「クレーマーの意義」発刊、本紙連載の奥野圭太朗氏(旅行新聞新社)

本紙で今年2月21日号から9月21日号まで連載していた奥野圭太朗氏の「旅行業界におけるクレーマーの意義に関する社会学的一考察」がこのほど、書籍化された。発行は旅行新聞新社。

 近代社会における経済関係は「生産者」と「消費者」に分離しているが、観光においては、「生産者」の側に立った研究がほとんどで、「消費者」側の研究はほとんどなされていないのが実情。

 この観点から、奥野氏は“本来のクレーマー”とは、「レストランやホテルなどの対象を、より良いものにしていこうとする『崇高な意志』のもとに、自らが犠牲になって、問題点を対象に嫌がられるのも覚悟で指摘する客のことを指す」と定義し、旅行や出張の多い環境のなかで、ホテルや航空会社、ガイドなどの具体例をあげながら、検証を続けていく。奥野氏自身が「本来のクレーマー」となり、さまざまなシチュエーションのなかで、ホテルや航空会社、旅行会社が対応していく過程を克明に辿り、実際に起こっている旅行業界の問題点をあぶり出すことに挑戦している。現場担当者には、息が詰まるような緊迫したシーンが個別事例として提示されている。

 「旅行業界にフィードバックされる形で役に立つことを願ってやまない」と著者がいうように、旅館やホテル、旅行会社、航空会社、さらには民間会社だけでなく行政機関にも参考になる事例が詰まっている。学術的な研究材料としても活用できる。

 A5判76ページ。定価は本体850円(税別)。送料含め980円。今後電子書籍化も予定している。

 問い合わせ=旅行新聞新社 電話:03(3834)2718。

首都圏300組に3万円提供、冬の三陸まるごと体験ツアー(さんりく基金)

 さんりく基金は、東日本大震災で被災した岩手県沿岸部12市町村の宿泊、飲食、買い物、交流プログラムに利用できる「三陸応援交流券」(3万円分)を抽選で首都圏に在住する300組に提供する「冬の三陸まるごと体験事業」を企画した。復興した宿に泊まって、岩手三陸地域の魅力を体験してもらう。募集期間は11月26日から12月15日まで。

 晴天の日が多い冬の三陸は、毛ガニ、アワビ、鮭、牡蠣など海の幸がもりだくさん。「三陸まるごと体験ツアー」は5コース、6つの日程で、来年1―2月に、岩手三陸の旅を提案する。洋野町、久慈市、野田村、普代村、田野畑村、岩泉町、宮古市、山田町、大槌町、釜石市、大船渡市、陸前高田市の15軒の営業を再開した宿が参加。「三陸応援交流券」(3万円分)はツアー期間中の宿泊に加え、飲食、買い物、交流プログラムに利用できる。

 参加者には旅のレポート(写真と400字程度の文章)を書いてもらい、「三陸まるごと体験ツアー」ホームページなどで公開し、地域の魅力を発信していく予定だ。

 問い合わせ=めんこいテレビ内・三陸応援交流圏事務局 電話:019(656)3301。 

合格率が5・5%増、12年度旅行業務管理者試験(JATA)

 日本旅行業協会(JATA)がこのほど発表した、2012年度総合旅行業務取扱管理者試験の結果によると、総受験者1万1534人のうち、合格者は3517人だった。

 合格率は前年度比5・5%増の30・5%。前年度に比べ、受験者は299人減少したが、合格者は561人増えた。

 合格者の内訳は、旅行業が40・7%と最も多く、大学生の17・9%、旅行関係以外の会社員の12・5%と続く。年齢別で最も合格者が多かったのは19―23歳の27・9%で、次いで30―39歳の26・5%、24―29歳の24・5%。最年少合格者は16歳、最年長合格者は73歳だった。

 受験区分別にみると、受験区分A(業法・約款・国内旅行実務・海外旅行実務)の合格者は前年度比46人増の823人。合格率は同1・7%増の14・3%。合格率が高かったのは、受験区分F(約款)で、合格率は同4・4%増の92・1%増、合格者は同188人増の538人。次いで、受験区分D(業法・約款)は同0・7%増の70・6%、合格者は84人増の990人。

 また、試験不合格者のうち、「国内旅行実務」「海外旅行実務」の科目の合格基準に達している場合、来年度に限り科目合格者として、当該科目の受験が免除される。今回の該当者は合計1053人。 

経常益276%増の187億円、海旅好調、大幅な増収増益(JTBグループ連結中間決算)

11月16日に国土交通省で開かれた会見
11月16日に国土交通省で開かれた会見

 JTBグループの2012年上期(4―9月)の連結決算によると、経常利益は前年同期比276・3%増の186億8500万円となった。海外パック「ルックJTB」や法人営業が好調に推移し、売上高は同16・4%増の6379億400万円。営業利益は404%増の171億1100万円、当期純利益は同408・1%増の103億9千万円と、大幅な増収増益となった。

 国内旅行の売上高は同11・7%増の2829億円。震災の影響により東北方面への旅行の一部で回復の遅れはあるものの、全体では順調に推移した。とくにスカイツリーなど新たな施設が多数開業した東京は、地方からの集客が大幅に増加。また、予約状況によって価格が変動するタイプの宿泊旅行が好調に推移した。

 海外旅行の売上高は同23・3%増の2734億円。企画商品「ルックJTB」は商品革新3年目としてパンフレット改革などを行った。主力のハワイ方面では現地巡回バスを投入するなどの取り組みもあり、夏旅の販売促進によって家族旅行が大きく伸長した。ロンドン五輪で沸いたヨーロッパなどのロング方面が好調に推移した。上期の取扱人員は202万人となり、初めて200万人の大台を突破した。また、海外旅行における同社の取り扱いは、日本人出国者数におけるシェアが21・3%(同1・7%増)となった。

 12年度の下期は震災の反動も一巡し、概ね前年水準で推移している。中国や韓国などとの国際情勢による下振れリスクも想定され、売上高の伸び率もやや鈍化傾向を見込むが、通期の売上高は、08年度以来となる1兆2千億円(前期比6・4%増)を上回る予想を立てている。営業利益は同39・3%増の158億円、経常利益は同41・8%増の180億円。従来予想の70億円を110億円上回る上方修正を行った。当期純利益は同139%増の80億円で、当初予想から60億円上回る見通しだ。

第38回「100選」決まる、新たに5施設入選

11月28日に行われた100選選考審査委員会
11月28日に行われた100選選考審査委員会

 旅行新聞新社・100選選考審査委員会は11月28日、東京都港区の浜松町東京會舘で「第38回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」の選考審査委員会を開き、総合100選と審査委員特別賞「日本の小宿」10施設を決定した=写真。

 「第33回プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」「第22回プロが選ぶ優良観光バス30選」などを加えた主なランキングは本紙2013年1月11・21日合併号紙面および、同1月11日に更新する旬刊「旅行新聞」HPで発表する。

 今回の総合100選では、新たに5施設が入選。表彰・発表式は来年1月18日、東京都新宿区の京王プラザホテルで開かれる。

 「第38回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」は、全国約1万6800の旅行会社(支店や営業所含む)対象に専用ハガキによる投票を募り、集計した投票結果を後援団体の日本旅行業協会(JATA)、全国旅行業協会(ANTA)の関係者、旅行作家、旅行雑誌編集者で構成される選考審査委員会で審査し、決定した。主催は旅行新聞新社で、毎年実施している。今年も10月1―31日まで投票を受け付けた。

 今回も旅行会社の皆様からのたくさんのご投票ありがとうございました。

やまなし女将の会設立、おもてなしを推進

設立総会には県内の女将が一堂に会した
設立総会には県内の女将が一堂に会した

 山梨県内の旅館・ホテルの女将たちが結束し、地域経済の活性化や観光振興をはかろうと「やまなし女将の会」(河野暢子会長・石和温泉「富士野屋夕亭」社長)を発足。11月6日に甲府市の常磐ホテルで設立総会を開いた。女将の会は県内の65施設、71人で構成される。

 山梨県は昨年12月、「おもてなしのやまなし観光振興条例」を制定。おもてなし週間を設けるなど、県内を訪れた観光客に向け感動のもてなしを提供すべく、取り組みを行っている。今回の「やまなし女将の会」は県内各地で活動していた女将会の統一組織とし、全県一丸となったもてなしの推進を強化していく。

 女将の会では今後、おもてなし向上に向けた勉強会や、ワインの講習会なども計画し、観光PR活動を行っていく予定。総会後には、おもてなしアドバイザーを務める、ザ・リッツ・カールトン前日本支社長の高野登氏による講演も行われた。

5カ国が過去最高、東南アジアの好調続く

JNTO10月訪日外客数

 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)が発表した2012年10月の訪日外客数推計値は、前年同月比14・7%増の70万6100人。10年10月と比較すると2・9%減となったが、前月から5・1ポイント改善した。10月で過去最高を更新したのは台湾、タイ、マレーシア、ベトナム、インドで、とくに東南アジアが好調だった。また、震災前との比較で、米国は12年7月以降、英国は12年4月以降のマイナスが再びプラスに転じ、豪州は震災後初めて20カ月ぶりにプラスになった。

 各市場の動向をみると、韓国は10年同月比13・2%減、11年同月比27・2%増の16万8200人と円高の緩和が見られるものの、依然として円高ウォン安の継続が訪日旅行の回復に影響した。

 中国は、10年同月比33・2%減、11年同月比33・1%減の7万1千人。尖閣諸島の影響で、団体旅行を中心に訪日旅行のキャンセルがみられた。

 台湾は、10年同月比27・0%増、11年同月比23・8%増の13万4200人と過去最高を更新した。オープンスカイによる航空座席供給量の増加が定着し、LCCの就航による需要の拡大が、訪日旅行者数を押し上げた。

 タイは、10年同月比14・0%増、11年同月比62・4%増の3万1700人と、12年4月以降7カ月連続で単月が過去最高を更新。8月にタイの国際旅行博で訪日旅行をPRしたこともあり、訪日旅行の意欲が喚起された。

 そのほかでは、香港は10年同月比10・4%増、11年同月比5・3%減の3万3600人、マレーシアは10年同月比22・4%減、11年同月比は60・5%増の1万1300人と過去最高、ベトナムは10年同月比49・1%増、11年同月比32・1%増の6300人と過去最高、インドは10年同月比1・5%増、11年同月比24・4%増の6700人と過去最高。豪州は10年同月比7・4%増、11年同月比20・8%増の1万7900人、米国は10年同月比0・9%増、11年同月比13・6%増の6万6600人。

 なお、出国日本人数は、11年同月比3・0%減の147万2千人。10年同月比で2・4%増。

No.328 中高年や若い女性に登山ブーム - 登山を安全に楽しむコツとは?

中高年や若い女性に登山ブーム
登山を安全に楽しむコツとは?

 近年は本格的な登山から気軽に参加できるハイキングまで、中高年層や若い女性の登山人口が増えている。この登山ブームと合わせて、とくに60歳以上の遭難者が5割を超えるなど、高齢層の登山における遭難事故も増加している。女性初の世界最高峰エベレスト登頂など、現在70歳を超えても世界の最高峰に挑み続ける登山家・田部井淳子さんに、登山ブームの背景や、中高年が登山を楽しむうえでの心構えやコツ、準備するもの、注意点、そして山の魅力などを聞いた。

【増田 剛】

予備日を必ず設定、地元の「いいガイド」を選ぶ

 ――現在の「登山ブーム」の背景をどのように見ていますか。

 20年ほど前に「日本百名山」ブームというものが起こりました。目標や達成感が非常に分かりやすいので、定年退職を迎えた中高年の人たちの生きがいや目標設定にぴったり一致したと思います。今も百名山ブームは続いています。日本の百名山を達成した人たちは、今度は海外にも行ってみたいと思うようになってきているのではないでしょうか。また、健康志向の高まりによって、トレッキングや軽いハイキングも幅広い年代でブームとなっています。

 

※ 詳細は本紙1486号または12月6日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

師走 ― 今年の旅を思い出そう

 はや師走である。最近、1年間を振り返ってもどのような出来事が起こったのか、あまり思い出せなくなっている。12月になって、楽しかった記憶を一つずつ思い出すのは、案外大切なことかもしれないし、何よりもまず暇つぶしになる。とりわけ旅の記憶は掘り起こしていくと、これがわりと面白い。駅前のボロい定食屋で普通の味の親子丼を食べたなとか、あのときの女の子はどうにかできなかったかなとか、そんなことだ。

 出張で、ある地方のビジネスホテルに泊まったときのこと。晩ご飯を食べに街に出て、気取っていない庶民の味方っぽい、正しい焼き鳥屋に入った。店内は賑わっていた。カウンターに1人座り、ねぎまや、黒板に書かれた今日のお薦め品の熊本産馬刺しなどを摘みながら、グレープフルーツサワーで流し込み1日の充実感に満ち溢れていた。右隣のL字型に折れた席にカップルが楽しそうに話していたのだが、次第に2人の会話の雲行きが怪しくなってきた。男が沈黙しがちになり、女は男の逃げ場を一つずつ塞ぎながら、じりじりと追い詰めていく。よくあるパターンだ。私は参鶏湯の熱いスープを飲みながら、2人の静かではあるが激しい口論を聞いていた。火の粉の降りかかる懼れのない他人の修羅場は、傍で見ている分には楽しいものである。ふと、静かになったので視線を向けると、男はいつの間にか席を立ち、女だけが一人残されていた。攻勢一方だったときの彼女は「嫌な女」だったが、ひとりぼっちになると反省しているのか、ずいぶん心細く映った。「ヘンな話聞かせてごめんなさい。せっかく1人で飲んでいたのに……」と、彼女はL字型の角度から私に話しかけてきた。「いえ、全然。よくあることですから」。意味不明な返答をしたまま2人は、それぞれのお酒を静かに飲んだ。一緒に飲みませんか?と誘うべきか、でも男が戻ってきたら面倒くさいことになるな、などと胸の中で呟きながら、私はグレープフルーツサワーを飲み続けた。こんなつまらぬ出来事も、旅先だと重要な意味を持つ。 

 さて、12月。年の終わりに旅ができるとしたら、温泉宿を7泊8日くらいで転々とする旅をしたい。大きな旅館でも、小さな宿でもいい。人好きなご主人や女将さん、仲居さんがいる宿で静かに一晩ずつ過ごすのが夢である。

(編集長・増田 剛)

「(株)おいでませ山口県」設立、初代社長は島耕作

鏡割りをする登壇者。山本知事は右から3番目
鏡割りをする登壇者。山本知事は右から3番目

 おいでませ山口観光キャンペーン推進協議会は11月9日、東京丸ビルホールで「(株)おいでませ山口県」発足発表会を開いた。

 山口県では、12月13日の岩国錦帯橋空港開港に先立って、全県で広域観光キャンペーンを実施。その一環として今回「(株)おいでませ山口県」という架空の企業を発足させることで、観光活性化を狙っている。

 初代社長には山口県出身で、抜群のビジネスセンスを誇る「島耕作」を起用。社員は山口県を応援する県民・関係者全員とし、山口県出身の松村邦洋氏や宮本和知氏が「食べちょる課長」「楽しんじょる課長」に就任した。「泊まっちょる課」では、現在課長を募集中。

 山口県の山本繁太郎知事は、「昨今、暗いニュースが多いなか、日本を明るく元気にするものの1つに旅や観光がある。山口県にも皆様に最高の感動を提供できる資源が豊富にあるが、会社設立にあたって山口県の魅力をPRしていきたい」とあいさつした。

 続いて、「島耕作」作者の弘兼憲史氏、全日本空輸(ANA)の篠辺修副社長から祝事が述べられ、山口ふるさと大使の石川佳純さんや、岡本信人さんからビデオメッセージが送られた。その後、松村氏、宮本氏、弘兼氏、山本山口県知事、福田良彦岩国市長によるトークセッション、会社設立を記念して登壇者全員が鏡割りを行った。