ビスタホテルマネジメント民事再生 負債は約30億円 東京商工リサーチ調べ

2021年3月15日(月) 配信

ビスタホテルマネジメントは3月11日(木)、東京地裁に民事再生法適用を申請した

 ビスタホテルマネジメント(佐藤雅之社長、東京都千代田区、資本金5000万円)は3月11日(木)、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、保全・監督命令を受けた。申請代理人は澤野正明弁護士(シティユーワ法律事務所、東京都千代田区)、監督委員には長沢美智子弁護士(東京丸の内法律事務所、東京都千代田区)が選任された。

 東京商工リサーチの調べによると、負債総額は約30億円。

 同社はシンガポール上場企業の系列企業として、ビジネスホテル「ホテルビスタ」を運営していた。主にビジネス客向けの事業展開で2019年12月期には売上高71億1450万円を計上した。

 東京オリンピック・パラリンピックのインバウンド需要増加を見込み、19年末から20年に掛けて新たに5館を開業するなど事業の拡大を行っていたが、新型コロナウイルス感染拡大で売上が減少。資金繰りが悪化し、このほど民事再生法を申請した。

 なお、同ホテルは休業せず営業を継続している。

四国・愛媛の3市町~松山市、東温市、砥部町をまとめて観光できる1泊2日の観光モデルコース造成

2021年3月15日(月)配信

家族旅のワンシーン(イメージ)

 四国・愛媛県にある松山市、東温(とうおん)市、砥部(とべ)町の3市町でつくる広域観光連携推進協議会はこのほど、観光客増加や滞在型観光の促進を目指し、3市町を回遊する1泊2日の観光モデルコースを造成した。「ウィズコロナ時代に合った新しい旅で、地域の魅力を再発見してもらいたい」とPRしている。

 3市町は多様な観光資源に恵まれ、車を利用すれば30分程度で往来できるアクセスのいい観光圏だ。今回造成したモデルコースは、家族旅、女子旅、大人旅、男子旅の4コースで、コンセプトは「シェア旅 トライアングル」。旅した人がシェアしたくなる周遊コースを目指すなか、各コースのナビゲーターには、SNSなどで拡散力と情報力を持つ地元インフルエンサーを起用。さらに地域のコアな情報にも精通する地元情報誌の編集者やライターもアドバイザーとして加わった。

 完成したモデルコースは松山市公式観光Webサイトで紹介するほか、家族旅についてはYouTubeでPR動画も公開した。女子旅では東温市の体にやさしいランチやハーブティー、松山市・圓満寺での恋愛成就祈願、砥部町で砥部焼の工房巡りなどを通じて、地元の人たちとの触れ合う旅を紹介している。ウィズコロナ時代の観光スタイルとして「マイクロツーリズム」や「グリーンツーリズム」が注目を集めるなか、県外はもとより、愛媛県民が地元の魅力を再発見できる新しい旅のあり方を提案している。

HIS、メルペイ導入 コロナ禍で増加する現金離れに対応

2021年3月15日(月) 配信

キャンペーンでは利用額の50%をポイントで還元する

 エイチ・アイ・エス(HIS、澤田秀雄会長兼社長)は3月15日(月)、メルペイ(青柳直樹CEO、東京都港区)が提供するキャッシュレス決済サービス「メルペイ」を導入した。コロナ禍で増加する現金の受け渡しを避ける声に応える。

 同サービスは、フリマアプリ「メリカリ」での売上金や銀行口座からのチャージなどで決済する。2019年2月にスタートし、20年12月には利用者数が850万人を突破した。

 導入店舗は国内全店。オンラインとコールセンター、法人、団体営業所では利用できない。決済方法は店舗にあるQRコードを読み取るユーザースキャン方式となる。上限額はメルペイで登録した支払い方法の金額。

 キャンペーンも実施する。初めて「メルペイスマート払い(定額)」で使用する人には、50%相当分(最大5000㌽)を㌽で還元するほか、半年間手数料を実質無料にする。期間は21年4月15日(木)の午後11時59分まで。

〈観光最前線〉新しいMICEを大阪から

2021年3月15日(月) 配信

 ウィズコロナ時代における安心・安全な「新しいMICE開催モデル」を提案する「大阪MICE安全対策推進EXPO2021」が3月24、25日の2日間、西日本最大級の国際見本市会場「インテックス大阪」(大阪市住之江区)で開かれる。

 コロナ禍の昨年7月に、関係ガイドラインに則して、国内で最初に大規模見本市を再開したインテックス大阪で、安全対策や感染症対策を施した展示会・イベントの運営手法(=新しいMICE開催モデル)や、各種ツールについて提案・共有する見本市。大阪・関西経済の振興・発展をはかるべく、行政機関や自治体、大阪府内のMICE施設などが協力した「オール大阪体制」での実施となる。展示会の開催や参加に慎重になっている企業・団体はチェックされてみては。

【塩野 俊誉】

 

「津田令子のにっぽん風土記(71)」安曇野に故郷のイメージを抱きながら ~ 長野県・安曇野市編 ~

2021年3月15日(月) 配信

安曇野の美しい景色
安曇野市地域おこし協力隊      北村 昌之さん

 難波生まれのハマ育ちの北村昌之さん。現在、安曇野市地域おこし協力隊として、観光分野で安曇野の交流人口の拡大とブランディングを担っている。
 
 「父が転勤族だったので、あちこち動きましたが名古屋が一番長く住んでいました。祖父と祖母の家も街の中心部だったので風光明媚な安曇野とはかけ離れた場所で過ごしていました」と振り返る。
 
 安曇野は「故郷」と呼べるイメージをたくさん持っていると感じている。田んぼに生える青稲や稲穂、満開のそば畑、鬱蒼とした森の中にある神社の境内、きれいな水のせせらぎ、カエルの鳴き声がうるさい畔など、安曇野への想いは、「故郷といえる場所がない僕にとって、より魅力的に映るんです」と話す。
 
 故郷へのイメージを抱きながら、観光PRに邁進する北村さんは安曇野で1番好きな季節は、春だと語る。「冬の季節が長く感じられ、やっと春が来てくれた! と思うほど待ち遠しかった」。
 
 この時期のお勧めポイントについては、「水鏡に映った安曇野の風景を探しに自転車に乗って出掛けてほしい。北アルプスや屋敷林が映りこんだ風景。とくに御法田の一本道からの景色や、犀川の堤防からの眺めは素敵です。安曇野シンメトリーはあちこちに出現します。漕ぎ疲れたら、おしゃれなカフェや、おいしいパン屋でティータイムを楽しむのが最高です」と満面の笑みで話す。
 
 山登りがお好きで、長峰山や光城山に登って、山頂から安曇野の景色と北アルプスの峰々を眺めていることも多いという。安曇野に暮らしていると「ふと見上げると、3千㍍級の山々が見渡せます。普段からこんな景色が当たり前にある場所は他にはありません。平野部に長く住んでいる人間にとっては毎日が感動の連続です」。
 
 旅の醍醐味は、「未知の世界に行くことのワクワク感や、素晴らしい景色を見て感動することがたくさんあります。今まで味わったことのない食や初めて会う人たちなど、自宅と職場の往復という日常を飛び越えて自分の枠から外へ出ることが魅力」と熱く語る。
 
 コロナ禍でも安心安全で安曇野の旅を楽しんでいただくために、観光協会が薦める「安曇野あんしん旅」の動画作成に関わってこられた。「これを見ていただければ安曇野って楽しそう、行ってみたいと思っていただけるはず」と力を込める。
 
 生まれや育ちが他市であることで、より安曇野の魅力や伝えたいコンテンツが明確なのだと確信した。

 

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

 

「街のデッサン(239)」文化を生み出す人間が、観光資本の原点 ドラマツルギーツーリズムへ

2021年3月14日(日) 配信

フォーラムは能舞台を背景に開催

 都市や地域にどんな価値ある「観光資本」が存在しているか。それら多様な観光資本の関係性やカテゴリーの見立て、活用の展開、資本価値の順列、そしてその資本類型を観光価値へ昇華させる方法論がこれまでに深耕されてこなかったのではないか。

 そう感じたのは、佐渡の文化観光フォーラムで基調の話をさせていただいたのがきっかけだ。そしてその背景には、観光資源の発見や商品化の研究と議論はたくさんあっても、観光の資源を素材や原料にして価値あるものに磨き上げて資本化する発想が希薄であったために、資源が商品化され得なかったのではないか、とも考えられる。

 「文化観光」を地域観光の大きな柱として捉えるときに、文化という抽象概念を観光価値に育てていく必要がある。地域資源を価値あるものに変えていくためには資源の存在の奥にある意味や歴史、暗示などを発掘、感知し、文化としての価値概念を実体化していくことが、資源のキャピタライズ(資本化)を可能にさせる。

 私は佐渡を訪れたときにあまりの観光資源の豊饒さに惑わされた。佐渡といえば、誰でもが思い浮かべるのは「金鉱山の島」であろう。それら鉱脈の存在が古くから認知されていたが、金銀の存在が江戸時代に国際交易の不可欠な交換貨幣となり経済力を示すことから、幕府は大々的な発掘拠点として開発していった。当時の先端開発人材や技術、文化がそっくり佐渡に集積され、佐渡は孤島ではなく江戸の出島となった。

 この地は、歴史的に「流人の島」でもあった。その多くは、一般的悪行を働いた罪人ではなく、政治犯や宗教的逆賊、ときに美の規範を越境する異端であった。彼らは、いわば知識人であり、社会的地位を持つ人物であった。彼らが佐渡に流され、数年の滞在で残したものは、思想であり、美学であり、生き方の哲学であった。

 私は観光資本マトリックスの中に、資本としてのカテゴリーに観光の基盤である自然資本や事業資本に上位して、人間資本と文化資本を置いた。とくに、異端の存在は日本の他の島には皆無の、佐渡の卓越した資本である。歴史の中で、優れた歌人や能役者(世阿弥は世界で最も高次な芸能論を物にした)、日蓮のような宗教者が佐渡を思想や美学の涵養の場とした。私は佐渡生まれの天性的な思想家・北一輝も含め、佐渡を訪れる人々が人生をドラマチックに生きるための学びの場として先人(人間)に出会う島だと捉える。その旅を「ドラマツルギーツーリズム」と考えたい。

コラムニスト紹介

望月 照彦 氏

エッセイスト 望月 照彦 氏

若き時代、童話創作とコピーライターで糊口を凌ぎ、ベンチャー企業を複数起業した。その数奇な経験を評価され、先達・中村秀一郎先生に多摩大学教授に推薦される。現在、鎌倉極楽寺に、人類の未来を俯瞰する『構想博物館』を創設し運営する。人間と社会を見据える旅を重ね『旅と構想』など複数著す。

 

津田令子の「味のある街」「湘南ゴールドどら焼き」――和果(神奈川県・湯河原町)

2021年3月14日(日) 配信

和果の「湘南ゴールドどら焼き」(1個259円)▽神奈川県足柄下郡湯河原町土肥1-16-3▽☎0465(63)3633。

 月に1回、エフエムciao!熱海湯河原、津田令子の「土曜旅カフェ」(第1土曜日午前9時30分―10時)の収録のために海の見える高台のスタジオに通っている。旬な旅情報や旅にまつわるエピソードなど、心地のよい音楽とともにお送りする30分の番組だ。獲れ立ての新鮮な地場産品や、地元のグルメ情報などで盛り上がることもしばしば。

 今回ご紹介するのは、熱海帰りに度々立ち寄っている湯河原名物、オリジナルどら焼き和果(WAKA)の「湘南ゴールドどら焼き」だ。特徴は1枚1枚丁寧に職人さんが焼き上げるふかふかで弾力のある生地。きつね色についた焦げ色も食欲をそそる。上品な香りと爽やかな酸味の湘南ゴールドを皮ごと練り込み風味豊かに仕上げた餡を、ふわふわ食感の生地でサンドした湘南ゴールドどら焼きは、爽やかな香りとの相性が抜群で1度食べたら「もう1度」、いやさらに何度も食べたくなる。

 中に入る具(餡)の種類は季節によっても変わるが、常に10種類以上。湯河原みかん、京ほうじ茶、レモン、マロン、さつまいも、栗あん、桜、バター、白あん、などだ。

 湯河原駅近くの「和果」は、ピンクの看板が歩道に出ていて目を引く。階段を数段上がり、扉を開けると正面のテーブルの上にどら焼きが、ずらりと並ぶ。最近はメディアに取り上げられることも多く、訪れたときは何組もの先客でにぎわっていた。種類が豊富で初めて訪ねた人はどれを買おうか必ず迷う。

 先日立ち寄ったときには、粒あんの中央にバターがサンドされている「バターどら焼き」と「桃どら焼き」を買ってみた。色合いも綺麗でフルーツの味もしっかり感じられる。お店構えのかわいらしさや見映えだけでなく、素材や材料にもしっかりとこだわり、接客も優しさたっぷりの店だ。

 湯河原の店舗のほか、湯河原・箱根・小田原周辺のコンビニやスーパー、オンラインショップでも販売されているのもありがたい。

 先日注文していた「湘南ゴールドどら焼き」が、ちょうど届いた。

 

   (トラベルキャスター)

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

 

「観光革命」地球規模の構造的変化(232) ジェンダーギャップとミモザ

2021年3月13日(土) 配信

 3月8日は国連が定めた「国際女性デー」である。1904年3月8日にニューヨークで女性労働者が婦人参政権を求めるデモを行なったことが起源で、75年に国連が国際女性デーを定めた。

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長は2月に女性蔑視発言の責任を取って会長を辞任し、後任には橋本聖子氏が就任した。森前会長の女性蔑視発言は国際的非難を浴びると共に、日本におけるジェンダーギャップ(男女格差)問題に火を付けた。

 世界経済フォーラム(WEF)は毎年「グローバル・ジェンダーギャップ・レポート」を公表している。2020年のレポートでは153の国々が対象で、日本は過去最低となる121位だった。要するに日本は世界でも最低レベルの男女不平等の国という評価だ。

 レポートは4分野(経済・教育・政治・保健)における男女比の変数(勤労所得、管理職、高等教育就学率、平均寿命、国会議員、閣僚など)に基づいてランキングされている。日本は、勤労所得で男性賃金100に対して女性賃金74、管理職に占める女性の割合で米国40%、英国36%に対して日本15%、国会議員での女性比率は10%などである。

 日本では16年に女性活躍推進法が施行されると共に女性の管理職比率の数値目標などを盛り込んだ男女共同参画基本計画が策定されている。女性管理職や女性議員を増やすことも大切であるが、一番の問題は女性従業者の56%が非正規雇用である点だ。

 旅行・観光分野は本来、女性従業者の活躍によって支えられているが、現実には旅行需要の激減で、真っ先に女性従業者が解雇されがちだ。コロナ禍で旅行・観光業界は会社の存続そのものが危ぶまれる危機的状況に追い込まれているために女性従業者だけに特別な配慮を講じ難いのも事実だ。

 イタリアでは3月8日は「ミモザの日」「フェスタ・デラ・ドンナ(女性の日)」とされ、男性が母親や妻、女性の友人や同僚などに日頃の感謝を込めてミモザを贈る。欧州では春の象徴カラーは黄色であり、黄色いミモザの花は厳しい冬に終わりを告げ、暖かい春の到来を知らせる「幸せの花」である。苦境に喘ぐ旅行・観光業界だが、せめても女性従業者にミモザを贈ることで職場に幸せを招き寄せてもらいたい。

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

 

アンドリゾートに 勝浦御苑が社名変更

2021年3月12日(金) 配信

コーポレートロゴも一新

 和歌山県・南紀勝浦温泉や三重県・伊勢志摩などで旅館・ホテルを運営する勝浦御苑(中照策社長、和歌山県・那智勝浦町)は2月11日付で、社名を「アンドリゾート株式会社」に変更した。社名変更に伴い、コーポレートロゴも一新した。

 同社にとって「旅行」は、非日常の体験であり、味わう感動のすべてが、人との縁を感じ、寄り添い、つながる瞬間となるもの。新社名の「&(アンド)」には、旅行で創られる旅人それぞれの物語や思い出に、いつでもそばにいる存在で在りたい(=寄り添い)」。そして、いつまでも繰り返し新しいページにつないでいく(=つながる)という想いが込められている。

 ロゴマークのカラーは、同社が展開するリゾートが美しい水に恵まれており、いつまでも万物の源である水の恩恵をいただき、つながる幸せを創造していきたいとの願いを込め、鮮やかな水色を採用した。

 同社は1959年に創業。現在、南紀勝浦温泉の「かつうら御苑」とパルスイン勝浦、和歌山県南紀太地温泉「花いろどりの宿花游」のほか、伊勢志摩の「旅荘 海の蝶」と鳥取県・三朝温泉「三朝薬師の湯 万翆楼」の5館を運営する。

「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(122) 創客を実現する感謝の想い サービスを感謝に乗せて

2021年3月12日(金) 配信

 

 その光景は北国での冬の寒い日のことでした。今でも、私の強烈な記憶として永く残っています。それは路線バスで移動している時のことです。バス会社の営業所近くのバス停で、バスの運転手が交代しました。

 「こちらで運転を代わります」と車内アナウンスがあり前を見ると、その運転手が通路の真ん中に立ち、客席に向かって帽子を取り、丁寧にお辞儀をしてあいさつをしたのです。その後、バスを降りて待っていた新しい運転手と引継ぎをしていました。

 交代した運転手も同じように、客席に向かってあいさつをして運転席に座りました。これだけの行動でしたが、路線バスのイメージを大きく変えるその行動に、感動すら覚えたのです。

 路線バスは地元利用者の移動を支える大切な公共交通機関ですが、残念ながらそのサービスにはお叱りの声もたくさん寄せられていると聞きます。私自身も車内で利用者が運転士を怒鳴る声を何度も聞いたことがあります。

 そのなかには、乗客の理不尽な声もありますが、逆におもてなしの「お」の字も感じられない、不甲斐ない運転手に出会うことも度々あります。ただ、毎日のように叱られていたら、運転手がお客様の声にバリアを張りたい気持ちも分からないでもありません。

 運転手も人の子です。お客様から叱られ、会社では上司から責められたら、やる気を失くしても仕方がないと思います。

 嬉しい行動には正しい評価を伝えて、気持ちの良い地域の足を共に創っていくことが必要です。北国で体験した運転手交代のあいさつは、運転手からの感謝と一緒により良い公共交通を創って行きたいというメッセージです。

 メッセージをどのように受け止めるかは、私たち自身がサービス提供者として働く姿を変えていくヒントになるかもしれません。

 北国の路線バスでは、さらに私を感動させる光景に出会いました。新しい運転手のバスが出発したときです。何気なく前を見ていると、先ほど交代した運転手がその場に留まり、出発したバスに手を振っていたのです。

 これがいつものことか、たまたまだったのか、その運転手だけの行動か、あるいは、みんなで取り組んでいるのかは分かりません。ただ、思わず手を振り返したのは、私だけではありませんでした。

 毎日、お客様に利用いただけるのが「当たり前」ではないことを、コロナ禍の中で私たちは思い知らされました。感謝の想いを伝える行動をこれまで以上に大切にして、想いを込めて実行しましょう。「ここで良かった」と確信していただくことが創客を実現するのです。

 

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。