観光関連に27億円、目利きの観光地強化事業も(12年度第1次補正予算)

 2012年度第1次補正予算が1月15日に閣議決定され、観光関係予算は観光庁計上の25億7千万円と、復興庁計上の2億1千万円の合計27億8千万円となった。事業別にみると、観光庁関係では「訪日個人・ビジネス関係旅行者等誘致の強化事業」に10億円と、「官民協働した魅力ある観光地の再建・強化」に15億7千万円を計上した。

 「訪日個人・ビジネス関係旅行者等誘致の強化事業」では、桜の季節とその後の需要喚起や地域経済の活性化をはかり、主要市場からの個人旅行促進と、東南アジア市場の拡大を通じた送客元の多様化、会議分野での訪日など、地域と連携しつつ積極的な取り組みをはかることでリスクに強い訪日外客構造への転換を促進していく。

 このうち、(1)ウェブ広告などのネット上での情報発信(2)航空会社やクルーズ会社、宿泊・旅行予約サイトなどでの個人旅行特化型共同広告(3)訪問地の多様化をはかる地域と連携した旅行会社の招聘――などの「訪日個人旅行の促進事業」に7億円。高い経済成長やマルチビザの導入などを背景に、高い伸びを示す東南アジア市場で、露出の拡大と商品造成を通じた誘客に取り組むためにメディアや旅行会社の招聘などを行う「東南アジアからの誘客促進事業」に1億円。(1)ミーティングプランナー、インセンティブキーパーソンなどに対するプロモーション(2)モニターツアーの実施(3)ユニークベニューの利用促進――などを行い、企業などの会議や報奨・研修旅行を中心としたビジネス観光の誘致をはかる「ビジネス観光の促進」に2億円を計上した。

 また、「官民協働した魅力ある観光地の再建・強化」では、地域の特色ある素材の発掘や地域と旅行会社、交通事業者、旅行メディアなどの総力結集による確実な商品化と情報発信を行い、魅力ある観光地づくりを推進するため、(1)地域から提案を公募し(2)旅行会社のバイヤーや地域活性化プランナーなどの目利きが選定し(3)目利きを地域に派遣し資源を磨き上げ(4)試行ツアーの造成と情報発信(5)旅行会社と旅行メディアなどへ対して商談会――などを行う。

 一方、復興庁に計上した「東北地方における旅行需要創出事業」では、デスティネーションとしての太平洋沿岸エリアの認知度向上と福島県への旅行需要喚起のため、広報やイベントを開催していく。

 なお、各事業は12年度予算のため、早急に企画・準備を進め、年度内である3月末までに実施する予定だ。

第38回「100選」盛大に祝う

表彰を受ける総合1位の加賀屋
表彰を受ける総合1位の加賀屋

加賀屋、33年連続1位

 旅行新聞新社が主催し、全国旅行業協会(ANTA)と日本旅行業協会(JATA)が後援する新春恒例のイベント「第38回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」および「第33回プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」「第22回プロが選ぶ優良観光バス30選」の表彰式と祝賀パーティーが1月18日、東京都新宿区の京王プラザホテルで開かれた。ホテル・旅館総合100選では石川県和倉温泉の加賀屋が33年連続の1位を獲得。表彰式では「もてなし」「料理」「施設」「企画」の各部門の入選施設も表彰された。表彰式後の祝賀パーティーには約650人の業界関係者が出席し受賞を祝った。

 受賞者や関係者など総勢320人ほどが参列した表彰式の冒頭で、旅行新聞新社の石井貞德社長は「年末に安倍晋三内閣総理大臣に変わり、経済活性化へエンジンをかけ、観光業界を応援していこうという言葉もいただき、観光業界の賀詞交歓会では太田昭宏国土交通大臣が(1)国内観光の充実(2)インバウンド事業の促進(3)東北観光の復興――の3本柱を掲げ、観光に注力することを語っていた。しかし、それを形にするのは、皆さんの弛まない1歩1歩の努力。巳年は脱皮して新しいものが生まれるといわれるが、足下を見直し、考え、スピード感を持って実行に移すことが大切」と語った。「業界の垣根を超えて全国の病院に観光業界のより多くの正しい情報を伝えたいとの思いから、昨年ピンクリボンのお宿ネットワークを立ち上げた。皆さんと一緒になってすべての人が幸せになる旅づくりをしていきたいのでぜひご協力を」と呼びかけた。

 審査委員を代表して、M2代表の三堀裕雄氏は「何としても100選に入りたいという努力の結果、今年は5つの宿が新しく総合100選に入選した。そして9割以上の宿が100選入選を維持し、これは経営者の日頃の弛まぬ努力の賜物だ」と祝辞を述べた。「東北は100選でも健闘が光り、現地でも元気に営業を再開した宿がぞくぞくと出てきている。必死にがんばっている東北を皆でぜひ盛り上げていきましょう」と呼びかけた。

 表彰では、総合、もてなし部門1位の加賀屋(石川県・和倉温泉)、料理部門1位のホテル秀水園(鹿児島県・指宿温泉)、施設部門1位の白玉の湯泉慶・華鳳(新潟県・月岡温泉)、企画部門1位の日本の宿古窯(山形県・かみのやま温泉)ら上位10軒のホテル・旅館に表彰状と記念の楯が贈られた。

 観光・食事、土産物施設100選では浅間酒造観光センター(群馬県・長野原)が9年連続で両部門1位に、優良観光バス30選でははとバス(東京都大田区)が12年連続の1位獲得となった。

≪650人の出席者でにぎわう

 会場を移した新春祝賀パーティーでは、旅行会社や案内所、一般関係者も加わり、各施設の受賞を祝い、今年のさらなる飛躍へ交流をはかった。

 後援団体を代表して全国旅行業協会の鈴木明治副会長は受賞施設へ祝辞を述べ、「38年という長きに渡り100選イベントを続けているという業績に敬意を表したい。このランキングは旅行会社や関係団体にとって本当に役立ち、大いに利用させてもらっている」と旅行会社を代表して語った。さらに、「温泉・旅館は日本の誇りであり、日本文化の象徴。旅館・ホテルのスタッフ、2次交通機関の皆さんと一丸となって、観光業界が盛り上がるよう努力していきたい」と今年の飛躍へ力を込めた。

 来賓の観光庁の志村格次長は「入選された施設と、100選事業など観光業界を盛り立てている旅行新聞新社に敬意を表したい」と祝辞を述べ、「今年は観光立国から10年。東北の観光復興を始めとする国内観光の活性化と、インバウンドでは東南アジアを主要ターゲットに力を入れてく。今日集まった宿泊施設や旅行業者、交通機関のみなさんと一体となり、観光立国実現に向けてがんばっていきたい」と力を込めた。

 安倍晋三自民党総裁からは「観光振興や地域の特色を生かした地域活性化は、日本経済の活性化に向けて必要不可欠な重点課題であり、将来が期待される最も有望な成長分野なので、国も惜しみなく支援していきたい」との祝辞が披露され、そのほか、山本一太参議院議員と丸川珠代参議院議員からの祝辞も披露された。

 33年連続でホテル・旅館の総合1位に輝いた石川県和倉温泉加賀屋の手島孝雄総支配人は「この33年連続1位という結果におごることなく、宿屋という原点に戻り日々精進していきたい」と喜びを語った。

 観光・食事と土産物部門で9年連続1位に輝いた浅間酒造観光センターの櫻井芳樹代表は「足下を見つめ、お客様の目線で考え、初心を忘れずに邁進したい」と喜びを語った。

 優良観光バス部門で12年連続の1位を獲得したはとバスの金子正一郎社長は、「このたびの受賞はドライバー含め社員一同の励みになる。弊社は今年65周年を迎えたので、この受賞を機に気持ちを新たに、お客様により一層評価いただけるよう努めていきたい」とさらなる飛躍を誓った。

 続いて、選考審査委員特別賞「日本の小宿」の表彰式が行われ、やどや三平(秋田県・小安峡温泉)、紀伊之国屋別亭(千葉県・安房温泉)、里山のオーベルジュ薪の音(富山県・南砺市)、了山(岐阜県・鬼岩温泉)、湊のやど 汀家(静岡県・焼津)、湯之上館(島根県・出雲湯村温泉)に表彰状と記念の楯が贈られた。

No.330 新石垣空港、3月7日開港 - 八重山、沖縄観光の将来像語る

新石垣空港、3月7日開港
八重山、沖縄観光の将来像語る

 沖縄県・石垣島に3月7日、新石垣空港が開港する。島東部に整備された新空港は、中型機の就航が可能な2千メートルの滑走路や国際線ターミナルなどを備える。新空港計画から34年。地元の悲願とも言える新空港開港は、八重山観光、沖縄観光にどのような変化をもたらすのか。中山義隆石垣市長、安里繁信沖縄観光コンベンションビューロー会長、宮平康弘石垣市観光協会会長の3氏に、将来像を語り合ってもらった。

【司会=本紙関西支社長・有島誠、構成=土橋孝秀】

沖縄観光拡大の起爆剤に

≪開港後5年で100万人目指す ― 中山

≪オール沖縄でセールス展開 ― 安里

≪八重山全体で「星の島」PR ― 宮平 

 ――沖縄県観光全体の現状は。

安里:2012年の観光入込客数は、11月末までの集計で対前年比が国内6・3%、海外31・7%それぞれ増加した。国内外累計では7・9%の増加だ。12月も順調に推移した。ただ、10月の週末に台風が集中したこともあり、トータルでは600万人弱くらいになるだろう。国内10%、海外50%増の目標設定には届いていないが、確実に成長している手ごたえがある。

 ――八重山観光の状況は。

宮平:年間約78万人の観光客を集めた07年のピーク以降、経済環境や大震災の影響、航空運賃の割高感などで数字が下がり、11年は約66万人まで落ち込んだ。12年は新石垣空港開港プロモーションを、北海道から九州、沖縄までの国内各地、そして海外は台湾、香港、韓国で展開した。その効果もあり、目標としていた70万人の回復は達成できたとみている。V字回復への足がかりになったのではないか。

 ――新石垣空港がいよいよ開港する。

中山:30年以上待ち望んだ新空港開港だ。2千メートルの滑走路を備え、中型機の就航が可能となり、直行便の増便が期待できる。この開港を起爆剤として、観光振興に結び付ける。航空運賃の割高はこれまで指摘されてきたが、直行便就航で、運賃が下がることに期待する。観光客の輸送だけでなく、地元農産物の大量輸送が可能になるなど、さまざまな効果もある。

 

※ 詳細は本紙1491号または2月7日以降日経テレコン21でお読みいただけます。 

空港のレストラン ― もったいない不調和

 早朝、羽田空港に到着した。フライト時刻まで少し時間があったので、レストランでコーヒーを飲みながら飛行機を眺めていた。すると、スーツ姿の若いサラリーマン3人が近くの席でカツカレーを食べ始めた。「仕事に立ち向かう前の早朝からカツカレーを食すとは、素晴らしい姿勢だ」と感心していた。

 間もなく、そのうちの1人の青年が席を立ち、カウンターの女性に向かって歩いて行った。「本当は全部食べたいのだけど、カレーが少なすぎるので……」と、毅然とした態度で半分以上も残っているまっ白いご飯を返却したのだ。見渡せば、残りの2人の男も、別のテーブルでカツカレーを食べている男の皿も皆カレーが極端に少なく、ご飯だけが残っていた。早朝からカツカレーを注文するということを考えれば、皆お腹は減っているのだ。3人の男たちのグループの別の1人は、カレーの無くなったむき出しのカツだけで白いご飯を食べていた。

 私はこのような風景を何度も目にしてきたし、実際自分も似たような経験を多々しているので、ご飯を半分以上残してカウンターに返しに行った青年の無念な気持ちがすごくわかる。本当は、余程の場合でない限り、注文した料理を半分も残して返却なんかしたくはないのだ。

 今さら言うまでもないことだが、カツカレーは、カレーとカツとご飯のハーモニーを楽しむもので、どれか一つでも不完全であれば、すべてが台無しになってしまうという見かけ以上にデリケートな料理である。カレー専門店が出すカツカレーと、トンカツ屋さんが出すカツカレーも、それぞれ重きの置き方に微妙な差があるから面白い。

 空港内のカツカレーは決して安くはない。私なんかは「どうしてこのお店はお客を笑顔にするために、カレーをもう少したっぷりかけてあげないのだろう?」と悔しい気持ちになってしまった。店員だって決して悪気があったわけではない。カウンターの女性は顔を真っ赤にして丁寧に謝り、厨房から今度はカレーがたっぷりとかかったカツカレーが出てきたのだから。

 冷静にしっかりと自分の気持ちを伝えた青年の態度は立派だと思った。しかし、料理屋さんにとって、このテの客との不調和は非常にもったいない。一度でもこういうことがあると、客は二の足を踏んでしまうものなのだ。

(編集長・増田 剛)

外客にWiFi提供、カードで2週間無料に

ID/Passカード
ID/Passカード

みなかみ町、61カ所で

 群馬県みなかみ町(岸良昌町長)は東日本電信電話(NTT東日本)群馬支店と協力し、昨年12月21日から、短期滞在の外国人観光客向けに、Wi―Fiのインターネットが利用できる「ID/Passカード」の提供を開始した。

 NTT東日本のWi―Fiサービス「光ステーション」設置エリアで、2週間無料で接続が可能になる。配布場所は町内の旅館や土産物店など61カ所。

 同町は、昨年8月に開始した「みなかみハピネス・光Wi―Fiタウン観光活性化計画」の第2弾施策として、外国人観光客の受け入れ促進をはかる。同カードの提供は山梨県、長野県長野市に続き、全国で3番目。群馬県内では初めてとなる。なお、福島県ではイベント時に配布した実績があるという。

 接続時はカードに記載されているID・パスワードを利用する。対象は、90日以内の日本入国履歴をパスポートで確認できる外国人旅行者。

第3回かながわ観光大賞、最優はカップヌードルM

表彰を受けるカップヌードルくん
表彰を受けるカップヌードルくん

 神奈川県(黒岩祐治知事)は昨年12月14日、「第3回かながわ観光大賞」の表彰式を行った。グランプリには開館1年足らずで来館者100万人を達成した「カップヌードルミュージアム」が輝いたほか、3部門の大賞と審査員特別賞がそれぞれ選ばれた。

 黒岩知事は「どれも大賞に値するほど素晴らしく、悩みに悩んだ」と審査の過程を振り返った。とくに、グランプリのカップラーメンミュージアムについては「横浜の新しい観光名所として大人気だ。来館すると、インスタントラーメンを発明した安藤百福さんのクリエイティブシンキングが伝わり、勇気づけられる。意義あるミュージアム」と絶賛した。

受賞者と黒岩知事(中央)
受賞者と黒岩知事(中央)

 昨年11月に登場したキャラクター“カップヌードルくん”と表彰を受けたカップラーメンミュージアムの筒井之隆館長は「海外からのお客様にも来ていただきたかったので、国際都市の横浜を選んだが、地元に評価していただいたことは大変名誉なこと。心から嬉しく思う」と喜びを語った。

 審査委員を代表し、東海大学・菅井克行教授は応募全体の印象について「民間レベルで大きな推進力があったことや地域自らが主体となった問題解決型のもの、地域や民、行政が三位一体で地域活性化に取り組んでいる事例が多かった」と今回の特徴を述べた。そのなかで精神性や地域性、創意工夫、集客実績、経済波及効果などをもとに審査を行ったと説明し、各賞の講評を行った。

 グランプリ以下の賞は次の通り。

 【魅力ある観光地づくり部門大賞】小田急箱根ホールディングス「箱根スイーツコレクション」スイーツを切り口に、箱根エリアが一丸で取り組むことで、若い世代など新たな観光客の獲得や上質なイメージ醸成に取り組んだ【観光による地域活性化部門大賞】一夜城ヨロイヅカファーム「一夜城ヨロイヅカファームプロジェクト」パティシエの鎧塚俊彦氏と地元農家、小田原市が連携して施設をオープン。地域の農産物を活用したスイーツショップやレストラン、マルシェなどがあり、月に約1万人が来訪【外国人観光客部門大賞】富士箱根ゲストハウス代表・高橋正美氏「外国人観光客の受け入れを通じた国際観光まちづくり・人づくり」箱根で経営する民宿で、28年間にわたり、75カ国・11万人を超える外国人観光客を受け入れた。「VISIT JAPAN大使」に任命されている【審査委員特別賞】秦野市観光協会「新しい協働型観光振興事業」職員を民間企業経験者で構成。観光資源の発掘やオリジナリティある事業で財源確保に努め、自立した観光協会を目指している。

現代の“八重”に会う、女子大生が会津の旅考案

日本旅行と企画を協議
日本旅行と企画を協議

跡見女子大と日本旅行

 跡見学園女子大学と日本旅行はこのほど、同大学がパートナーシップ協定を結ぶ福島県会津若松市への観光誘客を目的とした、女子大生が考えた旅行商品「現代の八重に会いに行こう!」を関東・甲信越地区の日本旅行グループ店舗で売り出した。

 同商品は、跡見学園女子大学と日本旅行、会津若松市観光課・会津バス観光A.T.Sの産官学連携による「着地型人物観光商品化プロジェクト」(協力=観光庁、日本観光振興協会)として企画・開発された。同大学マネジメント学部の学生は2011年9月にアカデミックインターンシップとして会津若松市を訪問し、観光支援のパートナーシップ協定を締結。風評被害に苦しむ同市への復興支援策を女子大生ならではの視点で考え、観光誘客のための旅行商品の企画を1年以上にわたり進めてきた。

現地でハンサムウーマンを取材
現地でハンサムウーマンを取材

 ツアーコンセプトは「女性をテーマにした会津若松の魅力発信」。ツアーキーワードを「人物観光」とし、会津若松で強く生き抜く女性の魅力を伝える。今年のNHK大河ドラマ「八重の桜」で注目される会津若松の厳しい時代を生き抜いた女性「新島八重」に焦点を当て、会津若松の女性の強さを受け継ぐ現代のハンサムウーマン4人を学生が発掘。ツアーでは、その日担当するハンサムウーマン1人を訪ね、1時間にわたり交流する。明るく力強く生きる会津若松女性との交流を通して、アクティブで前向きな女性層をはじめとしたツアー参加者に会津若松の新たな魅力を伝えていく。

 跡見学園女子大学観光マネジメント学科の篠原靖准教授は「これまでの女性向けツアーはエステや温泉、スイーツなど表面的な美の追求、『物』を楽しむ内容が多かったが、生徒たちは『人』にスポットを当て、精神的な栄養を吸収できる旅が必要と考えた」と企画過程について語る。

商品パンフレット
商品パンフレット

 実際の商品開発には、「女子旅」企画に強い日本旅行赤い風船事業部のプロジェクトチームが、学生に対しツアー企画についての授業やパンフレットの作成指導などを実施。今回、日本旅行パッケージ旅行「赤い風船」のオプションプランとして販売開始された。

 首都圏各地からのJRと東山温泉「原瀧」の宿泊のセットプランで、大人1人2万1900円。オプションの「現代の八重に会いに行こう!」は参加費2千円。2013年1―3月で500人の販売目標を掲げる。

 
 
 
 
 
 

日経と阪急、協力合意

西尾敏宏社長
西尾敏宏社長

新・日経カルチャー、シニア需要に対応

 日本経済新聞社と阪急交通社は12年12月25日、旅行事業で協力することに合意したと発表した。1月1日付で日経の100%子会社の「日経カルチャー」から旅行事業を新会社に譲渡し、株式の49%を日経が阪急交通社に譲渡。そのうえで新会社の商号を「日経カルチャー」に変更する。日経カルチャーのブランド力と阪急交通社の事業運営ノウハウを組み合わせて、事業規模の拡大を目指す。

 今回の合意で、これまで旅行事業のほか、美術品販売などを手掛けてきた日経カルチャーは、旅行専業の新体制に移行。同社はこれまでも文化的な旅行商品を扱ってきたが、シニア層を中心に増加する旅行需要に対応するため、満足度の高い旅行企画を立案・催行することが重要になると考えた。

 一方、阪急交通社は需要増大が予想される文化的な旅行分野の強化をはかりたい考えで、両社は双方の長所を持ち寄った事業協力が望ましいと判断した。

 新・日経カルチャーの社長には、阪急交通社の前企画統括本部担当部長・西尾敏宏氏が就任。西尾氏は1954年生まれ。1978年に阪急交通社入社後、東日本営業本部仕入部部長や企画統括本部海外企画部部長などを歴任した。

 日経カルチャーの概要は次の通り。

 【住所】東京都千代田区内神田1―6―6 MIFビル【資本金】1億円【従業員数】11人

前向きな旅行意欲持続、JTBが13年旅行動向発表

国内は現状維持で0.3%増、海外は過去最高の1870万人、訪日は7.9%増の890万人

 JTBがこのほど発表した2013年の旅行動向見通しによると、1泊以上の国内旅行人数は前年比0・3%増の2億8700万人、海外旅行人数は同1・5%増の1870万人。また、訪日外国人数は同7・9%増の890万人と、国内、海外、訪日ともに2012年を上回る旅行者数の見通しを立てた。なお、海外と訪日は過去最高値を予測。

 2013年の日本経済は震災からの復興需要と堅調な個人需要が下支えし、緩やかな回復が見込める。内閣府の「これからの生活の力点」調査では、レジャー・余暇生活は10年を底に、食住よりも高い比率で上昇。震災後の反動と、リーマンショック以降の「巣ごもり消費」から外に目が向きつつあることに加え、地デジ化やエコポイント、エコカー減税などの先取り消費が一段落した背景も考えられる。13年前半も引き続きレジャー・旅行への前向きな消費意欲は持続すると予測するが、後半からは14年4月からの消費税引き上げに向け耐久財などへの支出に一部回る可能性も考えられる。

 13年は、週末3連休の回数が前年より3回増加し、GWや夏休み、年末年始のピークシーズン以外の旅行者数増加が見込まれる。また、国内と海外へのLCCの運航路線拡大により、航空機を利用した旅行への見通しも明るい。団塊世代が65歳に達した12年以降、完全退職者が順次増えており、60代の旅行増加が予測され、13年も完全退職者層マーケットがポイントになりそうだ。

 国内旅行は、「選択」消費のなかでレジャー・旅行市場は現状維持が期待されるが、節約志向は依然強く国内線のLCC拡大などもあり、平均消費額は前年比2・4%減の3万2千円と引き続き減少傾向が続くと予想。東京スカイツリーや復原工事を完了した東京駅舎など、東京観光の人気は13年も持続し、銀座・歌舞伎座のこけら落としや東京ディズニーランド開園30周年など、首都圏への観光客の増加が見込まれる。加えて、20年に1度の式年遷宮を迎える伊勢神宮や大河ドラマ「八重の桜」の舞台である会津地方が注目を集めそうだ。また、JR九州が企画した日本初のクルーズトレイン「ななつ星in九州」や、JR東日本が冬以降に東北地方への運行を予定する「SL銀河鉄道」など、単なる移動手段ではなく乗ること自体が目的になる鉄道車両に注目が集まる。

 海外旅行は、過去最高の旅行人数を予測するが、平均消費額は円安により現地消費額の微減やLCCの拡大・増便による運賃競争も見込まれ前年比0・8%減の25万円。国内のLCC3社は13年以降、国際線の新規就航を予定しており多様な選択肢が広がる。また、身近で何度も行ける旅行先として、街歩きが楽しめる近隣の都市やリゾート地の人気がさらに高まり、若者中心に台北、マカオ、シンガポール、バンコク、ハワイが好調に。

 インバウンドは、12年8月以降に大きく減少した中国の傾向が13年前半まで続く模様。震災からの回復が遅れていた韓国は緩やかな回復が期待され、12年並みと予想。台湾、タイ、マレーシアなど東南アジアを中心にアジア諸国からの訪日が伸びると予測した。

琉球芸能を旅行商品へ、県外の視点から評価と意見交換

琉球武家屋敷が舞台の「ククル奏劇場」
琉球武家屋敷が舞台の「ククル奏劇場」

沖縄県「文化観光」で誘客目指す

 沖縄県は2011年度に「文化観光戦略」を策定し、芸術性やエンターテイメント性の高いコンテンツを新たな魅力(マグネットコンテンツ)として観光客誘致・旅行商品化につなげようと、さまざまな取り組みを行っている。1月5、6日には文化観光戦略推進事業として、県外の学識経験者や旅行会社、マスコミ関係者を招待。沖縄の伝統的な歌舞劇「組踊」(くみおどり)やエイサーなどを若手演出家が創作した作品を、「国立劇場おきなわ」(浦添市)でプレ公演を行い、招待者は観劇しその後、意見交換を行った。

【増田 剛】

 

 組踊は、琉球王国時代に玉城朝薫が創始した琉球独自の歌舞劇で、2010年にはユネスコ無形文化遺産リストに登録された。音楽・舞踊・台詞からなり、音楽に琉球音楽、舞踊に琉球舞踊、台詞に琉球語を使用するのが特徴。今回国立劇場おきなわで行われた「文化観光戦略推進事業プレ公演」では、富田めぐみ氏演出作品「Bon Voyage」、嘉数道彦氏演出作品「かりゆし・かりゆし~恋するシーサー~」、名城一幸氏演出作品「琉球幻想絵巻~Glorious RYUKYU“春や春”」、藏當慎也氏演出作品「琉球幻想絵巻AMAMIKIYO~ニライカナイ伝説」、安田辰也氏演出作品「琉球幻想絵巻~FURUSATO~」、照屋忠敏氏演出作品「Ship of The Ryukyu~煌Kirameki」の6作品を2日間で鑑賞し、旅行商品化の可能性などのアンケートを実施した。

国立劇場おきなわ
国立劇場おきなわ

 会場となった国立劇場おきなわは、全国5カ所にある国立劇場の1つ。現状では、土・日曜日の公演が中心で平日はあまり利用されておらず、13年度からは修学旅行生の受入れを本格的に始める予定だ。同館事業課観客劇場係の川平英夫主査は「沖縄の伝統芸能を修学旅行などのツアーオプションとしてどのように組み入れるかが今後の課題」と話す。

 問い合わせ=☎098(871)3311。

 また、読谷村の「体験王国むら咲むら」では、今年1月から2月まで、敷地内の琉球武家屋敷を舞台に、庭先で鑑賞するスタイルの「ククル奏―かなで―劇場」で組踊の定期公演を行う。国立劇場おきなわでの公演に向けての第一ステップという位置づけだ。シーサーづくりなど32工房101の体験ができるテーマパーク内には、宿泊施設やレストランもあり、観劇と合わせた楽しみ方も提案している。

 問い合わせ=☎098(958)1111。