【特集No.476】べっぷの宿ホテル白菊 オペレーションも個人化に対応

2017年11月1日(水) 配信

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客様の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その人気を探っていくシリーズ「いい旅館にしよう!Ⅱ」。第16回は、大分県・別府温泉の「べっぷの宿ホテル白菊」の西田陽一社長と、取締役の緑・若女将が登場。早い時期から個人化の流れを意識して、料理の1品出しなどのオペレーションが定着していた同館。さらなる生産性向上の取り組みを探った。

【増田 剛】

 西田社長:祖父が1920(大正9)年に別府で陶器の店を始めました。当時別府港から多くの観光客が訪れていたので、最も栄えていた流川通りにカフェー「サロン・ツルミ」を開業しました。1階がカフェーやバー、2階にダンスホールを備え、同じ敷地に小さな旅館も経営していました。
 流川通りから別府駅前に移って、5階建てのキャバレー「ボンツルミ」を始めました。50人規模のバンドが地下からステージに上がってくるなど盛大にショーアップし、ホステスも100人ほどいました。宴会場や会員制クラブなどもあって人が集まり、のちに大分市にも同じような店舗を開業しました。
 57(昭和32)年に中島造船所の保養所の土地を買って4階建ての白菊荘を建てました。
 その後、祖父と父が73(昭和48)年に12階建てのホテル白菊を開業しました。

 内藤:ずっと別府の社交場という役割を担っていたのですね。

 西田社長:キャバレーは80(昭和55)年まで経営していましたが、時代も変わり、旅館業の方に軸足を移していきました。大型旅館全盛期の時代でした。
 私は1984年に旅行会社に就職し4年間、大阪で営業をしていました。87年11月に父が亡くなり、そのまま宿に戻ってきました。45歳だった06年に4代目社長に就任するまでの20年間は叔父が社長を務めました。

 ――旅行形態の個人化やインバウンドの拡大など、別府にも大きな変化がありました。

 西田社長:2012年くらいから別府への観光客は少しずつ増加しています。海外からの個人旅行客が急激に拡大しているなかで、当館では外国人旅行者は1%もいませんでした。今はようやく5%弱というくらいです。

 内藤:外国人ではなく、日本人客が大きく増えたのはどうしてですか。

 西田社長:開業当時から旅行会社の団体客を主に受け入れていました。しかし、団体旅行が減り、個人旅行化していく時代に、当館は別府湾が一望できる最上階には直営フランスレストラン「ガーランド」、1階には別府割鮮料理「浜菊」という食事処を備えていました。これがほかの旅館にはない特徴として、個人のお客様にも対応できたのだと思います。

 内藤:初代はどうして旅館にフランスレストランを造られたのでしょうか。

 西田社長:61年に4階建ての白菊荘を建てて開業した当時は、大阪からフェリーで富裕層が多く来ました。1部屋に1人が担当して波止場までお見送りをする典型的な和の旅館でした。観光ブームが来るなかで、旅館のマーケットが大きく伸びると確信して白菊荘を壊し、73年に12階建ての現在の旅館を建てました。建物は新進気鋭のデザイナーが設計し、今でも「斬新なデザイン」と言われることがあります。
 祖父と一緒に経営をしていた父も、根っからの商売人でした。「他の宿ではやっていない、新しいこと」を常に考えていたようです。
 最上階展望レストランはビュッフェスタイルで、地元客向けに和・洋・中華など世界中の料理が楽しめる「ワールドディナーピック」というイベントを、夏季と冬季のそれぞれ1カ月間展開していました。前売券を販売するほどの人気で、つい最近まで続けていました。

 ――客室数はどのくらいですか。

 西田社長:73年に81室の本館を建てたあと、80年に15室の東館、84年に24室の西館を建て増しして、現在は全体で120室あります。バブルが弾けたあとも90年代後半まで売上は伸びていきました。

 内藤:個室料亭も造られましたね。

 西田社長:個室料亭「菊彩香」は先代社長の叔父が計画し、私が社長に就任した後の13年にオープンしました。個人のお客様をターゲットにしたもので、専用の厨房を料亭内に配置しました。当時、別府では個人向けの料亭はほとんどなかったので、先駆けてやりたいという思いは、3代目の叔父と同様に私にも強くありました。

 内藤:部屋食から、個室料亭での食事という流れは、多くの旅館でも見られます。しかし、実態は料理の内容を変えているのではなく、単に提供する場所を変えて団体料理を小分けにしているだけのところも多い。一方、オープンキッチンを導入している旅館も増えていますが、しっかりと使いこなせている施設は少ない。
 ホテル白菊では10年前にはすでに料理の内容や提供方法まで切り替えられたことに、とても興味があります。

 西田社長:当時から宴会料理をまとめてお膳出しするのではなく、1品出しに切り替えました。2部屋を1人の客室係が担当しています。まさに団体旅館からの脱皮を目指していました。

 内藤:最上階でフレンチレストランを経営されていたので、改革が難しいオペレーションの部分もスムーズに個人化の流れへと切り替えができたのではないでしょうか。

 西田社長:そうですね。ずっと1品出しで提供していたので、身体にしみ込んでいたのかもしれません。料亭がスタートしたときには、レストランのスタッフが応援に入っていました。

 内藤:自分は料理の1品出しの提供の仕方が生産性は高いと各旅館に勧めていますが、最近は「お膳出しで一度に出すよりも、1品出しの方がラクなのだ」と気づく宿が増えてきました。
 旅館では配膳したあとに、まとめて下膳をします。つまり、食べ終わっていない料理があると、次の料理を差し込み、お客が全部食べ終わったときに洗い場に持って帰る。レストランは逆で、食べ終わるまで次の料理を出しませんし、次の料理を出すまでは基本的に片付けません。
 お膳出しは定食屋さんの出し方で、1品出しはレストランのコース料理の提供方法です。定食の価格帯はせいぜい1千円弱ですが、コース料理だとそれが1万円にもなります。リーズナブルが特徴の定食スタイルでの提供方法では、いくら単価を上げようとしても、やはり無理があるのです。

 西田社長:確かにそうですね。

 内藤:定食屋スタイルのお膳出しの提供方法から、1品出しに変えた宿では、1品出しは必然的に1品下膳になり、そのお皿を食器洗浄機にそのまま入れると、9時に夕食の営業が終わったら9時30分には食器の洗浄もほぼ終わっている状態で、労働時間が8時間を割ることもあります。先進的な施設では1品盛り付け、1品調理まで取り組みは進んでいます。

 西田社長:現在、夜のメインの食事処でもある最上階のフレンチレストランは、朝食時もメインダイニングにしようと改装を考えています。朝食は和洋のビュッフェ形式で味噌汁やパン、オムレツも主にパートの主婦が作っており、「洋食のコックさんよりも美味しい」と評判です。

 内藤:料理人が作り置きをするくらいなら、パートが出来立てを出す宿の方がいいと思います。
 前もってまとめて料理を作った方が一見、ラクに見えます。しかし、作ったものを冷蔵庫や温蔵庫で保管すると、そこに入れた料理を「取りに行く」→「探す」→「出す」という色々な作業が同時に見えないところで生じるため、著しく生産性が下がります。また、探す作業によって間違えるという可能性が高まります。間違えると、クレームが発生し、そのクレームに対応していると、すべての作業が滞って現場はさらに混乱します。まとめて作っている部分だけを見ると、生産性は高いように見えるのはその通りですが、その背後にひもづいているさまざまな作業全体で見ると、ものすごくムダが多いのです。

 西田社長:1人前ずつ作っていった方が、結果的に生産性は高いのですね。

 内藤:私の提唱する生産性のやり方には1つだけ条件があります。
 それはお客のピークを崩すことです。例えば100人前のリゾットを同時に作ることはできません。ですから、お客が食事処に来る時間のピークを作らずに、できるだけ平準化する努力が必要になります。一番いい方法は、食事時間を決めないことです。

 西田社長:当館は夕方6時、6時30分、7時など決めています。

 内藤:食事時間を決めないように移行するときには、どの旅館でも慎重になります。

 西田若女将:確かに不安ですね。

 内藤:しかし、一旦時間を決めなくなると、逆に時間を決める方が怖いといいます。
 ある旅館では時間を聞かない当初は通常より多くスタッフを投入したのですが、食事時間がスタートして30分経っても大きな問題もなくスムーズに流れていきました。
 一例として、仕込みなどをしている早めの時間に食事処をオープンしてお客を入れるのも、ピークを崩すことになります。
 午後4時に食事処をオープンして、夕食の食材である簡単なデザートを出すとおやつにもなります。お酒が飲みたいお客には、ビールと簡単なつまみを出すことも可能です。そうすると、夕食時のピークが崩れていきます。

 西田若女将:おっしゃるように、お子さんのいる家族連れや、年配のお客様も「早い時間帯に夕食を食べたい」というニーズがあります。

 内藤:お膳出しでお膳の組み方をどんなに研究しても1品出しにはなりません。お客に夕食時間を聞きながらピークをなくそうとしても、時間を聞くということは変わらないのです。個人型は団体型とはまったく違うものと考えた方が改革に近づきます。

 西田社長:商品だけ個人型にしてもストレスが溜まってしまい、オペレーションを含めてすべて切り替える必要がありますね。
 1階の割烹「浜菊」の厨房は3―4人で調理をしていますが、メイン厨房で作ったものを提供しながら、お客様に近いところでは、てんぷらなど熱いものを提供するという割り切りも必要かなと思っています。

 内藤:低価格帯のニーズは残ります。焼き魚定食などを提供するのも一つだと思います。とくに連泊客にはリーズナブルで作り立ての定食へのニーズはあります。
 宴会中心の団体型から個人型への移行期には、どうしても現場は疲弊してしまいます。この時期は我慢が必要かもしれません。
 もう一つ、食事処の卓(テーブル)割もやめた方がいいですね。

 西田若女将:お客様が好きな席に座るということですか。

 内藤:そうです。卓割をしない理由は、事前に夕食のテーブルセッティングをしないためです。
 朝食が終わると、食事処のスタッフはすることがないので朝の9時30分に帰り、残業時間はなくなります。夕方は5時30分に出勤しても、夕食は1品出しであれば、お客が来るまで何もすることがありません。

 西田社長:給料は8時間分で払っているので、客室への案内やお出迎え、お見送りなども手伝ったりできますね。

 内藤:卓割をしてしまうと、「お客様がまだ来ていない」とチェックを始め、その作業にもまた時間が取られてしまいます。卓割もせず、時間も聞かなければ食事時間が終わるまで気がつきません。でも結局、お客はどこかの時間帯に食事に来ているのです。

 ――今の課題はなんですか。

 西田社長:現在、年間の休日は90日ですが、来年から週休2日となり、105日にする計画です。働き方をどのように変えていくかという問題はあります。別府にも新たなホテルや旅館が進出してくる計画があり、従業員の定着やいい人材を集めることも、これまで以上に大事になってきます。
 休館日はメンテナンスで4日間設けていたのですが、来年からはオフシーズンに6日増やし、10日間とする予定です。すでに年間のスケジュールに入れています。スタッフには少しでも多くリラックスしてもらえる時間をつくりたいと思っています。

 内藤:休日を増やすと出勤者数が減り、現場はパニックになることを心配します。そこで何が起こるかというと、一瞬の忙しい時間帯には自然と手隙の部署のスタッフが手伝いに来るようになります。「忙しい時間帯は一瞬一瞬なのだ」と現場のスタッフは理解していくと思います。

 西田社長:これまではフロントスタッフがお客様をエスコートして客室までご案内をしていました。今は客室係もロビーまで来ています。
 面白いのは、「どうして私たちがエスコートしなければならないのですか」と若い客室係から純粋な疑問がありました。「旅館とは、そもそも客室係が担当するお客様をお部屋に案内して、お茶を出すという文化があるのですよ。当館でも以前はそうしていました」と説明すると、理解してくれました。フロントスタッフと客室係が少しずつ協力し合っています。

 内藤:縦割がなくなりつつあるのですね。

 西田社長:すでに休日を増やすということをスタッフに伝えていますので、お互いにサポートし合わなければならないという考えになっているみたいです。

 内藤:人が多いから縦割が生まれるのです。逆に言えば、余裕があるということです。
 残業の状態はどうですか。

 西田社長:客室係は多い時期で月20時間ほどです。フロントスタッフは10時間程度です。
 フロントは連続勤務でしたが、休日を大幅に増やす取り組みのなかで中抜け勤務も始めました。スタッフは自発的に業務の改善などをレポートに書いたりしています。

 西田若女将:フロントスタッフが予約のチェックなどを裏の事務所でやっていると、お客様がフロントに来られたときに誰もいない状態になります。このため、1人はフロアに出て、もう1人はカウンターの中で作業をしています。でも、これではお客様からパソコンに向かって作業をしているのが丸見えの状態になっています。

 内藤:作業しながらでも、フロントスタッフがお客に近づくことはすごくいいことだと思います。パソコンが表にあるからこそ、お客とさまざまなやりとりが可能になります。お客の目の前でチェック作業をするのが一番いいと思います。
 ただ、フロントの作業として、どうしてパソコンに入力しなければならないのかを考える必要があると思います。紙に書かれたリストと、パソコンの中にもう一つ別のリストがあるからチェックが必要になるし、間違いが生じてしまいます。
 多くの旅館では予約課長を置いていますが、顧客管理課長に改めて顧客データと商品にひもづく作業プロセスをすべて一元的に管理した方がいいと思います。

 西田社長:そうですね。現状では、予約課から夕方のチェックインのピークが終わった6時ごろに翌日のリストがフロントに送られてきます。フロントは予約のリストを見ながら情報の画面と照らし合わせて「漏れがないか」と確認しているのです。
 お客様が当日チェックインしたときにミスが起こらないようにチェックしているのです。ただ、今は手書きの原紙をなくしたことで、その分だけでも作業時間が大幅に短縮できました。お客様から電話を受けながらデータを入力するだけなので、スタッフも手間などが省けて喜んでいます。

 内藤:2つの情報ソースがある場合、どちらが正しいのか、判断ができません。ミスが生じる原因を議論することが大事で、確認作業はいくらやっても売上が伸びないムダなコストです。
 データに変更があっても何が変わったという情報も必要ありません。最新の情報がそれぞれの現場で分かればいいだけです。

 西田若女将:チェックしてしまうと問題があるのに見えなくなってしまうので、ミスが生じたそもそもの原因を改善しないといけないですね。

 内藤:なぜ間違えたかを徹底的に追求する。それが改善なのです。
 接客などでこれから取り組んでいく新しいアイデアはありますか。

 西田若女将:社長とも相談していますが、お客様がご来館時に、目の前で抹茶を点てることができないかと考えています。まずは単価の高いお部屋からでも提供したいと考えています。
 それと着物は夏と冬用の1種類ずつですが、スタッフはチャーミングな子が多いので、気分転換も兼ねて、花柄や可愛らしい色のバリエーションも増やすことで気分を変えて、楽しく働ける環境にしていきたいと考えています。
 館内のフレッシュな空気の中で、抹茶をお客様の目の前で点てられたら宿の印象が大きく変わるのではないかと思っています。

 内藤:パントリーで抹茶を点てるよりもお客様の目の前で点てる方が生産性が高いのです。それは行ったり来たりしなくてもいいからです。
 「生産性が高い=コストが低い」ということですから、コストが低ければ固定費が安い。ルールから行くと、「単価の安いお客から提供するべき」という逆の考え方もあります。
 いずれにしても、一見手間の掛かる大変そうなやり方のほうが実際は生産性が高いということもしばしばあります。サービスのレベルが高いことと、コストが高いことはまったく別の問題です。
 例えば、ラーメン屋さんはラーメンと餃子をできた順番に持ってきます。一緒に持っていこうとした瞬間にデシャップ台が必要になり、固定費となってしまいます。多くの宿では、「高級なやり方=コストが高い」と思っているのです。

 西田社長:抹茶をお客様の前で点てるとなれば、現場のスタッフから「お客様が重なって来られたときに対応できるのだろうか」といった不安も出てくると思っています。

 内藤:お客の目の前で抹茶を点てることもコストですが、コストは生産性です。ムダなコストは削らなければなりませんが、売上が伸びる可能性のある“価値あるコスト”は増やすべきだと思います。
 私は旅館のムダな作業を考えるときに、コンビニエンスストアと比較します。
 コンビニではお客がいないときには、スタッフは旅館のフロントに当たるレジではなくホールで商品を並べたりしています。旅館ではお客様が誰もいないときでもフロントに立っています。
 また、納品トラックは店の入り口近くに駐車し、表玄関から納品してそのまま棚に入れます。このため、工程数が旅館に比べて圧倒的に少ない。コンビニ業界から旅館を見ると、ムダだらけに映ってしまいます。
 一方、旅館は裏の搬入口にコンテナの倉庫・冷蔵庫があり、それから厨房にも倉庫と冷蔵庫があります。さらにパントリーにも倉庫と冷蔵庫があります。「持って→運んで→置く」を何度も繰り返しています。それぞれに膨大な在庫を抱えています。
 コンビニには在庫がないのに、旅館にはムダが多いのは、旅館の粗利益率が約80%と大きいからです。小売業は半分以下のため、脳みその汗のかき方が違います。
 旅館のメイン厨房を閉めて、オープンキッチンに食材を納品して、仕込みから調理まですべて行う。スーパーにある平置き冷蔵庫を置くことを勧めています。お客様の前に食材を並べ、そこから調理をすればお客様のニーズにもっと応えられます。

 西田社長:旅館にはムダな作業がまだまだあるということですね。元の原因を断って改革を進めていきたいと思います。

 内藤:期待しています。

徳江氏講演会など 愛隣館の館内視察も 全旅連JKK

2017年11月1日(水) 配信

講師の徳江順一郎氏
稲熊真佐子氏

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の女性経営者の会(JKK、松﨑久美子会長)は10月16日、岩手県・新鉛温泉の「結びの宿愛隣館」で第2回定例会議を開いた。講演会では東洋大学准教授の徳江順一郎氏が「宿泊産業の生産性向上とホスピタリティの両立」に向けて、自動化・機械化やマルチタスク、サービスの選別など必要性を語った。事例発表では、労働改善委員会の稲熊真佐子委員(豊田プレステージホテル)が予約業務のペーパーレス化などによって省力化と時短が実現した取り組みを紹介した。翌17日は、愛隣館の厨房や自動チェックアウトシステムなど館内視察を行った。

ジャルパック訪日DP事業部 付加価値あるDP強み 質重視のタイ客へ販売拡大を

2017年11月1日(水) 配信

松原保典グループ長

 ジャルパック(藤田克己社長、東京都品川区)は2017年1月11日から、タイ国内で「JAL訪日ダイナミックパッケージ」を売り出した。タイ・バンコクに就航している日本航空(JAL)の4路線(成田と羽田、中部、関空)を対象に展開。4月には「訪日ダイナミックパッケージ事業部」を設置し、タイ人のスタッフも配置するなど体制を整えている。付加価値があるDPが強みと語る松原保典グループ長に話を聞いた。

【飯塚 小牧】

 ――訪日事業の取り組みを開始した経緯は。

 インバウンド4千万人時代を迎えるに際し、当社としても外国人のお客様を迎え入れる方法を検討してきた。

 日本ではダイナミックパッケージ(DP)の認知度が高まっており、当社もFIT(個人旅行)のお客様に国内旅行と海外旅行でDPの販売を行ってきた。海外では航空券とホテルを別々に購入する傾向にあるが、これまでの経験から一定の感触とノウハウを得られたため、今年から新たなチャレンジとしてタイのお客様にアプローチを開始した。

 ――タイ市場で展開している理由は。

 JALの販売戦略で強化しているのがタイだ。親日で知られているタイからの訪日客が年々伸びているなか、昨年はJALのバンコク線が就航60周年を迎えた。また昨年のリサーチで、団体旅行でゴールデンルートを訪れた人たちがリピーターとなり、今後はFITが増える傾向にあることが分かった。これらのことから、インターネット販売に適しており、伸びていく市場だと判断した。

 ――なぜDPなのか。

 ほかの国と同様、タイでも飛行機とホテルは別々に予約するのが主流で、インターネット上でもセット販売はあまりない。そのなかでセット販売にすることで利便性やお得感を創出できる。

 また、傷害保険が付いており、日本で医療機関を受診する際も多額の支払いになることはない。日本とバンコクに問い合わせ窓口があり、安心感もある。

 このように単なる「飛行機+宿」だけではなく付加価値があるのが強みだ。これまでの当社の経験を盛り込んでおり、これが訪日客への「おもてなし」だと考える。

 ――送客で力を入れる国内の地域は。

 最優先はJALの国内就航都市だ。JALが展開する外国人向けの「ジャパンエクスプローラーパス(JEP)」を利用し、日本の地域の魅力を感じてほしい。また、空港からの移動をスムーズにするため、ほかの輸送機関や地域との連携も必要だと考えている。

 現在、東日本旅客鉄道(JR東日本)グループと連携し、DPの販売サイトで訪日向け鉄道パス「JR EAST PASS」と着地型旅行商品「TOHOKU BUFFET(東北ブッフェ)」を紹介している。さらに、JALグループと北海道観光振興機構との連携に参画し、DP販売サイト内にひがし北海道の特集ページを開設した。おすすめの宿泊施設や現地の観光バスなどを紹介しているが、こうしたパーツを増やしていくことが、お客様の利便性につながると考えている。地域の方々にとっても、我われのDPは実際に人を呼び込むためのツールとして有効だと思う。

 ――これまでの手応えや今後の展開は。

 送客数はまだ十分とは言えないが、Web販促やタイ現地の旅行フェアで直接販売などを行い、反応は出てきている。現在、約5千軒の宿を掲載しているが、施設数も拡大していきたい。今タイでは温泉に入りたいというニーズもあるので、シティホテルに加え日本の旅館、温泉宿も需要がある。

 航空券はビジネスクラスの需要が予想以上にあり、単価が高い良質なお客様が多い。必然的にLCC(格安航空会社)との差別化がはかれている。今後もタイで質を重視するお客様に対し、販売を拡大していく。

 

DMO課題の打開へ、産学官合同研究会を設置(日観振)

2017年11月1日(水) 配信

清水哲夫氏

 日本観光振興協会が今年3月に全国の日本版DMO候補登録法人に行った調査で、安定的な運営を行うための財源確保や専門人材の不足などの課題が浮き彫りになった。この現状を打開するため地域と企業の相互交流を促進し、産学官がそれぞれの立場から意見交換を行う場として「観光経営研究会~世界水準の観光経営を目指す産学官合同研究会~」を設置。10月16日に東京都内で1回目の研究会を開いた。

 冒頭、あいさつに立った日観振の久保成人理事長は「観光を取り巻く環境は非常に大きく変動し、課題も次から次へ現れている。こうした状況を打開するため、観光地経営をより効率的に実現しなければいけない」と会の趣旨を説明。初回の議題「ビッグデータを活用した観光マーケティング」について「そのなかでも切実なテーマを据えた」と語った。

 ビッグデータは全知全能ではない

 研究会では、日観振総合調査研究所長で首都大学東京都市環境学部教授の清水哲夫氏が登壇。「観光の現象と行動を分析するための統計・ビッグデータ~できることとできないことを考える~」と題し、講演した。清水氏は政府が公開している地域経済分析のデータプラットフォーム「RESAS(リーサス)」の専門委員として、自治体の地方創生事業へ協力。大学では多摩信用金庫とともに、自治体の職員にデータとの付き合い方を教育する「地域創生スクール」を開講している。

 こうした経験から清水氏は「ビッグデータは全知全能の神ではない。そもそも何を知りたいのかを理解することが大切。何をやりたいか分からない状況で利用しても意味がない」と指摘。統計やビッグデータの種類別に、できることとできないことを行政担当者やDMO幹部は理解すべきだと主張した。例えば「観光客の周遊行動把握」は位置情報データや目的地検索データで分かるが、この2つはこれ以外に利用できず「観光客の消費行動把握」や「観光客の評価把握」には統計調査やアンケートなどが必要になる。こうしたことを見極める能力を「4つのデータ力」として(1)データを収集する力(2)データを分析する力(3)データを理解する力(4)データを活用する力――を挙げた。

 一方、現状のビッグデータのデータ量では不十分で、観光地の一定の現象をつかむまではいかないという。「観光地のマーケティングに利用するにはさらに技術開発が必要で、まだ先に進めないのが正直なところ」と今後の進展に期待した。

 研究会ではこのほか、実際にビッグデータを扱う企業からのプレゼンテーションや参加者同士での意見交換が行われた。

 2回目以降は参加者からのアンケートを基に、その時期に沿ったテーマを設定する予定。

新千歳空港への新搭乗スタイル誕生!「ANA FAST TRAVEL」導入

2017年10月31日(金) 配信

スムーズな搭乗が可能に

ANAは2017年11月8日(水)に、新搭乗スタイル「ANA FAST TRAVEL」を新千歳空港に導入する。新搭乗スタイルの誕生で、空港に到着してから搭乗するまでの流れが、よりシンプルで分かりやすく、スムーズに行えるようになる。

  出発カウンターのレイアウト変更とデザインリニューアルや、プレミアムチェックインカウンターのリニューアルを行うことによって、空港における手続きの極小化、待ち時間の抑制、分かりやすい導線の提供を行っていく。 

出発カウンターのレイアウト変更とデザインリニューアル

 出発カウンターのレイアウトを変更し、自動手荷物預け機「ANA Baggage Drop」や自動チェックイン機を集約して配置することにより、特定のカウンターの混雑を防ぎ、待ち時間の削減を実現する。

 また、搭乗手続きや手荷物の預かりなどの表示を、出発するすべての旅行者に一目でわかるよう、大きな文字やピクトグラムを活用したデザインに変更する。

 加えて、空席待ちカウンターを出発カウンターから搭乗ゲートエリアへ変更。有人カウンターで手荷物を量る重量計を床と同じ高さにすることで手荷物を置きやすくするなど利便性の向上をはかっていく。

自動手荷物預け機「ANA Baggage Drop」サービス、インライン・スクリーニング・システムの導入

  よりスムーズに出発前の手荷物を預けることができる「ANA Baggage Drop」を、羽田空港に続き新千歳空港にも10台導入する。

 同サービスは旅行者自身が手荷物を自動手荷物預け機のなかに入れ、表示される操作案内に従い、預けを完了させることができる手荷物自動受託サービスだ。

 海外の旅行者にも利用してもらえるよう、日本語、英語、中国語(繁体・簡体)、韓国語の4カ国語の案内を用意した。

 また、これまでは手荷物を預ける前にX線検査機による安全性検査を実施していたが、有人カウンターや「ANA Baggage Drop」で手荷物を預けたあと、飛行機に搭載されるまでに自動的に検査される「インライン・スクリーニング・システム」を導入し、待ち時間の短縮を実現する。

「Special Assistanceカウンター」

 身体の不自由な旅行者、子供連れなど、搭乗時に手伝いが必要な旅行者が利用できる「Special Assistanceカウンター」を中央保安検査場付近に設置。利便性を高め、車イスやベビーカーで利用する際の快適性を考慮した素材にし、ユニバーサルデザインに配慮したサービスを提供していく。

1年に2回のみ!11月2日は東京タワーでダイヤモンド富士を見よう

2017年10月31日(火) 配信

2013年2月のダイヤモンド富士

1年に2回、2月と11月の2回しか見られない景色、ダイヤモンド富士。東京タワーは11月の観賞推奨期間を11 月 2 日(木)午後4:34 ごろと発表した。

 「ダイヤモンド富士」は、富士山の山頂と太陽がぴったり重なった時に起こる現象。山頂から朝日が昇る瞬間と夕日が沈む瞬間に、太陽がダイヤモンドのように光り輝いて見えることから呼ばれるようになった。しかしこの現象は、1 年の間に 2 回、空気が澄んで晴れているなどの気象条件が整わないと鑑賞できない。

 東京タワー展望台からは11 月 2 日(木)に午後4:34 ごろに鑑賞ができる予定で、その前後にあたる1日(水)と3日(金)も富士山山頂付近に美しい夕日が沈むため、お薦めとしている。なお、展望台は、通常料金のみで利用可能。(気象条件によって鑑賞できない場合もある)

〈観光最前線〉人間ドック付き雪国ツアー

2017年10月31日(火) 配信

パンフレット表紙

 新潟県の南魚沼市観光協会は来年1―3月まで、人間ドックと冬の南魚沼の自然・食・観光を組み合わせた、心身ともに健康体験を満喫する2泊3日のツアーを実施する。

 本場の南魚沼産コシヒカリはもちろんのこと、人間ドック後に越後ワイナリーの見学や、地元魚沼の酒蔵である八海山、鶴齢、高千代の日本酒飲み比べ付き夕食などを提供する。さらに、南魚沼の酒蔵を見学する「地酒めぐりと郷土料理」か、名匠の芸術作品を巡る「文化と歴史」コースの2パターンを用意。宿泊先は六日町温泉の龍言と、冬の南魚沼の魅力を存分に堪能できる内容となっている。

 人間ドックは、共同企画の市立ゆきぐに大和病院健友館で、2日目の朝から夕方にかけて実施。退職後も元気で過ごしてほしい家族に送ってみたい。

【長谷川 貴人】

「もてなし名脇役 13」遊べる照明で空間づくり フレイムスの「ヒキダシ」

2017年10月31日(火) 配信

木枠を動かすと光のグラデーションが変化する「ヒキダシ」

 訪れた人が「迎えられている」と感じる。そんな空間演出につながるモノを、使われる場面も想像しながら紹介します。

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 照明は一番手軽にできるリフォームです――。コーヒードリッパーを傘(シェード)にしたペンダントライトに見とれていると、フレイムス社長の和田秀樹さんが教えてくれました。そういえば宿泊先で時々フロアスタンドを調光し、自分好みの空間をつくっている。今回は遊び心ある照明を取り上げます。

 テーブルスタンド「ヒキダシ」は、木枠を左右に動かして、光のグラデーションを楽しむ照明です。その特徴は「光で遊べる」こと。眠る前のくつろいだ時間、明かりを落とした部屋で、光に触れてもらうという演出はいかがでしょう。

 必要な照明から、くつろぎの照明へ。ここまではいくつも見てきましたが、「遊べる照明」とは恐れ入りました。宿で知って、いつの間にか自宅にも。そんな発見のある施設はきっと素敵です。

 もう1つ。複数の葉っぱを傘にした「コカゲスタンド」は、葉を重ねたり、寄せたりすることで、「影のデザインを楽しむ」照明だそうです。

 問い合わせ=電話:042(551)3941。

「ブルーキャブ」登場 “抑制美”は高度な文化の象徴だ

2017年10月31日(火) 配信

瓦や壁の色が統一された黒川温泉の街並みは美しい

 トヨタ自動車はこのほど、ミニバンタイプのタクシー専用の新型車「JPN(ジャパン)タクシー」を発表した。従来のセダン型に比べて、車高が高いためゆったりと座れる。後部トランクには、スーツケースが2つ収納できるスペースを確保している。床も低く設計されており、車イスに座ったまま介助者とともに乗車できるなど、さまざまな配慮がなされている。

 もう一つ、特徴的なものは、濃い藍色の車体カラーだ。「深藍(こいあい)」というらしい。同社はタクシー業界にこの「深藍」色に統一するように求めていくという。

 藍色は日本人に親しまれた色だ。世界的に「ジャパンブルー」と呼ばれている。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、徐々に東京の街に濃い「ジャパンブルー」のタクシーを見かけるようになるだろう。

 13年10月21日付の本紙・旅行新聞には、当時観光庁観光戦略課長だった清水一郎氏(現・伊予鉄道社長)へのインタビュー記事が掲載されている。

 英国での生活を経験された清水氏は「ロンドンは赤い2階建てバスやブラックキャブなどの車両が美しい街の風景に溶け込み、絵はがきになるほど有名です。バスやタクシーなど公共交通の車両そのものが世界中の人にロンドンを想起させる『街の顔』になっています。ニューヨークはイエローキャブが有名です」と語っている。さらに、「公共交通は、単に目的地に着けばよいというだけではなく、『街の顔』を作っているという発想が大事」と強調している。

 近い将来、「ブルーキャブ」が東京、そして日本の象徴的な風景として定着していけばいいと思う。

 本紙は08年9月11日号から16年12月11・21日号まで、カラーセラピストの石井亜由美さんによる「日本の伝統色風景百選」を連載していた。

 石井さんは今年2月1日号の連載100回記念の本紙インタビューで「色は人の心理にさまざまな影響を与える」と、その効果を強調した。

 例えば、奈良県で05年に「青色防犯灯」を設置したところ、防犯や自殺防止などに効果があるとされ、全国各地の駅のホームなどに設置されるようになった経緯なども紹介。「色でまちおこしをしている地域」では、日本デニムの発祥の地として、まちを走るタクシーまで“デニムブルー”で統一されている岡山県倉敷市の児島や、“マリンブルー”を基調とする千葉県銚子市の取り組みも、1つの代表例として上げられた。

 私自身も岡山県高梁市のベンガラに彩られた赤い街並みの「吹屋の集落」を歩いたときは、統一された美しさを強烈に感じた。そのほかにも熊本県・黒川温泉では看板や壁の色を統一しているし、千葉県館山市は南欧風の建物の街としてイメージづくりに取り組んでいる。沖縄県・竹富島の白い砂と赤瓦の美しい集落などの風景は、旅が終わったあとも、強く印象に残っている。「どこに旅行しようか」と観光地を選ぶ際も、1枚の写真が大きな力を持つ。

 訪れた旅先の都市や小さな街で、歴史に根差した統一感のある「色」に接すると、人はその文化薫る“抑制美”に心惹かれてしまう。とかく無秩序へ向かいがちな世の中にあって、抑制こそが高度な文化の象徴であるからだ。

(編集長・増田 剛)

世界の旅行者から選ばれた日本のベストレストラン2017

2017年10月31日(火) 配信 

日本のトップ10発表(画像はイメージ)

トリップアドバイザーはこのほど、旅行者の口コミ評価をもとに、世界のレストランをランキング化した、「トリップアドバイザーの口コミで選ぶ、世界のベストレストラン2017」を発表した。合わせて 世界の旅行者から選ばれた日本のトップ10レストランを発表。世界の旅行者が「Wagyu」に魅了されてる。

日本のトップ10に選ばれたレストラン

1位 NARISAWA(東京都港区)

2位 タパス モラキュラーバー (東京都中央区)

3位 天ぷら圓堂 八坂本店 (京都府京都市)

4位 神戸鉄板焼 白秋 (東京都渋谷区)

5位 はふう 本店 (京都府京都市)

6位 神戸牛すてーき Ishida 北野坂店 (兵庫県神戸市)

7位 東京 芝 とうふ屋 うかい (東京都港区)

8位 久兵衛 銀座本店 (東京都中央区)

9位 松阪牛焼肉 M 法善寺横丁店 (大阪府大阪市)

10位 あつた蓬莱軒 松坂屋店 (愛知県名古屋市)

「NARISAWA」が2年ぶりに1位を獲得

 今年は「NARISAWA」が2年ぶりに1位を獲得。「こんな贅沢な時間はほかでは味わえません」、「Narisawa truly deserves to be one of Asia’s top restaurant(Narisawaはまさに、アジアのトップレストランの名にふさわしい)」と、国内外から高い評価を受けた。アジア全体でも高い評価を受け、アジアランキングでも14位にランクイン。

 「1つひとつが丁寧に、そしてとても自分では再現できないような素晴らしいつくりでした。日本的なサービスの仕方であったり食事の中身はフレンチに忠実であったり、感心しました。自分では再現できないようなどうやったらこんな風にできてるのか、と思える『お金を払う価値のある』料理です」。

 上記の口コミにも代表されるように、お金を払に値するという声が多かった。和食とフレンチの融合が素晴らしいとも評される世界の旅行者から評価されている。

高評価の声が続出

和牛を味わえるレストランが4つランクイン

 神戸牛、松阪牛をはじめとする「Wagyu」に魅了される旅行者続々。今年のランキングの特徴は、和牛を扱う店舗が多くランクインしたこと。 4位に「神戸鉄板焼 白秋」、 5位に「はふう 本店」、 6位に「神戸牛すてーき Ishida 北野坂店」、 9位に「松阪牛焼肉 M 法善寺横丁店」と、トップ10のうち4店が和牛を堪能できるレストランだった。

 これらのお店には、「The kobe beef…wow!」、「amazing kobe beef steak」、「Wonderful Matsusaka beef!」など、神戸牛や松阪牛に感動する外国語の口コミがとくに多く寄せられていた。

和牛が人気