小笠原諸島と平泉、世界遺産に登録決定

 6月19―29日、フランスのパリで開かれた第35回ユネスコ世界遺産委員会は小笠原諸島(東京都小笠原村)と平泉(岩手県平泉町)の世界遺産登録を決定した。
 小笠原諸島は、これまで大陸と地続きになったことがない海洋島として動植物の独自の生態系が見られることなどが評価され世界自然遺産に登録。平泉は中尊寺金色堂に代表される遺産群が仏教の浄土信仰思想を現生に象徴的に明示しているとして世界文化遺産に登録された。今回の2件を加えて、日本の文化遺産は12件、自然遺産は4件となった。

訪日客5割減減少幅は縮小、JNTO

 JNTOが発表した2011年5月の訪日外客数推計値は、前年同月比50・4%減の35万8千人。東日本大震災翌日の3月12日から3月末までが73%の減少、4月は同62・5%減と、減少幅は徐々に縮まっているが、依然として半減の状態にとどまった。
 5月の減少幅を4月と比べると、15ビジット・ジャパン(VJ)事業対象市場国・地域のなかではインド以外すべて減少幅減と改善。とくに台湾・タイ・シンガポールの改善幅が大きい。
 6月17日の会見で間宮理事長は「被災地以外は各国の渡航自粛もほとんど解かれたので、これから回復のスピードは上がってくるのでは」と期待。「震災前と同じ水準となると年単位の時間を要する可能性もあるが、市場ごとに見ていくと回復がかなり早いところも出てくるのではないか」と話した。
 各市場の動向をみると、韓国は、沖縄・九州・関西方面は戻りつつあるが、関東方面への戻りが遅く、夏には前年の5割、秋には7―8割、冬には前年並みの水準に戻ると推測。中国は放射能汚染への心理的恐怖が根深く、子供連れの家族旅行の需要回復が鈍いとみる。7月の沖縄への個人観光数次ビザの条件付解禁のプラス要因に期待。台湾は北海道や立山黒部ツアーなどの格安旅行の予約が好調だが、放射能汚染、夏場の計画停電への不安感が大きく、渡航控えは当面継続するとみる。訪日外客数のカギを握る中国市場については「今年中の回復は難しいだろうが、秋の国慶節が1つのポイントになる」と語った。
 出国日本人数は、前年同月比8・4%減の115万6千人で、3カ月連続の減少となった。

海外から1千人招請 日本の安心・安全PR

 日本政府観光局(JNTO、間宮忠敏理事長)はこのほど、東日本大震災後の復活に向けた海外プロモーションとして、視察や取材事業などの緊急対応事業を発表した。7月末までに海外の旅行事業者やメディア約1千人を日本に招請し、安全・安心な日本を体験し、国内PRをしてもらう。
 JNTOは震災後、対応の第1段階として、海外に向けた災害状況の発信などに努めてきた。6月17日に開かれた会見で、間宮理事長は「JNTOが長期に渡って築いてきた信頼や海外パートナーとの人的関係を駆使し、情報発信に尽力し、評価の声をたくさんもらった。非常事態の対応でJNTOの存在意義が再認識・再構築されたのでは」と話した。
 第2段階の海外プロモーションは、7月末までに海外の旅行事業者約530社610人、メディア約270社390人、合わせて約800社1千人を日本に招請する。
 訪日外客数を支えてきた韓国は、6月23―25日にかけ大手旅行会社24社の社長を招請し、東京、鎌倉、箱根を視察。中国は6月に実施済みのものも含め旅行会社70社70人を東京、中部、関西、九州方面に招請する。同様に、台湾、香港、シンガポール、タイ、アメリカ、オーストラリア、イギリスに対しても行う。

7月にキャンペーン 夏の旅行需要喚起

 観光庁は旅行需要復活に向け7月にキャンペーンを実施し、官民一体で長期休暇、休日の分散、若者の旅行需要促進などに取り組む。6月17日に行われた定例会見で溝畑宏長官は「電力需要の問題もあり、他省庁と連携しながら官民一体で進める」と話した。

 ゴールデンウイークの状況については「国内宿泊は前年比3%減にとどまり、関東・東北を除くほとんどのエリアで前年よりプラスとなった。予想以上に需要が回復してきているのではないか」と振り返った。

 一方で会津若松市では修学旅行の約95%がキャンセルとなった現状に触れ、「被災3県、とくに福島の風評被害については重く受け止めている」とし、「福島の風評被害を一掃することが、世界から見た日本全体の風評被害を一掃することにつながる」と語った。福島を筆頭に被災3県の観光復活に向け、イベントに全面的に協力していく考えだ。

 6月26日には、福島県会津若松市で東北観光復活へのキックオフイベントを開催。溝畑長官と佐藤雄平福島県知事、菅家一郎会津若松市長らが出席し、観光復興を宣言。アントニア猪木氏や歌手の稲垣潤一氏、川嶋あい氏なども出席し、東北の元気をPRした。

 また、7月から沖縄を訪問する中国人個人観光客の数次ビザが導入されることについて触れ、「全国イコールフィッティングがありがたいが、沖縄特区で一石を投じ、風穴を開けた」と評価。「去年のVJ事業で効果が大きかったのは中国人への個人観光ビザ緩和だ」とし、「外務相へは引き続き、要件緩和されるよう働きかけていきたい」と話した。

 JTBが中国でのアウトバンド業務の認可を受けたことについては、「今後、JTBに限らず認可の拡大が必要。認可拡大に向け努力していく」と話した。

 国際観光旅館連盟(佐藤義正会長)と日本観光旅館連盟(近兼孝休会長)との合併・新団体設立の動きについては、「2つの団体が1つになることで、旅館・ホテルなど現場の現状把握やあるべき制度の議論など、現場の意見を吸い上げ適切に政策に反映させるという流れが、よりスムーズに促進されるのでは」と歓迎した。

観光立国へ一致団結 日観連総会

 日本観光旅館連盟は6月24日、東京都内のホテルで2011年度通常総会を開き、国際観光旅館連盟との合併を承認した。近兼会長は「熊本総会以来20年かかった国観連との合併が今年の最大のテーマ。ようやく6合目まで来たという感じ。これから各論に入り、諸問題もあるが乗り越えていきたい。合併団体は全旅連を交え、観光立国実現へ一致団結していきたい」と語った。

 10年度は、それまでの15支部体制から、国土交通運輸局と同一地域割となる全国9支部体制へ再編成。すでに9支部体制の国観連との合併へ地均しをした。国観連の佐藤会長は「近兼会長は就任後すぐに支部の再編を行い、合併のための土壌作りをしてくれた。国観連の背中を押してくれ、スピードがついた」と再編を高く評価する。

 11年度事業は国観連との合併への準備や、日観連ホームページ「やど日本」の会員情報の充実、「日本ユネスコ協会連盟」との連携など。任期満了に伴う役員改選では副会長に、瑠璃光(石川県・山代温泉)の萬谷正幸社長、名古屋セントラルホテル(愛知県)の北島龍次社長、寿美礼旅館(山口県下関市)の和田好弘社長が新たに就任。

旅館文化守る組織に 国観連総会

 国際観光旅館連盟は6月14日、東京都内のホテルで第64回総会を開いた。来年4月を目途に日本観光旅館連盟と合併し、新団体設立を目指すことを了承した。事前に行った署名評決では国観連会員の3分の2以上、851人から賛成意見が集まった。任期満了に伴う役員改選では佐藤会長の再任、公益制度法人改革では、一般社団法人への移行を目指し、新定款が了承された。

 佐藤会長は新団体設立について「国に対して業界の声がもっと強く届くように会員数を大きくしていかなくてはいけない。さまざまな事業もやりやすくなる」と狙いを示し、「63年の歴史の中で築いてきた風土を大事にして新しい組織にそのDNAを継承していかなければいけない。日観連ともども、旅館文化を守り続けていける組織にしたい」と語った。

 佐藤会長は東日本大震災後の経過をあげ、「被災地の人間として今回、嫌というほど旅館の力のなさを痛感させられた。国も県も漁業に対しては、基幹産業と位置づけ、いち早く対策を講じ、再生の道は日に日に整備されている。一方で、旅館業にとってはこれはという支援策はまだ見えていない」と苦言を呈した。

 また、業界を取り巻く厳しい環境をあげ、「ロングステイに活路を見出していかなければない。泊食分離も避けて通れない問題」と語った。

 11年度の事業計画の国に対する要望では、固定資産税の評価基準の見直しのための勉強会を開催する。今年度を正念場と位置づける。12月からスタートするのが国観連オープンウェブ構想。直販比率を高め、ネット専業旅行会社と対抗する第3極設立を目標に、会員旅館各自のHPに予約が直接入る客室在庫管理システムを導入する。

国観連、日観連 合併へ 来年4月に新団体

「今回こそ実現へ」意欲を見せる佐藤会長(左)と近兼会長
「今回こそ実現へ」意欲を見せる佐藤会長(左)と近兼会長

 国際観光旅館連盟(佐藤義正会長、1112会員)と日本観光旅館連盟(近兼孝休会長、2972会員)が来年4月を目途に合併・新団体設立を目指し動き始めた。近年、会員減少に悩んできた両団体だが、合併により4千会員ほどに増大。この会員数を武器に業界の発言力の強化を狙う。従来から取り組むさまざまな事業において、さらなるスケールメリットも見込める。6月24日、日観連の総会後に行われた記者会見で「頓挫することなく新団体設立を実現させたい」と佐藤国観連会長、近兼日観連会長は意欲を見せた。

【沖永 篤郎、伊集院 悟】

「実現すれば4000会員」

 6月24日に開かれた日本観光旅館連盟の通常総会で、国際観光旅館連盟との合併が承認された。1948年、訪日外客増大に対応し、外貨獲得を目的に発足した国観連。1950年、国鉄指定・推奨旅館として発足した日観連。発足当時の目的は違うが現在、観光振興を目的とした旅館団体であることは同じだ。合併については約20年間にわたり紆余曲折してきたが、国観連は既に6月14日の総会で承認されており、日観連総会の承認をもって、正式に決まった。今後は10月に両団体間で新設合併契約の締結、2012年4月に新団体の設立を目指す。

 ただ、個別の具体論はこれから詰めることとなり、両会長はそれぞれ「両団体の寛容と忍耐が求められる」(佐藤会長)、「互いの団体の理解が必要」(近兼会長)と話す。

 日観連総会後に開かれた両団体の会長による記者会見では、合併の趣旨や目的、会費、今後の合併に向けてのスケジュールなどを説明。両団体は新団体の業務運営方針や、制度設計などについて協議を始める。今後のスケジュールは、両団体が一般社団法人への移行申請・許可を得たうえで、新設合併契約を締結。12年3月をもって両団体が消滅、4月1日に新一般社団法人を設立する。

 懸念となっていた会費については、当初2年間に限り、旧団体の会費額とする。重複会員は国観連の会費。3年目からの統一会費は、客室数に応じ最低1万5千円から最高12万5千円まで設定する。ただし、ホテル営業客室は旅館業客室の半額とする。

 近兼会長は「会員の調整が大変難しかったが、北海道支部と四国支部では100%の承認、難しかった中国支部でも90%の承認を得られた。政府に意見提言などできる圧力のある団体を目指したい」と抱負を語った。

 佐藤会長は「旅館業界の地位向上をはかりたく、そのためには一定の数が必要」と合併の目的を話し、「営業力と企画力のある、旅館にとって使い勝手の良い組織にしたい」と語った。

 また、合併へ反対の会員については、近兼会長は日観連会員の1割弱が合併に反対し、退会したことを明かした。

 佐藤会長は国観連会員の反対意見として、「会費の差への不満」をあげた。

No.283 鶴雅グループ・大西社長に聞く - 避暑需要を北海道に

鶴雅グループ・大西社長に聞く
避暑需要を北海道に

 今夏の電力供給不足が懸念されている。週休3日の採用や夏休みの長期化など、勤務体系を見直す企業もでてきた。効果があれば秋以降も続ける可能性があるという。これを受け、北海道では宿泊施設が相次ぎ滞在型プランを発表。冷涼な気候を生かし、連泊需要を喚起する。北海道観光振興機構も「北海道クール・サマー誘客事業」に乗り出した。キーワードは「長期滞在型旅行」。鶴雅グループの大西雅之社長に、自社の取り組みや道内の動きを聞いた。

【関西支社長・有島 誠、鈴木 克範】

顧客志向は成熟化へ、滞在見据え連泊喚起

震災契機に「転換」

 北海道は国内の他地域と比べ、個人客対応への「転換」が10年遅れたと思っている。団体客主体の営業でやれたことが、個人型への転換をはばんだ。デスティネーションの優位性から「団体周遊型」「低価格大量販売」など、道外で古くなったビジネスモデルを続けてこられた。団体効率の追求で規模が求められた結果、大型ホテルがたくさんできた。

鶴雅グループ 大西 雅之 社長

 しかし近年、団体客対応の旅館・ホテルが苦戦している。東日本大震災がさらに拍車をかけた格好だ。首都圏を中心とした節電計画は、ライフスタイルに大きな変化をもたらすだろう。観光地や宿泊施設も、それを見据えた提案をしないといけない。

 21世紀を迎え、顧客の志向は個人化、成熟旅行に向かっている。「成熟」とは、個々で「したい」ことが違うということ。設備や料金体系、地域の受け入れ体制、情報発信などに旅行者ニーズを反映させなければ生き残れない。今までの経験や実績を一旦白紙にして、デフレ社会や暮らしの変化に即した北海道観光を考えていく必要がある。真の「リゾートアイランド」を目指したい。

 

※ 詳細は本紙1425号または日経テレコン21でお読みいただけます。

第9回浴衣が似合う温泉地 ― 城崎温泉が首位返り咲き(7/1付)

 「第9回浴衣が似合う温泉地」(旅行新聞新社主催)が7月1日付旬刊旅行新聞で発表された(5面参照)。ウェブサイト「おかみねっと」や、中日本高速道路のサービスエリアで配布されるフリーペーパー「高速家族」でアンケート調査を行ったもので、「浴衣が似合う温泉地」もようやく広く浸透しつつあるのではないだろうか。

 今回は兵庫県の城崎温泉が、昨年の2位から1位に返り咲いた。2位は群馬県の草津温泉。

 第1回から4回までは草津温泉がトップで、城崎温泉が2位。第5回から7回までは城崎温泉がトップで、草津温泉が2位。第8回が草津温泉、第9回が城崎温泉が首位と、第1回から東西の2横綱がトップを激しく争っている。

 3位は伊香保温泉(群馬県)、4位は下呂温泉(岐阜県)、5位は有馬温泉(兵庫県)、6位は別府温泉(大分県)、7位は渋温泉(長野県)、8位は黒川温泉(熊本県)、9位は由布院温泉(大分県)、10位は熱海温泉(静岡県)の順。いずれも温泉風情が豊かで、にぎわいを感じさせる温泉地が上位を占めた。近年の傾向としては、下呂温泉、渋温泉の上昇ムードが注目だ。

 トップに返り咲いた城崎温泉は、昨年10月からデジタル外湯券を発行。財布を持たなくても浴衣姿で買い物や食事をしたり、外湯めぐりをしても、翌朝旅館で精算できるシステムを開発した。宿が宿泊客を囲い込むのではなく、「温泉街全体が一つの旅館」というコンセプトで温泉地づくりに取り組んでいる。「城崎ゆかたフェスタ~ゆかたのファッションショー」などイベントも開催されている。

 湯もみショーで有名な草津温泉は毎晩8時から、食後にふらっと落語を楽しめるように、09年12月から湯畑前の「熱の湯」で「草津温泉らくご」を開演している。伊香保温泉もまち歩きの象徴である石段街が10年4月に延長された。人気温泉地は智恵を絞り、まち歩きができるように工夫をしている。浴衣姿の宿泊客を見かけない温泉地はどこか寂しいではないか。

 今夏は電力不足。日本国中が省エネに取り組む夏になる。暑い夏は、風情溢れる温泉で汗を流し、涼し気な浴衣を粋に着て、茶屋の軒下でかき氷や葛きりでも食べながら涼みたい。私も浴衣の似合う温泉地に行くつもりだ。

(編集長・増田 剛)

宍道湖ジュエリークルージング好評運航中、島根県松江市

 

 島根県松江市の宍道湖で小型クルーザーに乗り、松江の夜景を楽しむ「宍道湖ジュエリークルージング」が11月30日までの毎日運航されている。地元のNPO法人・松江ツーリズム研究会が企画実施しているもので、郷土料理(幕の内)を味わいながら、約90分のクルージングが満喫できる。料金は1人3500円(料理込み)。船内ではビールやソフトドリンク、地酒、ワインなどを別途料金で提供する。出航は日没20分前(18:00~19:30)で、湖面上から夕日と夜景の両方が楽しめるという。
ジュエリークルージングは、同研究会の女性スタッフが「松江の夜景を宍道湖から見たら美しいのでは」と発案し、昨年夏季に初めて実施。69月で約400人を集めるなど好評を博し、今年は31日から1130日まで期間を拡大した。

予約・問い合わせ=松江ツーリズム研究会 ℡0852-23-5481