退屈と向き合う ― 旅人の力量が問われる闇と静寂

 金目鯛の煮付けが無性に食べたくなった。夢にまで見るようになったので、つい先日、東伊豆を訪れた。

 しかし、不安もあった。前日から関東の平野部、東京都心にも積雪の予報が出ていた。「11月の積雪は観測史上初」というニュースを聞きながら、クルマで行こうか、電車で行こうかと、直前まで迷った。宿泊した翌日に、大雪で立ち往生することが予想されたからだ。

 電車での伊豆旅行は旅情がある。ビールを飲みながら冬景色を眺めるのもなかなか乙で、捨てがたかったが、途中、幾つか寄りたい場所があったので、結局クルマを選んだ。

 伊豆に入り、昼前に国道135号線沿いのレストランで金目鯛を食べた。宿の夕食は、「板長のお任せプラン」だったので、金目鯛の煮付けが100%出る保証はなかったので、とりあえず開始早々、今回の旅の大きな目的を達成した。早期の目的達成は安心感につながる。

 1泊2日の旅の場合、初日の昼食は、旅全体の成否を占ううえでとても重要な役割を担う。もし、この昼食で大きくハズしてしまえば、例えば奥さんや彼女などを連れていく場合、宿泊先での夕食や、朝食にも大きなプレッシャーを与えることになる。いわば、短期決戦の初戦を悪い形で負けてスタートすること同義だからだ。

 まずまずの展開で無難に昼食を終え、熱川バナナワニ園に行った。この付近は何度も通っていたのだが、初めて入園した。冬の間、ワニの動きは悪く、檻の外から挑発してもまるで置物のようだった。しかし、温泉熱を上手く活用した、同園の見せ物に十分に満足できた。そういえば、バナナワニ園の駐車場にクルマを停めたとき、隣にハーレー・ダビットソンとカワサキZRX1200ダエグが停まっていた。「真冬のような激寒の日に、おっさん2人がオートバイに乗ってワニを見に来ているのか」と思っていると、女性が2人、ワニ園から出て、そのオートバイに跨った。寒空に唯一ホットなシーンだった。いずれにせよ、温泉地の近隣にちょっとしたレジャー施設があると、旅人を退屈させない。

 その後、以前天候不良で入れなかった黒根岩風呂にも入り、宿にチェックインした。客室からは、相模湾の圧倒的な海が見えた。私は金目鯛も食べたし、雪催いの少々荒れた海を眺めながらビールを飲んで過ごすことで満足した。

 夕食は、金目鯛が出た。昼間のレストランよりも、宿の金目鯛の煮付けの方が美味しかった。私は、もう「成仏」してもいいほどに満たされていた。

 夕食が終わり、窓の外を見ると、もう真っ暗だった。海の波の音は聞こえるが、闇の世界である。ビールも昼の間に随分飲んだし、夕食もたらふく食べたので、お酒を飲みたい気分でもなかった。そうすると、もうやることがなくなってしまった。ひとことで言えば、「退屈」を感じてしまったのだ。随分勝手なものだ。旅先でテレビをつける気になれない。しかし、窓の外は真っ暗闇。そして静寂。布団が敷かれ、テーブルは隅に押しやられている。つまり、あとは眠るのみである。多くの旅館でこのような状態を経験する。これは旅館で一夜を過ごす宿命である。この時間をどう過ごすかが、旅人としての力量が問われる。私は気づいたら眠っていた。 

(編集長・増田 剛)

No.448 有馬グランドホテル、機械ではなく「人を介して」運ぶ

有馬グランドホテル
機械ではなく「人を介して」運ぶ

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客様の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その理由を探っていく人気シリーズ「いい旅館にしよう!Ⅱ」の第8回は、兵庫県・有馬温泉で有馬グランドホテル、中の坊瑞苑を経営する梶木実社長が登場。団体客から個人化に移行するなかで、料理の運搬システムや、好評を得ている中華レストランのオーダーバイキングなどさまざまな取り組みを語り合った。

【増田 剛】

 
 

〈「いい旅館にしよう!」プロジェクトⅡシリーズ(8)〉
有馬グランドホテル

■梶木:もともとは江戸時代から木炭を売っていましたが、現在の中の坊瑞苑のある場所で、湯治客に建物の2階を貸しているうちに、宿屋をやっていくことになったのです。個人創業として中の坊旅館を始めたのが1868(明治元)年のことで、来年創業150周年となります。

■内藤:有馬グランドホテルのオープンはいつですか。

■梶木:東京オリンピック前年の1963(昭和38)年です。その後、大阪万博前年の69年に約600人収容まで増築しました。
 95年には、さらなる増築の最中、阪神淡路大震災に遭いました。建物が完成し、既存の建物とつなげるために壁を取り外していた、まさにそのとき、地震が来たので強度が足りず、柱が破裂して傾き、全壊ということになりました。幸い宿泊者には被害はありませんでした。97年の夏に建て直し、今の有馬グランドホテルの中央館ができました。

■内藤:何部屋まで増やそうとされていたのですか。

■梶木:当時約120室でしたが24室を増築し、140室程度になる予定でした。東館、中央館、北館とあるのですが、新しい中央館ができたときは228室。最近、広い部屋を2分割して部屋数を増やしたので、現在は234部屋です。

■内藤:被災した直後は、どうでしたか。

■梶木:ライフラインもストップしたなか、先代が陣頭指揮を取って対応しました。1―2週間後には残った奥の東館だけで経営を再開しました。被災時に当館は工事中だったので、建設会社が常駐していました。このため、比較的早く復興の工事が進み、不幸中の幸いでした。
 当時、もう一つ計画がありました。有馬グランドホテルの裏山の上に、もう一つホテルを建てる予定でしたが、そこで考案していた設計プランを中央館に持ってくることができたので、設計も早く進みました。

■内藤:宿泊客の動きはどうでしたか。

■梶木:阪神間のお客様が当館の7割を占めており、地元の方々も被災されていたので、厳しかったですね。1月17日の震災から夏休みまでは、復興作業の方々が宿泊していました。徐々に一般のお客様が来られるようになるまで1年はかかりました。

■内藤:東日本大震災と違い、消費地と被災地が同じエリアなので大変でしたね。
 その後も、個人化への流れなど、旅館を取り巻く環境は大きく変化していきました。

■梶木:おっしゃるように一番大きく変わったのは、団体のお客様がどんどん減り、個人客が増えてきたことです。まず、チェックインの流れから変わりました。団体客の場合は、到着されると、ご案内は1回で済みます。
 かつては大型団体3件で満館ということもありました。今は、夏休みなどは170件まで口数が細分化されています。
 大型団体のお客様でしたら玄関でのお出迎えから、チェックイン、客室までのご案内、客室での呈茶サービスも、その到着時間に合わせてスタッフを出勤させることもできましたが、個人客化に合わせた運営に変えていかなければならなくなりました。…

 

※ 詳細は本紙1652号または12月7日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

迎賓館で初の交流会、訪日外客4千万人実現へ(観光庁・JNTO)

会場をまわる石井啓一国土交通大臣(左端)
会場をまわる石井啓一国土交通大臣(左端)

 観光庁と、日本政府観光局(JNTO)は11月22日、迎賓館赤坂離宮本館(東京都港区)で「『4千万人』実現に向けた訪日旅行ビジネス交流会」を開いた。迎賓館は、国が最高のもてなし空間に位置付ける場所。今回初めて、ユニークベニューとして一般レセプションに活用された。訪日観光を支える国内外の関係者を招待し、交流会を開いたことで4千万人の目標に向けた動きを強める。

 赤坂離宮は世界各国の国賓や公賓の宿泊、サミットなどの重要な国際会議を行う施設。会場には、日本と海外を結ぶ交通事業者や、旅館やホテルの関係者、旅行会社の関係者など、インバウンドビジネスの最前線を支える200人が招待された。国土交通省は今回の交流会を、迎賓館を活用するリーディング・ケースにする考えだ。

 石井啓一国土交通大臣は「迎賓館の雰囲気を楽しみつつ、関係者同士による交流を深めていただきたい」と語った。そのうえで、「現在のインバウンドの勢いを継続し、2020年4千万人という新たな目標を達成するためのビジネスにつなげていただきたい」と交流会への思いを述べた。

迎賓館の外観
迎賓館の外観
「花鳥の間」で行われたオープニングセレモニー
「花鳥の間」で行われたオープニングセレモニー

 ユニークベニューとは、通常業務とは異なるニーズに応えて特別に貸し出される場所のこと。美術館や博物館など歴史的建造物や公的空間などで、会議・レセプションを開催することで、特別感や地域特性を演出することが可能になる。また、MICE の開催地決定のカギにもなる。近年、欧米などの博物館や美術館では、ユニークベニューとしての施設活用を積極的に行い、自己収入を獲得するとともに、来館者の増加につなげていこうとする動きが多くみられている。

政策要望決議など可決、安全安心の決意を固める

上杉雅彦会長
上杉雅彦会長

日本バス協会 全国大会開く

 日本バス協会(上杉雅彦会長)は11月16日に、岩手県・花巻温泉「千秋閣」で第61回全国バス事業者大会を開いた。約400の会員らが全国各地から一堂に会した。政策要望決議と、安全輸送決議を満場一致で可決。業界を挙げて「安全安心がすべてに優先する」と、決意を固めた。

 政策要望書は2017年度の予算増額を求めた。バス業界は大都市部と地方部で収支の差が拡大している。15年度の収支の差は、約500億円。

 増額対象は「地域公共交通確保維持改善事業」で、地域の生活バス交通を支援する事業。各地方における生活交通網の維持、改善に資する支援を求めたかたちだ。

 安全輸送決議は(1)基本動作の励行(2)走行中のスマートフォン使用禁止(3)飲酒運転防止対策マニュアル――などの徹底を採択した。

 安全への決議の一因に、相次ぐバス業界の不祥事がある。上杉会長は「信頼回復の時期に言語道断。忸怩たる思いだ」と会員らに再発防止を強く訴えた。

 そのほか、第60回「優良運転者日本バス協会会長表彰」や、2つの講演などが行われた。

 岩手県の開催は1989年以来、27年ぶり。多くの来賓がかけつけ、同県の達増拓也知事も祝辞を述べた。大会が終わったあと、懇親パーティーを開催。岩手県の地酒や郷土料理のほか「さんさ踊り」も披露され、盛会裡のうちに終了した。

安全輸送決議を満場一致で可決
安全輸送決議を満場一致で可決

第42回「100選」決まる、表彰式は1月20日、京王プラザ

11月18日に行われた選考審査委員会
11月18日に行われた選考審査委員会

12月11日、旅行新聞HPで発表

 旅行新聞新社・100選選考審査委員会は11月18日、東京都港区の浜松町東京會舘で、「第42回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」の選考審査委員会を開き、総合100選と審査委員会特別賞「日本の小宿」10施設を決定した。

 「第37回プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」「第26回プロが選ぶ優良観光バス30選」などを加えたおもなランキングは本紙12月11・21日合併号紙面および、同12月11日に更新する旬刊旅行新聞のホームページで発表する。

 表彰式は来年1月20日に、東京都新宿区の京王プラザホテルで開かれる。

 「第42回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」は、全国1万6614の旅行会社(支店や営業所を含む)を対象に専用ハガキによる投票を募り、集計した投票結果を後援団体の全国旅行業協会(ANTA)と、日本旅行業協会(JATA)の関係者、旅行雑誌編集者で構成される選考審査委員会で審査し、決定した。

 主催は旅行新聞新社で毎年実施し、今年も10月1―31日まで投票を受け付けた。

 旅行会社の皆様からのたくさんのご投票ありがとうございました。

全国で4万店に迫る、地方も半年で1千店増加(免税店数)

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 観光庁はこのほど、10月1日現在の都道府県消費税免税店数をまとめた。これによると、47都道府県すべてで店数が増加した。全国の店数は3万8653店。前回調査(4月1日)から半年で9・8%増の3451店増えた。三大都市圏を除く地方部は同9・8%増の1318店増え、1万4827店だった。

 同庁は18年に、地方の免税店数を2万店規模に成長させる。「明日の日本を支える観光ビジョン」にある従来の目標から、2年前倒した。今回の増加率であれば、18年度中に達成する見込みだ。

 20年までに1500カ所で外国人受入環境を整備。Wi―Fi環境整備や、免税手続きカウンターの設置、多言語案内表示などの取り組みを支援する。地域の稼ぐ力を引き出し、地域経済の活性化をはかっていく。

合格率は26・1%、総合旅行業務管理者試験

 日本旅行業協会(JATA、田川博己会長)は、11月18日に、「2016年度総合旅行業務取扱管理者試験」の結果を発表した。1万516人が受験し、合格者は2749人。合格率は26・1%だった。合格者のうち、52・2%が旅行業関係者で、続いて大学生が14・4%。一般会社員が10・8%、専門学校生が10・0%。合格者数を年齢別に見ると、30歳代が794人と最も多く、28・9%を占めた。

 同試験は旅行業法に基づいており、JATAは観光庁長官の試験事務代行機関を務める。今年は10月9日に実施された。

 問い合わせ=JATA・研修・試験部(担当・門倉) 電話:03(3592)1277。

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最新のバス技術集合、バステクin首都圏

超節水型バス用洗車機ツアー
超節水型バス用洗車機ツアー

 バス情報専門誌「バスラマ」を発行するぽると出版は11月9日、千葉県・幕張メッセでバス事業者を対象に体験型イベント「第2回バステク in 首都圏」を開催した。

 同イベントは、バスラマ誌面で紹介した新型バスや先端技術を一堂に集め、実際に体験・見学してもらうことが目的。会場では、日本バス協会主催の「中央技術委員会全国大会」と連携し、最新バスの車両展示と公道試乗、バス関連の大型機材の展示などを用意した。さらに、エンジン自動消火装置や後付可能な衝撃防止補助装置の実演、超節水型バス用洗車機見学ツアーなど、多彩なプログラムを実施した。

 超節水型バス用洗車機見学ツアーでは、実際に導入している京成バスの新習志野高速営業所で実働状況を見学。洗車機の洗浄力の高さと、節水効果による水道料金のコスト縮減など、具体的な導入メリットとあわせた説明が行われた。

オプションで車両下回りも洗浄可能
オプションで車両下回りも洗浄可能

 洗車機は、ジェイアール東日本コンサルタンツの「BIG WASHERⅢ」。洗車業界初の2流体洗浄テクノロジーを活用し、微細なミストが強力な気流に乗ってムラなく汚れを落とし、ボディの塗装を傷めずに洗浄できる。さらに、大型車両洗車機で国内初のブロー機能は、洗車後の水滴残りによる水垢が発生しにくく、拭き上げ作業を大幅に軽減させた。使用水量は1台あたり100リットルで、排水リサイクル装置は不要。重視する洗浄箇所にあわせて、各種オプションも用意している。

 次回の「バステク」は来年5月、大阪で開催する予定。

60年の思いの結晶、ザ・ロイヤルエクスプレス(東京急行電鉄・伊豆急行)

車両編成イメージ(cドーンデザイン研究所)
車両編成イメージ((c)ドーンデザイン研究所)

 東京急行電鉄(野本弘文社長)と、伊豆急行(小林秀樹社長)は11月17日、東京都内で会見を開き2017年7月に運行開始予定の新しい観光列車の名称、デザインなどを発表した。名称は、「THE ROYAL EXPRESS」。会見で野本社長は、同車を「当社の60年間にわたる伊豆への思い入れの結晶」と表現。観光客に再び「伊豆に来たい」と思わせるきっかけを作りたいと思いを語った。小林社長は「運行開始が、伊豆の新たな幕開けになるよう、また地元に貢献できるよう取り組んでいく」と宣言した。

 「ザ・ロイヤルエクスプレス」は、JR横浜駅―伊豆急下田駅を結ぶ8両編成、定員100人の観光列車。運行日は週2日で、乗車料金は2―3万円を予定している。「煌めく伊豆。美しさ感じる旅。」を実現するために、「伊豆の素晴らしい魅力を、さらに感じていただける、気品と特別感のある観光列車にしたい」という思いが込められている。1―2号車はファミリーカーを予定し、1号車には子供用の木のプールや書庫も用意。多目的スペースの3号車は、ミニコンサートや、結婚式、展示会などが催せる。5―6号車は食堂車として利用。握りたての寿司を提供するカウンターも用意される。

 車両をデザインしたドーンデザイン研究所代表取締役の水戸岡鋭治氏は、「伊豆の経済と文化、人を結び、豊かなコミュニケーションが自然に生まれる移動空間を志した」と語った。

 同列車の運行に合わせ横浜駅では、カフェラウンジを新たに設置。乗車客専用のラウンジも併設する。下田駅周辺では、下田ロープウェイ寝姿山山頂店舗の改修を行う。また下田東急ホテルは、現在改修工事を行っており、3月17日にリニューアルオープンする。

結婚式も催せる3号車イメージ(ドーンデザイン研究所)
結婚式も催せる3号車イメージ((c)ドーンデザイン研究所)

太古の神秘、気軽に体験、隠れ銀山に往時しのぶ、山形県最上地域

光射す幻想の森
光射す幻想の森

 太古の神秘を気軽に体験――。山形県北東部に位置し、8市町村からなる最上地域は、ブナや巨木など豊かな自然が身近に見られるエリアだ。11月9、10日、最上地域観光協議会(会長=山尾順紀新庄市長)が実施した「もがみスタディツアー」に参加した。見どころを紹介する。
【鈴木 克範】

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 「ブナと巨木のもがみ回廊」をキャッチコピーとする最上地域。最大の特徴は、手軽なアクセスで太古の神秘に出会えることだ。戸沢村の幻想の森もその1つ。駐車場(マイクロバス)のすぐ前に、樹齢1千年以上の天然杉が生い茂る。幹の途中から枝分かれした形が特徴で、周囲の植林された杉との違いは一目瞭然だ。「最大は幹回り17㍍」「写真を撮るなら朝日がさす午前中がおすすめ」。ガイド(最上峡案内人協会)の案内も興味深い。大型バスの場合、川の駅・最上峡くさなぎの駐車場で、マイクロバス(1台手配し、2往復輸送)に乗り変える。

180メートルの坑道探検に出発(谷口銀山)
180メートルの坑道探検に出発(谷口銀山)

 江戸初期(1600年ごろ)に採掘されていた谷口銀山(金山町)は、当時の新庄藩が幕府に隠しもっていたことから「隠れ銀山」とも言われる。地元史跡保存会が坑内の水抜きや清掃など、安全対策を行い、案内人同行のもと180メートルの手掘り坑道を公開(5月下旬―10月末)している。内部は大人1人が少し屈んで進める広さ。採掘時の業務連絡とみられる「サイン」なども残り、往時の苦労がしのばれる。料金(ガイド料、長靴と軍手の貸し出し付き)は団体(バス1台)3千円、個人500円。駐車場(大型バス1台分)は付近の公民館を利用する。

 世代を越え栽培されてきた最上伝承野菜など、食の魅力にも注目したい。20施設以上が参加し、創作料理を期間限定で提供する「最上伝承野菜フェア」などの催しも継続的に取り組んでいる。秋の甚五右ヱ門芋(じんごえもんいも、真室川町)収穫体験は、6月の植え付け前の予約が必要だが、「団体ツアーも増えている」(最上地域観光協議会)という。

「肘折カブ」を使った創作料理(ニューグランドホテル)
「肘折カブ」を使った創作料理(ニューグランドホテル)

 【最上地域の話題】

 最上峡芭蕉ラインは昨年、団体向けの新航路「名勝・本合海(もとあいかい)」コースを新設した。芭蕉と曾良が乗船した地から古口までの舟下りを楽しめる。料金は大人2200円▼鮭川村の与蔵峠(よぞうとうげ)は10月から降雪までの間、日の出とともに幻想的な「雲海」が見られる。出現率は7割ほど。ふもとの羽根沢温泉では雲海ツアーと朝食をセットにした日帰り企画(1人1千円)も▼藩政時代から続く「新庄まつり」(新庄市、毎年8月24―26日開催)が、12月初旬までにユネスコの無形文化遺産に登録される見込み。18府県33件の祭りで構成する「山・鉾・屋台行事」の1つ▼「1人500円で袋に詰め放題」が人気の舟形マッシュルーム(舟形町)に来春、レストラン(約50席)がオープンする。パスタやサラダなどマッシュルームの新しいレシピが見つかるかも。

 問い合わせ=最上地域観光協議会 電話:0233(29)1311。観光プロデューサーを配し相談に乗るほか、旅行会社の現地調査、パンフレット作成経費の助成も行っている。