2024年4月26日(金) 配信

旅行新聞は3月12日、昨年9月に台湾観光局から台湾観光庁(交通部觀光署)に昇格した初代長官の周永暉氏に、台湾観光庁(台北市)で単独インタビューを行った。訪台日本人旅行者数は2019年に約220万人を記録し、双方向の交流は700万人を突破したが、コロナ禍の影響もあり、伸び悩みが続いている。「日本と台湾の観光交流拡大に向けて」をテーマに、台湾観光の目指すべき方向性や、日本の旅行会社や旅館・ホテルに要望することなどを周長官に問い掛けた。
【聞き手=本紙代表取締役社長・石井 貞德】
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□訪台日本人250万人目指す スマート観光に注力、技術交流も
――台湾観光局が昨年9月15日に「台湾観光庁」に昇格されました。組織や事業方針はどのように変わりましたか。
台湾は観光政策に一層重点を置くために、観光庁に昇格させ、新たな組織となりました。
大きく変わった点は、3つあります。1つ目は、旅行会社とホテルを管轄する部署が「国民旅游部」と「旅宿部」に別れました。
2つ目は、国際部については海外の発信拠点となる事務所数を拡大していきます。
3つ目はスマート観光を促進するために部署を超えた連携を積極的に推進していきます。
観光庁長官は政務官という地位になります。観光局長は行政院長(首相)からの任命ですが、観光庁長官は中華民国総統から任命されます。主導力と責任が格段に大きくなりました。
日本からもさまざまな方から多大なご支援をいただいており、感謝申し上げます。
――台日観光交流の拡大について。
日本を訪れる台湾旅行者数は、2024年はおそらく500万人を達成すると予想しています。
一方、訪台日本人旅行者数は250万人を目標に掲げています。
台湾の受入体勢の課題として、「ガイド不足」という問題が生じています。250万人規模に対応できるようにツアーガイドの確保も必要で、より柔軟性のある資格制度づくりに取り組んでいます。
――台湾の観光政策の柱、目指すべき方向性について教えてください。
アウトバウンドに関しては、何よりも安全管理に注力します。
国内旅行とインバウンドの政策は重なる部分が多くあります。より深く中身のある観光資源の発掘が重要で、地域ごとの魅力向上に力を入れていきます。食事や宿泊、ショッピング、交通アクセスなど、さらなるレベルアップをはかっていきます。
インバウンドに関しては「台湾初心者」と「リピーター」の2種類に分ける必要があります。
双方に重要なのは、海外での知名度アップにもつながる観光スポット(観光地)の“ブランド化”です。
ブランド化には、やはり中身がとても大切になります。とくに現在はデジタルの時代です。ビッグデータなど最先端技術を活用し、観光客のニーズに対応した情報提供や観光サービスを提供する「スマート観光」は、とりわけ力を注ぎ取り組むことが重要です。
さらに、インバウンドのお客様に対しては、自然や食、文化的なイベントなど、四季に合わせて違いのある魅力的なコンテンツを提供していかなければ、リピーターになっていただくことはできません。イベント期間中に温泉やグルメ、ショッピングなどの観光要素を結び付けた商品づくりが不可欠です。
台湾を代表するお祭りで、多くの日本の方にも人気の「台湾ランタンフェスティバル」は毎年旧歴の1月15日に合わせて開催しています。開催地が毎年変わり、時期のズレもあります。「どうやって旅行者を惹きつけていくか」が、管轄する我われ観光庁や開催地にとって大きな課題になります。
例えば2019年の台湾ランタンフェスティバルは、屏東県の東港大鵬湾で開催されましたが、東港は黒マグロが獲れる港として有名ですので、その年のメインランタンは黒マグロをモチーフとしました。
今年は台湾で長い歴史と深い文化を有する台南市で開催されました。台南は早くから鉄道文化が栄えた地です。また、航海や漁業の守護神「媽祖」信仰の厚い地でもあります。媽祖廟もたくさんあり、今年は「鉄道」と「媽祖」の2つの要素もふんだんに取り入れました。
来年は、桃園市で開催されます。桃園国際空港は台湾のゲートウェイ(玄関口)であり、野球がとても盛んな地域です。来年は「野球の歴史」に関連するテーマを予定しています。
毎年ランタンフェスティバルの前日にパレードを行いますが、2003年から日本の「YOSAKOIソーラン」チームを招いて参加していただいています。野球場でパレードを実施できれば、2万人にお見せすることができます。
トランジットで桃園国際空港に立ち寄られた海外からのお客様にも受入側が工夫することで、半日でもランタンフェスティバルに誘導したいと思っています。
――周長官から見た台湾の魅力は。
何と言っても、美食と台湾茶が自慢です。夏になると、台湾のかき氷がとても美味しい。日本や東南アジアの旅行者にも愛されています。さらに、台湾にはコーヒーの産地もあり高い人気を誇っています。このようにグルメに関連する魅力を広くアピールしていきたいと思っています。
秋になると、日本のように紅葉を鑑賞する名所はないのですが、台湾各地でスポーツ大会を盛大に開催しています。
日月潭では、毎年中秋節(旧暦8月15日)の時期に、横断遠泳大会が開催されています。約3㌔の距離で、海外からの参加者が多いのが特徴です。
台湾のマラソン大会も非常に人気です。本土だけでなく離島でも毎年多くのマラソン大会が開催されています。二水郷(彰化県)のマラソンコースは高低差も大きく、過酷で挑戦しがいのあるコースです。
最もグルメなコースは澎湖島の「菊島澎湖横断マラソン」で、コースの途中でロブスターなど澎湖名産の魚介類を食べることができます。
これらのほかにも、鉄道で台湾を一周することや、自転車の旅もおススメです。
――台湾観光の問題点、課題があれば。
観光業界は旅行会社、ホテル、テーマパークなど約20万人の関係者、従業員がいます。台湾での観光に旅行者が満足していただけるかは、観光に携わる人材の維持、確保に関わってきます。人材の育成はとても重要な問題と捉えています。
台湾には22県市の地方政府があります。それぞれの地方が有する観光資源をどうすれば「魅力の最大化」ができるか。これには、お互いに協力し合うことが大事です。
また、台湾には日本のJNTOのような政府観光局がないので、観光庁のスタッフが海外への発信も対応しなければなりません。負担や責任も大きいですが、挑戦の度合いや達成感も大きくなりますので、頑張っていきます。
――日本の旅行会社、旅館・ホテルなど観光業界への要望や期待することは。
観光業は、サービスが向上しなければお客様に感動を与えることはできません。相互に技術交流ができればと思っています。
これまで何度も日本に訪れましたが、おもてなしに感動したことがたくさんありました。
日本の観光業界の方々とサービスの技術交流ができるのであればとても楽しみです。
――旅館女将の勉強会である「全国女将サミット」を実施していますが、旅館の女将が台湾の観光関係者とディスカッションや意見交換、交流することは、日台観光交流にとって有意義ではないかと考えます。ぜひ実現したいと思っています。
石井社長がおっしゃったことは非常に興味深いことだと思います。台湾には温泉がたくさんあります。泉質も非常に良くて、日本の温泉地や、温泉旅館との交流ができるととてもいいことだと思います。
今春、九州の熊本県に世界最大の半導体受託生産会社「TSMC」の工場ができました。日本と台湾の結びつきは一層強まり、さまざまな交流の可能性が広がっていくのだと期待しています。
未来に向けて、若い世代間の交流も大事です。このため、日本からの修学旅行に力を入れていきたいと思っています。交流をより深めていくには、専門性、深みのある、永続的なことを考えなければなりません。これまでにないアイデアや企画を生み出すことが大事になってきます。
「観光は教室のない勉強」です。観光庁としても、面白く楽しく学べるプログラムも準備していきたいと思っています。
――最後に、日本市場に対してアピールをお願いします。
台湾では、鉄道観光のさまざまなイベントが予定されています。日本と台湾の間には32の同名駅が存在しています。日本から32人を招待し、1日駅長を務めていただくような企画を計画しています。
台湾は「美食の宝庫」です。高級なものから庶民の味まで選択肢が豊富です。ぜひ日本の皆様に台湾の鉄道と美食を満喫していただければと思います。
――ありがとうございました。
【本紙1936号または5月9日(木)以降日経テレコン21でもお読みいただけます。】
