No.318 グリーンユーティリティー - “成功報酬”で初期費用ゼロ

グリーンユーティリティー
“成功報酬”で初期費用ゼロ

 福島原子力発電所の事故以来、電力に限らず各資源に対する“エコ”への取り組みが加速している。宿泊施設も例外ではなく、地球環境への配慮は当然のこと、コストが削減できるというメリットも大きい。一方で、初期投資などへの不安から踏み切れずにいる施設も少なくないだろう。産学協同で環境ソリューション事業を展開する会社「グリーンユーティリティー」は初期費用がゼロの"成功報酬"というビジネスモデルを提案する。森幸一社長に事業内容を聞いた。

 

【聞き手=旅行新聞新社社長・石井 貞徳、構成=飯塚 小牧】

 

≪投資なしの省エネで経費削減≫

 ――会社の経緯を教えて下さい。

 私自身は1970年代のオイルショックがきっかけで、省エネルギーを考え始めました。国もオイルショックを機に、限りあるエネルギーの有効利用を目的に省エネルギー法を施行しましたが、電気にも大きな損失があることから改善が必要となりました。これを基本に電気や水、そしてボイラーなどの燃料にも大きな無駄があることが分かり、これを改善することで経費の削減、メンテナンスの軽減になりお客様に喜んでいただけて、ビジネスにもなることから会社(東洋テクニカ)を立ち上げました。それから長年、省エネの研究を続けてきました…。

 

※ 詳細は本紙1471号または8月25日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

「旅」が専門の旅行会社 ― 潜在願望を掘り起こせ(8/11・21付)

 JR各社の広告は上手い。JR東海の「そうだ京都、行こう。」シリーズは毎度旅情をそそられる。JR東日本の「大人の休日倶楽部」は、吉永小百合さんを起用した長野県「戸隠」編など魅力的なシーンをたくさん演出している。JR九州の九州新幹線全線開通のコマーシャルも感動的ですごく良かった。

 テレビや雑誌などを見ていて、ふと、「旅行に行きたい」と思う瞬間にときどき出会う。何気ない情景ほどいい。海沿いを走る列車から人のいない青い海を眺め続ける。そして停車した駅で、弁当売りのおばちゃんが駅弁の箱を持って現れるというような映像を見たなら、きっと旅に出たいと思うだろう。風情ある旅館の2階で蝉の声だけを聞いている光景も旅情をかきたてる一場面だ……。日常とは異なる空間に身を置きたいという欲求と、それ以上に「いつもとは異なる時間を過ごしたい」という潜在意識が、おそらく誰にも潜んでいるのだと思う。

 さて、私は何が言いたいのか。旅行会社がテレビコマーシャルを打つのは大賛成なのだ。けれど、それが果たして根本的な部分で旅行需要の掘り起こしにつながっているのかという疑念が最近フツフツと湧いてくるのだ。自社の広告宣伝費に他人がとやかく言うべきものではない。だが、旅行の専門会社であり、「旅」を唯一の商品とする旅行会社の広告には、名の売れたタレントを起用して「安売り」をアピールするだけではなく、「旅行会社にしかできない」練り上げられた力技を見せつけてほしいと願ってしまうのである。その点、先に挙げたJR各社は、テレビコマーシャルをはじめ、雑誌広告、ポスター広告も本気度が伝わってくる。

 スマートフォンばかりに夢中になる若者や、携帯電話で雁字搦めになったビジネスマンを旅に行かせるにはどうすればいいか。パソコンに囲まれたオフィスでスマホを床に叩きつけ、そのまま旅に出るシーンを演出すればいい。多くの現代人は閉塞的な社会に飽き飽きし、わずか数日間でもいい、スマホの電波の届かない「全き自由」な場所に逃れたいという潜在願望を抱いているのではないだろうか。

 旅行会社には、現代社会へのアンチテーゼとして少々過激であったとしても、そのくらいの意気込みで、「旅に出ること」の意義を見せつけてもらいたいものだ。

(編集長・増田 剛) 

オフ期の宿泊促進、冬の魅力を積極的に発信

荒井正吾知事
荒井正吾知事

 奈良県ビジターズビューローは7月5日、東京都内のホテルで首都圏の旅行会社や報道関係者を対象に、「冬」の奈良の魅力を紹介する「奈良観光プロモーション会議・交流会」を開いた。同県は2010年に行った平城遷都1300年祭で認知度が向上した一方、オフ期の冬は宿泊が落ち込んでいるのが現状だという。そこで今回は冬の送客促進を狙い、新コンテンツなどを積極的に発信した。

 会議では、県や市町村、施設などさまざまな観点から各地域の素材をプレゼンテーション。そのなかで、奈良県ビジターズビューローは、冬の時季に行われる社寺仏閣の伝統行事を紹介した。

 とくに、冬の静寂とした夜を炎や灯りで彩る祭典は幻想的な世界が広がる。代表的な「若草山焼き」は、奈良市・若草山で毎年1月の第4土曜日に行われるもので、約33ヘクタールの山全体が焼かれる。来年は1月26日の予定。このほか、奈良市の奈良公園と春日大社、東大寺、興福寺を夜間に明かりでつなぐ「しあわせ回廊~なら瑠璃絵」は、イルミネーションが楽しめるイベント。開催期間は2月8―14日まで。

 また、体験メニューでは奈良独自の体験メニューとして注目度が高い「にぎり墨体験」を紹介。奈良市「錦光園」で体験できるにぎり墨は、生の墨を手で握り、手の型と指紋を付けてオリジナルの1品を作るもの。約30―40分で完成し、1回150人まで受け入れが可能。一丁1050円。さらに、市内のホテル・旅館に25人以上で宿泊し、施設側がスペースを提供できる場合は出張にも対応する。

 会議後は、荒井正吾奈良県知事も加わり、交流会を開いた。荒井知事は「有名地の押しつける観光ではなく、1度来ていただいた方に『あの景色がまた見たい』『あのおそばが食べたい』と思ってもらえるような観光地になりたい。あるものの魅力を磨いて展示する作業は難しいが、皆さんのご指導をお願いしたい」とあいさつした。

美作建国から1300年、瀬戸内芸術祭へは岡山から

石井正弘知事
石井正弘知事

 岡山県は7月3日、東京都内のホテルで「晴れの国おかやま観光プレゼンテーション」を開いた。石井正弘知事自ら登壇し、「瀬戸内国際芸術祭2013」や「美作国(みまさかのくに)建国1300年」などをトップセールスした。

 瀬戸内国際芸術祭は、瀬戸内海に浮かぶ島々が舞台の現代アートの祭典。2010年に開いた第1回は、約3カ月の期間中に93万人(事前予想30万人)の来訪者を集めるほど好評を博し、3年ごとの開催が決定している。一方で、島に行くための唯一の交通手段である船に、来訪者が集中する課題も残した。そこで13年の開催では、期間を春、夏、秋の3回に分散する。春は3月20日からの33日間、夏は7月20日から44日間、秋は10月5日から31日間。芸術祭に参加する島々のうち岡山県に属するのは犬島のみだが、アクセスは岡山から宝伝港と宇野港を利用するのが便利だ。

 平安時代に編さんされた続日本紀によると713年、備前国から北部6郡が分かれて美作国が建国されたと記されている。13年はその建国から数えて1300年にあたり、美作エリアの10市町村で記念事業を展開する。同エリアは、全国露天風呂番付で「西の横綱」として有名な湯原温泉(真庭市)をはじめ、奥津温泉(鏡野町)、湯郷温泉(美作市)などを有し、温泉地としても魅力がある。今後のスケジュールは専用HPを立ち上げ随時発信。PR天使に就任したご当地アイドル「saku Love」も盛り上げる。

 交流会では「ひるぜん焼きそば」「津山ホルモンうどん」「日生カキオコ」などB級グルメがふるまわれた。昨年11月にB―1グランプリでこれら岡山県勢が上位を独占。県として「ご当地グルメうまい県!おかやま」を宣言している。今年11月17、18日はJR赤穂選伊部駅周辺で「おかやまご当地グルメフェスタin備前」、13年は津山市で「近畿・中国・四国B―1グランプリin津山」が開かれる。

サンバで熱気と歓声、ほろ酔いウォークと共催

温泉街に元気を届けた
温泉街に元気を届けた

 福島県飯坂温泉で7月13、14の両日、夏の恒例行事「第26回ほろ酔いウォーク2012」が開かれた。昨年に引き続き、14日にはサンバパレード「飯坂deサンバ」も行われ、温泉街は熱気と歓声であふれた。

 サンバパレードは、震災後の自粛ムード払しょくや被災者の応援を目的に企画。昨年は浅草サンバカーニバルの常連チーム「アレグリア」がボランティア協力した。今年は飯坂温泉観光協会が同メンバー約50人を温泉街に招いた。

 飯坂温泉駅前で大勢の観客が見守るなか、楽器隊の演奏を皮切りに、温泉街約1㌔のパレードがスタートした。陽気なリズムに誘われ、大勢の観客が沿道を埋め尽くし、1年ぶりに温泉街を練り歩くアレグリアに、大きな拍手が送られた。一緒に踊る観客もいるなど、約1時間のパレードは盛り上がりを見せた。

 夕刻からは恒例の「ほろ酔いウォーク」が開かれた。税込3500円(当日券は同4千円)で、45軒の協賛店から6軒を選んでまわるという飯坂温泉の人気イベント。宿泊(1泊朝食付)と前売り券がセットになったほろ酔いパック(同1万円)も人気だ。参加者は受付後、早速目当ての店に向かっていった。

15万人の参加目指す、10月から別府で芸術フェス

実行委員会のメンバー
実行委員会のメンバー

 大分県別府市で10月6日―12月2日までの58日間、市民主導の国際芸術祭「混浴温泉世界2012」が開かれる。民間企業や行政、NPO法人、教育機関などさまざまな団体が協力する芸術祭で、今回で2回目。2009年の前回は延べ9万2千人を動員したが、今回は15万人を目標にする。総予算は約1億1500万円。

 別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」実行委員会は7月17日、東京都内で会見を開き、山出淳也総合プロデューサーは「前回からさらに地域性を追求したアートプログラムを開催する」と概要を説明した。

 今回は、別府の特徴である8つの温泉郷「別府八湯」から、8つのアートプロジェクトを展開。「8つの想像力の源泉が市内各所に現れる」とし、8カ所で芸術ジャンルを混ぜて各アーティストが作品を発表する。舞台は古い空き屋や商店街などを活用し、まちの活性化をはかる。山出総合プロデューサーによると、各会場は周遊しやすく、1泊2日ですべて鑑賞できるという。

 まちとアートを楽しめるクーポン型金券も発行し、1枚100円相当の券を11枚綴り1千円で売り出す。混浴温泉世界のパスポートのほか、市内の飲食店や温泉で利用できる。混浴温泉世界のパスポートは前売りが大人1700円、当日2千円。中学生以下は無料。

 同時期には別府市内各所で発表される市民文化祭「ベップ・アート・マンス2012」も開催。このほか、混浴温泉世界のパスポート提示で九州各地のアートイベントで特典が受けられるように連携もはかる。とくに、11月3―25日開催の「国東半島アートプロジェクト2012」(大分県国東市、豊後高田市)へは無料で参加できるバスツアーも企画予定だ。

指摘業者28者行政処分も、観光庁が立入検査

 観光庁はこのほど、高速ツアーバスを企画実施している旅行業者に対して行っている立入検査の実施状況を公開した。立入検査を実施した旅行業者59者中、指摘を受けた旅行業者は28者にのぼった。

 井手長官は7月20日の会見で「違反の重いものについては行政処分になるだろう」と語り、処分にまでいかないケースについても「安全対策の強化策の実施状況や順守状況をしっかりと見ていかなくては」と語った。 

世界へ需要回復報告、“下期でリカバリーを”

 観光庁の井手憲文長官は7月20日、6月の訪日外客数が震災前の2010年比で1・4%増となった結果をうけ、世界に対して、震災前の水準への回復や日本の観光の現状について英語でメッセージを発信した。

 日本政府観光局(JNTO)が発表した6月の訪日外客数推計値は震災前の10年比1・4%増の68万6600人となり、震災以降初めて震災前の数値を上回った。これを受け井手長官は、震災前の水準へ回復したことを世界へ英語で発信。「日本を訪問する3つの理由」として、(1)伝統と融合したクールジャパンなど日本が魅力的であること(2)日本への観光需要が完全に回復し、国際会議の開催場所として役立つ準備ができていること(3)正確な放射線量の値や、欧米と比べても厳しい食品の安全基準、治安の良さなど、日本が安全であること――をPRした。

 7月20日の会見で井手長官は「韓国・ドイツ・フランスの戻りは遅いが、ようやく10年比でプラスに転じた意味は大きい」と語り、「1―6月の累計でマイナス3・6%だが、後半でリカバリーできるよう頑張っていきたい」と力を込めた。 

初の震災前超え、6月の訪日外客数

 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)が発表した6月の訪日外客数推計値は、前年同月比58・6%増の68万6600人。震災前の2010年と比べると1・4%増と、震災以降初めて震災前の10年比を上回った。これまでの過去最高の08年を約5千人上回り、6月単月として過去最高を更新した。2012年1―6月累計ベースでは3・6%減となっている。

 放射能汚染への懸念や円高などが訪日旅行の回復に悪影響を与えたが、航空座席供給量の拡大や大型クルーズ船の寄港、個人旅行の回復などによりプラスとなり、プロモーション効果も回復を後押ししている。

 各市場の動向をみると、韓国は10年同月比15・1%減、11年同月比46・5%増の15万2100人。放射能への不安の継続、円高による訪日旅行の割高感が影響した。

 中国は、大型クルーズ船の寄港や個人旅行需要の拡大などにより、10年同月比25・0%増、11年同月比111・0%増の12万9600人と、6月として過去最高を記録。また、上半期(1―6月)でも10年上半期を3万9900人上回る74万3900人と過去最高を更新した。

 台湾は、10年同月比10・4%増、11年比43・3%増の12万5700人。日台間の航空座席供給量の拡大や、個人旅行の増加、団体旅行の本格回復などで、6月単月では08年に次いで多い結果となった。

 香港は、10年同月比6・9%減、11年同月比55・0%増の4万4200人。東日本地域への回復の遅れや円高の進行が影響した。

 タイは、訪日旅行プロモーションの効果で10年同月比36・5%増、11年同月比81・2%増の1万3600人と6月単月で過去最高を記録。上半期でも10年上期を2万400人上回り過去最高を更新した。

 そのほか、マレーシアが10年同月比1・3%増、11年比79・4%増の8400人、インドネシアが10年同月比19・6%増、11年同月比95・7%増の9500人、ベトナムが10年同月比0・4%増、11年同月比29・3%増の3500人と、それぞれ4月単月、上半期ともに過去最高を記録した。

 なお、出国日本人数は、10年同月比12・4%増、11年同月比16・4%増の147万5千人と、6月として過去最高を記録。上半期としても01年上期を約26万8千人上回り、過去最高を更新した。

発着回数30万回へ、関空と伊丹、統合運営開始

 新関西国際空港(安藤圭一社長)は7月1日、関西国際空港と大阪国際空港(伊丹空港)の統合運営を開始したのにともない、3年間の経営方針を示す経営戦略を作成した。これによると、2空港の合計で14年度に発着回数を30万回、旅客数は3300万人、売上は1500億円を目指す。

 7月13日に国土交通省で開いた会見で室谷正裕常務は「2空港が一体となり、1つの主体でみることでお互いの強みを有効的に活用し、関西の航空パイを増やしていきたい」と運営統合への意気込みを語った。

 今回発表した経営戦略によると、基本コンセプトを「空を変える。日本が変わる。」に据え、空港のビジネスモデルの変革を目指す。最終的に完全民間運営化(コンセッション)を目指すため、段階的に補給金の引き下げを行い、自立した経営の実現や事業価値の最大化をはかっていく。

 このための戦略の1つ、「航空成長戦略」はネットワークのさらなる拡大と両空港の特性を踏まえた全体最適をあげる。関空は乗継機能強化などで、国際拠点空港として再生強化をはかる。具体的には、今年度冬ダイヤから国際線着陸料を5%引き下げ、今後3年の間に現行から約10%減少させ、成田空港並みの料金を目指す。伊丹は都市型空港としての利便性向上や環境に優しい空港に向け、低騒音機材導入を促進する料金体系の導入などを検討する。両空港の一体運営としては、アクセス強化や旅行商品開発などで、伊丹から関空国際線への内際乗継機能の強化をはかる。

 また、「ターミナル成長戦略」は、伊丹のターミナルビルを運営している大阪国際空港ターミナルとの一体化の早期実現や共同仕入会社の設立などを掲げるほか、魅力ある商業エリアの創造などを盛り込んだ。