10月、ピンクリボン月間、乳がんテーマに温泉地でイベント

湯谷温泉の旅館を飾るピンクの風船

湯谷、指宿、武雄で開催

乳がん検診の早期受診と治療の大切さを訴える10月の「ピンクリボン月間」に、全国の温泉地でさまざまなイベントが行われた。

1日は愛知県新城市の湯谷温泉で、9軒の旅館などが中心になり「ピンクリボンの日」を初めて開催した。同温泉の旅館では乳がん手術の傷跡を気にして温泉に行けない女性のために、洗い場の仕切や脱衣所の目隠しなど工夫し、旅行が楽しめる環境づくりを進めている。

昨年7月には、同温泉女将会が乳がん経験者に優しい「ピンクリボンのお宿ネットワーク」(事務局・旅行新聞新社)にも加盟し、活動内容を全国に発信している。

この日は乳がん経験者や家族、友人などを対象に、1日湯谷温泉を無料開放。午前11時から午後4時まで無料参加の湯めぐりや人工乳房装着入浴体験、ウイッグ相談会、保険相談会、看護士によるアロマリンパドレナージ体験、美容師によるヘッドスパなど実施。平日の温泉街が約200人の女性たちでにぎわった。

各旅館では玄関や館内にピンクリボンやハート形の風船を飾り、特製のオリジナルランチも用意。乳房再建体験者を囲むお話し会も開いた。

各旅館を巡るスタンプラリーに参加した静岡県の夫婦は、「初めて温泉に来ました。とても楽しかった。また来たい」と嬉しそうに話した。

美塾篤姫フォーラム

一方、鹿児島県の指宿温泉では、指宿の素材を使い、女性の心と体の美を追求する活動を行うグループ「美塾篤姫」が10月8日、指宿市内で乳がんをテーマにフォーラムを開いた。乳がん経験者の講演やパネルディスカッションを行い、乳がんへの知識を深めるとともに、乳がん経験者に優しい温泉地・指宿の取り組みなどについて参加者と意見を交わした。

京都屋ピンクリボンの日

また、佐賀県武雄温泉の旅館・京都屋では10月15日を女性限定の貸切宿にする「ピンクリボンの日」を設定。男女の大浴場を開放し、食事会やミニコンサートを開催。3人の乳がん経験者を交えた茶話会も開き、30人が参加した。同館では6月にも2回同様の会を開いている。女将の前田明子さんは「来年は年4回開く予定です。武雄温泉全体に広がるようにしたい」と話していた。

海外ステイ147万人、国内ステイにも期待高まる(ロングステイ財団調査)

竹内理事長

ロングステイ財団(舩山龍二会長)は10月16日、「ロングステイ調査統計2013」を発表した。同財団独自の推計で、2週間以上滞在する「海外ロングステイ」の2012年人口は147万人(11年141万6千人)となった。近年のロングステイ市場は、シニアに加え、30―40代の若年層が関心を示しているほか、1週間以上の滞在か繰り返し滞在を定義としている「国内ロングステイ」への期待感が高まっているという。

同日、報道関係者を対象に開いた発表会であいさつに立った竹内征司理事長は「長年、調査を行っているとそこからさまざまなことを読み取ることができる。20年前のロングステイ先はハワイやヨーロッパが人気だったが、今は東南アジアが優勢だ。我われの宣伝効果だと思っていたが、ロングステイに関心のない一般の人への調査では20年前と変わっていない。まだまだ我われの努力不足だと私なりに解釈している」と分析した。

弓野理事・事務局長

また、弓野克彦理事・事務局長と山田美鈴主席研究員が登壇し、最新のロングステイ動向や財団の今後の展望などを語った。そのなかで、弓野理事・事務局長は「旅行産業は経済状況などに左右されやすいが、ロングステイ市場は実績をみると影響なく順調に伸びている。市場は安定感があり、ますます大きくなると考えている」と市場の成長に期待感を示した。

トレンドとしては、グローバル化を背景に若年層やファミリー層の関心度が上がったことや、アクティブシニアの増加などで「ロングステイ市場の第2次ブームが到来したといわれている」と紹介。国内ロングステイについても、長期滞在型の旅行商品の見直しの動きがあるなど期待が高まっているとした。

一方、国内ロングステイは「1泊2日の旅行が主流だったため、施設が不足している」ことが課題だという。今後は、国内長期滞在施設の調査や国内ロングステイの基準づくり、新規サービスの開発に取り組む。

将来的には、これまでの海外ロングステイと10年から調査を開始した国内ロングステイに加え、インバウンドロングステイを含めた「マルチロングステイ」を推進していく方針で、日本の国際化と地域活性化に貢献していくことを目指す。

国内ロングステイに関する調査では、人気のステイ先は4年連続で1位が沖縄、2位が北海道、3位が京都、4位が長野だった。滞在施設への希望は、海外では常識だという1部屋単位の料金や週単位・月単位の料金提示などがあがった。

道の駅、20年で1千カ所、全国年間売上げ2100億円

自治体の首長ら約800人が参加

連絡会が総会開く

全国1千を超える道の駅が連携して、その役割や質の確保、地域振興、利用者サービス向上などを目指し、昨年12月に設立した全国「道の駅」連絡会の第2回総会が10月29日、佐賀県鹿島市で開かれた。関係者や駅がある自治体の首長など約800人が参加した。

道の駅は1992年に、通過する道路使用者へのサービス拠点としてスタート。当初100程度だった駅の数も、20年経過して1014カ所(10月現在)にまで拡大している。全国年間購買客数は2億2千万人、全国年間売り上げは2100億円と大手コンビニチェーン並の売り上げを達成している。

総会であいさつに立った本田敏秋会長(岩手県遠野市長)は、「命をつなぐ道路。東北では復興復旧に向けて懸命に取り組んでもらった。道の駅が誕生して20年経過し、その必要性、位置づけをどのようにするか。地域の活性化にいかに結びつけるかだ」と今後の課題を提起。「単なる点にしては駄目だ。1千のネットワークを力にして、光り輝くプロジェクトとして前進させたい」と力強く訴えた。

来賓の国土交通省の徳山日出男道路局長は「20年が経過して、道の駅も第2ステージに入ってきた。駅も近年は農業、観光、福祉、防災、文化など地域の個性、魅力を活かしたさまざまな取り組みが進んでいる。東日本大震災でも道の駅が大きな役割を果たした」と紹介。

「今後は道の駅が目的地となるよう育てることが大事」と強調し、「地域の拠点としての機能を強化し、駅に関わる関係者のネットワークを作り、駅全体の魅力を高めることが必要」と結んだ。

さらに国と地方公共団体とのコミュニケーションを密にするため、国交省道路局内に「地方道交流倶楽部」を9月30日に設置したことも明らかにした。

総会では事業計画として、各ブロック「道の駅」連絡会事務局などの組織体制を把握し、今後の全国連絡会事務局体制のあり方を検討していく組織体制検討会を設置することなどを決めた。

役員改選では群馬県藤岡市の新井利明市長、佐賀県鹿島市の樋口久俊市長が副会長に就任。また、次期総会開催地は栃木県那須町で決定した。

総会終了後にシンポジウムも開催。都市ジャーナリストの森野美徳氏の講演、道の駅5カ所からの報告、6人のパネリストを迎えてのパネルディスカッションも行われた。

JTB代表取締役専務 日比野 健氏「ITの脅威 峠を越えた」

日比野健氏

東南アジアに210億円投資へ、日本国際観光学会開く

日本国際観光学会(会長=松園俊志・東洋大学国際地域学部国際観光学科教授)は10月26日、玉川大学キャンパス(東京都町田市)で第17回全国大会を開いた。「グローバル化とツーリズム」をテーマに、7分科会46件の発表を行った。

基調講演「ツーリズム産業のグローバル化にむけて」では、JTB代表取締役専務で、JTB総合研究所代表取締役社長の日比野健氏が登壇した。

日比野氏は、「インターネット取引が拡大するなかであっても、ネットで調べ、コールセンターで話を聞き、店頭で契約するという動きも出てきている」として、「インターネット・コールセンター・店頭の3つの結びつきを強化する『クロスチャネル戦略』が必要」との考えを示し、JTBグループではコールセンターを熊本に開設し、現在約300人が在籍していると報告した。

また、グーグルでは60%の契約がコールセンター抜きでは成立しないことや、エクスペディアでも旅行の契約が成立するまでに70%がコールセンターを一度は利用する――などの状況のなかで、日比野氏は「ITの脅威も峠を越えた」とし、「経常利益150億円ベースを今後も安定的に出していけるのではないか」と語った。

今後は「グローバル事業への投資を拡大していく」とし、投資額は2013―15年度に東南アジアを中心に最大210億円規模を予定しているという。さらに、JTBがグローバル企業へと進化していくためのビジョンとして、「アジアの経済成長を梃子にインバウンド、アウトバウンド、業務渡航、MICE、Web事業に加え、それら周辺ビジネスを展開し、グローバルレベルでの交流文化を担う企業グループを形成していく」方針で、インバウンド事業については2020年度に取扱額1千億円を目標に据える。

日比野氏は、「中期目標として、グローバル事業でJTBグループの利益の3分の1を確保できる規模を目指す」と語った。

国内を補完するインバウンド、目標は訪日客数の1%

はとバス 金子 正一郎社長

追い風で13年度も好調

はとバス(金子正一郎社長)は、2012年度(12年7月―13年6月)の東京観光の輸送人員が前年同期比30・6%増の91万2千人となり、1992年以来20年ぶりに年間90万人を突破した。さらに、13年度の7―8月の輸送人員も前年同期比13・1%増の16万3140人と、好調な業績が続いている。20年の東京オリンピック開催も決定し、東京観光のさらなる盛り上がりに期待がかかる。はとバスの金子社長に、同社の好調な要因と、今後の東京観光の展望について話を聞いた。
【伊集院 悟】

≪はとバス 金子 正一郎社長に聞く≫

 ――2012年度の東京観光の輸送人員が20年ぶりに90万人を突破しましたが、好調の要因について教えてください。

当初12年度の輸送人員目標は78万4千人だったが、前年同期比30・6%増の91万2千人と大幅に上回った。12年はスカイツリー開業や東京ゲートブリッジ開通、東京駅の駅舎復原、13年に入っても東京ディズニーリゾート30周年や歌舞伎座のこけら落しなど、東京の新名所開業や大きなイベントが重なった。観光都市としての「東京」に注目が集まり、東京観光に追い風が吹いている。

スカイツリーの展望台に上がる17コースは、12年度の取扱人員が26万4千人となり、全体の28・8%を占めた。そのほかのコースも、当初はスカイツリーコースにお客様が流れることにより、前年の6―7割くらいになるかと予想していたが、実際は8割を超えており、スカイツリーだけでなく、東京観光全体の人気が高まっていることが分かった。

 ――2013年度の状況はいかがですか。

13年度の東京観光の輸送人員目標は90万2千人。これはスカイツリーも開業初年度よりはブームが少し落ち着き、反動を考えての設定。しかし、13年度に入っても当初目標を上回る好調さを維持している。7、8月の定期観光の輸送人員は前年同期比13・1%増の16万3千人で、うち日本人客は同11・3%増の15万2千人と、好調な昨年を大きく上回っている。東京観光ではスカイツリー関連のコースが同9・7%増の4万8千人で、そのほかのコースも11・1%増の8万4千人と、依然東京観光の人気は高い。富士山周遊コースは同42・9%増で、富士山登山コースも26・7%増と、富士山人気も続いている。

 ――外国人客の動向はいかがですか。

12年度の外国人客の輸送人員は4万9千人となり、震災前の8割くらいまで戻ってきた。5月ごろからは震災前を超える勢いで、7、8月の外国人の輸送人員は前年同期比44・8%増の1万1千人。絶対数はまだまだ小さいが、東南アジアを中心に外国人客は大きく伸びている。

都内6コースと富士山2コースがある英語案内コースは同48・2%増の9千人、都内4コースと富士・箱根3コースがある中国語案内コースは同33・0%増の2千人。日本語が少しでも分かる人は、外国人向けのコースではなく、日本人向けのコースを選ぶこともある。

今は初めて日本に来た人向けの商品を作っているが、台湾、韓国、東南アジアなどはリピーター客も増えているので、今後はリピーター向けのコースも造成していきたい。

 ――12年度に90万人を突破したということで、大台の100万人も見えてきますが。

100万人は願望としては十分あるが、物理的になかなか難しい。現在のバスの車両数を前提にした場合、今の台数では平日を含めた毎日満席近くにならないと100万人には届かない。お客様の数は年間で波があるので、車両数は多すぎても少なすぎても良くない。今の車両数の130―140台くらいがちょうど良い規模だと考えている。

現在、当社が取り扱う外国人観光客は全体の1割にも満たないが、数としては、JNTO発表の訪日外客数の1%くらいには増やしたいと考えている。1千万人なら10万人。国内は人口減少が続き、将来的には確実に需要が減っていくので、それを補完する意味でもインバウンド対策は重要だ。

当社では10月にインバウンド専門の国際事業部を立ち上げた。インバウンドはバス業界でも有望なマーケットなので、国際事業部が中心となって、マーケティングや商品造成、受入体制の整備に取り組んでいく。

 ――2020年の東京オリンピック開催が決まりました。東京の注目度が上がるとともに、今後の外国人観光客増加に期待が高まりますが、東京観光の今後の展望についてお聞かせください。

「成熟した都市としての観光」がキーワードになると思う。五輪に向け新しい施設や英語標識などハード面の整備は自ずと進んでいくと思うが、一番大切なのはソフト面の充実。五輪だからといって特別なものが必要なのではない。日本人が当たり前すぎて気づいていない魅力に、外国人が惹かれることも多い。まずは魅力に気づき、それを文化や習慣が違う人にも分かりやすく触れやすいように発信していくことが大切。また、言葉が分からなくても日本人と一緒にツアーを回ろうとする外国人も増えてきて、日本人と触れ合いながら同じ体験をしたいというニーズを感じる。これからは、こうしたニーズにも応えられるメニューを考えていきたい。

 ――ありがとうございました。

旅行業法が現実と乖離、海外OTAとの競合も議論(第1回旅行産業研究会)

第1回旅行産業研究会のようす

観光庁は今秋、旅行産業研究会を立ち上げた。同研究会は、昨年観光産業政策検討会で出された提言を受けたもので、今後の旅行産業の在り方や現行諸制度の見直しの方向性、旅行業の組織的な安全マネジメントの構築などについて、議論・研究していく。9月30日に行われた第1回では論点を絞らずに幅広く問題を提起。海外OTA(オンライン・トラベル・エージェンシー)との競合、取消料や標準旅行業約款、特別補償規定、旅程保証制度などが定められている旅行業法の見直しなどについて意見が上がった。
【伊集院 悟】

  同研究会立ち上げにあたり、観光産業課が担う事務局から(1)インターネット取引の増大(2)観光振興国の台頭(3)旅行者のニーズの多様化(4)旅行に関する安全確保の必要性――の4つの論点を提示。初回は論点を絞らずに幅広く問題を提起した。

日本の旅行市場のオンライン化率は2011年で29%。素材別では、航空が販売額の43%、宿泊施設が販売額の29%と、オンライン化率が高い。航空は旅行流通サイトよりもサプライヤー直販サイトでの販売が多く、宿泊施設はサプライヤー直販サイトよりも旅行流通サイトでの販売が多い。米国では店舗を利用した旧来の運営の旅行会社はビジネス分野に特化したBTM(ビジネス・トラベル・マネジメント)モデルにすでに移行し、一般消費者向けはオンライン旅行会社がマーケットを占有している。

同研究会委員からは、海外OTAとの競合も問題提起。日本の旅行予約サイトは手配旅行の形をとる手数料ビジネスのため、利益は少ないが、海外OTAサイトは企画旅行の形態で仕入れをし、自社で値付けをするマークアップ方式なのでマージンが高い。日本での手配旅行は手数料が低く手続きが煩雑なため「現状のままでは、手配という素材流通は海外OTAが大半を担うことになるかもしれない」と危惧。

また、手配旅行では制約が多いため、募集型企画旅行として造成する場合もあるが、募集型企画旅行での販売には旅行業法で定める特別補償や旅程保証などの各種補償によりコストが上がり、料金も上がる。消費者はホテル商品単品へのニーズも高く、各種補償が結果的に消費者の利益になっているのか疑問を呈す声も挙がった。

旅行業法に関しては取消料についての意見も多く挙がった。海外では原則、取引ごとに個別に取消料について規定されるが、日本では現状、標準旅行業約款で一律に規定されており、「世界の最も高い価値のある観光素材に手が出せない」との厳しい指摘もあった。

旅行業法は、1952年に「旅行あっ旋業法」として制定され改正を繰り返してきた。店頭販売や団体旅行がメインの時代に対応した内容で、「旅行業法が現実と乖離し、現状に即していない」という意見も多数みられた。標準旅行業約款や、旅程保証制度、特別補償規定などが現状に即しているのか検証が必要で、「多様なニーズに合わせた自由な営業や、自由なツアー企画ができず、日本の旅行業界は世界のなかでガラパゴス化している」との指摘も挙がった。

また、安全面に関しても、「旅行者の自己責任が問われる場合もあるのでは」と、過度の消費者保護への懸念も出た。

米国などでみられる、空き部屋を短期間貸したい人と、旅行などで宿泊場所を借りたい人をマッチングする「空き部屋マッチング旅行サービス」へも意見が挙がったが、日本では不動産賃貸取引の範疇になることや、旅館業法との兼ね合いから、難しい現実が指摘されている。

10月30日には第2回研究会を実施。1回目の議論を受け、インターネット取引の普及や海外OTAとの競争を踏まえた旅行業制度の在り方などをテーマに議論された。詳細は次号以降で紹介予定。

合格者数は15%減、国内旅行取扱管理者試験(ANTA)

 全国旅行業協会(ANTA)はこのほど、観光庁長官試験事務代行機関として9月8日に全国9地域12会場で実施した「2013年度国内旅行業務取扱管理者試験」の合格発表を行った。受験者数は前年度比1・3%増の1万5241人で、合格者数は同15・0%減の4702人。合格率は前年より5・9ポイント減の30・9%となった。

 受験者数増加の要因は、06年から試験不合格者のうち国内旅行実務科目が合格基準に達した人を、次年度試験で同科目の受験を免除する制度を導入したことで、一部免除申請者が増加したことによる。

 区分別にみると、受験者数のうち、一般受験者数は同1・7%減の1万3578人で、一部免除者数は同34・8%増の1663人。合格者数のうち、一般受験者数は同24・9%減の3690人で、一部免除者数は同63・8%増の1012人。合格率は、一般受験者が前年より8・4ポイント減の27・2%で、一部免除者は同10・8ポイント増の60・9%。

 合格者を男女別にみると、男性が2562人で54・5%、女性が2140人で45・5%。職業別では、学生が2279人(構成比48・5%)と最も多く、次いで旅行業557人(同11・8%)、運送業218人(同4・6%)、宿泊業92人(同2・0%)、観光業80人(同1・7%)と続く。

旅館軒数4万4744軒に、前年度から1452軒の減少(13年3月末時点)

旅館営業軒数は1452軒減の4万4744軒に――。厚生労働省がこのほど発表した2012年度「衛生行政報告」によると、13年3月末現在の宿泊軒数(簡易宿泊施設、下宿含む)は8万412軒と前年度比で992軒減少した。旅館は4万4744軒で同1452軒の減少となった。10年度から11年度に710軒減少したことに比べ、減少幅は大きくなり、旅館の減少傾向は依然と歯止めはかかっていない。

1980年代に8万3226軒でピークとなった旅館軒数は、減少の一途を辿り、13年3月末時点で4万4744軒となった。

一方、ホテルは増加傾向を続けていたが、前年度から67軒減少し、9796軒となった。

前年度まで「旅館減少・ホテル増加」の構図が続いていたが、今回の調査では旅館、ホテルとも減少した。

客室数で見ると、旅館は前年度比2万471室減の74万977室、ホテルは同629室減の81万4984室となった。ホテルは客室数でもマイナスとなった。

山小屋やユースホステル、カプセルホテルなどの簡易宿所は2万5071軒と前年度より565軒増加した。下宿は801軒で38軒の減少となった。

都道府県別に見た旅館軒数は、静岡県が3090軒で最も多く、以下は(2)北海道(2559軒)(3)長野県(2525軒)(4)新潟県(2115軒)(5)三重県(1605軒)(6)福島県(1512軒)(7)栃木県(1350軒)(8)山梨県(1345軒)(9)千葉県(1262軒)(10)兵庫県(1253軒)。トップ10はすべてマイナスとなった。

一方、ホテル軒数の上位は(1)北海道(687軒)(2)東京都(684軒)(3)長野県(514軒)(4)兵庫県(410軒)(5)福岡県(378軒)(6)静岡県(374軒)(7)埼玉県(367軒)(8)沖縄県(360軒)(9)大阪府(359軒)(10)神奈川県(335軒)。

1位は北海道で、前年度1位の東京都と順位が入れ替わった。

No.356 外国人留学生と座談会 - 訪日外客増加へヒアリング

外国人留学生と座談会
訪日外客増加へヒアリング

 訪日旅行者数1000万人達成とさらなる増加に向けて、外国人観光客の受入環境整備の促進が求められている。観光庁は9月25日、的確な政策へのヒントを得るため、日本在住の外国人留学生から生の声を聞く座談会を行った。国土交通副大臣や観光庁長官をはじめ、観光庁や関係部局の幹部、観光関連団体の担当者らが、8カ国12人の外国人留学生からヒアリング。英語標識の促進や日本文化の情報発信強化などの課題、公共交通機関の高運賃や早い終電時間への苦言など、さまざまな課題が浮かび上がった。

【伊集院 悟】

地方でも英語標識を、日本文化の発信強化が必要

 2013年1―9月の訪日旅行者数の累計が前年同期比22・4%増の773万人となり、13年目標の1千万人達成へ期待が高まるなか、2020年の東京五輪開催も決定し、より一層の外国人観光客の受入環境の整備促進が求められている。

 観光庁が開いた座談会に集まった留学生は、韓国、中国、タイ、マレーシア、ベトナム、ネパール、メキシコ、エクアドルの8カ国出身の12人。鶴保庸介国土交通副大臣(当時)や久保成人観光庁長官をはじめ、観光庁や鉄道局、航空局、港湾局などの関係部局の幹部、日本政府観光局(JNTO)の松山良一理事長や、日本旅行業協会(JATA)や日本観光振興協会などの観光関連団体の担当者らが参加した。

 

※ 詳細は本紙1524号または11月15日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

旅館軒数2020年には3万5000軒? ― 減少のペース、速くなるかも

 厚生労働省が発表した2012年度衛生行政報告によると、旅館軒数は前年度から1452軒減少し、4万4744軒となった。一方のホテルは9796軒。減少を続けている旅館は、それでもホテルの約4・5倍の軒数がある。これは少し不自然な割合なのかもしれない。

 旅館軒数が毎年1500軒ずつ減ると想定すると、7年後の2020年東京オリンピックの年には3万5千軒前後になる。

 今回の統計で驚いたのは、ホテルの軒数がマイナスに転じたことだった。これまでホテルは微増ながら年々増加を続けていた。しかし、そのホテルも1万軒を目前にして、前年度比で67軒減少した。訪日外客数の伸び悩みに加え、国内旅行の低迷、旅行や出張などの日帰り化などが理由に上がるが、現状における国内旅行市場の限界がこの規模と捉えるべきなのだろう。

 楽天トラベルがこのほど発表した年末年始の海外旅行動向は前年同期比88・8%増で、「贅沢旅行」を志向する傾向が強いという。景気の上昇気分が働いてくれば、たとえ円安や燃油サーチャージの高止まりという逆風であろうとも、「海外旅行に行きたい」というムードは強くなる。これは世界共通の感覚だろうし、日本も外国人旅行者を受け入れない限り、旅行市場規模は拡大していかない。

 「お・も・て・な・し」が話題になっているが、日本のおもてなしのレベルは本当に大丈夫だろうかと思う。

 少し前のことだが、感動したことがあった。小さな地方都市のレストランに入ったときのことだ。若い接客係のお兄さんが笑顔で旅人の私を迎えてくれた。テーブルの席に着くと外が暑かったので出された水をあっという間に飲み干してしまった。ゆっくりとメニューを広げ、ワンプレート料理とアイスコーヒーを注文し、水のお代りをお願いしようと顔を上げたときに、接客係のお兄さんは私のグラスを取り上げ、待たせる間もなく、氷が並々と入った新しいグラスを持って来てくれた。普通のことかもしれない。でも、最近の料理店やレストランでは「すみません、お水を下さい」とこちらから申し出ないと(接客係が忙しい時間帯ではない)、お客のグラスの水が空っぽになっていることも気づかない店が多いのだ。だが、そのレストランは「お水を下さい」と客に言わせる前に、とても気持ちよく持って来てくれた。素晴らしいサービスとは、お客が何を欲しているのか、常に目を配らせ、客が係に告げる前に察して行動を移すことだと思う。

 畳敷きの広間が朝食の食事会場となる旅館は多い。セルフサービスで、お代りをするときには、大きな電気炊飯器まで広間の端から端までお茶碗一つ持って、移動しなければならない。若ければいいが、70、80代の高齢者にとって、畳敷きに据えられたお膳の席を立ったり座ったりするだけでも大変である。

 そのとき、お客の数と同じくらいの仲居さんが広間にいた。仲居さんはときどき席を見回っていたが、空になったお茶碗を見ても何をするでもない。見ていなかったのかもしれない。客の少ない大広間で、足を引きずりながらお茶碗一つを持って覚束なく歩く高齢者を眺めながら、セルフサービスが宿の決まりなのか、仲居さんたちはおしゃべりを続けていた。もしかしたら、旅館が減少するペースは、もう少し速くなるかもしれない。

(編集長・増田 剛)