ゴースト・イン・ザ・シェル

  4月7日に公開された映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」を観てきた。原作アニメは「ゴースト・イン・ザ・シェル/攻殻機動隊」でその劇場版の2作目「イノセンス」を観たのが、私と攻殻との出会いだった。その時は事前に何の予備知識もなく、映画館で初めて観たのでよく理解できなかった印象しかない。

 しかしながら、随所に登場する格言的なセリフ回しをはじめ、アニメを超越した世界観に魅了され、その後パッケージ化される度にDVDやブルーレイで見直し、映画「イノセンス」の大ファンになっていった経緯がある。

 今回、実写映画化された作品は素晴らしく、観終わってすぐにIMAX(R)3Dの日本語吹替版でもう一度観たいと思った。字幕なしの大画面で観ればさらに没入できること間違いない。

【古沢 克昌】

外客消費額8兆円に、新たな計画を閣議決定

 政府は3月28日、2017年度から20年度までの新たな「観光立国推進基本計画」を閣議決定した。7つの数値目標が掲げられ、訪日外国人旅行消費額は15年度実績3・5兆円から2倍強の8兆円に設定。「モノ」から「コト」の消費に変化するなか、大幅な上積みを目指す。目標数値は15年度実績などを基に算出。訪日外国人旅行者の地方部における延べ宿泊者数は、2514万人泊から約3倍の7千万人泊に増加させる。地方部の宿泊者数の比率を高め、地方創生に結び付けるためだ。

 訪日外国人旅行者数の拡大にはリピーターの確保も重要。目標値を1159万人の約2倍の2400万人とした。

 国内旅行消費額は、最近5年間の平均値から約5%増の21兆円に定め、国内旅行消費額の維持に努める。訪日外国人旅行者数は、1974万人の約2倍の4千万人とし、目標値達成に向けて進めてきた取り組みを継続させていく。

 同計画は、昨年策定した「明日の日本を支える観光ビジョン」を踏まえ、方向性を決定。観光を国の成長戦略の柱、地方創生への切り札と位置付ける。

 政府は今後、民泊サービスに向けた法整備や旅行業法の改正、「地方創生回廊」の完備と地方への外国人旅行者の流れの創出など多岐に渡り策を講じていく。

インスタグラム活用、地域の魅力、世界で共有

インタビューに答える松重氏

 インスタグラムは、SNS(交流サイト)の1つで、スマートフォンなどで撮影した写真(画像)を加工し共有できる。専用アプリから利用でき、フィルター機能を用いての写真加工も容易だ。アカウント数は6億超で、地域PRに最適なツールの1つ。今回、同SNSで写真コンテストを作成・管理するキャンペーンCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)〝CAMPiN〟を提供するテテマーチ(上田大介代表、東京都品川区)の松重秀平執行役員に話を聞いた。【謝 谷楓】

テテマーチ・松重秀平執行役員に聞く

 ――企業を中心に、インスタグラムを利用した情報発信に注目が集まっています。自治体らにとって、インスタグラムを活用するメリットを教えてください。

 インスタグラムを地域のPRに導入するメリットは大きく2つあります。言葉の壁を超えやすい点と、〝いいね〟やコメントが付く率(エンゲージメント率)がほかのSNSと比べ高い点です。
 ユーザーは、投稿した(された)写真を通じてコミュニケーションを行います。そのため、言葉の通じない海外ユーザー同士による交流も、ほかより容易なのです。海外に対し、地域で自慢の風景を知ってもらい、共感を呼ぶという使い方ができます。例えば、日本のユーザーが投稿した画像に対し、海外ユーザーがコメントをするといった反応も珍しくありません。地域のファンを、国内外で増やすことができるのです。

 ――高いエンゲージメント率について。

 フェイスブックと比べ2倍以上、ツイッターよりも3倍以上エンゲージメント率が高いという調査もあります。情報の不特定多数への拡散がSNSの役割と考える方もいるかもしれません。しかしインスタグラムでの投稿は原則、投稿者のフォロワーにのみ発信されます。ツイッターのリツイートや、フェイスブックのシェアといった機能はありません。
 ユーザー間の距離が近く、エンゲージメント率の高い密なコミュニケーションが生じやすい理由です。
 メディアの性質上いわゆる炎上が起こり難いことも特徴の1つです。利用目的が、お洒落に加工した写真の共有に特化し、ネガティブな投稿は生じづらいと言えます。

 ――自治体や観光協会でも利用しやすい印象を受けます。

 綺麗な風景や美味しそうな食べ物など、写真撮影はポジティブな感情が生じた際に行われがちです。投稿された写真を通じ、友人など投稿者とつながりの深いユーザーが観光スポットについて知ることで、口コミ効果を期待できます。
 旅行先で写真を撮らないことは稀ですから、それら写真をインスタグラムに投稿してもらえるよう工夫を施すべきだと考えています。口コミは信憑性が高く、消費行動を導きやすいからです。今後、集客増加の要となるはずです。

 ――ターゲティングについて。

 インスタグラムでは、女性ユーザーが多く、10―20歳代の利用頻度も高いです。多くの自治体や観光協会にとって、取り込みが難しいターゲットではないでしょうか。テレビや新聞といった、既存メディア離れが久しい若年層に対して、情報の発信とリーチをはかることが可能となってきます。
 日本国内のアカウント数は約1600万。世界で6億にも上ります。先ほど〝言葉の壁を超えやすい〟点を特徴に挙げましたが、インバウンドをターゲットとした情報発信に適した環境が、すでに整っているのです。

 ――インスタグラムを活用して、写真コンテストをWeb上で開催できるサービスを提供していますが。

 インスタグラムが持つ口コミの効果を最大限に高めるキャンペーンCMS 〝CAMPiN〟を提供しています。Web上で写真コンテストを実施できるのですが、周知促進だけでなく、〝いいね〟やフォロワー数の集計、投稿エリアを確かめられます。属性だけでなく、地域の魅力を共有したユーザー数も、具体的に知ることができるのです。影響力が高いユーザーの発見も可能です。
 投稿に添えられたコメントを通じ、投稿者の現地に対する印象や、そのフォロワーの反応も確認できます。何に興味を持ったのかを知れれば、地域の魅力発掘にもつながります。

 ――マーケティング用のデータ獲得など、さまざまな活用方法を期待できそうです。

 地域をPRするためのツールとして、気軽に使ってほしいという思いがあります。〝CAMPiN〟の特徴は、インスタグラムを活用したPRキャンペーンサイトを無制限でつくれる点です。そのため、同じ観光素材でも、実施ごとに切り口を変えてPRするというような、独自の工夫も施しやすいのです。春の桜写真コンテストなど、期間限定のイベントでも活用できます。

 ――FIT客を取り込むために、インターネットの活用は不可欠ですが、浸透していないのも事実です。

 SNSが一般化するなか、ユーザー生成コンテンツ(User Generated Contents、UGC)の効果に注目が集まっています。例えば、製品の広告で使用する写真も、購入したユーザーが撮影したものを使用した方が、共感を呼びやすく販促につながりやすいという調査結果があります。
 エンゲージメント率が高く、ユーザー間のつながりが深いインスタグラムなら、投稿写真を通じた口コミ効果も一層期待できます。〝CAMPiN〟では、高い影響力を持つ投稿者の写真を2次利用し、地域のPRに活かせます。
 ぜひ、インスタグラムをはじめ、ユーザーとのマッチングにインターネットを活用してほしいです。

 ――ありがとうございました。

CAMPiNを導入し、誘致に取り組む観光協会も多い(順不同)
丸亀市観光協会(香川県)
栃木DC県央地域分科会(栃木県)
小谷村観光連盟(長野県)
大町市プロモーション委員会(長野県)
大阪観光局 (大阪府)
庄原市観光協会(広島県)
湖南市観光協会(滋賀県)
美祢市観光協会(山口県)
今帰仁村観光協会(沖縄県)
帝釈峡観光協会(広島県)

レゴランドが開園、注目の入場者数は非公表

レゴランド開園初日のようす

 レゴランドジャパン(トーベン・イェンセン代表、愛知県・金城ふ頭)が4月1日にオープンした。注目が集まった当日の入場者数については、非公表だった。

 当日、同施設代表のイェンセン氏は、「お越しのお客様だけでなく、その次の世代にも〝I LOVE LEGOLAND〟と言われ続けるテーマパークにしたい」とあいさつした。

 大型テーマパークの東海地方進出、ディズニーリゾート(千葉県・舞浜)やUSJ(大阪府・桜島)との競争など、各メディアで話題となることも多かった同施設。ほか2施設に対する差別化については、ターゲットを2―12歳の子供に設定しているため、前提となる立ち位置が異なるとの認識を示した。

 入場料については、大人(13歳以上)が6900円、子供(3―12歳)が5300円。2歳までの幼児は無料となる。ほか2施設は3歳まで無料で、中人(中学、高校生)や小人(4歳位上、小学生)、シニア(65歳以上)などといった細かい分類を行っている。そのため、インターネットを中心に割高感を指摘する声もあるが、設定したターゲットの取り込みに特化した価格設定といえる。今後は、孫とともに楽しむシニア世代を取り込む施策に期待したい。

 旅行会社との提携については、3月にJTBとのオフィシャルマーケティングパートナー契約締結を発表し、ターゲットとなる年齢層と家族に対する販売促進を狙う。

富裕層のシェア拡大へ。ラグジュアリーバス導入(JTB首都圏)

ロイヤルロードプレミアム(外観)

 JTB首都圏(池田浩社長)で高品質旅行を専門としているJTBロイヤルロード銀座は、4月1日から富裕層向けに同社オリジナルラグジュアリーバス「ROYAL ROAD PREMIUM」を導入した、高品質・高付加価値のバス旅行事業を本格的に始動した。同社は同バスを保有することにより、富裕層マーケットを中心にシェア拡大や新規顧客の開拓などを行うほか、日本全国を走ることによって、同バスが地域の魅力を発信する一助になることを目的としている。

 3月29日に東京都内で完成披露・新商品発表会が行われた。JTBロイヤルロード銀座の井上完之夢の休日デスク総支配人は、近年ラグジュアリーマーケットにおいて、より贅沢にゆったりとした時間を求める傾向が高まっており、この傾向に付随したハード面での素材が不足している状況を説明。そのうえで「このバスは存在感があり、走っていても目を引く。告知効果は非常に高い」と同バスにかける想いを語った。

 同バスの外観は高品質感が漂うメタリックブラウンカラーを使用。座席は、長時間乗っても疲れを感じにくい全席窓側独立型の本革張りシートで、通常45席の大型バスをわずか10席(添乗員用席を除く)にレイアウトしたゆとりある空間に仕上がっている。

全席窓側座席のためゆったりとした空間が広がる

 バス車内で快適に過ごしてもらえるようスリッパや加湿器、テレビなども完備され、化粧室・トイレ付きで、長距離移動でも心配なくバスでの旅を楽しむことができる。

 同バスを利用したバスツアー「ラグジュアリーバスで巡る夢の休日日本一周の旅」は、東日本編と西日本編の2つに分けてツアーを造成。4月10日に発売された東日本編は、9月11日出発の12日間の行程で、東京から鬼怒川や仙台、大間、苫小牧、函館を経由し、白神山地や黒部ダムなどを巡るコース設定になっている。

 11月出発の西日本編は夏頃の販売予定で、価格は東日本編・西日本編ともに1人あたり150万円を予定している。

 同バスの目標稼働日数は330日、年間のツアー本数は130本を予定している。

 なお、ツアーパンフレットは、2カ月ごとに新たなものを製作していく。

16年度の営業状況を調査、1室当たりの売上は1243万円(日本旅館協会)

 日本旅館協会(針谷了会長)が1月20日に発表した「2016年度版(15年度財務諸表から作成)営業状況等統計調査」によると、旅館は増収増益でホテルは減収増益だった。調査はホテルと、大旅館(100室以上)、中旅館(31室以上99室以下)、小旅館(30室以下)の規模別集計を用いた。経常利益を基準に黒字旅館と赤字旅館をわけた。ただ、2746軒に調査票を発送し、回答を得たのは旅館ホテル合わせて341軒。このうち有効回答数は271で、有効回答率は9・9%だったことに留意したい。

 今年度の1軒あたりの総売上高は大旅館が21億2010万円(前年同期比14・7%増)で、中規模旅館が6億9157万円(同14・8%増)、小旅館は2億71万円(同3・4%増)だった。ホテルは7億2516万円(同5・2%減)。一方経常利益率は大旅館が5・6%(同115・4%増)で、中旅館は3・4%(同124・1%増)、小旅館は3・5%(同192・1%増)となった。ホテルは6・1%(同27・1%増)。旅館は増収増益で、ホテルは減収増益だった。

 宿泊客1人あたりの売上高はこれまで小旅館が高かったが、大旅館が逆転した。小旅館は1万8664円で同878円の減少で、大旅館は2万2036円で同3170円プラス。ホテルは同1727円増の2万2519円となった。

 客室稼働率は規模別の差は縮小しつつあり、小旅館の稼働率上昇が目立った。

 大旅館は65・5%(同1・8%増)、中旅館は62・9%(同6・5%増)、小旅館は59・1%(同8・3%増)だった。ホテルは71・3%(同1・9%減)となり、旅館よりも高い稼働率になっている。

 宿泊業で重要な指標の1室あたりの年間売上は、旅館が1243万円と同113万円の増加。ただ、最も高い時と比べ75%ほどに落ち込んでいる。

 規模別でみると、大旅館が1369万円(同17・1%増)、中旅館が1185万円(同8・7%増)、小旅館が1077万円(同1・0%減)だった。ホテルは827万円。

 総原価率は旅館の平均で24・2%と過去5年で最も低い結果になった。売店やコンパニオンなど原価率の高い売上が伸びないことが、低下傾向の要因の1つに考えられる。

 GOP利益の調査も行った。所有と運営を分離して把握したいといった意図があり、運営トップの成績表といえる。同調査は減価償却費と営業利益の合計で求めた。

 大旅館は11・6%(同11・2%増)、中旅館は9・2%(同5・7%増)、小旅館は8・6%(同11・4%増)となった。黒字と赤字別でみると、小旅館の黒字が11・6%で、赤字が▲0・4%と、高低が顕著となった。

 財務状況以外の集客方法なども調査を実施した。

 予約方法は、過去5年で旅行業経由が低下している。旅館では44・2%で、とくに小旅館は21・4%(同21・0%減)と4分の1を割り込んだ。

 一方オンライン旅行会社(OTA)経由は、これまで小旅館が牽引するかたちできたが、この5年は横ばいになっている。

 大旅館は19・7%(同13・9%増)、中旅館は26・5%(同21・0%増)で、2ケタ増と大きく伸びている。一方のホテルは43・9%と旅館より高い。

 自社サイト経由では旅館全体で前年度比を割った。旅館は手数料がない自社サイトから予約を増やしたいが、OTAとの競争となっている。

 ホームページの対応言語では、ここ5年で初めて日本語のみと多言語化が逆転。日本語のみは45・5%。このうち最も多い言語は英語で49・0%だった。次いで、中国語(簡・繁体語)、韓国語となった。

フリーWi―Fi導入、空港路線など328台に(みちのりグループ)

八重樫真氏(左)と工代将章氏

 みちのりホールディングスの工代将章広報・マーケティング担当ディレクターと岩手県北自動車グループ連携室広報担当の八重樫真室長が3月30日に本紙を訪れ、4月下旬から開始するフリーWi―Fiサービス「MICHINORI Free Wi―Fi」を紹介した。

 みちのりホールディングス(松本順社長)を持ち株会社とする「みちのりグループ」がワイヤ・アンド・ワイヤレス(大塚浩司社長)と提携。岩手県北自動車と、福島交通、会津乗合自動車、茨城交通、東野交通、関東自動車などグループ各社が運行する高速・路線・貸切観光バス328台に同サービスを導入する。空港バス、夜行バスでは全路線に同サービスが導入されるため、訪日外国人観光客やビジネスユーザーなど、同グループ各社のバスを利用するすべての顧客に快適なインターネット環境を提供する。

 現在、交通機関などが提供するフリーWi―Fiサービスの多くが、「メールアドレスの登録」や「連続利用可能時間30分」など非常に制約が多いものがほとんどである。しかし同サービスでは、同フリーWi―Fiを選択し、利用規約に同意するだけで、通信会社を問わずWi―Fi対応機器を持っているすべての人が利用できる。

 連続利用可能時間は12時間で、7言語(日・英・中(簡体字・繁体字)・韓・タイ・ポルトガル)に対応。バス会社として類を見ない試みだ。

 岩手県北自動車の八重樫室長は「これからは国内も海外もFIT化が進んでくる。FITへの対応を充実させるためには、路線網の充実と、車内における今の時代に欠かせないサービスの提供が不可欠になってくる。グループとして取り組むことで、利用するお客様の利便性向上につながる」と同サービスへの想いを語った。

 なお、みちのりグループでは今年5月を目途に多言語による観光ガイド機能を導入。将来的には、すべてのバス(総台数2100台:2017年3月現在)へのWi―Fiの導入を目指す。

はとバス6代目イメージガール、浅古あいりさんを任命

「はとバスの魅力を伝えたい」と浅古さん

 はとバス(中村靖社長)はこのほど、6代目イメージガールに浅古あいりさんを任命した。はとバスグループのパンフレットやポスター、Web上で専属モデルを務める。

 浅古さんは「はとバスをもっと多くの方に知っていただけるように、そして好きになっていただけるように精一杯努力していきます」と語り、「はとバスの魅力が伝わるようなプロモーションを積極的に行っていきたい」と抱負を述べた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

てるみくらぶ破産、消費者被害額99億円に

返還額は1・2%程度か

国交省で会見する山田千賀子社長

 格安海外旅行ツアーを販売するてるみくらぶ(山田千賀子社長)が3月27日、破産手続きを始めた。3月24日から航空券の発券を巡るトラブルが発生。8―9万人に影響があり、混乱が広がっている。同社の試算によると、消費者への被害額は99億円、現地ホテルへの未払い金などを含めると151億円に上る。利用者へは日本旅行業協会(JATA)が弁済業務保証金制度から保証するが、弁済限度額が1億2千万円のため、代金の約1・2%と極めて低い返還額になる。
【後藤 文昭】

 今回のトラブルは、国際航空運送協会(IATA)に対し、同社が航空券購入代金を支払えなかったことが原因。スポンサーや銀行と期限直前まで交渉を進めたが、期日の3月23日までに融資を受けられず、その後も資金調達が難しい状況が続き、破産申請に至った。関連会社の自由自在と持株会社のてるみくらぶホールディングスもこれに連鎖し、営業を停止した。

 山田社長は27日に国土交通省で会見を開き、ツアー参加者や関係者に対し謝罪。宿泊先が無いなどのトラブルを回避するため、「今後は渡航を控えてほしい」と語った。すでに現地にいる参加者に対しては、「自費ですべてを賄うことになる」と述べた。

 観光庁は同社に対し26日、旅行業法に基づく立ち入り検査を実施し、検査で38カ国・地域に約2500人の旅行者がいることを把握。宿泊代金の支払いなどで日本からの送金が必要なケースを想定し、円滑な帰国に向け外務省に協力を要請した。保証制度の是非を問う声には、「現行制度上では適切だが、さらなる消費者保護の観点から必要な事項があれば検討する」と回答した。

 同社は感染症の発生などで空席が出た際や、新規就航時などに、航空会社から直接座席を安価に仕入れ、販売していた。

 しかし、航空機の小型化などで余剰分の発生率が下がり、大手旅行会社と同じ方式の仕入れとなり、コストが上昇。インターネットの発達によって消費者が個人で航空券の手配をする傾向が強くなったことも加わり、売上が減少した。一昨年からシニア層向けに営業方針を転換したが、広告宣伝を行ったことで媒体コストがかさみ、資金繰りが悪化、破産に至った。

てるみくらぶ関連年表

 弁済制度の妥当性を問う声も

 JATAの弁済業務保証金制度とは、加盟する旅行会社が倒産などをした場合、一定の範囲で消費者に弁済する制度。納付している弁済業務保証金分担金の額の5倍の金額が限度額になる。観光庁によると、2008年以降同制度の利用会社は17件あり、このうち15件が全額、1件が7割、もう1件が4割の返還ができていた。

 しかし、今回は返済額が著しく低いため、記者からは積立額の妥当性などを問う声も出た。同庁は弁済額を上げることで安易な倒産などが起こることを心配するが、消費者保護の観点から制度の見直しが求められそうだ。

時代の流れ ― “付かず離れず”を続けるのは至難

 このコラムを書いている4月5日は、東京でも桜が満開の見ごろを迎えた。毎年、この時分に上野公園の桜を眺めに行くのだが、今年は例年とは景色が違っていた。

 外国人観光客が年々増えてきたとはいえ、今年はすごかった。大勢の外国人がカメラを構えるなかに、「日本人の花見客だって少なからずいる」という感覚である。

 インバウンド拡大に向けて、桜も日本を代表する魅力の1つとして海外に発信してきた効果が、ようやく実を結び、今、開花しているようだった。

 会社の事務所は、この上野公園と秋葉原の中間地点にある。このため、多くの外国人を見かけるのだが、先日、秋葉原に近い自動販売機で缶コーヒーを買った。この辺りはお昼になると、大型の観光バスが停まり、中国や台湾の旅行者が押し寄せる中華料理店がある。

 缶コーヒーとお釣りを手にして立ち去ろうとしたとき、背後から自動音声の声がしたので、足が止まった。無機質な音声が発した言葉は「ありがとうございます」でも、「サンキュー」でもなく、「謝謝」だった。

 3月の終わりに、東京・新宿駅に隣接する高速バスターミナルの「バスタ新宿」から房総半島の南端・館山市を訪れた。ちょうど1年前に開業した「バスタ新宿」には関心があったが、利用したのは初めてだった。

 ここでも外国人の多さが目に付いた。大きなスーツケースを引きずりながら歩く外国人観光客は、バスの出発方面と時刻が書かれた看板、スマートフォンを交互に眺めながら、楽しそうにおしゃべりをしていた。

 海外を旅行するときは、鉄道よりも高速バスでの移動の方がラクに感じることがある。日本でも外国人旅行者を見据え、快適性を追求するバス会社も増えている。岩手県北自動車などを有するみちのりグループは4月下旬から、東北や北関東エリアで移動中もつながるフリーWi―Fiサービスを貸切バス328台に提供していく予定だ。

 バスタ新宿は、東京の主要駅・新宿駅と直結しており、多言語での案内も充実している。待合室の中央にはインフォメーションセンターがあり、案内係も待機している。東京だけでなく、地方に行きたい外国人旅行者には心強く感じられるだろうと思った。

 この春休みに倅が「青春18きっぷ」を利用して、兵庫県の城崎温泉に1人旅をした。「なぜ城崎温泉に?」と聞くと、数年前に家族旅行したときに、「温泉街の雰囲気がすごく気に入ったから」という理由だそうだ。

 高齢の客ばかりが目立つ温泉地が多いなか、若い世代にも魅力的に映る温泉地は日本に幾つあるのだろう、と考えていた。すると、旅先の倅から見知らぬ青年と並んだ写真が送られて来た。「ベトナム系アメリカ人と閉店間際の居酒屋で意気投合して湯めぐりもしてきた」とメッセージ付きだった。

 城崎温泉は、若い外国人も強く魅きつける力があり、当たり前のように世界中の旅人同士が交流する場にもなっているのだ。1面で登場した全旅連青年部の西村総一郎部長は奇しくも城崎温泉出身。まさに、政策の柱となる「変わらないために変わる」という言葉を体現している温泉地である。時代の流れと “付かず離れず”の関係を続けていくのは、何事であれ至難である。

(編集長・増田 剛)