優れており、夏は涼しく、冬は暖かい。「抗菌性」も高いと言われる。また、福岡県の学習塾で畳の教室を作ったところ、従来の教室に比べて子供たちの「集中力の持続」に高い効果が表れたことも紹介した。

 一方、カビやダニなどを防ぐ畳表のメンテナンスには、清掃と換気が一番効果的であり、森田教授は「畳の張替え時期は3―5年程度」と話す。

 最近は、天然のい草で編んだものではない、ビニールや合成樹脂など新素材で加工した「化学表」を使用するものも旅館などで多く見られるようになった。色褪せや汚れ、耐久性も強く、清掃も楽であるといったメリットがあるようだ。施設にとっては、機能性を優先させた化学表を選ぶか、それとも天然のい草の畳表を選ぶか。それぞれに一長一短があり、施設の経営哲学に関わる問題である。

 今はさまざまなところで「本物志向」が強くなっているのも事実だ。「高級旅館に泊まったのに、畳が偽物でガッカリした」という声を耳にすることもある。化学表には、どうしても「つくりもの」感が強く支配してしまう。それを嫌い、客室には天然の素材をできるだけ多く使用し、素肌と触れ合う心地よさと素材の持つ温かみで、リラックスできる空間づくりを最優先する宿の経営者もいる。

 森林に囲まれた客室の窓を開けて、吹き抜ける風の匂いを感じながら深呼吸したときに、新しい天然い草の畳の香りが混じり合ったら、少し得した気分になる。

(編集長・増田 剛)

観光関係84%増の180億円、国交省全体で観光に力を(15年度予算概算要求)

 観光庁は8月28日、2015年度予算の概算要求を発表し、観光庁関係では、14年度予算(98億1100万円)に対し、84%増の180億700万円を要求した。全体の予算は10%カット、新しい日本のための優先課題推進枠は30%増までという制約のなか、国土交通省全体では、上限額の前年度予算比17%増を要求。観光庁だけで考えると本来17%増までだが、「省全体の優先枠をまわしてもらったかたちで、省として観光に力を入れている」という。また、「復興枠」には、前年度予算と同額の5億4800万円を盛り込み、総計では同79%増の185億5500万円の要求となった。

 15年度は、「訪日2千万人時代に向けたインバウンド政策の推進」に、同91%増の162億1300万円、「観光地域づくり支援」に同84%増の9億5800万円、「観光産業振興」に同9%増の6600万円、「観光統計の整備」に7%増の4億6千万円、その他(経常事務費等)に同3%増の3億1千万円の要求となった。

 大幅増となった「訪日2千万人時代に向けたインバウンド政策の推進」のうち、優先課題推進枠は117億7600万円。訪日旅行促進事業(ビジット・ジャパン事業)と、国際会議(MICE)の誘致・開催の促進、日本政府観光局(JNTO)運営交付金は合わせて同74%増の146億9300万円。15年度からVJ事業とMICE関連は一部を除いてJNTOが事業の実施主体となることから、訪日旅行促進事業と、国際会議(MICE)の誘致・開催の促進事業は単独では減額となっているが、その分をJNTOの運営費交付金で要求している。ビザ要件緩和を契機とした集中的なプロモーションや、航空路線・クルーズ船寄港拡大と連動したプロモーションなどを行っていく。中国はこれまでの北京・上海・広東に加え、沿岸部や内陸部へのプロモーションを強化していく。

 そのほか、新規事業で広域観光周遊ルート形成促進事業に14億円、ICTを活用した訪日外国人観光動態調査に1億円を要求した。訪日の宿泊は現在65%がゴールデンルートに集中しており、広域観光周遊ルート形成促進事業では、一つひとつの観光地では売っていくのが難しい地域でも、テーマ・ストーリー性を持った一連の魅力ある観光地を、交通アクセスも含めてネットワーク化し、周遊ルートとして発信していく。

 観光地域づくり分野では、優先課題推進枠で新規事業「地域資源を活用した観光地魅力創造事業」に5億円を要求。各省の地域づくり事業と連携し、地域の魅力を磨き上げていく。

 観光産業振興分野では、新規事業で「旅館の経営改善・情報発信促進事業」に3千万円を要求した。前近代的な経営からの改善を促すため、大学と連携し、旅館経営の専門家や行政など産学官のワーキンググループで「旅館経営モデルカリキュラム案」を作成。ケース教材も作成し、社会人コースのような講座を作り、普及していく。また、認知度向上のため、外国人への情報発信に力を入れていく。

 なお、復興枠は前年度予算と同様に「東北地域観光復興対策事業」に1億7500万円、「福島県における観光関連復興支援事業」に3億7400万円を要求した。

「観光NET」構築へ、514商工会議所に観光担当を(日本商工会議所)

 日本商工会議所(三村明夫会頭)は、地域社会や経済の再活性化へ全国514の商工会議所が「商工会議所観光ネットワーク」(CCI観光NET)を構築し、観光振興への取り組みを強化していく。まちづくりと一体となった「観光立地域」の実現に向け、地域住民、事業者、行政の連携、さらには広域における地域間連携の仲介役としての役割を担っていく考えだ。

 具体的には、514すべての商工会議所に「観光委員会」や「観光部会」などを設置し、観光推進の中核とする。さらに、各商工会議所事務局に観光担当者を指定し、日商に登録する。10月21―23日に大分県別府市で開く全国商工会議所観光振興大会で、「CCI観光NET」に加盟するネットワークを発表する予定だ。

 日商観光専門委員会(須田寛委員長)や、各地域ブロックの商工会議所観光委員会、各地域商工会議所の観光担当がネットワーク化することで、それぞれが情報交換や情報発信を行い、地域における観光推進のフォローアップも行っていく。都道府県単位で各商工会議所間の定期的な観光に関わる情報交換や意見交換も行い、地域間の連携による広域観光の振興にも取り組む。

 「全国514の商工会議所がネットワークによって力を結集すべき」との三村日本商工会議所会頭の意向に沿ったかたちで、観光専門委員会の須田委員長は「地域外の需要の取り込みや交流人口の拡大によって、雇用の創出につながる観光振興は地域活性化に有効であり、観光はネットワークが大事」と強調。そのうえで、「観光資源のない地域はない。地域がどういった観光振興を目指すのかを示す明確なビジョンを策定し、着地型観光を推進していく体制を構築して、幅広い人材を結集していくことが急務」と話す。「各商工会議所に温度差はあるが、今年度中にもすべての商工会議所にネットワークに参加していただけるよう働きかけていく」としている。

“消費者へ周知を”、貸し切りバス新料金で要望書(ANTA京浜連絡会)

 全国旅行業協会(ANTA)京浜地方代表者連絡会(駒井輝男議長)はこのほど、同東京都支部(駒井支部長)、同神奈川県支部(坂入満支部長)、同山梨県支部(半田初幸支部長)と連名で、4月に公示された貸切バスの新運賃・料金制度について、新料金の見直しや、旅行会社の便乗値上げと誤解されないよう一般消費者への周知を徹底することなどを求めた要望書を、国土交通省関東運輸局局長宛てに提出した。

 貸切バス運賃の改訂が実情を踏まえておらず、貸切バスを利用した移動教室や旅行ツアーが成り立たなくなり、インバウンドにも大きく影響が出ると主張。(1)新料金の一般消費者への周知徹底(2)配車地域の弾力的な取り組みの容認(3)下限運賃の見直し(4)不公平感のある料金体系の再考(5)各種割引制度のバス会社への周知――の5項目を要望した。

 新運賃・料金体系は4月に突如公示され、実施までの猶予がなく、一般消費者への周知がされていない。旅行会社による消費税増税の便乗値上げなど一方的な値上げと誤解されないよう、一般消費者への周知を徹底してほしいと声を上げた。また、料金体系自体が、バス会社と利用する旅行会社双方にとって不公平になっていると指摘している。

ご当地はゆるいか

 取材で見かけたすてきな「ゆるキャラ」を紹介したい。と思ったが、ふと困った。そういえば「ご当地キャラ」という言葉もある。いったい、あの彼・彼女はどちらか。

 先日、某市の観光行政計画へのパブリックコメントに「○○君(市のキャラ)はご当地キャラだ、ゆるキャラと表記するな」というものがあった。市民にとって郷土のキャラがゆるいか否かは重大な問題であるらしく、軽々に「ゆる」いだとか「ご当地」などと表現できないのだ。書く者として身が引き締まる。

 そこで「ゆるキャラ」とは何か「ご当地キャラ」とは何者か、本稿では定義から本質を探っていく予定だったのだが、紙幅が尽きた。キャラの紹介もかなわなかった。

 観光に「ゆる」さは必要。だが過剰だと本稿のようにまとまらない。

【西田 哲郎】

「芦原(あわら)温泉女将の会」に学ぶ、楽しく実りある女将会継続のコツ

全員で利酒師を取得。LINEで励ましあった
全員で利酒師を取得。LINEで励ましあった

 旅館の女将さんが結成する女将会は各地にある。だが、発足時の活気を保ち続けるのは難しいものだ。そんななか、会員の女将たちがすごぶる仲良く、継続してイベントが行われている女将会がある。福井県の「芦原温泉 女将の会」だ。全14旅館のうち、女将のいる13旅館・13人が加盟(表)。規模は小ぶりだが、ホームページの「活動報告」を見ると毎年10以上の魅力的なイベントを開催しており、実行力や団結力の強さを感じさせる。観光地に物的な豊かさを求める時代は去りつつあり、これからは大らかさ、優しさ、統一感、センス、笑顔など、心の豊かさがより求められていくだろう。つまり、「競争」ではなく「共創」の時代なのだ。そこに生きる人々が一つのチームとして土地の魅力を育み、輝かせることが生き残りのカギとなろう。そこで、互いに共創する風潮をどう育んだのか、芦原温泉女将の会にそのヒントを学びたい。 
〈取材=ジャーナリスト・瀬戸川礼子〉

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危機で強まった団結力

 芦原温泉は130年の歴史を有するが、長い間、女将会はなく、道で会えば会釈をする程度だった。それが1992年のある日、1人が『一度、みんなでご飯を食べよう』と声をかけたことで、初めて女将たちが集まることとなった。

 女将の会会長の伊藤昌代さん(まつや千千)は語る。「全員が『すぐに帰ろう』と思って参加しました。お客さま以上に、家族に対する遠慮がありますからね」。ほかの女将も一様に頷く。

 ところが、宿は違っても同じ女将同士。身の上話に花が咲き、大いに盛り上がった。「お昼に冷酒を初めて飲みました(笑)」、「『そうそう』と頷いてくれる人がいることが本当にうれしかった」。意気投合し、2カ月に1回集まること、当番制にすることなどを決めた。

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 それから5年ほど、「お遊び的な楽しい食事会」として続いた女将会は、97年のナホトカ号重油事故をきっかけに次のステップへと進む。温泉地は1年も風評被害を受け、海は「復活は難しい」と言われるほど汚れていたが、人々の助けによって美しく蘇った。

 「機械では取り切れない重油を、たくさんの方々が手で取り除いてくれました。そのお礼に、女将の会のみんなで大阪のテレビやラジオに出演し、『ありがとうございます。芦原は元気です』と伝えに行ったのです」。これが、みなで着物を着、外で公式に活動する第一歩となった。「中で宿を守るのが女将」という風習からの脱皮だ。食事会がお遊び的だったとしても、定期的に顔を合わせていたことで、みなの心がまとまりやすかった面も大いにあっただろう。

 逆境で得た団結力を生かし、忘新年会の誘致を促したり、県知事への公営宿泊施設の建設見直しの陳情など、活動に弾みをつけていった。

 もともと福井県は全国で共働き率はトップクラス。女性が働くことに抵抗のない県だ。しかし、「姑の悪口を言ってすっきりしてくればいいよ」と、義父が笑って送り出してくれる人もいれば、「嫁という字のごとく、女は家にいるものと思われ、外出は勇気が要りました」という人もいる。欠席しがちな人を責めることなく、それぞれの立場を理解しながら活動を続けた。

 心置きなく話ができるよう、食事会で集うレストランは温泉街から少し離れた店を選ぶ。1回1万円の会費は「大事な場だから高いとは思わない」、「いいものをいただくことも貴重な勉強」ととらえる。時間は午前11時半~午後3時まで。宿に戻れば「何もなかったかのように」、働く。

女将・主人らが仮装する節分おばけ
女将・主人らが仮装する節分おばけ

全施設220人で合同セミナー

 近年の取り組みを少し見てみよう。13年5月には、13人全員が一度に「利酒師」の資格を取得した。LINEで励まし合いながら、深夜に睡眠時間を削って学び、蔵元見学会も催した。全員で取得は全国的に珍しく、メディアにも取り上げられた。現在は各旅館に「利き酒セット」がメニューとして用意されている。

 今年2月には「第3回 節分おばけ」を開催。仮装で魔除けする京都の節分おばけを、関西の奥座敷と言われる芦原温泉に取り入れたもので、なんと女将や主人、市長に至るまで、ギャルや小坊主などユニークな扮装で宿泊客を楽しませる。都市部の大学などに通う後継者にもこの日は帰郷をうながし、親世代の仲の良さを目に焼き付け、次世代も仲良く共創していってほしいと願う。

 同3月には「おもてなし向上セミナー」を開催。13女将とそのスタッフ、総勢220人が2日間(午前10時半~午後3時)にわたり、合同でサービスの原点や、お金をかけずに顧客が笑顔になるアイデアなどを考えた。異なる宿で働く人同士が数人ずつ同じテーブルで学ぶのだ。女将だけではなくスタッフも相互関係をつくれるセミナーは、温泉地全体のまとまりにも一役買ったのではなかろうか。

心の元気がまちの元気をつくる

 すべての女将会には2つの目的があると思う。「心の元気」と「まちの元気」だ。そして、前者がかなってこそ、後者がかなう。「子育や仕事との両立のこと、お客さまや社員のこと、共通の課題を抱える同士なんです」、「誰にも言えない愚痴が言える唯一の場所」、「女子会ですよね。ストレス発散です(笑)」、「女将業は時間が不規則ですから、同級生の集まりにはまず行けません。友と疎遠になるなか、女将会は心の拠り所です」、「大きい宿の女将にはお手伝いさんがいると思っていましたが、小さい宿の私と同じで、おぶ紐で子供をくくって家事をしたと聞き、心が軽くなりました」

 人間のほとんどの悩みは「人との比較」が生む。「自分だけじゃない」と思えることは想像以上に大きな力になろう。「それで解決するわけじゃないけれど、分かってくれているだけでもいいんですよ」

 顧客アンケートに痛烈な批判が書かれて悩んでいた人は、「いいのよ、いいのよ、くしゃくしゃポイよ」と、ユーモアたっぷりに先輩女将に励まされ、共に笑って、「またがんばろう」と吹っ切れたそうだ。「心でハグし合っているんです」と伊藤会長。こうした心の元気がかさ上げされて、まちの元気も高まるのだろう。女将の会ホームページ上の「若女将のひとりごと」にはくすりと笑える裏話が満載だ。覗いてみてほしい。

情報ネットワークを駆使する

 「以前は個別にがんばっていましたが、いまは『芦原温泉全体で有名になろう』と、チームワークを大事にしています」と、みなが言う。

 かつて33軒あった会員宿は、現在13軒に。「これ以上1軒も減らさない」との思いを抱く。「ある程度、温泉地の規模がないとイベント開催も難しくなります。幸い、特徴のある宿がしっかり残っていますから、みなでみなを守り、高めたい」

 ネット活用も一役買っている。全女将がメーリングリストを使え、毎日女将の誰かとLINEをする人も多い。常に心の距離が近いから、例会でも話が早いのだ。

 2000年から始めたホームページは現在も頻繁に更新されている。制作・管理は立尾清美さん(白和荘)。「最初はみんな、レスポンスという言葉も分からないので(笑)、一から教えました。世の中は進展している。私たちも進展しよう、と」

 ベテラン女将も携帯からスマホに買い替えた。全国的に見て、女将さんは情報ネットワークに弱い人が多い気がするのだが、芦原温泉女将の会は例外だ。

「私たち女将の会では、『年だからできない』は通用しません(笑)。そこはしっかり教え合う。幸い、先輩女将は『教えてくれてありがとう』と言ってくれるので、その素直な姿に若い女将たちは尊敬を抱き、よりよい信頼関係にもつながっているんです」

 数々の取り組みは、来春に控える北陸新幹線開業に向けた準備にもなっている。

 観光とは光を観に行くこと。喜々として活動する芦原温泉女将の会の存在に、観光地としての未来を垣間見た気がした。

訪日客を日本各地へ、11月に新会社設立(HISとANAセールス)

社長就任予定の深木重和氏
社長就任予定の深木重和氏

 エイチ・アイ・エス(HIS、平林朗社長)とANAセールス(白水政治社長)は9月1日、海外からの訪日客を日本の各地方に送客する訪日外国人向けの国内旅行を販売する新会社設立を決めた。現時点で社名は未定で11月の設立時に決定する。来春から営業予定。

 新会社社長にはHIS本社新規事業開発室長の深木重和氏が、副社長にはANAセールス経営企画部担当部長の廣岡伸雄氏が就任する。

 主な事業は国内の旅行商品造成・予約管理で、訪日個人旅行に力を入れる。HISのハウステンボスや、地方の観光都市・施設を利用した商品を造成し、海外のHISで販売。海外ニーズに合わせるため、マーケット調査や海外支店を通じて商品を造成する。また、各地方の行政・観光施設が提案した観光素材まで案内できるようにしており、海外店舗販売をとくに重視している。ウェブ販売も展開する。

 新会社ではANAとHISのネットワークを駆使し、地方都市から地方都市へと移動できる仕組みを作り、これまで国際線の就航都市までしか来られなかった利用客が地方に行きやすくする。販売するのは国内旅行商品なので、日本に来るまではどの会社を利用しても問題ない。

 HISの平林社長は、「現在の訪日客は東京や大阪からの出入りがほとんど。新会社で地方都市・地方空港を活用し、日本の魅力を伝えたい」と述べた。ANAセールスの白水社長は「我われのネットワークを使えば首都圏やゴールデンルートだけではなく、日本の隅々まで行ける。各地方都市の活性化につなげたい」と期待を寄せた。

 HISの予約サイトや海外店舗、ANAの国内線最大のネットワークなど、それぞれのメリットを活かし、2020年の東京オリンピックまでに売上高100億円、送客20万人を目指す。

ラッピングバス運行、ミシュラン「四国」公開へ(松山市)

テープカットのようす
テープカットのようす

 日本で初めての地域版ガイド「ミシュラン・グリーンガイド・SHIKOKU」(Web版)が10月に公開されることに合わせて、愛媛県松山市は日本ミシュランタイヤと協力して、「ミシュラン・グリーンライナー」号の運行を始めた。

 「ミシュラン・グリーンライナー」号はミシュラン社のオフィシャルバスで、伊予鉄道が運行するリムジンバス(松山空港―道後温泉駅)に、企業キャラクター「ミシュランマン」が道後温泉本館や松山城、しまなみ海道を紹介しているデザインをフルラッピングした。

 1日最大13本(片道)が運行される予定で、伊予鉄道の清水一郎副社長は「松山空港を利用する外国人観光客や、多くの国内旅行者に加え、地元市民にも地域資源のすばらしさを再認識してほしい」と話す。

 8月19日に、松山市役所本館前広場で開かれた運行記念セレモニーには、日本ミシュランタイヤ社長のベルナール・デルマス氏、四国運輸局長の澤山健一氏、松山市長の野志克仁氏、伊予鉄道副社長の清水一郎氏などが出席し、テープカットを行った。

温泉で入浴介助サービス、ニチイと連携、宿泊施設で初(富士レークホテル)

バリアフリー仕様の貸し切り風呂
バリアフリー仕様の貸し切り風呂

 「富士レークホテル」(井出泰済社長、山梨県富士河口湖町)は、1人で入浴することが難しい車イス利用者などにも気兼ねなく温泉を楽しんでもらおうと、2年ほど前から館内の貸し切り風呂で入浴介助サービスを提供している。訪問介護など介護事業を全国で展開する「ニチイ学館」(本社・東京都千代田区)と宿泊施設として初めて連携した取り組みで、入浴をあきらめていた利用者からは喜びの声が寄せられている。

 サービスは有料で、宿泊予約時に申し込みできる。介助はニチイのスタッフがあたり、利用者同意のもと、事前に身体状況の把握や必要に応じヒアリングを行い、当日も体温・血圧・脈拍測定などの体調をチェックする。入浴が可能か判断したうえで、リフトや各種備品も整ったバリアフリーの浴場へ客室から誘導し、脱衣から入浴、着衣まできめ細やかなサポートを行う。 

 同ホテルは、館内共有部や客室にユニバーサルデザインを業界でもいち早く導入するなど、人にやさしいホテルを目指した取り組みを行い、11年には内閣府の「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰優良賞」を受賞している。

 入浴介助サービスについても、「当初は、ホテルのスタッフが行う形でスタートした」と井出社長は話す。だが、より高い専門性や社員の負担の軽減、安全への対策を模索するなかで出会ったのがニチイ学館だった。

 安心・安全を最優先に、教育や人材育成を通し培ってきたニチイのノウハウもサービスに活きる。同社の太田弓恵甲府支店長は「車イスの方も旅先で入浴できることを知っていただき、ご家族との思い出作りや張り合いを生むお手伝いにつながれば」と話す。

 富士レークホテルの貸し切り風呂は、入口から浴室まで段差のないフルフラット仕様。一度に4―5人入浴できるゆったりとした造りで、湖の絶景を望みながら河口湖温泉の引き湯を心ゆくまで楽しめる。

北陸新幹線3月14日開業、東京―金沢は1日24往復

新型車両E7系
新型車両E7系

 JR東日本とJR西日本は北陸新幹線(長野―金沢)の開業日を15年3月14日と発表した。

 運転本数は東京―金沢を最速で運行する「かがやき」が1日10往復、各駅に停車する「はくたか」は同14往復と長野―金沢が同1往復する。富山―金沢を運行する「つるぎ」が同18往復、現行の東京―長野を結ぶ「あさま」が同16往復。

 停車駅は「かがやき」が東京、上野(一部通過)、長野、富山、金沢。「はくたか」が東京、上野、大宮、高崎(一部通過)、安中榛名(同)、軽井沢(同)、佐久平(同)、上田(同)、長野、飯山(同)、上越妙高、糸魚川、黒部宇奈月、富山、新高岡、金沢。

 長野―金沢の「はくたか」は長野から各駅停車。「つるぎ」は富山から各駅停車。「あさま」は東京から各駅停車(熊谷、本庄早稲田、安中榛名は一部通過)。

 編成はE7系・W7系12両編成(あさまの一部はE2系8両編成)。到達時間は最速で東京―金沢間が2時間28分、東京―富山が2時間8分。

 北陸新幹線開業にともない、特急「はくたか」(越後湯沢―金沢・福井・和倉温泉)、特急「北越」(新潟―金沢)、特急「サンダーバード」(金沢―富山・魚津・和倉温泉)、特急「しらさぎ」(金沢―富山・和倉温泉)、特急「おはようエクスプレス」(金沢―富山・泊)、快速「くびき野」(新潟―新井)、快速「妙高」(直江津―長野)は運行を取り止める(現在大阪―和倉温泉を運転しているサンダーバードは4往復のうち1往復は継続)。

 また、新たに新潟―上越妙高で特急「しらゆき」を5往復、金沢―和倉温泉で特急を3往復、新潟―新井で快速列車を2往復、新潟―糸魚川で快速列車を1往復それぞれ運行する。