願書受け付けは8月9日まで、総合旅行業務取扱管理者試験

 2013年度の総合旅行業務取扱管理者試験が10月13日に行われるのにともない、日本旅行業協会(JATA)は8月9日まで受験願書を受け付けている。願書はJATA本部や地方事務局で配布しているほか、ホームページでもダウンロード可能。

 試験地は全国8都市で、東京は3会場で実施する。試験科目は旅行業法と各種約款、国内旅行実務、海外旅行実務の4科目。受験手数料は6500円。

 なお、試験結果の発表は11月22日を予定している。

 問い合わせ=電話:03(3592)1277。

MICE誘致・開催などの相談窓口、観光庁とJNTOが設置

 観光庁と、日本政府観光局(JNTO)はこのほど、地域のMICE(Meeting、Incentive、Convention、Exhibition/Event)誘致活動を支援するために、観光庁内とJNTOコンベンション誘致部に相談窓口を設置した。

 同窓口では、地方自治体やコンベンションビューロー、民間事業者をはじめ、さまざまな人からのMICEの誘致・開催に関する相談を受け付けている。

 問い合わせ=観光庁MICE担当参事官室 担当:上村、柳瀬、巽 電話:03(5253)8938、Eメール=jp-mice@mlit.go.jp▽JNTOコンベンション誘致部 担当:青山、谷 電話:03(3216)2905、Eメール=convention@jnto.go.jp

 

 

アジア旅行市場を分析、世界の業界トップが登壇(JATA旅博・国際観光フォ―ラム2013)

昨年のフォーラム

 日本旅行業協会(JATA)は、9月12―15日に東京ビッグサイトでJATA旅博2013を開催する。同イベントを構成する4大イベント(旅博〈展示会〉/国際観光フォーラム/国際商談会/顕彰事業)のうち、「国際観光フォーラム2013(13、14日)」は、8月23日まで参加者を募集している。

タレブ・リファイ氏
国連世界観光機関 事務局長

 初日13日はテーマ「アジア旅行市場分析」のもと、午後1時から5時まで、2つのパネルディスカッションを実施。当初予定していた基調講演は、国連世界観光機関(UNWTO)事務局長のタレブ・リファイ氏に加え、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)CEOのデビッド・スコーシル氏の招聘が決まったことから、世界の業界トップによる基調パネルディスカッションに変更する。日本からは主催者を代表し、JATA副会長でJTB代表取締役社長の田川博己氏が参加するほか、モデレーターに初代観光庁長官で首都大学東京都市環境学部教授の本保芳明氏を迎える。総合司会は日本交通公社主席研究員の黒須宏志氏。またとない顔合わせで、世界の旅行業界をリードする登壇者らが、急成長するアジア旅行市場と日本の旅行産業について議論する。 

 

デビッド・スコーシル氏
世界旅行ツーリズム協議会 CEO

 続いて行うパネルディスカッション「成長から成熟へ 日本人海外旅行マーケットの真価を問う~日韓台3マーケット徹底比較から明日を切り開く~」も、韓国と台湾の旅行市場で活躍するエキスパートを招き、両国の海外旅行市場と日本の海外旅行市場を比較しながら、今後の日本市場や業界の発展を考える。パネリストは太平洋アジア観光協会(PATA)CEOのジョン・コルドフスキー氏と韓国旅行業協会(KATA)会長の梁武承氏、台湾LION GROUP董事長の王文傑氏の3氏。モデレーターは、総合司会を務める黒須氏。

 「アジア旅行市場分析」は、日本を中心にした周辺アジア地域の市場としての位置付けと、デスティネーションとしての魅力や競争力を浮き彫りにするために本年度から掲げるメインテーマ。今後もJATA国際観光フォーラムの定例コンテンツとして、時勢の変化を捉えながらも継続的に議論を重ねる予定だ。

 また、2日目の14日は土曜日だが、現場の社員が参加しやすいように新たに特別シンポジウムを設定した。今回は、訪日旅行の品質向上のため、JATAが本年度から創設した「ツアーオペレーター品質認証制度」を焦点に、パネルディスカッションを実施する。時間は午前10時30分から。

 同日午後12時からは、業界の課題を5つ取り上げて、シンポジウムを開催する。テーマは「MICEマーケティング」「メディアとツーリズムプロモーション」「旅行会社が主催するツアーの安全安心をどう確保するか」「災害・テロなどによる観光訪問客落ち込みからの回復」「広域デスティネーションのプロモーションを考える」の5つ。

 国際観光フォーラムの参加登録料は、2日間全プログラム参加がJATA会員で1万円、非会員が1万2千円。1日のみの参加はJATA会員が5千円、非会員が6千円。詳細・申込みは公式ウェブサイト・国際観光フォーラムページ(http://www.b.tabihaku.jp/forum.php )から。

産学のミスマッチが露呈、「産業界が求める人材と今後の観光教育」

産業界から3人が登壇

観光教育の学長・学部長等会議

 観光系の学部・学科・コースを持つ大学は、全国で42大学46学科・コース(2012年4月時の文部科学省調べ)にまで急増したが、卒業生が観光関連産業へ就職する率はわずか16・1%と振るわない。産業界からは優秀な人材の確保が求められ、教育界からも「観光」を学んだ優秀な学生を多く輩出しているはずなのに、なぜ――。観光庁と玉川大学は7月9日、玉川大学で「観光教育に関する学長・学部長等会議」を開いた。「観光産業界が求める人材と今後の観光教育」をテーマにしたパネルディスカッションでは、産と学のミスマッチが浮かび上がってきた。議論の一部を紹介する。
【伊集院 悟】

大学側と井手長官

 はじめに議論のたたき台として、観光庁と玉川大学が全国の旅行業企業と大学へ行った企業側が求める人材ニーズと高等教育に関するアンケートの結果を報告した。アンケートは216企業、63大学に送付し、72企業、36大学から回答を得た。

 そのなかで興味深いのが、企業への調査で「新卒採用で重視している点」では「人物本位」が85%と圧倒的に多く、学生が大学で学んだ内容の「能力」や「学部・学科」はそれぞれ8%、2%とわずかだったこと。採用時に観光系大学の学部・学科を意識するのは39%で、観光産業企業でのインターンシップ経験や業界の仕事の流れへの理解は34%にとどまった。

 現行のインターンシップについては、大学側の評価が「大変有益」46%、「有益」50%、「どちらかというと有益ではない」4%と高評価なのに対し、企業側は「大変有益」2%、「有益」51%、「どちらかというと有益ではない」40%、「有益ではない」7%と、大きな差があることが分かった。

 企業側と大学側の差異に着目すると、企業への「観光系大学の教育内容と企業が求める人材像に近い項目」の質問では、「ホスピタリティ系」が50%、「人文・社会学系」が7%、「地域活性化・地域づくり系」が14%、「経営マネジメント系」が22%に対し、実際の大学での観光教育内容は、「ホスピタリティ系」11%、「人文・社会学系」26%、「地域活性化・地域づくり系」15%、「経営マネジメント系」37%と企業側ニーズと一致しなかった。

 続くパネルディスカッションは、玉川大学経営学部教授の折戸晴雄氏を司会に、初代観光庁長官で首都大学東京都市環境学部教授の本保芳明氏、東洋大学国際地域学部教授の松園俊志氏、前ユナイテッドツアーズ社長で日本旅行業協会(JATA)理事・事務局長の越智良典氏、日本ホテル常務取締役でホテルメトロポリタン総支配人の塩島賢次氏、ドン・キホーテグループのジャパン・インバウンド・ソリューションズ社長で松蔭大学観光メディア文化学部客員教授の中村好明氏、観光庁長官の井手憲文氏が登壇し、「観光産業界が求める人材と今後の観光教育」について議論した。

 初めに、本保氏が社会人と学生の交流などを強く意識した首都大学での取り組みを、松園氏がグローバルな人材教育に力を入れる東洋大学の取り組みを紹介した。

 越智氏はJATAが取り組む(1)優秀な人材を確保するリクルート活動(2)利益を生むビジネスモデルの研究――を報告。「旅行業界は人が大事」とし、リクルート活動は(1)インターンシップ(2)ガイダンス(3)就職説明会――を合同で進めていくという。「大手企業は何もしなくてもエントリシートが多く集まるが、中小はそうはいかない。中小でも独自の特色を持つ魅力ある企業は多いので、中小のリクルートに力を入れたい」と語った。

 塩島氏は新卒採用について、「大卒者には、ホテルの労務管理やグローバルコミュニケーション、マネジメント力などを求める」としたが、「一番のポイントは人物重視」と、アンケート結果との一致をみた。また、「何かに特化した人よりもバランスの取れた人」を求めるという。ホテルの現場に男性が少なくなっている現状も指摘。OBが就職セミナーを開くなど、良い人材の確保に力を入れている。

 本保氏は「産業界は良い人材確保のために努力しており、大学側も観光を学んだ学生を排出しているが、卒業生の16%しか観光業界へ就職していない現状がある。需要と供給があるのにうまくマッチしていない」と「産学間のミスマッチ」を問題提起した。また、「大学の取り組みが産業界へきちんと伝わらず、産業界が大学を正当に評価していないのでは」と産業界へ釘を刺し、「企業のニーズを正しく捉えないと、大学側に未来はない」と危機感を示した。

 松園氏もアンケート結果から、「企業側は観光系学部の卒業生を必要としていない」とし、「どういう人物像が求められるのかを確認し合わないまま観光系学部だけが増えてしまった」と現状を指摘。「溝を埋める努力が不可欠」と語った。

 越智氏も産学間のミスマッチを指摘し、「学生も企業もブランド志向が強すぎる」と分析。「何を学んだかよりも、『どこの大学で偏差値がいくつか』という物差しの方が安心して学生を採用できるのが企業側の現状」と企業側の実態を語り、「産学間のコミュニケーションを増やしていけば、ミスマッチを減らせるのでは」と提起した。

 また、中村氏は訪日外国人観光客の半数がドンキホーテに来るという現状を紹介。「訪日客のほとんどがアジア人。都市観光はグルメとショッピングなので、この2つのソリューションを高めないと観光立国は実現できない」と語った。

 最後に井手長官は「産学が連携できているように見えても、実際はコミュニケーションが取れていないことが改めて分かった。共通認識を持ち、ミスマッチを減らさなくてはいけない」と力を込めた。また、観光セクターは旅行業と宿泊業だけではなく、広い視野で観光業を捉えていく視点の必要性も強調した。

人材確保の取組強化、合同インターンシップ実施(JATA)

 日本旅行業協会(JATA)はこのほど、優秀な人材を確保するための産学連携の取り組みを強化することを発表した。観光庁が主導する「インターンシップモデル事業」への積極的な参画や、会員会社の合同就職相談会などを行う。

 インターンシップモデル事業はこれまで企業ごとに個別で対応していたが、今年は「JATA合同インターンシップ」を実施し、参加大学生のレベル引き上げや就業意欲の増大をはかる。最初の2日間はJATAでの導入教育として、業界の説明やプロのマナー講師を招いての社会人教育などを行う。その後は、業態や規模の違う2社を組み合わせて、3日間ずつ職場体験する。期間は8月19―29日までのうちの9日間。会員会社15社が9つの大学から計13人を受け入れる予定だ。参加学生の大学は観光系に限っていないという。

 また、JATA旅博2013の業界日の9月13日は、学生向けプログラム「業界概論と若手社員が語る業界魅力パネルディスカッション」を実施。若手社員が現場の生の声を届け、魅力を発信する。なお、8月16日まで参加学生を募集している。詳細はホームページ(https://qooker.jp/Q/auto/ja/student/semi/ )から。

 さらに、同日は(株)ジャタが、卒業が迫った4年生を対象にJATA会員旅行会社「合同就職相談会」を開く。参加企業は8社を予定しているが、社名は当日公表する。学生と各社採用担当者が個別面談する方式で、その場で採用することも考えているという。事前エントリーは不要。

 7月17日に開いた会見で発表を行った越智良典事務局長は、観光系大学卒業生の業界就職率が低い問題について、「企業が学生に求めるコミュニケーション能力や問題解決能力への教育が足りないのではないか」と言及。今後は産学間のミスマッチをなくすため、授業カリキュラムについても働きかけていく考えを示した。

大賞は青森商工会議所、きらり輝き観光振興表彰

 日本商工会議所は7月5日、「全国商工会議所観光振興大賞」の表彰式を行い、大賞に青森商工会議所(青森県)が輝いた。青森商工会議所は、新幹線開業を契機に官民が連携する「オール青森」の組織を設立し、事業化視点を取り入れた「古川市場のっけ丼」や「帆立小屋」など多様な観光プログラムを開発。地域資源を活かし、具体的で収益性のある事業を確立した。

 「古川市場のっけ丼」は、来場者が丼ぶりご飯を手に市場の小売店を訪れ、自分で好きな具材を選び作る究極のわがまま丼が人気を博し、年間10万人以上が訪れる新名所となった。「帆立小屋」は、会議所がモデル展開後に会員企業が事業化。旅行商品への組み入れも始まり、青森駅前の空き店舗はにぎやかな施設に生まれ変わった。

 青森商工会議所の林光男会頭は受賞者インタビューで、「市場からは当初、薄利な内容だと支持は得られていなかったが、今ではお客様を笑顔で応対し、言葉掛けなども自然とできるようになった。現在、商工会議所はサポート役となり、事業運営は市場の人たちで行っている。今後の展開が楽しみ」と話した。また、「のっけ丼」の成功例ができたことで新しい事業展開もしやすい環境になったという。「青森は魚介類だけでなく、農産物や山菜など食に関して『日本一』と自慢できる場所。国内外問わず、多くの観光客に来てほしい」とアピールした。

 青森商工会議所では今後、2015年度に先行開業予定の北海道新幹線の開業効果を活用し、青函地域や東北地域で一層の連携を進め、国内外からの誘客をはかっていく。

 そのほかの受賞会議所は次の通り。

 【振興賞】静岡商工会議所(静岡県)▽下関商工会議所(山口県)【観光立“地域”特別賞】別府商工会議所(大分県)▽延岡商工会議所(宮崎県)【奨励賞】東京商工会議所(東京都)▽蒲郡商工会議所(愛知県) 

震災復興の現状学ぶ、観光振興大会2013inいわて(日本商工会議所)

立石義雄副会頭

  日本商工会議所(岡村正会頭)は7月5日、岩手県の盛岡市民文化ホールで「全国商工会議所観光振興大会2013inいわて」を開き、約1200人が参加した。

 岩手県は、東日本大震災で甚大な被害を受けたが、少しずつ復興への歩みを進めている。復興の現状を学ぶため、大会前日には分科会を実施し、商工会議所会員や観光産業関係者などが被災地へ赴いた。大会当日は、復興において観光が果たす役割などを考察するパネルディスカッションで災害に強い観光地づくりへの理解を深めた。

 立石義雄副会頭は冒頭のあいさつで、「時間の経過により震災の記憶が風化し、被災地への関心が薄れることがあってはならない。引き続き全国の商工会議所と復興支援に取り組んでいく」と力を込めた。

 パネルディスカッションでは、「大震災が発生したときの観光客の安全確保」などをテーマに、東京大学先端科学技術研究センターの西村幸夫氏、JTB総合研究所常務観光危機管理研究室長の髙松正人氏、宝来館(釜石市鵜住居)の岩崎昭子氏、日本商工会議所観光委員会共同委員長の須田寛氏が登壇した。

(次号詳細)

女将130人が福島に集結、第24回「全国旅館おかみの集い」盛大に開く

参加女将が記念撮影

 「全国旅館おかみの集い」運営委員会と旅行新聞新社は7月25日、福島県郡山市の郡山ビューホテルアネックスで「全国旅館おかみの集い―第24回全国女将サミット2013福島―」を開いた。昨年の仙台開催に続く東北復興大会で、全国から約130人の女将が参加した。
(次号詳細)

 小口潔子運営委員長(四季彩一力)は今回のテーマ「感謝そして未来へ~笑顔と交流、勇気と前進~」に触れ、「震災を経験した運営委員の女将たちのつぶやきをすべて盛り込んだ。被災地以外からお越しいただいた皆様には違った角度からご意見をいただきたい」とあいさつした。

 夕方からは懇親パーティーを開き、来賓を含む約250人が参加した。

No.347 割烹の宿 美鈴 - 段階的に宿泊単価10倍に上昇

割烹の宿 美鈴
段階的に宿泊単価10倍に上昇

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客様の強い支持を得て集客している宿がある。なぜ、支持されるのか、その理由を探っていく「いい旅館にしよう!」プロジェクトのシリーズ第14弾は、三大民宿の一つとしても名高い「割烹の宿 美鈴」の主人・中野博樹氏が登場。工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏との対談で、“陸の孤島”とまで言われた三重県・紀伊長島の僻地で、宿泊料金を10倍にまで高めた料理などについて語り合った。

【増田 剛】

〈「いい旅館にしよう!」プロジェクトシリーズ(14)〉 割烹の宿 美鈴

■内藤:1泊2500円からスタートした宿泊料金が約40年かけて約10倍になった「割烹の宿 美鈴」。宿のスタートはどのようなものでしたか。

■中野:もともとは民宿を経営する予定ではありませんでした。名古屋の大学を卒業して、高校教師や水泳のコーチなどの道もあったのですが、大学時代に結婚した妻との間に子供が生まれたこともあり、地元の漁業組合長をやっていた漁師の父の跡を継ぐことを決意しました。

 

※ 詳細は本紙1511号または8月7日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

旅行ガイドブック ― ロマンチシズムの香りを

 自慢ではないが、子供のころ、授業の予習は一度もやったことがない。しかし、こんな私でも、旅をする前にはガイドブックを買って来て、旅先の地理や歴史、食文化などの予習を楽しみながらしてしまう。ガイドブックは「旅の先生」である。さらに、旅というものは、経済波及効果よりも、文化波及効果の方に、より大きな貢献をしていることを感じるのだ。

 今の時代、飲み会の居酒屋もスマートフォンで探すし、旅先だってその延長線上にある。スマホが登場する前から、旅行ガイドブックの販売不振は言われていたが、今後はさらに厳しい状況になるかもしれない。でも、先に述べたように、私なんぞは今でも旅行する前には、律義にガイドブックを購入し、出立の数日前はペラペラとページをめくりながら、いつの間にか読み込んでいる風情なのだ。そして、旅の間はいつも肌身離さず一緒だ。困ったときには旅行鞄から取り出し相談する。

 ガイドブックも千差万別である。しかし、古代から未踏の地を冒険する旅の必需品として、良質ではない紙に貴重な文字情報、地図が手書きで記された「案内書」(ガイドブック)を片手に分け入って進んだ、あの“ロマンチシズム”の香りが、DNAとして残されていないならば、残念なことである。

 最新情報という観点では、インターネットに道を譲る。また、具体的な旅行者視点の情報では、トリップアドバイザーなど「口コミ」サイトに軍配が上がる。では、旅行者は、この前時代的な旅行ガイドブックに何を期待しているのだろうか。

 限りある紙幅の中で個性が競われるが、私はやはり、情報量の多さを求める。濃密な情報量が、最終的に勝敗を分ける。ガイドブックはその土地の辞書であるべきだと思う。旅行者と同じ視線から語られる口コミ情報とは立ち位置が異なる。詳細で見やすい地図や、危険情報など旅行者に必要な情報を的確に提供し、プロのガイド(案内役)に撤することが求められる。

 「良書は人生の最良の友」という言葉があるが、良いガイドブックは、旅の最良のパートナーであり、親友でもある。書店でガイドブックを手に取る多くの旅行者は旅の友を探しているのだ。旅を終え、ボロボロのガイドブックの姿を見たとき、改めて親友の存在のありがたさを知る。

(編集長・増田 剛)