次期部長に横山氏(土佐御苑専務)2人立候補 初の投票選挙に

次期青年部長の横山公大氏
次期青年部長の横山公大氏

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部(井上善博部長)は9月14日、東京都千代田区のグランドプリンスホテル赤坂で臨時総会を開き、次期・第20代(11―12年度)青年部長に、財務担当副部長の横山公大氏を選出した。横山氏は高知県高知市の土佐御苑専務取締役。36歳。

 今回、次期部長立候補受け付け期間中に、横山氏と、政策会議議長の森晃氏(長野県野沢温泉・旅館さかや専務取締役、41歳)の2氏が立候補。40年余りの歴史を持つ全旅連青年部で初めて投票による選挙となった。青年部のホームページ上にも立候補者2氏によるネット演説文や所信が掲載されていた。

 井上部長は「『次代の青年部を背負っていこう』という気概と情熱を持って立候補していただいた2人に本当に感謝している。部長選任選挙という未来を託す重大な任務を各都道府県部長にお願いしたい」と語った。

 その後、立候補届け出順に森氏、横山氏の順に15分間の演説を行った。森氏は「日本の観光はパイの争奪からパイを増やす」必要性を強調し、旅館業界の生き残りへ、有給休暇の取得促進や高速道路料金制度などへの積極的な提言と行動、インバウンド客の集客の重要性などをあげ、青年部で「生き残りに必要な力を付ける礎となる活動をしていこう」と訴えた。

青年部初の部長選挙に
青年部初の部長選挙に

 一方、横山氏は「利他精神~夢を語り、背中を魅せる」をテーマに「DREAM RYOKAN PROJECT」など10項目の活動目標を掲げ、「夢を語らなくなった旅館業界にもう一度わくわくする夢をたくさん打ち出し、実現に向けて取り組みたい」と強調した。さらに「青年部はいい経営者、いい大人になるための修行道場」とし、「今まで培ってきた最高の友人たちのネットワークで最高の2年間を演出したい」と呼び掛けた。

前原誠司国交相も参加
前原誠司国交相も参加

 都道府県の部長47人に投票権が与えられ、選挙管理委員会(伊丹一茂委員長)の定める規約に則り、選任選挙を実施。投票結果は横山氏25票、森氏21票、棄権1票となり、僅差で横山氏が次期青年部長に選ばれた。

 続いて開いた首都圏ブロック大会(波木井孝幸ブロック長)では、観光振興議員連盟会長の川内博史氏が基調講演を行った。その後「民主党議員を囲む若手旅館経営者の集い」には、前原誠司国土交通大臣をはじめ多数の民主党議員が出席した。また、午前中には青年部員らがNHK受信料の見直しと、ホテル・旅館の建物に係わる固定資産評価の見直しを求める陳情活動も行った。

No.259 第2回観光甲子園開催 - 地域を元気にする観光プラン

第2回観光甲子園開催
地域を元気にする観光プラン

 高校生が主役となって地域の観光資源を再発見・再発掘して作り上げた「地域観光プラン」を競い合うコンテスト、第2回「観光甲子園」の本選大会が8月29日、兵庫県神戸市の神戸夙川学院大学を会場に開催された。本選では予選を突破した10校の生徒が、審査委員を前にしたプレゼンテーションを行い、グランプリの文部科学大臣賞に山形県立置賜農業高校、観光庁長官賞に島根県松江市立女子高校が輝いた。「地域を元気にしたい」という高校生の思いと、グランプリを目指した熱戦を取材した。

【関西支社長・有島 誠】

高校生が主役「地域発・観光プラン」を競う、全国75校から125プランの応募

「10校が本選大会に出場」

 「観光甲子園」は全国の高校生が地域の魅力、観光資源を再発見し、地域の人たちの協力も得ながら観光プランを作り、競い合うコンテストで、観光人材育成と観光プラン実現による地域活性化に期待する。同大会組織委員会(委員長・石森秀三北海道大学観光学高等研究センター長)が主催し、同大が共催。文部科学省、観光庁など21団体が後援した。

 プラン募集は4月1日から7月9日まで行い、期間中に北海道から沖縄県まで75の高校が参加。125の観光プランが提出された。

 審査では(1)企画の視点が斬新か(2)地域の魅力が効果的に盛り込まれ活性化するプランになっているか(3)来訪者にとって魅力ある観光プランになっているか(4)費用対効果が適切か(5)企画に説得力があり論理的か――の5項目を基準に書類審査による予選を行い、結果10プランが本選出場を果たした。

出場校が入場して開会式
出場校が入場して開会式

 

※ 詳細は本紙1392号または日経テレコン21でお読みいただけます。

1000万人へラストスパート、羽田国際化で誘客アップ

 日本政府観光局(JNTO、間宮忠敏理事長)は8月31日に会見を開き、9―12月を「訪日外客1千万人達成」に向けたラストスパート期間とし、羽田空港の本格的国際化、地方都市へのチャーター便、クリスマスや年末のイベントなどでさらなる誘客増加を狙うと発表。間宮理事長は「2010年1千万人という大きな目標に1人でも近づけるように、効果的なプロモーションを行いたい」と語った。

 具体的には、10月31日以降に羽田空港への国際線定期便就航を予定しているソウル、シンガポール、バンコク、香港、ロサンゼルス、サンフランシスコ、パリなどの航空会社6社(JAL、ANA、シンガポール航空、タイ航空、キャセイパシフィック航空、ドラゴン航空)や香港などの旅行会社3社とのタイアップ事業を実施。共同広告や相互のサイトバナーリンク、旅行会社向けセミナーによる販売促進支援などで、個人旅行の集客を強化する。
また、上海―茨城、旭川、岡山や、北京―旭川、静岡、神戸、沖縄などのチャーター便を使うツアー販売促進を支援する。

 そのほか、角川マーケティング社とのタイアップによるクリスマスや年末イベントのPRを、簡体字・繁体字・韓国語の3言語のウェブサイトで展開。JNTOの調査で「外国人が訪日前に期待すること」の1位になった「日本食」の魅力発信を強化し、訪日意欲の喚起につなげていく考え。

固定資産評価見直しを、ホテル・旅館の建物

 観光庁は2010年度の税制要求として、「ホテル・旅館の建物に係る固定資産評価の見直し」を求めた。固定資産評価を適正化するために使用実態に即して見直す。

 ホテル・旅館は、建物などの固定資産そのものが重要な商品であることから、顧客ニーズに合わせ建物は経過年数が比較的短くても除去されるケースが多い。一方で、建築後、何年経過してもその評価額が下がらないなど、現行の固定資産評価が経営者の負担になっている。

 「現在の基準よりも短い期間で除去しているのが実態。今回の見直しで、税負担を適正なものにし、負担を実質的に軽減できる」(観光庁産業課)。

 また、訪日外国人旅行者のショッピングの利便性を向上するため、免税対象物の見直し、出国時還付手続きの導入を含めた輸出物品販売場における輸出免税取引制度の見直しを検討する「輸出物品販売場における輸出免税取引制度の見直しの検討」も求めた。

 外国人旅行者が化粧品などを購入する場合、消耗品としてではなくお土産品として購入している実態がある。免税対象物品の定義である「通常の生活の用に供される物品であって、消耗品は除く」を明確に定義し直す。化粧品など、お土産として外国人旅行者のニーズが高い商品について免税対象とする、方向性で検討する。

 そのほか、納税主体毎の許可のため、ショッピングセンターなどでは、テナント毎の許可が必要といった輸出物品販売場の許可や、店頭での申請が煩雑な免税手続きについても現行の課題の改善をはかる。

9月18日から1カ月間、山梨・増富温泉で

 山梨県北杜市の増富温泉で9月18日から10月17日までの1カ月間、ラジウム泉の効能をより身近に感じてもらうための催し「増富ラジウム温泉博覧会2010」が開かれる。期間中、温泉療法を題材にした講演や健康増進プログラムに加え、食や農業体験など、地域の魅力を伝える企画も実施する。今回が初めての試み。

 日帰り温泉を運営するみずがき山ふるさと振興財団や増富ラジウム峡観光協会などで組織する「増富ラジウムの郷博覧会実行委員会(小林忠雄委員長)」が主催する。これまで各団体や民間が独自に開いてきた湯治体験などを博覧会期間に集約し、広報活動に力を入れる。

 主なイベントは新潟大学医学部の安保徹教授の講演(9月18日、無料)や「健康増進プログラム」体験(期間中の平日、1人2500円)、農場「隅から隅まで体験」(期間中の金曜日、同500円)など。ラジウム温泉の歴史を紹介する展示館も開設する。参加にあたり、予約や健康保険証が必要なものもある。

 博覧会は中小企業庁の小規模事業者新事業全国展開支援事業の採択を受け、今年度から3年計画で取り組む。不老閣の八巻秀夫社長は「イベントを通じて、多くの湯治客から評価をいただいているラジウム温泉の良さを広く伝えたい」という。

 増富温泉は「(信玄公の隠し湯」ともいわれる。全国屈指のラジウム含有量を誇り、三朝温泉(鳥取県)、玉川温泉(秋田県)とともにラジウム3大温泉として知られている。
問い合わせ=増富の湯 電話:0551(20)6500。

浦安市が国際会議観光都市に

「全国で52都市目の認定受ける」

 観光庁は9月1日、千葉県浦安市を全国52都市目の「国際会議観光都市」として認定した。

 浦安市は、年間約2600万人が訪れる東京ディズニーリゾートや、水辺、文化など浦安固有の資源を生かし交流人口の増大をはかる「浦安市観光振興計画」を2008年に策定。同計画を実現するための組織「うらやす観光推進協議会」が09年度に設置されており、今後は「ちば国際コンベンションビューロー」などとの連携を強化しながら、観光庁が昨年7月に策定した「MICE推進アクションプラン」に沿ったコンベンション誘致事業を展開していく。

JALと楽天が提携、年間50万人、300億円目指す

業務提携した3社
業務提携した3社

 日本航空(JAL、大西賢社長)、JALツアーズ(大西誠社長)、楽天(三木谷浩史会長兼社長)の3社は9月1日、JALビル(東京都品川区)で会見を開き、3社が業務提携を結び、JAL国内線航空券と楽天トラベルがオンラインで提供する国内宿泊施設を自由に組み合わせたダイナミックパッケージ商品「JAL楽パック」の販売を、9月1日から「楽天トラベル」のサイトで開始することを発表した。

 JALの藤田直志旅客営業本部長は「JALは96年に国内初となるネット予約を開始し、ネットには無限の可能性を感じている。幅広い会員を持つ楽天トラベルと協力し、双方ともに顧客価値向上に努めていきたい」と語った。

 JALツアーズの大西社長は「商品の企画・実施はJALツアーズが行うので、多様化する旅行者ニーズに応えながら、商品品質の維持と顧客満足度の向上に注力していきたい」と意気込みを述べた。

 楽天トラベルの岡武公士社長は「宿泊施設にとっては販売拡大、旅行者には商品の選択肢が増えるチャンス。これまで蓄積してきたダイナミックパッケージのノウハウを生かしたい」と話した。

 また、ANAと同様にJALとも合弁会社設立を視野に入れているかの質問に対しては、「良い商品を提供するのが第一で、合弁会社は今のところ考えていない」と否定的に述べた。
「JAL楽パック」ではJALの国内線1日約900便の航空券と、楽天トラベルがオンラインで提供する国内宿泊施設約2万軒を自由に組み合わせられる。JALツアーズが商品の企画・実施をし、予約・販売は楽天トラベルのサイトで行う。

 予約は出発の180日前から3日前まで可能。最大6人まで往復計6区間の予約ができ、手軽に上質なくつろぎを味わえる「クラスJ」の予約もできる。

 オープニングキャンペーンとして、クラスJの1予約につき、1人の往復クラスJ利用分4千円をポイントバックするキャンペーンも実施。

 5年後の15年の年間目標として、出発人数50万人、予約流通額300億円を目指すという。

No.258 楽しい旅に“安心”を - 静岡女将 地震マニュアル作成

楽しい旅に“安心”を
静岡女将 地震マニュアル作成

 2009年の静岡沖地震の経験を踏まえ、静岡県ホテル旅館生活衛生同業組合女性部会「あけぼの会」が全国で初となる「女将の地震初動マニュアル」を作成した。安心して静岡へ旅行に来てもらいたいと、地震当日の現場の状況と対応を洗い出し、地震発生時に女将が直面する課題とその対応をまとめた。地震と縁を切ることのできない日本において、どう対処していくべきか。「危機管理と安全もおもてなしの一つ」と、静岡の女将たちが立ち上がる。

【伊集院 悟】

■大きな地震を経験

 09年8月11日に起きた静岡沖地震。静岡県の伊豆市・焼津市・牧之原市・御前崎市では震度6弱を記録した。大きな地震を経験した静岡県の女将たちは、このときの初動対応について勉強会を開き、地震発生時のマニュアルの必要性を感じる。

 10年2月に「安心・安全なお宿をめざして」をテーマに、県旅連あけぼの会「しずおか流おもてなし研修会」を開催。石川県和倉温泉「加賀屋」総支配人・手島孝雄氏による能登半島地震発生時の経験について講演を聞き、さらに防災について強く意識した。

■地震対応のマニュアル作りへ

 全国で初となる「女将の地震初動マニュアル」。マニュアル作りに着手したのは今年2月から。マニュアル作成にあたっては、防災や危機管理を専門とし、災害図上訓練DIGの考案者である小村隆史氏(富士常葉大学環境防災学部准教授)に監修を依頼。計4回以上の勉強会を開き、地震当日の現場の状況とその対応を洗い出した。強い地震に襲われたときに、ホテル・旅館でお客の安心・安全を預かる女将が直面すると思われる課題を整理し、まとめた。

(左から)杉山美喜女将、宇田倭玖子女将、稲葉きみ江女将
(左から)杉山美喜女将、宇田倭玖子女将、稲葉きみ江女将

 

※ 詳細は本紙1391号または日経テレコン21でお読みいただけます。

200万人突破し過去最高、「ゲゲゲ」効果で

鳥取県境港市の水木しげるロードの入込客数が8月23日で、200万人を突破した。
鳥取県境港市の水木しげるロードの入込客数が
8月23日で、200万人を突破した。

 鳥取県境港市の水木しげるロードの入込客数が8月23日で、200万人を突破した。

 15日には過去最高だった08年の年間入込客数約172万人を4カ月以上残して更新していたが、その後も客足は伸び続け、初めて200万人の大台に乗った。

 ロードでは、NHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」の放送が始まった今春以降、観光客が増加。夏休みに入った7月は前年同月比282・5%増の37万8308人と驚異的な伸び率となり、猛暑の影響が心配された8月も連日1万人以上を集める盛況だった。

 水木しげる記念館も6月は84%増の2万1671人、7月は76%増の3万6213人を集めた。

 今秋には映画版「ゲゲゲの女房」の公開も控え、年間入込客数250万人超えが期待される。

ソウル市 観光バリアフリー化へ、日本人障がい者招待しモニターツアー実施

光化門広場

 韓国・ソウル市は観光地のバリアフリー化を目指したプロジェクトの一環として、6月5―8日までの4日間、日本人の障がい者を招待したバリアフリー観光のモニターツアーを行った。南山タワーや明洞、清渓川、南大門市場、光化門、景福宮などの観光コースを車イス利用者などが実際に体験。7日に開いたセミナーでは参加者の感想を聞き、意見交換を行った。今回のツアーで抽出したさまざまな課題を改善・整備していくことで、「ソウル市を障がい者が観光するのに一番便利な都市にしていきたい」(同市)考えだ。ツアーに同行した「オールネクスト」クリエイティブディレクター・梶原正氏のレポートをもとに紹介する。

(増田 剛)

「世界的観光都市へ課題整備」

  ソウル市は世界的な観光都市としての確立を目指し、観光地バリアフリー整備と、障がい者観光の支援に取り組んでいる。同市は2010年の障がい者福祉基金支援事業として、「障がい者オーダーメイド型ソウル観光プログラム開発運営事業」を立ち上げた。

 同事業では、社会福祉法人ハンボッ財団に、ソウル市内観光地のバリアフリー調査を依頼。さらに、バリアフリー整備や、障がい者観光コースの開発、日本や中国の旅行会社への広報なども実施していく。

景福宮
景福宮

 実態調査では、バリアフリー旅行業界や障がい者当事者、学界、関係専門家などで諮問会議を開き、最終的に対象観光地50カ所を選定した。今後11回にわたってモデルツアーを実施する。国内・海外の障がい者が、ソウルの観光名所のモデルツアーで観光コースや、バリアフリー設備などについて点検、評価を行う。これをもとに、テーマ別のオーダーメイド型観光コースを10本程度開発する計画で、1コースは、女性障がい者の特化コースとする考えだ。

 6月に実施した「日本障がい者招待モデルツアー」には、自治労東京都本部障害労働者連絡会議代表幹事、東京都福祉保健局の新井常美さん(車イスユーザー)やバンクーバーパラリンピックのアイスレッジ銀メダリストで同じく車イスユーザーの高橋和廣さんなど7人が参加。南山タワーや清渓川など人気観光地や、ナンタ公演観覧、ショッピングなどの観光コースを実際に体験した。ツアー後半には、参加者らが観光地の感想や意見を出し合うセミナーを開いた。

 新井さんは「多くの施設は車イスのまま直接観光できた。とくに新しい建物は車イスでも1人で十分観覧できた。地下鉄の車両は広く、車イスユーザーにはありがたい。ホームと車両の段差がなく、安心して移動できた。ノンステップバスから電動でスロープが出てきて感動した。日本の障がいを持つ知人にもソウル観光をすすめたい」と語った。

セミナーで意見交換
セミナーで意見交換

 高橋氏は「仁川空港で荷物を運ぶ際には、空港職員が常に付き添ってくれて助かった。案内には日本語表記も多く安心感がある。観光では、ソウルタワーで日本の障害手帳が通用して割引制度が適用され驚いた。各地とも坂道が多く大変だったが、案内地図が充実していたので楽しく観光できた。以前、大きな通りに横断歩道がなく不便を感じたが今回はできていた。街の改善に意欲的だと実感した」と感想を述べた。参加者からは、このほかにもさまざまな視点から意見が出された。

 ソウル市はこれらモデルツアーや、観光地バリアフリー実態調査によって得られた情報(文化施設や、ショッピング街、宿泊施設、飲食店など利用可能な施設)を「障がい者ソウル観光案内冊子」として発行する考え。また、2011年にはソウル市障がい者ホームページ(http:friend.seoul.go.kr)で、障がい者観光情報をひと目で探せるサービスを提供する予定だ。