「旅館コンサルタント大坪敬史の繁盛旅館への道(50)」外国人観光客に対するマナー啓発

2019年5月11日(土) 配信

マナーの事前周知を

 日本全国で、外国人観光客が多く訪れている地域では、多かれ少なかれ旅館の館内でもトラブルが起こっていると思います。

 当社クライアント旅館で、日本人の宿泊客のアンケートをみると①外国人が使い捨てのパンツを、洗面所内のごみ箱にそのままポイ捨てしている。 
 ②朝の混雑時間帯に、4―5人のアジア系観光客が大胆にシャワーを使っていて、入るすき間がなかった。間で利用していると、シャワーが強く当たってきた。シャワーはすべて出したまま大きな声で入り、ゆっくりできず残念だった。
 ③不満があるとしたら、外国人観光客のマナーの悪さです。それ以外は大満足で、次回も利用したい。
 ④全館禁煙だから予約したが、チェックイン時、玄関の外でアジア系の人たちが煙草を吸っていて気分が悪くなったし、一瞬恐怖感を覚えた。

 アンケート内容を改めてみると、これは本当に旅館の責任だろうか、と思うようなことで、お客様からお叱りを受けています。

 さらに、そういう場面に遭遇したお客様の多くが、外国人観光客に直接注意せず、多くが「おたくの旅館はどう指導しているんだ」と、旅館に直接お叱りを言われるそうです。

 ただ、「お叱り」の言葉と行動で発散しているお客様は良いのですが、大半は不満を出さずに、「もうこの旅館には行かない」と決めておられるお客様が多いと思います。

 この旅館も、こうした問題にならないよう対策はしています。例えば、大浴場に多言語表記の「お風呂の入り方」ポスターの掲示や、スマホ撮影ダメなどのピクトグラム、部屋には注意事項をまとめた「日本の旅館の楽しみ方」などのツールは置いています。

 そういったツールやネットなどで日本の旅館について事前学習する外国人観光客もいます。そんな方は説明しなくとも、マナーを守って滞在を楽しんでいます。
 一方で、マナーを一切気にしない外国人観光客に、掲示物や部屋の案内を見てもらうよう話しても難しい。

 ある旅館では、外国人観光客「全員」のチェックイン時に、それぞれの国の言語で書いた「注意事項」を配るようにしました。

 今までは「言ったでしょ」と話しても「聞いていない」と逃げられていたので、チェックイン時に渡して読んでもらえば、説得力があります。

 さらに、日本人のお客様にも、「対策としてこのようなツールをチェックイン時にお渡ししています」と旅館側が説明して、ご理解いただくのも目的のひとつです。

 外国人観光客すべてのマナーが悪いわけではありません。ただ、文化の違う人たちの行動は少しの「違い」が大きく見え、不満につながり、旅館の現場で、こういう問題が起こってしまう。

 急増する外国人観光客と「旅館」で一時的にでも時間を共有するなら、互いに気持ち良く過ごすような仕掛けを旅館側で用意しなければなりません。

コラムニスト紹介

大坪敬史氏

旅館コンサルタント 大坪 敬史 氏

大手旅行会社での実務業務を経て船井総合研究所入社。インターネットを駆使したWeb販促&直販売上倍増&即時業績向上ノウハウには定評があり、数多くの宿泊産業の業績向上に貢献。観光文化研究所を設立し代表取締役。

「観光革命」地球規模の構造的変化(210) 統一地方選と地域の未来

2019年5月11日(土) 配信

※画像はイメージ

 4年ごとの全国統一地方選が終わった。今回の統一地方選では、市町村長選や市町村議選における無投票当選の増加が指摘されている。人口減少と高齢化に伴って首長や地方議員のなり手不足がさらに深刻化している。

  今回の統一地方選では北海道の赤平市で市長選挙が実施されたが、現職市長が市役所前企画課長に大差で敗れる事態が生じている。現職市長が推進した炭鉱遺産ガイダンス施設の建設の進め方が不適切という批判を浴び、1期のみで退陣になった。

 赤平では1918年に炭鉱が開坑し、60年の最盛期には人口が6万人近くになったが、94年に最後の炭鉱が閉山し、現在は人口が約1万人に減少。赤平市は、全国唯一の財政再生団体である夕張市と同様の旧産炭地であり、市の財政は厳しい状態が続いている。

 花卉栽培などに力を入れているが、人口減少に歯止めがかからないために炭鉱産業遺産を活用した観光振興にも注力している。しかし、市民の行政サービスへの期待は多様化しており、「炭鉱遺産活用阻止」を公約に掲げる市議候補者も立候補していた。そういう状況の中で現職市長の落選が生じている。

 道内の三笠市は赤平市と同様の旧産炭地であるが、今回の市長選は無投票で、現職の西城賢策市長が再選された。三笠では1879年に北海道で最初の本格的坑内掘炭鉱が開業。最盛期には人口が6万人を超えたが、1989年に最後の炭鉱が閉山したあと、急激に人口が減少し、地域の衰退が生じた。現在の人口は8432人。幸い、西城市長のリーダーシップの下で4大プロジェクトが進展している。①三笠ジオパーク「さあ行こう! 一億年時間旅行へ:石炭が紡ぐ大地と人々の物語」事業②三笠市立高校食物調理科と高校生レストラン事業③イオンアグリ創造と連携した農業振興(三笠メロンを香港に輸出など)④石炭地下ガス化(室蘭工大との連携)事業――などが順調に進展している。三笠ジオパークをベースにした観光振興、高校生レストランを起点にした「食街道づくり」も手掛けている。

 三笠市のように「民産官学の協働」によって地域資源の持続可能な活用をはかりながら、人育てや地域づくりを着実に行っていくことの大切さを改めて認識し直している。

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

「ご当地つながり」で手を取り合う ひこにゃんへの活動資金も寄贈

2019年5月10日(金) 配信

楠木理事長(左)と荒川代表理事

 日本ご当地キャラクター協会(荒川深冊代表理事)と、日本ご当地タクシー協会(楠木泰二朗理事長)は5月9日(木)に、両団体の協力協定の締結発表を行った。国内各地域の活性化に向け、「ご当地つながり」で互いに手を取り合う。

 同日には、彦根市(滋賀県)のキャラクター「ひこにゃん」の活動への支援金が、日本ご当地タクシー協会から、日本ご当地キャラクター協会に手渡された。

 日本ご当地キャラクター協会は2009年に設立。日本ご当地タクシー協会は2018年に設立し、ユニークな行灯(あんどん)やラッピングを施した観光タクシーをネットワーク化している。現在は全国12道県13社が加盟している。

室蘭市で「撮りフェスin室蘭」を開く 2016年から4回目の実施

2019年5月10日(金)  配信

過去のコンテストのようす。普段立ち入れない場所も特別開放する。

 撮りフェスin室蘭実行委員会(北海道室蘭市)は7月6日(土)午後2時から7月7日(日)午後2時まで、24時間滞在型フォトコンテスト「撮りフェスin室蘭」を開く。2016年にスタートし、今回で4回目になる。

 同コンテストは、24時間の制限時間内で、自由に散策しながら、町の魅力を写真に収める「滞在型フォトコンテスト」だ。同委員会は「室蘭は坂道が多く、比較的コンパクトなエリアだが少し歩くだけで、めまぐるしく景色が変わる。写真愛好家にとっては被写体としての魅力があふれる町」とアピールする。

 毎年好評の「プレミアムスポット」では東日本最大の吊り橋である白鳥大橋の主塔や、工場の構内など、普段立ち入ることができないスポットを特別開放。また、映画「浅田家(仮題)」の原作「浅田家」の著者浅田政志氏や、夜景写真家の小林哲郎氏などのプロ写真家と巡るツアーを実施する。ケトン白石氏による現象講座、サセットクルージングなど、体験型のイベントも開く。

 参加者は3年で169人から402人に伸びた。開催後のアンケートでは「満足・やや満足」が9割を占めた。「別の機会に室蘭を訪れたいか」という設問では、9割が「また来たい」と回答している。

 同コンテストは、第23回ふるさとイベント大賞で優秀賞を受賞した。24時間滞在型の独創性と参加者の作品展示会などを通じて地域の魅力を発信していること、特別な撮影スポットの展開、そして町の魅力を官民一体で行っている点が評価された。さらに、第67回日本観光ポスターコンクールで「日本観光振興協会会長賞」を受賞した。「地域性」と「誘致性」、「社会性」、「表現性」の4つの基準を基に評価された。作品は市内外での企画写真展やカレンダー、室蘭PRポスター、室蘭市長や市の職員、一般企業の名刺で活用している。

「撮りフェス in 室蘭 2019」実施概要

タイトル:24時間滞在型フォトコンテスト「撮りフェス in 室蘭 2019」
開催日時:2019年7月6日(土)午後2:00 〜 7月7日(日)午後2:00
開催場所 : 室蘭市全域/運営本部は室ガス文化センター(北海道室蘭市幸町6−23)
賞/賞金 :
 大賞[1点] ・・賞金10万円+副賞
 準大賞[2点]・・賞金5万円+副賞
 各審査員特別賞[数点]・・記念品
 室蘭市長賞、室蘭商工会議所会頭賞、室蘭観光協会会長賞[各1点]・・記念品
 また、上記はすべて室蘭の公式観光写真として採用
審査員:葛西薫(アートディレクター)、辻佐織(写真家)、藤井保(写真家)、山口一彦(写真家)、浅田政志(写真家)、小林哲朗(夜景写真家)
主催:撮りフェス in 室蘭実行委員会(室蘭市/室蘭商工会議所/(一社)室蘭観光協会)
Instagramアカウント : tori_fes_muroran

参加方法・定員など

参加費:3千円 (税込)
定員:600人/先着順
参加受付期間:6月30日(日)午後11:59まで

全国25の酒蔵が仙台に集結 6月に利き酒イベント開催

2019年5月10日(金) 配信

日本酒の楽しみ方なども学べる

 日本酒と西公園実行委員会は、6月8日(土)、9日(日)、「日本酒と西公園」を宮城県仙台市の西公園で行う。東北6県を中心に全国25の酒蔵が集結する。

 会場では、50種類以上の日本酒の利き酒が楽しめ、中には季節限定のものや生産量などの関係から一般流通量の少ない日本酒も味わうことができる。また、仙台の飲食店が日本酒に合うオリジナルメニューを提供。蔵元を交えたトークショーでは、日本酒の楽しみ方や自分に合う日本酒の選び方を学ぶことができる。

日本酒と西公園 概要

開催期日:6月8日(土)、午前10:00~午後8:00

       9日(日)、午前10:00~午後5:00

会場:仙台市青葉区 西公園南側

チケット:入場無料 

利き酒引換券(おちょこ10杯分試飲チケット):

前売券2千円 当日券2500円 いずれも税込

プレイガイド:

チケットぴあ、ローソンチケット、セブンチケット、イープラス

出品予定日本酒:青森県 陸奥八仙・じょっぱり

        岩手県 百磐・タクシードライバー

        宮城県 黄金澤・乾坤一・一ノ蔵・萩の鶴・

            蔵王・花ノ文・鳳陽

        秋田県 刈穂・翠玉・まんさくの花・鳥海山・秀よし・

            福小町・No.6 type-R/type-X/type-S・ラピス

        山形県 六根浄・山形正宗・ゴールデンスランバ・

            イディオット・ウィンド・SORRA ~天空~

        福島県 会州一・田村

        茨城県 彦市

        栃木県 姿・松の寿

        奈良県 大倉

        和歌山県 黒牛

※蔵元の都合により、当日不参加になる場合もある

問い合わせ先:日本酒と西公園 実行委員会

TEL:022-723-5780 

時間:平日午前11:00~午後5:00

【特集No.522】 イレズミ(タトゥー)温泉問題 歴史を理解し、多文化共生へ

2019年5月10日(金)  配信

 2019年にはラグビーワールドカップ、20年には東京オリンピック・パラリンピックが開かれ、訪日客数の増加が見込まれる。日本での温泉入浴は、外国人にも人気が高いが、ホテル・旅館などの温浴施設などでイレズミ(タトゥー)に対する新たな問題がでてきている。文化人類学者で都留文科大学の山本芳美教授は、即効性のある解決策はないが、イレズミの歴史を紐解きながら、多文化共生の必要性を提唱する。 

【聞き手=編集長・増田 剛、構成=木下 裕斗】

事前の情報発信でトラブル回避 ラグビーW杯、東京五輪控え対応急務

日本のイレズミ発祥から江戸時代まで
 日本のイレズミの始まりは縄文時代や弥生時代。山本教授は「出土した土偶や埴輪の彫刻に習慣が存在したと推定される」という。また、「古事記」(712年)と「日本書紀」(720年)には辺境の民の習慣や刑罰などで用いる習慣があったことが言及されている。アイヌの女性も唇の周辺や手などにイレズミを入れていた。また、沖縄県の女性も「ハジチ」と呼ばれるイレズミを指先から肘にかけて入れる習慣があった。

 その後、1千年の期間、イレズミの習慣はなくなった。山本教授は「肉体美よりも着衣や香りなど、暗い室内でも、映える美しさを偏重したと考えられる」と説明する。

 江戸時代にはイレズミが復活した。刑罰での利用や、遊女と客の間で、永遠の愛を誓う意味で手や腕に入れたり、町の消防の役割を担っていた「トビ」などがイレズミを入れるようになった。カゴカキや飛脚など、肌をみせる仕事をする習慣の人は、「地肌を晒すのは恥ずかしい」との考えから、浮世絵のようなイレズミを身にまとった。

 トビの場合、イレズミを入れるお金がない若い人には、親方衆がお金を出し合っていた。背景には町の相談役やガードマンとして働き、「町の看板」という意識があったという。

 一方、武士は儒教の思想が浸透していたこと、服装が決められていたため、文化は広がらなかった。さらに、刑罰として利用していた背景から、イレズミを嫌う人もいた。幕府は規制をしたが、効果は薄かった。そして、江戸の町なかではイレズミを彫っているトビが多かった。……

【全文は、本紙1753号または5月15日(水)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】

【第5回「旅館100選」台湾商談会】台湾側から47社参加 これまで以上の商談件数に(旅行新聞新社主催)

2019年5月10日(金) 配信

台湾からは47社69人が参加した
石井貞德・本紙社長

 旅行新聞新社(石井貞德社長)は4月16日、台湾・台北市内のホテルで「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」入選旅館と、台湾の旅行社との商談会を開いた。同事業は2015年に「旅館100選」発表40周年を記念してスタート。5回目の今年、台湾の旅行社は47社69人が参加した。日本の旅館は13軒16人が参加。個別ブースでは、最新情報を交換しながら真剣な商談が繰り広げられ、会場は熱気に包まれた。              【編集部】

 同商談会は、本紙と提携する台湾の観光業界専門誌「旅奇」(TRAVEL RICH)が企画協力しており、台湾の旅行社が来場して旅館との個別商談会に臨んだ。

 冒頭のあいさつで、旅行新聞新社の石井貞德社長は「2018年の訪日外国人数は過去最高の3119万人を記録。振り返ると、西日本での豪雨や北海道の地震など自然災害が相次ぐなか、台湾の皆様からもいち早く支援をいただいた」と語り、感謝の言葉を述べた。「そのなかで昨年は約480万人が台湾から来日したが、逆に日本から台湾への出国者数は200万人そこそこ。もっと日本から台湾への観光を促進したい」と主張。「今後も皆様の協力のもと、日本の文化である旅館を盛り上げていきたい」と意気込みを語った。

日本から13軒の旅館が参加した

 進行はまず、旅館側を紹介したあと、商談を約2時間、ティータイムを取りながら行われた。会場は、参加した13旅館ごとにブースを設置。旅行社の担当者が自由に訪ねて、じっくりと個別商談ができるようにした。

熱心に個別商談会が行われた

 旅館側からは、満足の成果を得られた商談会だったという声が多く聞かれ、初めての参加者からは「旅館100選の関心度の高さが伝わった」という声もあった。今回、「台湾から旅館までの交通手段とあわせて、観光ルートを聞かれることが多かった。地域の観光資源に対する関心が高く、国内向け商品と同規模の企画が必要」など、具体的な今後の企画方針を得られたと話す人もいた。

石井社長も取材対応

 会場には台湾のテレビ局である中天電視台が取材として来場し、石井社長と旅館側の参加者がインタビューに答えた。

 石井社長はテレビ局に向け「旅館100選」を紹介し、日本で最も歴史のある旅館を対象にした催しであると説明。選ばれた旅館の心情に関する質問に対し、「光栄に思っていただいていると思う。また、選ばれていない旅館はさらに選ばれるよう努力をされているのでは」と旅館の意識向上に貢献していると自負した。

 旅館側は、群馬県・磯部温泉の舌切雀のお宿ホテル磯部ガーデンの櫻井太作社長が取材を受けた。初めての台湾商談会で「群馬県はまだ認知度が低く、来ていない人が多いと知った。磯部温泉は“温泉マーク発祥の地”で、上州牛やうどんなどの地元の食もある。ぜひ台湾の皆さん来てください」とアピールした。

台湾のテレビ局が取材に訪れた

 商談会会場は各ブースとも熱気に包まれ、「今年はこれまで以上の商談件数だった」といった評価もあった。

 商談会のあとは、各旅館が日本から持参した日本酒や地元産品、宿泊券などが当たる抽選会も開催。ステージで当選者の名前が読み上げられると歓声が上がり、旅館側とのコミュニケーションを一層深めた。

お楽しみ抽選会で旅館から宿泊券などプレゼント

台北市旅行商業同業公會を表敬訪問

吳志健理事長(左)

 「旅館100選」台湾商談会の翌17日、本紙の石井貞德社長は、台北市旅行商業同業公會の吳志健理事長と、許展瑋理事を表敬訪問した。

 吳理事長は「『100選』という肩書はインパクトがある。第三者の投票で信頼性が高い」と台湾での評価を語った。

 石井社長は今回の「旅館100選」台湾商談会の成果を報告。日台両国の観光交流の促進に向け、要望や課題解決の情報共有に貢献していきたい考えを語った。

「旅館100選」を説明

〈旬刊旅行新聞5月1・11日合併号コラム〉西伊豆再訪  小さな「物語」でも“旅のスパイス”に  

2019年5月10日(金) 配信

「御食事処よこ田」の金目鯛の煮付け。アジの刺身も新鮮だった

 今号は「令和」最初の紙面だ。奥付に小さな文字で「令和元年」と入り、新たな気持ちになる。本紙も昭和、平成を経て、令和という新しい時代にも観光業界のニュースを発信できる喜びを感じている。

 
 改元を祝し、今年のゴールデンウイークは10連休となった。多くの観光施設は多忙を極めたのではないだろうか。

 
 私は直前まで旅行の計画を立てなかったため、完全に出遅れていた。「GW中に一度は末っ子を旅行に連れていかなければならない」というプレッシャーのなか、血眼になってようやく西伊豆の旅館の空室を確保した。日にちは、GW初日の4月27日のことだ。渋滞を何よりも恐れる性分のため、まだ夜明け前に神奈川の家を出て、東名高速道路を西走した。

 

 
 東伊豆にはしばしば訪れていたが、西伊豆方面は久しぶりだったので、再訪は楽しみだった。宇久須、堂ヶ島、松崎、雲見などのエリアは風光明媚で、駿河湾越しに見える富士山は日本で一番美しいのではないかと、個人的には思っている。

 
 暗いうちに家を出たため、西伊豆に到着した時間が早すぎて、どの施設もまだオープンしていなかった。早朝でも歩くことができる〝恋人たちの聖地〟で名高い「恋人岬」に向かった。誰もいない道を下って行くと、青い海が眼前に広がった。鳥たちが奇妙な声で鳴いていた。あと1時間もすれば混み合うのだろうと想像しながら、恋人たちのいない「恋人岬」こそ、行く価値があると感じた。

 
 西伊豆の旅の主目的は、安良里港の「御食事処よこ田」で金目鯛の煮付けを食べることだった。アジの刺身もとても新鮮で、末っ子も妻も目を輝かせて喜んだ。旅の満足度は早くもここで頂点を迎えた。

 

 
 その後、漆喰鏝絵で名を馳せる松崎町のナマコ壁通りを歩いた。つげ義春の作品の舞台となった「長八の宿 山光荘」も、世界中から観光客を引き寄せる「物語」を持っている。

 
 堂ヶ島の海でのんびりと時間を過ごしたりしながら、宿にチェックインした。客室で缶チューハイを飲みながら窓の外を眺めると、海側に黒い雲が覆っている。それでも10連休初日ということもあり、海沿いの道にオートバイの集団が通り過ぎていく。今回はクルマを利用したが、「次はオートバイで来たいな」と思った直後に、青い稲妻が走り、同時に地響きのような音がした。自分が乗ってきたクルマに雷が落ちたのではないかと背伸びをして見たが大丈夫だった。「さっきのオートバイの連中は無事だったかなぁ」と心配になった。

 
 辺り一帯が真っ暗になり、時折青い閃光と雷鳴が響き、次第に激しくなる雨を眺める末っ子に「西伊豆は、『日本一の夕陽』で有名なところなんだよ。心配はいらない。夕方には雨はやむだろう」と言い聞かせた。

 
 夕食時には雷雨も収まり、黒い雲も消えていた。ビュッフェ会場で海に沈みゆく赤い太陽を眺めることができた。末っ子はずっと夕陽の動画を撮っていた。

 

 
 旅には「物語」の力が大事である。西伊豆はもともと自然や食、歴史など、土地が持つ潜在力の高い地域であり、「物語」が持つ力に気づいているエリアが数多くある。たとえ小さな「物語」であっても、“旅のスパイス”になるのだと感じた旅だった。

 (編集長・増田 剛)

石川県加賀市×ANA 新技術のビジネスモデル実証実験秋から

2019年5月10日(金) 配信

写真左からANAホールディングスの津田佳明チーフディレクター、宮元陸市長

 石川県加賀市(宮元陸市長)とANAホールディングス(片野坂真哉社長、東京都港区)は2019年5月9日(木)、最新の技術・ビジネスモデルを活用し加賀市の活性化を推進していくため、イノベーション推進に関する連携協定を結んだ。

 今後、両者で連携・協力し、「アバター技術」やドローン、シェアリングエコノミーなど最新の技術やビジネスモデルを、地域課題の解決や新たな産業振興に活用するための実証実験を10月以降に順次行っていくと発表した。

 アバター技術は、VR(仮想現実)やロボット工学、センサーなどの最先端のテクノロジーを複合的に用いて、離れた場所のロボットを遠隔操作し、あたかもそこに存在しているかのようにコミュニケーションや作業などを行う技術のこと。

連携・協力する事項

(1)行政サービスの向上に関する事項

(2)教育振興に関する事項

(3)観光振興に関する事項

(4)デジタル人材育成に関する事項

(5)その他、イノベーション推進による地域課題の解決や産業振興に関する事項

今後の主な取り組み

(1)行政サービスの向上に関する事項

 ① 市役所窓口にアバターを置くなど、市民の相談などの利便性向上をはかる。

(2)教育振興に関する事項

 ① アバターを活用した著名な先生の授業・講演などにより、遠隔地でも最先端の授業・講座を聴ける環境を整え、教育環境の向上をはかる。

(3)観光振興に関する事項

 ① 観光名所にアバターを置くなど、遠隔で観光体験ができる機会を作り、実際の体験観光の増加につなげる。

 ② シェアリングエコノミー(例:加賀市在住者が、空き時間を利用して体験ガイドや訪日ガイドをする=スキルシェア)を進め、体験型素材の発掘と地元ガイド人財の育成をはかる。

(4)デジタル人材育成に関する事項

 ① 国内外の最新技術の講師による講習会を加賀市イノベーションなどで開催することで、遠隔での講習・研修環境を整え、デジタル人材の育成をはかる。

 ② 加賀市役所にアバターを置くことで、遠隔地の講師による市職員向けのデジタル化研修によって市職員の資質向上をはかる。

(5)その他、イノベーション推進による地域課題の解決や産業振興に関する事項

 ① 災害時と緊急時でドローンを活用した物資輸送インフラ整備に向けた実証実験を行う。

 ② 空き家の有効的な活用による多拠点生活の推進し、交流人口の増加をはかる。

ホタルが舞う幻想的な世界「ほたる鑑賞の夕べ」6月2日から開催

2019年5月10日(金) 配信

東伊豆まち温泉郷 ほたる観賞の夕べ

 静岡県・東伊豆町観光協会は、6月2日(日)~6月11日(火)に大川竹ヶ沢公園で「第17回 東伊豆まち温泉郷 ほたる鑑賞の夕べ」を開く。同公園は「静岡県のみずべ100選」に選ばれており、6月になるとホタルが舞い幻想的な世界が広がる。

 イベント期間中は、暗闇の中でちょうちんを持って歩く「ちょうちんウォーク」や地場産品販売などの夜店が並ぶ「ほたる市」、さまざまな賞品が当たる「お楽しみ抽選会」が開かれる。また静岡デスティネーションキャンペーン(DC)企画として、イベント開催中の平日に限り、浴衣で入園すると粗品のプレゼントを受け取れる。

ちょうちんウォーク

ちょうちんウォーク

 メイン会場の大川竹ヶ沢公園に、最終入園時間の午後8:25までに入園すると出口で、1グループに1つちょうちんを無料で貸し出してもらえる。約10分間、暗い夜道でちょうちんを持って歩きながらホタル観賞が楽しめる。(午後7:30~午後8:30)

ほたる市

ほたる市

 ちょうちんウォークのゴール地点のおもてなし会場では、ワサビやミカンなどの地場産品の販売や、焼き鳥、ビール、ジュース、おもちゃなどの夜店が出ている。(午後7:30~午後9:00)

お楽しみ抽選会

 期間中は、おもてなし会場で「お楽しみ抽選会」を実施する。町内旅館組合・観光協会加盟宿泊施設と町外協賛宿泊施設に宿泊すると、宿で「抽選券」をもらえる。そのほかの人は1回100円で抽選会に参加できる。(午後7:30~午後9:00)

「第17回 東伊豆まち温泉郷 ほたる観賞の夕べ」詳細

開催期間:2019年6月2日(日)~6月11日(火)

開催場所:東伊豆町大川温泉 大川竹ヶ沢公園

開催時間:午後7:30~午後9:00(雨天中止)※最終入園午後8:25まで

入園料:公園入口にて、「ほたる育成金200円」