創立60周年盛大に、茨旅協

木村進会長があいさつ
木村進会長があいさつ

木村会長「さらに前進」

茨城県旅行業協会(会長=木村進・木村トラベル社長)は1月24日、群馬県・草津温泉の草津白根観光ホテル櫻井で、創立60周年記念式典を開いた。会員や賛助会員、協会関係者約200人が参加した。記念講演は鈴木宗男新党大地代表が「わが道・天国と地獄を見た男」と題した講演を行った。

 

 式典に先立ち、木村会長は「60年という長い歴史を振り返り、会員も増え、発展できたのも諸先輩や、会員、賛助会員の協力のおかげであり、感慨ひとしお」と述べた。さらに、「創立60周年を契機に今まで支えてくれたお客様、関係者に感謝の気持ちを忘れることなく、さらに前進していきたい」と誓った。

 来賓として、二階俊博全国旅行業協会会長の代理として鈴木明治副会長をはじめ、國谷一男全国旅行業協会関東地方協議会議長・栃木県旅行業協会会長、武田将次郎茨城県旅行業協会賛助会会長、武井哲郎群馬県旅行業協会会長がそれぞれの立場で祝辞を述べた。

 このほか、木村茂男全国旅行業協会参与、浅子和世埼玉県旅行業協会会長、斎藤忠義千葉県旅行業協会会長、玉川明茨城県空港対策副参事、黒岩信忠草津町長、山田寅幸草津温泉観光協会会長らが来賓として出席した。

 式典では協会創立60周年を期して、会員、賛助会員の特別功労表彰も行われた。

会長賞はNOEに、東北の企画コンテスト(JATA復興支援プロジェクト)

吉川委員長(右)とエヌオーイーの林田社長(中央)
吉川委員長(右)とエヌオーイーの林田社長(中央)

 日本旅行業協会(JATA)は1月30日、昨年12月に実施した「JATA東北復興支援プロジェクト」に参加した会員が、東北の企画を競う商品企画コンテストの結果を発表した。132コースの応募のなかからJATA会長賞にはエヌオーイーの岩手県の商品が、国内旅行推進委員長賞にはジャルパックの山形県の商品が選ばれた。

 昨年12月3、4日の1泊2日で実施したJATA東北復興支援プロジェクト「行こうよ!東北」は、会員会社の社員など約1千人が東北の各県に分かれて視察を行い、震災以降の変化や新しい観光スポットについて情報収集を行った。コンテストはこの成果として、具体的に東北への旅行需要拡大をはかるために実施するもので、優秀企画の12コースは実際に商品化される。

ジャルパックの二宮社長(右から2人目)
ジャルパックの二宮社長(右から2人目)

 選考は(1)企画内容が斬新で、東北の新たな魅力を引き出しているか(2)円滑な旅程スケジュールか(3)代金設定がリーズナブルか――の3点を中心に、全132コースのうち各県2コースずつ、計12コースを各県賞に選出。そのなかから、JATA会長賞としてエヌオーイーの「いわて・みやこソウルフード&B級グルメ満喫!コンパクトでも内容ギッシリ1泊2日」と、国内旅行推進委員長賞としてジャルパックの「高畠・楢下宿と50年に一度の御開帳『山寺』を専門家と巡る旅」を表彰した。

 発表同日に開いた表彰式で、JATA副会長で国内旅行推進委員会の吉川勝久委員長は「これを契機に我われJATAの旅行会社それぞれが、しっかりと東北地方へ送客をしていきたい。今後、どのようなことができるかは検討中だが、旅の力での東北復興は継続していかなければならない」と東北支援に今後も注力することを語った。

 また、表彰を受けたエヌオーイーの林田建夫社長は、「JATAがこれほど大きなプロジェクトを行ったことはこれまで記憶になく、それだけ東北に懸ける想いが我われに伝わってくる。大災害から2年近くが経とうとしているが、東北はまだまだ復興途上だ。この企画を商品化して、さらに復興の一助となればと思っている」と述べた。ジャルパックの二宮秀生社長は「この企画を含めてしっかりと商品化し、送客をすることで本業である旅の力で復興支援の後押しをさせていただきたい」と語った。

 表彰式に出席していた岩手県東京事務所の大久保立氏に企画について聞いたところ「被災地に加え、B級グルメもあり岩手のディープな魅力を盛り込んでいただいた」とコメント。山形県東京事務所の須藤英克氏は「山寺は50年に一度の御開帳なのでアピールできてうれしい。期間は4月27日―5月31日と短いが、多くの人に訪ねてもらいたい」と話した。

 2社以外の優秀賞は次の各社。

 【青森県賞】ユーラシア旅行社▽びゅうトラベルサービス【秋田県賞】近畿日本ツーリスト▽イーホリデーズ【岩手県賞】毎日企画サービス【宮城県賞】京王観光▽ユーラシア旅行社【山形県賞】風の旅行社【福島県賞】クラブツーリズム▽日本旅行

前橋ドームに5千人、地旅大賞の表彰式も(ANTA国内観光活性化フォーラム)

二階俊博会長があいさつ
二階俊博会長があいさつ

 全国旅行業協会(ANTA、二階俊博会長)が主催する「国内観光活性化フォーラムin群馬」が1月23日、グリーンドーム前橋(前橋市)で開かれ、全国の旅行会社など約2千人と一般客約3千人の合計5千人が集まった。今年は初めて観光・物産のPRブースを一般開放し、地元紙への折り込みチラシなどでPRした結果、一般客が大勢来場した。

 開会式で二階会長は「ようやく東北を中心とする東日本の観光復興の兆しが見えてきたところ。このフォーラムを全国津々浦々で開き、観光の輪を広げていきたい」と語り、開催都市群馬について「群馬は観光資源がたくさんあり、発展させることができる。このフォーラム後に群馬の観光がより活性化するよう、皆で群馬に送客をしよう」と呼びかけた。

福田康夫元首相
福田康夫元首相

 群馬が地盤の大会名誉実行委員長の福田康夫元内閣総理大臣は「群馬は東京から1時間強と近く、ここ前橋から車で30、40分も行けば、たくさんの温泉地がある。全国から集まっている会員の皆さんはぜひ全国で群馬をPRしてほしい」と呼びかけ、「二階会長は、9・11の際はブッシュ大統領の依頼でニューヨークへ2千人の訪問団を連れ、靖国問題で日中関係が揺れたときには6千人を北京へ連れていった。外国からの信頼も厚く、観光業界で果たしてきた役割は大変大きい」と二階会長を讃えた。そのほか、来賓の井手憲文観光庁長官や大澤正明群馬県知事、山本龍前橋市長があいさつをした。

 シンポジウムでは、井手長官が「国内観光旅行の推進」について講演し、東北観光推進機構の長谷川博樹国内事業部長が「東北の観光の現状」について報告した。

地旅大賞を受賞した日本海トラベルの後藤紀社長
地旅大賞を受賞した日本海トラベルの後藤紀社長

 第3回地旅大賞の表彰式では、大賞を受賞した日本海トラベルの後藤紀代表らへ株式会社全旅の池田孝昭社長から賞状が手渡され、後藤社長は「『地旅』は本当に小さな旅。今後も地元のボランティアガイドと一緒になって楽しい旅を作っていきたい」と喜びを語った。

パネリスト
パネリスト

 続いて、コーディネーターにまちづくり観光研究所の奥坊一広所長、コメンテーターに全旅の池田社長を迎え、青森地域社会研究所の末永洋一特別顧問、井門観光研究所の井門隆夫代表、五木田・三浦法律事務所の三浦雅生弁護士、群馬女将の会の塚越裕子会長の4人がパネリストとして「『地旅』と地域活性化の方向性」についてディスカッションした。末永氏は、「地元の人しか知らない体験・物語をどう商品化していくのか。地旅は地元に密着した旅行会社じゃないと作れない」とANTAが地旅に取り組む意義を語った。井門氏は「これからの日本経済・観光を支えるのは中小企業。大手旅行会社は2、3年で転勤する人ばかりで、その土地の良さを売る企画力はない。ずっと地元にいる中小の旅行会社なら地元の良さを知りつくし、企画力がある」と強調。「観光協会が着地型旅行に取り組み始めているが、2次交通の手配ノウハウがなく、店終いも早く、最少催行人数も高くてなかなか良いものができず、(1)そば打ち(2)農業体験(3)まち歩き――のありきたりな3つしかできない」と現状を指摘し、「その点旅行会社なら手配力もある。もっともっと着地型商品に積極的に取り組んでほしい」と語った。

 翌日には、富岡製糸場や城下町小幡、ブラジル町大泉など県内各地をめぐる7コースのエクスカーションが実施された。

 次回の「第10回国内観光活性化フォーラムin和歌山」は14年2月11日に和歌山ビッグホエールで開かれる。

 第3回地旅大賞の各受賞商品は次の通り。

 【大賞】「古代ロマンが漂う田舎でボランティアガイドが活躍!歴史人に触れ合い古代の自然に触れ合う旅」日本海トラベル(山形県)

 【優秀賞】「郷土愛深い『語り部』がご案内――町家で食す郷土料理と華麗な犬山祭屑山」ツアー・ステーション(愛知県)▽「四季折々の美しい景観と村人との触れ合いを何度も楽しむシリーズの旅――南阿蘇村7不思議の旅」アースランド観光(熊本県)

 【特別賞】「お祝い膳にて還暦祝い――廃校利用同級会プラン」アールエイチ企画(福島県)▽「役者がご案内する浅草ガイドツアー全3コース」セグラスツーリズムエージェンシー(東京都)▽「三嶋大社正式参拝ツアー」三島市観光協会(静岡県)▽「環境船めぐみで行く『冬の湖北・余呉の食と暮らし』を訪ねる旅」地域観光プロデュースセンター(滋賀県)

13年訪日1千万人へ、在外公館との連携強化も、井手憲文観光庁長官

 観光庁の井手憲文長官は1月25日に会見を開き、2013年の訪日外客数目標を1千万人とすることを発表した。

 井手長官は12年の訪日外客数が過去最高値の2010年に次ぐ837万人となったことを受け、「目標の900万人には届かなかったが、震災前のレベルまで回復した」と語った。13年は「回復から飛躍へ」と1千万人を目標に掲げる。1千万人に向け「東アジアと東南アジアを大幅に伸ばさないといけない」と力を込めた。

 韓国市場については「原発の風評被害が減り、ウォン安の悪影響も落ちつき、だいぶ回復に向かってきたところ。今年は本格回復を目指す」と述べた。先般策定した「日韓地方観光交流促進計画」にのっとり、地方への訪日客誘客をはかっていく。

 中国市場は「すぐに団体客が本格回復するのは難しい」との見方を示しつつも、「個人旅行客と、インセンティブ旅行客やビジネス客を増やしていきたい」と語った。今までは沿岸部へのプロモーションが多かったが、今後は内陸部へもプロモーションを拡大していくという。また、先刻、北京を訪問し邵キ偉中国国家旅游局長と会談したことを報告。「2国間で問題はあるが、観光交流を伸ばすことで他の問題の解決へつなげる」という共通認識を確認し、邵局長も「民間交流の大切さ」をあげたという。

 今年とくに力を入れるという東南アジア市場については「12年に急成長したので、今年はさらに注力し増やしていく」と強調した。1月21日にラオスで開かれた「第12回ASEAN+3観光大臣会合」には鶴保庸介国交副大臣とともに井手長官も出席。ASEAN10カ国すべての国と個別会談を行ったことを報告し、「すべての国と個別会談をしたのは日本だけではないか」と手ごたえをのぞかせた。1月29日に閣議決定された13年度予算案では「東南アジア・訪日100万人プラン」として5億9900万円を計上し、オールジャパンによる訪日促進プロモーションも展開予定だ。

 欧米市場については、「成熟した感がある」とし、「これまで通りのやり方ではなく工夫が必要。欧米市場はクオリティを高めて、顧客満足度をあげる必要がある」と指摘した。

 また、13年は在外公館や日系企業などとの連携強化を目指す。「取り組みの弱い大使館には活を入れる」とインバウンドにおける在外公館の重要性の認識を示した。さらに、訪日ブランドの確立と発信強化を目指し、今春までを目途に、メンバーに外国人を入れた日本ブランド確立への勉強会を立ち上げることを明かした。 

観光関連に102億円、復興枠5・8億円で福島支援も(13年度予算)

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 2013年度政府予算案が1月29日に閣議決定され、復興枠を含む13年度の観光関連予算は12年度予算(103億3900万円)比1%減の102億3200万円となった。厳しい財政状況を受けた予算編成となったが、何とか100億円の大台は確保。このうち、観光庁計上分は同3%減の96億5500万円で、復興庁計上の復興枠は同73%増の5億7700万円となった。9月にまとめた概算要求では、12年度予算の8%増となる111億7700万円を要求していた。

【伊集院 悟】

 予算項目は(1)訪日外国人3000万人プログラム(2)観光を核とした地域の再生・活性化(3)観光産業の再生・活性化(4)ワークライフバランスの実現に資する休暇取得の促進(5)観光統計の整備――の5本柱と、復興枠の(1)東北地域観光復興対策事業(2)福島県における観光関連復興支援事業――の2事業。

 事業別にみると、「訪日外国人3000万人プログラム」は、前年度比1%減の82億800万円。このうち、中核となる訪日旅行促進事業(ビジット・ジャパン事業)は、同11%増となる54億9100万円となった。「16年インバウンド1800万人」達成へ向け、訪日個人旅行の促進と国際会議などのMICE推進、送客元の多様化をはかり、震災や外交関係などの外的要因の影響を受けにくい訪日外客構造への転換を目指す。また、現地旅行会社と連携する現地旅行会社向け事業、在外公館などと連携する海外現地オールジャパン連携事業、自治体や経済界と連携する地方連携事業を柱に、質が高く裾野の広い誘客をはかるためオールジャパンによる連携を強化していく。あわせて、現地消費者向けの情報発信と観光客目線での風評被害対策で震災により傷ついたイメージの改善と競合国と差別化された訪日ブランドの強化を狙う。

 新規事業「東南アジア・訪日100万人プラン」には5億9900万円を計上。震災後も高い伸びを示し、2012年訪日客78万人の東南アジアに対し、オールジャパンによる訪日促進プロモーションで、13年の訪日客100万人を目指す。

 訪日外国人旅行者の受入環境整備事業は同67%減の2億8千万円。日本政府観光局(JNTO)の運営費交付金は同3%減の18億3700万円となった。

 「観光を核とした地域の再生・活性化」分野は同45%増の4億3千万円と大幅増となった。新規事業の「観光地域ブランド確立支援事業」には9月の概算要求時よりも1億円ほど多い3億4300万円を計上。国際競争力の高い魅力ある観光地域づくりを促進するために、観光地域づくりプラットフォームを有する観光圏が地域独自の「ブランド」確立に向けて取り組むのを支援する。GPS機能なども活用し、観光客の行動・動態などの調査・分析を実施しマーケティングに力を入れる。

 4900万円を計上した新規事業「観光地域評価事業」では、観光地域づくりに取り組む地域での課題や改善点などを明確にするため、多面的かつ客観的な指標による評価制度を構築し、恒常的な評価・分析にもとづくコンサルティングを行う。

 「観光産業の再生・活性化」分野では同17%増の1億9900万円を計上。このうち「ユニバーサルツーリズム促進事業」は前年度比4・36倍の3900万円、滞在交流型観光の推進をはかる「地域観光環境改善事業」は同6・58倍の9900万円となり、13年度に力を入れていく事業であることがうかがえる。

 概算要求より3千万円少ない2千万円の計上となった新規事業「地域宿泊産業再生支援事業」では、経営悪化などに直面した地域の宿泊産業と、観光経営や地域づくりの知見を蓄積した、意欲ある地域・近隣の大学を結びつけ、地域全体の力を結集し、宿泊産業が自立して継続的に再生できる仕組みづくりを目指す。また、安全管理体制の構築・充実に向けた調査・検討を行う新規事業「旅行の安全確保・向上方策検討調査」は2500万円となった。

 7千万円を要求していた「地域観光イノベーション促進事業」は予算計上を見送られた。

 「ワークライフバランスの実現に資する休暇取得の促進」分野は同80%減の1600万円。家族旅行の需要喚起のための「柔軟な学校休業の設定に関する調査事業」は1千万円を要求していたが、今回見送られた。

 12年度に調査を終えた「観光統計の整備」は同42%減の5億1800万円となった。

 また、復興庁計上の「復興枠」では、復興基盤が整いつつある太平洋沿岸エリアの旅行需要回復と、東北観光博の仕組みを踏まえた滞在交流型観光を支援する「東北地域観光復興対策事業」に1億9900万円、福島県が実施する風評被害対策と震災復興に取り組む観光関連事業に補助する「福島県における観光関連復興支援事業」に3億7800万円を計上した。

No.331 鶴雅グループ - 地域に根差した“開拓精神”

鶴雅グループ
地域に根差した“開拓精神”

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客様の強い支持を得て集客している旅館がある。なぜ支持されるのか、その理由を探っていく「いい旅館にしよう!」プロジェクトのシリーズ第9弾は、鶴雅グループの大西雅之代表取締役社長が登場。産業技術総合研究所の工学博士・内藤耕氏との対談で、大西社長は多店舗展開のメリットや、(1)ひとり旅(2)ペット同伴(3)長期滞在(4)海外のFIT旅行をしっかりと取り込み、新たな北海道滞在型リゾートを目指す構想を語った。

【増田 剛】

 

 

 

≪「いい旅館にしよう!」プロジェクト≫ シリーズ(9)
鶴雅グループ

【対談者】

大西 雅之(おおにし・まさゆき)氏
鶴雅グループ 代表取締役
×
内藤 耕(ないとう・こう)氏
産業技術総合研究所サービス工学研究センター副研究センター長(工学博士)

 

■大西:釧路で小さな商人宿を営んでいましたが、父が阿寒湖温泉で旅館を始めたのが1955年。私は旅館としては4代目、観光旅館では2代目となります。

 26歳で私が旅館に戻った1981年のころは8畳間中心の136室。客室と宴会場しかなく、大浴場もそれほど力を入れていない状態で、最初に父から命じられたのは越冬資金を銀行から借りて来ることでした。木造から初めて鉄筋の建物にしたのが1970年で、その後少しずつ客室を増やし193室になったときに念願の1日に1千人宿泊を達成させました。つまり、8畳一間に5人を詰め込んでいた計算です。当時は「顧客満足」とか「品質向上」というような言葉は会社にはなく、「どうしたら満館にできるか」ということばかりを考えていました。

 

 

 

 

※ 詳細は本紙1492号または2月15日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

出張のひとり旅 ― 温泉旅館に泊まりたい

 先日、岡山県倉敷市に出張で訪れ、翌日に兵庫県・城崎温泉に出向くスケジュールだったので、その途中にある大阪や京都のビジネスホテルではなく、有馬温泉で宿を取ろうと思い、インターネットで検索してみたのだが、有馬温泉には出張族が素泊まりできるようなプランが見つからず、諦めてしまった。実際にはビジネスマン向けの出張プランはあるのかもしれないが、私の探し方が悪かったのか、思うような宿に巡り合うことができなかった。

 出張宿泊費はたかが知れているので、有馬の名門旅館に泊まろうなどとはハナから思ってもいない。小さくて、古くてもいいから安い宿に泊まらせてもらい、共同湯「金の湯」で「有馬温泉のありがたい湯に私も少しだけ浸からせていただきたい」などと考えていたのである。

 業界内外のいろいろな人から、「出張ついでに温泉地の宿に泊まりたい」という声を聞く。しかし、温泉地の宿の方で、受入れを閉ざしてしまっている印象を受ける。

 宮城県仙台市に近い作並温泉の「鷹泉閣 岩松旅館」では、早くから女性のひとり旅を受け入れている宿だ。「平日の出張ついでに温泉に入りたいという女性たちの潜在需要は大きく、もったいない」と岩松廣行社長は話す。

 今回の1面でも登場する北海道の鶴雅グループの大西雅之社長も「(旅館が)これまで取りこぼしてきたひとり旅や、ペット同伴の旅行者を受け入れなければ、国内旅行市場はますます縮小するし、成熟もしない」と語っている。

 人気旅館だから頑張っているのではなく、頑張っているからこそ人気旅館なんだと改めて感じた。

 結局、その夜は有馬温泉ではなく、姫路駅前のビジネスホテルに宿泊した。姫路には以前から行ってみたいと思っていたので、ちょうど良かった。工事中にも関わらず、ライトアップされた姫路城は異様に美しかった。

 夜の姫路城見学後、アーケード内の居酒屋に入り、ビールやサワーを飲みながら、焼き鳥やら串カツやらを注文して、結構へべれけになるまで呑んでしまった。料理は旅館より上か。最後に注文した焼きおにぎりとお新香がすごく美味しかったので、帰り際に支配人にそう告げると、うれしそうな顔をしていた。

(編集長・増田 剛)

12年上期のくまモン商品、11年通年の売上高の約5倍

くまモン関連の商品
くまモン関連の商品

半年で売上高118億円突破

 熊本県の宣伝と営業部長として県産品販路拡大などで大活躍する、ゆるキャラ「くまモン」の関連商品販売が、2012年1月から6月までの半年間で118億円以上となり、11年通年の売上高25億円に対し、半年間で約5倍の売り上げとなった。県が昨年12月に発表した。

 県では2010年から、県産品の販売促進や認知度向上、観光PRなどを対象に「くまモン」図柄の無料利用許諾を行い、効果を上げてきた。とくに関連商品はぬいぐるみ、ストラップなどのグッズから、衣類、食品など2673種類を数える。

 発表した売上高は、県の許諾を受けた調査対象業者1579件のうち、回答のあった674件の合計額で、商品別では食品の98億9300万円がトップ。次にグッズが11億9100万円と続く。食品の中ではJA出荷分63億円が含まれる。

 業者を対象に売り上げへの効果を聞いたところ「大きな効果があった」(32%)、「一定の効果があった」(58%)を合わせると90%が効果があったと回答している。

 くまモン関連商品では大手食品メーカーが、昨年11月から今年2月まで熊本県の特産品「デコポン」使用のジュースを全国販売。インスタント食品メーカーも熊本の郷土料理になった「太平燕(タイピーエン)」の全国販売を1月から開始するなど、くまモン人気は衰えない。

 熊本県が県内外に配信するメルマガ登録会員数も昨年12月に2万人を突破。県では会員限定の「くまモン壁紙」や「くまモン年賀状用画像」が会員増加に結びついたと分析する。

宿泊施設から要望多数、税制、受信料、交際費など(自民党観議連総会)

細田博之会長
細田博之会長

 自民党に政権が戻ってから初となる自民党観光産業振興議員連盟(細田博之会長、117人)の総会が1月17日、自民党本部で開かれ、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会と日本旅館協会、全日本シティホテル連盟、日本ホテル協会の宿泊施設代表者らが多数参加し、13年度旅館・ホテル業界の税制改正要望やNHK受信料体系の見直し、公営宿泊施設の現状についての問題点などを提起した。
【伊集院 悟】

 細田会長は総会冒頭で、「自民党の観光産業振興議員連盟は古い歴史があり、36年前に200人でスタートし、観光業界の問題点を一つひとつ取り除いて進めてきた。これからも新しい問題と向き合い、観光業界にとって良い道が開けるよう尽力していきたい」と語った。

 

 

全旅連・佐藤信幸会長が要望内容を説明
全旅連・佐藤信幸会長が要望内容を説明

 全旅連の佐藤信幸会長は、日本旅館協会との連名による13年度旅館業界の税制改正に関する要望書の中で9つの要望を挙げた。なかでも固定資産税の軽減と、消費税の外税表示化、交際費の全額損金算入の要望を強調。固定資産税評価の経過年数は最終残存率達成年数が50年で最終残存率が20%であることを挙げ、「50年といえば東京オリンピックよりも前になる。そのような建物にまで課税するのが適正なのかどうかをしっかり考えてほしい」と訴えた。

 交際費については現状、資本金1億円以下の法人に対して損金算入額600万円までが損金となり、それ以外は認められていない。「景気低迷のなか、企業にとって円滑な事業活動を阻害している」(佐藤会長)として全額損金算入を強く要望。これには出席議員から、「宿泊業に相対営業は必須。交際費は業務上必要経費なので、課税をゼロにしても良いぐらいでは」との意見も出た。

 また、宿泊施設4団体は連名でNHK受信料体系を少なくともイギリスのBBCと同程度の料金にするよう強く求めた。出席したNHK職員の報告によれば、全体の受信料収入6千億円中、旅館・ホテルからの受信料収入は100億円にのぼる。細田会長は「NHKは収支の問題もあり、旅館・ホテルなど取りやすいところから徴収しているという側面もある。たとえば、自民党本部や一般企業でもテレビが何台あるかをNHKは把握していないのではないか」と指摘し、「旅人はテレビを見るために、旅館・ホテルに泊まるわけではないので、宿泊施設におけるテレビをどう捉えるかをもう一度考える必要がある」と話した。

 そのほか、民間と競合する公的施設(国や特殊法人が設置主体となる会館、宿泊施設、会議場、結婚式場、健康増進施設、総合保養施設、勤労者リフレッシュ施設など)の改革について、新築・増築の禁止や、官民のイコール・フィッティング(税制を含めた同一競争条件の確保)の観点から、5年以内の廃止・民営化・その他の合理化を要望。さらに、共済組合の宿泊施設の多くが、インターネット予約サイトで誰でも予約可能となっている現状などの問題点を指摘した。

取扱額2兆円へ、2020年ビジョン発表(JTB新春経営講演会)

 JTB(田川博己社長)は1月17日、東京・新宿の京王プラザホテルで2013年新春経営講演会を開き、田川社長が次の100年に向けてさらなる進化を目指す「2020年ビジョン」を、出席した旅館・ホテル関係者らに説明した。2020年にJTBグループで取扱額2兆円、営業利益400億円を目標に定めている。

 田川社長は「昨年度は創立100周年を迎えた。現状の覚悟・自信・決意をもとに、ツーリズムの新しいかたちづくりに向けて進化していく。事業パートナーの皆さんとの信頼のもとで、共存共栄を築く『2020年ビジョン』に向けて、JTBグループ178社が全力を発揮していく。変わりゆく姿に期待をしていただきたい」と語った。

 JTBグループは長期的なビジョンのなかで、ブランドスローガンを「感動のそばに、いつも。」を使用する。「2020年ビジョン」はJTBグループの中期的なゴールと位置づけている。「アジア市場における圧倒的ナンバーワンポジションを確立し、長期的・安定的な成長を可能とする基盤を完成させる」ことを基本戦略としている。田川社長は「旅行業をコアとしながら、交流や人流があるところすべてにビジネスがある。地球を舞台にあらゆる交流を創造し、ビジネスにしていく。社会から『交流文化事業のJTB』という認識が高まったときが交流文化事業の完成」と述べた。また、「2020年ビジョン」を実施する第一歩として次期中期経営計画(2013―15年)を策定。コア市場として(1)国内個人事業(2)国内法人事業(3)グローバル個人事業(4)グローバル法人事業の4つの事業領域に定義し、「『世界発世界着』にもチャレンジしていきたい」と語った。06年の分社化から10年目となる15年はグループ全体で取扱額1兆7500万円、営業利益200億円を目指す。