「提言!これからの日本観光」 “新日本観光”構造構築の年 ~年頭に想う~

2021年1月24日(日) 配信

 昨年はコロナ禍で観光にとって、厳しい年となった。今年こそコロナ禍を収束させ、観光再活性化の年にしなければならない。

 昨年後半、観光客の動きが戻り始めてきたが、観光客の動向は休日感覚の変化もあり、微妙な変化が見受けられた。観光の小単位化が進み、近距離旅行の増加と高級指向が目立った。

 今年の観光はこのような動向を受け止め、新しいポストコロナ時代にふさわしい観光を提案して、持続性の高い真の観光の実現を期待したい。また、近年提起されてきた観光の課題解決を含め、単なる復活ではなく、新しい観光構造構築の年としなければならないと思う。そのキーワードは「多様な観光」である。

 まず、訪日外国人客の「発地(国)」の多様化である。近隣の国のみならず、全世界から万遍なく観光客を迎えたい。国際情勢が変化しても、安定的に需要を確保でき、幅広い国際親善にもつながるからである。邦人についても大都市圏に限らず、全国各地の人々が気軽に自らの戸口から観光に出掛けるようになるべきと思う。いわば“国民観光”の展開だ。

 次に「着地」の多様化である。有名観光地の混雑が「観光公害」と言われるほど、大問題となったのは記憶に新しい。全国どこでも観光地と言える恵まれた日本の立地を生かして、全国各地に万遍なく、内外の観光客を迎える“汎日本観光”を進め、幅広くゆとりある観光を実現したい。受入体制の整備が重要だ。

 第3に「観光手法」の多様化である。見物観光と温泉が観光の定番であった。リピーターも増えているなか、絶えず新鮮な観光とするため、観光の手法を変えて、観光客に新しい角度・視点から観光対象に接してもらい、新しい魅力を発見してもらう必要がある。

 具体的には「産業観光」や「街道観光」などのテーマ別に視点を据えた観光やスポーツ観光、ウォーキング観光などの行動型の観光などがその例である。いわば、観光対象に万遍なくさまざまな角度から接することである。

 以上の「多様な観光」の実現のため、さまざまな情報発信と交通、宿泊施設など観光インフラの万遍ない整備が急務となろう。

 多様な観光で、これまでの課題である集中と混雑は緩和される。また、リピートによる観光資源の価値劣化も防止され、観光対象は多くの人に対して魅力を増加させることができよう。

 観光は「観光したい」と思う人々の「旅心」が盛り上がってこそ実現する。さまざまな施策の基礎に人々の「旅心『観光する心』」に訴える、いわば「心」の観光キャンペーンの必要性を痛感する。Go Toキャンペーンのような金銭面の支援策も観光する「心」のキャンペーンとの並行実施で、より持続性のある効果が発揮できるのではなかろうか。

 今年こそ持続性ある新しい日本の観光構造を構築する「新日本観光」元年とすべく、及ばずながら残された微力を尽くしたいと考える次第である。

須田 寛

 

日本商工会議所 観光専門委員会 委員

 
須田 寬 氏
 
 
 
 

「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(192)」 「中世」がそのまま残るまち(島根県益田市)

2021年1月24日(日) 配信

1602年創業の地元酒造の右田本店は中世の酒を再現

 山や川など自然地形に沿った町割りは、現在の都市と比べると誠に不思議である。角を2つ曲がると元の地点に、角を3つ曲がるとまるで違う地点に行ってしまう。そんな中世の不思議な町割りが残る島根県益田市。その秘密とは何なのか。

 益田の地名のもとになった益田氏の本姓は藤原。その歴史は、初代国兼が石見国府として赴任した1114(永久2)年に遡る。南北朝の動乱期、11代兼見は益田平野の支配権を確立し、居城・七尾城を構え、東西に土塁、周囲を堀で囲む大規模な館(三宅御土居)を築き、中世益田の城下町が形成された。また、戦国戦乱のさなか、長門国見島(現山口県萩市)や博多湾沿いの海洋貿易の拠点を築き、国内はもとより朝鮮、中国、ベトナムなどとの国際交易を行う海洋領主としても成長していった。

 しかし、1600(慶長5)年の関ヶ原の戦いで毛利氏が敗れると、益田氏も益田から長門国須佐(現山口県萩市)に国替えとなり、三宅御土居や七尾城は廃絶。益田は津和野藩と浜田藩の領有となり、近世城下町を再建することなく中世の町並みを残し、そのまま終焉を迎えた。

 多くの都市では、近世城下町の建設が中世の町割りを上書きし、その面影が消えるなか、益田は中世がそのまま残った稀有なまちとなったのである。その益田が2019年の日本遺産(「中世日本の傑作益田を味わう」)に認定され、昨年末、日本遺産セミナーにお招きいただいた。

 益田では日本遺産認定に先立ち、既に「歴史文化基本構想」及び「文化財保存活用地域計画」の策定を終え、6つのゾーン12のストーリーに沿ったまちづくりが進んでいる。今回の日本遺産は、基本構想12ストーリーの一部、「益田氏と雪舟がつくり上げた中世のまち益田」「日本海に漕ぎ出した益田の人々」が骨格となっている。益田は雪舟終焉の地とされ、中世寺院万福寺と崇観寺(医光寺)には見事な雪舟庭園がある。また日本海に注ぐ高津川・益田川沿いには、砂州から発見された中世湊・中須東原遺跡の荷上場跡なども残る。ここは中世博多湊や青森県五所川原の十三湊などと同じ構造をもつ中世湊跡である。

益田氏文書をもとに再現した中世食

 益田の地域活性化への取り組みは多岐にわたるが、とりわけ中世の食の再現が面白い。益田家文書に記された戦国時代の多彩な食材のリストからこれらを丹念に再現している。1602年創業の地元酒造の右田本店は、中世の酒も再現した。雪舟の庭で体験する中世の食と酒は、誠に魅力的である。

 「中世」に拘る益田の取り組みは誠に面白い。しかし、来訪者にも理解しやすいまち並みや中世湊の可視化、広大なエリアの2次交通、中世都市の語り部の養成など、課題は少なくない。ストーリーは分かりやすくかつ体感できることが必須である。益田の今後の取り組みに注目したい。

(東洋大学大学院国際観光学部 客員教授 丁野 朗)

客室で気兼ねなく旬のお膳を 岩手県・新鉛温泉 結びの宿 愛隣館

2021年1月23日(土)配信

部屋食(イメージ)

 ピンクリボンお宿ネットワークへの加盟や「ウェルカムベビーのお宿」認定など、宿泊客にやさしい宿からの提案は「部屋食」だ。
 夕食は上げ膳据え膳で、気兼ねなくゆっくりと、旬のお膳を楽しめる。メイン料理は花巻市の郷土食材「プラチナポーク(白金豚:はっきんとん)」。海山の幸と季節の食材を織り込んだ献立を用意している。このほか利用人数や宿泊プランにより、個室会場、宴会場などが利用できる。

宿からひと言

 貸切風呂「ちゃっぷん」では、内湯と半露天の信楽焼陶器風呂の 2つの浴槽をお楽しみいただけます。

宿情報

〒025-0252 岩手県花巻市鉛字西鉛23
☎0198(25)2619 FAX:0198(25)2938
【客室数】全100室 【温泉】ナトリウム-硫酸塩泉
【浴場】大浴場「川の湯」「山の湯」「森の湯」(時間帯により男女入替)
    貸切風呂「ちゃっぷん」

「観光人文学への遡航(7)」 カント「永遠平和のために」①

2021年1月23日(土) 配信

 
 「純粋理性批判」などの批判哲学を展開したカントは、戦争状態が起こらないようにするための具体的な計画を記している。1795年に出版された「永遠平和のために」がそれである。

 
 本書が執筆された18世紀の終盤とは、まさにフランス革命の衝撃が欧州に広がった時期である。カントの祖国プロイセンは、フランス革命への干渉を目的にフランスに戦争を仕掛けたが、フランス市民の決死の抵抗に遭い、戦争を終結し、バーゼルの和約という講和条約を締結した。欧州諸国はこのような欧州内の戦争だけでなく、その強大な武力を背景に植民地を世界に展開していた。

 
 このような争いの絶えない時期に、カントは永遠平和について考究した。

 
 カントは、本書を2章に分け、第1章では、永遠平和を確立するための予備条項を記し、第2章では、永遠平和を確立するための確定条項を記した。

 
 この手の論考は読んでない人からすると、一見地球市民的な理想論のたぐいに過ぎないのではないかと思われるだろうが、カントは冷静なリアリストとして理想と現実のバランスが取れた平和論を展開している。

 
 これまでの連載でも強調してきた通り、カントは実践哲学において、人間の唯一根源的な権利としての自由を尊重してきたが、本書においても、それぞれの国家が人間と同じ概念としての自由を持つとの立場で論旨が展開されている。第2予備条項において、「独立しているいかなる国家も、 継承、交換、買収、または贈与によって、ほかの国家がこれを取得できるということがあってはならない」としている。すなわち、小国が大国に飲み込まれることを強烈に批判している。

 
 世界連邦、または世界共和国もそれの延長線上として捉えられていて、世界統一国家となった場合には、弱小国の論理は蔑ろにされるのが常であり、常に強大国にとって都合がいい状態が形成されてしまうことの危険性を喝破している。そのうえでカントは、第2確定条項において、諸国家の連合とそれに基づく国際法の必要性を説いている。

 
 さらに、第3確定条項において「世界市民権」が提案されている。ここで興味深いのは、カントが示す世界市民権とは、「外国人が他国に足を踏み入れても、それだけの理由でその国の人間から敵意をもって扱われることはないという権利」すなわち「訪問権」のみであるという点である。

 
 世界市民の権利といったら、もっと多様な人権をイメージしそうなものであるのに、カントは、単に訪問権のみに限定したのは、大きな理由が隠されている。次回以降、カントが何を思って世界市民権を訪問権のみにしたのかを明らかにするが、まさにその考究こそが、ほかでもなく観光が真の意味で平和へのパスポートとなりうる最大のヒントになるのである。

 

コラムニスト紹介 

島川 崇 氏

神奈川大学国際日本学部・教授 島川 崇 氏

1970年愛媛県松山市生まれ。国際基督教大学卒。日本航空株式会社、財団法人松下政経塾、ロンドンメトロポリタン大学院MBA(Tourism & Hospitality)修了。韓国観光公社ソウル本社日本部客員研究員、株式会社日本総合研究所、東北福祉大学総合マネジメント学部、東洋大学国際観光学部国際観光学科長・教授を経て、神奈川大学国際日本学部教授。日本国際観光学会会長。教員の傍ら、PHP総合研究所リサーチフェロー、藤沢市観光アドバイザー等を歴任。東京工業大学大学院情報理工学研究科博士後期課程満期退学。

 

「津田令子のにっぽん風土記(69)」健康寿命を延ばし100歳まで元気で~ 東京都・目白編 ~

2021年1月23日(土) 配信

歩こう会(七福神めぐり)
目白接骨院(仙骨バランス整体)院長 岡野 達徳さん

 JR山手線・目白駅を降りると正面に、目白ライフを楽しめると評判の商業施設、トラッド目白が目に入る。そのすぐ裏手にあるのが目白接骨院だ。駅から3分と利便な住宅街の一角にある。エレガントな街にふさわしく、住居兼だというお洒落で清潔感あふれた建物が青空に向かってよく映えている。
 

 岡野達徳さんは、生粋の目白っ子。「祖父の代から『目白の方々を中心に100歳でもお元気に』を合言葉に施術させていただいています」と話す。
 

 30歳の時に父の後を継いで院長になって以来、1人でも多くの患者さんに少しでもハッピーに日々を過ごせるように一人ひとりに寄り添う施術を行ってきた。
 

 聞き慣れない「仙骨」の重要性についてお聞きすると、「仙人の骨と書き、生命維持向上に重要な骨です。背骨の土台となる骨盤の中心に位置し身体を支えています。仙骨が正しい位置にないと骨格、筋肉、内臓、神経、体液の流れにストレスを与え続けてしまいます」という。「そのズレを仙骨矯正により繰り返し脳に正しい位置を記憶させることで身体全体にかかるストレスを軽減し、人間本来の自然治癒力を高めていきます」とおっしゃる。
 

 岡野さんは施術のみでなく、患者さんの健康維持・増進ために、さまざまなことを試みている。その1つが「目白歩こう会」だ。
 

 2年前には「雑司ヶ谷七福神めぐり」を実施され、自ら目白に点在する名所を案内しながら7つの神社仏閣を訪ね、ご自身が丁寧に筆書きされた色紙に御朱印を集めながら楽しまれたという。コロナ禍ではあるけれど「ぜひ、次をやりたいですね」と笑顔で語る。「毎年、経営者仲間と福島の児童施設に赴きランドセルの寄贈(タイガーマスク運動)を行っています」。
 

 目白接骨院では、患者さんに安心していつでも施術を受けていただけるようにと定休日なしで、364日診療(毎年1月2日は、患者さんの完治を願う祈願に出掛けているので施術はお休み)を行っている。趣味である「日本一周ハーレーの旅」を実現できないのが目下の悩みという。モットーは、「地域の方々の健康寿命を延ばし100歳でも歩いて元気に」だ。
 

 2019年の日本人の平均寿命は、男性81・41歳、女性87・4歳と依然として高い水準を保っているが、常に仙骨の正常な位置を意識し保ちながら適度に歩くことを続けていけば、平均寿命100歳も夢ではないような気がしてきた。

 

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

 

サービス連合、35歳年収550万円の要求継続 「観光産業発展のために必要」

2021年1月22日(金) 配信

後藤常康会長

 サービス・ツーリズム産業労働組合連合会(後藤常康会長)は1月22日(金)に会見を開き、2020年秋闘の結果と21年春闘の方針を発表した。21年春闘では引き続き、11年に中期的な目標として定めた「35歳年収550万円」の実現のほか、年間賃金の1%向上を目指す。

 後藤会長は「観光業界を発展させるには、長期的に一定の労働条件を整えて行く必要がある。賃金は短期的に変えるべきでない」と狙いを説明した。一部組合については交渉が厳しくなると予測したうえで、「会社の実情に沿った要求も理解できる」と語った。

 コロナ禍における会社の存続や賃上げについては、「一事業者と一個人の取り組みで経営状況は改善できない」と話した。これを踏まえ、コロナ禍前と同水準の給与を維持した会社に返済を免除する「観光産業持続可能給付金」の創設を昨年6月に要望した観光庁や立憲民主党、商工会議所などに再度、求める。

 現在の雇用状況については「(コロナ禍が原因の)解雇に至っていない」と述べた。観光業界の一部会社が実施した希望退職は「従業員自らが会社を辞めている」とし、「一定の削減は理解する」との認識を示した。

 昨年12月16日(水)までに集計できた54組合の冬季一時金支給月数の単純平均は、前年同季比0・87カ月減の0・36カ月だった。このうちホテル・レジャー業の27組合は、同0・81カ月減の0・46カ月。ツーリズム・航空貨物業の27組合は同0・93カ月減の0・26カ月となった。なお、KNT―CTホールディングスなどは、冬季一時金の代わりに、生活支援金や慰労金などを支給した。

 後藤会長は「これまでに経験したことのない状況での交渉だった。生活支援金などを獲得できたのは粘り強く交渉した結果」と振り返った。

新潟・津南高原ゆめファームの「雪下人参」、予約販売を開始

2021年1月22日(金)配信

津南高原ゆめファームの雪下人参

 津南高原開発(樋口明社長、新潟県・津南町)が運営する総合リゾート施設「ニュー・グリーンピア津南」は、早春の津南の風物詩「雪下人参」の予約販売を始めた。栄養が豊富で、通常の人参と比べて独特のえぐみがなく、甘みが強くみずみずしいため生でも食べられるのが特徴。商品の発送時期は、3月中旬~4月上旬を予定している。

 ニンジンに多く含まれるカロテンは、体内に入ると必要な分だけビタミンAに変化。皮膚や粘膜を健康に保ち、乾燥を防ぐだけでなく、抗酸化作用も発揮されるなど、生活習慣病の予防にもなるといわれている。

 ほかにも、血圧の上昇を抑えるカリウムやカルシウム、腸内環境を整える食物繊維、不足すると倦怠感や手足のしびれなどが出てしまうビタミンB1。皮膚や爪、髪などの健康維持に欠かせないビタミンB2、妊娠中の女性に不可欠の葉酸など、女性にうれしい多くの栄養素が含まれている。

 販売価格は送料込みで、2キロ1980円、5キロ2980円、10キロ4980円。購入の申し込みは、公式ホームページ内の「お買い物」ページから。

「スゴ楽予約」サービスを開始 ウェブ上で募集型旅行の予約完結、東武トップ

2021年1月22日(金) 配信

ウェブで座席指定も可能に

 東武トップツアーズは1月21日(木)から、同社旅行予約サイトでJRと宿泊がセットになった募集型企画旅行(パッケージ旅行)の予約申し込みができる「スゴ楽予約」の受付を開始した。

 同サービスは、従来は店頭や郵送での受け取りが必要だった旅行商品を、パソコンやスマートフォンからの申込時に列車や座席の指定、旅程確定までできるようにした。また、出発前に指定席券売機でJR券(JR契約乗車票)が受け取れるようになった。

 店舗に訪れることなくツアーが予約できることで、利便性の向上や接触機会を減少させることを狙う。

石垣市・平田観光 「水の里」ダブル受賞 西表島トレッキングツアー

2021年1月22日(金) 配信

西表島・浦内川

 沖縄県石垣市の旅行会社「平田観光」(大場喜満社長)が企画した西表島のトレッキングツアー「神々のお膝元 浦内川流域に生きる人々と水の歴史」が、国土交通省主催の「水の里の旅コンテスト2020」で、一般部門の優秀賞と特別賞(絶景賞)をダブル受賞した。同コンテストは水源地や水文化の保全地域の観光資源を活用した旅行企画を表彰するもので、昨年11月30日に発表された。

 ツアーは日帰りで、西表島で長年にわたりガイドツアーなどを手掛ける浦内川観光(平良彰健代表)の協力のもと、島最大のパワースポット「マリユドゥ」と聖地「カンピレー」の2つの滝をめぐるほか、浦内川の中流沿岸にかつて存在した「稲葉集落」跡地を訪れる。

 同集落は大洪水によって1969年に廃村となるまで、恵まれた水田を生かし稲作業が盛んに行われていた。子供時代に集落で生活していた平良代表がツアー途中からガイド役となり、廃村になった経緯や浦内川との共生、さらに浦内川の支流、宇多良付近で1935年から約8年間稼働していた「宇多良炭鉱」の歴史など、体験談を交えながら語りかけるのがこのツアー最大の特徴だ。

 コンテストの審査員からも「もともと生活をしていた人をガイドにトレッキングできる点はさらに奥深く地域を知ることができる」「集落の歴史を当の住人から語っていただけることは旅行者の心に強く残りそうだ」と、単なるトレッキングツアーではなく、歴史に触れるストーリー性の高さが評価された。

 ツアーは4月から実施予定。昼食は環境に配慮した「エコ弁当」とし、西表島で生産する無農薬黒紫米などを使うなど食材にもこだわる。

 1972年創業の平田観光は八重山の離島観光の草分けとして、48年の歴史を誇り、離島周遊の定番コースを販売するかたわら、近年は異業種とのコラボなどにより、高付加価値型の商品開発に取り組んできた。今回のツアー企画もその一環で、大場社長は「アフターコロナを見据え八重山の新しい旅のスタイルにしていきたい」と話す。

「トラベルスクエア」繰り返される日本軍の失敗

2021年1月22日(金) 配信

 

 

 日本政府の政治家諸氏は1984年発刊の「失敗の本質」を読んでおられないのだろうか。

 この本は一橋大学の野中郁次郎先生が防衛庁(当時)と組んで研究した先の大戦での日本軍の徹底的な敗北をノモンハンからレイテまで個別の戦闘の跡を辿りながら容赦なく分析したものだ。

 もはや40年近くも前の本だが、今、読んでもはは~と頷けるところばかりだ。

 大前提としての戦略目標の単一性の問題。日本はあの戦争で何をしたかったのだろう? と思う。日本の国際的な地位安定なら他のやり方もあっただろう。それがいつの間にか、米英撃滅にすり替わった。今回のコロナ騒動をみても、政府の方針の一貫性のなさは誰にでも明らかだ。疫病撲滅と経済保全。所詮、矛盾するテーマをいっぺんにやろうとするから、混乱をきたす。Go Toキャンペーンなどその最たるもので、これが一般消費者の気の緩みを生んだのは間違いないだろう。

 「決戦の3週間」。何とも勇ましいが、裏付けの手法を書いているのは、戦時中の「神国日本、負けるわけない」のスローガンと同じ。今回の緊急事態宣言も僕に言わせればツーレイト、ツーリトルだろう。ここは前回と同じレベルで施行し、管理も強化する。区切りも最低2カ月いるんじゃないか。1カ月というのは「こうあってほしい」という目標ではないのか。

 やはり、コロナ封じ込めを決意したからには、徹底的に必要な時間をかけて、念入りに、といってほしい。日本軍は小出しに戦術を繰り出し、全部、アウト。兵力の逐次投入と、やってはいけないことをしている。

 中の組織も相変わらず上司への忖度優先、部下へのおもねりが主流になっているような。

 それじゃ、日本の産業が完全にアウトになるとご心配の向きもあろう。

 だいたい、これまでのコロナ経済政策は、個人(お店)の生存権保障と産業基盤整備の中で前者を重視し過ぎのように考えている。個人の救済はベーシックインカムベースの公平的給付、それとは別に、飲食、観光、小売り、エンターテインメントなど業界別の基盤整備にどれだけ経済資産を配分できるか、を改めて国民的議論として起こすべきだと思う。

 国が亡くなるなどとお嘆きなさるな。国じゃなくて今の政府がなくなるだけ。戦後の大混乱のなかでも新政府が樹立され、立派に蘇った日本。まして戦争直後は家も焼き払われ、何も無い地点からの再出発だった。今は家もある工場もある、最低限の生活物資の備蓄もあろう。格差問題の解消は急務だが、それもいっぺんに解決する。どうか産業に携わる皆様、ここは開き直っていただけないものだろうか?

 

コラムニスト紹介

松阪健氏

 

オフィス アト・ランダム 代表 松坂 健 氏=1949年東京・浅草生まれ。1971年、74年にそれぞれ慶應義塾大学の法学部・文学部を卒業。柴田書店入社、月刊食堂副編集長を経て、84年から93年まで月刊ホテル旅館編集長。01年~03年長崎国際大学、03年~15年西武文理大学教授。16年~19年3月まで跡見学園女子大学教授。著書に『ホスピタリティ進化論』など。ミステリ評論も継続中。