東武トップツアーズ、「イノベーションオアシス」開設

2023年10月3日(火)配信

エントランス

 東武トップツアーズ(百木田康二社長、東京都墨田区)は10月2日(月)、新たな事業を創造する拠点として、東京・品川周辺に「Innovation Oasis(イノベーションオアシス)」を開設した。

 同施設は、行政・自治体・観光団体・企業などが集まり意見を交わす場として、首都圏のみならず、地域の人にも立ち寄ってもらえるようなスペースをつくる。さまざまな知見やテクノロジーを活用しながら、ミックスカルチャーによる新規事業の共創・社会実装、サービス開発、社会課題の解決を目指す。それとともに、それぞれのステークホルダーが長期的なパートナーシップを築き、新たな価値を創造することを目的とする。

大会議・セミナースペース

 同社によると「品川は現在再開発が進み、大規模カンファレンス施設の設立など国際ビジネス交流拠点としての都市機能が整備されている。この品川で新たなイノベーション創出を目指す」としている。

 住所は、〒108-0075 東京都港区港南1-8-15Wビル19F。

カフェカウンター

JAL、20年ぶりの国際線新フラッグシップ機導入へ 年内中に羽田ーNY線就航

2023年10月3日(火) 配信

エアバスA350―1000型機

 日本航空(JAL)は年内中に、約20年ぶりの国際線新フラッグシップとして、エアバスA350―1000型機を導入する。当初は11月下旬就航予定と発表していたが、部品納入の遅れなどで就航が遅れている。導入は全13機を予定し、運航路線は羽田―ニューヨーク線。

 新機材の内装は日本の伝統美を取り入れたほか、JALブランドの一貫性を出すため国内線機材のデザインも意識した。

ファーストクラス座席イメージ

 座席は史上最大のくつろぎ空間を提供するため、ファーストクラスは1便6席とし、JALでは初めて扉を設置してプライバシー性を高めた。ビジネスクラスは座席数を現行から増やして54席としたが、前後間隔を十分に確保して快適性を高めているほか、こちらも扉を設置してプライバシーを確保した。ファーストクラスとビジネスクラスの機内エンターテインメントシステムは、世界で初めてヘッドレスト内臓スピーカーを導入。ヘッドフォン不要で寝ながらでも快適にエンターテインメントシステムが視聴できる。

 24席のプレミアムエコノミークラスは、大型のプライバシーパーテーションを設けてプライバシー性を大きく向上させた。プレミアムエコノミーでは世界初のリクライニング機能を電動化し、電動レッグレストは水平まで調整できる。画面は従来比1・3倍サイズの16インチで、4Kの大画面モニターを採用した。エコノミークラスは155席。現行コンセプトを継承し、広い足元空間と座り心地に磨きをかけた。画面は従来比1・3倍サイズの13インチ4Kモニター。

エコノミーの有料機内食イメージ(左)、RED×well-being(右)

 機内食はファースト、ビジネスで提供するヴィーガン・ベジタリアンメニューをリニューアル。イタリアンやヴィーガンシェフとして活躍する米澤文雄氏が監修したメニューをコーススタイルで提供する。プレミアム、エコノミーは事前予約制の有料機内食サービスを開始し、選択肢を拡充する。

 このほか、アメニティや機内食の食器類は脱プラスティック、再生可能な素材の採用など取り組みを深化させていく。

高峰秀子生誕100年プロジェクト 復刻上映や特別展示会など展開

2023年10月3日(火) 配信

高峰秀子生誕100年プロジェクトのキービジュアル

 

 映画『二十四の瞳』、『カルメン故郷に帰る』、『浮雲』などに出演した昭和を代表する女優・高峰秀子さんが、1924年に北海道函館市で生まれてから来年で生誕100年を迎えるのを機に、「高峰秀子生誕100年プロジェクト実行委員会」(会長=大江正彦・香川県小豆島町町長)は今秋から来年にかけて出演映画の復刻上映や特別展示会などさまざまなプロジェクトを行う。

 女優としての功績だけでなく、晩年は文筆家として活躍した高峰さんの女性としての生き方や美学も発信する。

 復刻上映会は東京都豊島区の新文芸坐を皮切りに全国各地で実施する。新文芸坐では10月15日(日)から31日(火)まで、『浮雲』『張込み』など計12本を上映する。15日午後には高峰さんの養女、斎藤明美さんのトーク&サイン会も開く。

 その後、香川県立ミュージアム(香川県高松市)や大阪九条・シネ・ヌーヴォ(大阪府大阪市)、ラピュタ阿佐ヶ谷(東京都杉並区)、高知県立県民文化ホール(高知県高知市)、鎌倉市川喜多映画記念館(神奈川県鎌倉市)などで順次上映する。上映館は今後増えるという。

 高峰さんの全生涯を貴重な愛蔵品などを通して発信する大特別展「逆境を乗り越えた大女優 高峰秀子の美学」は2024年3月28日(木)から5月6日(月・祝)まで、東京タワー(東京都港区)にあるRED°TOKYO TOWER特別会場で開く。

「STREAM HOTEL」1号店 24年1月16日札幌で開業 東急ホテルズ&リゾーツ

2023年10月3日(火) 配信

プレミアム スイート イメージ

 東急ホテルズ&リゾーツ(村井淳社長、東京都渋谷区)は、新たなライフスタイルホテルブランド「STREAM(ストリーム) HOTEL」の第1号店として2024年1月16日(火)、北海道札幌市に「SAPPRO STREAM HOTEL」を開業する。

 繁華街すすきのの中心で今年11月30日に開業する複合商業施設「COCONO SUSKINO(ココノ ススキノ)」の7~18階に入る。一部の客室と施設は12月22日に先行オープンする。

 客室は全436室で、プレミアム、スーペリアプラス、スーペリアの3カテゴリーに分かれる。室内はスタイリッシュなデザインのなかに、北海道の自然や文化、歴史などが感じられるインテリアや照明演出、空間デザインを取り入れるという。

 最上階18階にはプレミアムタイプ宿泊者が利用できるラウンジやサウナ付き温浴施設、ルーフトップテラスを設ける。

 フロント・ロビーがある7階には北海道の食材を取り入れたバー&グリル、地元作家の工芸品やアクセサリーなどを販売するセレクトショップを備える。8階には宿泊者専用のフィットネスと、レセプションや会議に利用できる小規模なファンクションルームを置く。

 そのほか、ホテル内外で楽しめるさまざまなアクティビティの提供、地元とのタイアップ、レストランやファンクションルームを生かしたイベントやワークショップの実施などを検討し、地域に根付くホテル展開を目指していく。

外観イメージ

ヘリ遊覧プラン販売開始 八重山の絶景を上空から ANA石垣リゾート

2023年10月3日(火) 配信

ホテル敷地内を離発着する

 ANAインターコンチネンタル石垣リゾート(秋間友総支配人、沖縄県石垣市)は10月22日(火)、八重山諸島でヘリコプター遊覧飛行を楽しむアクティビティ「YAEYAMAヘリクルージング」の販売を開始する。

 4月に同市内を拠点にヘリ事業を始めたスペースアビエーション(保田晃宏社長、京都府京都市)とのコラボ企画だ。

 ホテル敷地内の芝生エリアを発着する5コースを設定した。客室から徒歩数分でヘリに搭乗するという、高い利便性とプレミアム感を兼ね備える。

 世界自然遺産の西表島を含む八重山の7つの島を周遊する32分間の「八重山まるごと一周」(1人49,000円)や、陸路の場合往復2時間ほどかかる石垣島北部エリアを38分間周遊する「南ぬ島の絶景・石垣最北端」(同55,000円)などをそろえる。

 参加は同ホテル宿泊者限定で、2人から催行する。最大3人まで搭乗できる。運航時間は午前9時から日没まで。予約制。ホテル内リゾートセンターで受け付ける。

〈観光最前線〉小浜島でナイトゴルフ体験

2023年10月3日(火) 配信

ロマンティックなゴルフ体験ができる

 八重山諸島の小浜島(沖縄県・竹富町)にある「星野リゾート リゾナーレ小浜島」は12月1―25日まで、ホテルが有する日本最南西端のゴルフ場「小浜島カントリークラブ」の一部をイルミネーションで彩る「イルミナイトゴルフ」を実施する。

 煌びやかに彩られたグリーン周りから、短いショットを放つゴルフ体験ができる。ボールは周囲の光に反射して輝くもので、打てば打つほど会場のイルミネーションに新たな光を加えることができるという。ゴルフ場はホテルの客室エリアと隣接し、手ぶらで気軽に参加できる。午後7時から9時まで。参加無料。

 プレー後には会場のイベント専用休憩スペースでスパークリングワインや南国の果物のドライフルーツなどを楽しむことができる。

【土橋 孝秀】

吉野ヶ里歴史公園 有明海沿岸の遺跡紹介 「邪馬台国と有明のクニⅡ」11月12日まで

2023年10月3日(火) 配信

特別企画展のようす

 吉野ヶ里歴史公園(佐賀県吉野ヶ里町)では11月12日まで、特別企画展「よみがえる邪馬台国」を実施している。第15回目となる今回のテーマは「邪馬台国と有明のクニⅡ」。大陸文化流入の玄関口となった有明海沿岸の拠点集落や王墓などの主要遺跡を紹介するシリーズの第2弾となる。

 佐賀平野の南に位置する有明海は、弥生時代において、玄界灘と並び中国や朝鮮半島からの文化流入の玄関口として、重要な位置を占めていた。

今回は有明海沿岸の遺跡を紹介

 今回の展示では、朝鮮系青銅器である多鈕細文鏡や青銅製ヤリガンナが出土した本村籠遺跡(佐賀市)、弥生後期の大規模な拠点集落である惣座遺跡(佐賀市)、王墓と考えられる甕棺墓や箱式石棺墓から中国鏡をはじめとする青銅器・鉄刀・装身具が発見された三津永田遺跡(吉野ヶ里町)、椛島山遺跡(武雄市)、中細形銅矛や珍しい形態の銅剣が発見された景華園遺跡(長崎県島原市)など、有明海沿岸を代表する弥生時代遺跡の内容や最新の発掘調査成果を紹介する。

 あわせて、弥生文化の伝播や近畿と九州、本州と四国との交流において重要な航路であった瀬戸内海の中央部に面する讃岐(香川県)にも注目。

 讃岐を代表する弥生時代の拠点集落跡である旧練兵場遺跡(善通寺市)、高地性集落の軍事的性格から、弥生時代の戦争を認識させた紫雲出山遺跡(三豊市)、突線鈕式の銅鐸片が出土した天満・宮西遺跡(高松市)、全国的に出土例が少ない巴形銅器が出土した森広天神遺跡(さぬき市)といった遺跡を取り上げる。

 これら遺跡群と吉野ヶ里遺跡の内容を比較しながら、あらためて邪馬台国の所在地や各クニの内容について検証する。観覧無料(入園料別途)。

 吉野ヶ里歴史公園の入園料は大人(15歳以上)460円、65歳以上200円、中学生以下無料。20人以上は団体割引あり。開園時間は午前9時から午後5時まで。

 問い合わせ=吉野ヶ里公園管理センター ☎0952(55)9333。

吉野ヶ里歴史公園 公式ホームページ

秋は「そば」が一押し 雄大な自然が魅力の長野県・下條村

2023年10月3日(火) 配信

宮島副村長(左)と飛び入り参加の下嶋兄さん

 長野県最南端のほぼ中央に位置する下條村は、雄大な中央・南アルプスや伊那谷を眺望でき、自然豊かで季節ごとに変わる田舎の風景が美しい人口約3600人(2023年1月1日時点)の小さな村だ。

 銀座NAGANOで9月19日(火)、下條村のスーパープレゼンテーションが開かれた。当日は俳優で「長野県永久観光大使」を務める峰竜太さんが参加する予定だったが体調不良のため、峰さんの長男でタレントの下嶋兄さんが代理で飛び入り参加した。

 秋シーズンは村内で栽培している「そば」が一押しで、9月中旬ごろにそばの花が見ごろを迎える。そばは村内にある「道の駅信濃路下條そばの城」と「呑喰処おつれ」で食べることができる。

 紅葉スポットとしては「極楽峠パノラマパーク」から村内及び南アルプス、中央アルプス、御嶽山の絶景眺望が楽しめるという。

 会場では、下條村の宮島俊明副村長によるプレゼンのあと、地元中学生が考案したアレンジレシピの「から蕎麦サラダ」、黄金シャモの揚げ手羽先、親田辛味大根おろし蕎麦、昇農園の梨(豊水)・シャインマスカットが振る舞われ、飲み物は村内で生産販売されているシードル(クラフトサイダー)と地ビールのほか、地酒「喜久水」生貯蔵酒や5年熟成のそば焼酎「竜太」などが提供された。

矢掛町「まちごとホテル」で再生 シャンテ・安達精治社長「50年先まで残れる“持続可能なまちづくり”」

2023年10月3日(火) 配信

西国街道の宿場町の面影を残す矢掛町

 地域密着型ホテルサービスを展開する「シャンテ」(安達精治社長、岡山県・矢掛町)は、江戸時代に山陽道(西国街道)の宿場町として栄えた矢掛町で、古民家を宿泊施設として再生させ、「まちごとホテル」として活気を取り戻す事業を展開している。安達社長のインタビューに加え、岡山商工会議所の松田久会頭(両備ホールディングス副会長)と、観光庁観光地域振興部観光資源課の鈴木一寛課長補佐にも、持続可能なまちづくりについてコメントをいただいた。   【増田 剛】

安達 精治(あだち・せいじ)代表取締役CEO

 ――矢掛町との関わりはいつからですか。

 安達:今から10年ほど前の11月第1週のことです。まちの再生事業を頼まれ、視察に来ました。当時は傾いた空き家だらけで、猫一匹歩いていないようなまちでした。沈みかける夕日と矢掛町の町並みが重なり、「こういう風に日本の地方は荒廃していくのだろうか」と寂しい気持ちになりました。「何とか、この400年続く文化が残る矢掛町の再生をやってみたい」と、後ろ髪を引かれる不思議な感覚がありました。

 私自身、銀行員時代に20年ほどホテル再生に携わっていたのでよくわかるのですが、矢掛町を再生するうえで、3つの要件が立ち塞がっていました。①古民家は無価値で担保にならないと判断され、融資の対象外となる②銀行側は潜在的なマーケットが無いエリアでの新規事業に対する融資は認めない。そして、3つ目はものすごくお金がかかる――ということです。

 

 

 ――矢掛町のどの部分に魅かれたのですか。

 安達:江戸時代から山陽道(西国街道)の宿場町として栄え、「宿屋の原型だった」という歴史的な背景があることです。日本の宿場町は矢掛町を含め、団体宿泊受け入れの原点だと思います。

 当時、参勤交代で訪れる800人規模の大名行列を、どのようにして本陣や脇本陣などに分宿させていたのだろう、500人の大名と、300人の大名が同じ日に宿泊する場合、チェックインなどのオペレーションはどうしていたのか――など、興味は尽きませんでした。

 想像するだけで自分の能力をはるかに超えるまちの運営や、それを支えた人々、宿泊客の満足度を上げる仕組みなど、同じ事業に携わる者として、実に優れた仕掛けになっていると、現代にもつながる矢掛町の歴史を紐解いていきました。地元の人たちの会合にも積極的に参加し、シャンテ本社は矢掛町に移しました。誰にも負けないくらいの情熱を持って矢掛町を愛し、矢掛町内に6軒の古民家を改修して、「まちごとホテル」事業に取り組んでいます。

 

 ――「儲ける」よりも「持続させる」との考え方は。

 安達:「50年先まで残れるように」と長期的な視点で見たときに、矢掛町は安易な「観光」によるまちの維持は難しい。単純にホテルを建てた再生事業では「持続可能なまちにはならない」と強く確信しています。

 “まちと共に生きる宿”という、持続可能なまちづくりの本質を探る姿勢を最も大切にしています。

 

 ――矢掛町と関係人口のマーケットをどのように考えますか。

 安達:まちとの関係には、6つの要素があります。一番根底にあるのは、地元の小・中学校の同窓会です。旧知の友が集い交流する同窓会ができるまちは、全国でいくつあるでしょうか。矢掛町の場合、近隣都市の福山市や岡山市、倉敷市で開いています。「同窓会を地元でしたい」という気持ち、自分の街を誇れる「シビックプライド」を持ってもらうところから、まずは始めなくてはなりません。

 2つ目は自分の先祖(ルーツ)です。「祖母が岡山出身だった」というようなケースです。3つ目は転勤者です。この3つにそれぞれの友人関係を含めて6つ。

 これら矢掛町との関係がある人たちを基礎マーケットとして、その人たちに「『お帰りなさい』という宿をつくりました」というマーケティングによって、マーケットが無い(と思われる)エリアで3千日を掛けて丁寧に基礎人口を作っていくしかないと考えます。

 最初の1千日は、地元中心に関係人口づくりに専念する。第2段階では、友人まで関係を広げて、岡山、大阪、東京などの大きなマーケットも見据える。そして最終段階は、インバウンドが対象となります。

 「来られた方がお客様」などは、滅茶苦茶な論理です。理論と計画に沿って「自分の今のお客様は誰なのか」を明確にして、次の段階の準備をしていく。第3段階のインバウンドになると、スタッフや接客スタイルも変えなければなりません。

 持続可能なまちづくりは世界中で求められています。まちと共に生きるには、これまでの再生事業で培ってきたノウハウを生かしながら、経営スタイルを蝉のように脱皮していくことで、新しいお客様を作っていくしかないと思います。

 20年後の矢掛町の人口予測は1万人ですが、我われのまちごとホテル事業によってUターンやJターン現象も生じて、人口減少の速度が緩やかな曲線になってきています。

 

 ――まちの維持に必要なものは。

 安達:持続可能なまちにするには、定住人口を増やさなければなりませんし、そのためには仕事が必要です。我われの業務はものすごくローテクなので当面は残ると思います。国籍や性別、年齢、学歴など関係ないため、「働く場の提供」という面では大きな役割を担っていけると考えています。

 また、高校がない町で子供を産んで育てることは可能でしょうか。高校の有無はすごく大きな軸で、地域に高校が無くなったら怖いなと思います。井原市や笠岡市など近隣の地域も残っていかなければならないので、誰から頼まれたわけではないのですが、矢掛町の近隣5市の古民家再生にも携わっています。「備中」というエリアを一つと捉えていきたいと思います。

 

 ――この先、高齢者の一人暮らしの比率が高まっていくことが予想されます。

 安達:自分の母親もそうでしたが、子供や親戚が「東京においでよ」と言っても地元を離れない傾向が強い。それは、そこにコミュニティーがあるからです。まちに仲間がいるうちには知らない街には移れない。この矢掛町の小さな中心エリアに約3千軒の家があります。そこに、「友人が住んでいるから」や、「子供のころ暮らしていたから」などの理由で集まってくると、結果的にコンパクトシティができ、基礎インフラの維持費の負担軽減にもつながっていくのではないかと考えます。

 

 ――コロナの影響について。

 安達:コロナ禍における人の動きは予想できませんでした。しかし、さまざまな研究をしていくと、コロナ禍でも稼働率の高い宿泊施設が当社にも何軒かありました。また、「人に非接触」の宿泊サービスが定着しました。私はそこにヒントがあると思っています。

 旅をしたときに、どのくらいの人がさまざまなおもてなしを受けるサービスを求めているか。高齢化やIT化が急速に進むなか、旅館やホテルは、まだ売り手側のマーケットから抜け切れていないと感じています。

 「このサービスは不要だから料金を下げてほしい」など、細やかな、本当のマーケットデータやニーズを掴み切れていないのではないかと思います。

 まちと共に生きながら、「お客様が求めるものにどこまでも合わせていく」という、お客様の心と一体となったマンツーマンのサービスが支持を強めていくような気がします。ビジネスホテルに泊まって数時間まちを散策して翌朝帰る旅だと、矢掛町のようなまちでは発展性が思い描けません。

 まちの中の古民家に宿泊し、地元の人たちに溶け込んで何気ない日常のコミュニケーションを取るような、本当の意味で地域の「光を観る」時代が来るのではないかと感じています。

 

岡山商工会議所 松田久会頭

 

 ――地元の民間側の視点から矢掛町の取り組みについて。

 松田:私は岡山商工会議所会頭の立場から「まちづくり」が大きなテーマです。

 若い人たちが地方を出ていく現象は止まらないなか、必要なものは地元で糧を得て暮らしていくための産業です。歴史に根付き現代まで脈々とつながっている、伝統的な産業をやり続けることが重要だと思っています。

 これらに加え、安達社長が取り組む矢掛町のまちごとホテルのように、サービス業として成り立つ仕事が出てくれば、地元で働くことも、子育ても可能になります。そういう産業を作ることが定着率を高める原点だと思います。

 観光に係るサービス業であるならば、訪れた人が何日間か滞在する状態が続き、一時的な地域住民となります。旅行者を対象にすると、毎日同じ土産物や食材なども売れるようになり、新たな産業も育っていきます。

 ビジネスホテルでは、地元の人たちとのコミュニケーションが生まれづらいですが、空き家を活用した「まちごとホテル」での滞在であれば、持続的なまちづくりも成り立つと思います。

 

観光庁観光資源課 鈴木一寛課長補佐

 

 ――観光庁の視点からもお願いします。

 鈴木:今年3月31日に策定されました観光立国推進基本計画には①持続的な観光②消費額拡大③地方誘客促進――の3つの柱があります。矢掛町にはこの3つの必要な要素が縮図となってすべて備わっていると感じます。この方向性で長期的な取り組みを継続していただけたらと思います。

 観光庁の政策のなかには、「地域の同意形成」や、「事業の水平展開をしていく」などの文言を盛り込むことが多いのですが、実際の現場では難しい部分があり、一職員としても課題と感じております。

 安達社長や松田会頭のように、持続的なまちづくりに真摯に取り組む方々の“生の声”を聞きながら、観光立国推進基本計画に沿ったまちづくりに、少しでも近づけるように観光庁としても後押ししていきたいと思っています。

宮島で訪問税始まる 持続可能な観光地域目指し、1人100円から(広島県廿日市市)

2023年10月2日(月) 配信

広島県廿日市市は「千年先も、いつくしむ。」PJとして宮島訪問税の徴収を始めた

 広島県廿日市市は10月1日(日)、世界遺産・宮島で訪問税の徴収を始めた。「住んでよし、訪れてよし」の持続可能な観光地域の実現に向け、「千年先も、いつくしむ。」プロジェクトと命名し、宮島の普遍的価値や魅力を宮島ブランドとして、広く国内外に向けて発信する。

 訪問者が宮島を1回訪問(入域)するごとに、1人当たり100円を徴収する。訪問税は、訪問客の受け入れ環境整備や、文化への理解、エコツーリズムの推進などの取り組みに役立てる予定。

 同市の松本太郎市長は、「宮島を慈しむ想いや、自然、文化、歴史を未来に継承していくため、宮島訪問税を活用していく」とコメントした。

 対象者は、船舶で宮島を訪問する人とし、宮島町の住民や通勤・通学者、未就学児、学校教育での訪問者、身体障碍者手帳などを交付されている人などは除外する。

 税額は、1回の訪問につき1人100円か、1年分1人500円のいずれかの納付方法を選べる。