「(株)おいでませ山口県」設立、初代社長は島耕作

鏡割りをする登壇者。山本知事は右から3番目
鏡割りをする登壇者。山本知事は右から3番目

 おいでませ山口観光キャンペーン推進協議会は11月9日、東京丸ビルホールで「(株)おいでませ山口県」発足発表会を開いた。

 山口県では、12月13日の岩国錦帯橋空港開港に先立って、全県で広域観光キャンペーンを実施。その一環として今回「(株)おいでませ山口県」という架空の企業を発足させることで、観光活性化を狙っている。

 初代社長には山口県出身で、抜群のビジネスセンスを誇る「島耕作」を起用。社員は山口県を応援する県民・関係者全員とし、山口県出身の松村邦洋氏や宮本和知氏が「食べちょる課長」「楽しんじょる課長」に就任した。「泊まっちょる課」では、現在課長を募集中。

 山口県の山本繁太郎知事は、「昨今、暗いニュースが多いなか、日本を明るく元気にするものの1つに旅や観光がある。山口県にも皆様に最高の感動を提供できる資源が豊富にあるが、会社設立にあたって山口県の魅力をPRしていきたい」とあいさつした。

 続いて、「島耕作」作者の弘兼憲史氏、全日本空輸(ANA)の篠辺修副社長から祝事が述べられ、山口ふるさと大使の石川佳純さんや、岡本信人さんからビデオメッセージが送られた。その後、松村氏、宮本氏、弘兼氏、山本山口県知事、福田良彦岩国市長によるトークセッション、会社設立を記念して登壇者全員が鏡割りを行った。

【対談~Tourism For All~池山メディカルジャパン・池山 紀之社長×鷹泉閣 岩松旅館・岩松 廣行社長】

対談は10月21日、宮城県作並温泉・鷹泉閣岩松旅館で行われた
対談は10月21日、宮城県作並温泉・鷹泉閣岩松旅館で行われた

ピンクリボンのお宿ネットワーク、2年目の「おっぱいリレー」に鷹泉閣 岩松旅館も参加 

 「ピンクリボンのお宿ネットワーク」(会長=畠ひで子・匠のこころ吉川屋女将)が今年7月10日に設立された。同ネットワーク副会長で医療機関との橋渡し役を務める池山メディカルジャパンの池山紀之社長は、昨年と今年10月にシリコーン製の人工乳房が全国の温泉や温浴施設に浸けても大丈夫なことを確認する「おっぱいリレー」を実施。また、宮城県作並温泉の鷹泉閣岩松旅館は今年、「おっぱいリレー」に参加し、「ピンクリボンのお宿ネットワーク」にも加盟している。乳がん患者さんの受入について、岩松廣行社長と池山社長が対談した。

おっぱいリレーで啓発を――池山氏

ピンクリボンデー設定へ――岩松氏

 ――昨年10月に実施し大きな反響のあった「おっぱいリレー」は今年で2回目となりました。

池山メディカルジャパン・池山 紀之社長
池山メディカルジャパン
池山 紀之社長

池山:私の妹が乳がんの手術を受けてから、家族で訪れた旅館で妹だけが温泉に入れませんでした。これをきっかけに「なんとか温泉に入れるように」と、2006年から乳がん患者さんのためのオーダーメイドの人工乳房を作り始めました。ニーズが多く、6年間で約3千人の方々の乳房を作りました。

 シリコーン製の人工乳房は、装着したまま何の問題もなく温泉にも入れるのですが、昨年2月に、兵庫県の旅館に宿泊された患者さんが宿の方に「(この泉質の)温泉に入っても大丈夫ですか?」と尋ねられました。宿の方も専門的な知識がなかったため、近くの病院に問い合わせをしました。

 即座に「大丈夫ですよ」と回答していただいた病院の看護師さんから後日、私にメールが届き、「全国の温浴施設や旅館さんに人工乳房で入浴しても大丈夫だということを広く知らせていただけないか」というお願いをされました。

 私たちは医療の分野で仕事をしているので、旅館や温浴施設との接点がありません。また、私たちが全国の旅館を回って「この人工乳房はどの泉質でも問題ありません」と説明しても、それは自社製品のPRになってしまいます。 

 そんななか、私たちの本社がある名古屋に近い三重県の温浴施設と話し合い、シリコーン製の乳房を全国各地の温泉や温浴施設に浸けることによって、人工乳房の安全性を検証するイベントとして「おっぱいリレー」を考案しました。温浴施設や温泉旅館にも“ピンクリボン運動”意識を持ってもらえるのではないかと、昨年10月に実施したところ、全国各地で大きな反響がありました。岩松旅館さんから連絡があったのは、イベントがちょうど終わった時期だったので、今年参加していただきました。

 「おっぱいリレー」はスタートしたばかりですが、10月は世界的に「ピンクリボン運動」月間なので、将来は全国の旅館や温浴施設が参加する啓発活動のイベントになればいいと思います。2年間で125施設が参加しました。

鷹泉閣 岩松旅館・岩松 廣行社長
鷹泉閣 岩松旅館
岩松 廣行社長

岩松:私は岩松旅館に来て8年になりますが、それ以前はホームセンターなどを経営していました。天井を高くし、照明を明るくするなど、さまざまな工夫によって、とくに女性層に支持されるホームセンターづくりに取り組んできました。業界は違いますが、エンドユーザーを相手にする商売を経験していました。

 初めて旅館業界に入って驚いたことは、「女性の1人旅を受け入れない」というスタンスです。ビジネスウーマンなど、1人で出張に行かれる女性も多いのに、女性たちはビジネスホテルや、シティホテルに泊まらざるを得ない状況にあったのです。仙台周辺には、秋保温泉や作並温泉といった良質な温泉地がありますが、女性は旅館から宿泊を断られてしまう。平日の出張のついでに温泉に入りたいという女性たちの「潜在需要は大きい」のに、もったいない話です。

 そこで、当館ではいち早く「女性の1人旅プラン」をホームページに掲載しアピールしました。宮城県内の旅館では私たちが最初だと思います。その後、女性の1人旅が飛躍的に増えました。当初は、月に5―6人でしたが、今は当たり前のように女性の1人旅のお客様が訪れ、私たちの売上の大きなウエイトを占めるまで成長しています。

 次に私たちが取り組んだのは「赤ちゃんを抱えて温泉に行きたい」という層です。現状ではなかなか受け入れる宿が少なく、また、受け入れてくれたとしても、紙おむつや、ミルク、哺乳瓶など大変な荷物になるので、ついつい足が鈍ってしまうのです。ここに何とか手を差し伸べられないかと考え、「赤ちゃんプラン」を売り出しました。これは、今すぐに利益にはつながりません。将来、赤ちゃんのときに宿泊できたということでお越しいただけたらいいなと思っています。

 同時に、乳がん患者さんにも手を差し伸べることができないかとずっと考えていました。「温泉に入って心と体を癒す」というのは、日本の古来からの伝統文化です。国内旅行の目的でも温泉旅行が一番多いわけですから、ぜひ私たちのお宿に来ていただき、温泉に入っていただきたいと常に考えています。

 岩松旅館では「ピンクリボンデー」を、施設まるごと貸切でやろうという方向で3年前から準備を進めており、今回、「おっぱいリレー」に参加したことが、今後の活動の大きな第一歩となりました。

池山:乳がん患者さんが「温泉に行きたいけどなかなか行けない」最大の理由は、「人に見られたくない」という一点に集約されます。彼女たちが「温泉に入りやすい環境」として、まず思いつくことは、露天風呂付きの客室なのですが、手術を受ける以前と同じように「大浴場に入りたい」というのが本当の夢なのです。たとえば、脱衣所の照明が少し暗いとか、目隠しや、ついたてがあるといった、ほんの些細な工夫で大丈夫なのです。洗い場に仕切りがあったり、お風呂の中に浸けてもいいタオルが置いてあったり、その程度で彼女たちは大浴場に入れるようになるのです。でも患者さんの声は旅館も温浴施設にもなかなか届いていません。

岩松:そうですね。実際、自分から申告されることはありませんので、どのお客様が乳がん患者さんなのかわからない。また、お越しになられても具体的な要望が耳に入ってこないのです。

 私たちが今すぐにでも対応できるのは、お客様から申告していただければ、フェイスタオルやバスタオルを必要な分だけ提供します。そうすると、滞在中に何度でも温泉を楽しんでいただけるのではないかと考えています。浴衣についても、何回でも入浴できるように2、3枚お渡ししたい。最終的には「ピンクリボンデー」として年に数回、全館貸切にする日を設定したいと思います。

池山:受入側に理解があるということが、患者さんにとってものすごく心強いことなんです。ステッカーなどが貼ってあるだけで安心される。

 私たちは全国の乳がん専門の医師や看護師との付き合いが多く、日々患者さんと直に接しています。乳がん患者さんを積極的に受け入れていただける旅館があれば、我われが患者さんに教えてあげたいと思いました。そこで「旅行新聞」の賛同を得て、全国の旅館や主要500を超える病院などと患者さんを結びつける「ピンクリボンのお宿ネットワーク」が今年7月に発足したのです。12月には加盟旅館が掲載される小冊子が発行されます。全国の医療施設にも配布されるので、日本中にPRできるのではないでしょうか。

 先日も乳がんを専門とする看護師さんたちの前で講演する機会があり、「全国の乳がん患者さんを受け入れてくれる旅館がリストアップされた小冊子を患者さんに渡していただけますか?」とお聞きすると、皆さん諸手を挙げて賛同してくれました。病院の医師や看護師さんが患者さんに直接渡してくれるのです。患者さん、受け入れるお宿、そして病院の医師や看護師さんの間に強固なネットワークが築かれようとしています。私たちは医療の現場と旅館業界の「橋渡し役」になりたいと考えています。

岩松:8年前から、岩松旅館では年に3回ほど「レディースデー」プランを設けており、男性用の大浴場や、混浴の露天風呂もすべて女性のみという日を設定しました。スタッフも男性は夜間のフロントだけと徹底しています。客室係もすべて女性スタッフだけです。今では1回に200―250人が訪れるようになりました。リピーターの比率がとても高いのが特徴です。また、調理場も女性スタッフの割合の方が多いのです。
私たちは多くの女性に働く場所を提供し、多くの女性のお客様に訪れていただきたいと考えています。

池山:毎年5万人の方々が乳がんの手術を受け、5年以上経過された方が50―60万人います。ご家族を含めると約200万人が温泉旅行を諦めています。私の妹も15年間、家族旅行に行けませんでした。このため、レストランで食事をするだけということがほとんどでした。胸を作ってからはどんどん温泉に行くようになりました。

岩松:私どもの旅館には年間約7万人が宿泊されており、それから考えると200万人という数はすごいですね。

 乳がん患者さんを受け入れるという市場は、マイナー需要ではなく、メジャー需要だと考えます。

 当館の温泉は、川の底の源泉からポコポコと湧き出る温泉で、とくに皮膚病に効能があり、すり傷、切り傷にも良く、昔でいえば刀傷に効果を発揮してきた歴史があります。もともと湯治宿で、その意味でも、手術後に医師から許可が出れば良く効くのではないかと思います。私も以前、手術を受けましたが、その時も医師に温泉に入ることを薦められました。

 ぜひ「ピンクリボンプラン」をつくり、私たちが先鞭をつけていきたいと思っております。何事もそうですが、軌道に乗るまでは時間がかかります。「ピンクリボンデー」を始めても浸透するまで3年は必要でしょう。4年目に花が開けばいいと考えています。

ジェットスター・ジャパンに航空局が書面で厳重注意

 国土交通省航空局は11月16日、ジェットスター・ジャパンに対し、書面で厳重注意を行った。

 航空局によると、同社に対する検査で、国土交通大臣の認可を受けた業務規定等に規定された資格要件を満たしていない者2人を確認主任者として選任し、業務を行わせていたこと、そのうち1人は資格要件を満たしていないことを認識していたにも関わらず、適正な是正措置が取られていなかったことが判明したという。同局は、同社がこのままの状態で事業拡大を行っていくことが運航の安全性に重大な影響をおよぼしかねないと判断した。また、同社に12月17日までに必要な措置を検討し、文書での報告を求めている。

アミューズトラベルを立入検査、観光庁、9、13日の2度実施

 観光庁は、11月9、13日の2度にわたり、中国・万里の頂上で遭難事故を起こしたアミューズトラベル(東京都千代田区)本社営業所の立入検査を実施した。

 9日は同庁職員4人と国土交通省関東運輸局職員1人の計5人で検査に入り、旅行者本人や家族らへの対応について聞き取りを行ったほか、事故が発生したツアーの企画・実施状況などを聴取した。

 13日は同庁職員3人が、同社社長から、聴取した。

 同庁は今後も引き続き、事故の詳細な事実関係などを把握するため、立入検査を実施する予定。

No.327 日本旅館協会発足記念対談 - 連携を密に国内観光活性化

日本旅館協会発足記念対談
連携を密に国内観光活性化

 10月に一般社団法人日本旅館協会(佐藤義正会長、3381会員)が設立したことを受け、佐藤義正会長と井手憲文観光庁長官との紙面特別対談を実現。観光庁は9月に観光産業政策検討会を立ち上げ、産業の強化に本腰を入れ始めている。2つの宿泊主要団体が1つになったことのメリットや、日本旅館協会と観光庁との連携、国内観光活性化へ向けての取り組みと展望、宿泊業界の産業強化に向けてなど、今後の観光業界を語り合った。

 

【司会進行=旅行新聞新社社長・石井貞德、構成=伊集院悟】

「合理的な宿泊費」も重要 井手氏

地域が一体で長期滞在を 佐藤氏

 ――国際観光旅館連盟と日本観光旅館連盟が合併し、日本旅館協会が設立されました。おめでとうございます。旅館・ホテル業界の大きな2つの団体が1つになったメリットは?

佐藤:まず、宿泊業界自身としては、観光旅館の団体が1つに集約され会員数が大幅に増えたので、分母(基盤)が大きくなり、さまざまな事業に取り組みやすくなりました。事業の選択と集中の考え方をより一層進めやすくなりました。また、観光業界全体におけるメリットは、観光振興を目指す旅館の団体が1つにまとまったので、窓口が一本化し、団体がより強力になり、国内外の誘致活動に一層弾みがつくことだと思います。

井手:長年の課題であった両団体の合併が、関係者のたゆまぬ努力で実現したことは誠に喜ばしいことです。両団体は類似の活動をし、重複する会員も多かったので1つにまとまったことで、さらに宿泊業界・観光業界を盛り立てていってほしいです。1プラス1が2ではなく、3にも4にもなるよう、観光庁も連携して取り組んでいきたいです。

 

※ 詳細は本紙1484号または11月27日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

山形でフォーラム、風評払拭と訪日拡大(震災復興観光会議)

 日本観光振興協会が事務局を務める「震災復興観光推進国民会議IN仙台」(議長=西田厚聰日本観光振興協会会長)は12月7日、山形県山形市・山形テルサで「震災復興観光推進国民会議 山形フォーラム―風評被害を乗り越えて―」を開く。根強く残る風評被害を払拭するとともに、インバウンドを拡大し、観光で東北を元気にするのが狙い。

 同会議は昨年12月、被災地の復興を観光から目指していこうと、宮城県仙台市でシンポジウムを開催。その後、さまざまなイベントも催されているが多くの地区は風評被害のため、依然として観光産業が復興していない現状にある。加えて、日中国交正常化40周年で期待された中国人観光客も領土問題で逆風にあるなか、風評被害の払拭とアジア各国からのインバウンドを引き続き拡大していくことを目指す。

 フォーラムは、東北観光推進機構会長の高橋宏明氏が「東北の復興について」と題し、現状報告。基調講演は全国旅行業協会(ANTA)会長で衆議院議員の二階俊博氏が登壇する。パネルディスカッションは「観光による東北復興 第3ステージへ」をテーマに議論する。モデレーターはJTB旅行事業本部観光戦略部長の加藤誠氏が務め、パネリストに国土交通省東北運輸局長の長谷川伸一氏と東日本旅客鉄道常務の原口宰氏、ANAセールス社長の稲岡研二氏、日本航空(JAL)専務執行役員の上川裕秀氏、天童温泉ほほえみの宿滝の湯女将の山口隆子氏を迎える。

 また、フォーラムには観光庁の井手憲文長官や吉村美栄子山形県知事ら来賓も出席する。入場は無料。申込みは日本観光振興協会のHP(http://www.nihon-kankou.or.jp/home/index.html )から。

ピンクリボンのお宿セミナー

12月11日、汐美荘(新潟県瀬波温泉)で開催、参加者を受付中

12月7日に発行する冊子
12月7日に発行する冊子

 「ピンクリボンのお宿ネットワーク」(略称:リボン宿ネット、畠ひで子会長)は12月11日、新潟県村上市瀬波温泉の「夕映えの宿 汐美荘」で、会員と地元新潟県内の宿泊施設・観光関係者などを対象にした「ピンクリボンのお宿セミナー」を開催する。セミナーへは本紙読者の参加も可能で、11月30日締切で、申込みを受け付ける。

 リボン宿ネットは、乳ガンを患い、手術を受けて回復の道を歩みながらも、術後の痕を気にして旅をあきらめてしまうという女性の方たちに、もう一度、誰の目も気にせず旅に出かけてもらい、心ゆくまで旅館・ホテルでの入浴などを楽しんでもらおうと、全国の宿、団体・企業、医療関係者などが参画して今年7月10日に発足した。

 現在会員数は宿泊施設が61、団体が3、企業が12の計72会員。会の設立以降、患者やメディア、医療関係者などからの問い合わせが相次ぎ、関心の高さをうかがわせる。

 セミナーでは患者代表でCSRプロジェクト理事・技術士の桜井なおみさん、富山中央病院看護師長・ガン看護認定看護師の酒井裕美さんがそれぞれの立場で講演を行う。講師2人と旅館関係者を交えたパネルディスカッションも行い、具体的な対応や宿泊プラン作りなど参加者と意見を交わす。

 セミナーの開催時間は午後1時から4時30分。参加費は無料。なお、セミナーに合わせ全国の病院や会員の宿などで配布する「ピンクリボンのお宿」も12月7日に発行する=写真。

 セミナー参加は下記に問い合わせ、参加申込書に必要事項を記入して申し込む。

 問い合わせ=ピンクリボンのお宿ネットワーク事務局(旅行新聞新社内)

 電話:03(3834)2718。

安全輸送へ緊急決議、全国バス事業者大会開く (日本バス協会)

高橋幹会長
高橋幹会長

 日本バス協会(高橋幹会長)は11月14日、神奈川県横浜市内で臨時総会と第57回全国バス事業者大会を開き、安全輸送に向けて緊急決議を採択した。

 高橋会長は冒頭、「今年は、残念ながら高速ツアーバスでの大変な事故が起こってしまった。信頼が大きく損われてしまった今、業界をあげて信頼回復に向けて全力を尽くす」と話し、「貸切バスの安全性を客観的に評価する貸切バス事業者安全性評価認定制度では9月に149社が新しく認定された。11月1日現在、事業者が368社、車両は1万2821両になっている。現在2次募集をしており、これからもより多く認定されるようにまい進していく」と述べた。

 来賓祝辞では、国土交通省の武藤浩自動車局長が「交通基本法や予算案をみんなで協力して調整しているので、これからも応援していただきたい」と述べた。神奈川県の黒岩祐治知事は「バス業界が明るくなることが、経済が豊かになる大きなバロメーターだと思っている。こちらもさらに協力していきたい」と話し、横浜の林文子市長は「バスは頼りになる交通手段。横浜市民意識調査ではバス・地下鉄の利便性が第1位になるほど。今後もお力添えをいただきたい」とあいさつした。

 大会では、安全、安心かつ信頼される公共交通機関として、その使命をまっとうし健全な発展をはかるため、(1)交通基本法の制定および13年度バス関係政府予算の確保(2)バス関係税制(3)バス事業の安全・信頼を回復するための規制の見直し(4)バス利用促進のための輸送環境改善対策(5)高速道路料金施策――についての実現を求める大会決議を行った。

 続いて、安全輸送緊急決議が相次ぐ高速ツアーバス事故などを受け、より一層死亡事故ゼロなどの事故削減目標の達成に向けて、年末の繁忙期を前に(1)基本動作を再確認し、運輸安全マネジメントを推進(2)夜間長距離運行で、適切な運行計画の作成と運行支持など過労運転防止の徹底(3)ゆとり乗降、シートベルトの着用徹底(4)運転者の健康管理体制強化と薬物事案の発生防止策――に重点を置いた取り組みを行うことを誓った。

 2部では、横浜開港資料館調査研究員の平野正裕主任が「横浜開港153年のあゆみ」をテーマに、東海大学の山下泰裕副学長は「夢への挑戦」について講演を行った。

 これに先立って開かれた臨時総会では、熊本バスの岩田昭彦社長、中村靖東京都交通局長が新しい理事に選任された。定款変更については、第39条第2項中「議長」を「代表理事」に改める議案が可決された。

 その後、懇親パーティが開かれ、中国雑技団による公演も行われた。

9万3千人が来場、観光と物産の連携実現

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旅フェア2012、2年ぶりに開く

 日本観光振興協会は11月9―11日の3日間、東京都豊島区の池袋サンシャインシティをメイン会場に2年ぶり、17回目の「旅フェア2012」を開いた。メイン会場は約130の団体が出展し、3日間合計で9万3099人を集めたほか、主要駅や各アンテナショップのサテライト会場には延べ5702人が訪れた。一般公開前の国内旅行商談会は、旅行会社や報道関係者約60人が参加し、16の自治体・団体と商談を行った。

日観振の西田会長
日観振の西田会長

 9日の業界日に開いた開会式で西田厚聰会長は「昨年は東日本大震災の直後でやむなく中止にしたが、今回は“旅のアミューズメントパークが出現”をテーマに、2年ぶりに開催ができた」とし、「メイン会場のほか、JR東京駅や16のアンテナショップをサテライト会場に設け、従来難しかった観光と物産の連携を実現した。21の商工会にも参加いただいたが、観光振興に取り組まれる方の幅が広くなってきて嬉しい。旅フェアが国内観光振興の起爆剤になることを期待している」と語った。

 来賓の観光庁の志村格次長は「観光庁は外国人の訪日旅行促進に取り組んでいるが、観光消費の9割は日本人の国内宿泊、日帰り旅行。旅フェアもこの観点でとても重要だ」と述べた。また、日本経済団体連合会の大塚陸毅副会長と東北観光推進機構の高橋宏明会長が登壇し、それぞれ旅フェアへの期待を語った。テープカットには観光業界団体や大手旅行会社のトップらが並び、各地域のゆるキャラも登場して華々しく幕を開けた。

 今回は各地に行かなければできない“体験”を重視し、テーマエリアは6つ用意した。「東北観光エリア」は観光復興に取り組む各地域の魅力を発信。いわて・三陸ブースの海女の衣装でサッパ船と撮影できるコーナーや、福島県ブースの絵ろうそくの絵付けなど体験メニューも充実させた。雪やウィンタースポーツをモチーフにした「ウィンターリゾートエリア」には、子供たちが遊べるようにスノーパークを設置して雪を降らせる演出も行った。また、「すごいぞ!日本エリア」は世界に誇る日本の巧の技を紹介。中国ブロック広域観光振興事業推進協議会ブースは、石見神楽の実演や島根県松江市・八重垣神社の小銭を使った良円占いのレプリカを用意し、来場者を楽しませた。

ツアー登山遭難事故 ― 根元原因の検証が必要

 11月3日に、万里の長城登山ツアー参加者3人が死亡するという遭難事故が発生した。「万里の長城グレート・ウォール100キロトレッキング9日間」という壮大なツアーを主催したのは、アミューズトラベルという登山を専門とする旅行会社。まだ記憶に新しい2009年7月に、北海道トムラウシ山での遭難事故も同社が企画した。

 今回の事故で、ショックだったのは、登山ツアーを専門とする旅行会社が主催した募集型企画旅行であったにも関わらず、ツアー造成に際して、下見がなされていなかったという点だ。 観光庁は遭難事故を受けて、11月9日、13日と同社に立ち入り検査を行い、今後も事実関係を把握していく予定だが、事故の根本原因が何かをしっかりと検証しなければ、今後も似たような事故は続くだろう。

 今年4月に発生した高速ツアーバスの事故もそうだが、安全性に目を瞑らなければ存在し得ない状況にあるのだとしたら、旅行者にとっても、旅行業界にとっても、これほど不幸な環境はない。

 10年近く前、幾つかの専門旅行会社を取材した。FIT(Foreign Independent Travel)から、SIT(Special Interest Tour)に注目が集まっている時期だった。登山ツアーやモンゴルなど特定の地域を専門とする旅行会社、さらにはロシア美女ヌード撮影ツアーなどを企画する、かなり専門性に特化した旅行会社をいくつか取材した。そこで感じたのは、旅行者が旅行会社を信頼しているからこそ成り立っている世界だということだった。大手旅行会社のように大々的な広告展開はできないが、愛好家が集う場として、成立していたような気がした。旅行会社の原点は、このようなものではないかと思ったことを覚えている。

 その後、ネット社会になり、販売に関してはネットエージェントが強大化している。旅行会社の存在意義は、深い知識や経験に裏打ちされた企画力や、修学旅行などの安全性と管理能力、登山ツアーなどの専門性や信頼性に限られるのではないかと考えていた。その旅行会社の最後の砦であり、“魅せ場”ですら、ままならない状況にあるのかとショックを受けた。

 今回の遭難事故が、旅行会社が自らの存在理由と意義を考えるきっかけになってほしいと願う。

(編集長・増田 剛)