観光の役割再確認、官民の関係者約250人集う

日観振協・西田会長
日観振協・西田会長

 日本観光振興協会は1月16日、東京都港区の東京プリンスホテルで新春恒例の観光関係者新年賀詞交歓会を開いた。観光関係団体や企業、国会議員、国土交通省など官民から業界を牽引する関係者約250人が集い、日本の復興に観光が大きな役割を担うことなどを改めて確認した。

 主催者あいさつに立った西田厚聰会長は冒頭、「今年は震災による影響からの脱却に向け、全力で取り組み、日本再生元年という明るい年にしていきたい」と決意表明。観光のそれぞれの分野に対しては、「震災で最も大きな影響を受けた外国人観光客は、ようやく一昨年の水準近くまで回復してきた。しかし、海外での風評被害の払拭は、国内以上に大きな課題である。我が国の安全性が世界の人々に正しく理解され、1日でも早く多くの外国人観光客が日本を訪れてもらえるよう国をあげて取り組んでいく必要がある」と述べた。

 また、国内観光は「東北新幹線の延伸や九州新幹線の全線開通、平泉と小笠原の世界遺産登録など大変心強い明るいニュースもあり、観光復活の牽引役となった。その結果、全体としては回復基調が見えつつある」とプラスの面を語る一方、「東北地方などでは依然として風評被害により、多くの観光地が非常に厳しい状況に置かれている」と危機感も示した。

 最後に、「観光は21世紀の成長産業として、大きな期待を担っており、我われ観光関係者はその大きな役割をしっかりと踏まえ、新たな意気込みで観光の発展のために精一杯努力をしていかなければならない」と呼び掛け、締めくくった。

 来賓の室井邦彦国土交通政務官は「今年は国土交通省一丸となり、皆さんと2人3脚で観光立国を実現したい。3千万人の外国人の方を招致するという大きな国策も立てているので、もう一度素晴らしい観光国に立ち直るようがんばることを誓う」と力強く語った。

11年訪日外客数622万人、27・8%減と下げ幅過去最大

JNTOの松山理事長
JNTOの松山理事長

 日本政府観光局(JNTO)がまとめた2011年の訪日外客数は、東日本大震災および福島第一原子力発電所事故の影響により、過去最高であった前年から27・8%減少し、621万9千人となった。大阪万博の反動があった1971年を超え、過去最高の下げ幅となった。月別では4月に同62・5%減を記録したが、12月には同11・7%減までもどり、減少幅は徐々に回復している。

 訪日外客を国別にみると、26・7%で最大のシェアを占める韓国は、年間で同32・0%減の165万8千人。12月単月では前年同月比30・1%減と回復が遅れている。放射能汚染に関して非常に敏感であることと、大幅な円高ウォン安も影響している。

 中国は年間で同26・1%減の104万4千人。4月を底に8月まで4割台の落ち込みが続いたが、10月に前年同月並みに回復し、11、12月は3割台の大幅な増加となった。20日に行われた会見で、JNTOの松山良一理事長は「尖閣問題の反動を勘案しても、急速に回復している。ビジット・ジャパン事業では旅行会社・メディア関係80社102人を招請し、現地を見てもらうなど、風評被害の払拭に全力で取り組んだ。また、中国版ツイッター、ウェイボーや、新聞、雑誌などを積極的に活用した安心・安全の情報発信の取り組みも奏功した」と説明した。

 台湾は最も早く回復の兆しが見られた。米国、英国とともに12月には5%前後の減少にまで改善し、年間では2割台前半の減少率となった。

 観光客、商用客、その他(留学生、駐在員、その家族など)の目的別に推移をみると、4月のその他が8割台まで急激に増加した。これは震災発生直後、日本から退避していた人々が戻ってきたため。観光客は4月に8割台まで大幅に減少。10月も同20・4%減の40万4千人と、依然として厳しい水準にある。

 一方、11年の出国日本人数は、同2・1%増の1699万3千人となった。上期は(1―6月)は、震災の影響で同3・5%の減少だったが、7月からプラスに転じ、下期(7―12月)は同7・2%増となった。史上最高水準の円高や、「節電の夏」による長期休暇を実施する企業の増加、LCCの乗り入れなどが海外旅行の好調の要因となった。

 松山理事長は12年の訪日外客の展望について「やるべきことをしっかりやり、過去最高の861万人を超えるところを目指したい」と語った。

12年訪日目標は900万人、観光庁長官「過去最高目指す」

 観光庁の溝畑宏長官は1月20日の会見で、2012年の訪日外客数の目標について「過去最高を記録した10年の861万人を上回る900万人を目指す」と語った。

 2010年6月の成長戦略会議で閣議決定された目標値「2019年末までに訪日外客数2500万人」については「前提として守る」としたうえで、その過程にある13、16年の目標については「震災の影響を加味した目標に見直されるだろう」と基本計画の目標値見直しを示唆した。

 また、年末に閣議決定された観光関連の12年度政府予算案(前年度比2%増の103億3800万円)については「厳しい状況のなかでも、前年比プラスの予算を取れた。これは、『観光が日本の成長戦略の重要な柱で、東北復興・日本再生において重要な役割を担う』という国民の期待の表れだ」と一定の充足感を滲ませた。
 

<任期3月末まで延長、「日本を元気にする」>

 観光立国推進基本計画の見直しや東北観光博の開催準備などを考慮し、3月末まで任期が延びたことについては、「就任当初から、観光立国を目指し『オールジャパンで日本を元気に』と思い、一日一日全力で取り組んできた。初心を忘れずにがんばるのみ」と力を込める。早急に取り組む課題として、訪日外客数の本格回復や国内観光の需要回復、MICEの誘致推進、休暇改革などを挙げ、「これらをスピーディーに行い、東北復興、東北観光需要回復のテコ入れをする」と語った。

 溝畑長官は、当時の国土交通大臣である前原誠司氏の強い推薦により、2010年1月4日、本保芳明前長官の後任として就任している。

第37回「100選」表彰式開く、パーティーは盛大に550人

総合1位に輝いた加賀屋の小田真弓女将
総合1位に輝いた加賀屋の小田真弓女将

 旅行新聞新社が主催する「第37回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」および「第32回プロが選ぶ観光・食事・土産物施設100選」「第21回プロが選ぶ優良観光バス30選」の表彰式と祝賀パーティーが1月20日、東京・新宿の京王プラザホテルで開かれ、観光関係者約550人が出席した。

 主催者あいさつで石井貞徳社長は「37回と歴史を刻み、今や、旅行業界のみならず一般の旅行者の方まで発表を待ち望んでくれているイベントに大きく育ったのは、ひとえに皆様のおかげ」と感謝を述べ、「昨年は震災があり非常に厳しい一年だったが、後ろ向きでは何も始まらない。私どもも今年は新しく、ピンクリボンのお宿ネットワークを展開するなど、紙面以外にも動いていく。有意義な情報とイベントで業界を盛り上げていきたい」と力を込めた。

なごやかな雰囲気に包まれたパーティー
なごやかな雰囲気に包まれたパーティー

 32年連続でホテル・旅館の総合1位に輝いた石川県和倉温泉加賀屋の小田真弓女将は「この37年続くすばらしい賞をいただけたのは、現場でお客様に接する従業員全員のおかげだと思っている。時代に即し、お客様一人ひとりに合わせたサービスなどを勉強し、次世代にもつなげていきたい」と喜びを語った。

 「優秀バスガイド」「もてなしの達人」の表彰式は2月24日、東京都港区の世界貿易センタービル内・浜松町東京會舘で午後1時から開く。

No.300 地方中小鉄道の観光利用 - “貴腐イノベーション”で蘇生へ

地方中小鉄道の観光利用
“貴腐イノベーション”で蘇生へ

 地方中小鉄道の大部分は厳しい経営状態にある。しかし、地域が一体となり観光要素を付加した「観光鉄道」として生まれ変わることによって、今後新たな可能性を見出すことができる――。崎本武志氏(LEC東京リーガルマインド大学総合キャリア学部総合キャリア学科専任講師)は、地元の足や都市間輸送の役割としては陳腐化した地方中小鉄道を、「観光鉄道」という"貴腐イノベーション"によって蘇生・再生することで、地域の活性化につながると語る。その真意を探る。

【増田 剛】

<観光鉄道に新たな可能性>

 ――全国の地方中小鉄道各社の現状をどのようにみていますか。

 地方中小鉄道で黒字経営している路線はわずか2割程度と、非常に厳しいものがあります。原因は数多くありますが、主なものとしてはモータリゼーションや地域の過疎化・スプロール化、少子高齢化などが挙げられます。苦しい経営を余儀なくされている地方中小鉄道ですが、地道な経営努力や地方公共団体の効果的な援助、観光要素の導入などにより健闘している事例もあります。

崎本 武志氏

※ 詳細は本紙1450号または日経テレコン21でお読みいただけます。

無個性でいいのか ― 作り手の意地を見たい(2/1付)

 「最近の若いオトコのコは街で走っているクルマを見ても車種の判別もつかないらしい」というようなテレビ番組を見たことがある。「俺たちが若いころは、日産スカイラインや、マツダRX―7には憧れたものだ」と昔を懐かしむ大人のオトコたち。「もっと、夢を見なきゃだめじゃないか。若いオトコのコは不甲斐ない」という歯がゆい思いもあるだろう。

 しかし、実際、今街を走っているクルマを見ても、どこのメーカーの何という名前のクルマだか、さっぱりわからない。そして知りたいという気持すらも起らない。丸っこくて、色もクリーム色だか、はっきりとしない色で、近づいてロゴマークを見るまで区別の仕様がない。本当にこれでいいのだろうか?

 自分たちが若いころは、上の世代が個性的な、オトコ心をくすぐるデザインのクルマを作ってくれた。しかし、自分たちがものづくりをする世代になったときに、どこのメーカーかも判別できないような、気の抜けたクルマしかつくれないで、「最近の若い世代がクルマに関心がない」もないだろう。どこかのメーカーが作って売れたものを真似てばかりいるから、次第に似たようなものになり、無個性化してくる。ものづくりは細部にこそ魂が宿るものなのに、細部があまりに粗末なデザインばかりである。

 これは、多くの産業や業種にも当てはまる。旅行会社のツアーだってそうだろう。「若者が旅行に行かない」と業界全体で頭を悩ましているが、どこかの旅行会社が当たったツアーを「一時的に売れる」という理由だけで、そのまま安易に真似したことが、やがてどこの旅行会社の主催なのかわからない類似ツアーばかりが溢れるようになった。哀しいことである。

 旅館だって同じである。どこかの宿がリニューアルしてお客が入ったからといって、似たようなデザインを宿に持ち込んでは、自分たちのDNAを薄めてしまうだけではないか。どうして「絶対に、ほかの宿と似たような宿にしない」という決意が湧き出てこないのだろうか。

 洋服だってそうである。ユニクロのような大量販売品が売れると、似たようなデザインのものが横溢する。ファッションの独自性が次第に失われつつある。売れるものばかりを追わず、“作り手の意地”を見たいものだ。

(編集長・増田 剛) 

“ご当地イズム”高まる、12年のトレンド予測

沢登次彦氏
沢登次彦氏

 リクルートは1月10日、「2012年のトレンド予測」発表会を行い、旅行・住宅・日常消費・美容・進学・就職分野の12年の傾向について発表。メディア関係者100人以上が集まった。旅行分野ではじゃらんリサーチセンターの沢登次彦センター長が登壇し、2012年のキーワードとして「ご当地イズム」の高まりをあげた。

 震災をきっかけに「日本を誇る」「リアリティを重視する」消費が活性化。各地域の個性に注目が集まり、旅行はより「地域生活」への関心が高まると予測した。背景にあるのは震災後の価値観の変化。生活のなかで力を入れたいことに対して「人に役立つ行動をする生活」「物事の本質や原点に目を向ける生活」「物事のリアリティや実体験を重視する生活」と答える人の割合が増え、本質や原点を大切にする傾向が強まった。

 「温泉や露天風呂」「宿でのんびり過ごす」などが主流だった旅行目的では「地元の美味しいものを食べる」がトップになり、ご当地を体感する旅が人気の傾向になっている。消費者は、街コンやご当地アイドル決定戦、ゆるキャラグランプリなど「ご当地イベント」に興味関心を示し、地域側は気軽な「ご当地体験」を売りにした観光商品開発の加速が予測される。

 ご当地イズムの事例には、富山県の朝日海岸にある地元民の遊び場ヒスイ海岸で天然ヒスイ石拾いと地元漁師飯の「たら汁」を食べるプランや、青森県金木町で毛布1枚で吹雪を体験するツアー、三重県鳥羽市で海女漁の話を聞きながら地元で捕れた魚介類を食べる海女小屋体験などを紹介。いずれも大盛況だったという。

世界第2位の741件、国際会議開催件数

 国際団体連合(UIA)が算出した2010年の国際会議開催件数によると、日本は741件で、アメリカの936件に次ぐ世界第2位を記録した。

 日本のこれまでの過去最高記録は世界第4位となった08年の575件だったが、10年は大幅に増加。件数飛躍の要因は(1)アジアの学会の成長に伴うアジア地域の会議需要の増加(2)APEC、COP10の関連会議開催という特需需要の発生(3)10年を「JAPAN MICE YEAR」と位置づけ、各種の誘致活動による国内会議の外国人参加者数の増加――。などが挙げられる。

 06年の観光立国推進基本計画で、日本の国際会議開催件数の目標を05年の168件(旧基準)から11年には252件(旧基準)と定めたが、10年の741件を旧基準に当てはめ再集計すると、目標値を上回る309件となり、目標を1年前倒しで達成した。

 都市別では、シンガポールが1位で725件。東京は7位で190件。

震災後、若年層に動き、12年の訪日客790万人を予想

12年の動向を予想する黒須宏志氏
12年の動向を予想する
黒須宏志氏

 2011年12月19日に開かれた財団法人日本交通公社主催の「第21回旅行動向シンポジウム」で、主任研究員の黒須宏志氏が旅行マーケットの最新動向と2012年の展望について講演を行った。12年の海外旅行者数は前年比2・7%増の1740万人、訪日外客数は同26・5%増の790万人、国内の観光性の旅行者数は同2―3%増と予測した。

 2011年は震災の影響を受けつつも、国内宿泊旅行のボリューム推移をみると、統計の取れた4―9月中、6―8月で前年を上回るなど、「旅行需要は増えている」と総括。過去1年間の宿泊旅行参加率は10年12月調査の64%に対し、11年11月調査で71%と増加。過去1年間の宿泊旅行回数では10年12月調査の2・5回から、11年11月調査の2・7回と微増した。

 海外旅行をみると、9・11やSARS、リーマンショックなどと比べると、東日本大震災の影響は少なく、「むしろプラスに推移している」とした。また、昨今進む予約のオンライン化が2011年は加速しているという。予約チャンネルの変化では近年、宿泊施設への電話などは減少し、旅行会社のホームページが加速度的に増加。旅行会社の店頭や電話、宿泊施設のWebサイトは横ばいとなっている。

 近年いわれる若年層の旅行離れについては、震災後の変化をあげ新しい動きを紹介。震災後6カ月の出国率をみると、20代と30代前半で高い伸びを示し、「若年層は、お金がないが、旅行のモチベーション自体は高い」と語った。一方、リーマンショック後のトレンドであったシニア層はマイナスで推移した。また、アンケート結果から若年層の意識の変化がみられ、「自分磨き」など旅行の意味の変化を指摘。2012年も、一過性の消費から「蓄積」になるような消費に興味が移り、旅行を「自分の経験を積み増していくような営み」として再発見しようとする動きが出てくると予想した。

 2012年の海外旅行者数は前年比2・7%増の1740万と予測。燃油サーチャー高騰の影響で近場優位の傾向、欧州ではFITシフトの継続の見通し。

 国内旅行は観光性の旅行者数は前年比2―3%増と予測。「実質重視」のマインドが強まり消費単価は下落傾向になるという。そのほか、出発2―3日以内の間際予約、出発2週間以内のオンライン予約が増加する傾向にあり、宿を選ぶ基準では「リピーターだから」という理由が増加傾向にあるという。

 訪日外客数は前年比26・5%増の790万人と予測。11年に比べ飛躍的に回復するも、震災前の水準までの回復は難しいという。

長崎―上海、2月29日、運航開始、HTBクルーズ

長崎ー上海を結ぶオーシャンローズ号
長崎ー上海を結ぶオーシャンローズ号

 長崎県佐世保市のハウステンボスのグループ会社・HTBクルーズ(山本宰司社長)は昨年12月27日、長崎―上海航路に運航する低価格旅客船の第1便を長崎発が2月29日、上海発が3月3日と発表した。出航時間は長崎が午後6時、上海午前10時。

 29日(長崎発)から3月14日(同)は週1往復、16日(上海発)以降は週2往復運航する。ただ、出発曜日、時間が固定される定型運航方式はとらない。

 片道運賃(燃油サーチャージ料金、国際港湾利用料金別)は1人9800円で、14日前の早割りは7800円。プレミアム座席利用は3千円の追加が必要。個室は窓なしのインサイドから窓ありのスイートまで5タイプあり、料金は1室1万5千円―6万4千円。

 レストランでの食事は朝、昼、夕の3食セットをエコノミー2千円、スタンダード5千円、ハイグレード1万円の3種類用意。

 なお予約は1月6日から受け付けている。