エアビー急拡大、民泊事業利益1.7倍に

 エアビーアンドビーはこのほど、2016年度の日本における民泊事業の利益が4061億円に上ると発表した。15年度の2363億円と比べ1・7倍になる。経済効果の推計は同1・8倍の9200億円に達する見込みだ。一方訪日外国人宿泊者数は同2・7倍の370万人。民泊仲介大手のサービス利用が急拡大している。

 標準的なホストの年間収入額は100万4830円。貸出回数は年間89回で、1人当たりの平均宿泊日数は3・4泊となった。外国人利用者国・地域は1位が韓国、2位は中国で、3位は米国だった。

 同社を利用して滞在した上位3都市は東京、大阪、京都の順。いわゆるゴールデンルートが占めた。宿泊利用率が高い都道府県は1位が大阪府。以下東京都、福岡県、奈良県、広島県と続いた。

 上位は大都市が目立つ。ただ「宿泊先は47都道府県すべてにある」(同社日本法人公共政策担当部長の山本美香氏)という。今後は観光の拡大や地域活性化を促進して「経済の発展に貢献していく」(同)とコメントしている。

 これら活動レポートはエアビー内部データと、17年1月に実施したホスト・ゲスト調査の結果を元に作成したもの。

「集中と分散」分社化へ、新社長に丸山隆司氏(KNT―CT)

戸川和良現社長(左)と丸山隆司新社長

 KNT―CTホールディングスは4月27日、グループの再編と社長交代を発表した。新社長には丸山隆司顧問が就任し、戸川和良社長は相談役に退く。人事は6月20日に正式決定される。丸山新社長は「東京オリンピック・パラリンピックが開催される3年後までに成果を示す」と意気込みを語った。同社は新体制のもと、「集中と分散」を基本方針にグループを再編し、分社化による地域や専門分野に応じた営業体制を確立。地方創生や地方誘客へ動きを加速させる。
【後藤 文昭】

 集中に基づく再編では、近畿日本ツーリストと近畿日本ツーリスト個人旅行の事業統括部門をKNT―CTホールディングスに集約。情報を1カ所にまとめ、グループの横断的な事業戦略の策定機能と事業推進機能、グループ全体の基盤の強化をはかる。

 一方分散に基づく再編では、近畿日本ツーリスト首都圏と同関東、同中部、同関西を新たに設立。旅行形態の区別なく、すべての旅行と関連需要を取り込み、地域発型の旅行事業を深化する。多くの自治体が推進する地方誘客への取り組みも勧奨し、「地域誘客センター」を各社に設置、着型需要の獲得もはかる。

 既に同北海道や九州などが地域に根差した営業活動を行っており、業績を上げていることから分社化に舵を切った。今後はオンライン旅行会社(OTA)では販売が難しい地域商品を販売し、「地域旅行会社」としての企業価値も高めていく。

 大手企業が集中する東京地区には、近畿日本ツーリストECCを設立。MICEを中心に、企業・団体旅行などの法人需要に対応する。

 増加するインバウンド需要へは、KNT―CT訪日旅行を設立し、対応する。グループ各社に分散していた関連部門をまとめ、経営資源を集中投下。同グループの収益の柱に据え、組織強化をはかる。

 また、グループのウェブ戦略やインターネット販売強化のため、近畿日本ツーリストWEBも設立する。

 なお名称はすべて仮称で、分社化は2段階に分けて行われる。同中部と関西、KNT―CT訪日旅行は6月1日に設立し、10月1日から事業を開始。その他の各社は18年4月1日から事業を開始する。

 丸山 隆司氏(まるやま・たかし)1972年3月早稲田大学政治経済学部卒業。同4月近畿日本鉄道(現近鉄グループホールディングス)入社。2004年5月志摩スペイン村社長、06年3月近鉄レジャーサービス社長、11年きんえい社長などを歴任。17年KNT―CTホールディングス顧問就任。

増加するインバウンド、多言語化へAIを活用(KNT―CT)

田中貴業務課長(左)と、安岡宗秀室長

 KNT―CTホールディングスとグループ会社の近畿日本ツーリストは3月から、インターネットサービスの企画、運営を行うtripla(トリプラ)と共同で「triplaチャットボットサービス」を展開。チャットでの問い合わせに対し、AI(人工知能)とオペレーターを組み合わせ対応する。インバウンドの地方化・個人旅行化・観光業者の小規模化に対応し、多言語化することは喫緊の課題。未来創造室の安岡宗秀室長と訪日旅行部の田中貴業務課長に話を伺った。
【後藤 文昭】

 ――多言語対応に着目されましたが。

 訪日外国人旅行者数が年々増加するなか、個人旅行化が進み、地方に多くの人が流れています。また、民泊サービスやカプセルホテルなど旅行事業者が変化、小規模化してきています。このような変化に対し、多言語対応が急務ですが、「言葉の壁」が大きく立ちはだかっています。

 ――「言葉の壁」とは。

 多言語での問い合わせに対応できる人材の不足や、コストの問題ですね。例えばコールセンターに依頼した場合、質問に的確に回答ができますが、導入コストが負担になっています。 

 ――この問題へ、どうアプローチしますか。

 以前から、ホテルや旅館向けに音声翻訳サービスを立ち上げるべく、課題抽出を行っていました。そのなかで、音声への対応だけではなくメール対応に対しても、さまざまな課題、改善点があることが分かってきました。

 ――課題とは。

 まず、質問内容の類型化があります。もう1つは、言語数が多く、対応するスタッフを十分に用意できないことです。

 そこで、AIを組み合わせたサービスを考えました。

 ――AIを組み合わせる理由は。

 人件費の節約と生産性の向上です。AIを使えば、類型化された質問に自動で返答することができます。また、常に学習を行うので、日々の会話内容を蓄積し、徐々に自動で回答できる回数を増やすこともできます。

 あらゆるサービスが機械化できるようになったとしても、「おもてなし」だけは無理です。同社のサービスを活用すれば、今まで問い合わせ対応をしていた人材を接客に回せ、施設のサービスの向上にもつなげられます。

 ――サービスの最大の売りは。

 「安心」です。AIは予期せぬ質問に対して的を外した回答をしてしまうことがあります。学習を重ねていけば、語彙が増え、より精度が高まりますが、時間がかかります。そこでオペレーターを併用し、回答率を100%にしています。

 ――どのような流れで展開されますか。

 導入される施設には、「アクセス」や「入浴時間」など、よくある質問への答えを記入したヒアリングシートを提出していただきます。その後、訪日外国人からの質問に対し、このシートから回答を行います。

 ――あらかじめ想定できない質問へは。

 チャットオペレーターが判断できる場合は直接、判断できないものは施設側に確認して回答します。

 ――1月にはアプリも配信していますが。

 BtoC向けに「YOKOSO Japan App」を、トリプラと共同でリリースしました。「triplaチャットボットサービス」を活用した訪日外国人向け観光アプリです。

 自社が展開している「YOKOSO japan Tour & Hotel」の各種日本体験プログラムやアクティビティの販売、飲食店の案内、予約などができます。

 ――今後の展開は。

 自治体や温泉組合のような、地域を束ねている団体にも導入してもらいたいです。宿泊施設側もインバウンドを受け入れることが大切なのは、分かっています。一方で受け入れ慣れていないのと、ホームページの多言語化などに対する投資が必要になるので、実行するのが少し難しい状況です。自治体などが資金面などで支援し、一括導入できれば、地域の固有名詞も蓄積でき、旅先としての質の向上にもつながると期待しています。

 ――ありがとうございました。

新会長に松﨑氏(ふもと旅館)、“笑顔輝く女性経営者に”(全旅連JKK)

岡本尚子会長があいさつ

 全旅連女性経営者の会(JKK、会長=岡本尚子・不死王閣女将、84会員)は4月18日、神戸市中央区のほてるISAGO神戸で、2017年度通常総会を開き、役員改選で新会長に松﨑久美子氏(ふもと旅館女将、熊本県黒川温泉)を選任した。

松﨑久美子新会長

 松﨑新会長は「女性がもっと勉強して、いろんな知識を得ることで会社は発展していく。岡本会長の理念を引き継ぎ、楽しく会を盛り上げていきたい」と抱負を述べた。 

 岡本会長は「2年前の総会で『ネクストステージの幕開け、輝く女性経営者になろう』というスローガンを掲げ会長に就任した。皆様のおかげで、一番輝けたのは私だったように思う」と謝辞を述べ、「新役員の皆様には12ある会員不在県の解消に取り組んでほしい」と期待を寄せた。

 新体制では「笑顔輝く女性経営者になろう2017」をスローガンに掲げ、新たに「宿の労働環境改善委員会」を設置し、計6委員会のもと会員同士の交流拡大、SNS(交流サイト)などを活用した情報発信、インバウンド対策などに取り組む。

 総会には全旅連の北原茂樹会長と青年部の桑田雅之部長(4月20日の総会で交代)も駆け付けた。北原会長は住宅宿泊事業法(民泊新法)が来年7月から施行される見通しを示し、「それまでの違法民泊が懸念される。現在京都市内では中国人が土地を取得し無断で民泊をしているところが20カ所もある。取り締まり強化が必要だ」と述べた。

 2017・18年度役員は次の各氏。

 【会長】松﨑久美子【副会長】小林佳子▽佐藤祐子【委員長】田中美岐▽野口露珠▽中西美暁▽岡田典子▽谷口真理▽齋藤靖子【監事】石橋利栄

2回目の入社式開く、てるみ内定者4人迎える(東武トップツアーズ)

5月1日の入社式のようす

 東武トップツアーズ(坂巻伸昭社長)は5月1日、今年2回目の入社式を行った。3月に破産した「てるみくらぶ」に内定していた新卒者4人を迎えたことから、今回の入社式を開いた。新入社員は4月入社と合わせて計151人。

 坂巻社長は新入社員4人に対し、「夢を持つこと」「出会いを大切にすること」「時間という概念を持つこと」の重要性を訓示。ほかの新入社員と1カ月遅れの入社となったが、「時間的な問題はない。この1カ月間の出会いや想いなどの経験は大切なものとなる。そうした経験を活かして1日も早く人として成長し、当社の一員として会社の発展に寄与してほしい」と期待した。

復旧費用は約70億円、全線復旧まで5年必要(南阿蘇鉄道)

南阿蘇鉄道路線図

 国土交通省は4月16日、昨年発生した熊本地震で被災した南阿蘇鉄道の、鉄道施設災害復旧調査報告書を公開した。報告書によると、復旧にかかる費用はおよそ65―70億円。全線復旧は、第一白川橋りょうの架け替えが余儀なくされているため、少なくとも5年程度かかることが明らかになった。同報告書を基に、全線復旧までの過程についてまとめる。
【松本 彩】

 南阿蘇鉄道は立野駅―高森駅までの全長17・7キロを走る鉄道で、1985(昭和61)年に旧国鉄高森線から第3セクターとして誕生した。地元の人からは〝南鉄〟の愛称で親しまれ、通勤・通学の足となっていた。

 本震(4月16日)から10日後の4月26日に、同鉄道と鉄道総合技術研究所が行った本震後初の調査では、レールは飴細工のように曲がり、トンネルの壁には複数亀裂が入っていた。また、土木学会から「2015年度選奨土木遺産」に認定された立野橋りょう、第一白川橋りょうも中央部分が盛り上がり、鋼材が変形していた。

 初調査の段階では、全線復旧には少なくとも1年。復旧費用は、第一白川橋りょうを補修した場合で30億円、架け替えの場合は50億円にまで膨らむとされていた。

 同線は16年7月31日から、中松駅―高森駅間(7・2キロ)の部分運転を再開した。しかし、残る立野駅―中松駅までの10・5キロの区間は、橋やトンネルの損傷が激しく、具体的な復旧見通しは立っていない。

 今回公開された報告書によると、立野駅―長陽駅間にある全長125メートルの犀角山トンネルは、高森側の約40メートルが山ごと横ずれし、トンネルに49センチほどのゆがみが発生していることが判明した。

 復旧方法は、横ずれした40メートル区間の山を切り崩し、高森側のトンネル入口を40メートル後退させる。概算費用はおよそ20―25億円。復旧見通しは設計着手から3年程度とされている。

 一方、熊本県の中北部を流れる一級河川・白川を渡る第一白川橋りょうは、架け替えを余儀なくされた。地震により橋台や橋脚が最大で約40センチ移動。復旧には、古い鉄骨の撤去と、橋脚の基礎部分の補強などが必要なため、概算費用はおよそ40億円。復旧見通しは設計着手から5年程度にまで及ぶ。

 そのほか、立野橋りょうの基礎コンクリートの補強や、擁壁や斜面の再構築の復旧工事に約1年。およそ5億円の費用がかかるため、全線復旧費用は合計で約65―70億円、全線復旧見通しは早くても5年後の2022年ごろになる見込み。

 東日本大震災で被災した岩手県の三陸鉄道は、線路などの鉄道施設を、地元自治体の所有とした「上下分離」を実施。国と自治体が復旧費の50%ずつを負担した。また、東日本大震災を受け新設した、震災復興特別交付税を総事業費約92億円に充てたことで、約3年で全線再開に至った。

 熊本県や地元自治体は、三陸鉄道と同様の支援策を国に要請。現在協議を進めているが、震災復興特別交付税は、東日本大震災からの復旧・復興に限られていることから、同鉄道の実質負担ゼロは難しい状況だ。4月28日に、「南阿蘇鉄道再生協議会」が設立。月1回の会合を重ね、全線復旧に取り組む。

『サービス産業労働生産性の革新 理論と実務』

サービス産業労働生産性の革新 理論と実務

『サービス産業労働生産性の革新 理論と実務』

著 者:内藤耕
定 価:1冊 1,320円(税込)
送 料:実費(1部320円)
販売元:(株)旅行新聞新社
仕 様:新書判 218ページ
発売日:2015年10月1日 初版発行


<内容紹介>
 本書は、旅館やホテルなどを中心に、サービス産業の労働生産性の“第一人者”である内藤耕氏が「革新に向けた方法論」を章ごとにわかりやすく解説している。
 内藤氏が数多くのフィールドワークによって得た先進的な取り組みをモデル化し、これまでになかった「方法論」と、それを支える「ツール」を提示した画期的な書。
 2011年から旬刊旅行新聞で掲載してきた記事をまとめたもので、幅広い分野で今も大反響を呼んでいる。

<目 次>
「序 章」 作業プロセスの改革―旅館経営の近代化
「第1章」 集合モデルを現場に導入―「サービス・キネティクス原則」を提案
「第2章」 作業の流れをつくる現場―「リアルタイム・サービス法」を提案
「第3章」 生産性を上げる集客―「集客器理論」を提案
「第4章」 お客様との多様な情報交換―「おもてなしピラミッド」を提案
「第5章」 働き方のルールブック―「戦略的就業規則」の提案
「第6章」 現実の実態に合った労務管理―「稼働対応労働時間制」を提案
「第7章」 現場を会計的に“見える化”―サービス産業の「管理会計」を提案

<著者について>
内藤 耕(ないとう・こう)
工学博士、一般社団法人サービス産業革新推進機構代表理事
金属鉱業事業団(現在の石油天然ガス・金属鉱物資源機構)、世界銀行グループ、産業技術総合研究所を経て現職。主な著書に『サービス工学入門』(編著、2009・東京大学出版会)、『いい旅館にしよう!』(編著、2014・旅行新聞新社)など多数。


No.460 エアビーアンドビー田邉代表に聞く、新しい“旅”の創造、市場拡大へ

エアビーアンドビー田邉代表に聞く
新しい“旅”の創造、市場拡大へ

 エアビーアンドビーを訪れ、日本法人代表の田邉泰之氏に話を聞いた。3月に閣議決定された住宅宿泊事業法案(民泊新法)について、改めてプラットフォーマーとしての見解を示した同氏。昨年から開始した、体験とユーザーをマッチングする“トリップ”事業も順調だという。今後は、出会いの“場”を提供するプラットフォーマーとして、旅行会社をはじめ、各企業やホテル・旅館、行政自治体と連携をはかり、新しい“旅”の創造と、関連する市場の拡大に注力する。

【謝 谷楓】

 
 
 ――昨年11月から、 “トリップ”事業(サービス)をスタートしました。ターゲットや、旅行会社との関わりについて教えてください。

 “トリップ”事業では宿泊の枠を超え、ゲストと体験までをつなぎます。私たちは、趣味や仕事に対する情熱や知見を伝えたいホストと、興味あることについて教えてほしいゲストがマッチングする“場”を、提供しているのです。サービスを利用すれば、趣味をめぐる知見を個人間で、ダイレクトに共有できます。ゲストにとって独学では学びづらいことも、体験を通じ習得できます。

 私も“トリップ”を通じ、盆栽や料理に関する体験を行ったのですが、ホストとの交流や、その情熱に触れることで瞬く間にのめり込んでしまいました。今では自分にとって大切な趣味となっています。

 私たちエアビーアンドビーのサービスを利用する多くの方が、“ヘビートラベラー”です。日本をはじめ各国・地域のカルチャーに対する知識欲が高く、高収入高学歴の方が多いのも特徴です。“トリップ”ではとくに、この方たちをターゲットとして捉えています。

 “トリップ”を通じ、ユーザーは宿泊だけでなく、地域の皆さんと交流を果たすこともできます。地域ならではのアクティビティに参加するなど、経済効果も期待できます。

 地域ヘの関心の高いこれらユーザーの移動をサポートし、日本各地を好きになってもらうことが、“トリップ”事業の目的でもあります。旅行会社とは、連携による新しい相乗効果が生まれるはずです。現在、旅行比較サイトを運営する、オープンドア(関根大介社長)とベンチャーリパブリック(柴田啓社長)の2社と提携しています。選択肢を広げることで、市場全体の拡大に微力ながら貢献したいです。

 1月には、東京大学との“共同研究”を始めました。ホームシェアリング(民泊)の定義の明確化や活用方法、経済効果の予測研究を行っています。このなかで、幅広い業種の皆さんと、意見交換を続けています。IT企業や金融機関、建設、不動産、鉄道関連の企業などが含まれます。

 ――ユーザーの安全安心を守るための取り組みについて。

 私たちのブランドコンセプトは“Belong Anywhere”。世界中のどこを訪れても、暮らすように旅をすることが事業理念です。ゲストとホストは、1つの“コミュニティ”に含まれる仲間なのです。

 レビュー機能では、双方が対等の立場に立って評価し合えるため、悪質なユーザーが排除される仕組みを整えています。セキュリティ対策など、システム面でのサポートも万全を期しています。

 ホスト保証のほか、ホスト補償保険も導入していますから、ホームシェアリング時の怪我など、ゲストの安全安心にも配慮しています。

 ――旅行会社との連携の現状について詳しく。

 旅行会社や航空会社の皆さんとの連携を強く望んでいます。旅行業ビジネスの枠内と枠外、両面での連携が可能だと考えています。パートナーとなるかもしれない企業の皆さんとの対話を深めていかなくてはなりません。プラットフォーマーという業態に関する私たちの説明も、十分とは考えていませんから、引き続き努力を続けます。

 ――ほかの民泊プラットフォーマーとの差別化について。

 私たちの目標は、旅をもっと“リッチ”にすることです。プランニングから予約や移動、体験、帰路まで、旅に関わる事柄すべてを、より豊かにしていきたいと考えているのです。新規サービスについても、ユーザーの困りごとを想像し、試行錯誤を繰り返しながらつくりこんでいます。

 “トリップ”に着手するなど、事業領域は宿泊のマッチングに留まりません。便利でスムーズな、楽しい旅ができる入口として、ユーザーに選ばれるプラットフォームを目指しているのです。

 ――国内での展開は。

 グローバルで拡大してきたサービスを、国内で受け入れられる、日本らしいカタチにしていくことが、日本法人の目標の1つです。国の定めるルールについても、日本に適したものがあるべきだと考えています。

 当社はあくまで、ホストとゲストが直接契約できる“場”を提供するプラットフォーマーです。宿泊施設の運営は一切行っていません。

 企業らと連携することで、エアビーアンドビーは多様なサービスに通じるプラットフォームと化していきます。教育機関や各企業との“共同研究”を行う目的もここにあります。

 当社がユーザーにとって、旅を上手に楽しめるプラットフォームをつくりこめたなら、移動や飲食、体験など関連ビジネスが生まれ、育つことも期待できます。…

 

※ 詳細は本紙1669号または5月8日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

考え続けること ― 「自分だけと付き合う濃密な時間」

 サッカーをする1人の少年を眺めていた。その子はまだ小学校の低学年。チームメイトからパスを受けるたびに、目を引いた。ショートパスを受けるときは小さな足先で、ロングパスは小さな胸で受け止めて、ポトリと足元の絶妙な位置に落し、瞬時にシュートを打っていた。まだ10歳にもならない少年の何気ない一つひとつのプレイが光って見えた。

 多くの子供たちは一流選手の真似から始めるが、華麗な技の習得はそう簡単ではない。

 高度な技術は、地道な基礎練習が必要だ。上手になりたい、という一心で、同じ訓練を積み重ねていくしかない。私が見た少年もまた、何度も、何度も同じことを繰り返す反復練習を、誰も見ていない場所でしているのだろう。少年の積み重ねてきた鍛錬の時間を想像した。

 絡み合った関係性を完全に切り離した時間を持つこと、そして、その時間を自己の訓練のために没頭することは、現代人にとって、とても難しい環境になりつつある。

 私はプロボクサーが縄跳びをする姿が好きだ。鍛錬の度合いが常人とは一線を画していることを、一瞬にして理解させる。

 ピアニストが演奏前に鍵盤を叩きながらその感触や、音の具合を確かめる。不規則な鍵盤操作がしばらく続き、あるときいきなり美しい旋律を奏で出す瞬間も、たまらなく好きだ。

 何かを極めるには、社会との関係を切断した「自分だけと付き合う濃密な時間」が必要なのだ。

 先日、スマートフォンが突然壊れた。新しい機種の初期設定に戸惑い、3日間ほど使えない状態になった。

 スマホがない数日間は、視界が晴れた。自分が日々どれだけ多くの時間、スマホを見ていたかを把握できた。そして、いつの間にか、じっくりと考えるための膨大な時間が奪われていたことに気づかされ、大きなショックを受けた。

 世の中がリアルタイムでどう動いているか、わずかな暇ができると、ネットニュースを探してしまう毎日だ。手元の小さなスマホには、国内ニュースや、国際情勢、スポーツの結果、芸能人のゴシップネタ、凶悪犯罪事件の続報などが刻一刻、切れ目なくアップされてくる。どうでもいい情報もインプットしてしまう。日中だけではない。夜中にふと目覚めると、暗闇の中でスマホに手を伸ばし、何か新しい出来事が起こっていないかと調べたり、SNS(交流サイト)をチェックしたりして、眠れなくなることも稀ではない。

 さまざまな方々にインタビューでお話を伺う機会がある。取材中、あらゆる質問を投げかけるが、どのような問いにも深い言葉で返される方がいる。日々考え続け、考え抜いて生きてきたからだと思う。どのような立場にあろうと、それは同じだ。プロボクサーの縄跳びのように、あるいはピアニストの指先と同じように、対話の中で、鍛えられた思考力に圧倒されることがある。考え続けることの“凄み”を感じる瞬間だ。

 スマホは便利であり、高度な情報化社会において、もはや必需品となっている。しかし、自らの技術を磨く時間や、思考し続ける意志が、気づかぬうちに削られているのなら、それは脳の退化でしかない。あのサッカー少年のように、人知れずボールを蹴り続ける姿を忘れまいと思う。

(編集長・増田 剛)

国がWGを設置へ、てるみくらぶ経営破綻受け(田村長官)

 てるみくらぶの経営破綻を受け、今国会に提出中の旅行業法の一部改正案について検討する「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」内に、経営ガバナンスワーキンググループを設置する。田村明比古観光庁長官は4月19日に開いた会見で、明らかにした。

 ワーキンググループでは、弁済業務保証金制度のあり方のみならず、オンライン時代のビジネス展開方法や、企業の監査体制、営業状態に関するガバナンスなどについて、有識者らと幅広くかつ速やかに検討する。

 田村長官は、弁済業務保証金制度の見直しについて「バランスが非常に大事である」と述べたうえで、単に現在の制度を見直すだけでは、根本的な解決には至らないと言及した。

 また旅行市場は、オンライン旅行会社(OTA)の急速な成長により、実力に関係なく容易に旅行取引額を拡大することができる時代へと変化してきている。このような変化に対し田村長官は、「弁済業務保証金制度額を引き上げる前に、やはり各旅行会社がまともな経営をすることが先決である」とまとめ、近日中に設置するワーキンググループ内で、時代の流れに合った旅行取引の仕方についても議論の必要があると語った。

 なお同ワーキンググループは、学識経験者らに加え、日本旅行業協会、全国旅行業協会などの業界団体からも数人が参加する見込みだ。