料理長が顔を見せる ― 「厨房は裏方」という考え方は古い

 先日、会社の近くでずっと気になっていながら、入る機会を逸していた居酒屋でランチを食べた。その日の日替わり定食はカキフライと刺身定食で、値段も手ごろだったので、それにした。2階なので多くの客で混み合うということもなく、カウンターに並ぶ日本酒や酒場関連の本を読んで料理を待った。間もなく運ばれて来たカキフライは素材の良さが一口でわかるほど瑞々しく、ジューシーだった。刺身も新鮮で薄口の刺身醤油ともよく合った。でも、これだけなら10軒入れば2、3軒はあるかもしれない。「この店は美味しい」と、新たな隠れ家を開拓した気分になったのは、ごはんを食べたときだった。黒塗りの器に入れられた艶やかな米は、しばしば出会うしゃもじの平面的な跡がべっとりと残ったり、塊となったごはんとは一線を画す“強いこだわり”を感じた。

 過去、いくつかの定食屋を気に入り、何度も行きつけたのに、ある事が原因でそれ以来一度も行かなくなった店がある。ある事とは、「ごはんの炊き方がぞんざいに感じたから」だった。小学校の給食で出されたごはんの炊き方があまりにひどくで、おそらくそのトラウマからどんなに料理が美味しくても、ごはんが美味しくなければ、二度と“行けない”という習性が身についてしまった。

 私は美味しいごはんを出してくれた居酒屋を出る時に、どのようなご主人(料理人)がこんなに美味しいごはんを出すのかと、レジから見える厨房を覗いた。滅多にこのようなことはしないのだが、とくに美味しい料理を食べたときには、料理人がどんな人なのか、無性に知りたくなるのである。

 名の通ったレストランでは料理長やシェフがスポットを浴びる。旅館やホテルでも、料理長の写真とともに「料理長お薦めコース」などのプランを前面に出す宿もある。しかし、依然として旅館では「厨房は裏方」との意識は強い。

 オープンキッチンを取り入れる宿も多くなった。お客は料理人が料理する姿を見ることができる“ライブ感”を得られる。一方、料理人もお客が料理を食べたときの反応をダイレクトに見ることができるので、双方にとってメリットがある。

 女将やフロント係、客室係は宿泊客と接する機会は多いが、料理人は厨房の中だけで、お客と接する機会が少ない。自分たちが作った料理がどのようにしてお客が楽しそうに食べているか知りたいだろう。お客の姿を目にすることで、さまざまなアイデアも沸くし、モチベーションも上がるだろう。食べ残りだけを見るのは辛いものだ。

 職人気質が強く、表に出てお客と話したがらない料理人も多い。しかし、今は料理人にもコミュニケーション能力が求められる時代になった。

 仲居さんが空で覚えた料理を説明しても暗記することで精いっぱいで、刺身の三点盛りの最後の一つが思い出せず、記憶を探りながらお客に試験問題の回答をするようなシーンも見られる。メニューの説明をするのはいいが、実際に社長や料理長が仲居さんを連れて魚市場に行ったり、メニューの品を食べさせたりしない限り、あまり意味がない。であるならば、可能な限り料理長が食事処に顔を出し各テーブルに声を掛け、客からの質問に答えた方がいい。「厨房は裏方」という考え方は、もう古い。

(編集長・増田 剛)

祝日の意義を発信、ハッピーマンデー維持へ(JATA)

バナーから
バナーから

 日本旅行業協会(JATA)はこのほど、祝日三連休化(ハッピーマンデー)維持のため、本来の祝日の意義を発信する「ハッピーマンデー祝日の意義」バナーを作成し、ホームページに各祝日の解説を掲載した。会員各社にはバナーに加え、「海の日」のロゴマークをパンフレットに掲載し、一般消費者に広く理解を求めるよう呼びかけている。

 ハッピーマンデーは、国民の旅行など余暇活動を楽しむ機会を拡大し、豊かでゆとりある生活のために実現された制度。2000年に成人の日と体育の日、03年に海の日と敬老の日が設定され、年4回の3連休が創設された。観光業界にとって経済効果が大きい重要な連休である一方、本来の祝日の意義への薄れを理由に、昨年から国会議員の間で海の日を本来の7月20日に固定化する法改正への動きが出ている。こうしたことを受け、JATAは日本の祝日の本来の意義や継承されてきた伝統・文化を発信したうえで、3連休継続への理解を求めていきたい考え。当面は海の日への取り組みを強化し、各社へ夏パンフレットへのロゴ掲載を求めている。

 1月28日の定例会見で国内・訪日旅行推進部の興津泰則部長は、ハッピーマンデーは観光業界のみならず、全国約653万人の署名と47都道府県を含む849議会の意見書採択など幅広い層からの要望を背景に設けられたものだと説明。「我われにとっては、いずれも重要な連休。今後、何ができるか検討中だが、日本観光振興協会を中心に、観光産業団体全員で維持する取り組みをしていかなければならない」と語った。

ニーズをつかめ

 先日、成田空港の免税エリアで和雑貨などの伝統工芸品を訪日外国人客へ販売する「天正堂」の仲嵩和也店長の話を聞いた。同店では当初安い価格帯の「箸」や「鉄瓶」などを販売していたがあまり売れず、高額商品に変えたところ、月の売上が4倍ぐらいに跳ね上がったという。仲嵩氏は顧客ニーズの分析に力を入れていた。

 2014年の訪日外客数は前年比29%増で1340万人に達し、訪日外国人旅行消費額は同43%増で2兆円の大台を突破した。日本百貨店協会が発表する外国人観光客の売上高は、昨年10月の消費税免税制度改正後は2倍以上に膨れ上がり、インバウンドの好調さが際立つ。

 観光庁は昨年4月に「マーケティング戦略本部」を設置。15年から市場ごとの目標値を設定する方針を掲げていた。各市場ニーズを詳細に分析した戦略に期待がかかる。

【伊集院 悟】

日本の情報を訪日台湾人にPR、「樂吃購(ラーチーゴー)」

 台湾人向け日本観光情報サイト「樂吃購(ラーチーゴー)」(www.letsgojp. com)は2011年のサービス開始から4年で月間ページビュー数は120万回、ユニークユーザーは30万人を超える人気サイト。東京、大阪、京都、神戸、和歌山、奈良、東北、北海道の8エリア版を展開し、3月に九州、4月に沖縄版も新設する。サイト上では、日本全国の最新トレンドや日本の店舗で使えるクーポン、日本企業の商品紹介などさまざまな情報を掲載。同サイトは台湾人観光客を誘致したい地方自治体や百貨店、ドラッグストア、ホテル・飲食店などの広告収入で、ジーシー・メディアグループ(吉田皓一社長)が運営している。
 

強風よさらば

 今、旬の話題といえば、開業まであとひと月に迫った北陸新幹線だろうが、関連した話題として、もうひとつ、個人的に大いに期待を寄せていることがある。近畿と北陸を結ぶ特急「サンダーバード」のサービス向上の一環として実施される防風柵の整備だ。

 よく利用される方ならご存知だが、同特急が走る湖西線や北陸本線は強風による遅延などがたびたび起こる。もちろん運行会社が悪いわけではなく、琵琶湖や日本海のそばを走る列車の宿命なのだが「もう少しなんとかならないか」と常々、思っていた。

 今回の整備は、北陸新幹線との接続を考慮したもので、車両のグレードアップを含めJR西日本が順次、実施するもの。実際にどの程度、解消されるのかは分からないが、どうか今より遅延や運休が減りますように。

【塩野 俊誉】

JR各社と連携強める、訪日は個人旅行化に対応、JTB・髙橋社長

髙橋広行社長があいさつ
髙橋広行社長があいさつ

 JTB(髙橋広行社長)は1月22日、東京都内で2015年新春経営講演会を開いた。今年度は、国内はJR各支社との連携を強め、海外はチャーター・クルーズを切り口に、訪日は個人旅行化への対応にそれぞれ力を入れる。髙橋社長は新年のあいさつで「20年まではグローバル人流の拡大や東京オリンピック・パラリンピック開催など、ビジネスチャンスが到来する黄金の時間だが、何もせずに自然に輝くものではない。グループ170社2万6千人の総力で20年を輝きに変えていかなければならない」と力を込めた。

 また、取扱額2兆円、営業利益400億円を目標にした「『長期経営計画2020年ビジョン』の確実な達成」と、「21年以降も飛躍に向けて経営の道筋をしっかり立てること」を社長の使命に掲げた。「東京オリンピック・パラリンピックは将来に向けた跳躍台として位置づけ、持続できる仕組みを作る準備をする必要がある」と述べた。

 国内旅行は、3月14日の北陸新幹線開業や山陽新幹線全線開業40周年、今年度末予定の北海道新幹線開業など「鉄旅イヤー」としてJR各社と連携し、企画提案と商品展開に力を入れる。

 海外旅行は、チャーターやクルーズなど新たな切り口で海外旅行の需要喚起に取り組んでいく。また、ここ数年低迷している海外旅行を復活させるには中国・韓国マーケットの回復が必要だとした。

 訪日旅行は、訪日観光客の増加予測と個人旅行化が進んでいくことを見据え、「皆さんと一緒に対応を考えていきたい」と意気込んだ。

 講演には毎日新聞社特別編集委員の岸井成格氏を迎え、「日本の政治・経済のゆくえ」――観光立国実現に向けて――をテーマに現在話題のニュースなどをもとに日本の今後の経済の流れなどを解説した。

第1弾は京都市がPR、飯倉公館活用で地方創生

岸田文雄外務大臣
岸田文雄外務大臣

 外務省は2月3日、会談や交流会で使用している東京都港区の飯倉公館を活用した地方創生事業の第1弾として、京都市(門川大作市長)と共催のレセプションを開いた。会場には駐日特命全権大使や観光関連団体、外資系企業など約280人が参加した。

 同省では在外公館やODA(政府開発援助)を活用した自治体の海外展開支援に取り組んでおり、今年からは地方自治体の首長と共催で、在京外交団を飯倉公館に招き地方の魅力を内外に発信する地方創生支援プロジェクトを始める。

 第1弾として京都市とレセプションを開き、同市が誇る和食や風呂敷、香道をはじめとした産業・食・伝統文化などのブース出展や観光PRなどを行った。

 主催者を代表して、岸田文雄大臣は、「地方自治体は外交の重要なパートナーだ。多くの自治体に協力し、地方創生に貢献していきたい」と意気込みを語った。

 同省は2016年以降、イギリスのロンドンとアメリカのロサンゼルス、ブラジルのサンパウロで戦略的海外発信拠点として「ジャパン・ハウス」を開設する。岸田大臣は「日本の正しい姿、多様な魅力を発信していきたい」と述べた。

 京都市は現在、東京都内で「京あるきin東京2015~恋する京都ウィークス~」を開催中(3月2日まで)。2月4日には、門川市長が俳優の京本政樹さんを「京都観光 おもてなし大使」に任命するオープニングイベントが開かれた。同期間中は都内の宿泊施設や百貨店など各施設で京都に関連する展示会や講演会、物販などを行う。
          

レセプションに参加したJTB・髙橋広行社長

 「ビザ緩和や外国語表示など国でしかできないことと、ゴールデンルート以外の新たな観光ルート作りなど我われ民間が得意なことがそれぞれあるので、官民一体で魅力ある日本を目指したい」。

スカイマーク再生法開始、“第三極”こだわらない

インテグラル・佐山代表
インテグラル・佐山代表

インテグラルが支援

 スカイマークは1月28日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、2月4日に手続き開始決定を受けた。国内のLCCの台頭や、燃料費の高騰、エアバスA380の購入にともなう資金繰りの悪化などにより、自主再建は困難だと判断した。大手航空会社の経営破綻は2010年1月の日本航空(JAL)以来5年ぶりで、投資会社インテグラルから資金面などの支援を受けながらB737を中心に運航を継続し、5月下旬までに再生計画案をまとめる。人員のリストラは行わない計画だ。負債は約710億円。エアバス社からA380を巡る賠償請求は含まれていない。

 1月28日付で西久保愼一社長が退任し、有森正和取締役が新社長に就任。90億円規模の資金支援に乗り出したインテグラルの佐山展生代表は、2月5日の会見で「再生に自信がある」とし、“第三極”にこだわらず、ANAホールディングスやJALを含め、あらゆる連携の可能性を排除しない姿勢を示した。

43%増で2兆円突破、14年訪日消費額 過去最高

1576_07
 
 観光庁がこのほど発表した2014年の訪日外国人旅行消費額(速報値)によると、総額は前年比43・3%増の2兆305億円、1人当たり訪日外国人旅行消費額は同10・7%増の15万1374円と、ともに過去最高となった。

 旅行消費額の総額を国籍・地域別にみると、トップの中国が同27・5%増の5583億円と、総額の4分の1を占めるようになったほか、タイ、台湾、マレーシアなどが大幅に増加した。

 トップの中国に次いで台湾が同43・2%増の3544億円、韓国が同5・7%増の2090億円、米国が同8・3%増の1475億円、香港が同29・9%増の1370億円、タイが同71・4%増の987億円、オーストラリアが同32・3%増の690億円、英国が同25・2%増の412億円、マレーシアが同42・0%増の363億円、シンガポールが同14・2%増の355億円と続いた。対前年比の増加率でみると、中国、タイ、台湾、マレーシア、インド、オーストラリアの順に大きく、東・東南アジア市場の拡大が顕著だ。

 費目別にみると、前年第2位(構成比32・7%)だった買い物代が、前年第1位(構成比33・6%)の宿泊費を上回り、構成比35・2%の7142億円となった。次いで宿泊費が同30・0%の6093億円、飲食費が同21・2%の4307億円、交通費が同10・7%の2179億円、娯楽サービス費が同2・4%の497億円と続いた。

 訪日外国人の1人当たり旅行支出額を国籍・地域別にみると、トップがベトナムで23万7814円。同国は年間の訪日外客数も前年比47・2%増と急拡大しており、今後も成長が見込める。次いで、中国が同10・4%増の23万1753円、オーストラリアが同6・9%増の22万7827円、ロシアが同4・1%減の20万1591円、フランスが同4・5%減の19万4687円、英国が同9・1%増の18万7240円、カナダが同9・6%減の17万598円、インドが同15・8%増の16万7497円、米国が同2・9%減の16万5381円、シンガポールが同5・1%減の15万5793円と続いた。

初の700万人超え、外国人観光客が好調(14年沖縄観光客数)

 沖縄県が発表した2014年(1―12月)の観光客数は705万6200人で、前年比10・0%(64万2500人)増加し、過去最高を記録した。2年連続で過去最高を更新し、初の700万人台に突入した。

 県では好調の要因を(1)円安による国内および訪日旅行需要の増加(2)海外航空路線の拡充(3)クルーズ船の寄港回数の増加――などを挙げ、官民あげての国内外プロモーションも功を奏したと分析する。

 外国人観光客数は前年比62・2%増の89万3500人で過去最高を更新。国別では台湾が最も多く、初の30万人台となる34万4100人の入込み。韓国15万5100人、香港12万3千人、中国11万3400人と続く。中国は前年比137・2%増と大幅に伸び、尖閣諸島問題の影響から回復したとみる。

 国内客は前年比5・1%増の616万2700人。LCCの新規就航に加え、伊丹―那覇路線の増便、羽田―石垣路線の好調などが全体を押し上げた。

 内訳では、八重山の14年観光客数も過去最高となる112万1622人を記録。目標105万人を約7万人上回る好調ぶり。

 15年の見通しについて県は、2月21日からの香港―那覇の新規就航(ピーチアビエーション)やクルーズ船の寄港予定回数が昨年を上回っていること、県内最大級の複合型ショッピングモール「イオンモール沖縄ライカム」(北中城村)の4月開業などがあり、国内客・外国客とも好調に推移するとみる。