JATA、海外旅行の数値目標国へ求める 双方向交流で観光大国へ

2018年3月30日(金) 配信

生田亨JATA海外旅行推進委員会副委員長(JTBワールドバケーションズ社長)

日本旅行業協会(JATA)は3月16日(金)、観光庁に海外旅行の政策提言「ツーウェイツーリズムによる交流大国の実現に向けて~双方向交流9000万人時代を見据えて~」を提出。訪日旅行が順調に数字を伸ばすなか、先進国としては、双方向の交流を拡大して観光大国を目指すべきだと主張した。3月30日(金)に開いた会見で、JATA海外旅行推進委員会の生田亨副委員長は「訪日一辺倒ではなく、海外旅行の数値も政府目標に組み込んでほしいという強い気持ちを込めた」と言及。2020年に日本人の海外旅行者数2千万人、30年に同3千万人という数値目標を示した。

 海外旅行に関する提言を提出するのは15年以来となる。19年から導入される国際観光旅客税の4割は海外旅行をする日本人が負担することを踏まえ、「日本人旅行者の利益のためにも今後の観光政策に反映されるよう、今回提言を行った」と述べた。項目によっては予算要望も組み込み、新税の使途などを提案。「成果を求めたい」と意気込んだ。

 今回は①政府推進課題の解決へ向けての提言②双方向交流の促進③安心・安全④価値創造産業への進化に向けた旅行産業の高度化⑤若者の国際化支援――の5つのテーマのもと、10項目を挙げた。生田副委員長は「地域と若者」が大きなキーワードとし、海外旅行者の増加には地方からの出国数と若者の旅行者の増加が不可欠だとした。

〈旬刊旅行新聞4月1日号コラム〉少しずつ手を入れる“味わい” 愛情を受けたモノには輝きが備わる

2018年3月30日(金) 配信

大事なモノに手を入れる工具にもこだわりたい

 最近気になっているのが、ドイツの総合工具メーカー「スタビレー」だ。このスタビレー社のコンビネーションレンチセットが欲しくて、色々と調べている。頑丈であるのに、軽く、ネジを閉めたり、緩めたりする際の支点の位置も作業しやすいように深く考えられている――といった評価もある。

 オートバイに乗るとき、私はいつも鞄の中に必要最小限の工具を入れている。スパナやレンチ、ドライバー、黒いビニールテープなどである。メンテナンスの時にも、これら工具を使用する。だが、そのほとんどが日曜大工の店で、安く買いそろえた工具なので、堅く締まったボルトやナットを緩めるときに、ネジ山をなめてしまうことが多々あった。また、無理な角度から回すために、オートバイや自分の手を傷つけてしまうことも少なくなかった。

 ある日、クルマを整備に出したときに、ピットクルーのスタッフが「クルマのワイパー部分にこれが置いてありましたけど、お客様のものですか?」と1本のめがねレンチを差し出してきた。長年、風雨にさらされていたためか、錆だらけになっていたが、手にするとずっしりと重くしっかりとした造りのものだった。

 「いや、心当たりはないですが……」と私が応えると、「では、処分しときますね」とクルーは踵を返した。

 「あ、ちょっと待ってください。処分するのだったら、ください」と私は言った。再び、その錆だらけのめがねレンチを手にすると、その錆びた体の端々から鈍い輝きがあった。握った感触はただものではなかった。長年プロである整備士の手のひらに握られ、数々のクルマのボルトと格闘してきた歴戦の残影が伝わってきた。自分がいつも持ち歩いている工具は、いわば「素人集団」であることがすぐにわかった。

 私は、なんだかうれしくなり、家に帰ると早速オートバイを出して、幾つかのボルトを緩めてみた。やはり、想像していた通り、オートバイや自分の手を傷つけることなく、滑らかにボルトは回転していった。

 今では、私の鞄の中でこの錆びためがねレンチが常に同行している。そして、それ以来〝しっかりとした〟工具セットを欲するようになったのである。

 工具でオートバイをメンテナンスするのは楽しい。構造が少しずつ理解できてくるし、大事にしようという気持ちや愛着も湧いてくる。空冷エンジンでキャブレター車なので、コンピューター制御に依らない単純な構造なのも気に入っている。

 現在のクルマやオートバイはハイテク化し過ぎていて、一部分が壊れてしまうと、総取り換えしなくてはならない構造になりつつある。便利になるのはいいのだが、〝味わい〟が薄らぐ気がする。

 建築物もそうである。古くても少しずつ手を入れて、大事に使われているレトロな建物には、深い味わいがあり、温かみを感じさせる。山の秘湯宿などに行くと、古い木造建築に出会うことがある。最新の機能を備えた空間で働く都市生活者には不便を感じることもあるかもしれない。しかし、それら人々も時を重ねた建物が醸しだす空気に引き寄せられるものである。長い時間、人の愛情を受け続けた〝モノ〟にも、輝きが備わるのだと、感じる機会が増えてきた。

(編集長・増田 剛)

新理事長に清野智氏 (日本政府観光局・JNTO)

2018年3月30日(金) 配信

2016年に、台湾でのPRイベントに出席した清野新理事長(トラベルリッチ・旅奇週刊=提供)

 清野智氏が、日本政府観光局(JNTO)の新理事長に就任することが分かった。任期は、4月1日からの5年間。現理事長の松山良一氏は退任する。

 新理事長に就任する清野氏は1947年生まれ。宮城県出身で、東北大学法学部卒業後、70年に日本国有鉄道に入社。仙台鉄道管理局総務部長や東日本旅客鉄道(JR東日本)東北地域本社(現・仙台支社)総務部長、財務部長、人事部長などを経て2006年にJR東日本社長に就任した。15年から東北観光推進機構会長も務めている。

 退任する松山氏は3月23日(金)のイベントで、本紙の取材に応じ「今後は、富裕層の取り込みが一層重要となる。富裕層間でも趣味嗜好は異なるため、多様なニーズに応えなければ来訪を促すことは難しい」と語り、ベストマッチングを実現するための仕組みづくりが課題との考えを示していた。2011年10月に日本政府観光局(JNTO)理事長に就任。在任中には、地域プロモーション連携室を立ち上げるなど、地方に拠点を持たないJNTOの課題克服に努めた。

〈観光最前線〉昼の青、夜の青

2018年3月30日(金) 配信

国営ひたち海浜公園のネモフィラ

 「いつも訪れている」「いつかは見たい」――春に見られる「青」の絶景を2つほど。

 昼の部代表は、茨城県・国営ひたち海浜公園。例年5月連休にネモフィラが見ごろを迎える。丘一面が青に染まり、空や海のブルーと溶け合う様は、息をのむほど美しい。斜面を見上げるように花を撮ると、スマホの画面はパンフレット写真そのもの。毎年来て、毎回夢中になっている。カメラを置いた時に感じる、海風の心地よさも格別だ。

 夜の部は、富山湾押しで。3―5月の「新月」前後、ホタルイカが海岸沿いに打ち上げられ、青い光が延々と続くことがある。「ホタルイカの身投げ」という、美しくも儚い名で呼ばれる現象だ。今年は5月15日が最後の機会とか。ただ波が穏やかなどの条件も。「いつか」見てみたい春の絶景だ。

【鈴木 克範】

システムで課題解決 宿の直販力をサポート(ダイナテック)

2018年3月30日(金) 配信

齋藤克也社長

 宿泊施設に対し、直販サイトの予約システムの提供を行う業界大手のダイナテック(齋藤克也社長)は3月22日、東京都内でカンファレンス2018を開いた。「個を強くし、システムによって施設の課題を解決していく」と語った齋藤社長。今夏には主力商品である予約システム「Direct In(ダイレクトイン)」を刷新する。ウェブサイトのレスポンシブル対応(スマートフォン端末対応)やプラン詳細の改善など、利用施設の声に応えたリニューアルを行う予定だ。

 同社サービスの目的は、宿泊施設の自社サイトからの成約率向上と非常にシンプル。個々の宿の直販力をサポートすることで、OTA(オンライン旅行会社)との差別化を実現してきた。現在、導入施設は3千(ダイレクトイン)を超え、業界トップの実績を持つ。トラベルコとも連携を果たした。

 30年以上、システム開発に従事してきた同社。時代の要請を受け昨年、システム開発・提供企業からトータルソリューションプロバイダーへの転換をはかると発表した。納品して終わりではなく、成約率向上をともに実現するパートナーという立ち位置を模索する。SMS(ショートメッセージサービス)を介した決済サービス「Paidy」を提供するエクスチェンジコーポレーションとの連携も発表。直販サイトの可能性を広げている。

 同社は2015年、ヤフー(Yahoo!Japan)傘下に。連携サービス(D-RISE)を利用することで、OTA(Yahoo!トラベル)のサイト上でも宿泊プランを掲載できるようになった。3月13日には、メタサーチ大手のトラベルコとの提携を発表。宿泊施設の自社サイトで販売する宿泊プランと、旅行会社によるそれとの比較検討を実現した。

 「AI(人工知能)によるデータ解析など、ヤフーグループの持つビッグデータの活用も視野に取り組みを進めていく」と語ったのは、同社執行役員の入本泰光CTO。温度管理の見回りや、チェックイン・アウト時の手間を省くIoT(モノのインターネット)の活用などにより、今後はPMSのさらなる進化を実現することで、サポート力をさらに強化していく構えだ。

 なお、ダイレクトインといった同社サービスを利用し、直販で高い成果を出した施設を表彰する「Direct Sales Award」の表彰式も行われた。

あおき会が感謝の集い 今後も業界の発展に尽力(房総予約センター)

2018年3月30日(金) 配信

房総予約センターの青木一代表

 房総予約センターの協力会・あおき会(小林庄一会長)がこのほど、京成ホテルミラマーレ(千葉県)で40周年感謝の集いを行った。青木一代表が率いる房総予約センターと京葉リザーブセンター、ノービルの会員宿や送客を担う旅行会社ら関係者230人が集まり、節目を祝った。

 冒頭、青木氏は「先代から、会員の皆様に支えられてきた。これからも一丸となって貢献していきたい」とあいさつ。今後も、観光業界の発展に尽力すると強調した。

あおき会の小林庄一会長

 昨年、40万人の送客実績を誇る房総予約センター。あおき会の小林庄一会長は、その労をねぎらうとともに、「オンライン予約が主流となるなか、親身になって相談に乗ってくれる案内所として、ますます活躍することを期待している」と激励した。

 近年は、ビッグデータの解析やインバウンドの取り込みにも力を入れるなど、時代に適した案内所像をつくりあげてきた房総予約センター。業界を牽引する仕組みづくりにも余念がない。

 当日は、送客実績トップ5の旅行会社も発表された。次の通り。

 1位日東交通▽2位銀座プラネットサービス▽3位京成トラベルサービス千葉支店▽4位小湊鐵道▽5位タビックスジャパン成田支店

【訪日外客数・推計値 】主要・新興市場ともに過去最高

2018年3月30日(金) 配信

 日本政府観光局(JNTO)によると、2018年2月の訪日外客数は250万9千人で、前年同月比23・3%の増加となった。昨年、1月にずれ込んだ旧正月(春節)休暇が2月となったことで、主要市場の集まる東アジアからの来客数が大きく伸びた。各市場で過去最高を記録している。

 中国はビザ緩和によるFIT客の増加により、同40%の増加。香港と台湾、韓国も好調だった。新興市場では、シンガポールとマレーシア、英国の伸び率がとくに顕著。それぞれ同25―33%の増加となった。華人の多いシンガポールでも春節が追い風に、昨年8月に行われた「シンガポール旅行博(NATAS Holidays 2017)」でのプロモーションも功を奏した。マレーシアでは航空会社と連携した特別運賃キャンペーンが需要喚起につながった。デスティネーションとしての認知度が、英国では高まっている。

オンリーワンサミット開催へ 認定先の連携深める(NPOふるさとオンリーワンのまち)

2018年3月30日(金) 配信

3月23日に開かれた総会

 NPO法人ふるさとオンリーワンのまち(津田令子理事長)は3月23日、2018年度総会を東京都内で開いた。これまで10件の「ふるさとオンリーワンのまち」を認定。今年度は認定先の連携を深めるため、「オンリーワンサミット」の開催を目指す。

 津田理事長は「独特の風土や伝統文化、産物、無形のおもてなしなど、地域のユニークな観光資源を発掘、発見するふるさとオンリーワンのまち認定先は10件となり、活動は活発化している。今年度も2件の認定を予定している」と語った。

 17年度は認定先の嬬恋村(群馬県)や飯島町(長野県)、御前崎市(静岡県)のお祭りにもブースを出展。認定先地域商品の相互販売などにより、交流を深めた。今年度は認定先のさらなるブランド化と、活性化に向けて事業を進める。

ホスピタリティの質を統一 案内所向けシステムを無償提供(トラベリエンス)

2018年3月30日(金) 配信

 現在、日本政府観光局(JNTO)が認定する外国人観光案内所は、全国に909施設。2012年に制度がスタートして以来、急速に数を伸ばしてきた。今回は、外国人観光案内所らをネットワークし、受入体制の充実を目指す無料のウェブサービス〝planetyze touch〟(プラネタイズタッチ)に注目した。
【謝 谷楓】

低コストで最大限の効果

 2月にサービスの提供が始まった“プラネタイズタッチ”。インバウンド対応に従事する外国人観光案内所や宿泊施設向けのウェブサービスで、問い合わせへの多言語対応と観光ガイド機能を併せ持つ。タブレットやスマートフォン、パソコンなどあらゆる端末に対応し、設備投資は必要ない。施設はあらかじめ翻訳した回答を入力し、来訪者は端末画面を介し必要情報を入手できる仕組みとなっている。フローをまとめた動画を再生することも可能。シンプルな操作性で、回答入力や動画のアップロードは、ブログの更新と同等の容易さだ。

 例えば、地域の観光スポット・飲食店情報や施設内でのWi―Fi利用に関する質問を想定し、多言語で回答を入力しておけば、逐次口頭での回答は不要となる。昨今、英語や中国語などが堪能なスタッフが1人はいるものの、常時配備することは難しいという案内所・施設も少なくない。“プラネタイズタッチ”を導入し事前に回答を入力すれば、対応可能なスタッフが不在時でも来訪者は母国語で情報にアクセスできるようになる。施設にとっては、今ある資産を活用できるため、インバウンド対応に掛かるコストを最小限に抑えつつ、受入体制のさらなる充実を期待できる。

サービスを無償で提供

 「自社で運営するホステルでは3人の外国人スタッフがいるのですが、英語以外に対応可能な言語は各々異なります。ユーザーの話す言語によっては、内容は容易なのに答えられないことも多々ありました」と、提供元であるトラベリエンスの橋本直明社長が開発の経緯について説明してくれた。新たな通訳案内士制度のあり方に関する検討会(観光庁)委員を務め、訪日外国人と通訳案内士のマッチングプラットフォーム(トリプルライツ)の運営も行う。東京・浅草橋で営むホステル(プラネタイズホステル、104人収容)での経験をもとに、“プラネタイズタッチ”の仕組みを考案したという。

 「ホステルということもあり、長期滞在する傾向にある欧米からのバックパッカーの利用が多いですね。渡航前に、1週間の予定をすべて決定する方は少数です。目的地を当日の朝に決めるということも珍しいことではありません。“プラネタイズタッチ”では、観光スポット情報の提供も併せて行っていますので、人気な目的地へのアクセス方法を翻訳した回答を入力しておけば、目的地の選定をサポートする電子ガイドブックとしても活用できます」。

 “プラネタイズタッチ”の無償提供は、外国人観光案内所やローカル地域の宿泊施設をネットワークするためでもある。案内所らの横のつながりを強化することで、都市からローカル、地方の中心部から点在する観光スポットへの送客を伸ばすことも可能だと考えるからだ。

 「“プラネタイズタッチ”の普及が進めば、ホステルという宿泊の場は、地域や観光スポットへの送客を実現する役割を担うこととなります。価格帯で競合する民泊施設との差別化にもつながります。外国人観光案内所でも同様の効果を期待できます。作成された多言語による回答は、導入施設間でシェアされますから、高度な語学力がなくとも、送客対応を充実させることが可能なのです」。

 同社では、オウンドメディア(プラネタイズ)を運営しており、地域の観光コンテンツを紹介する映像制作などにも携わっている。“プラネタイズタッチ”の普及は、導入施設の受入体制をレベルアップさせると同時に、自社メディアの価値を高めることにも寄与する。双方にとってプラスとなるよう工夫を施すことで、無償提供を実現した。

 「各外国人観光案内所の課題と予算事情を踏まえたうえで、無償提供できる仕組みを構築するべきだと考えました。“プラネタイズタッチ”の利用が普及すれば、自社のオウンドメディアへのアクセス増も期待できます。映像コンテンツの制作は有償で行っていますから、普及はコンテンツ制作の依頼増につながるとみています」(橋本氏)。

認定区分間の差を縮める

 現在、日本政府観光局(JNTO)が認定する外国人観光案内所は、全国に909施設(12年から認定開始)ある。パートナー施設を除き、認定区分は3種類、同社が運営するホステルも“少なくとも英語で対応可能なスタッフが常駐。広域の案内を提供”するカテゴリー2に位置する。最上位にランクするカテゴリー3の案内所は49件と全体の5%ほど、5割以上をカテゴリー1(英語対応可のスタッフの常駐が必須でない)の施設が占める。宿泊施設のほか、空港や道の駅が運営主体となる例が多い。

 「多言語対応と一対一のコミュニケーションを取ることのできる外国人観光案内所の存在は、インバウンドにとって頼もしく、旅後の口コミ効果やリピーター増につながる可能性も高いはずです。一方、多言語対応に潤沢な予算があるという案内所はほんの一部に過ぎません。カテゴリー2に認定された当社のホステルとて同じです。少ない予算で最大の効果を発揮するためにも、一つひとつの案内所をネットワークする“プラネタイズタッチ”の仕組みは大変有効だと考えています」。

 カテゴリー3の認定を獲得するためには常時、英語以外の言語対応も求められるなどハードルは高め。案内所の業務自体が無償奉仕となるため、運営主体に予算配分を期待することは困難だ。

 “プラネタイズタッチ”は、提供元である同社のビジネスモデルを補完する役割も担うことで無償提供を可能とし、各案内所・施設の懐事情にマッチする仕組みを実現した。外国人観光案内所は、インバウンドの受入体制の質向上を果たすためには欠かせない存在であるだけに、個々をネットワークする基盤づくりは、ローカル地域にとっても心強い取り組みである。今後、新たに案内所の設置を検討する地域や施設にとっても、安心材料となるはずだ。

 2月には、300ほどの外国人観光案内所が集うセミナー(JNTO主催)でも紹介された。全国レベルで観光情報の集約も期待できるため、導入と回答内容のシェアが進めば、認定区分間でのサービスレベルの差も縮まるかもしれない。

 

【特集 No.488】エコ・小活動を全国に 少しの工夫で大きなコスト削減

2018年3月30日(金) 配信

 「国際観光振興に技術で貢献する」を理念に掲げる国際観光施設協会(鈴木裕会長)は、協会活動の柱として「エコ・小活動」を推進している。宿泊施設が大きな投資をせずに、水光熱使用量のムダを省き、小さな工夫で収入増につなげる取り組みだ。節電や節水を意識し、宿にあわせた設備運用を行うことで、大きな成果に結びつける。活動を牽引するエコ小委員会の佐々山茂委員長と小川正晃副委員長に話を聞いた。
【後藤 文昭】

 エコ・小活動は、「エコロジーの考えから、人間と自然が共生するために、小さなエネルギーで施設を運営し、利益を増やすとともに、環境も美しくする」運動。

 同協会の中核事業を担うエコ・小委員会の佐々山委員長は、「この考え方を実現するためには、ランニングコスト(運転費)の削減が有効だ」と話す。「経営者が水光熱のムダ遣いに気がついていない場合いが多い。まずは水光熱使用量の見直しが必要だ」。

 多くの旅館は団体旅行を想定して設計されているため、個人旅行中心の今の旅行形態では館内設備を効率的に運用できず、必然的に水光熱使用量が増えている。

 このためエコ・小委員会では、旅館の相談を受ける際は、必ず年間水光熱使用量の提出を求めることから始める。

 佐々山委員長は「大きな投資をしなくても、工夫次第で水光熱費用の削減はできる。宿にあわせた施設運用をするために、まずは、館内設備を把握するべき」と強調する。とくに「調理場」と「大浴場」には多くのムダがあり、少しの工夫で大きなコスト削減を達成できるという。

 また、水光熱使用量のムダを見直す過程で、作業のムダも省け、余剰人材を人手が足りないところにまわすことも可能になる。「エコ・小活動が、生産性の向上にもつながる」(佐々山委員長)としている。

水光熱費、1200円以上で削減に期待

 委員会は、宿泊客1人当たりの水光熱費900円を数値目標としている。実現目安は、1人当たり水600リットル、油2・5リットル、温泉500リットル、電気22・0キロワットアワー、ガス0・3立方メートルとしている。

 調査した60軒の宿で900円以下に抑えられていた宿はわずか17%。1300円が全体の平均値であるが、「1200円以上の場合は大きな削減効果が期待できる」(同)と語る。…

 

※詳細は本紙1708号または4月4日以降日経テレコン21でお読みいただけます。