60周年記念事業を実施、旅の構造「滞在型」へ(国際観光施設協会)

中山庚一郎会長
中山庚一郎会長

 国際観光施設協会(中山庚一郎会長)は1月14日、東京都千代田区のホテルメトロポリタンエドモンドで2014年賀詞交歓会を開いた。中山会長は「公益社団法人になって3年目、さらに我われの協会は今年60周年を迎える」とし、「2月18―21日まで東京ビッグサイトで開かれる国際ホテル・レストラン・ショーのなかで、60周年記念事業として国際観光施設協会の活動を広く社会に知ってもらうことを目的に『美しい日本文化とエコ技術』という事業を行い、5千人の来場を目指す」と述べた。「公益法人というのは社会と結びつかなければ意味がない。我われの取り組みや事業が社会を巻き込んでいくには、まずは我われの活動を知ってもらうこと」と説明した。

 さらに、「我われは1泊型が主流の旅の構造を、滞在型へと変えていく活動も行っている。世界を見ても日本の1泊型の旅行スタイルは特殊。外国人旅行者も(食事など滞在型に対応していない宿泊施設に)困惑してしまう」との考えを示し、宿や温泉地、観光地など全体的に滞在型への旅の構造に変えていく必要性を訴えた。最後に中山会長は「観光産業は大地に根差した産業。大地の力を活かしていくことが我われの活動のテーマだと思っている。力を合わせて前進していこう」と呼び掛けた。

 来賓の観光庁の石原大観光産業課長は「昨年は訪日外国人1千万人を達成した。これからは質をどう高めていくかが大事」とし、「外国人観光客と合わせて、日本人も国内旅行で2泊、3泊と滞在したくなるような地域づくりにも取り組んでいきたい」と語った。

「ゴール設定が重要」、観光協会の課題を議論(観光おもてなし研究会)

女性だけのおもてなし研究会
女性だけのおもてなし研究会

 観光庁と日本観光振興協会は協働で、地域の観光協会などの現状や求められる役割について議論・研究するため、「観光おもてなし研究会」を立ち上げ、昨年12月17日に第1回研究会を開いた。ゴール設定や、観光客と地域とのコミュニケーションポイント増加などの重要性が提起された。同研究会の模様はニコニコチャンネルで生中継され、全国の観光協会からの反応や質問も紹介された。

 同研究会のメンバーは、日中コミュニケーションの可越取締役、日本交通公社の久保田美穂子観光研究情報室長、交通新聞社の矢口正子旅の手帖編集長、首都大学東京都市環境学研究科観光科学域の矢ケ崎紀子特任准教授、リクルートライフスタイルじゃらんリサーチセンターの横山幸代副センター長の5氏。

 多くのメンバーがゴール設定の重要性を強調。横山氏は「何のためにおもてなしをするのか、おもてなしが消費につながっているのかを、しっかり考えなくてはいけない」と指摘し、消費を促すもの、旅行者がほしいものから発信していくよう提案した。矢ケ崎氏は「首都圏からたくさんの観光客に来てほしい」という過去の成功体験にもとづく漠然とした目標を捨て、具体的な達成目標を掲げることを提起。「観光客は何人来てほしいのか、消費額がどれだけあれば良いのか、ビジネスとしてやっていくにはシビアに考え、ゴール設定する必要がある」と語った。

 また地域の魅力について、距離や情報の少なさを超える「人を呼ぶ大きな魅力」と、「来てみて初めて分かる第2の魅力」の、2段階に整理して考えることを提案。矢ケ崎氏は、「第2の魅力はあたかも観光客が自分で発見したように仕込まれているとなお良い」と語った。

 そのほか、満足度を上げるために、観光客と地域とのコミュニケーションポイントをいかにたくさん持つかが重要と提起され、可氏は、パンフレットの日本語から外国語への単なる直訳ではなく、各地域の差別化の研究と戦略立案の段階から外国人専門家を招くことを提案した。

 なお、同研究会は今後2回程度開く予定。

「地域・人・心をつなぐ」、お客様感謝会開く(イーグルバスグループ)

谷島賢社長
谷島賢社長

 イーグルバスグループ(谷島賢社長、埼玉県川越市)は1月4日、埼玉県の川越プリンスホテルで、取引先関係者や顧客など約80人を招き「2014年イーグルバスグループお客様感謝会」を開いた。

 谷島社長は「燃料費高騰や人手不足などバス業界の取り巻く環境は厳しいが、東京オリンピック開催が決まるなど明るい展望もある。当社では昨年8月に川越から毎日、京都・大阪への高速バスの運行を開始、今年4月には東秩父村に営業所を開設する」と語った。また、「川越を国際観光都市にしたいという思いからアジア諸国との絆も深めていきたい」とし、「今後も地域をつなぎ、人をつなぎ、心をつなぐ会社としてツーリズムを主体とした地域おこしに邁進していく」と結んだ。

 来賓の川合善明川越市長は「イーグルバスグループには福祉バスでお世話になっている。観光面でも新しい企画を次々打ち出し、地元のにぎわいの創成に協力してもらっている。川越は東京オリンピック開催の際はゴルフ会場になる予定であり、世界から川越に多くの人が来てもらう受入体制を行政、民間が一体となって整えていくので今後ともお力添えいただきたい」と述べた。

訪日は大幅増見込む、JTB14年旅行動向

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国内0・2%増、海外も回復へ

 JTBがこのほど発表した2014年の旅行動向見通しによると、1泊以上の国内旅行人数は前年比0・2%増の2億9150万人、海外旅行人数は同2・1%増の1780万人。また、訪日外国人数は同14・3%増の1180万人と、2013年に続いて国内、海外、訪日ともに13年を上回ると予測。とくに訪日外国人数は大幅に増加するとみる。

 14年は、4月からの消費増税前の駆け込み需要に期待がかかる。その後の反動により消費の停滞期が予測されるが、企業業績回復による後半の盛り返しが期待される。また、12年からの経済政策により、緩やかな円安基調が続くと予測され、訪日外国人数の増加への後押しになるとみる。

 消費増税による旅行支出の停滞の可能性については、同社が11月に実施した旅行動向アンケートから、増税後もシニア層の旅行意欲が底堅いとの結果が出た。

 国内旅行は、連休の日並びをみると週末3連休の回数が前年より1回減少。ゴールデンウイーク(GW)は前半3連休と後半4連休に分かれるため、比較的近場で動く人が多いと予想される。平均消費額は、消費増税や円安、原油高、旅行意欲の高いシニアを中心に、質の高い旅行を求める傾向などを背景に上昇する見込み。また、オリンピックに向けて開業される外資系高級ホテルでの過ごし方や、大型商業施設での都市型レジャーが注目される。

 海外旅行は、LCCを含めて航空座席数が増加傾向にあることや、近隣諸国との関係が13年より落ち着きつつあること、シニア層の旅行意欲が底堅いことにより13年からの回復を見込む。14年は羽田空港の国際線発着枠が6万回から9万回に増加し、またLCCの新規就航も増え、航空機利用が増えることが予想される。人気の旅行先をみると、ハワイや東南アジアのリゾートが人気となっており、暮らすように過ごす滞在型旅行への志向も高まっている。

 インバウンドは、12年から国際関係の悪化による中国からの観光客が大きく減少していたが、13年終盤には回復の兆しが見え始めた。円安傾向の継続に加え、富士山や和食の世界遺産登録など、日本への関心が高まっていることから、引き続き回復傾向とみる。韓国は、震災後からの回復が遅れていたが、13年には震災前のレベルまで戻り、14年も前年並み。欧米からの訪日も経済の回復と共に増加している。東南アジアは13年のビザ免除・緩和効果ほどではないが、引き続き増加すると予測される。

14年国内はやや厳しい1年に、日本交通公社旅行動向シンポ

国内と訪日を分析
国内と訪日を分析

訪日は地方での受け入れが鍵

 日本交通公社は2013年12月19日に「第23回旅行動向シンポジウム」を開き、観光政策研究部の塩谷英生次長と相澤美穂子主任研究員が国内・訪日旅行市場の動向と展望について講演した。2014年の国内旅行は旅行意欲が伸び悩み、やや厳しい1年になるとの見方を示した。一方、訪日旅行の今後は、東・東南アジアの中間層と高所得層の増加による市場拡大が期待でき、FIT化とリピーター増加で地方での受け入れが重要になるとの展望を語った。

塩谷次長
塩谷次長

 国内旅行はまず、景気動向と旅行市場の関連について解説。国内旅行量の長期波動は景気との連動が基本で、塩谷次長は「旅行量のピークは、インフラ整備が熟して景気が下り坂になるタイミングで発生することが多い」と説明した。続いて旅行実績との連動がみられるJTBオピニオンリーダー層調査を紹介。消費増税や給与・ボーナス減少の懸念など景気への不安から、14年の年間旅行回数が増えると答えたのは前年調査の40・4%から31・8%に減少し、14年は「やや厳しい1年になる」と予想した。

 近年の旅行市場の質的変化をみると、ネット旅行会社の躍進、航空運賃自由化、高速道路割引、LCC登場、ダイナミックパッケージ増加などの構造変化でFIT化が加速。旅行会社の取扱額は07年の8兆2千億円をピークに、12年には6兆円まで減少、旅行会社利用率も中期的にみて低下傾向だ。2000年代前半には、自由度の高いフリープラン型旅行の比率が上がり、00年代後半には旅行予約サイトの利用率が上昇。旅行の申込み方法は、旅行予約サイトの利用が07年の13・4%から12年の24・9%まで増加し、その分宿泊施設での直接予約が41・9%から31・5%に減少した。

外国人比率30年に、6%から17%へ拡大

 2030年に向けた観光地経営のポイントには、(1)80代ツーリズム(2)FITを中心としたインバウンド(3)スマート観光地――の3つをあげる。

 日本の人口は10年の1億2800万人から30年には1億1700万人まで減少。宿泊観光旅行量は20年間で1200万人回減り、年代別では、70代と80代以上のみが増加する。70代以上は、観光旅行の利用交通機関で自家用車比率が低く、貸切バス比率が高い。塩谷次長は、「80代ツーリズムの成立には団体ツアーとFITの両面の施策が必要」と話した。

 将来の延べ宿泊数の動向をみると、12年の4億3900万人泊から30年には4億5千万人泊へと微増。内訳をみると、日本人が4億1300万人泊から3億7300万人泊へと大きく減少し、外国人が2600万人泊から7700万人泊へと飛躍的に増加する。外国人比率は6・0%から17・1%へとアップし、人口減による日本人旅行量の落ち込みをインバウンドが相殺する形になる。国内観光消費額に外国人客消費が占める比率は、日本は11年の4・5%から30年にはイギリス並みの17・1%まで増加。外国人観光客比率の高い地域では、国内旅行市場が縮小しても延べ宿泊者数が増える見込みで、塩谷次長は「外国人客を受け入れられない地域は、旅行量がマイナスになる」と指摘した。

 また、観光地の経営は、人口減少と財政悪化の課題が大きく、塩谷次長は「スマート観光地への取り組みが必要」と強調。「法定外税や、入湯税超過課税、協力金、事業収入などの自主財源が課題で、観光部署の予算規模は小さく、都市計画や交通計画と連動した観光計画が不可欠だ」と提起した。

地方ニーズ拡大、交通が課題に

相澤主任研究員
相澤主任研究員

 相澤主任研究員はインバウンドの動向と展望について解説した。03年のビジット・ジャパン(VJ)キャンペーン開始から約10年で市場が2倍に拡大。韓国、台湾、中国、香港のシェアが大きく伸び、東南アジアも増加、英仏独、米国・カナダは横ばいだった。震災前と13年を比較すると、台湾と香港、東南アジアが大幅増をみせ、欧米は横ばい。各国の海外旅行における訪日シェアは、台湾が震災前の13%から12年に14%へと微増したのに対し、韓国は20%から15%、中国も8%から5%へと減少。いまだ回復していないことがわかる。

 旅行内容の変化をみると、10年と12年の比較で、香港を除くアジアで個別手配率が上昇しており、とくにシンガポールと中国の伸びが顕著。パッケージツアー利用率の高い台湾でも45%から51%へと増加し、ついに個別手配率が半数を超えた。

 台湾の2倍以上の伸びをはじめ、各国で訪日リピーターが増加しているが、相澤主任研究員は「訪日回数が増えるにつれ、地方への訪問率が上がり、地方への分散化が進む」と報告。フリープランやFITでの台湾人再訪日希望者の49%に地方訪問経験があり、同じく49%は未経験だが地方訪問を希望している。ただし、地方訪問への課題点も少なくなく、言語よりも交通機関の手配の手間や交通費、移動時間などの懸念が多かった。また、ショッピングニーズの高さから大都市を拠点に地方を訪れたいという声も多い。

 今後の見通しでは中国、インド、東南アジアで引き続き高いGDP成長率が見込まれ、早ければ30年ごろまでにはマレーシア、中国、タイが先進国入りする。中間層や高所得層の増加でアジアの市場拡大が期待され、20年には訪日外客数1600万人、25年に1980万人、30年に2440万人の予想をたてた。

 震災や中国の旅遊法施行がFITの進展を後押し、FIT化とリピーター増加にともない、地方訪問のニーズが徐々に顕在化。相澤主任研究員は「地方でどれだけ受け入れられるかが今後重要になる」とまとめた。

観光庁が観光地ビジネス支援、40件ほど選定、上限700万円

募集期間は2月7日まで

 観光庁はこのほど、13年度補正予算で4億円を計上した「観光地ビジネス創出の総合支援」事業で、観光地域づくりの主体の自主財源確保を目指す取り組みの公募を始めた。募集期限は2月7日まで、支援対象経費は上限700万円とし、40件ほどの選定を予定する。

 対象は観光協会や、商工会議所、農業協同組合、NPOなど観光振興に取り組む団体。観光地域づくりの主体を1つに特定して応募。12年度補正予算「官民協働した魅力ある観光地の再建・強化事業」で選定された78地域が実施したモニターツアーを活かす内容で、自主財源の確保・拡大に向けた観光地ビジネスの具体的な計画が求められる。国の派遣する「目利き」とともに商品化を念頭に観光資源を磨き、モニターツアーを2回実施する。モニターツアーでの効果検証を経て、国の開く商談会に参加し、観光庁主催の観光地ビジネス化のための研修に参加することが条件になる。

 支援対象経費は「目利き」の派遣経費や、観光地ビジネスに関する勉強会・ワークショップ開催経費などで、モニターツアー催行経費は対象にならない。

【ご案内】プロが選ぶ100選ロゴマークについて

1月11日に「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」ならびに「プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」、「プロが選ぶ優良観光バス30選」の新しいランキングを発表いたしました。これを受け、イベントロゴマークも開催回を最新のものに更新いたしました。引き続き、ご活用いただければと思います。

弊社では、旅館100選ランキング冊子の翻訳版の発行なども試み、100選関連事業のより一層の付加価値作りに務めてまいりました。今回のロゴマーク作成もその一環です。観光業界のなかでも最も歴史のあるランキング発表事業をより多くの皆様にお伝えし、入選施設様をはじめ、ご投票にご協力いただいている旅行会社様や各企業様の事業に役立つよう取り組んでまいります。

下記にロゴ使用の手順をお知らせします。38回ロゴマークの使用を申請いただいた各社・各館様も更新にあたり、お手数ですが、再度申請手続きをお願いします

申請書はこちらからファイル(ZIP圧縮)をダウンロードください。

14年度観光予算2%増の98億円、VJは優先枠含め61億円に

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 2014年度政府予算案が13年12月24日に閣議決定され、14年度の観光庁関係予算は13年度予算比2%増の98億1100万円となった。8月の概算要求では、同19%増となる114億4100万円を要求。厳しい財政状況を受けた予算編成のなか前年度比微増を確保した。ビジット・ジャパン(VJ)事業は、通常事業が同14%減の49億300万円と減少したが、政府の成長戦略などの重点施策特別枠「新しい日本のための優先課題推進枠」に盛り込まれた「戦略的訪日拡大プランの推進」12億200万円を合わせると、同7%増の61億500万円となった。また、復興庁計上分の「復興枠」は同5%減の5億4900万円で、観光関連の合計では同1%増の103億5900万円と、かろうじて100億円の大台を突破した。

【伊集院 悟】

 予算項目は(1)訪日外国人旅行者数拡大に向けたインバウンド政策の推進(2)観光地域づくり支援(3)旅行振興(4)観光統計の整備――の4本柱となった。復興枠は前年度と同じ(1)東北地域観光復興対策事業(2)福島県における観光関連復興支援事業――の2事業。各項目の事業内容は、基本的に概算要求時のものと同様だ。このうち、「インバウンド政策の推進」のみが前年度比でプラスとなった。

 「訪日外国人旅行者数拡大に向けたインバウンド政策の推進」分野は、前年度予算比4%増の84億9700万円を計上。中核となるVJ関連事業は、「新しい日本のための優先課題推進枠」の「戦略的訪日拡大プランの推進」12億200万円を含めて同7%増の61億500万円となった。

 「戦略的訪日拡大プランの推進」は、経済成長とビザ緩和が追い風となっている東南アジアを、4大市場の東アジア各国に並ぶ訪日市場へと育てるために、集中プロモーションをかける。また、訪日外客数2千万人へ向けて今後大幅な増加が期待できる市場に対し、インパクトのあるテレビCMや屋外広告、多言語の訪日サイトで、旅行先としての認知度向上を目指しプロモーションを展開する。概算要求時に含まれていたイタリア、スペイン、オランダ、フィンランド、トルコに加え、インド、ロシア、スウェーデン、ベルギー、デンマーク、オーストリア、ノルウェー、ポーランド、イスラエルが対象に含まれたが、ブラジルとスイスはカットされた。

 新規事業の「宿泊施設の情報提供促進事業」は1100万円を計上。外国人旅行者への実態調査をもとに、ホテル・旅館の施設の状況や各種サービスの有無などについて効果的に情報提供できるよう、情報提供ガイドラインの策定や活用方法の検討を行う。また、夏以降に旅館団体などを通して旅館経営者へ実態調査を行い、経営への影響・効果を分析し、旅館のブランド化と知名度向上につなげる。

 そのほか、近年重要性が認知されてきた「国際会議等(MICE)の誘致・開催の促進」は同11%増の4億5千万円と大幅増となり、「通訳ガイド制度の充実・強化」は同25%減の1900万円、「JNTO運営費交付金」は同4%増の19億1200万円となった。

 「観光地域づくり支援」分野は、同4%減の5億2200万円を計上した。13年度第1次補正予算で4億円を計上した新規事業「観光地ビジネス創出の総合支援」に7200万円。補正予算分でビジネスモデルを構築し、14年度予算分では地域の取り組みを発信するポータルサイトを開設し、地域間のノウハウ共有の仕組み作りを目指す。また、マーケティング手法などの実学を含む講習も実施していく。

 継続事業の「観光地域ブランド確立支援事業」は同20%減の2億7400万円、「地域観光環境改善事業」は同13%減の8600万円、「観光地域動向調査事業」は同3%増の3900万円、「観光地域評価事業」は同2%増の5千万円となった。

 「旅行振興」の分野は同40%減の6千万円。「旅行の安全の確保・向上方策検討調査」に同5%減の2400万円、「ユニバーサルツーリズム促進事業」に同6%減の3700万円となった。

 そのほか、観光統計の整備に同17%減の4億2900万円、「経常事務費などのその他」に同6%増の3億200万円を計上した。

 また、復興庁に計上される復興枠では、継続事業の「東北地域観光復興対策事業」に同12%減の1億7500万円、「福島県における観光関連復興支援事業」に同1%減の3億7400万円となった。

日本は正しい選択をしているか ― 原発賠償「観光予算の500年分」

 旅で、少し早めに旅館やホテルにチェックインするのが好きだ。午後3時のチェックインだったら、7―8分前に宿の玄関に向かう。少し迷惑な客かもしれない。でも、まだ客のいない宿のロビーの雰囲気が好きなのである。大きな旅行鞄を横に置いて、客を迎える準備を整えるようすを眺める。どうかしたら、「待っている時間が申し訳ない」と思われるのか、お茶を持って来てくれることもある。口開けのバーで飲む一杯のマティーニが一番美味しいように、銭湯の一番客が最も気持ち良いように、まだ観光客によって空気が汚されていない宿の清らかな空気が好きなのだと思う。

 チェックインを早くするのには、もう一つ理由がある。釣り竿を持って、海に糸を垂らすのがこのところの習いである。釣りの最中は、海を眺める。海の向こうを眺める。誰もいない海で、1人釣り糸を垂らすのが好きである。釣れても、釣れなくてもどっちでもいい。知らない土地の初めての海に、細い糸を一本海に垂らすだけで、すでに8割の満足感を得ている。釣れた魚は、友人のように親しみの気持を覚える。「君は、ちっちゃいなー」などと話しかけながら、海に戻してあげる。

 海を間近に眺めていると、透明度の高い青い海には心が洗われる。でも、黒く汚れた海を長時間眺めていると心が濁ってくる。自然に対する思いが自分の中でも大きく変わってきているのを、最近強く感じる。

 日本とトルコは友好国として両国の間では知られている。1890年に和歌山県串本町沖でオスマン帝国の軍艦「エルトゥールル号」が遭難し、串本町の住民らが救助を行い69人を救出したことも両国の絆を強める要因となった。このように、友好関係を世界各国と築いていくには相当の時間がかかるし、簡単なことではない。そのトルコに日本政府は原発輸出に向けた動きを加速させようとしている。また、アジアでも日本と良好な関係にあるベトナムに対しても、原発輸出を計画している。

 京都大学大学院准教授の伊藤正子氏の論文などを読むと、ベトナムでは、「原発の安全神話を築くために、日本の原発プローモーションがベトナム語で流されている」とのこと。原発予定地は開発が遅れている地域であり、原発に対する情報が圧倒的に少ない状況にある。ここにも原発マネーが流入している。原発輸出と原発の安全神話はセットである。多くの日本人がいつか見た景色である。

 トルコは地震が頻発する地域である。ベトナムには津波が何度も襲っている。日本国内をみると、福島の原発問題はまったく終わっていない。汚染水は今も海水に流れている。この現状のまま、一方で、海外の友好国に原発を輸出することが日本の正しい選択だとはどうしても思えないのだ。

 昨年12月に東京電力から追加要請のあった原子力損害賠償支援を国が認めると、計4兆7888億円にものぼる。別の補償金と合わせると約5兆円。14年度の観光予算98億円の約500年分である。国のお金の流れが歪な構造になっていないか。

 そして、今年は消費税増税の年だ。新年会では政界、経済界、そして観光業界も景気の話に始終するだろう。大きく、逞しい権力を持つ強者の声に押し消されがちな「小さな声」を拾い上げ、紙面で伝えていきたいと思う。

(編集長・増田 剛)

第39回 プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選発表

第39回
プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選発表

秀水園が料理部門30連覇、加賀屋が34年連続総合トップ

 旅行新聞新社が主催する第39回「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」、第34回「プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」、第23回「プロが選ぶ優良観光バス30選」と選考審査委員特別賞「日本の小宿」10施設が決まった。総合100選は、石川県・和倉温泉の加賀屋が34年連続1位に選ばれ、料理部門は鹿児島県・指宿温泉のホテル秀水園が30年連続のトップに輝いた。部門別の上位入賞、各賞入選施設を紹介する。表彰式は1月24日、東京・新宿の京王プラザホテルで開かれる。

 

 

 「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」は全国1万6560の旅行会社(本社主要部門、営業本部、支店、営業所を含む)に投票用紙(専用ハガキ)を配布。昨年10月1―31日までの投票期間中に「もてなし」「料理」「施設」「企画」の各部門で優れていると思われる旅館・ホテル、観光・食事施設、土産物施設、観光バス会社を選出してもらった。11月26日には、旅行業団体関係者や旅行作家、旅行雑誌編集者らで構成される「選考審査委員会」が開かれ、100選ランキングが決定した。

 「ホテル・旅館」の総合では、加賀屋(石川県・和倉温泉)が今年も1位に選ばれ、34年連続1位とさらに記録を伸ばした。2位は日本の宿古窯(山形県・かみのやま温泉)、3位は白玉の湯泉慶・華鳳(新潟県・月岡温泉)、4位は稲取銀水荘(静岡県・稲取温泉)、5位は水明館(岐阜県・下呂温泉)、6位はホテル秀水園(鹿児島県・指宿温泉)、7位は萬国屋(山形県・あつみ温泉)、8位は草津白根観光ホテル櫻井(群馬県・草津温泉)、9位はあかん湖鶴雅リゾートスパ鶴雅ウィングス(北海道・阿寒湖温泉)、10位はホテル鐘山苑(山梨県・富士山温泉)となった。1位の加賀屋と2位の日本の宿古窯は第1回から39年連続でトップ10入選。白玉の湯泉慶・華鳳は昨年の4位から1ランクアップ、萬国屋は昨年の8位から1ランクアップ、あかん湖鶴雅リゾートスパ鶴雅ウィングスは昨年の10位から1ランクアップした。また、昨年と比較して、今年は新たに7施設が総合100選入りした。

 部門別にみると、「もてなし」部門は加賀屋がトップに輝き、「料理」部門はホテル秀水園が30年連続1位という偉業を達成した。「施設」部門は昨年悲願の1位に輝いた白玉の湯泉慶・華鳳が首位を守り、「企画」部門は日本の宿古窯が18年連続で1位に選ばれた。

 第34回「プロが選ぶ観光・食事施設100選」の1位は浅間酒造観光センター(群馬県・長野原)、2位は伊達の牛たん本舗(宮城県・仙台)、3位は平泉レストハウス(岩手県・平泉)、4位はザ・フィッシュ(千葉県・浜金谷)、5位はおぎのや佐久店(長野県・佐久インター)、6位はサッポロビール園(北海道・札幌)、7位はアサヒビール園(北海道・札幌)、8位はSUWAガラスの里(長野県・諏訪)、9位はマザー牧場(千葉県・鹿野山)、10位には阿蘇ファームランド(熊本県・阿蘇)が入りトップ10に再入選となった。

 「プロが選ぶ土産物施設100選」の1位は浅間酒造観光センターで、10年連続で観光・食事と土産物の両部門で1位に輝いた。2位は蔵元 綾 酒泉の杜(宮崎県・綾)、3位は御菓子御殿(沖縄県・読谷)、4位はいちごの里(栃木県・小山)、5位はえびせんべいの里(愛知県・美浜)、6位は庄内観光物産館ふるさと本舗(山形県・鶴岡)、7位は上杉城史苑(山形県・米沢)、8位はお菓子の壽城(鳥取県・米子インター)、9位は庵古堂(群馬県・伊香保)、10位は道の港まるたけ(千葉県・鴨川)が選ばれた。御菓子御殿は昨年の5位から2ランクアップ、道の港まるたけは初のトップ10入りを果たした。

 23回を迎えた「プロが選ぶ優良観光バス30選」は、はとバス(東京都大田区)が13年連続で1位。2位は名阪近鉄バス(愛知県名古屋市)、3位は名鉄観光バス(愛知県名古屋市)、4位は山交バス(山形県山形市)、5位はアルピコ交通(長野県松本市)、6位は日の丸自動車興業(東京都文京区)、7位は新潟交通観光バス(新潟県新潟市)、8位は三重交通(三重県津市)、9位は関鉄観光バス(茨城県土浦市)、10位は三八五バス(青森県八戸市)が上位入選を果たした。関鉄観光バスは初のベスト10入りとなった。

 選考審査委員特別賞「日本の小宿」に推薦された10施設は2面で紹介している。

 「100選」ロゴマーク

「100選」ロゴマーク

 

※ 詳細は本紙1531号または1月17日以降日経テレコン21でお読みいただけます。