お座敷列車将棋の旅

 将棋の史上最年少棋士で、中学3年生の藤井聡太四段の快進撃が止まらない。小学4年で「奨励会」に入会後、破竹の勢いで昇級昇段を重ね、昨年10月に加藤一二三九段の記録を62年ぶりに更新する14歳2カ月でプロ棋士になった正真正銘の「神の子」だ。

 自分も将棋が大好きで、中学時代の担任教師が将棋部の顧問だったことから遅ればせながら将棋を習い始めた。当時は駒の動かし方ぐらいしか知らなかったが、中学生の時期の成長は驚異的で数カ月で顧問の先生がまったく歯が立たなくなるぐらい強くなった。父親は将棋を知らず相手ができないので、その代わりに駅前の将棋クラブによく連れて行ってくれたし、日本将棋連盟が企画した「大山十五世名人と行くお座敷列車将棋の旅」にも参加させてくれた思い出がある。

【古沢 克昌】

【朝ごはんのおいしい宿 アンケート結果発表】豪華さを感じる朝食が人気

海の幸・米が根強い人気、地元食材を求めるニーズも

 本紙は旅行形態の変化に伴い、宿泊施設での朝食も重要な集客要因と考え、「第42回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」発表冊子内と、本紙が業務提携する「地球の歩き方T&E」のWeb「日本の歩き方」上で、「朝ごはんのおいしい宿」のアンケート調査を実施した。その結果、「種類の豊富さ、豪華さ」を感じられる朝食の人気が高い結果になった。また、海の幸や米の人気が根強く、地元の食材・名産品を求めるニーズも高いことが分かった。 

 推薦施設を都道府県別に見ると、1位は静岡県で89軒、2位が長野県で61軒、3位が北海道で56軒、4位が神奈川県と兵庫県で53軒、6位が群馬県で50軒、7位が栃木県と大分県で43軒、9位が新潟県と石川県、岐阜県の3県が39軒と続く。

 推薦が多かった施設のトップ10は、1位が大分県・別府八湯の杉乃井ホテルで48件、2位が石川県・和倉温泉の加賀屋で47件、3位が新潟県・月岡温泉の白玉の湯泉慶・華鳳で30件、4位が岐阜県・下呂温泉の水明館で27件、5位が栃木県・鬼怒川温泉のあさやで21件、6位が静岡県・稲取温泉の稲取銀水荘で19件、7位が栃木県那須郡のホテルエピナール那須で18件、8位が栃木県・那須温泉のホテルサンバレー那須で17件、9位が鹿児島県鹿児島市の城山観光ホテルで16件、10位が山形県・かみのやま温泉の日本の宿古窯で15件となった。

半数がバイキング

 朝食スタイルでは、推薦された宿の約53%がバイキングではないスタイル、約47%がバイキングだった。バイキングではない食事形態は、「ゆっくり食べられる」ことや「(盛り付けなどを視覚で)楽しめる」、「自分のペースで食事ができる」ことなどから利用者に喜ばれている。

 他方、バイキングは「種類の多さ」や「好みのものを食べられる」、「選ぶのが楽しい」といった意見のほかに、イクラなどの高価な食材を好きなだけ味わえるといった贅沢感も人気につながっている。食べきれないほどの量のメニューが並んでいて、「楽しかった」、「幸せ」、「感動した」などと答えた人も多くみられた。小さな子供がいる利用者にとっては、子供が好きなものを食べられたり、沢山食べられたりすることから好まれるようだ。

いろいろなものを食べられる朝食が好まれる

豪華さがカギ握る

 推薦理由で最も多かったのが「種類が豊富・豪華」で、310件あった。「和、洋、中を万遍なく食べられる」や、「自分の好みにあわせられる」、「選ぶのが楽しい」といった点などが、推薦理由の多さにつながったようだ。子供が楽しみながら食べられることから、家族連れからの支持も高い。

地元食材求める声

 次に多かった推薦理由は、「地元の食材・名産品が食べられる」で218件。ご当地メニューも人気で、地域を感じられる味付けなどは、旅行気分を盛り上げ、好印象を与えている。なかでも、採れたての新鮮な野菜に対する支持が高い。朝食で気に入った特産品などは、お土産として購入する人もいる。

和食形式喜ばれる

 干物や、刺身、イクラなどの海の幸を推薦理由に挙げる声は、196件。とくに、焼き立ての美味しさなどを理由に干物を推す声が52件と多く、日本人の朝食の定番スタイル(御飯・魚・味噌汁)がよかったという声も97件、味噌汁単体でも37件の推薦理由があった。

 刺身やイクラなどを推薦理由に挙げる人からは、「朝から舟盛りが出て感動した」、「自分好みの海鮮丼が作れて幸せ」などの声が聞かれた。朝食で獲れたての新鮮な海の幸を堪能できるのも、利用者の満足感につながっているようだ。

丁寧に炊かれたご飯が人気

根強いお米の人気

 新潟県や北海道など、各地にいろいろな銘柄米がある日本。今回の調査でも、「米の美味しさ」を推薦理由に挙げる声が89件と、根強い人気を示した。米が美味しくて「何杯も食べてしまった」や「印象に残っている」という声が多い。また、炊き立てのご飯を食べられることだけではなく、釜などで丁寧に炊かれたご飯の味に感動した人も多く、好印象につながっているほか、「おにぎりを目の前で握ってくれた」、「付け合わせが沢山あった」という声もあった。

 ご飯・米の関係では、「温泉粥」などで提供される粥が27件推薦理由に挙がっていて「体に優しい」ことが、利用者に喜ばれている。餅も24件の推薦理由があり、日常ではあまり食べることのないつき立ての餅を楽しめたことが好評を得ているようだ。

 朝食のもう1つの主役、「パンの美味しさ」を推薦理由に挙げる声は62件。「焼き立て」、「自家製」、「種類が多い」ことが好印象を与えている。自家製のジャムなども、パンが支持を集める要因になっている。

豆腐はでき立てで

 海の幸や米、パン以外で人気があったものをみると、でき立て、手作り、自分で作る豆腐の支持が高く、43件。とくに湯豆腐が人気。オムレツは38件推薦理由として挙がっていて、目の前で焼き上げてもらえることが、印象に残るきっかけになるようだ。

地産食材人気続く

 地産食材やジビエなどへの注目が高まっているといわれている。施設側でも、「地産食材」をコンセプトに献立作りやフェアを開催しているところは多い。今回のアンケートでも、「地元の食材・名産品が食べられる」ことが多くの人の推薦理由になっていた。地元の食材や味付けは、旅行に出たからこそ味わえるもの。今後もニーズが高まっていきそうだ。

 推薦理由には、「美味しい」や「おすすめ」という声だけではなく、「幸せ」、「ほっとする」、「楽しい」などの声も多く挙げられている。感情に訴えかけるメニュー作りや味付け、盛り付けなども宿の食事を気に入る重要な要素になっているようだ。

 「種類が豊富・豪華」な朝食を推薦理由に挙げている人も、品数の多さに感動したり、選ぶことを楽しんだりしていた。また、刺身など普段朝食のメニューでは並ばないものに対し、贅沢感を挙げる人も多い。朝食の満足感を上げるには、多くのおかずを並べるなどし、目でも楽しめるよう工夫されたメニュー作りも重要になる。

 このほか、手作り感やでき立て、丁寧さなど、料理の味以外の部分を感じられることも、推薦された宿の評価に大きく関係しているようだ。

 なお、今回の調査は2225人の方から回答があり、1073軒の宿が推薦された。

通報制度導入か、ガバナンスを議論(観光庁)

 観光庁は6月15日に「第2回新たな旅行業法制度に関する検討会 経営ガバナンスワーキンググループ」を開いた。今回は企業ガバナンスのあり方について議論。健全な経営の遵守のため「内部・業界通報制度」の導入が検討された。

 会後に記者ブリーフィングが行われ、観光庁観光産業課産業政策担当の黒須卓参事官は「通報するには基準を作るべきとの議論があった」と報告。旅行会社の種別や業績など、判断基準をどこに据えるのかも議論が必要だとした。

 観光庁や旅行業協会、第3者機関などが主体となり実施する可能性が高い。一方で通報による風評被害にも留意する。

 このほか、観光庁らが行う登録更新の確認項目も強化し、更新年度以外での定期的な確認も実施していく考えを示した。

 企業自身の監査体制に対しては「コンプライアンスの問題もあり、内部体制作りも必要」(黒須氏)と述べた。てるみくらぶでも問題になった広告表示・旅行者募集については、現行の規制を強めていく方向だ。

 なお、3回目は6月の4週目に行う。4回目でとりまとめ、夏期に発表して今秋に対策を実行する見通し。

商慣習の見直しも、投資へ〝見える化〟はかる(観光産業革新検討会)

検討会のようす

 観光庁は6月14日に東京都内で第4回観光産業革新検討会を開いた。地域のマーケティングと生産性向上のために、業績や市場状況などの数値の見える化を重視。廃業などで疲弊した地域へ投資促進に取り組む一方で、サービサー(債権回収会社)を積極的に活用すべきとの意見も出た。旅行会社に対する商慣習の見直しも明記され、7月のとりまとめに向け動きが加速した。

 「外部から投資を呼び込むためにも、業績の見える化などはエビデンス(根拠)として必要になってくる」。観光庁の黒須卓参事官は、客観・定量的な数値の把握が必要だとした。併せて見える化すべき指標や、データの抽出方法などの研究の啓発も行っていく考え。

 政策金融や地域経済活性化支援機構(REVIC)などの官民ファンドも引き続き活用していく。投資ノウハウ、人材支援の機能も安定的に提供できるようにし、体制を整えていく方向だ。

 一方で「地域金融機関は地域密着でやってきたが、地域事業者との癒着が生まれている」とEHS代表の渡辺清一朗委員はこの状況を問題視。「改めてサービサーの活用も必要ではないか」と疲弊している地域における解決策の1例を挙げた。

 生産性向上にはオペレーションを合理化し、付加価値の向上と、コスト削減に取り組んでいく。泊食分離などのあり方もワークショップやセミナーを開催して啓発する。

 宿泊施設の情報開示項目も検討し、モデル的に試行を実施。宿泊産業全体の生産性向上底上げを狙う。ただ個々の宿泊施設で厳しい場合も考慮。共同売買のプラットフォームの確立支援もする。

 旅行会社に対しては宿泊事業者への商慣習の見直しをはかる。客室ブロック時には前受金を一部支払わせるなど、デポジットを支払う仕組みの普及を検討していく。

JR東が国交大臣賞、総務大臣賞は大分県に(観光ポスコン)

「行くぜ!東北。」

 日本観光振興協会はこのほど、2016年度の日本観光ポスターコンクールの優秀作品を発表した。国土交通大臣賞は、東日本旅客鉄道(制作=電通)の「行くぜ、東北。」が受賞。総務大臣賞には大分県広報広聴課(西広)の「ゆけ、シンフロ部!」が選ばれた。

 全国から231作品の応募があり、50作品が1次審査を通過。審査会を開き、評論家の山田五郎氏や写真家・映画監督の宮澤正明氏らが各賞を選出した。審査会前には一般消費者からオンライン投票も受け付けた。

 大臣賞以下の各賞は次の通り。

 【観光庁長官賞】
「滋賀県の四季」滋賀県(博報堂)

【日本観光振興協会会長賞】
「SL PRIDE この土地の、誇り。」東日本旅客鉄道高崎支社(ジェイアール東日本企画 高崎支店)

【審査員特別賞】
「福島県観光ポスター『来て』」福島県観光交流局観光交流課(山川印刷所)▽「行くぜ、東北。SLOW TRAIN,SLOW LIFE.」東日本旅客鉄道(電通)

【入賞】
「TAKAOプロモーション」京王電鉄(京王エージェンシー)▽「絶景が待つ、阿智村」長野県 阿智☆昼神観光局(スプライス・デザイン)▽「交通拠点を活用したみえ旅プロモーション事業におけるJR駅掲出用ポスター」三重県みえの観光の産業化推進委員会(ジェイアール東海エージェンシー)

【オンライン投票部門】
1位「雲海に浮かぶ 冬の越前大野城」福井県大野市(中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋)2位「故郷への道」北びわこふるさと観光公社(サンメッセ)3位「静かに町の時間と空気感を味わう」白川町観光協会(OAKS)4位「世界遺産の里 南砺・五箇山」富山県南砺市(北海道大学観光学高等研究センター)5位「和歌山県観光PRポスター『水の国、わかやま。』」和歌山県(和歌山リビング新聞社)6位「新しく生きよう。NEO ONE KUMAMOTO」熊本県熊本市(オービット)▽7位「交通拠点を活用したみえ旅プロモーション事業におけるJR駅掲出用ポスター」みえ観光の産業化推進委員会(ジェイアール東海エージェンシー)

学生がルート提案、訪れて欲しい沖縄(しゅんおき)

 沖縄観光コンベンションビューローはこのほど、Webサイト「旬香周島おきなわ(しゅんおき)」で、沖縄の学生が全国に伝えたい「ぜひとも訪れて欲しい沖縄旅行ルート」を公開した。

 同ルートは、県内の学生ならではの視点で旅行プランを作るコンテスト「学卒プロジェクト」に参加した27チームから選ばれたもの。学生たちは実際に沖縄本島と離島の15地域を訪れ、魅力を調査。その地域にしかない景色やコンテンツ、周遊ルートをコメント付きで紹介している。また、グーグルマップを活用して位置情報も発信している。

ビットコイン支払OK、客船業界で国内初の導入

同社が扱う「オーシャニア・リビエラ」

 豪華客船のツアー販売などを手掛けるティーアンドティー(石井ゆかり社長、東京都中央区)は7月1日から、ビットコイン(仮想通貨)での支払いを受け付ける。客船業界では国内初めて。4月の改正資金決済法施行を受け、リピーターから利用希望の声が増えたため、導入に踏み切った。

 同社側の採用メリットとして、仮想通貨は客船ビジネス特有の変動する料金制度に適応していることをあげる。利用手数料が1%とクレジットカードに比べ割安なことや、請求から精算までの迅速化と効率化がはかれることも魅力。さらに、ビットコイン取扱業社の審査を経ているため、企業の信用度が上がることも大きい。

12人の功労者表彰、やまがた女将会・山口氏ら(日観振)

表彰式のようす

 日本観光振興協会はこのほど、2017年度の観光振興事業功労者を発表し、6月9日に開いた総会内で表彰した。東北支部所属で、やまがた女将会初代会長の山口隆子氏(ほほえみの宿滝の湯)ら12人が受賞した。

 受賞者は次の各氏。

 【北海道支部】篠田政一(故)2006年からすすきの観光協会の会長を務め、観光宣伝や誘客促進に尽力した

 【東北支部】山口隆子 1996―2001年までやまがた女将会会長。県内の温泉旅館の女将に呼び掛け、女将会を結成。私財を投じた「広重美術館」は文化振興、観光振興に貢献している

 【関東支部】西山孝 00―08年まで寺泊観光協会会長。長岡市寺泊の「トキと自然の学習館」開設に尽力。また、海浜植物の保護活動などに取り組んだ▽手塚秀男 05―10年まで塩原観光協会会長。観光協会や旅館協同組合の役員として長年、組織の強化や誘客宣伝に取り組んだ

 【中部支部】渡邉幸一 15年から知多半島観光事業協会会長。同協会を設立し、日本版DMO候補法人として地域の観光活性化をはかっている▽堀口賢一(故)1997―2012年まで谷汲観光協会会長。地元の有志が作った谷汲ゆり園をブラッシュアップするため「谷汲ゆり園遊会」を開き、新たな観光資源として定着させた

 【関西支部】井上良夫 13年から志賀観光協会会長代行。琵琶湖畔に「BSCウォータースポーツセンター」を開設以来、一貫してマリンスポーツの普及と青少年の健全育成に貢献▽木畑忠幸 1998―2004年まで三和町観光協会会長。地域の観光マップの発行など情報発信と知名度向上に努めた

 【中国支部】椋田昌夫 13年から広島県バス協会会長。広島電鉄社長も務め、公共交通運輸事業を通じて地域の観光振興に貢献

 【四国支部】藤本正孝 03年から高知県旅館ホテル生活衛生同業組合理事長。高知県観光コンベンション協会の理事も務め、インバウンド担当として海外の商談会などに参加し、四国の観光振興に貢献

 【九州支部】明石博義 03―14年まで福岡県観光連盟会長。21年間、西日本鉄道役員として鉄道・バスによる旅客運送事業を推進してきた▽樺木野辰巳 03―13年まで宮崎個人タクシー「シェラトン会」代表。40年間タクシードライバーとして「おもてなし」の心で観光客を迎え、毎年5100枚の年賀状を送付。講演依頼も多く、おもてなしの普及に尽力している

宿とOTA ― BtoBビジネスのサービスも高度化

 エクスペディアグループはこのほど、「Rev+(レブプラス)」という、新たな宿泊施設向けのレベニューマネジメントシステムの日本での提供を始めた。

 レベニューマネジメントとは、宿泊施設の客室や航空座席など在庫を繰り越せないサービス業などにおいて、需要を予測することで収入(レベニュー)の最大化を目指し、適切な販売管理を行う手法だ。

 つまり、繁忙期には高い料金設定をし、閑散期には割安料金を早くから打ち出すなど、価格を柔軟に変動させることによって、固定させた場合に比べて収入の拡大を求めていくことも一つの考え方である。

 「レブプラス」では、パートナーの宿泊施設はエクスペディアグループが保有する約38万5千軒のビッグデータから自動的に算出した競合施設20施設の平均客室料金を閲覧できる。「より科学的にレベニューマネジメントを行うことが可能」としている。同社によると、グローバルなホテルグループや大手宿泊施設では、レベニューマネジメントを担当する専任スタッフが在籍し、独自のツールと手法論を設けているが、「小規模のホテルや旅館では、フロントスタッフや予約係が兼任するなど専任スタッフがいないケースがほとんど」という。「全世界のホテル市場でのレベニューマネジメントシステムの利用率は15%以下」との統計もある。

 さまざまな宿泊サイトが存在するなかで、エクスペディアの「レブプラス」は他サイトとの競争の中で差別化になるだろう。同社はユーザーと同様に、パートナーである宿泊施設にとっての使いやすさにも大きな投資をしているのが特徴だ。

 リアルタイムでライバル20施設の料金を見ながら自館の料金設定ができるのは、〝料金設定に悩む〟施設にとっては、この上ないサービスである。

 しかし、一つ気に留めなければならないのは、料金設定はサービスの品質によって決められるもの。いくら繁忙期だからといって近隣宿泊施設の相場を見ながら料金を高くしても、苦情やクレームが増えては意味がない。それどころか、マイナス効果である。

 また、ライバル館が安い料金を設定しているからといって、さらに安くしたのでは低価格競争の渦に呑まれてしまう。

 年間を通じて料金を変えない宿泊施設も強い支持を得ていることも見逃せない。

 「少しでも安い宿を」「普段は宿泊できない高級ホテルがこんなに安く泊まれる」などを求める消費者には、ホテルを探す楽しみが増えるかもしれない。しかし、「いつもの気に入っている宿に泊まりたい」と思うユーザーにとっては、毎日料金が変動すると不安になるし、いちいち料金を確認するのもストレスとなり、他の施設に逃げることもあり得る。

 OTA(オンライン旅行会社)と宿泊施設など、BtoBビジネスは今後さらに加熱し、サービスも高度化していくだろう。しかし、前提となるのは、やはりお客と接する現場が一番大事だということ。

 リピーターは現状のサービスと、料金に満足しているから、その宿にリピートするのであって、コロコロと料金が変わることのデメリットも考慮したうえで、レベニューマネジメントと上手く付き合ってほしいと願う。

(編集長・増田 剛)

売上2718億円で過去最高に、的を絞ったM&Aで拡大はかる(HIS第2四半期)

「主導的なM&A戦略へ」

 HIS(澤田秀雄会長兼社長)が5月26日に発表した2017年10月期第2四半期(16年11月―17年4月)連結業績は、売上高が過去最高で前年同期比6・2%増の2718億2500万円だった。当期純利益も過去最高で5120・2%増の51億7600万円、営業利益は26・8%減の62億4600万円。増収減益だが、2月の海外旅行取扱高で、JTBを上回るなど勢いがでてきた。旅行事業とホテル事業に的を絞ったM&A(合併・買収)でスピード感を持った事業拡大をはかる。
【平綿 裕一】

 売上高は海外、国内の送客数増とHTBグループの好調で増収。営業利益減は年末年始の日並びや、第1四半期の利益率低下、熊本地震によるHTB入場者数の減少などが響いた。経常利益は前年同期比134・5%増の105億3500万円。円安による為替差益が約27億円に上ったことが増加要因となった。

 澤田氏は26日の会見で「赤字部門を閉鎖し無駄な経費を削った。これだけで利益になる。投資も見直している」と説明した=写真。数多く事業展開をするなか、企業全体を見渡し肥大化を避けたい方向だ。今後は旅行事業とホテル事業に絞ったM&Aを強める。「主導的なM&A戦略に舵を切った」(澤田氏)とスピード感を持った事業拡大をはかっていく考え。

 既に今年に入りカナダに拠点を持つ旅行会社メリットトラベルと、欧州方面に強いランドオペレーターのミキグループをM&Aするなど積極的だ。それぞれの国・地域で規模のある企業をM&Aすることで、ゼロから始めず迅速に事業領域を広げていく。

 HTB単独業績は、来場者数が5・9%減の147万人、売上高が6・1%減の143億9700万円、営業利益が13・5%減の41億200万円、経常利益は27・2%増の55億8300万円。減収減益だったがHTBのホテル予約状況は7、8月で40%以上伸びている。回復基調になったうえで、来場者増加を目指し「可能性があればカジノも視野に入れる」と、IR(統合型リゾート)参入を示唆した。

 ホテル事業の営業利益は4億9400万円(5・4%増)と増益。変なホテル1号店が好調で「5億円前後の利益が出る」という。現在144室だが、56室増やし200室にする。3月に2号店が開業し、8月に愛知県のラグーナテンボスで3号店を予定。「東京で3―5店、大阪で1―2店作っていく」とし、投資の手を緩めない方向だ。

 海外でも動きは活発。台湾大手ホテルチェーンを5月に子会社化した。台北市内16軒のうち1軒を変なホテルに改装して、海外展開に乗り出していく。とくに台湾、上海、東南アジアを狙う。

 一方、2月に海外旅行取扱高でJTBを上回り旅行業界で首位に立った。澤田氏は「ナンバーワンになると利益がぐっと変わる。これから増収増益なってくると思う」と好調さをうかがわせた。

 なお、10月期のHIS連結業績予想は、売上高が前年同期比11%増の5800億円、営業利益が40%増の200億円、経常利益は166%増の230億円、当期純利益は4393%増の120億円とした。HTB単独業績見込みは前回発表時から修正があり、入場者数4%増の300万人、売上高は4%増の298億円、営業利益は8%増の82億円、経常利益は53%増の100億円を見込む。

No.463 第3回 旅館100選台湾プロモーション、台湾側が過去最多の46社参加

第3回 旅館100選台湾プロモーション
台湾側が過去最多の46社参加

 旅行新聞新社(石井貞德社長)は4月19-23日まで、台湾の台北市で「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」入選旅館と、日本の観光をPRする「旅館100選台湾プロモーション」を実施した。2015年に旅館100選発表40周年を記念して始めたもので、今年が3回目となる。過去最多となる台湾の旅行会社46社と商談会を行うとともに、台北市内3カ所の会場で開かれたデザインのビジネスショー「台湾文博会」に旅館100選ブースを出展して、一般消費者に100選入選旅館と日本観光の魅力をアピールした。

【有島 誠、鈴木 克範】

 
 
 
 
 台湾の旅行会社を招いた商談会は4月21日、台北市内のホテルで開催し、北は東北から南は九州まで17旅館20人が参加した。本紙と提携する台湾の観光業界専門誌「旅奇」(TRAVEL RICH)が企画協力した。台湾側からは過去最高の46社71人が出席して旅館との個別商談会に臨んだ。

 会の冒頭にあいさつした旅行新聞新社の石井貞德社長は、熊本地震後の支援への謝意を伝えるとともに、「42年前に専門紙を創刊し、旅館100選をスタートさせた」と紹介。「昨年は台湾から400万人以上の旅行者が日本を訪れたが、この商談会がより一層の訪日客増につながれば」と期待を込めた。

 会場では中央に旅行会社が着席。周囲に参加旅館ごとに17のブースを設け、旅行会社が自由に訪ねてじっくり個別商談できるようにした。

 商談は旅館側の自己紹介のあと、自由にティータイムを取りながら約2時間行われた。すでに取引のある旅館を先に回る旅行会社や、1軒ずつ丁寧に回る旅行会社もあった。順番待ちのできるブースや、旅館の代表者1人と旅行会社数人が面談するなどどこも盛況で、熱心な商談が続いた。…

 

※ 詳細は本紙1673号または6月15日以降日経テレコン21でお読みいただけます。