財源確保が最重要、中核となる人材不足課題(DMO調査)

 日本観光振興協会はこのほど、日本版DMO候補法人に現状を聞くアンケートを実施した。これによると、DMOの取り組みを進めるうえで、「安定的な組織運営のための財源確保」が最も重要だということが分かった。また、戦略の策定や活動を牽引する組織の中核となる人材の不足も大きな課題となっている。

 調査は3月までに候補法人123団体のうち、79%に当たる97団体から回答を収集。回答を参考に、昨年4月に同協会に設置したDMO推進室がどのような支援を行うか検討するのが目的。

 DMO候補法人の登録前に関係組織に事業説明を行ったかについては、55%が市町村や観光協会に周知や事前説明を行ったのに対し、主要観光事業者や観光関係機関への実施は28%にとどまった。また、人材確保やマーケティング戦略策定のためのデータ収集は8割の団体が事前に実施していなかった。

 財源確保のために検討しているものは、「収益事業」という回答が多数だった。そのなかでは、着地型商品や特産品、地域限定グッズの販売、コンサルティング広告収入などが挙げられた。

 人材については、どのようなノウハウを持った人材が不足しているかを質問。全体で59%の団体が「データ収集」の専門スキルを持った人材が不足していると答えた。次いで「人材育成」「財務・経営分析」が多く挙げられた。また、人材育成への取り組みは、研修・セミナー開催と参加支援、講演会の開催などが多かった。一方、日観振には、講師の紹介・派遣や教材の開発・提供、研修などの共同開催・支援などを期待している。

 これらを踏まえ、日観振は今年度、DMO職員らを対象に、DMO入門・初級研修やマーケティング専門人材育成研修、中核人材育成研修の開催などを行っていく。

【7月23日】アマガエル姿で舞男が妙技披露、龍ケ崎の撞舞 (茨城県龍ケ崎市)

龍ケ崎の撞舞1
高さ14メートルの柱の上で妙技披露

アマガエル姿で舞男が妙技披露、龍ケ崎の撞舞

 茨城県龍ケ崎市で7月23日、国選択・県指定無形民俗文化財「撞舞(つくまい)」が同市根町の撞舞通りで開かれる。高さ14メートルの柱の上で、アマガエルの姿に扮した舞男2人がさまざまな妙技を繰り広げる奇祭だ。

 撞舞は、市内にある八坂神社で毎年7月下旬に3日間行われる「八坂神社祇園祭」の最終日夕方から行われる。アマガエルの面を被り、唐草模様の衣装をまとった舞男が、柱の頂上で逆立ちなどの妙技の限りを尽くした曲芸を繰り広げて会場を沸かせてくれる。

 雨乞いや豊作祈願、厄病除けの意味があるといわれる撞舞は、舞男が頂上で四方に放つ魔除けの矢を拾うと1年間災厄を免れるとされている。

 問い合わせ=龍ケ崎市撞舞保存会(龍ヶ崎市役所商工観光課内) 電話:0297(60)1536。

 

民泊新法 早期施行目指す、「旅行業法改正とセット」望む(田村長官)

 田村明比古観光庁長官は6月21日の会見で、〝民泊新法〟の可決・成立を受けて「速やかな施行」を目指す一方で、旅行業法の一部改正法案との「セットでの施行」を望んだ。5月の訪日外客数は前年同月比21・2%増の229万4700人となり、5月として過去最高だと報告した。

 田村長官は訪日外客数が堅調に推移していることについて「2020年の目標に向けては、今年は非常に重要な年になる。引き続きさまざまな施策を講じて、今の勢いを継続させていきたい」とコメントした。

 ■民泊新法成立、1年以内に体制整備を

 6月9日、住宅宿泊事業法案(民泊新法)が参院本会議で採決され、可決・成立した。今後1年以内に政令・省令の制定、各都道府県における条例を検討し、早期施行を目指す。

 田村長官は「旅館業法の許可を受けていないものを含めて民泊サービスが急速に広がってきており、行政が把握できない状態が続いていた。無事に法案が成立してほっとしている」と胸中を語った。

 施行時期については、今後オンライン上での家主の届け出や、年間提供日数の確認ができるシステムの構築などを行っていくほか、各都道府県での体制基盤の整備や、諸手続きに関する条例などを定める必要があるため、「速やかな施行を目指しているが、体制を整えるのにそれなりの時間は必要になってくる」と述べた。

 なお、関連法案である旅館業法の一部改正法案は、本国会での可決・成立が見送られた。この件について「基本的には民泊新法とセットで施行したい。臨時国会が開かれるならば、そこの場で成立してもらいたい」と旅館業法の次期国会での成立を望んだ。

 ■今秋、事業者向けに説明会(通訳案内士法等)

 通訳案内士及び旅行業法の一部を改正する法律案が、5月26日の参院本会議で可決・成立となった。

 今回新たに創設された、ランドオペレーターの登録制度については、秋ごろを目途に全国各地で事業者向けの説明会を行うほか、ウェブ上での情報発信も積極的に行っていく。

 今回の規制緩和により、急増する訪日客に対応するため、無資格者でも有償でガイドを行うことが可能になる。新たなガイド誕生に期待が込められる反面、質の低下や、外国人人材の活用に伴う出入国管理法違反など懸念課題は拭えていない。

 田村長官は「悪質ガイドや悪質ツアーの取り締まりに関しては、関係省庁で連絡会議が立ち上がっている。どのようなケースが法に触れるのかなどを議論しながら、取締強化に向けて効果的な方法を検討していく」と回答した。

夏の温泉 ― 灼熱地獄とは別世界の「涼感」も

 夏休みを目前に控え、「この夏どこに旅しようかなぁ」と計画を練っている人も多いだろう。しかし、「行ってみたい」と思う人気エリアは割高感があるし、最近は外国人観光客も増え、旅館やホテルも予約が取りづらい。つまり、人気観光地の集中度がさらに進んでいる。一方、素晴らしい環境でありながら知名度がそれほど高くないため、旅人には幸運なことに、閑散としているエリアもある。

 先日、東北方面の取材で、岩手、秋田、青森の3県をクルマで移動した。平日だったこともあるが、一般道路は対向車線も含め、前後クルマの姿が見えないことが度々あった。これまでは並行して敷かれている素っ気ない風景の高速道路を利用していたのだが、随分ムダなお金を費やしてきたと後悔した。

 クルマを走らせながら何を感じたかといえば、一般道でありながら、信号の少なさである。

 私は日々、東京都と神奈川県の境目で生活をしているため、その交通量と、信号機の多さにうんざりしている。ストレス解消のためにオートバイに跨っていたはずなのに、マニュアル操作は1速→2速→ニュートラルの繰り返しで、ちっとも楽しくない。楽しくないどころか、ストレスを余計に感じることも少なくない。だからこそ、北東北ののんびりとした信号のない、何気ない道路に、心地よさを感じたのである。何も東北だけではなく、大都市部から離れた日本中のエリアでは、信号のない道路は多く存在する。

 東日本高速道路と中日本高速道路は、7月14日から11月30日まで、高速道路で初めてETCを備えた二輪車限定の高速道路乗り放題プランがスタートする。対象となるのは、「関越道・上信越道・東北道コース」「東北道・常磐道コース」「東関東道・館山道コース」「東名道・中央道コース」の4つ。いずれも2500円で、2日間対象エリア内を自由に乗り降りできる。通常よりも最大で50%以上もお得に移動できるシステムだ。まずは首都圏中心の実施となるが、全国的に広がることも想定されている。

 これによって、かなり割安な料金で首都圏の雑踏を抜け出し、信号の少ない風光明媚な〝ストレスフリー〟の道路に入ることができる。

 今年の夏も、きっと暑い。とくに東京の夏は、強烈なエアコンがなければ生命の危機を感じるレベルだ。

 幸い、日本は南北に長い。東北には豊かな自然と、夏に涼しい山々がたくさんある。北の大地・北海道には、他のエリアにはない広大な土地と、まだ知られていない魅力的な場所がまだまだある。日本各地の山の宿や、海辺の宿も、「避暑地」として滞在できるプランで、埋もれている需要を喚起してほしい。冬の温泉もぽかぽかして気持ちいいが、実は、夏の温泉は入浴後に浴衣で涼めば、都会の灼熱地獄とは別世界の「涼感」を味わえることを、もっとアピールしたいと思っている。

 これからは、信号だらけの渋滞の道を避けて、自然豊かな道をのんびりと走る旅が脚光を浴びるはずだ。その先にある温泉宿に宿泊し、心身ともに元気になる旅だ。誰もが同じ時期に、同じ場所に訪れる〝一極集中〟の旅を卒業したら、今度は、まだ誰も気づいていない道を通って、自分の好きな場所や宿でリフレッシュする旅を創っていこう!

(編集長・増田 剛)

No.465 米山知事×野澤女将、「うまさぎっしり」新潟の魅力語る

米山知事×野澤女将
「うまさぎっしり」新潟の魅力語る

 7月5日、新潟県新潟市のホテル日航新潟で「全国旅館おかみの集い―第28回全国女将サミット2017 新潟」が開かれる。新潟県では初開催となる今回のテーマは「うまさぎっしり新潟」でおもてなし。開催を前に、新潟県の米山隆一知事、今大会運営委員長の野澤邦子女将(湯田上温泉 ホテル小柳)の対談が実現。「うまさぎっしり」の新潟県の魅力や、本大会にかける想い、初の試みとなる市内視察研修などについて語り合った。

【司会=石井 貞德社長、構成=松本 彩】

 
 
 ――新潟県の観光誘客に向けた取り組みについて。

米山:観光にはかなり力を入れて取り組んでいます。新潟は昔から観光が盛んなところだと思います。温泉の数も多く、とくに「うまさぎっしり新潟」のキャッチコピーに代表されるように、ご飯やお酒などもとても美味しいです。この魅力いっぱいの観光素材を生かして、訪日外国人観光客の誘客にも積極的に取り組んでいきたいと思っています。

 訪日外国人観光客の誘客に向けては、満足度の高い旅行体験を提供するため、旅行者のニーズに応じたコンテンツの磨き上げや観光案内の多言語化など、受入体制の整備に取り組んでいます。

 近年はSNS(交流サイト)の発展に伴い、旅行者が観光で訪れた場所や食べたものなどを、すぐにSNS上に投稿し、多くの人に共有できるようになりました。SNSがきっかけでリピーター増加にもつながるため、「案内表記がなかったため分かりにくかった」や「道に迷ってしまった」などのネガティブな要素を少しでも減らしていくことが、重要になってきます。

 県内各地では、地域に根差したお祭り、地域産業を生かしたイベント・産業観光などのさまざまな取り組みが行われています。こうした観光の魅力をより高めていくためには、その取り組みの由来、背景などを含め、ストーリー性を高めて発信していくことが大切だと考えています。

 また、観光に即したまちづくりも非常に重要になってきます。SNS上では、旅先の町並みや景観などの写真投稿をきっかけに、その地域への関心が高まり、写真映えのする撮影スポットには多くの観光客が訪れています。

 このようなニーズに対応するためにも、それぞれの地域で良い町並みを積極的に作っていく必要があります。地元の人しか知らない場所などを発信していき、より多くの人たちに訪れてもらえるよう、魅力的なまちづくりを進めていきます。

 ――7月5日に、ホテル日航新潟で「第28回全国旅館おかみの集い」が行われます。本大会に向けた意気込みを教えてください。

野澤:とにかく新潟は「うまさぎっしり」なので、全国各地からいらっしゃる女将さんたちには、食をはじめとした多くの〝うまさぎっしり〟のおもてなしを感じてほしいと思います。

 また、新潟を知っていただくため、今回は分科会ではなく、新潟市内視察研修として信濃川ウォーターシャトルに乗って新潟ふるさと村を訪れます。時間は限られていますが、お米やお味噌といった新潟県の食文化や風土、伝統を知っていただくことができるのではないかと思っています。

 市内視察研修後の懇親パーティーでは新潟県産の食材をふんだんに取り入れた料理で、訪れた皆さんをおもてなしします。

 そのなかでも、新潟はお米がとても美味しいので、そのものの味をしっかりと感じていただくために、塩のみでシンプルに味付けしたおにぎりを用意します。新潟県産のお米で作った塩にぎりは絶品なのでぜひとも味わってもらいたいです。…

 

※ 詳細は本紙1676号または7月6日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

会員らと考えを共有、民泊新法に陳情を継続(日本旅館協会)

針谷了会長

 日本旅館協会(針谷了会長、2698会員)は6月13日に、ホテルインターコンチネンタル東京で2017年度通常総会を開いた。針谷会長は住宅宿泊事業(民泊)法の成立に触れ「今後は第2幕として政省令・ガイドライン、第3幕として条例の課題が続く。陳情などの活動を継続する必要がある」と会員らと考えを共有した。

 17年度事業計画は引き続き「経営を科学する」との考えのもと(1)生産性向上(2)財務改革(3)販売・収益支援(4)継続事業――の4点を柱に業界全体の底上げをはかる。

 生産性向上は全国10カ所で「生産性向上セミナー(改善活動)」を開催する。改善活動普及の第1人者でもある日本HR協会の東澤文二氏を講師に招く。

 財務の改革は全国支部連合会単位10カ所で「生産性向上セミナー(統一会計基準)」を開催。旅館ホテルの勘定科目の統一や、発生主義に基づく月次決算の啓発、普及をはかる。

 販売・収益支援ではインバウンドや外国人雇用などのテーマも含んだ「経営改善セミナー」を実施。継続事業で民泊問題や耐震問題の解決、調査事業などを行う。

 「会員目線でスピード感をもって取り組む」(針谷氏)と活発的な事業方針の姿勢を鮮明にした。会後はDMO推進機構代表理事の大社充氏を招き「観光による地方創生―DMOによる観光地経営と観光マーケティング―」の講演を行った。

 懇親会では自民党観光産業振興議員連盟会長の細田博之氏を始め多数の政治家らが参加。昨年より参加者が増え、約350人が集まった。

女将サミットのつながり

 「あっ、今大切な時間のなかにいる」。そう感じることが時々ある。

 5月、吉本加代子さんをはじめとする全国女将サミット石川大会(15年)の運営委員が軽井沢に集まった。その夕食の席がそうだった。久しぶりの再会に、近況を報告し合う場面。誰かが伝えた言葉を大事に包んで持ち帰る。そんな比喩がピッタリな、仲間だからこそ共有できる優しい時間がそこにあった。

 一方、さすがは女将さんと感心する場面も。来年開催の日取りと、会の名前「ルビー会」まで決めてしまうとは。恐れ入りました。

 来る5日、28回目の大会が新潟市内で開かれる。今年はどんな出会いが待っているのだろう。かかわりや参加をきっかけに、新しい交流が芽生えたなら。こんなにうれしいことはない。

【鈴木 克範】

楽天、民泊に参入へ、施行に合わせサービス開始(楽天×LIFULL)

(左から)山田氏、太田氏、井上氏

 楽天(三木谷浩史社長)は6月22日、民泊事業への参入を発表した。民泊仲介を目的としたWebサイト「Vacation Stay(仮称)」を立ち上げ、住宅宿泊事業法(民泊新法)施行に合わせてサービスを開始する。新会社「楽天 LIFULL STAY」は、LIFULL(井上高志社長)との共同出資。社長は、楽天で新規サービス立ち上げに従事した太田宗克氏。「自治体への説明責任を果たし、民泊導入のメリットを丁寧に伝える。ゲストとホスト、双方の安全安心を守る保険システムも導入したい」と強調した。

 掲載物件数が約800万の不動産情報サイト(ホームズ)を運営するLIFULL。空き家対策や投資促進のため、できる限り多くの物件を民泊用に提案していく構え。サービス開始時には、数万の物件を用意できるよう準備を進めている最中。体験型旅行商品の販売についても、需要を見定め取り組んでいきたいとのこと。旅行業の登録も行う。

 なお現在、楽天でホテルや航空券の予約サービスを担う楽天トラベル(髙野芳行事業長)とは並行して事業を展開する。楽天ポイントの利用なども可能にし、楽天経済圏を構成する一員となる。

 会見には、太田新社長のほか、山田善久楽天副社長と井上高志LIFULL社長が出席した。

【エレファントツアー社長・五十川 昌博氏に聞く】日本のツーリズムに貢献したい、映像制作は〝私の使命〟

五十川昌博氏

 1988年に米国・ロサンゼルスでインバウンド専門のエレファントツアーを設立した五十川昌博社長。その後、映画の本場ハリウッドで映像を学び、4年ほど前から、ドローンを活用した旅館・ホテルなどのPR動画を作成している。ダイナミックな映像表現で、異なる視点から日本の魅力を発信する五十川氏は「日本のツーリズムに貢献する映像製作は、私の使命」と語る。ドローンを用いた観光PR映像製作のコツを伺った。

【聞き手=増田 剛、構成=松本 彩】

 ――エレファントツアーの成り立ちについて教えてください。

 来年で創業30年になります。1988年に渡米し、ロサンゼルスでインバウンド専門のエレファントツアーを立ち上げました。

 日本にいたころは、私は大学で芸術学部に在籍していたので、78年に友人3人と、音楽専門書の出版社を立ち上げ、編集者として働いていました。しかし、その当時のクラシック人口は日本全国で100万人程度と、とても小さなマーケットだったので、もっと大きなマーケットで勝負したいと考えていました。

 当時、主に五線紙を扱っていましたが、海外旅行がブームになってきた時代でもあったので、しばしば旅行ガイドブックの編集依頼も受けていました。ガイドブックの素材集めのために海外を飛び歩いている間に旅行業界に興味を持ち、〝ツーリズムに生涯をかける〟と一大決心しました。

 ――創業当初から経営は軌道に乗っていましたか。

 当時、現地のオプショナルツアーには、主催旅行会社のパッケージ旅行利用客でない限り、参加することができなかったので、現地に住む友人などを訪ね、個人旅行で来た日本人の多くが「せっかくロサンゼルスを訪れたのに、つまらなかった」という印象を持って帰国していきました。

 私は、ロサンゼルスには多くの魅力あふれるアクティビティがあるのに知ってもらえないのはもったいないと感じていました。そこで受入環境がないのならば、その環境を作ればいいと考え、現地で、誰でも参加できる日本語オプショナルツアーを始めました。

 創業当初は、このようなビジネスモデルは存在していなかったため、好調でしたが、徐々に既存の旅行会社との摩擦が出てきました。それならば違うマーケットを狙おうと、現地に駐在しているファミリー層をターゲットにすることにしました。バブルの絶頂期でもあり駐在ファミリーが日本からどんどん訪れていた時代でした。

 もともと私自身が旅行業界の出身ではないため、大口クライアントを掴むことができず、FIT(海外個人旅行)客を中心にファンを増やしていきました。 

 例えば、駐在員の奥様や子供たちは、日本人同士の交流が中心で、子供たちも日本語学校に通っています。日本語でのツアーは、彼らに大変好評を博しました。最初は好意的ではなかった日系旅行会社も、新しいマーケットを発掘した私たちの仕事を認めてくれ、今では日本で最大級の旅行会社から定期的に仕事をいただくまでの関係になりました。

 ――2001年9月11日の同時多発テロ時の影響について。

 日系の旅行会社の約9割が縮小や倒産に追い込まれました。エレファントツアーはもともとFITを主な顧客層として事業展開をしていたため、団体旅行による大きなキャンセルがなかったのは幸運でした。

 ――ツーリズムのPR動画などを手掛けるようになったのはいつごろからですか。

 学生時代に作曲を専攻していたことや、当地は映画の都であることから映像に携わる仲間がたくさんいたことが理由で、渡米後すぐ映像制作に興味を持ちました。

 当時はアナログの時代でしたが、ハリウッド映画業界で活躍する人たちのおかげで上手にデジタルの波に乗れたのも幸いでした。カリフォルニア州はもちろん、近隣の州政府観光局からも撮影依頼が入るようになり、広大なアメリカでは3―4年ほど前からドローンが活躍するシーンも多かったと記憶しています。

 6年ほど前からは、日系のテレビ局で日本語視聴者向けの旅行番組「GO WEST」を製作しています。観光局の協力を得ながら、実用的な観光情報を提供しているのが特徴です。取材の際に心掛けていることは、地元の人たちにも積極的に声を掛けることです。これによって、テンポ感やストーリー性を感じられる番組づくりができています。せっかくなら雄大な景色はより感動的に、美味しいものはより美味しそうに撮りたいではありませんか。

 このような経験のなかで、エレファントツアーも人材が育ってきました。本格的に音楽や映像をツーリズムの集客に活かしたいと思うようになり、旅行の現場は創設当初からいるマネージャーに任せ、映像の世界に全力投球できるようシフトしていきました。

 ――アメリカではいつごろからドローン映像を撮影していたのですか。

 3―4年前から、ロッキーマウンテンに咲くワイルドフラワー、バリ島の世界遺産、瀬戸内海の島々を空撮してほしいと、観光局や大手旅行会社から依頼を受けるようになりました。

 アメリカでドローンを使うようになったのはここ4年くらいです。そしてこの2年くらいで技術的な革新を遂げ、ドローン撮影の幅は格段に広がりました。

五十川氏自らドローンを操縦し、
魅力あふれる映像表現を追求している

 ――日本でもドローンを使った映像を作成していきますか。

 生意気な言い方かもしれませんが、日本の旅館やホテル、そして観光地のプロモーション映像を見ていると、その土地の魅力が半分も表現できていなく残念に思うことがあります。

 30年前に渡米したときに、「ロサンゼルスにはこんなに魅力的なアクティビティがあるのに日本マーケットに上手く宣伝できていなくてもったいない」と感じたのとまったく同じで、人生の半分をアメリカで過ごした自分には、日本の良さが日本に住んでいる日本人以上に魅力的に映っています。そしてそれをどうにかして海外に伝えたいと強く思うのです。旅館・ホテルでの体験をストーリー化したり、女将1人にスポットを当て、その人物を追う新しいかたちの映像表現があるような気がします。

 私は長年日本を離れているからこそ、四季折々の美しい景色があることや、旅行者のお腹と心を満たす食事がその土地によって大きな特徴があるということなど、異なる視点から日本の魅力に気づくのだと思います。

 私よりカメラの上手い人はたくさんいます。私より編集技術を持つ人もたくさんいます。しかし、学生時代から歩んできた道、アメリカでインバウンド業界に身を置いた半生、業界の人脈、そしてドローンを使った豊富な空撮経験。これだけの条件がそろっている人間はそれほどいないだろうと思うと、日本のツーリズムインバウンドに貢献する映像制作は、私の使命だと感じているのです。

 ――ありがとうございました。

新会長に三澤氏(神奈川中央交通)、安全安心の決意示す(日本バス協会)

三澤憲一新会長

 日本バス協会(島倉秀市会長代行、2445会員)は6月23日に、東京・経団連会館で第90回定時会員総会を開いた。任期満了に伴う役員改選で、三澤憲一氏(神奈川中央交通会長)が新会長となった。総会では安全輸送決議も承認。「まずはバス事業の根幹である安全・安心の確保に取り組む」(三澤氏)と決意を示した。

 安全輸送決議は軽井沢スキーバス事故後の各種対策や、日常的飲酒の指導、運転手の健康管理体制強化などを徹底していく。三澤氏は「この決議に沿って交通事故防止はもちろん、安全運行と関連法令の遵守をはかる」と強調。「日本バス協会会長として改めてバス事業の健全な発展のために、職責をまっとうすることを誓う」(同)と今後の指針を述べた。

 2017年度事業計画で国の監査を補完する「貸切バス適正化機関」を円滑に実施する。今夏にも開始される見通しで「国土交通省や地方運輸局、地方バス協会らと連携協力していく」とし、同会では所要資金など必要な支援を行う考えだ。

 このほか乗合バス事業者の路線維持が厳しい状況を踏まえ、補助制度や補助金確保、税制支援策の確保・充実をはかる。

 総会後には懇親会が開かれ、会員や政治家らが多く参加した。

 会長、副会長は次の各氏。

 【会長】三澤憲一(神奈川中央交通会長)
 【副会長】北海道・平尾一彌(北海道バス協会会長)▽東北・松本順(福島県バス協会会長)▽関東・山口哲生(東京バス協会会長)▽北陸信越・辻川徹(富山県バス協会)▽中部・加藤信貴(愛知県バス協会会長)▽近畿・井波洋(大阪バス協会会長)▽中国・椋田昌夫(広島県バス協会会長)▽四国・清水一朗(愛媛県バス協会会長)▽九州・倉冨純男(福岡県バス協会会長)▽東京・富田浩安(日の丸自動車興業社長)▽JRバス・万代典彦(ジェイアールバス関東会長)▽公営、川崎市・平野誠(川崎市交通局長)