初音ミクの派生「桜ミク」 弘前さくらまつりの応援キャラに

2019年3月11日(月)配信 

桜名所の弘前公園と「桜ミク」が描かれたメインビジュアル

青森県弘前市の「弘前さくらまつり」の公式応援キャラクターに、世界的な人気を誇るキャラクター・初音ミクから派生した「桜ミク」が就任した。就任期間は、同祭りが開催100回目のメモリアルイヤーを迎える2020年度まで。

 同企画は「桜ミク」と、日本有数の桜名所である弘前公園(青森県弘前市)の桜との親和性が高いことから実現。「桜ミク」は公式応援キャラクター就任によって、弘前公園のさくらの絶景をメインビジュアルにした「弘前さくらまつり」ポスターに掲載されるほか、4月1日号「広報ひろさき」の表紙を飾るなど、「弘前さくらまつり」とコラボレーションしたさまざまな企画を行っていく予定。

 今年の「弘前さくらまつり」の開催期間は、2019年4月20日(土)~5月6日(月・祝)まで。期間にあわせて、4月20日(土)からオリジナル絵はがきがもらえる観光スタンプラリーも開催する。

コラボレーション概要

・弘前さくらまつりコラボポスター

・弘前駅にPR看板

・観光スタンプラリー

・商店街フラッグ

・4月1日号広報ひろさき表紙

・観光施設でのキャラクターグッズ販売

キャラクター概要

<「初音ミク」とは>

 クリプトン・フューチャー・メディア株式会社が開発した、歌詞とメロディーを入力して誰でも歌を歌わせることができる「ソフトウェア」。大勢のクリエイターが「初音ミク」で音楽を作り、インターネット上に投稿したことで一躍ムーブメントとなった。「キャラクター」としても注目を集め、今ではバーチャル・シンガーとしてグッズ展開やライブを行うなど多方面で活躍するようになり、人気は世界に拡がっている。

<「桜ミク」とは>

 桜ミクとは、春をイメージした装いで季節感あふれるデザインを身に纏い、冬の終わりから春先にあらわれる、「初音ミク」から派生したキャラクター。

「弘前さくらまつり」概要

弘前城と桜

 日本有数の桜の名所と知られる弘前公園。園内には、52種、約2,600本の桜がある。毎年、4月下旬~5月上旬まで開かれる「弘前さくらまつり」には、200万人以上の観光客が訪れる。

花筏(はないかだ)

弘前さくらまつり公式サイト:

otomo、関西地区に進出へ 旅行者とガイドの安心安全も充実化 

2019年3月11日(月) 配信 

otomoのツアーイメージ

外国人旅行者向けの通訳ガイド付きプライベートツアーを運営するotomo(オトモ、東京都文京区)はこのほど、関西地区に事業を広げた。大阪・京都・奈良・兵庫で60種類以上のツアープランを用意した。これまでは関東圏1都3県のみだったが、サービス提供地域は全国8都府県、プランは200種類以上となった。

 同社は今年1月にサービスを始めたばかり。同業のなかで後発となるが、旅行者とガイドの安全安心に関する取り組みや、自分達の目で確かめ作り上げたプランを強みに、事業拡大に拍車をかける。

 関西地区では3月からガイドの登録受付を始め、6月からツアーの予約を受け付ける。「旅行者の多様なニーズに応える、テーマ性を持ったオリジナルのツアープランは、すべて独自の実地調査をもとに作成している」(同社)という。

 例えば、大阪では「城下町の風情溢れる街並みを巡る、だんじり祭りのルーツに迫るプラン」「大阪の中心部に残るレトロな建築を楽しむ街歩きプラン」などを用意する。奈良では「金魚養殖と藍染が盛んな街で、江戸から続く街並みと産業を巡るプラン」などプランの幅は広い。

 同社には19年3月時点で400人以上(うち通訳案内士は約3割)がガイドとして登録している。職業は学生や会社員、主婦、定年退職者などと多様で、年齢は20―60代までと幅広い人材をそろえる。旅行者からガイドに支払われる報酬は、1時間1000円~1万円の範囲でガイドが自由に設定することができる。

 ガイド登録ページ:

旅行者とガイドに安心安全を

 オトモでは安心安全への取り組みも進めている。旅行者とガイドに対しサービス利用中の事故・トラブルを無償で補償する。旅行者とガイドの費用負担や手続きは必要ない。さらにガイドが事故・トラブルにより就業不能となった場合、総額50万円を上限に報酬を補償する「ガイド向け休業補償プログラム」を独自で始めた。

 3月1日以降に実施するすべてのツアーで、傷害での入院や通院のほか、最大1億円までの賠償責任の補償を無償附帯している。同社は三井住友海上火災保険と包括保険契約を結び、「事業者向け個人賠償責任保険」などの各種保険商品に加入することで、補償を可能にした。事故・トラブル発生時には、14カ国語に対応する三井住友海上の事故受付センターで円滑な問い合わせ対応ができるという。

 同社が行ったアンケートでは、ガイドと旅行者の8割近くがツアー中の事故・トラブルに対する補償・サポートを求めていることが分かった。このほか、近年は働き方が多様化して副業を持つ人がいる一方、副業中の事故・トラブルに対する補償は整備が追い付いていない。同社のガイドのうち、約6割は副業として活動していることを踏まえ、保険導入に踏み切った。

 「ガイド向け休業補償プログラム」は、傷害保険の適用を受け、就業不能であることを証明する診断書の提出が条件となる。補償期間は診断書記載の就業不能期間(上限3カ月)で、過去3カ月間の平均ガイド報酬額の80%(総額上限50万円)を補償する。

 

瀬戸内海の歴史にふれる船旅 灯台クルーズツアーを実施

2019年3月11日(月) 配信

灯台の内部見学も行われた

三原観光協会(広島県三原市)は3月9日(土)、明治期に建てられた灯台、灯標など7カ所を巡るクルーズツアーを行った。せとうちの島巡りと灯台巡りが一緒に楽しめるツアーで、愛媛県今治市の大下島灯台もコースに組み込んだ。

 ツアーは、昨年灯台150周年を迎えたことを記念して造成された。大浜埼灯台や百貫島灯台、高根島灯台などを尾道海上保安部の案内で巡った。また、小佐木島では灯台の内部見学と、BH2での現代アート鑑賞も行った。

 海上保安庁らは昨年、日本初の洋式灯台「観音埼灯台」(神奈川県横須賀市)が起工してから150年目の節目として、灯台150周年記念のイベントなどを各地で開催した。

観光・レジャースポットのSNS発信はUSJが1位、インバウンドレポート2018

2019年3月11日(月) 配信

観光・レジャー部門

RJCリサーチ(佐野耕太郎社長)とナイトレイ(石川豊社長)がこのほど発表した「インバウンドレポート2018」によると、18年に訪日外国人がSNS(交流サイト)へ投稿を行った観光・レジャー部門の発信拠点1位は大阪府の「ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)」となった。

 同レポートは、訪日外国人の動向を探るため、ナイトレイが提供する訪日外国人のSNS解析ツールのデータを基に、RJCリサーチが訪日外国人の口コミ発信地点情報を中心に集計・分析した。

 今回は18年の1年間に訪日外国人がツイッターやインスタグラムなどで日本国内滞在中に発信した投稿のうち、約8万件のSNS解析結果データを集計。投稿内容における位置情報やテキスト、画像の有無を用いてSNS投稿量のスコアを設定して分析した。投稿の発信地点となった全国のスポットは、「観光・レジャー」「ショッピング」「グルメ」の3つの部門別にランキングした。投稿者の属性はアジアを東南アジアと東アジアに分け、アメリカ、その他の地域と区分した。

 観光・レジャー部門は「USJ」がスコア5045で1位となった。このうち、東南アジアが3793と7割以上を占め、東南アジア区分のなかでも断トツで1位の発信拠点だった。次に投稿が多い東アジアも770と高いスコアで、東アジアのなかで最も人気の発信拠点だった。一方、アメリカのスコアは117に留まり、USJの順位は27位と低かった。

 4442スコアで2位に輝いたのは「東京ディズニーランド(TDL)」(千葉県)。東南アジアが2489、東アジアが584、アメリカが693、その他が676と地域に関係なく人気だった。

 僅差で3位だったのは、近年外国人に話題の「伏見稲荷大社」(京都府)。スコアは4404で、こちらはアメリカが718、その他が1300とアジア以外からの人気が最も高いスポットだった。

 4位は「東京ディズニーシー(TDS)」(千葉県)で、スコアは4248だった。アジアはTDLとほぼ同様のスコアだが、アメリカのスコアが812とアメリカのなかで1位の発信拠点となっている。

 5位は「大阪城」(大阪府)の3431。スコアの内訳は、東南アジアが2092、東アジアが462、アメリカが241、その他が636となった。

 6位以下は「東京タワー」(東京都)、「明治神宮」(同)、「東京スカイツリー」(同)、「奈良公園」(奈良県)、「竹林の小径」(京都府)。トップ10のうち、首都圏5地域、関西圏5地域とバランス良くランクインする結果となった。

ショッピング部門

 ショッピング部門は、「ローソン」が最もSNS投稿量スコアが高く、なかでも東アジアの人気が高かった。空港への出店やアリペイサービスの全店導入など、訪日外国人対策の効果が表れているとみる。

グルメ部門

 グルメ部門はすべての地域で「築地市場」が1位となったが、10月に豊洲市場へ移転したのに伴い、12月のSNS投稿量は大幅に減少しているという。4位の「黒門市場」以降のスポットは、スコアが3位の「スターバックスコーヒー」の半分以下に減少しており、グルメスポットは上位3つに集中している。

Report | 株式会社RJCリサーチ
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RJCリサーチは、マーケティングリサーチの戦略的パートナーとして、お客さまのご要望に幅広くお応え出来るマーケティングリサーチ会社です。

TVアニメ「チャギントン」が岡山の路面電車に 3月16日(土)から運行

2019年3月11日(月) 配信

 

おかでんチャギントン

岡山電気軌道は都市型エンターテインメント観光電車「おかでんチャギントン」の運行を、2019年3月16日(土)から始める。

 観光車両の導入は今回が初めて。車内の仕様は豪華観光列車「ななつ星in九州」を筆頭に多くの車両デザインを手掛けている水戸岡鋭治氏がデザインした。水戸岡鋭治氏が既存のキャラクターにデザインを施すのも初めてだ。

 車内には乗客と一緒にナビゲーターが乗り込み、乗車・誘導の案内をするほか、楽しい車内イベントも実施し、チャギントンの世界観を演出する。

「おかでんチャギントン」概要

車内

<運行経路>
・岡山駅前発→東山おかでんミュージアム駅着
・東山おかでんミュージアム駅発→岡山駅前着
の2パターン(各所要時間:約50分)

<料金>
平日:
 大人(中学生~):3,400円(税込)、小人(1歳~小学生):1,900円(税込)
土日祝日及び春・夏・冬休み期間:
 大人(中学生~):3,500円(税込)、小人(1歳~小学生):2,000円(税込)

<料金に含まれるもの>
・電車運賃と電車設備利用料
・おかでんミュージアム入館料
・岡山電気軌道の路面電車一日乗車券
・乗車記念品

<チケットの購入方法>
ローソンチケットで購入
 ※『おかでんチャギントン』で検索。
 ※ 当日券もある。

チャギントンについて

 全世界で大人気のフルCGアニメで、日本では「GO!GO!チャギントン」として放送されている。

おかでんミュージアムについて

 今まで非公開だった整備工場の一角を、水戸岡鋭治氏の手によりリノベーションし、2016年12月に「おかでんミュージアム」としてグランドオープンした。水戸岡鋭治氏のポスター作品や映像集をまとめた資料室では、水戸岡ワールドを心ゆくまで体験することができる。

 1階のシアタールームでは人やモノの動きに合わせて映像が動くデジタルサイネージを楽しめるほか、2階のプレイルームにはチャギントン、水戸岡氏デザインの車両で遊べるプラレールを設置。鉄道やバスなどをはじめとした絵本も多数用意している。

〈旬刊旅行新聞3月11日号コラム〉観光地の俗化 “小洒落た”装飾が気づかぬうちに

2019年3月11日(月) 配信

飾り気はないが、宮古島らしさを感じられる満月食堂

 
最近気になっているのが、どこの観光地に行っても、女性の姿を目にすることは多いが、旅をする男性をあまり見掛けなくなった。

 
 先日、沖縄県の宮古島を旅した。そこでも、カップルや家族連れのほか、女性の1人旅やグループ客を見掛けたが、男性は圧倒的に少なかった。女性が旅行市場をリードしていることを改めて認識した。

 

 
 宮古島単独のガイドブックは書店にもなかったので、今回は数年前に石垣島と竹富島を訪れたときに買ったガイドブックが役に立った。

 
 私は旅行する前にはガイドブックを購入し、旅が終わったあとにも捨てずに本棚に並べておく習性がある。地図にホテルの印をつけたり、行きたい場所に蛍光ペンで色を塗ったりしている。「次に訪れたときにもきっと役に立つだろう」と大切にしているが、片づけたがりの妻には評判はすごく悪い。

 
 そのガイドブックには、いつの間にか、たくさんの付箋が付いていた。1ページに2、3枚の割合で、付箋だらけの本はカラフルな熱帯植物のようにも見えた。毎回旅先で「どこに行くか」や、旅のスタイルの違いで妻と喧嘩になるので、私も少し学習をして、「行きたい場所があれば付箋をつけていてくれ」と言い放っていたのだ。

 
 ガイドブック自体が女性向けだったせいか、レストランも、宮古ブルーの海と南国のお洒落な建物の店が多く、付箋が付いているものの大部分が“写真映え”するような店だった。

 

 
 レンタカーで来間島へ渡ると、さらに女性客の割合が高くなった。2人組や、4人組の若い女性たちがお洒落な店に次から次に入ってきた。実際、ランチで訪れたレストランには、私を除くと、すべて女性客という状態だった。

 
 「どうしてこんなに女性に人気なのだろう」と考えてみると、タコライス一つとっても、野菜やチーズの見せ方、盛り付ける器、フォークやスプーン、テーブル、ランプのシェードやメニューの手書きの文字まで、一つひとつが小洒落ている。

 
 こういった細部のデザインを少し変えるだけで、こんなにも女性客が訪れるようになるという典型的な店だった。

 
 けれど、正直なところ、この手の小洒落た店の空気はどうもふわふわっとしていて、しっくりと来ないのである。妙に小洒落ているがゆえに、その土地特有の“何か”を薄めてしまっている気がするのだ。それは「本質」といってもいいのかもしれない。

 
 その前日に訪れた宮古島北部の満月食堂は、まったく洒落っ気がなく、絵に描いたような「沖縄の食堂!」だったが、味は絶品で、安かった。妻も大満足だった。飾り気のない店内には地元客や観光客、老若男女がいた。年齢や性差もなく、幅広い層に支持されている「普遍性」を感じた。

 

 
 旅館やホテル、レストランもリニューアルすると、その多くが小洒落る。もちろん汚い店よりも、新しく、お洒落な店に多くの客が集まるのは分かる。

 
 しかし、にぎわっている観光地がしばしば俗化して映るのは、次第に素朴さを失い、地域性が薄まったからではないか。

 
 俗化とは、観光客に受けるために施した“小洒落た”装飾が気づかぬうちに、少しずつ積み重なった集合体なのかもしれない。 

(編集長・増田 剛)

 

【特集No.517】増える体験型返礼品 ふるさと納税で地域とつながりを

2019年3月11日(月) 配信

 総務省によると、2008年度に開始された「ふるさと納税」の額は初年度の約81億円から、17年度は約3653億円まで拡大した。拡大の背景は、自治体が寄付者に贈る返礼品の効果が大きいが、加熱する”返礼品合戦”に、今年6月から法の規制がかかることになった。他方、総務省はふるさと納税を活用した「移住交流プロジェクト」なども立ち上げ、寄付者と地域とのつながりづくりを促している。こうしたなか、返礼品も“モノ”だけではなく、直接地域への来訪を促す体験型の“コト”を用意する自治体が増えている。

【飯塚 小牧】

地域に求められるのは“共感”

納税額は年々増加 返礼品も注目高く

 「ふるさと納税」は、都道府県や地方自治体に寄付をする制度だ。自己負担額の2千円を除いた全額が、確定申告時に住民税など税の控除を受ける対象となる。

 総務省はふるさと納税制度について「地方団体の取り組みを応援する納税者の気持ちを橋渡しし、支え合う仕組み。地方団体が自ら財源を確保し、さまざまな施策を実現するために有効な手段。人口減少が深刻化するなか、地域資源を最大限活用し、地域経済を再生させていくうえで、重要な役割を果たす」と位置付けている。

 創設から今年で12年目を迎え、今や自治体にとってなくてはならないものになっている。より良い運営のため、仕組みも度々見直されてきた。15年度税制改正により、税額控除されるふるさと納税額の枠が2倍に拡充された。また、寄付先の自治体数が5自治体以内であれば、もともと確定申告をする必要がない一般的な給与所得者は、確定申告が不要になる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を導入。納税額はワンストップ導入後から爆発的に増え、14年度から17年度の納税額は9倍以上となった。

 自治体から寄付をしてくれた人へ贈る、返礼品も増加に大きく寄与している。このため、寄付を集めるための競争が激化し、地域と関係のない高額家電や金券類など「お得」な返礼品をそろえる自治体が現れ、問題になった。17年には、総務省が自治体に向け「返礼品は寄付額の3割以下に抑えるように」などの通達を出したが、聞き入れない自治体と自粛した自治体との間で不公平感が生じ、ついに税制改正がなされることとなった。……

【全文は、本紙1747号または3月15日(金)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】

「登録有形文化財 浪漫の宿めぐり(95)」(富山県南砺市) 松風樓 ≪花街の艶やかさを伝える明治建築の料亭旅館≫

2019年3月10日(日) 配信

節を目立たせてインパクトを強く持たせたさくらの間の天井。樹種はネズコとの説もある

 
どことなく華やぎを感じる町だった。広い通りの両側に灯籠が並び、一歩入った細道には小屋根付きの黒板塀や格子戸の家が見られた。この観音町と呼ばれた一帯は、昭和30年代初期まで繁華な花街だったのである。

 
 料理旅館の松風樓はその花街が形作られた最初に、遊郭として開業した。1900(明治33)年のことである。現在の建物も同じ時に建てられたものが基礎になっている。

 
 いまの館主の齊藤家が松風樓を入手したのは1921(大正10)年のこと。初代主人は齊藤藤一郎。古い写真を見ると肩幅の広い大柄な人物である。地元の相撲では東の横綱だった。

 
 松風樓は2代目の武吉の時代にかけて次第に拡大した。西に隣接する2軒の遊郭を入手し、その遊郭を曳家するなどして庭を作り、ほぼ今の形になったのは1958(昭和33)年ごろである。直前に売春防止法が施行され、松風樓は料亭としてスタートしていた。武吉は遊郭のような「樓」が付く名称を嫌って「松風園」に変えたが、現主人で4代目の文治さんが再び「松風樓」に戻した。当初からの伝統を大切にしたかったのだ。

 
 建物は間口約57㍍、奥行約36㍍の敷地いっぱいに立つ。2つの中庭を囲んで東棟と西棟に大別でき、宿では東棟を本館と別館、西棟を離れとも呼んでいる。3分割できる宴会場を除くほとんどが登録有形文化財であり、2つの蔵も文化財登録されている。14の客室のうちおおむね6室を宿泊用、8室を食事用に使い、ほかに宴会場が2室ある。各室の造りはすべて異なるが、とくに凝っているのはさくらの間とうずらの間だ。どちらも金沢から大工を呼んでしつらえたという。

 
 さくらの間は入り口に軒庇をつけ、輪切りの大木を飛び石風に置いた踏込玄関を設ける。本間は小ぢんまりした6畳だが、天井は格天井風に煤竹の棹を組み、大きな節を随所に残した天井板の風雅な造り。床柱は皮付きの桜丸太で、落し掛けには虫食いの自然木を用いた。自然木のうろを生かした透かし欄間もある。あまりの凝り様を見て、泣きだした客もいたという。

 
 うずらの間は踏込が杉皮を丸竹の棹で抑えた天井、次の間が網代組の天井で、本間の天井は四囲に煤竹を帯状に回し、中央は網代組にして洒落た。板床の床柱は吊柱で、書院障子風の下地窓がある。金沢大工の意気込みが感じられるようである。

 
 このほか夕映の間はごつごつした木肌を残した床框と筆返しのある違い棚など、落ち着きと遊びが適度に感じられる客室。井波彫刻の欄間がある鷹の間、踏込み床に細い煤竹の床柱を付けた雲井の間も面白い。

 
 女将の美華子さんは、建物の見方などを客や出入りの職人に教えてもらうことが多いという。「大事にしてね」。客の言葉を大切にして、これからも建物を守るつもりだ。

 

コラムニスト紹介

旅のルポライター 土井 正和氏

旅のルポライター。全国各地を取材し、フリーで旅の雑誌や新聞、旅行図書などに執筆活動をする。温泉、町並み、食べもの、山歩きといった旅全般を紹介するが、とくに現代日本を作る力となった「近代化遺産」や、それらを保全した「登録有形文化財」に関心が強い。著書に「温泉名山1日トレッキング」ほか。

 

 

 

「観光革命」地球規模の構造的変化(208)SDGsの先進都市

2019年3月10日(日) 配信 

「持続可能な開発目標(SDGs)」の実現に向けた先進都市の取り組みが加速化

国連の総会で2015年に採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の実現に向けた先進都市の取り組みが加速化している。SDGs(Sustainable Development Goals)は持続可能な発展のために各国が30年までに達成すべき目標として採択。17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)から成る。

 SDGsは、環境(水・衛生、気候変動、海洋資源、陸上資源)が最も基礎的な層で、次いで社会(貧困、飢餓、健康、教育、ジェンダー、エネルギー、まちづくり、平和)の層、そのうえに経済(成長・雇用、イノベーション、不平等、生産・消費、パートナーシップ)の層、という3分野が階層化した構造になっている。グローバル目標実現のためには、国レベルに加えて、国内各地域での取り組みが重要になる。日本政府はすでに実施指針やアクションプランの策定を行うと共に、「ジャパンSDGsアワード」表彰を開き、「SDGs未来都市」選定なども行っている。

 「日経グローカ」誌は815市区を対象に、「環境」「社会」「経済」のバランスのとれた持続可能な発展という視点で、市区の「SDGs先進度」評価を行った。全国市区の「SDGs先進度」総合順位のベスト10は①京都市②北九州市③宇都宮市④豊田市⑤岡山市⑥相模原市⑦さいたま市⑧板橋区⑨堺市⑩名古屋市――の順。

 総合評価でトップの京都市は、地球温暖化対策やゴミ減量に取り組み、省エネ意識の醸成やLED照明への切り替えなどで総エネルギー消費量を大幅に削減。また「歩くまち・京都」を標榜し、人と公共交通優先を推進している。総合2位の北九州市は、地域エネルギー拠点化の推進、環境国際協力・ビジネスの推進、女性や高齢者の活躍を促進させると共に、市民・NPO・企業・大学などが協働して地域課題の解決を推進するためにSDGsクラブを立ち上げている。総合3位の宇都宮市は、「交通未来都市」を標榜し、ネットワーク型コンパクトシティーを目指しており、22年開業予定のLRT(次世代型路面電車)を整備している。

 SDGs先進都市は持続可能なまちづくりの結果として、交流人口や関係人口の増加が期待できるので、今後のさらなる発展に注目していきたい。

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(98)おもてなし行動はお客様を見て 「常に疑問符を持ちながら」

2019年3月9日(土) 配信 

CAの出身地シールをプレゼント(画像はイメージ)

 日本航空が機内でCAの出身地シールを希望者にプレゼントしているのをご存知でしょうか。CAとの会話のきっかけづくりとして企画されたものです。昨秋に搭乗したときそれを知り、搭乗するたびに「シールをいただけますか」と声を掛けています。

 先日も「CAさんのシールは、いつまでいただけるのですか」と聞くと、「3月末までです。お集めいただきありがとうございます。どのくらい集まりましたか」と、会話が弾みました。

 その日、搭乗してしばらくすると、CAがニコニコしながら「シールを集めてくださっていると聞きました。今日の搭乗スタッフのシールを集めておきました。まだのものがあれば良いですね」と、わざわざ持ってきてくれたのには驚きました。

 地上職員からCAへのバトンリレーで、見事な応対に感動を覚えました。こうしたお客様との何気ない会話のなかから、大切な情報をバトンでつないでいくことで感動サービスが生まれるのです。

 しかし、常にバトンリレーが上手くいくとは限りません。国内線でも座席クラスによっては、食事が提供されます。しかし、私は機内ではなるべく睡眠を取るようにしていますので、ほとんど食べることはありません。

 飛行機が到着すると、出口に急ぐお客様の間をCAが逆行するように歩いてきます。どうしたのだろうと思っていると、私の前で立ち止まり「お休みのごようすでしたので、機内サービスを控えさせていただきました」と声を掛けてきました。それが出口に向かう人たちの迷惑になっていると気づいた瞬間、本当に恥ずかしくなりました。「それだけのためにわざわざ声を掛けに来てもらわなくても結構です」と何度かお願いしましたが、バトンリレーは上手く行っていなかったようです。

 休んでいたお客様に声を掛けなければ、「何もサービスをしてくれなかった、と苦情がくるかもしれない」。そのために声を掛けているように感じました。ところが、別の航空会社では、座席に着くと同じようにあいさつにきますが、そのときに食事についての質問があります。「おそらく寝てしまうと思うので、食事は結構です」と伝えると「ではお目覚めのごようすでしたら、お声を掛けさせていただきますね」と、はじめに声掛けをする仕組みと行動があります。そうすればスムーズなサービスも提供できます。

 寝ていたお客様への声掛けを、仕事としたらいけません。その行動の目的は何かを考え、どのような行動が最もお客様に喜ばれるものかを考える。いつもの行動が正しいとは限らないと、常に疑問符を持ちながらお客様と向き合いましょう。

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。