加賀市が旅館雇用促進

山代・山中・片山津と3つの温泉を抱える石川県加賀市は、人材採用支援事業を手掛ける民間会社と連携し、新たに宿泊産業における就労環境の改善や新規就労者の創出に向けた取り組みをスタートさせた。今年8月には、市内宿泊事業者らが「加賀温泉郷経営塾」を発足。定期的に勉強会を開き、就労環境改善や経営の合理化などに取り組むほか、10月には加賀温泉郷の宿泊施設に特化した独自の求人サイトを開設。11月には就職イベントも予定する。

 宿泊産業、とりわけ旅館における人材不足や就労環境の問題は全国の観光地が抱える課題。加賀市の担当者は「単に労働環境を改善し働きやすさをアピールするだけでは駄目。加賀市に魅力を感じ、住んでみたいと思ってもらえる仕掛けも盛り込んでいきたい」と話す。

【塩野 俊誉】

観光地の渋滞解消へ、京都・鎌倉で課金導入か

国土交通省道路局はこのほど、神奈川県鎌倉市と京都府京都市で観光渋滞対策の実証実験を開始する。両地域は週末や観光シーズンに多くの観光客でにぎわうが、交通渋滞の発生などで住民の生活環境の悪化が問題視されている。国交省は一般道通行時に課金を行い交通量を調整する「エリアプライシング」の導入など、問題解決への有効手段の構築に努める。

 国交省はAI(人工知能)やICT(情報通信技術)などを活用した実験手順を構築。ETC2・0や高度化光ビーコン、AIカメラなどを使い人と車の動きを収集。収集データをAIが学習・分析し、渋滞発生予想を算出。旅行者に発信し、移動手段の再検討を促す。

 今後両市は協議会を設置。実験内容を精査し、データの収集を始める。

 また今回は長野県・軽井沢町と兵庫県神戸市を今後の取り組み方針を検討するエリアに設定。対策エリアを絞り込む。

鎌倉市、実験に先駆け検討進める

 鎌倉市は2013年から、交通渋滞解消と市民の居住環境回復をはかるため「鎌倉ロードプライシング(仮称)」を検討している。土・日・祝日の交通量が増加する時間帯に実施し、市内に入る車両から料金を徴収。徴収した費用はパーク&ライド駐車場の拡充や観光振興の政策などに充てる。

 今回の実証実験で鎌倉市は、ロードプライシングの検討に必要なデータ収集を目的に、交通流入台数・映像による混雑状況の把握やETC装着車両の比率の確認を国交省に提案している。

利用者1千万人突破、路上駐車減らず、課題も(バスタ新宿)

国土交通省はこのほど、昨年4月に開業したバスタ新宿の「開業後1年の成果と課題」を発表した。当初計画で1日平均約3万人、1日最大約4万人としていたが、開業1年で1日平均約2万8千人、最大4万1140人で「実績は概ね順調」(国交省)と振り返った。開業から累計で利用者数が1千万人を突破したものの、新宿駅西口周辺の路上駐車は減らず、課題も残った。

 便数は1日平均約1470便で、1日最大は1720便。方面別の1位は、利用者約98万人で河口湖、2位は約88万人で大阪、3位は約78万人の箱根となった。

 これまで改善の声が多くあった、待合環境の改善も実施した。今年4月にコンビニエンスストアをオープンし、女子トイレも8室から21室に増設。ベンチも約200席増やし344席となった。

 「問題が少しずつ解消されて良くなっている」(30代男性)との声も上がっていて、開業直後から待合施設の満足度「やや満足」と「満足」の合計は26%向上し、83%となった。

 バスタ新宿前の国道20号の混雑状況は、開業当時と比べ回復傾向がみられる。開業後半年間のデータで混雑状況が悪化したため、昨年12月から高速バスの経路変更など対策を打ってきた。国交省は「引き続き、さらなる対策を講じる」と強調した。

 国道20号は、事故状況の改善もみられた。高速バス停やタクシー乗降場の移転で、開業前から事故リスクが軽減。昨年と今年の4―6月期の急ブレーキ件数を比較すると、平日で64%減、休日で47%減となり、事故件数も平休合計で同13%減だった。

 一方で課題も残った。新宿駅西口周辺で高速バスの路上駐車を確認したため、昨年11月に関係者に再発防止を要請。

 要請後の12月が、1日13・0台、今年1月が同9・2台、2月が5・8台と下がったものの、3月が7・4台で、4月が6・6台、5月は10・8台、7月が13・7台と、要請後の12月を超えるまで増加した。「今後は悪質なバス事業者に対する警告や、バスタ新宿への乗入規制などの措置を強化する」(同庁)とコメントした。

越境ECサイト開く、日本の農林水産物を直販(JTB西日本)

J’s Agriトップイメージ

 JTB西日本(光山清秀社長)はこのほど、越境EC(電子商取引)サイト「J’s Agri」を開設。日本産農林水産物の海外直販を開始した。同社がプロデュースする食・農×観光ブランド「J’s Agri」の商品として、香港の消費者向けに岡山のシャインマスカットなど16品目を9月5日から販売している。11月にはシンガポールやマレーシアにも展開し、18年4月以降販路を拡大していく。

 同社ECサイトの特徴として、航空貨物便を利用した産地直送により、高い鮮度を保持。また、国内決済のため為替変動によるリスクも回避できる。

 さらに、商品の携帯端末からの購入を円滑化するために、スマートフォン用アプリ(iPhone/Android)の配信も予定している。サイトやアプリには、商品の産地や生産者の情報が掲載されるため、海外の消費者たちは、生産者から新鮮で高品質な商品を、手ごろな価格で小口購入することができる。商品不具合時の交換などの品質保証もあるため、安心して買い物を楽しめる。

 これまでJ’s Agriでは、商談会でのきめ細かいマッチングによる日本産農産物の海外販路の拡大や、インバウンド向け食農体験ツアーによる地域活性化などの好循環づくりに取り組んできた。

 今後は、レストラン事業者や輸入業者などB to BのECサイトの開設も予定しており、さらに事業を拡大していく考え。

メルマガ最大手買収、OTA競争さらに加熱(エボラブルアジア)

エボラブルアジア(吉村英毅社長、東京都港区)は9月12日、メールマガジン配信国内最大手のまぐまぐ(松田誉史社長、東京都品川区)の買収を発表した。月間PV数1500万、メルマガ会員数750万人を誇るまぐまぐ社を通じ、さらなる知名度向上を狙う。同社が運営する総合旅行プラットフォーム「AirTrip」(エアトリ)がオープンした昨年11月以降、一般ユーザー向けサービスの提供に力を入れてきた。9月11日には、人気芸人コンビ、オリエンタルラジオのイメージキャラクター就任発表会を行っている。外資を含め、OTA(オンライン旅行会社)の競争がさらに加熱しそうだ。

11日の発表会後、個別インタビューに応じた吉村社長。「エアトリの知名度向上につながるメディアに関心が高い」と強調した。まぐまぐ社との連携を通じ、旅行専門メディアを立ち上げる予定で、メルマガ会員をターゲットとした宣伝活動も行う。

国内航空券の販売で強みを持つ一方、知名度で他OTAに先行を許してきた同社。老舗メルマガサイトと人気芸人を活用することで、弱点を克服する。なお、運営するエアトリでは国内線を有する航空会社14社の航空券を比較・購入できる。

ともに力を入れる外貨両替事業では、地方でのインバウンド需要を取り込む。宿泊施設が不足するなか、ビジネスホテルなど中小規模の宿泊施設に泊まる訪日旅行者も多く、両替サービスの充実に対する需要は高いとみる。

同社では、IT技術を駆使することで両替の仕組みを簡素化。ビジネスホテルや旅館に対し、OEM提供することで収益拡大を狙う。

産学官で人材育成、倍増の6大学で開催(観光庁)

 観光庁は9月26日から、観光産業に従事する社会人を対象に経営学などの講座を全国の大学で開講する。今年度は講座内容や実施校数を充実させ、昨年度の3大学から倍増の6大学で実施。産学官で連携し、観光産業の中核を担う人材を育て、とくに宿泊業の経営力強化や生産性向上をはかる。

 実施大学は青森大学と大分大学、鹿児島大学、東洋大学、明海大学、和歌山大学の6校。講座内容は経営戦略や財務会計、マーケティングなどを中心に、業界有識者、大学講師陣の講義とディスカッションなどを予定している。

 6大学はコンソーシアム(共同事業体)を組んで協力し合い、講座を企画。事務局の運営は小樽商科大学が担当し、他大学への助言やコーディネーター派遣などを支援する。

 対象者は、旅館・ホテルの次世代経営幹部や、宿泊業と連携して地域の魅力を創造する観光産業事業者幹部など。受講料は無料で募集人数は各大学20人程度。参加は各大学に直接申し込み、選考後に結果を通知する。

3品目の円滑化支援、おみやげ農畜産物事業(JSTO)

検疫受検円滑化モデルのフロー

 ジャパンショッピングツーリズム協会(JSTO、田川博己会長)はこのほど、農林水産省の「おみやげ農畜産物検疫受検円滑化支援事業」の事業主体として、新たに3品目の取り組みを開始すると発表した。訪日外国人観光客が土産として購入した農畜産物を海外に持ち出す際に必要な、動植物検疫手続きの円滑化をはかるもので、2年前から取り組みを進めている。

 農畜産物は持ち出す相手国や品物によって、相手国から求められる動植物検疫の条件が異なり、その手続き方法も分かりにくいことから、訪日客の負担になっている。この課題解決のため、JSTOは検疫受検円滑化モデルとして、旅行者が空港で輸出検疫を受検した状態の農畜産物を受け取れる仕組みを構築。各地でそれぞれの品目のモデル販売を行ってきた。

 今回は、国外からの評価も高い、高知県北川村産ゆずなどの「かんきつ」をEUからの訪日客向け土産として用意。11月下旬から12月中旬まで羽田空港と成田空港でモデル販売する。

 もう1つEU向けに欧米諸国でも人気のある「盆栽」を展開。植物の輸出などを手掛けるジャパンホートビジネス(寒郡茂樹代表、東京都港区)が主体となり、すでに成田空港で販売を開始している。11月30日まで。

 米国向けには、「牛肉」を販売する。日本産和牛は牛肉の消費量が多い米国でも評価が高いため、岐阜県の飛騨牛などを用意する。9月中旬から2018年1月下旬までの予定。

 また、JSTOは過去2年間実施してきた円滑化モデルを広く活用してもらうことを目的に、全国で説明会を開く。対象は生産者や販売事業者、観光事業者、物流事業者など。説明会を利用して生産者と関連事業者のビジネスマッチングも実施するという。

 開催は11月から18年の2月にかけて、札幌と仙台、東京、名古屋、関西国際空港、岡山、福岡、那覇の全8会場を予定する。詳細はJSTOのホームページで発表する。

着地型商品の造成・販売へ、長崎めぐり旅ビューロー発足

世界遺産を活用した商品造成に取り組む

 長崎県内を巡る着地型旅行商品の企画・造成と発地での商品購入の環境整備を行うため、長崎県観光連盟や県内観光団体などが参加して「長崎めぐり旅ビューロー」を発足した。8月31日に長崎市内のホテルで、52の会員とオブザーバーの県や市町村担当者も出席して設立総会が開かれた。

 長崎県には2015年に世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」と、来年の登録を目指す「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」、さらに3つの日本遺産がある。これらを活かした周遊型の着地型旅行商品を開発し、滞在時間を延ばして観光消費拡大をはかることが、課題となっている。

 長崎県観光連盟が、着地型商品の造成・販売促進事業を行う事業者を公募。数社応募があるなかで、JTB九州がビューロー設立による事業展開を提案して受託した。

 事業発注者の長崎県観光連盟の加藤一征専務理事は「長崎県の宿泊旅行形態では、5回、10回と訪れるリピーターが少なく、来訪者の満足度を高めて、また来てもらう長崎ファンづくりが大きな課題」と指摘。「世界遺産や日本遺産、全国に誇れる食文化を活用したテーマ性の高い周遊型の着地型旅行商品を造成・販売するためJTB九州と連携して事業を進めていく」と経緯を説明した。

 議事では提案者のJTB九州の松尾俊裕長崎支店長が設立趣意書を読み上げたあと、規約、代表選出、事業概要などを発表し承認された。

 ビューローではJTB九州と旅行業登録のある法人が主催して、交通、体験メニュー、食などを組み合わせて造成した「めぐり旅ブランド」商品(離島7本、本土5本)を、大都市圏など発地の大手旅行会社に向け販売。一般向けの専門Webサイトを設置して、商品や体験メニュー単品、各種のクーポンなど販売する。

 なお、ビューローの代表には長崎県観光連盟の宮脇雅俊会長、副代表に佐世保観光コンベンション協会の飯田満治理事長が就任。事務局はJTB長崎支店内に設置され、事務局長には同支店営業担当課長の満木浩昇氏が就任した。

『おもてなしの原点 女将さんのこころ その二』

おもてなしの原点 女将さんのこころ その二

『おもてなしの原点 女将さんのこころ その二』

 著者:瀬戸川 礼子
 定価:1冊 1,980円(税込)
 送料:実費(1部430円)
 販売元:㈱旅行新聞新社
 仕様:単行本 237ページ
 発売日:2015年7月7日 初版発行


<内容紹介>
 旅館の紹介に留まらず、「どんな女将さんがどんな思いでやっているのか」、 おもてなしの原点である、人間・女将(おかみ)の思いに焦点を当てた本書。 普段、あまり聞くことのない女将さんのこころの声は、 物事のとらえ方、人生の覚悟、幸せ感など、笑いあり涙あり。 さまざまな気づきを与えてくれます。 赤い表紙の「その一」、緑の表紙の「その二」。 それぞれ全国55人の女将さんを顔写真とともに紹介しています。 一人一人が4ページずつの読み切りなのでどこからでも読め、 着物の柄のような鮮やかな緑の洒落たハードカバーで贈り物にも喜ばれています。

<目次>
◆北海道・東北:滝乃家/ホテル三浦華園/ホテル網走湖荘/四季亭/ホテルグランメール山海荘/不老ふ死温泉/日本の宿 古窯/小松館好風亭/湯主一條/雨情の宿 新つた/八幡屋/山水荘
◆関東:四万やまぐち館/草津温泉ホテル櫻井/つつじ亭/満ちてくる心の宿 吉夢/蓬莱屋/紋屋/助六の宿貞千代/七沢荘/四季の湯座敷 武蔵野別館
◆甲信越・東海・中部:柳屋/若草の宿 丸栄/湯本旅館/ホテル玉之湯/中棚荘/環翠楼/湯本舘/白玉の湯 華鳳/HATAGO井仙/招福の宿ゑびすや/ホテル天遊/湊のやど汀家/高山観光ホテル/ホテルくさかべアルメリア/しょうげつ/はづ別館/鯛屋
◆北陸:多田屋/やさしさの宿まつさき/べにや/四季彩の宿花椿/松風樓
◆近畿・四国:不死王閣/炭屋/松園荘保津川亭/銀水荘兆楽/あづまや/岩惣/湯郷グランドホテル
◆九州・沖縄:洋々閣/料亭御宿 坂本屋/由布院 玉の湯/旅館山河/リーフイン国吉

<著者について>
ジャーナリスト 瀬戸川 礼子 氏
ジャーナリスト・中小企業診断士。多様な業種の取材を通じ、「幸せのコツ」は同じと確信。働きがい、リーダーシップ、感動経営を軸に取材、講演、コンサルを行なう。著書『女将さんのこころ』、『いい会社のよきリーダーが大切にしている7つのこと」等。


『おもてなしの原点 女将さんのこころ その一』

おもてなしの原点 女将さんのこころ その一

『おもてなしの原点 女将さんのこころ その一』

著者:瀬戸川 礼子
定価:1冊 1,980円(税込)
送料:実費(1部430円)
販売元:㈱旅行新聞新社
仕様:単行本 237ページ
発売日:2014年7月7日 初版発行


<内容紹介>
 旅館の紹介に留まらず、「どんな女将さんがどんな思いでやっているのか」、 おもてなしの原点である、人間・女将(おかみ)の思いに焦点を当てた本書。 普段、あまり聞くことのない女将さんのこころの声は、 物事のとらえ方、人生の覚悟、幸せ感など、笑いあり涙あり。 さまざまな気づきを与えてくれます。 赤い表紙の「その一」、緑の表紙の「その二」。 それぞれ全国55人の女将さんを顔写真とともに紹介しています。 一人一人が4ページずつの読み切りなのでどこからでも読め、 着物の柄のような洒落たハードカバーで贈り物にも喜ばれています。

<目次>
◆北海道・東北:定山渓第一寶亭留/扇松園/宝来館/南三陸ホテル観洋/佐勘/松島佐勘 松庵/鳴子ホテル/ル・ベール蔵王/吉川屋/陽日の郷あづま館/吹の湯
◆関東:里海邸 金波楼本邸/花の宿 松や/七重八重/別邸 仙寿庵/草津ホテル/鮎の宿 京亭/一宮館/ホテル洲の崎 風の抄/宿 中屋/澤の屋/玉庭/石葉/料亭小宿ふかざわ
◆甲信越・北陸・中部・東海・関西:慶雲館/湖山亭うぶや/後楽館/塵表閣/湯沢グランドホテル/温泉御宿 龍言/長生館/加賀屋/水明館/羽衣ホテル/湯谷観光ホテル泉山閣/紅葉軒/夢遊華/料亭旅館やす井/柊家/大和屋本店/ほてるISAGO神戸/旅館松前/竹林院群芳園
◆中国・四国・九州・沖縄:皆美館/皆生つるや/旅館くらしき/人生感が変わる宿ここから/岩国国際観光ホテル/西の雅 常盤/旅館かどや椿荘/土佐御苑/御宿 はなわらび/雲仙宮崎旅館/指宿シーサイドホテル/ホテルサンパレス球陽館

<著者について>
ジャーナリスト 瀬戸川 礼子 氏
ジャーナリスト・中小企業診断士。多様な業種の取材を通じ、「幸せのコツ」は同じと確信。働きがい、リーダーシップ、感動経営を軸に取材、講演、コンサルを行なう。著書『女将さんのこころ』、『いい会社のよきリーダーが大切にしている7つのこと」等。