ポケモンGO 配信開始、観光産業との連携に期待

ポケモンGOに夢中な外客(東京・秋葉原)
ポケモンGOに夢中な外客(東京・秋葉原)

 アメリカに本社を置くNiantic,Inc.は7月22日に、日本でのスマートフォン向けゲームアプリ「ポケモンGO」の配信をスタートした。先立って配信されたアメリカでは、2千万以上のダウンロードがなされ、一大ムーブメントを引き起こしている。

 同ゲームは、地図と連動し、現実世界を移動しながらポケットモンスターを捕まえるもので、観光産業での活用に期待がかかる。

 陣取りゲームの要素も兼ね備えており、日本でも、歩きスマホや運転中の余所見などトラブルが発生している。

 その一方で、鳥取県の平井伸治知事は、「砂の多い砂丘でありますので、スナ(砂)ホ・ゲームであるということでございまして、鳥取砂丘スナホ・ゲーム解放区の宣言をここにさせていただこうと思います」と知事記者会見で語り、「ポケモンGO」を県内への誘客の一手段として捉える姿勢を見せた。

 出歩かなければ、成果を得られない仕様となっており、観光産業との連動に注目したい。(6面に関連記事)

【謝 谷楓】

訪日数1千万人突破、震災からの早期回復目指す、田村長官

 田村明比古観光庁長官は7月20日に行った長官会見で、今年1―6月の訪日外国人旅行者数が1171万3800人と、初めて半年で1千万人を超え過去最高となったことについて「東アジアを中心としたクルーズ船の寄港回数の増加や、航空会社との共同キャンペーン、そして熊本地震からの旅行需要回復が見られたことが訪日需要を引き上げた」と報告した。

 田村長官は今後の訪日者数増加に向けた対策として、「夏期休暇などの旅行シーズンに向けて、震災の影響からの早期回復を目指す」とし、先日取りまとめられた「九州の観光復興に向けての総合支援プログラム」に掲げられた施策を確実に進めていくと述べた。

 また、7月8日に行われた第1回「旅行業界情報流出事案検討会」で大手企業と中小企業のセキュリティ対策方法を分けて考えるべきとの意見が出されたことについて、田村長官は「個人レベルでも必要となってくる、アンチウイルスソフトの更新などが十分にできているのか疑問が残る」と述べ、今後有識者たちからの意見を踏まえたうえで、中間取りまとめを行っていくと語った。

ポケモンGOで地域の魅力を

 海外では日本よりも先に配信され、世界各地で社会現象となっているスマートフォン向けゲームアプリ「ポケモンGO」。プレイヤーからは地元の魅力を再発見でき、観光案内マップとして利用できると注目を集めている。

 ポケモンと位置情報ゲーム「Ingress(イングレス)」を掛け合わせたゲームで、スマートフォンの位置情報を利用し、実際に歩き回ってポケモンを集めることができる。地図上の現実世界と連動した観光名所をめぐる必要があり、まちの人気スポットから石碑や壁画などの隠れた名所まで見つけられる。周遊観光客として、ゲームを通じて地域の魅力に触れられるのだ。

 今後、ゲーム製作側に動きがあれば、まち巡りのほか、周遊バスや人力車などと組み合わせた観光客も増えるかもしれない。

【長谷川 貴人】

認知症予防策拡充へ、高齢化社会を見据えて(クラブツーリズム)

小山佳延社長(右)と、瀧靖之教授
小山佳延社長(右)と瀧靖之教授

 クラブツーリズム(小山佳延社長、東京都新宿区)は7月6日に東京都内で、東北大学加齢医学研究所(所長=川島隆太教授、宮城県仙台市)と産学連携し、7月から共同研究を始めたと発表。具体的には、「旅行」と「認知症予防、抑制」の相関関係について医学的見地から調査・研究するもの。これにより同社は「高齢化社会の進行を見据えた旅行業の発展」を、同研究所は「誰にでも実践しやすい認知症予防策の拡充」を目指す。

 5月には同社の顧客で60歳以上の男女45人に、事前調査を実施。旅行が認知症予防・抑制に効果的であるという可能性に期待が持てる結果が出たと報告。小山社長は、「我われの事業がいきいきとしたシニア文化の創造に、貢献できることが実証できたと考えている」と述べた。

 同社の顧客層は60歳以上が約65%を占める。同研究を通じ、旅行による健康改善効果や脳・認知機能への影響を究明できれば、旅行需要の喚起、拡大、さらには社会福祉貢献に寄与することができる。

 既に2003年からデイサービス施設を運営し、旅行と介護を合わせた介護支援事業を展開。そのほか、家事代行サービスやフィットネスなどの事業も起こした。テーマ旅行部の野島光晴部長は、同研究が開始されたことを踏まえ、「今後は、これらの事業を巻き込み、地域連携、ヘルスケアビジネスなどにつなげていく」と語った。

 同研究所の瀧靖之教授は、「健康寿命とは日常的に介護を必要としないで、自立した生活を送ることができるまでの期間」と説明、日本人の平均寿命と健康寿命の差は10歳ほどあると話した。この原因は認知症が大きな要因を占め、認知症をいかに抑えるかを研究してきた。 

 認知症予防に科学的な確からしさがある要因として(1)運動(2)趣味、知的好奇心(3)コミュニケーション、社会との関わり――の3つ挙げた。

 これら要因を網羅するのが、「旅行」だと言う。瀧教授は「旅行の行程がすべて重要だが、とくに旅行中が大事。新しい場所、経験などで知的好奇心が刺激され、歩行などの運動があり、同行者との会話、旅先でのコミュニケーションがある」と説明。

 今後は共同研究の実施にあたり、「旅行」と「脳の健康」に関する各種ツアーや講義、イベントなどを実施。また、「旅行頻度の高い高齢者は主観的幸福感(自分は幸せだと思う気持ち)や対処能力が高く、認知機能が保たれている。また、旅行前後で脳に変化があり、主観的幸福感は向上、認知機能は低下抑制が見られる」という仮説を、今後3年間かけて検証する。

日本遺産を読み解く

「祈る皇女斎王のみやこ  斎宮」パンフレット
「祈る皇女斎王のみやこ 斎宮」パンフレット

 「日本遺産」という言葉を聞いて、それがなにかを答えられる人はどれだけいるだろうか。この文化庁の新事業は文化財を「保存」から「活用」へと方針転換し、地域主体で活用と発信を行い、地域の活性化をはかるもので、2020年東京オリンピック・パラリンピックまでに100カ所が認定される予定。“認定後がスタート”ともいわれる日本遺産について、7月1日岐阜県岐阜市で行われた「日本遺産サミットin岐阜」の内容を中心に、その取り組みを紹介していく。
【後藤 文昭】

「保存」から「活用」へ、物語で地域を活性化

■日本遺産の目的と2種のストーリー

 今まで文化財は、国指定史跡や県指定無形文化財のように一つひとつで保存・活用されていた。その結果、文化財同士のつながりが無く、まちの振興や観光では非常に扱いにくい状態になっていた。これらの文化財をストーリーで結び付け、面で活用できるようにしたものが「日本遺産」だ。ストーリーを語るうえで不可欠な“魅力ある有形・無形の文化財群”を地域が主体となって総合的に整備・活用し、国内外に戦略的に発信することにより、地域の活性化をはかる目的がある。認定後には、文化庁も「日本遺産魅力発信推進事業」として、人材育成などのソフト事業への経費補助を行うほか、今年度から日本遺産プロデューサーの派遣を開始。

岐阜市「川原町」のまちなみ
岐阜市「川原町」のまちなみ

 日本遺産には単独の市町村内で完結する「地域型」と、複数の市町村にまたがって展開する「シリアル型」の2つのストーリータイプがある。「地域型」の場合は、その地方自治体の歴史文化基本構想、文化でまちづくりをする基本方針を用意することが必要になる。現在日本遺産には37のストーリーが認定されており、内訳は「地域型」が12、「シリアル型」が25となっている。シリアル型には隣接する愛媛県と高知県、徳島県、香川県内57市町村が一体となってストーリーを紡ぐ「『四国遍路』~回遊型巡礼路と独自の巡礼文化~」や、宮城県仙台市と塩竈市、多賀城市、松島町など県内のいくつかの市町村が一体となってストーリーを紡ぐ「政宗が育んだ“伊達”な文化」。さらに茨城県水戸市と栃木県足利市、岡山県備前市、大分県日田市のように隣接していない地域が紡ぐ「近世日本の教育遺産群―学ぶ心・礼節の本源―」とさまざまな結びつき、展開がある。このシリアル型は「今後も増えていくのではないか」との声が多く、また隣接していない市町村同士が共通する素材で結び付いて紡ぐストーリーへの関心も高い。

 しかし、隣接していない市町村が共同でストーリー認定を受けた場合、「文化や風習などが違うので、他の地域の考え方も聞けることが新鮮」というメリットがある一方、離れているから日程調整などが難しく、共同PRイベントなどが行いにくいといったデメリットもある。シリアル型は1度に完結できない分、次の土地への来訪が促され、人の流れが広域に広がることも予想できる。実際認定されたストーリーのなかでは、隣接する県との連携や同じ県内にある世界遺産との連携を模索する動きもあり、効果的な誘客手段の確立も大きな課題として挙がっていた。

認定書の交付 (左)馳文科大臣
認定書の交付
(左)馳文科大臣

■PR展開は色々な視点で

 「日本遺産サミットin岐阜」では、認定37団体すべてがブースを出していた。そのなかでも鳥取県三朝町の「六根清浄と六感治癒の地~日本一危ない国宝鑑賞と世界屈指のラドン泉~」のように、タイトルに人を惹きつけるワードが加わっているものや、ストーリーに登場する額田王に「仕事も恋もモテ系女史」というフレーズを加えてわかりやすく紹介している奈良県明日香村と橿原市、高取町の「日本国創成のとき―飛鳥を翔た女性たち―」などのブースは来場者の関心が高かった。三重県明和町の「祈る皇女斎王のみやこ 斎宮」のパンフレットは、個々の写真が大きく、情報が最低限であるため、内容情景がイメージしやすい。また広島県尾道市の「尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市」のパンフレットも、尾道市の日常風景の写真が多く、まち全体が日本遺産だと一目で実感できるようになっている。ほかにも女性向けの旅の提案をしているものなどがあり、配布されている情報誌に関しては、「読みやすさ」が1つのカギになるのではないかと感じた。

 今回の取材では見ることができなかったが、今美術館のなかには子供向けの解説シートや、プレゼント付きクイズラリーなどを用意し、楽しみながら美術に触れる機会を提供しているところも多い。「ストーリーがあると、知識が無い人にも興味を持ってもらえる」という声の通り、今後はいろいろな層に分けたPRを展開していくことも重要になると感じた。

 日本遺産に認定されたストーリーを構成する文化財は建築物だけではなく、山や川、料理や器、祭など多岐に渡る。 

 例えば島根県津和野町の「津和野今昔~百景図を歩く~」は、栗本里治(号・格齋)の描いた百枚の絵とその詳細な解説をまとめた「津和野百景図」に描かれている町の風景や伝統、風習などの多くが今も守られている津和野が舞台。自然と歴史文化、四季、食文化の4つで津和野を旅できるようになっていて、暮らす人も含めて日本遺産であると、紹介している。このように五感すべてで楽しめるのも1つの魅力ではないだろうか。

細江茂光岐阜市長
細江茂光岐阜市長

■見えてきた次なる課題

 日本遺産の現状で最大の課題は、認知度の低さである。昨年認定された団体は、ボランティアガイドの育成や紹介施設の開館、多言語アプリの開発などの環境整備とフォーラムの開催やパンフレット作成などの周知活動を行っている。また、住民への周知拡大のために、日本遺産認定記念イベントを開催している場所もある。

 岐阜市では「市内の外国人観光客の宿泊者数が前年度比約8%増えた」という報告があり、ほかにも「観光消費額が増えた」などの良い報告もあったが、取材した多くのブースでは、地域住民への浸透、観光資源としての浸透の難しさなどを理由に、「認知度の低さを改善するための活動が難しい」という声も聞かれた。また、数が増えることで目立たなくなることを心配する声や、「日本遺産全体での情報発信の機会を増やしてほしい」などの要望も聞かれた。ただ、見方を変えれば「世界遺産だって、今は登録されたら話題になるが、はじめのころは話題にもならなかった」という声があるように、始まって2年目であることを考えると、色々な挑戦ができる段階だともいえる。

 座談会の中で多くの団体が観光庁との連携を期待するなか、観光庁の蝦名邦晴次長は「理解してもらうことが地域の魅力を高めることにつながる。相手側にとってどう受け取ってもらえるかを考え、外国人、新しい日本の観光客の発掘をしていかなければならない」と発言した。文化庁の宮田亮平長官はPRに関してしたたかさが大切であるとの考えを示し、「掘り起こしたときに出てきたものを大切にし、文化財を活用していくべきだ」と語った。また、細江茂光岐阜市長は観光地整備に関して「外国人と日本人の感じる魅力は、生活の背景、歴史、文化が違うので必ずしも一致するとは限らない。日本人が自分でみて良いと思ったものが必ず海外の人にも良いはずだと思い込まないことが大切」と話し、「本当の日本の良さはありのままの良さと認識し、外国人受けするために手を加える、または観光客に迎合するのではなく、ありのままの良さで勝負する感覚も個人が持たなくてならない」と強調した。「おもてなしレベルの向上のために日本遺産申請をした」という言葉が取材の中で一番心に残ったのは、そこに通ずるものだからかもしれない。そこに住む人が自分のまちの良さに気が付き、自信と誇りを持ち、磨き上げる。多くの人がそう話すように、まち全体での取り組みが大きなカギとなる日本遺産。次回サミットは、京都府で開催される。その場ではサミットの座談会の最後にもあったように、課題や成果の発表がさらに挙がることを期待したい。

鍵は“ストーリー”、地域振興へ、研究会開く(余暇ツーリズム学会)

(右)から丁野氏、渡邊氏、松田氏、栗原氏
(右)から丁野氏、渡邊氏、松田氏、栗原氏

 余暇ツーリズム学会観光地域ストーリー研究部会(丁野朗会長)は7月9日、東洋大学白山キャンパス(東京都文京区)で第2回研究会を開催した。「地域振興の鍵になるのはストーリーである」を前提に、大学関係者や観光業関係者、地方自治体職員、日本遺産認定を目指す団体関係者などが集まり、熱い議論が交わした。

 第1部では、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局の加藤弘樹参事官による基調講演「『日本遺産』におけるストーリーの価値と狙い」が行われた。加藤氏は日本遺産創設の背景や仕組みなどを詳しく説明。「日本遺産にとってストーリーは鍵。そのストーリーは産・官・学・金・労・言と地域住民で考えてほしい」と思いを語った。

(右)から矢ヶ崎氏、森本氏、加藤氏
(右)から矢ヶ崎氏、森本氏、加藤氏
井上博文氏
井上博文氏

 第2部では、加藤氏に加え、栗原博氏(日本商工会議所地域振興部長)、矢ヶ崎紀子氏(東洋大学国際地域学部准教授)、松田優一氏(横須賀市経済部担当部長)、森本昌憲氏(藤田観光元会長・本部会副会長)、渡邊正範氏(十日町市産業観光部長)がパネリストとして登壇。進行役は丁野朗氏が務め、パネルディスカッションと公開ブレーンストーミング「観光まちづくりに求められる地域ストーリーとは?」が行われた。栗原氏と松田氏、渡邊氏がさまざまな事例を用いて、ストーリーによる地域振興の例を紹介。今後の観光業に対して「企画大量生産的な考え方ではなく、個人が共感して動き出しているのだから、個人の感情に訴えなければならない」、「ストーリーはシビックプライド醸成の現場になる」という意見が出たほか、「受け手側に対する検証」や「文化財を経済的にも活用はできないか」などの課題や展望も挙げられた。

 同部会副会長の井上博文氏(東洋大学名誉教授)は、「地域の中でも『これから何かをやりたい』と思う機運を全国的に盛り上げ、自分のところでもできると考えていただきたい」と語った。

観光マーケティング責任者を公募、最高年収1000万円(静岡観光コンベンション協会)

 転職サイトを運営する「ビズリーチ」(東京都渋谷区)では、日本版DMO候補法人に登録された静岡観光コンベンション協会の観光マーケティング責任者の公募を7月21日から始めた。募集職種名はチーフマーケティングオフィサー(CMO)、年収は最高1千万円。勤務地は静岡県静岡市。ビズリーチのサイト上に特設ページを開設し、8月17日まで募集する。

 観光庁は、地域の「稼ぐ力」を引き出し、地方創生を推進するため、観光分野でマーケティングに基づいた観光戦略の策定や推進、地域住民との連携強化を図り、観光地域づくりを推し進める組織「日本版DMO」の確立を推進している。

 2016年4月に、第2回日本版DMO候補法人の登録を実施し、静岡観光コンベンション協会も登録された。静岡県中部地域は、関東と中京・関西を結ぶルートにあることから2020年の東京オリンピック開催に向けて新たな観光客の流入が期待される。

 静岡観光コンベンション協会は2017年度より静岡市や焼津市、藤枝市、島田市など静岡県中部地域の5市2町を対象にマーケティング分析を行い、科学的根拠に基づいた戦略による観光地経営を行う「地域連携DMO」の機能強化および地域経済の活性化を目指している。同協会の斎藤誠専務理事は、求める人物像について「DMOの中で先頭に立って静岡県中部地域の観光を盛り上げ、マーケターとして調査分析だけではなく、事業を企画立案するオールラウンダーを募集。将来的には、DMOの代表者として地域の観光経済をけん引する人材を求めています」と期待も大きい。

 募集特設ページURLは、https://www.bizreach.jp/content/executive/shizuoka-cvb/

外客受入の最重要点、実体験に基づく説明会開く(JIG)

原祥隆氏
原祥隆氏

 NPO法人ウェルカムジャパンとジャパニーズ・イン・グループ(JIG、福田金也会長)は6月27日に、「外国人観光客受入基礎研修会」を東京都立産業貿易センター(東京都台東区)で行った。旅館経営者などインバウンドに意欲を示す業界関係者を対象とした同説明会に講師らは、「小規模旅館が外国人観光客を受け入れる際のポイント」をテーマに、予約管理の簡易化から外客宿泊時の留意点まで、実体験に基づく具体的な方法論を展開した。

 冒頭、ウェルカムジャパンの原祥隆副理事長は、「インバウンドは本当に奥深い。世界の政治経済と非常に強く結びついている。そのため、日本を訪れた外国人観光客数の背後には、国際間の人の流動性があることを意識しなくてはならない」と語り、インバウンド対策には、専門知識が必要不可欠だという考えを示した。

 GLOBAL NETWORK(京都府京都市)代表を務める梶山淳JIG理事は、オンライン決済システム「SQUARE」の紹介から予約サイト手数料の削減まで、予約管理の簡易化などについて解説した。

 「SQUARE」は、直接決済と非対面決済に対応しており、宿は、クレジットカード番号1つで、決済を済ませることが可能。梶山理事は、「仮押さえのキャンセルを防ぐのに最適な決済システム」だと語る。「たとえば、予約をしたときに宿泊費の10%をキャンセル料として請求すると設定すれば、繁忙期の直前キャンセルや冷やかし予約を減らすことができる」とし、自社が経営する旅館でも効果を発揮している。なお、「現在、非対面決済ができるのは同システムだけ」だという。

 また、予約サイト利用によって発生する手数料を減らし収益増を目指すためには、「自社ホームページでの予約を増やさなければならない」と強調。(1)予約ができること(2)プランの充実(3)予約サイトより料金が安いこと(4)決済もスマートフォンに対応(5)多言語化(6)SNSからの誘導――の「6つの取り組みが、自社ホームページの魅力アップと収益増の秘訣」だと力強く語った。

 魚敏旅館(長野県下高井郡)の主人で、宮阪和久JIG副会長は、「外国の方の特別扱いはしない。日本人と同じように接すれば、楽だし長続きする。ただし、国民性や文化は理解すべき」だと自身の経験を中心に、施設内外で過ごす外国人観光客への対応方法について説明した。

 外国人観光客は、チェックイン後の客室への出入りを嫌う方が多いため、「布団は折りたたんだまま置き、お客様自身に敷かせると良い」。浴衣についても、着付け方法の解説や着後の微調整対応など、“着物文化の体験”として位置づけると喜ばれるという。入浴については、時間指定があればしっかりと伝えることが大切。相手の立場に立ったおもてなしと、宿のルールの徹底が、施設内で求められる対応方法だと説明した。

 施設外では、「宿周辺の観光地については、自分で赴き、実際に体験してみることが必要。パンフレットや口頭で、集めた情報を伝えると喜ばれる」と知見を伝授した。また、宮阪副会長が運営する宿近辺には、「スノーモンキー」として親しまれる、温泉に入るサルの出没スポットがあり、「宿から目的地までの地図を、英語と日本語、最低2カ国語を記載して提供してきた。お客様が1人で散策する際にも役立つ」ほか、宿周辺の観光スポットは、リピーター獲得にもつながる集客ツールであるため、「外国人観光客が、どんな所や事柄に興味を持ち訪問するのか」ということを把握することが必要だと強調した。

 説明会では、ほかにもSNS対策や受け入れにおけるハードとソフト両面の準備について、林俊一JIG副会長や柏原益夫JIG理事、大野政道JIG理事から詳しい説明があった。

 福田JIG会長は、クレジットカード決済の手数料について、「安いところに鞍替えできるのであれば、するべきだ」とアドバイス。効率の良い旅館経営の必要性を、受講者らに訴えた。

熱心な聴講者ら
熱心な聴講者ら

達増知事から感謝状、いわておかみ会・大澤女将、観光振興の功績讃え

大澤幸子女将(左)と達増拓也知事
大澤幸子女将(左)と達増拓也知事

 岩手県(達増拓也知事)は7月7日、長きに渡り「いわておかみ会」の会長を務め、6月の総会で退任し、相談役に就任した大澤幸子氏(ホテル対滝閣女将)に対し、観光振興への功績をたたえ、県庁内で達増知事から感謝状を贈った。

 大澤女将は2004年度から15年度まで6期12年間会長を務めた。この間、さまざまな活動を行うとともに、08年6月の岩手・宮城内陸地震、11年3月の東日本大震災の2つの大きな災害に見舞われた際には先頭に立って岩手のPRに努め、大きく落ち込んだ観光客の入込み回復に貢献した。

 県観光課の高田聡課長は「おもてなし向上のための講演会開催やさまざまな場面で岩手観光をリードされたことに感謝します。今年は国体の開催により全国から多くの方々がお越しになります。オール岩手で前進する姿を見せるためにも今後ともご協力いただきたい」と期待を込めた。これを受けて大澤女将は、「いわておかみ会は全国旅館女将の集いに参加して、岩手にも組織が必要と考え設立、来年25年を迎えます。会が継続できるのも会員の協力に加え、行政や観光関連団体、旅行会社との連携を取りながら進めた結果。これからも微力ながら県の観光振興に携わっていきたい」と述べた。

観光政策や地域活性化学ぶ、8月22日まで参加者募集(飛騨高山観光大学 9月2、3日開催)

 観光政策や地域経済の活性化につながる事業などについて学ぶ「第33回飛騨高山観光大学」が9月2、3日に、高山市民文化会館で午後1時から開かれる。対象者に制限はなく、現在参加者を募集している。

 2日は弊紙でコラム連載中の日本観光振興協会常務理事・総合研究所長の丁野朗氏が「地域資源を活かした観光まちづくり」について基調講演を行う。このほか、飛騨産業の板屋敏夫氏が「伝統芸能を活かして~『飛騨の家具』の歴史と伊勢志摩サミット円卓の製作」、NPO法人神岡・町づくりネットワーク理事長の鈴木進悟氏が「走り続ける レールマウンテンバイク~誕生秘話から将来の話まで~」について事例報告を発表する。

 特別講演として白鴎大学名誉教授・東北福祉大学特任教授の福岡政行氏が「2016年 秋の政局と日本経済の行方」をテーマに語る。午後6時10分からは「高山グリーンホテル」に会場を移し、交流会を行う。

 3日は「飛騨の再発見ツアー」と題し、飛騨の伝統工芸や日本遺産見学、アクティビティ体験など、各3コースで市内を視察する。参加費は1人6千円(高山市民は無料、交流会参加者は別途3千円)で、2日目の市内視察は2500―3800円。申し込みは8月22日まで。

 申し込み・問い合わせ=飛騨高山観光大学実行委員会事務局 電話:0577(35)3145。