四季と伝統を感じる旅、来春「四季島」運行へ(JR東日本)

四季島イメージ(提供:JR東日本)
四季島イメージ(提供:JR東日本)

 JR東日本は2017年春から、新たなフラッグシップに位置付ける「TRAIN SUITE(トランスイート) 四季島」の運行を始める。「四季島」は日本の古い国名「しきしま」をもとに命名。美しい四季と伝統を感じながらの旅を連想させ、時間と空間の移り変わりを楽しむ列車という想いを込めている。車内デザインは「和」を基調として和紙と漆、金箔のほか、沿線ゆかりの工芸品を使用した。

 上野駅を出発し日光と、函館、洞爺、青森、新津などを周り、上野駅に戻る3泊4日のコースなど3コースを設定。出発駅になる上野駅構内には、乗車客専用のラウンジ「プロローグ四季島」を新設する。また1泊2日コースで立ち寄る長野県の姨捨駅(おばすて)に夜景を楽しめるバーを整備するなど、新しい沿線の魅力も用意する。
(7面に関連)

 同社で17年5―6月出発分を販売したところ、募集件数187件に対し平均倍率6・6倍の1234件の応募があった。また、7―8月出発分では募集件数153件に対して、平均倍率6・2倍の941件の応募があり、運行前から非常に注目度が高い。

 詳しくは専用サイト(https://www.jreast.co.jp/shiki-shima/)まで。

姨捨駅整備イメージ(提供:JR東日本)
姨捨駅整備イメージ(提供:JR東日本)

ネーミング

 「ジュエリー・アイス」という言葉を最近聞いた。北海道の十勝川河口で厳冬期にだけ見られる氷塊だ。陽を浴びて美しく輝く氷は、昔から時期が来るとそこにあったはず。だが注目されたのは、数年前から。地元写真家の命名がきっかけだ。

 見ごろを迎える京都の紅葉。実相院の「床(ゆか)もみじ」も想像ふくらむネーミングだ。学生のころ、京都へ通ったが、そんな素敵な光景があるとはつゆ知らず。気になり記事検索サービスで調べたら、初出は06年だった。今夏は言葉に誘われ、「みどり」の方を見てきた。

 冬の金沢で、モノトーンの雪景色に映える群青色の壁。当コラムを書きながら、この美しさが伝わるいい名前がないかなと思う。名づけを待っている風景や場面はきっとあります。

【鈴木 克範】

正社員での採用率17・9%、早期退職と向き合う、PBL型卒論で就業力養成を

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香取幸一教授
香取幸一教授

 JATA研修・試験委員会は9月23日に行われた、ツーリズムEXPOジャパン2016において、「入社後の早期退職にどう向き合うか~ベテラン人事担当者が本音を語る~」と題し、ツーリズム・プロフェッショナル・セミナーを開いた。第1部では玉川大学観光学部長の香取幸一教授による基調講演「大卒正社員の3年以内の早期退職の実態とその対応策」が行われた。 

 近年、旅行業を希望する学生の数は年々増加している。若年層の採用率では、16業種中、第2位(生活関連サービス業、娯楽業)の位置につけており、一見採用率が安定している業界であるように思われる。ところが、産業別雇用形態の実態で見ると、正社員での採用率は、16業種中11位(17・9%)と、ほとんどの場合が、正社員以外での採用であることがわかる。

 早期退職者の主な退職理由として、若年労働者全体では、「仕事が自分に合わない」という理由が3位に上がっているのに対し、大卒者では「仕事が自分に合わない」が2位、「ノルマや責任が重すぎる」が5位と、業務に関連する退職理由が2つも入っているのが現在の状況である。このような現状に対して、企業側は入社後の、人事施策の一環として社員研修を行い、社員の定着に向けて施行錯誤しているが、入社後3年以内の退職が後を絶たない状況が続いている。

 香取教授は、入社後3年以内の早期退職が相次ぐ原因として、「内定を得てからの学業が、卒業要件を満たすための消化試合のようになっていることが問題である」と指摘。大学側として、卒業生の質の保証をはかるべく、内定取得後に就職先企業と連携し、内定者研修も兼ねたプロジェクトベースドラーニング(PBL、問題発見・解決型学習)型の卒業論文を導入し、在学中に就業力の養成に取り組むべきであるとし、「就活中に行った企業研究は、自分にとって都合のいいことだけを調べている傾向が強いが、PBL型卒業論文では、企業・大学・学生とでテーマ設定を行うため、企業の本当の姿が見えてくる」と改めてPBL型卒業論文の必要性について語った。

 第2部ではモデレーターをジェイアール東海ツアーズ社長の吉田修氏が務め、JTB、阪急交通社と、名鉄観光サービスの採用・人事担当者を交えたパネルディスカッションを行った。

指宿で地熱発電講演会、温泉枯渇や温度低下など危惧(泉都指宿の温泉を守る会)

多くの観光関係者や市民が詰めかけた
多くの観光関係者や市民が詰めかけた

 地熱発電開発問題で揺れる鹿児島県指宿温泉で、同事業を推進する指宿市に対し、事業の白紙撤回を求める「泉都 指宿の温泉を守る会」(会長=下竹原啓高指宿白水館社長)が11月1日、温泉専門家を招いての「地熱発電開発事例講演会」を指宿白水館敷地内の薩摩伝承館で開催した。

 守る会は市内の複数の旅館・ホテル、観光業者などで結成。「温泉は旅館、観光業者などにとって生命線。地熱発電事業の拙速が温泉の温度や自噴噴出量、噴霧量の低下、泉質劣化と枯渇につながりかねない」と訴え、市が計画する山川ヘルシーランドでの新規試掘、市が承認したバイナリー発電7件に対する許可取り消しと、事業の白紙撤回を求めている。

 市では拡大する反対運動の事態を重く見て、10月27日に豊留悦男市長が「計画凍結」を表明したが、守る会では事業の完全撤廃を目指して運動を強化している。

 講演会開催は、地熱発電に関する十分な知識と情報を得ることが目的。全国で拡大する地熱発電計画にも、警鐘を鳴らしたい考えだ。当日は市の担当者や旅館、観光業者、市民など反対、賛成両派の関係者約130人が参加し、専門家の講演を聞き、意見を交わした。

 講師では、日本温泉協会会長の大山正雄氏が「温泉と地熱発電との共生について」と題して基調講演。そのあとに、同常務理事で群馬県草津温泉の草津観光協会会長の中澤敬氏と同理事の遠藤淳一氏(福島県高湯温泉旅館協同組合理事長)が、それぞれ温泉地での地熱発電問題などについて説明した。

 大山氏は「マグマで水が温められ地上に湧出したのが温泉で、比較的浅いところで循環している」と温泉メカニズムを説明。「地下深度で温泉を取る地熱発電は、温泉の枯渇化や温度を下げる要因になる」と指摘した。

 具体的な事例として、経年的に熱水流量が増加し、蒸気流量が減少して発電能力が減衰する岩手県澄川地熱発電所や、鹿児島県山川発電所での温度低下と発電電力量減衰の経年変化、鹿児島県霧島地熱発電所建設前後のえびの高原噴気地熱地帯の変化などを紹介した。

 神奈川県湯河原温泉では温泉開発によって全体湯量は増えたが、各源泉の湧出量が減少したという実例を挙げ「一定量しか生産できない温泉を過剰に使えば問題が生じる」と強調した。

 そのうえで、「指宿で地熱発電なら名物の砂蒸し温泉も心配」と危機感を表明。指宿の地熱発電収支でも「売電収入より維持管理と人件費が上回り見合わない」と指摘。「温泉は観光と土産、農漁業などさまざまな産業が関わるが、地熱発電は無人化をまねき、地域発展への貢献が見込まれない」と断定した。

 中澤氏は過去に計画された地熱発電を中止させた経緯を紹介。「地熱発電は再生可能ではない。地下エネルギーを取ることは開発だ」と主張。「地域が地域の保護のために反対していくことが大事」と強調し、「指宿は全国有数の温泉地で、他の温泉地に与える影響も大きい」と訴えた。

 遠藤氏も「温泉は日本の宝。大事にしてほしい」と述べた。

【楽天トラベル バス事業グループ 佐藤 修氏に聞く】「ドライバーに魅力的なキャリアパスを」

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佐藤 修氏
楽天トラベル 国内トランスポート・アクティビティ事業部 バス事業グループ
バス会社勤務を経て、2007年に楽天株式会社に入社
バス会社在籍時に「旅客自動車運行管理者」と「旅行業務取扱管理者」の資格を取得
現在は、インターネット・トラベル・コンサルタント(ITC)・バスビジネスを担当

 日本バス協会(上杉雅彦会長)を中心に、バス業界では安全安心に向けた取り組みに全力を注いでいる。今回、安全安心を支えるドライバーの育成や技術革新について、楽天トラベル(山本考伸トラベル事業長)でバスビジネスを担当する佐藤修氏から話を聞いた。バスに関する知識が豊富で、現在はコンサルティング業務に勤しむ佐藤氏。前職のバス会社では運行管理者としての経験も積んでおり、経営と現場双方向の視点を持っている。
【謝 谷楓】

 ――ドライバーの人材不足や育成が大きな問題となっています。解決に向けて大切なことは。

 ドライバーの人材不足は、全国のバス会社が直面している問題です。採用に関しても各社苦戦しているのが事実です。あくまで個人の意見なのですが、新卒採用に力を入れることが、今後は大切となるのではないでしょうか。

 各社即戦力を求め、運転経験を重視する傾向が強いのですが、まったく経験の無い方を、一から育てていくことも必要だと思います。第二種運転免許の取得や運転技術だけでなく、会社の安全や経営に対する理念をしっかり教育していくことで、離職率の低下をはかることも可能となるはずです。

 ――採用後に必要な対応とは。

 とくに新卒で採用された方に対しては、将来のキャリアパスをしっかりと示してあげることが大切だと思います。ドライバーのなかには、運転に専念したいという方だけでなく、総合職を目指したいと考える方もいます。そのため、入社して数年はドライバーを、その後は総合職の経験を積ませ、幹部候補生として育てていくというキャリアパスの制度が、各社にあれば良いと思います。

 また、運転に専念したい方に対しては、例えば「チーフドライバー」というような責任ある立場を用意すれば良いのではないでしょうか。

 大切なことは、ドライバーという職業に魅力を与えることです。新卒で採用し、免許取得などコストをかけたにもかかわらず離職されてしまうことは、会社にとって大きなリスクです。魅力あるキャリアパスを示すことで、リスクを回避することができるはずです。

 ――バス業界での技術革新について。

 「安全」に対する取り組みについて、コスト面での負担があるにもかかわらず、各社の意識はとても高いことを日々の業務のなかで感じています。人的ミスを減らすためにも、各社は積極的に技術革新を取り入れていくべきだと思います。

 自動運転では、自動車メーカーやIT企業が実用化に向け取り組んでいます。具体的には人工知能(AI)による運転支援となるのですが、運転が単調となることの多い高速バスでの、段階的な導入が望まれます。高速バスは楽天トラベルでも取り扱いが多いため、期待をしています。また、自動運転が進むことで、運転時間の削減というように、ドライバーの負担軽減も期待できます。

 ――楽天トラベルのバス事業について。

 楽天トラベルは旅行予約サービスで、国内や海外のホテルや旅館などとともに、バス会社の高速バスやバスツアーの商品をオンラインで販売しています。

 私の具体的な仕事内容は、楽天トラベルが有するデータを活用した販売促進の提案から、新規の取扱バス会社やツアーを開拓する営業活動まで多岐にわたります。

 販売促進では、「このシーズンのこのピークであれば利用者は伸びる可能性が高く、増発すべき」といった需要予測に基づいた提案をすることで、バス会社の収益増加をサポートしています。 

 高速バスでは、各社が運輸局に運賃を届け出しているため、価格変動に制約はありますが、「この時期は需要が高いため、価格をもう少し高く上げられる」といった、収益の最大化をはかる提案も行っています。

 ――提案時のデータ活用について。

 楽天トラベルのWebサイトの利用データを活用し、提案に生かしています。たとえば、AとB の2地点間を移動する高速バスでも、A地点から乗車するユーザーが多いといったことがわかるため、提案を通じてバス会社は効率的な販促活動を行うことができます。

 楽天トラベルでは、こうしたデータや人工知能(AI)を活用し、ユーザーのニーズとバス会社や宿泊施設の販促活動・訴求点をうまくマッチングさせる「ベストマッチングサイト」への転換を目指しています。

 ――バスの安全安心に関する、楽天トラベルでの取り組みは。

 先ほど述べたように、バス会社ではしっかりとした安全対策を行っています。楽天トラベルでは、そのような取り組みをユーザーであるお客様に対しアピールしていくお手伝いができればと考えています。

 例えば、楽天トラベルのWebサイトでは「高速バスの安心・安全 輸送の安全性等を判断する上で参考となる情報」ページを設置し、バス会社の取り組みを紹介するよう努めています。

 「運輸安全マネジメント制度」(国土交通省)や「貸切バス事業者安全性評価認定制度」(日本バス協会)といった、安全安心に向けた取り組みを、ユーザーである一般のお客様に分かりやすく伝えることが、楽天トラベルの役割だと考えています。各社の安全に対する基本方針へのリンクもまとめているため、ユーザーは任意保険の加入状況や交代運転者の有無を知ることもできます。

 もちろん、各バス会社と事前に相談をしたうえで、リンクを貼っています。

 ――佐藤さんの考えるバスの魅力とは。

 高速バスには、単なる「鉄道の代わり」や「安価な移動手段」というイメージもあるかもしれません。しかし、バスはフレキシブルに2地点間を移動でき、利用者が時間をより有効活用できる「利便性の高い交通手段」なのです。

 街中を通ることも多く、車窓からは、地域の風景を間近で眺められます。新幹線や飛行機と比べ、移動過程を楽しめることも、大きな魅力です。

 今後も、バスの旅の良さや楽しさをユーザーの方々に伝えていきたいです。

 ――ありがとうございました。

黒字は35% 大都市に集中、人件費上昇と開く収支差(15年度乗合バス事業収支状況)

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 国土交通省はこのほど、2015年度乗合バス事業の収支状況を発表した。保有車両数30台以上の事業者248社を対象に調査し、黒字事業者は全体の35・1%にあたる87社となった。全事業者の概況は、収入が前年度比1・3%増、支出は同0・5%減。経常収支率は1・8ポイント改善して97・0%。「燃料油脂費が減少傾向にあるが、人件費が上昇傾向にあること」や、「地方部と大都市圏の収支状況の格差」をはっきりと示す結果となった。
【後藤 文昭】

 調査は公営と民営、大都市部(三大都市圏)とその他地域に分けた。経常収支率は、公営が前年度比2・7ポイント増の95・1%、民営が同1・5ポイント増の97・5%。公営の黒字事業者は19事業社中4社で、全体の約21%。民営は229社中83社で、全体の約36%を占め、どちらも黒字が半数以下という結果になった。公営の赤字額は79億円、民営は146億円。

 エリア別でみると、大都市圏では、82事業社中黒字が59社で全体の約72%と7割を超える高い結果になった。一方、その他地域は166社中黒字が28社、全体の約17%と極端に低くなる。大都市部の収支損益は140億円の黒字、その他地域は364億円の赤字。その差は224億円と大きな差がついた。

 輸送人員の推移では、大都市圏では同2・0%増の26億2800万人。一方その他地域は同0・4%減の13億2700万人と2年連続で減少している。公営は同1・1%増の9億2400万人、民営は同1・2%増の30億3100万人とともに微増だった。

 公営と民営、大都市部とその他地域で原価に占める燃料油脂費を比べると大きな変化はなく、人件費が占める割合も、4分類とも50%超えと違いはみられない。一方、大都市部の諸経費が37・5%、その他地域が32%と5・5%の差があることも分かった。  

 原価に対して高い割合を占めている人件費は、公営が同1・0%減の875億8800万円となり、5年連続で減少している。一方民営は同1・5%増の3377億5300万円となり、3年連続の上昇。大都市部では、同1・0%増の2459億2000万円。その他地域の人件費は4年連続減少を続けていたが、同1・0%増の1794億2000万円と前年度から約17億円増えた。

 燃料油脂費は人件費と逆に公営、民営、大都市部、その他地域すべてで2年連続の減少。減少幅も、すべて20%台と大幅な減少となった。

 実車走行キロ当たりの原価では公営が同9円61銭安い656円54銭なのに対し、民営は前年より2円22銭高い402円28銭。民営は5年連続で原価が上がっている。輸送人員が多い大都市部では原価が552円27銭と同2円67円値下がったが、輸送人員が少ないその他地域では341円59銭と1円45銭値上がっている。一方実車走行キロ当たりの収入は、公営と民営、大都市部、その他地域すべてで増収している。

 定期券利用者は、公営、民営ともに4年連続の増加で、公営が同1・9%増の2億582万8千人、民営が同2・0%増の7億7186万7千人となった。通勤、通学などの手段としてバス需要は依然として大きいことがわかる。

聖地88カ所認定へ、「アニメ聖地投票」中間発表

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 アニメツーリズム協会(富野由悠季会長)はこのほど、「アニメ聖地投票」第2回中間発表を行った。88カ所のアニメ聖地を選定し、官民一体で観光に活用するのが目的。前回4位だった「ラブライブ!」が今回の1位。聖地巡礼で有名な作品が上位を占めた。自治体などが大規模なイベントを開催している作品や、聖地として多くの人が認知している場所がある作品への支持が高い。また、2016年8月に上映が開始され、ニュース番組などで聖地巡礼が話題となった「君の名は。」が公開から短い期間ではやくも28位にランクインしている。

 ランクインした作品は、最近の作品ばかりではない。続編が制作されたものや、過去話題になった作品なども多く、アニメ人気の根強さもうかがえる。また、言語圏別の順位では日本が1位から「たまゆら」、「氷菓」、と続くが、繁体字圏、簡体字圏では「ラブライブ!」、「氷菓」と言語圏によって順位が変わるだけではなく、エリアごとの特徴もはっきりと分かる結果になった。

 投票は専用サイト(http://animetourism88.com/)で、12月31日まで。

鳥取の梨は〝災い無し(梨)〟、知事自ら東京で情報発信

地震に耐えた王秋梨
地震に耐えた王秋梨

 鳥取県は10月21日に発生した鳥取県中部地震で被害を受けた、農業や観光業を応援しようと、10月27日から「鳥取県中部地震復興がんばろうプロジェクト」を開始した。同日、東京都・新橋にあるアンテナショップ、とっとり・おかやま新橋館で行われた「風評被害払拭・被災生産者応援トッププロモーション」には、平井伸治知事らが出席。全国からの支援に対する感謝と、現状について報告し、鳥取県の名産品である梨をPRした。

 21日に発生した地震は、鳥取県中部地方でこれまでに発生した地震の記録のなかでは、最も大きな揺れで1494ガル(瞬間的な揺れの強さを示す)と、4月に発生した熊本地震で甚大な被害を受けた、熊本県・益城町と同じ大きさだったという。

 平井知事は、地震発生以降、風評被害の影響で、ズワイガニ解禁により1番観光が盛り上がる、11―12月の予約キャンセルが相次いでいる現状を伝え、「お客様の笑顔が私たちの応援なんです。お客様の笑顔を見たいんです。会いたいんです。ぜひ、鳥取に遊びに来てください」と力いっぱい呼びかけた。

(左から)上田まりえさん、みょーちゃんさん、平井知事が梨をPR
(左から)上田まりえさん、みょーちゃんさん、平井知事が梨をPR

 地震の影響で、収穫前の多くの梨が、地面に落ちてしまうなどの被害を受けたことについて平井知事は、「残念ながら地面に落ちた梨は市場では売れないですが、味は美味しいです。皆さんのまごころで買っていただけませんか。そして、地震を乗り越えた梨を〝災い無し(梨)〟のお守りとしてぜひとも買っていただきたい」と述べた。プロモーション後の梨の試食では、同館を訪れた人たちに、知事自ら鳥取県の梨について情報提供を行った。

 なお、鳥取県では来年の2月28日まで、県内の対象施設に宿泊し、応募はがきに「宿泊証明スタンプ」を押して送ると、毎月100人にカニが当たる、「蟹取県ウェルカニキャンペーン」を展開。また、11―12月は、「もっとウェルカニキャンペーン」として、通常月の倍となる200人にカニが当たるキャンペーンを実施している。

冬のキャンプ場 ― “未知の余地”が大きく存在する

 小さな新聞社であるが、毎日のように郵便物や、FAX、メールによる情報が届く。

 その数ある郵送物のなかで、封筒を開封するのが楽しみなものの一つに、日本オートキャンプ協会が毎月15日に発行している「オートキャンプ」がある。

 「オートキャンプ」には、現在のキャンプ動向や、最新のアウトドアグッズの紹介、海外のキャンプ事情なども、有益な情報として得られる。また、巻末の小さなコラム欄も好きだ。

 キャンプの思い出は、楽しい記憶しかない。

 小学生のころは、毎年夏になると、最低でも1、2回はキャンプ場に行っていた。テントで寝ることもあったし、バンガローで雑魚寝状態のときもあった。たくさん蚊に刺されたし、飯ごうで炊くごはんがベチョベチョ
でも、とにかく大勢で泊まるのは楽しかった。キャンプファイヤーも、花火も、綺麗な映像として残っている。中学生になっても、高校生になっても何度もキャンプをした。

 大人になってからも、何度かキャンプをした。とても楽しい思い出だ。だけど、最近キャンプをしていない。

 キャンプといえば、夏のイメージが強い。そして、実際夏休みは多くの子供たちや家族連れでにぎわう。

 秋の、晩秋に向けたこの季節、たまに青空が広がる日などは、オフィスのあるビルの隙間から青空を眺め、「あ~キャンプがしたいなぁ」という気持ちが日増しに強くなっている。

 自宅から2時間くらいの場所が理想だ。少し厚着をしてオートバイに乗って、静かなキャンプ場に行く。そして6畳1間くらいのバンガローに1人で過ごしたい。温泉露天風呂があれば、最高である。今は、温泉施設が備
わっているキャンプ場も増えた。10年くらい前に買ったお気に入りの黒い革で巻かれたフラスコにスコッチを満たして、葉巻も数本鞄に入れて、美味しいチーズやサラミなども持って行きたい。夢想は膨らむ。

 なぜ、ホテルや旅館ではなく、そして夏ではなく、晩秋から冬にかけての、キャンプ場のバンガローに心が惹かれるのだろう、とよく考える。

 理由はさまざまに思い浮かんでくるが、日々の生活では不可能であるが、想像力をより広げることができるからだと思う。

 多くのホテルや旅館は、宿泊する前からなんとなく旅の想像ができてしまう。予定調和的な旅である。客室をすごく豪奢にリニューアルした施設のニュースリリースが毎日のように集まってくるが、その綺麗な写真を
眺めるだけで、9割くらい旅が終わった気分になってしまうのだ。

 一方で、キャンプ場で私が過ごしたいと思うバンガローには、快適さはほぼ欠落しているが、その一晩に自分がどのようなことを考え、思想するのかまったく予想できない。つまり、未知の余地が大きく存在する。

 旅先の宿で、自分の頭の中の価値観が一変させられるような大きな衝動が感じられたら、素晴らしいことである。それは、宿の主人の思想が込められた空間――例えば、椅子と窓の位置関係という、何気ないこだわり
かもしれない。旅をしているのは肉体の移動だけでない。頭の中も旅をしている。ただ無思想に高級で、豪奢な空間からは、新しい衝撃を受けることは、私にはこの先、もうないだろうと思う。

(編集長・増田 剛)

【特集No.445】クア・アンド・ホテル 小さなことを少しずつ改善する

2016年11月1日(火) 配信

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客様の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その理由を探っていく人気シリーズ「いい旅館にしよう!Ⅱ」の第7回は、山梨県笛吹市、静岡県静岡市、長野県塩尻市で健康ランドを経営するクア・アンド・ホテルの三森中社長が登場。小さなことを少しずつ改善していく「小変」に取り組むなかで、現場からさまざま提案や、工夫が生まれてきた過程を語り合う。

【増田 剛】

   ◇

 内藤:どのような経緯で健康ランドを始められたのですか。

 三森:県庁に勤めていた父(現・会長)がのちに、不動産やレストランを経営していましたが、1979年に甲府にビジネスホテルを開業し、会社組織にしました。
 89年に、当社のビジネスモデルとなる石和健康ランドを建てました。現在、健康ランドは石和(山梨県笛吹市)、駿河(静岡県静岡市)、信州(長野県塩尻市)と3施設ありますが、この年を「第2の創業」と位置づけています。
 私は東京の不動産会社に就職していましたが、健康ランドオープンの準備段階から、いきなり社長としてスタートしました。温浴施設のノウハウがまったくなかったのですが、それが良かったと今になれば思います。
 当時、健康ランドが名古屋で生まれ、私は父と視察に行きました。家族連れなどでにぎわい、楽しそうに過ごしているのが印象的でした。「この健康ランドのスタイルに、当社がやっているビジネスホテルをくっつける」という発想になりました。

 内藤:一緒にやってどのようなメリットがありましたか。

 三森:ビジネスホテルの主な稼働は、平日の夜です。一方、お風呂はどちらかといえば昼間と土・日曜日が忙しい。このため、建物全体も、駐車場も稼働が高められると考えました。フロントも一つにして、あらゆるサービスを一緒に使ってもらえば、利益につながると思い、設計を進めていきました。
 もう一つ大きかったことは、「下に大浴場があるのだから、部屋のお風呂は使わない」と、客室からお風呂を取ったことです。ムダをなくして、大浴場の魅力を高め、お客様が喜ぶサービスを提供しようと考えていました。効率化と、お客様の満足度を高めるという両方の発想があったと思います。
 以来約30年間、これが当社のビジネスモデルとなりました。ホテルとお風呂を稼働の中心にして、この2つに合うサービスとして、食事処やマッサージ、フィットネスなどをどんどん付け足し、磨くことに力を注ぎました。食事であれば美味しいもの、マッサージも垢すりやエステなども入れて、膨らませていきました。信州も駿河の施設も、規模や部屋タイプは異なりますが、発想はまったく同じです。
 岩盤浴が流行れば取り入れるなど、常に新しい魅力をお客様に提供できるよう心がけています。当社には「とにかく変えよう」という考えが強く、常連のお客様から「前の方が良かった」と言われることもありました。また、毎年改装を行っています。長いときには1カ月ほど休館し、施設の改善をしています。
 一方、おもてなしや、清潔さなどは変えずに取り組んでいます。

 内藤:お風呂が大きいというのはいいですね。今はビジネスホテルチェーンも大浴場を備えています。お風呂の設計はどうされたのですか。

 三森:名古屋の健康ランドを視察して、それを参考に設計事務所に頼みました。

 内藤:工夫されたのはどのあたりですか。

 三森:とくにサウナは電気サウナ、スチームサウナなどさまざまな種類を用意し、温度も幾つか変えて、充実させています。お風呂については、ジェットバスや漢方をしみ込ませた湯など、36度から43度まで色々な温度帯のお風呂を提供するというのが当社の大きな特徴です。誰もが好きなお風呂を見つけられるように、バリエーションを広げています。広い空間で、開放感を味わっていただく、露天風呂もさまざまな種類を作っています。

 内藤:健康ランドは全国でどのくらいの数があるのですか。

 三森:スーパー銭湯を含む温浴施設、健康ランド、スーパー銭湯は2万7千程度です。一般公衆浴場は年々減ってきていますが、ヘルスセンター、健康ランドなど郊外の大型レジャー浴場などに加え、娯楽施設を併せ持つスーパー銭湯の増加が目立ってきています。

 内藤:成熟したビジネスモデルになっているということですね。

 三森:当社は常に新しいものを取り入れながら、一方で変えない部分として、安全性、清潔、おもてなしの3つの約束を実行しています。
 とくにお風呂は清潔感がとても大事で、湯船からお湯が少しあふれるようにしています。清掃は最も大事にしています。一番恐いのがレジオネラ菌などの発生です。信州と駿河の施設は自動塩素投入機を導入し、24時間塩素が一定基準を下回らないような工夫も徹底しています。

 内藤:働き方の改善にも積極的に取り組まれていますね。

 中村:人時生産性の取り組みでは、労働効率を上げることと、お客様に喜んでもらうサービスをしっかり提供するようなかたちで、お客様との位置・時間・情報を近づけていく「リアルタイム・サービス法」に取り組んでいます。おもてなしに関することでも、スタッフがお客様にどんどん近づいていくようにしています。
 業務の標準化と単純化に加え、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)も進めています。
 労働時間を前年から削減したら成果報酬を出すという会社の事業計画によって、15年度の労働時間は14年度に比べると、全体で約4%削減することができました。単に労働時間を削減していくのではなく、小さなことを少しずつ改善していく「小変」にも取り組んでいます。色々な工夫が生まれてきますが、そのなかで一番大きかったのが、備品関係の小ロット発注です。月に1回しか発注していなかった備品を、今は週に1回程度に変えました。まとめて発注すると、在庫が増えてしまい、作業スペースを圧迫することもありましたが、細かく在庫をチェックして発注することで、スペースを有効に活用できるようになりました。最初は欠品を恐れて取り組みが進まなかった部分もありましたが、いざやってみると、業務がとてもスムーズに流れるようになりました。
 おもてなしについても、数字を見える化し、すべての作業プロセスにおいて、「時間」「位置」「情報」が、お客様がいる最終工程により近づいていく「リアルタイム・サービス法」を取り入れるなかで、「お客様にどうしたら近づいていけるか」と、業務の棚卸しを各部署で始めました。これによって、「今までこの業務にどれくらい時間がかかっていたか」と、それぞれの業務のムダな点について話し合いができるようになりました。数字化することによって、見える化をはかり、小変の取り組みで改善をしていくという流れができてきました。

 内藤:業務の棚卸しでムダだったものは、具体的にはどのようなものがありましたか。

 中村:とくに温浴施設では、お風呂のロッカーなどに忘れ物をされていくお客様も多く、忘れ物の処理にどれくらいの時間がかかっているかを数字で出すと、1カ月間で信州の施設で100時間ほど費やしていました。
 お客様から問い合わせがあったときにすぐに答えられるように、全部イラストなどに落とし込んで、貴重品などの忘れ物も、中身の金額などを全部ノートに転記していましたが、問い合わせがあるお客様は、全体1割程度でした。貴重品などは今まで通り転記を続けていますが、それ以外の靴下などは、日付別に忘れ物を保管しておいて、お客様から問い合わせがあったときに袋を見るというやり方に変えました。そうすると、これまで1日あたり2―3時間ほどかかっていたのが、30分まで作業を短縮することができました。

 内藤:削減した時間を、お客により近づけていくことが大切です。空いた時間でどのようなサービスを考えているのですか。

 中村:フロントではバックヤードに行って会議の資料を作ったりしていました。しかし、「できるだけお客様に応対しよう」と、フロントにいる時間をより多く持ち、人時生産性に取り組むことによって、他の部署への繁忙時の手伝いをする多能工も進めています。フロントやバックヤードのスタッフが忙しい時間帯の部署に応援に行ったり、客室の清掃に回ったりしています。

 内藤:お客様とコミュニケーションを積極的に取ろうとされているのですか。

 中村:そうですね。お客様との時間を多く取りたいというのは、どの事業所でも共通しています。フロントのレジのスタッフ以外にも「玄関係」が1人立ってお客様のお出迎えや、ご案内をしています。

 内藤:清掃も色々と工夫していますね。

 中村:とくに人時生産性に取り組むなかで、5Sに取り組んでいます。
 小ロット発注にも関わってきますが、ホテルの客室の掃除もこれまで清掃に入るとき、ドアのストッパーを1部屋ずつ人が配って歩いていました。それだと効率が悪いので、ドアの下部にストッパーを各部屋に取り付けて、ドアを引っ掛けられるようにして、人が配る時間を削減したのが大きかったですね。全フロア分に配っていたので、1時間以上短縮できました。
 清掃面においては、今まで和室の部屋はお茶のセットをあらかじめ用意して、ポットを置いていました。これを電気ケトルに変更しました。アメニティを変えることによって労働効率を上げるなど、清掃に関する部分の小変も少しずつ取り入れています。
 業務の棚卸しを行うなかで、作業ごとの時間が把握できるようになってきました。
 このため客室の清掃スタッフは自分たちで目標を立てて、お客様が予定よりも早く到着されても、客室を提供できるようにしています。 どうやったらお客様に喜んでもらえるかという工夫が清掃面や、おもてなしの部分で見受けられるようになってきました。

 内藤:ベッドメーキングも随分変わりましたね。

 中村:シーツの3カ所を折り込んで、首元の所だけ出していたのですが、顧客視点で見ると、これではつま先が窮屈でベッドに入り込みづらい。このため、足元のシーツを折り込まないように、ベッドメーキングの方法も変えました。お客様も違和感なく、ゆっくりと休めますし、メーキングだけでなく、シーツを剥ぐ作業も時間短縮が可能になりました。1つを少し変えたことによって、派生してさらに時間短縮につながっていきました。
 これまでは和室については、すべて布団敷きの係が伺っていたのですが、「部屋に入ってほしくない」と思われるお客様もなかにはいらっしゃるので、予約のときなどに布団を敷くためにスタッフが客室に入るか、どうかを聞いています。今、和室に宿泊されるお客様の約25%が「自分で布団を敷く」と答えられています。これによって、お客様の満足度を高めつつ、スタッフの労働時間の削減も同時に行っています。

 内藤:今は1部屋の清掃時間はどのくらいですか。

 中村:最初は平均30分くらいかかっていましたが、27分くらいです。

 内藤:業務を棚卸しして、一つひとつを見ていっているのですね。

 中村:あと、客室の清掃係に付随して、チェックイン時間よりも少し前に来られたお客様が、客室の清掃が終わっていれば早めにお部屋に案内できるように、業務の棚卸しのなかで清掃時間を計りました。
 しかし、日によって急ぎ部屋の清掃時間になぜかブレが生じていました。予約状況を見ると、アーリーチェックインのお客様がエレベーターから遠い客室にアサインされており、清掃係がわざわざエレベーターから遠い部屋を清掃をしてから、通常の業務に戻るので、そこに労働時間のムダが発生していました。エレベーターの近くに備品などもありますので、作業効率を上げるように工夫しています。

 内藤:小変は、最初からスタッフ全員に理解されましたか。

 中村:最初は浸透しづらかったですね。今までやってきたことを変えようと言ったときに、どうしても固定概念にしばられる傾向にありました。忘れ物の件に関しても、何回も議論があって、「お客様から問い合わせがあったときに、すぐに答えられないと困る」という意見もありました。小変のことも実際にやってみると分かることが多くありました。やはり、実行に移す一歩がとても大事ですし、それを継続していくことも非常に大事だなと実感しています。スタッフも小変の効果を、数字の見える化によって気づくことが増え、今では以前に比べ、「変えてみようか」という意識がスタッフ全体に浸透しています。
 お客様への影響がある部分などは、会議で決めたりしますが、小変でみんながすぐにできるようなものは、「早速やってみよう」というスピード感を持ってすぐに実行するようにしています。

 内藤:業務の棚卸しで、労働時間も部署ごとに把握し、振り返りを行っているのですか。

 中村:人時生産性のプロット図のなかで、1日の来館者数と目標とする来館者数と労働時間を毎日スタッフが付けています。部署ごとのミーティングで、「昨日はお客様の来館数が少なかったのにどうしてこんなに労働時間が長かったのか」や、「もう少し手待ち時間を使ってほかの部署にお手伝いに行けなかったか」、「館内の清掃にもう少し時間をかけられたのでは」など、以前と比べて話し合われるようになりました。
 お客様との対話のほかに、スタッフ同士の対話でも色々な問題点が明らかになるため、とても重要だと感じています。

 ――1つの事業所の改善が、他の施設にも伝わるようになっているのですか。

 中村:人時生産性の会議も石和、信州、駿河の全体で行っていますが、横展開は他の事業所の事例を聞きながら、取り入れていくように努力しています。

 三森:確かに事業所が異なると難しい部分もありますが、少しずつ取り組みが進んできていることを実感しています。
 毎週、改善会議を開き、各事業所の幹部が集まり、その週の改善点やお客様の声、スタッフの声などをまとめて、情報を共有し、今後の方向性を決めていきます。
 お客様の声をいただいて改善すると、次に来られたときには必ず確認されます。指摘した点が改善されていると、大変喜んでくれます。
 これはスタッフも同じで、小変が進むと「私も会社を変えられるんだ」という意識に変わります。上の者が指示しても続きませんが、自分がやろうとして実行すると初めて参加した気持ちになれるのだと思います。

 内藤:どこの会社でもそうですが、改善が自発的に進む仕組みを作りたいのだけど、なかなかできないのでどうやったらできるのかという声を聞きますが、どうして御社では上手くいったのですか。

 三森:まだまだだと思いますが、人時生産性の取り組みを始めたのが大きなきっかけになったと思います。そもそも人時生産性というのは、自分たちが働く1時間あたりにいかに利益を稼ぐかということで、それは自分たちの給料にも返ってくるし、会社が続くためには絶対に必要なことでもあります。数字も見える化し、みんなでこの数字を作っていく。そのためにはみんなで変えていかなければならない。それをこの3年間、ずっと続けています。「やれ」と指示を出すと、一時的にはできると思いますが、それを継続していくには全員が同じ目的、目標を持つことが大事です。ですから時間がかかると思います。

 中村:400人のうち3割が社員、7割がパートです。現場ではパートさんが多いですが、変えていこうと意識は高いですね。最初は「人時生産性って何?」というところから始まって、具体的に業務の標準化と単純化や、5S、人時生産性の視点と目的を説明しました。目的を共有できたのが一番良かったと思います。

 内藤:5Sも徹底してやられていますね。

 中村:「お風呂甲子園」の取り組みも大きな効果がありました。覆面調査が入るのですが、早めに改善できるところはないかと話し合い、自分たちで館内のチェックを始めました。意識して見ることによって、ポップがはがれているものなど、これまで見えなかったものも、意識して見えるようになってきました。これによって覆面調査が入った時も高評価をいただけるようになりました。

 三森:テナントを含め、厨房からほぼすべての部署を月に1回、2日間ほどかけて写真を撮り、写真付きの3段階評価で事業所に返して、ほかの事業所も参考にできるようにしています。
 とくに整理・整頓の部分は、仕事の効率に大きな影響を与えるので、今年は力を入れてやっています。

 内藤:効果はどうですか。

 三森:昨年から取り組んでいますが、大きな効果が出ています。チェック日以外でも整理・整頓されている状態になっていますし、意識がやはり変わりました。いずれは抜き打ちでやることも考えています。悪い部分も写真で表れますので、厨房も清潔な状態を心がけるようになっています。

 内藤:時短の取り組みによって休日も増やされたのですか。

 中村:稼働対応労働時間制を導入してからは、お客様が少ないときには、1時間早めに帰し、お客様の多い週末などは1時間多めに働くといった工夫が見受けられるようになってきました。今は週休2日制となっています。有給休暇制度の活用も進め、お客様も満足し、従業員も満足するような体制が整ってきました。
 プロット図を作ることによって、お客様の来館者数の予測を立てられるようになったというのが、とくにフロントやバックヤードの部署では大きかったですね。これまで予測を立てたシフトコントロールが行えてなかったので、シフトを組む段階である程度来館者数を予測して、この日は何人と細かく組み立てられるようになりました。多能工も進められるようになったなかで、ほかの部署とのシフトのコントロールの情報共有ができ、話し合いによって、ある程度計画立ててシフトコントロールができるようになりました。
 また、業務ごとに落としたサービスプロセスを部署ごとに見直しを実施しました。新人のアルバイトの方でも、ベテランのアルバイトの方と同じような働きができるように、業務の棚卸しを行ったものをプロセスに落とし込んでいく流れを作っています。
 人時生産性に取り組むにあたって見えてきたのが、教育スケジュールの見直しです。教育期間もある程度しっかり目標や目的を把握したうえで、3日程度で仕事を覚えてもらい、1週間経ったらこの仕事をやってもらうなどのスケジュールを組むことが可能になったので、比較的人の入れ替わりの多い部署に対しては、そのような工夫も行っています。

 ――料金設定はどのようにお考えですか。

 三森:常に同じ料金にしています。繁忙期には少し高くするような戦略は取らずに、いつでも基本的には同じ料金にしています。平日はインターネットの割引料金を設定していますが、料金はあまり変えず、同じ料金で気持ちよく泊まっていただくという方針です。

 ――館内で飲食を含め、消費をしてもらうような工夫もしているのですか。

 中村:飲食部門では、ロッカーキーで注文を受けているので現金のやり取りが発生しません。このため、お客様のお出迎え、お見送りなど、しっかりとあいさつをするようにしています。また、スタッフからおススメ商品を案内する声かけもしています。飲み物が残り少なくなってきたら「おかわりいかがですか?」などの声かけも行っています。スタッフには名札を付けていますが、名札に「私がオススメするメニューは焼肉丼です」などと書いてあります。そうするとお客様との会話のきっかけになります。
 これは、1つの店舗がやっていたのを横展開して全店舗で行っています。また、チェックアウトのときには、次回の来店動機につなげるチラシをお客様にお渡しするようにしています。チラシは飲食全体のマップのようになっており、季節のオススメメニューなども紹介しています。

 内藤:次の改善点はどのあたりですか。

 中村:今期は人時売上高に目標を変え、みんなで取り組んでいければと思っています。これまで取り組んできたことを継続していくことが大切だと思います。
 今は目標を少し変えて、次は売上を高めつつ、お客様の満足を高めていくために、どのようなかたちで館内を喜んで使ってもらえるかを各部署でスパイラルアップしていければいいかなと思っています。

 内藤:将来的な展開はどう考えていますか。

 三森:今年、石和健康ランドのホテル棟を増築する予定です。現在100室程度ですが、さらに100室増築します。
 駿河から1時間ほどのところにある磐田市に4千坪の土地を買収しており、新たな施設の計画を立てています。小変を続けていますが、さまざまなノウハウを積み重ね、利益をしっかりと出し、強い会社として新しく出店できればいいなと考えています。小変を継続してきたことで、30年前にオープンした石和の施設も大きく変わっています。ビジネスモデルを一気に大きく変えて軌道に乗せるのは難しいですが、みんなの力で小変を続けていけるような強い組織となることで、新しい施設も増やせると思いますし、今はその過渡期にあるのではないかと思っています。