日本は前年同位の7位、アジア・大洋州で3年連続トップ、14年の国際会議数

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 国際会議協会(ICCA)がこのほど発表した2014年の国際会議開催統計によると、世界で開催された国際会議数は前年比1・5%減の1万1505件。日本での開催数は同1・5%減の337件で、昨年と同じく世界第7位となった。アジア・大洋州、中近東地域では3年連続の1位。

 世界で開催された国際会議数は昨年から180件の減少。国際会議は数年前に開催を決定するため、14年の国際会議はリーマンショック以後の世界経済不況の余波のほか、途上国での開催の減少が影響したとICCAは分析する。

 国別の国際会議開催件数をみると、1位はアメリカで831件、次いでドイツ659件、スペイン578件、イギリス543件、フランス533件、イタリア452件、日本337件、中国(香港とマカオを除く)332件、オランダ307、件ブラジル291件と続いた。

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 アジア・大洋州、中近東地域でみると、日本は3年連続の1位。次いで中国332件、オーストラリア260件(世界13位)、韓国222件(世界17位)、台湾145件(世界28位)、シンガポール142件(世界29位)、マレーシア133件(世界30位)、タイ118件(世界33位)、インド116件(世界35位)、香港98件(世界38位)と続いた。

 都市別にみると、トップはパリで214件、次いでウィーン202件、マドリッド200件、ベルリン193件、バルセロナ182件、ロンドン166件、シンガポール142件、アムステルダム133件、イスタンブール130件、プラハ118件と続いた。

 アジア・大洋州地域の都市別では、シンガポールが142件でトップ(世界7位)。次いで北京が104件で世界14位、ソウルが99件で世界第15位、香港が98件で世界16位、台北が92件で世界20位、東京が90件で世界22位、シドニーが82件で世界25位、クアラルンプールが79件で世界28位、バンコクと上海が73件で29位と続いた。

 日本の都市をみると、東京は昨年より4ランクアップの世界22位。次いで京都が47件で1ランクアップの世界54位、札幌が19件で57ランクアップの世界125位、横浜が18件で14ランクアップの世界134位、奈良が16件で41ランクアップの世界152位、沖縄が同じく16件で90ランクアップの世界152位、福岡が15件で29ランクアップの世界164位、神戸が同じく15件で28ランクダウンの世界164位、名古屋が11件で49ランクダウンの世界208位、大阪が10件で105ランクダウンの世界222位など。

台北・日勝生加賀屋にて旅館文化の今後を語る

(左から)小田禎彦相談役、葉信村総裁、賈惠安社長、小田真弓女将(台北・日勝生加賀屋にて)
(左から)小田禎彦相談役、葉信村総裁、賈惠安社長、小田真弓女将(台北・日勝生加賀屋にて)

加賀屋(石川県・和倉温泉)
相談役 小田 禎彦 氏
「観光とはその土地の文化を味わい、またその期待に応えること」小田相談役

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ABBA RESORTS 坐漁荘(静岡県・浮山温泉)
総裁 葉 信村 氏
「旅館が今後、本当の意味での国際交流の場になれば」 葉総裁

 石川県・和倉温泉「加賀屋」が台湾の台北・北投温泉で運営する「日勝生加賀屋」を4月25日、静岡県浮山温泉「ABBA RESORTS 坐漁荘」のオーナーである「CIVIL GROUP」(本社=台湾台中市)の葉信村総裁と、同社のグループ企業で、リゾートホテル事業を行う「ABBA RESORTS」の賈惠安社長が訪れた。当日は、加賀屋の小田禎彦相談役と小田真弓女将が出迎え、互いに日本と台湾で旅館経営を行う立場から、日本文化の魅力や旅館の持つ可能性、これからの展望などについて、自らの経営哲学を交えながら思いを語り、交流を深めた。会談は、本紙が台湾で4月23―26日に行った「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」プロモーションの時期に合わせ、台北に滞在していた両者に働きかけて実現した。

≪旅館の伝統を受け継ぎ、日本文化を未来へ≫

■葉総裁:私が日本に深い関心を抱くようになったきっかけは、「越後の上杉謙信公が、敵方である武田の領民に塩を売り、その生計を助けた」という話に触れたことを始まりとします。私は彼の義の心に大変感銘を受け、その言葉は胸に刻まれました。
 その後、新潟を訪れ、人間国宝の刀剣作家・天田昭次先生に出会い、日本の素晴らしい文化でもある日本刀の魅力を知る御縁を持ちました。先生は作刀の依頼を簡単には受けない方ですが、お願いしたところ、「この刀を作る意義は何か」と問われました。そこで私が「義」という言葉を伝えたところ、先生は生涯の集大成と言える「義之刀」の作刀を承諾してくださいました。先生の遺作ともなった作品です。
 坐漁荘では、新たに「義の心」という日本刀のギャラリーを設け、皆様の目に触れていただけるよう、展示をしています。本当は客室に刀をお持ちし、手に取ってじっくりと鑑賞していただきたいところなのですが。

■小田女将:お話を伺い、葉総裁は日本人以上に、もしかしたら日本の感覚をお持ちの方のように思います。私たちも日本刀に関心があり、収集の経験がありますが、管理などは大変ではないですか?

■葉総裁:そうですね。ただ、私は文化というのは、国家民族所有のものではなく、全人類の文化遺産として引き継いで行くべきものだと考えています。 
 刀の展示も、決してコレクションとして自慢をしたいわけではありません。日本で生まれたものですから、日本の坐漁荘に置いて、多くの方にその素晴らしさを再発見していただきたいのです。
 刀に限らず日本の素晴らしい文化を、旅館を通して、国内外のお客様へお伝えしていきたいと思います。できれば、お客様には3泊くらい滞在いただき、その土地の文化をゆっくりと味わっていただきたいですね。

■小田女将:坐漁荘さんは現在30部屋ということで、お客様へ目が行き届きやすいという意味では、ちょうど良い規模ですね。少しうらやましくも思います。

■葉総裁:坐漁荘の始まりはわずか4部屋だったと聞いております。加賀屋さんも初めは4部屋だったと伺い、両館は大変似ていると思いました。共通点は女将さんが素晴らしいということです。
 御縁をいただき、坐漁荘を運営しておりますが、リニューアルに際して本館に大きな手を入れなかったのは、前オーナーとともに旅館を築いて来られた、松本美代女将への敬意でもあります。
 ヤマモモなどの敷地内の樹木も、極力残すようお願いしました。この土地で坐漁荘とともに育ってきた木にも、大きな意味があると思うのです。
 改修工事は、多くの旅館建築を手掛けられる石井建築事務所へ依頼しましたが、条件として、なるべく地元の素材を使うこと、また地元の業者に工事に入っていただくことをお願いしました。
 初めは我われを「転売目的ではないか」など疑い深く見る方もいたかもしれませんが、そうではないということを一つひとつ証明してきました。

≪国際交流の場としての旅館、文化を残すためには≫

■葉総裁:私は日本の素晴らしい温泉文化を、世界の舞台に引き上げたいという希望を持っています。
 旅館では、例えば茶会や演武、和服の展示会などを行うことで、文化の交流ができればと考えています。とくに日本の若い方、外国の方に来ていただき、互いに交流してもらいたいですね。
 時に、中国大陸など、日本と政治的に緊張状態になることがありますが、文化を通じ、互いに理解が深まることを願っています。そして旅館が本当の意味での交流の場になればと思います。
 先ほどから文化と言いますが、その文化を残すための唯一の道は、ビジネスとマッチすることだと考えます。そこが合致していないと、文化は残せないと思うのです。
 刀を例に考えても、注文し買う人がいなければ、作刀家はこの世に刀を生み出すことも、後世に残すこともできません。
 台湾には古くから、「仏様もお腹が満たされていないと、人々の願い事を叶えられない」という言葉がありますが、食べていかれなければ、文化を残すことは難しい。

■小田相談役:日本と台湾という、互いに海外で旅館を持つ者同士として、素晴らしい志を聞かせていただきました。文化論へと発展しましたが、私も文化を残すためには、ビジネスと結びつけることが重要だと思います。
 話は少し変わりますが近年、金沢の兼六園を訪れる外国の方が増えています。私は先日、イスラエルの方をお見かけしました。聞けば、高山を観光してから来たとのこと。第二次大戦中、迫害を受けたユダヤ系避難民にビザを出して命を助けた、岐阜県出身の杉原千畝氏の故郷を見るためにやって来たといいます。
 また台湾の方々は、日本統治時代にダムを作った八田與一氏を、“農業の父”として銅像まで建てて、大切に思ってくださっています。故郷に目を向け、歴史の大切さを再認識する思いです。

■葉総裁:私も今回、日勝生加賀屋さんを訪問させていただき、あらためて「台湾の文化とは何か」考えるきっかけとなりました。

■小田相談役:観光の語源は、「国の光を観る」という中国の言葉に由来しています。観光とは、その土地ならではの文化や宝を味わい、またその期待に応えることだと思います。
 昔は、文化はお金にならないものと思われていました。ですが、今は文化がないと人が集まらない時代です。人やビジネスと上手に結びつけて、文化を大切に育てていくことが重要です。
 加賀屋は「館内は美術館」というコンセプトを掲げています。地域の伝統工芸である、九谷焼や輪島塗、象嵌、金箔、加賀友禅などの作品を館内に展示し、お客様のご到着から夕食までの間に、スタッフがご説明をさせていただいております。
 まだ計画段階ですが、今年9月ごろには「美術館に泊まろう」という企画もスタートする予定です。これからも文化というものをしっかりと見据えて、経営に生かしていきたいと考えています。

■葉総裁:ビジネスモデルは多様にあり、その土地に合ったものを選択することが大切です。我われも、日本では日本の文化を、台湾では台湾の文化を感じてもらえるような施設運営を心掛けています。
 例えば東京でも台北でも、同じように均一なサービスを提供するホテルにいると、私は、今自分がどこにいるのか忘れてしまうような、どこか味気なさを感じるのです。
 お客様が、世界中を渡り鳥のように飛び回っても、その地の文化を知り、味わうことができるような滞在の場を提供していきたいと思います。

≪これからの旅館の展望、宿支える「人」を育てる≫

■小田相談役:台湾に加賀屋が店を開き、4年4カ月が過ぎました。最近では、日本の旅館の方が見学に来られることも増え、「加賀屋ができたのだから、私たちもそろそろ海外へ」というムードを感じます。
 クールジャパンを掲げる政府も、中国をはじめ、旅館ビジネスは海外でも概ね成立するのではとの見方を強めているようです。今まさに旅館文化が世界に広がる時代を迎えようとしています。

■葉総裁:温泉旅館は代々、家業として引き継がれている場合が多いですが、一つの企業としてきちんとビジネスが成り立つかどうかも重要です。
 私が思う、今後、温泉旅館が直面しうる心配事が3つあります。1つ目は、資本を持ち、ビジネスとして成立するかどうか。2つ目は、人件費の問題。そして3つ目は、女将さんが持つおもてなしの心を、今後、若い人が持てるかどうかです。

■小田相談役:例えばですが、「どこにいても、ハンバーグがご馳走」と思う世代の方に、旅館文化をどのように伝えていくかという問題もあります。

■葉総裁:そうですね。ただ「こっちの方がご馳走ですよ」と、無理やりに強要することはできません。時代の変化を受け入れることも大切だと思います。
 先日、坐漁荘がテレビ局の取材を受けた際、リポーターの方に「畳の上にベッドがあるとは、少し変ですね」と言われ、私は「おかしくはないですよ」と答えました。
 実際に、高齢の方など、布団で寝起きすることが難しい方が増えている現状があります。どう時代に沿った変化ができるか、現代の生活にマッチできるか、試行錯誤を重ねているところです。

■小田相談役:当館の場合、「加賀屋に来たのだから、畳の上に布団を敷いて寝たい」というお客様からのリクエストもあります。その経験もまた、一種のエンターテイメントになりうるのです。
 旅館は突き詰めると、「飯・風呂・寝る・楽」から成ります。「楽」は楽しむという意味です。旅館ごとにスタイルは多々ありますが、お客様は何を楽しみに、何のためにいらっしゃるのかを捉えることが大事です。

■葉総裁:私は旅館業に携わり、日々学ぶことがたくさんありますが、その中で難しいと思うことの一つが、他との差別化です。
 たしかに温泉、料理、おもてなしだけでは、極端に言えば、一見どこも同じになります。先ほどおっしゃった「楽」ではありませんが、我われは他との差別化を模索するなかで、例えば、アンチエイジングや美容、医学などを組み合わせて提供することを考えています。そのためには、ターゲットとなる客層をしっかりと決めることが必要です。すべての方を対象にすることは難しく、提供できることや目標を定めつつ、取り組んでいきたいと思っています。
 また、人材の育成や人件費の問題も経営者としては悩ましく、とても大変な仕事に就いたと思っています。これらは、我われの永遠のテーマでもあります。

■小田相談役:今年3月の北陸新幹線の開業にあたり、加賀屋では、80人の新卒採用を行いました。旅館業は大変な仕事ですが、なぜ希望するのかと彼らに問うと、「日本一のサービスを学びたい」「英語や台湾語を学び、生かしていきたい」などという答えが返ってきました。
 料理であれば、道場六三郎さんや久兵衛さんにお願いし、預けることもあります。「一人一芸」ではありませんが、例えば、茶道や華道、山野草に詳しいなど、各人が何か精通するものを持てると、それもまた、おもてなしへとつながります。
 いずれにせよ、仕事を通して自分が高まり、たとえ他に移ったとしても、培った能力が発揮できる。そんな愛のある教育が必要だと思います。
 葉総裁のお話を伺い、大変崇高なものを感じております。その意志をもはや願いと表現した方がよいかもしれませんが、実現されるのは、社員の皆様一人ひとりです。葉総裁の狙いをいかに理解し、現場で形にしていくか、実行していけるかどうかが、今後重要になるのではと思います。

■葉総裁:大変な道だとは思いますが、私はよく社員に対し、「夢を持って歩いていこう」と言います。
 もはや食べるために宿をやっているのではなく、その自負は加賀屋さんも同じだと思います。働くことや、その自負も楽しみ、夢を持って進んでいきたいと思います。
 もちろん、大変なこともあるでしょう。結果がどうなるかは私自身もわかりません。ですが、皆で努力をし、その先にある夢を叶えたいと思います。また、その過程が大切だとも思うのです。

■小田相談役:話は尽きませんが、そろそろ時間が来たようです。この度は貴重なお話を伺うことができ、大変勉強になりました。

■葉総裁:こちらこそ、次回はぜひ和倉温泉の加賀屋さんを見学させていただきたいと思います。

■小田女将:お待ちしております。私たちも坐漁荘さんにお伺いさせていただきたいと思います。本日はありがとうございました。

芦之湯温泉と竹田温泉群、国民保養温泉地に指定(環境省)

(前方)北村副大臣を挟んで、左が山口箱根町長、右が首藤竹田市長
(前方)北村副大臣を挟んで、左が山口箱根町長、
右が首藤竹田市長

 環境省は5月1日、新たに芦之湯温泉(神奈川県足柄下郡箱根町)を国民保養温泉地に指定したほか、すでに指定されていた大分県竹田市の長湯温泉は、同温泉に、久住高原温泉郷、竹田・荻温泉を加えた「竹田温泉群」に拡大して指定された。これによって、全国の国民保養温泉地は92カ所となった。5月21日に開いた指定式では、北村茂男副大臣から箱根町の山口昇士町長と、竹田市の首藤勝次市長に指定状が渡された。

 国民保養温泉地は、温泉法に基づき温泉の公共的利用増進のため、温泉利用の効果が充分に期待され、健全な保養地として活用される温泉地を環境大臣が指定するもの。

 新たに指定された芦之湯温泉は、江戸時代に「箱根七湯」と称された温泉の一つ。文献では、鎌倉時代から湯治場として機能していたことが記載されており、自然や歴史遺産に囲まれた温泉地となっている。主な泉質は単純硫黄泉であり、効用としてはアトピー性皮膚炎や尋常性乾癬などがある。

 一方、竹田温泉群は日本有数の炭酸泉である長湯温泉、泉質や効能が豊富で広大なロケーションを誇る久住高原温泉郷、旧岡藩城下町や農村地域に温泉を有する竹田・荻温泉の竹田市にある3つの温泉地で形成される。主な泉質は、炭酸水素塩泉・二酸化炭素泉で、効用はきりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症などがある。

台湾で「100選」売り込む、旅館が現地旅行会社と交流(本社)

日本からの約30人が参加
日本からの約30人が参加

 旅行新聞新社は台湾で「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」事業や入選施設、日本の地域を売り込むため、4月23―26日まで、雑貨などの見本市「ギフショナリー台北」に出展した。日本からは100選入選旅館の21軒・31人が参加し、台湾の提携紙・旅奇(Travel Rich)の協力で、24日は台湾の旅行会社約30社・50人との説明会・交流会を実施した。

 また、25日はギフショナリー台北で来場者に自館をPRした。

 24日の説明会であいさつに立った旅行新聞新社の石井貞德社長は、台湾の旅行会社を前に、40年前に開始した「100選」事業を説明。「40周年を記念して台湾でのイベントを企画した。観光の面から、日本と台湾の交流を深めていきたい」と述べた。
【次号詳細】

No.402 全旅連全国大会特集、佐藤会長、北原次期会長に聞く

全旅連全国大会特集
佐藤会長、北原次期会長に聞く

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(佐藤信幸会長)の全国大会が6月3日、佐賀県佐賀市で開かれる。4期8年間の佐藤体制では、東日本大震災や耐震問題などさまざまな課題に直面し、一つずつ成果を上げてきた。今期からは北原茂樹氏が会長を引き継ぎ、耐震問題など「佐藤会長が成し遂げてこられたものを強固にしていく」と決意を語る。佐藤会長には8年間を振り返っていただき、北原次期会長には今後の抱負や、旅館業界の課題などを語ってもらった。

【聞き手=増田 剛】

 

 

佐藤信幸氏
佐藤信幸氏

一歩ずつ前進し一定の成果、佐藤信幸会長(日本の宿古窯)

 ――佐藤体制8年間を振り返って。

 全旅連活動では1995―96年度に青年部長として活動しました。03年からは、小原健史会長のときに東北ブロック会長も兼ねて2期4年間、財務担当の副会長を務めました。そして07年から4期8年間、全旅連の会長を引き受けさせていただきました。

 □NHK受信料問題

 会長に就任して最初に大きな課題に直面したのは、NHKの受信料の問題で、NHKはホームページで「受信料の事業所割引を導入する」と発表されました。事業所割引と言いながら、実際はテレビの設置台数がわかりやすい「旅館・ホテルを対象とした制度」ではないかと大きな問題になりました。これまでは施設ごとに異なっていたNHKの受信料が一律50%割引で徴収するということになり、全旅連を中心とした当時の宿泊5団体では到底受け入れ難く、英国のBBC方式(15室までは1契約、さらに5室増えるごとに1契約)ならば、ということで話し合いを進めていました。双方譲らず膠着した状況のなか、NHK側から全旅連をはじめ、宿泊5団体に「集金業務を引き受けてもらえないか」という提案がありました。

 小原体制のときに財務担当の副会長だった私は、…

北原茂樹氏
北原茂樹氏

耐震問題「この2年が勝負」、北原茂樹次期会長(旅館こうろ)

 ――全旅連会長に立候補された理由は。

 青年部の時代から約30年間、全旅連という組織に関わらせていただきました。小原健史会長の体制では、専任理事という立場でさまざまな仕事もさせていただきました。その後、常任理事として佐藤信幸会長を補佐してきました。

 佐藤体制の8年間には東日本大震災や、原発補償、耐震問題、NHK受信料問題、固定資産税減免など、天災や数々の難題に直面しましたが、佐藤会長が一生懸命対応され、大きな成果も出されてきました。佐藤会長がやり遂げて来られたものをさらに強固なものにしていくことが、私の最後のお勤めかなと思いました。

 とくに耐震問題は佐藤体制の最後に突然出てきた大きな問題で、補助金制度の交渉も現在進行中であり、各都道府県の対応も定まっていないなか、「きちっと詰めていかなければならない」という思いは強くあります。というのも、…

 

※ 詳細は本紙1585号または5月21日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

旅館業界の人手不足 ― 「人的サービス」の価値は高いもの

 旅館業界では、人手不足が深刻化している。少子化によって、今後さらに若年層の激しい奪い合いが予想されるなか、先見性のある企業や業界では、すでに10―20代の人材の大量採用を始めていると聞く。一方、旅館業界では「どうせ旅館には人が集まらない」と諦めに似た空気も流れ始めている。

 観光庁はこのような事態を真剣に捉え、大規模無料オンライン講座で「旅館経営教室」をスタートさせた。少子高齢化や過疎化など、人口収縮が著しい地方経済の活性化という観点から、現場運営の生産性向上が不可欠であり、お客様により支持される品質サービスをより効率的に提供できる業界へと導いていこうとしている。講師には、サービス工学研究の第一人者で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が務める。内藤氏は本紙でも「いい旅館にしよう!」対談シリーズや「旅館経営教室」シリーズにもご登場いただき、旅館経営者に向けてさまざまな提案をしている。

 今号1面で全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の佐藤信幸会長、北原茂樹次期会長も、人手不足の問題を旅館業の大きな課題として挙げている。

 サービス業に人が集まらない理由はたくさんある。低賃金や長時間勤務、休日が取りづらいなどのイメージがつき、慢性的な人手不足の状態にある。とりわけ旅館はその代表格でもある。サービス産業はこれからも日本の重大な産業であるにも関わらず、すでに「お客はいるのに、人手不足で対応できない」という事態も起こっている。

 これらを解消する根底として、まず現場の生産性を上げる取り組みが第一であるが、「誰にでも働きやすい」環境づくりに取り組むことも急務である。都道府県旅館組合や、観光協会が託児所などを共同出資して設立するなど環境を整備し、「働きやすい観光業界」としてのイメージアップへのPR活動も考えていかなければならない。

 サービス業界の現場は悲鳴を上げている。レストランに入っても前の客が食べ散らかしたままのテーブルや、注文しようと思ってもスタッフが少な過ぎてホールに見当たらないということも、もう慣れっこである。

 その一方で「しっかりとしたサービスを受けたい」という要望も強まっている。例えば、富裕層と言われる外国人観光客が日本を代表するような旅館を選んで宿泊する際には、値段は多少高くても日本文化の「おもてなし」を堪能したいはずだ。

 ハウステンボスが“ロボットホテル”を運営することが話題になっている。フロントにリアルな人型ロボットを配置させたり、清掃をロボットに任せる。すでにビジネスホテルでも機械でチャックイン/アウトを行う施設もあり、格安ならば「それで構わない」と感じる利用者も多い。一方、「人的なサービスがなければ味気ない」と感じる宿泊客もいる。ならば、オプションで「人的なサービス」を提供するシステムやプランを提供することも一案である。

 介護サービス業界と同様に、人手不足が深刻な旅館業界は、ロボットで代用できるサービスはロボット化し、「人的サービスがいかに価値の高いものか」をもっと知らしめることも必要だ。北原次期会長は「全旅連が大学の工学部と連携してサービスのロボット化の研究も」と話されていたが、面白い試みだと思う。

(編集長・増田 剛)

15年春の叙勲・褒章、今井氏、中原氏が双光章

今井明男氏
今井明男氏

 政府は4月29日付で2015年度春の叙勲および褒章受章者を発表した。本紙関連では、旭日双光章に元東京都ホテル旅館生活衛生同業組合理事長の今井明男氏、日本旅館協会副会長の中原國男氏が受章。黄綬褒章に観月苑会長の作田和昌氏、川口屋城崎リバーサイドホテル取締役大女将の垣谷文子氏が受章した。

 本紙関連の勲章、褒章受章者は次の各氏。

 【勲章】旭日双光章 中原國男(ホテル中原別荘代表取締役社長)=日本旅館協会副会長 観光事業振興功労▽旭日双光章 今井明男(ホテル柳橋代表取締役社長)=元東京都ホテル旅館生活衛生同業組合理事長・元全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会副会長 生活衛生功労

中原國男氏
中原國男氏

 【褒章】黄綬褒章 垣谷文子(川口屋城崎リバーサイドホテル取締役大女将) 業務精励(旅館業務)▽黄綬褒章 作田和昌(観月苑代表取締役会長)=日本旅館協会北海道支部連合会理事 業務精励(旅館業)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

週休6日の郵便局

 熊本県の「赤崎水曜日郵便局」は、1週間のうち水曜日だけ営業している。といっても実在の郵便窓口ではなく、手紙を題材にした芸術活動の名称だ。

 閉校になった小学校に郵便受けを設置。そこに全国からさまざまな「水曜日の出来事」を手紙にして送ってもらい、局員(スタッフ)が無作為に交換して送り返している。手紙の送り主に、知らない誰かの物語がつづられた手紙が届く仕組みだ。「灯台のようにいざないの光を放ちながら静かに人と人をつなぎ続ける空虚な中心」。そんな概念を掲げた活動は、昨年グッドデザイン賞も受賞した。

 ホームページは週に1度だけ閲覧できるように情報を発信。住民も参加し、廃校は新たな活動の場に。各地の参考になる点がいくつかあるように思う。

【鈴木 克範】

太田大臣に要望書、第3滑走路の早期実現を、成田周辺地域

16万人の署名と要望書を提出
16万人の署名と要望書を提出

 成田空港の周辺地域14団体で構成する「成田第3滑走路実現する会」(会長=池内富男・成田商工会議所会頭)は4月27日、国土交通省の太田昭宏大臣に「成田国際空港第3滑走路実現に係わる署名簿・要望書」を提出した。自民党成田国際空港推進議員連盟の二階俊博会長らが立ち会うなか、地域住民など16万6116人の署名を持参し、第3滑走路の早期実現を訴えた。

 提出後に報道陣の前に立った池内会長は、「今回の署名は以前、反対派や中間派だった人を一軒一軒まわり集めた。重い一票一票で、成田を新しいものに変えていきたいという熱意の表れ」と語り、要望書内でも「地元住民および千葉県民および意のある方々の『真摯な思い』」と強調した。

 第3滑走路を要望した理由については「国土交通省は、首都圏空港の国際線は上限3%の需要で2022年にパンクすると予測しているが、外国人観光客の急増などでもっと早くなるのではないかと考えている」とコメント。2020年までに周辺アジア諸国の仁川や香港、ジャカルタ、上海などの空港が発着枠拡大を計画していることにも触れ、「対抗するためには羽田と成田の両空港が拡大しなければならない」と語った。太田大臣の反応については「成田空港の機能充実は重要だというニュアンスの言葉をいただいた」と紹介した。

地域ガイド案を討議、導入については賛成多数、通訳案内士制度

検討会のようす
検討会のようす

 観光庁は4月22日、通訳案内士制度のあり方に関する検討会(第8回)を開き、新たに導入を検討している地域ガイドについて、旅行業界団体や旅行会社の有識者らが討議した。導入については賛成意見が多数。

 地域主体でガイドの養成・確保を目指す地域ガイドの導入案について、和歌山県商工観光労働部観光局観光交流課長の櫻井紀彦氏は、「現行の特例ガイドの研修だけでは語学力や知識が不十分で、旅行業界や団体と連携して解決する必要がある」と述べ、国と地域でガイドを2分化しても、一体となって考えなければいけない面もあると主張した。和歌山県は全国で初めて特例のガイドを育成し、世界遺産の熊野古道を中心にガイド体制を整備している。

 通訳案内士を活用した旅行サービスを展開するトラベリエンス社長の橋本直明氏は、「コスト負担に耐えられずに特例ガイド制度を辞めた自治体もある。地域ガイドではどのように解決するか」と課題を挙げた。観光庁側は「コストは地域である程度飲み込んでいただきたい。費用も時間もかかるものと考えている」と回答した。

 全日本通訳案内士連盟の黒崎豊子氏は、「地域ガイドと通訳案内士をひとまとめにすると、外国人に混乱を招く恐れがある」と名称や立場を統合することの危険性を訴えた。観光庁側は「地域ガイドは資格区域内では通訳案内士と同じだが、違いが分かるようにしなければいけない」と方向性を示した。

 日本旅行業協会(JATA)国内・訪日旅行推進部部長の興津泰則氏は、「新制度化に目が向きがちだが、通訳案内士の存在は大変重要。現状で全国を通して案内できるのは案内士資格保持者しかいない。しかし、資格保持者は時代のニーズに対応し、スキルアップをはかれているだろうか。案内士のスキルアップや活用についても考えるべき」と強調し、そのうえで地域ガイドとの相乗効果が生まれる制度構築や、活用をするよう求めた。