タイと中国の訪日市場分析、JNTO海外事務所が講演

会員約300人へ市場分析を紹介した

BtoCはメディア広報を  タイ
20―40代女性へ情報発信  中国

 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)は9月5日、東京都内のホテルでJNTO海外事務所長によるJNTO賛助団体と会員を対象にした個別相談会と、訪日市場についての講演会を行った。ビザ緩和の影響もあり7月の訪日客数が前年同月比84・7%増と急成長しているタイと、尖閣問題以降、前年同月比で大きく落ち込むが、絶対数は多く韓国・台湾に次ぐ市場である中国の市場分析について紹介する。
【伊集院 悟】

〈タイ〉
タイは、訪日外国人数の国別順位で、韓国・台湾・中国・香港・米国の5大市場に次ぐ市場。ビジット・ジャパン(VJ)事業が始まった2003年には国別順位12位だったが、05年に重点市場入りし、10年には英国を抜いて7位、12年にはオーストラリアを抜いて6位となり、年間の訪日外客数は26万859人となった。

 タイの海外旅行市場は572万人(12年)で、訪日ターゲット層である月収6万バーツ(約19万円)以上の富裕層が100―150万人、月収4―6万バーツの中間層が250―400万人ほどいる。月収4万バーツは、タイの全国平均の約2倍にあたる。1回の訪日旅行での消費額平均は1人20・8万円。東・東南アジアで中国に次ぐ多さだ。

 日本の印象は、「最も近い先進国」で、一生に一度は行きたい憧れの国。バンコク事務所の天野泉次長が「ドラえもんの影響が大きい」と話す通り、アニメなどを通じて子供のころから日本に馴染みが深い。外国料理のなかでは日本食が一番人気で、ショッピングモールのレストランは約半分が日本食屋。定番のすし、刺身、とんかつなどに加え、ぶどう、りんご、いちごなどの果物の人気も高く、訪日では果物狩りも人気という。

 タイには四季がないので、訪日観光で体験したいことには、富士山、桜、雪、紅葉などがあがる。温泉は、畳、浴衣とセットで日本的なものとして人気。温泉に実際に入るのはツアー参加者の約半数くらいだが、入浴者の満足度は高く、リピーターになりやすい。また、新幹線やテーマパークなどは「先進国らしさの象徴」として人気という。

 主なツアーの行先は、大阪―東京のゴールデンルートが全体の約5割。4泊6日で5―6万バーツが平均的だ。東京と富士山のセットも人気で、3泊5日で4―5万バーツほど。そのほか、昨年直行便が就航した北海道も人気が高まり、高山、白川郷、アルペンルート、沖縄なども人気。

 タイの旅行シーズンは、4月中旬のタイ正月を挟む3月下旬―5月中旬の春休みと、10月上旬―下旬の秋休みがピーク。ただし、14年にはASEAN域内で学校休暇の統一があり、休暇時期が変動する。

 旅行の同伴者は、家族が5割、友人のグループが3割、残り2割が恋人や夫婦。旅行形態は団体とFITが1対1から、徐々にFITへシフトしつつある。初訪日とリピーターの率も5対5から4対6へと、リピーターが徐々に増加。天野次長は「リピーターが増えると、FIT化がより進んでいく」とした。また、これまでビザ取得の関係で訪日パッケージ商品をオンラインで販売することはなかったが、天野次長は「ビザ緩和の影響で、今後は状況が大きく変わると思う」と語った。

 タイでのプロモーションについては、セミナーや商談会は6―7月と11―1月の時期が最適。一方、B to Cでは、広告掲載よりメディア広報事業を勧める。「日本に来たいメディアは多いので、日本行きの経費を持つことで記事を書いてもらうのが良い」(天野次長)。ただし、複数メディアを集めて同一行程を回るプレスツアーのようなものだと、記事の扱いが小さくなるため、「1社に絞り、何を撮りたいかなど打ち合わせをし、行程を一緒に作っていくのがよい」と勧めた。

〈中国〉
中国の海外旅行市場は高成長を維持。2012年の渡航先順位では韓国が300万人でトップ。次いで、台湾、タイ、日本、カンボジアと続く。ビザが必要ないタイをはじめ、東南アジアへの渡航が多い。日本へは196万人(在日中国人をカウントしないJNTO統計では143万人)で、依然として人気渡航先の1つ。尖閣問題以降、統計上の前年対比では大きく落ち込むが、絶対数が多く、訪日旅行者数は韓国、台湾に次ぐ第3位の市場だ。他国に比べ、1人当たりの観光消費額は圧倒的に多い。

 訪日中国人の都市別構成比をみると、上海市が22・8%、広東省が14・1%、北京市が11・5%と、3大都市で半数近くを占める。北京事務所の伊地知英己所長は「他都市の今後の開拓に期待がかかる」と話す。

 中国人観光客の性別・年齢別構成をみると、女性が58・2%で男性が41・8%。うち、女性20―40代で約48%と圧倒的なシェアを誇る。「ビジネスや公務を入れると男性の割合が増えるが、純粋な観光客は女性が多い。20―40代の女性へ向けた情報発信に力を入れるのが効果的」と説明した。

 訪日回数をみると、1回目の人が70・6%。「約7割が初めての訪日観光旅行なので、訪日観光市場としてはまだ発展段階。リピーターを増やせば、さらに高い将来性が見込まれる」(伊地知所長)。

 訪日旅行のピークシーズンは、1―2月の春節、3―4月の桜の時期、7―8月の夏休み、10月の国慶節。そのほかにも、秋の紅葉時期の観光もあり、旅行業者からは「日本観光にオフシーズンはない」という声も聞くという。

 目的地は、東京―富士山―京都・大阪のゴールデンルートが依然として団体観光に人気。また、リピーターは、東京などの1都市滞在型が増えているが、北海道、沖縄なども知名度を上げ人気となっている。

 中国市場の最新動向について、「尖閣問題以降、団体は回復が遅いが、FITはすでに戻って来ている」と報告。北京市などでは「ほぼ昨年並みまで回復」という旅行会社や航空会社の実感を紹介した。「訪日旅行をしにくいムードが残るなか、訪日してくれる人は、真に日本を好きな人」と話し、日中関係改善後は一気に訪日旅行が増える可能性を示唆した。

 また、10月1日に施行される中国初の観光関係の総合的な法律「旅遊法」(観光法)について紹介。「特定の店舗を指定した買い物」や「オプショナルツアーを前提とした日程」によるツアー募集の原則禁止や、土産物店からリベートを得ることの禁止、海外向けパッケージツアーの最少催行人員による開催成否を30日前までに決定する――などの規定ができる。これらにより、中国の各旅行会社はツアー単価の引き上げを検討。団体向けより個人向けの対応に力を入れていく方向性だという。

 さらに、リベートの禁止により不良業者や不良ツアーの排除に加えて、大幅なリベートに支えられた東南アジアや韓国へのツアー単価が大きく上昇し、日本ツアーとの価格差が縮まってくるとみる。伊地知所長は「良質な訪日ツアー商品を中国側に提案する絶好のチャンスになるのではないか」と語った。 

災害ボランティア 今も継続

石塚サン・トラベル社長 綿引 薫氏

6才から80代まで延べ1万7千人参加、人の力ってすごい

 2011年3月11日に発生した東日本大震災から2年6カ月が過ぎた。今回の震災で注目を集めたのが全国各地から集まった老若男女を問わない“災害ボランティア”の存在だ。自ら旅費を捻出してツアーに参加し、被災地の瓦礫撤去や清掃に汗を流した。茨城県水戸市の石塚サン・トラベルは震災直後から現在まで災害ボランティアバスを運行し、延べ1万7千人のボランティアを現地に送り込んだ。同社社長の綿引薫氏に、災害ボランティアの活動について聞いた。
【増田 剛】

 石塚サン・トラベルは東日本大震災の直後から、宮城県石巻市や東松島市を中心に災害ボランティアバスをスタートさせた。

 きっかけは、同社社長の綿引氏が、ひたちなか青年会議所で活動を行っていた時代から、石巻青年会議所と姉妹青年会議所の関係にあったことがベースにある。

 震災で茨城県も大きな被害を受けた。水戸市内も停電していたため、石巻の甚大な津波被害の情報も入らなかったが、数日後、大変な状況だということが分かった。石巻青年会議所のメンバーとは連絡がまったく取れず、10日ほど経って何人かのメンバーと連絡が取れるようになり、ようやく現地に行った。

 何度も訪れていた石巻だったが、以前の面影はなかった。当時の仲間たちが家も会社も流された状況にありながら、「でも、自分たちが生まれ育ったまちだから……」と色々な活動を始めていたことに胸を打たれた。そして、何よりもショックだったのが、青年会議所時代から一番お世話になっていた先輩が、奥さんと一緒に亡くなってしまっていたことだった。

 被災地の凄惨な状況を目の当たりにした綿引氏は「とにかく、人が必要なのだと感覚で分かった」と話す。「できるだけ多くの人を現地に運ぶことが今一番必要だろうなと思いました」。

 「1人を受け入れるのも、100人を受け入れるのも手間は同じ」との仲間の言葉がきっかけとなり、自社グループのバスで1人でも多くの人を送ることを決めた。茨城県も震災から2週間ほど経って地震の被害も片付き始めていた。茨城県の社会福祉協議会と、ボランティア保険などの相談をしているうちに「一緒にバスを動かそう」と協力体制ができた。

 綿引氏が経営する石塚サン・トラベルも仕事がまったくなくなっていたので、「とにかくバスの経費(人件費と燃料費)が賄えればいい」と思い、参加費1人4千円でやろうと決めた。すると、社会福祉協議会から茨城県が1人当たり1千円を負担すると申し入れてくれたため、お弁当代や高速代などを差し引き赤字にならないギリギリの1人3千円で、11年4月29日からバスの運行を始めた。

災害ボランティアバス

 このボランティアツアーをNHKのニュース番組が真っ先に取り上げた。すると、全国から申込みが殺到。ゴールデンウイーク中に1千人以上が現地に行った。県外からの申込みが7割を超えていた。「最初、九州や沖縄など全国から申込みが殺到したとき、インターネットの申込みだったので、本当にこんなに多くの人が来るのだろうかと半信半疑だった」という。

 以来、2年半が経過した現在も毎週末、ボランティアバスは継続して運行している。13年9月現在、参加者は延べ1万7千人ほどになった。基本的に日帰りで、参加者は水戸からバスに乗って現地に行く。

 遠方からの参加者はネットカフェなどで仮眠して、水戸駅を午前4時に出発し、現地に着くのは午前9時前後。午後3時ごろまで活動し、水戸駅に夜9時ごろ到着する。東京に帰る人は最終の特急電車に飛び乗る状況だ。水戸から現地までは参加費3千円で行けるが、沖縄や関西など遠方からの参加者は水戸までの交通費だけでもかなりの額になる。

 現地に到着すると、当初は宮城県の災害ボランティアセンターが人の配置などを行っていたが、現在は東松島市の登録となっており、宮城県の土木事務所のサポートチームにもなっている。

造園に取り組む高校生

 参加者は6歳の子供から80代までありとあらゆる年代が参加している。高校生や大学生などを中心に、部活や学校単位で参加する若い世代が全体の約4割を占める。さまざまな国籍の外国人の参加も多かった。イスラム教徒の外国人は、断食期間中にも関わらず、水も飲まずに一生懸命瓦礫の撤去などを手伝っている姿が印象的だったという。リピーターが全体の3分の1を占めるのも特徴だ。

 「私も毎週現地に行っていますが、1週間でがらっと景色が変わっていくので、変わりつつある被災地を見届けようという人も多いのだと思います」と綿引氏は分析する。

被災地に満開に咲いた芝桜

思いやりの心育成プロジェクト

 今夏は草刈りや花植えが中心だった。被害を受けた仙石線は高台に移設して2015年度の復旧を目指している。住宅も学校も高台移転する計画だ。地元の人はまだ仮設住宅で生活する人も多く、草刈りまで手が回らない。放っておくとすぐに雑草で覆われてしまう。「花いっぱい!」プロジェクトは、草を刈り、菜の花や芝桜でまちを埋め尽くそうとスタートした。今年、芝桜がたくさん咲き、地元の人がとても喜んでくれたという。また、土嚢袋に子供たちがメッセージを書く「思いやりの心育成プロジェクト」なども、色々な人の協力を得ながら取り組んでいる。

「ボランティアに意義を見出そうとする人は潜在的に相当にいると思います。正直なところ驚きました」と綿引氏は言う。「阪神淡路大震災のときにも災害ボランティアが活躍されていましたが、東日本大震災を契機に、災害ボランティアは日本に根差していくと思う」と語る。綿引氏が実施する災害ボランティアバスも次世代を担う子供たちや、若い世代に伝えていこうと、教育ツアーのような意味合いになっている。そのせいもあって子供たちの参加が多い。

 「子供たちが被災地をテレビで見るのと、実際に現地で自分の足で立って呼吸をしたり、風を感じたりするのとは全然違う。子供たちは色々なことを考えると思う。1人でも多くの人に経験してもらい、次に何かあったときに裾野が広がっていけばいいのかなと思っています」と語る。

 綿引氏自身も1995年の阪神淡路大震災と、1997年のナホトカ号の重油流出事故のときに青年会議所活動で色々なことを学んだ。そして、今回の震災では「青年会議所の現役や、OBのネットワークが一番機能したかもしれません」と語る。行政の補完ができたという感想を持っている。

 実際に現地を毎週訪れる綿引氏。現地の人たちのボランティアに対する反応はどのようなものなのだろうか。

 「東北の冬は厳しい。被災者は仮設住宅などからあまり外に出なくなるのですが、『1週間我慢すれば、またバスに乗ってあの人たち(ボランティア)が来てくれる。それを楽しみに生きているんだ』と言ってくれる人もたくさんいました。被災地の方々は『忘れ去られることが一番つらい』とよく言われる。とにかく毎週行って、姿を見せて『あぁ、まだ来てくれているんだ』と感じてもらえればいいのかなと思います」と話す。「ただ、大事なことは、所詮、私たちは他所者なので、ちょっとした手伝いしかできません。しかし、逆に特定の地域や、住民たちとズブズブの関係に入り込んでしまうと、コミュニティーを壊してしまう恐れがある」と綿引氏は強調する。「主体はあくまで被災地の方々で、地元の人たちが自分たちで考えて動き出して、はじめて復興が成し遂げられると思うのです。私たちは、まだ地元の方々が手の回らない草取りなど、ちょっとしたお手伝いをさせていただいていればいいのかなと思います。『さわやかな風』のような存在であろうと考えています」と基本姿勢を貫く。

海岸の清掃

 美しかった野蒜海岸も津波のあとは、一面瓦礫で覆われていたが、1年以上かけて片付けていくと、震災から一度も咲かなかった浜昼顔が、今年初めて綺麗に咲いたという。

 「もう駄目だと思ったものが、ボランティアのお陰で再生したり、もう咲かないと思われた花も咲いた。自分たちも頑張っていこうと思える」と被災者に何度も言われた。「こんなものは片付かないだろうと思った瓦礫の山も綺麗になり、やはり人の力ってすごいなと思いました。花の力もすごいですね。地元の人は『元気になる』と皆喜んでいました。ボランティアの人に手を合わせられる被災者の方も数多く目にしました。私たちは大きなことはできませんが、被災者の方々に寄り添っていればいいのかなと思います」。

 ボランティアに参加できない人たちも被災地を見ることは大事だと綿引氏は考える。昨年の秋から被災地復興支援ツアーも別枠で実施している。現地では再開した店も増え、経済を動かすために、これからは災害ボランティアバスの延長線上として1人でも多くの観光客を送りたいと思っている。
地域の再生も少しずつ進んでいる。現在は仮設住宅からの引っ越しの手伝いも取り組み始めた。
「子供たちが自分が植えた芝桜やアーモンドの木が育っていくのを見届け、将来、自分の子供を連れて見に行ったとき、当時子供だった地元の人たちも育ってお互いにそこで語り合うのもいいのではないでしょうか」と遠い未来を思い描く。
綿引氏は最初は作業しながら涙が止まらなかったが、1年が経ち、2年目からもう泣くのはやめようと思い、3年目に入ったときは、もう同情することをやめたと言う。「自ら頑張って立ち上がろうとする人がたくさんいるので、いつまでも同情モードでいたらダメな気がしたのです。頑張って立ち上がろうとする人たちの応援をしていきたいと思っています。おじいちゃん、おばあちゃんも元気で、70歳を超えるおじいさんが孫を迎えるために『もう一回家を建てるんだ』と言っている人もいます。私も、地元の人から『もう大丈夫』と言われるまで行くつもりですが、そう言われたときに、先輩の墓の前で酒を飲むのが夢なのです」と笑顔になる。

累計登場者数300万人突破、就航率トップのピーチ

 ピーチ・アビエーション(井上慎一CEO)は9月17日、累計の搭乗者数が300万人を達成したことを発表した。

 ピーチは2012年3月の運航開始から、9カ月目の11月に100万人、13年5月に200万人を達成。就航時は2路線、2機で運航を開始したが、現在では10機体制で国内線8路線、国際線4路線の計12路線を運航している。また、12年度は運航予定便に対する欠航便の割合が、日本のおもな航空会社のなかで最も低く、就航率は99.04%を記録。13年度も4―6月の第1四半期で就航率99.76%を記録している。 

前夜祭は女将がおもてなし、旅行新聞が女将に呼びかける

増上寺で前夜祭。女将がおもてなし

JATA旅博2013 来場者13万人を超える

 日本旅行業協会(JATA)は9月12―15日、東京ビッグサイトで「JATA旅博2013」を開いた。13―15日の3日間の来場者数は、合計13万1058人と13万人の大台を超えた。

 また、12日の夜は東京都港区の増上寺で初めての取り組みとなる前夜祭・旅博ナイトを開催。旅行新聞新社の呼び掛けで全国の旅館の女将約20人が駆け付け、海外からの参加者らを日本の「おもてなし」で迎えた。

久保成人観光庁長官を囲む女将

 前夜祭は国土交通省観光庁との共催で実施。「TABIHAKU YOKOCHO(旅博横丁)」をテーマに、増上寺と東京タワーというロケーションを生かしたユニークなMICE会場で、デスティネーションとしての日本をアピールした。あいさつに立った国土交通省の鶴保庸介副大臣は、2020年に東京オリンピック開催が決定したことに触れ、「多くの方に東京以外のところにも訪れてほしい。今日をそのスタートにしたい」と日本各地にそれぞれの魅力があることを訴えた。

 このほか、前夜祭では旅博2013の公式ソングを歌うGILLEさんのライブや三味線の演奏、阿波踊りなどが披露され、参加者を楽しませた。

JATA旅博が開幕

JATA・菊間潤吾会長

 翌日の13日の開会式は、各国の要人らが参加したテープカットで盛大に幕を開けた。主催者会見でJATAの菊間潤吾会長は、154カ国・地域の730企業から1353小間と過去最高の出展数になったことを報告。「国内からも大幅に増加した。訪日旅行が盛り上がりをみせるなか、旅博に出展することで、海外に地域を紹介するいい機会だと思っていただいたと理解している」と語った。

 また、台湾や米国からの参加者が近年で過去最高になったことを示しながら、「アジア市場の伸びが世界の観光業を元気づけている。その意味で、旅博がアジアの中心的なトラベルマートであり、フェアであるということから多くの国から来ていただいている」とし、日本のみならず、アジアのためのマーケットプレイスへと進化していることを強調した。

 旅博では13日の業界日を中心に「アジア旅行市場分析」をテーマにした国際観光フォーラムを実施したほか、14、15日の一般日には著名人による講演やイベントなどが多数催され、旅の魅力を発信した。

外税表示で収益アップへ、耐震補助は知事に要望を(全国旅館政治連盟)

佐藤信幸理事長

 全国旅館政治連盟(佐藤信幸理事長)は9月17日、東京都内で緊急支部長会議を開き、消費税外税表示や改正耐震改修促進法などの問題について旅館業界として認識を共有した。消費税外税表示では、総額表示を求める宿泊予約サイトなどに比べ、外税表示を行う自社ホームページの方が料金比較サイトでも優位に立つメリットなどを挙げ、徹底を求めた。固定資産評価の見直しでは、2014年度税制改正に向け、下限となる経過年数を現行の50年から36年へ、14年の短縮を求める要望内容を確認した。

資産価値の減額50⇒36年求める

 消費税の外税表示は、今年6月に消費税転嫁対策特別措置法が成立し、10月1日から2017年3月31日までの3年5カ月間、総額表示から外税表示が時限的措置として認められたことを受けて、旅政連の佐藤信幸理事長は「消費税の外税表示によって収益は5―6%上がり、利益率向上にも結び付く」と強調。今後、全国400カ所で勉強会を開き、業界全体で外税表示による価格転嫁の徹底を訴えた。

 外税表示は、本体価格のほかに税金などが別途請求されることを分かりやすく明示すれば「税込価格」を表示しなくてもよいとする特例で、宿泊料1万円の場合、【1万円(消費税、入湯税150円別)】や【1万円(諸税別)】という表示も可能になるが、行政から消費税の表示方法をフロントや客室などに明示するよう求められている。

 また、宿泊施設がお客に「消費税分はサービスさせて頂きます」「消費税分は次回使えるポイントに換算します」といった提示は価格転嫁阻害として、違反した場合、消費者庁から勧告・公表が行われる。一方、旅館事業者が仕入れ業者に対して「消費税分は込み込みでよろしく」という価格交渉は違反行為となり、公正取引委員会から勧告・公表が行われる。

 固定資産評価については、旅館業界の実態調査と有識者を交えた会議で、固定資産税の経年減点補正率(耐用年数)は、下限(20%)となる経過年数は36年と弾き出されている。一方、総務省からは48年という数字も出ており、10年以上の隔たりがある。今後、観光庁などと協調して3年に1度、固定資産評価の見直しが行われる2015年度に向け、旅館ホテルの資産評価額の減価ペースを現行の50年から36年へ短縮するよう要望していくことを確認した。

耐震改修の適合マークのイメージ

 耐震問題については、国が耐震対策緊急促進事業(3年間の時限補助金)として13年度予算に100億円を計上。耐震診断、耐震改修に国が3分の1の補助金を出し支援、地方公共団体と事業者が3分の1ずつ負担することが原則となっている。しかしながら、地域によって地方公共団体が負担する割合が上限の地域と、まったく補助金が出せない地域もあるのが現状。予算執行には知事の権限が強いことから、知事へ直接要望するよう求めている。佐藤理事長は「業界にとって耐震問題は死活問題であり、皆さんに行動してほしい」と訴えた。9月11日現在、知事へ直接面会した都道府県組合は15組合、担当課を通じて知事に要望したのは16組合、知事への面会予定有り(日程調整中)が7組合、未回答が9組合となっている。また、耐震基準に適合したマークのイメージもすでにできている。

No.351 旅館の労務管理(前編) - 社員の働き方を設計する

旅館の労務管理(前編)
社員の働き方を設計する

 本紙で「いい旅館にしよう!」プロジェクトの対談シリーズに登場する工学博士の内藤耕氏(サービス産業革新推進機構代表理事)に、旅館の労務管理についてインタビュー取材を行った。旅館のサービスは、料理をとっても手間がかかる部屋食から、効率化を目指してレストラン食、バイキング食へとセルフサービス化が進む。しかし、なかには人手を介した方がより効率的であり、サービスの品質も上がるケースも多々ある。「社員の働き方の設計」を考える――今回は前編だ。

【増田 剛】

人手を介した方が“効率的”、品質を上げる努力が経費削減へ

 たとえば小売業の歴史的な変遷を見ると、昔は「富山の薬売り」のように自宅まで届ける訪問販売をやっていました。これでは客が選べる商品数は限られ、それが次第に多くの商品をそろえる店舗というものができ、そこに客に来てもらって販売するようになったのです。最初は「こういうものがほしい」という客に対して、呉服屋さんのように倉庫から手で商品を取り出すという対面販売でした。次に、百貨店のように、お客が自由に商品を見られるように陳列販売という形態が現れました。この訪問販売や対面販売、陳列販売というのは「フルサービス」で、とても手がかかりますが、客は色々と専門的なアドバイスを受けられるメリットもあります。

 

※ 詳細は本紙1516号または9月27日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

3つの“死活問題” ― 国の政策に翻弄される旅館業界

  旅館業界にとって目下、(1)改正耐震改修促進法(2)消費税外税表示(3)固定資産評価見直し――の3つの問題が“死活問題”として横たわる。

 このなかで、消費税の外税表示は、税金分やサービス料などの「込み込み」料金ではなく、しっかりと「外税表示」を行うことで、収益や利益の拡大が見込まれる案件だ。2017年3月末までの時限的な「特例措置」であっても法律で定められており、安売り競争ではない方向に導くためには、旅館業界の意識の徹底が求められる。

 全旅連の税制委員会は、宿泊料金1万円、エージェント手数料15%、消費税率8%で、消費税の価格転嫁による実質収入の違いについてシミュレーションを行った。これによると、外税表示の場合、旅館の実質収入は8500円、消費税を転嫁できなかった場合は7870円と、630円の差額が生じた。年間1億円で計算すると、630万円の利益の有無に関わる。今後10%、さらなる上乗せとなると「込み込み」料金ではとても持ちこたえられない。全旅連は約1万6千会員に外税表示の周知徹底へ、全国400カ所で勉強会を実施していく予定だ。

 外税表示のメリットとしては、「総額表示よりも安く自社のホームページに掲載できるため、料金比較サイトでも優位に立つことができる」と全旅連税制委員会は強調する。いずれにせよ、旅館は消費者に課せられる消費税を肩代わりする必要はない。3年5カ月という時限的な措置を恒久化するためにも、外税表示の徹底に旅館業界が一致団結することが不可欠だ。

 耐震診断、耐震改修費用については、地方公共団体の補助制度がまちまちであり、全国横一列の補助制度というのは難しい状況にある。どの自治体も財政難にあり、旅館の耐震診断・改修の補助金を出せる余裕のある地域は希少だ。しかしながら、和歌山県や奈良県、高知県、静岡県などは、県知事の理解もあり、3分の1の費用負担といった補助制度がすでに決まっている。和歌山県では、事業者負担部分に対する最優遇融資資金の創設など手厚い支援策を打ち出している。

 固定資産税の見直しも、旅館に重く圧し掛かる負担の軽減を求めるものだ。国が政策の柱として観光立国を目指す以上、観光事業者の負担を軽くすることは、とても重要な施策である。理解の深い観光庁の強い後押しもほしいところだ。

 商業施設や病院、旅館が耐震改修を実施した場合、2014年度から固定資産税を半減する方針を政府・与党が固めたと、日本経済新聞が9月14日の1面で報じた。11月25日に施行する改正耐震改修促進法では、耐震診断が2015年12月末まで義務化されたが、診断の結果が基準を満たしていなかった場合でも罰則規定や自治体から公表されるなどの措置はあるが、耐震工事が義務付けられているわけではない。政府は固定資産税の半減という「ニンジン」をぶら下げてでも、耐震改修工事を実施させ、地方の設備投資の活性化を目指しているようだ。

 旅館業界は固定資産税の負担減を数年来求めてきた。ミリ単位で前進する努力を重ねてきたが、別ルートで、それも耐震改修とセットという、予想もしなかった展開で大きく動き出す可能性が出てきた。複雑な気分だ。国は旅館業界をいいように利用しているような気がしてならない。

(編集長・増田 剛) 

成田―関西就航開始、1日2便で10月27日から(ピーチ・アビエーション)

乗務員に囲まれる井上慎一CEO

ピーチ・アビエーション(井上慎一CEO)は8月28日、東京都内の丸の内と表参道で、成田―関西線就航記念イベントとして、冷えたおしぼりを配布し、同社をPRした。ピーチは10月27日から同路線を就航開始。1日2往復の4便で、価格は3790円から。

同日の会見で井上CEOは、就航開始から1年半が経ち、総搭乗者数がまもなく300万人に達することを紹介。「電車のように気軽に飛行機に乗るということが、現実になってきた」と語った。2013年の現時点までの就航率は99・8%。12年は約99%で国内トップ。定時出発率が約86%であることを明かし、「ピーチはちゃんと飛ぶLCC」と強調した。

成田―関西の新規就航については「関西で起こした航空イノベーションを東京でも起こし、東京そして日本を元気にしていきたい」と意気込んだ。10月27日の初便の予約状況は7割ほどで、その他の便は数字の公表を控えたが「当初の予想を超える動き」と報告。また、成田から関西以外への就航については「今のところ何も考えていない」としたが、「常に柔軟であることがピーチのポリシーなので、状況次第」と含みを持たせた。

「ピンクリボンの日」初開催、愛知県湯谷温泉

10月1日、無料開放、湯めぐりや体験者相談会

 愛知県湯谷温泉で10月1日、「ピンクリボンの日」イベントが初めて開かれる。同温泉では9軒の旅館などが中心になり「ピンクリボン癒しの郷」プロジェクトを昨年にスタート。乳がん手術の傷跡を気にして温泉に行けないという女性のために、脱衣所や洗い場での目隠し、ライトダウンの工夫を行うなど、旅行が楽しめる環境づくりを進めている。

 昨年7月には、同温泉女将会が「ピンクリボンのお宿ネットワーク」にも加盟し、活動内容を全国に発信している。

 イベントは同温泉が人工乳房メーカーの池山メディカルジャパンの協力を得て開催するもので、乳がん経験者や家族、友人などを対象に、1日間湯谷温泉を無料開放する。人工乳房装着の入浴体験も行う。

 当日は午前11時から午後4時まで、無料参加の湯めぐりやパッド・下着相談会、人工乳房装着入浴体験、ウイッグ相談会、保険相談会、看護士によるアロマリンパドレナージ体験、美容師によるヘッドスパ、ハンドマッサージ、ネイル・メイクなどを行う。

 各旅館では特製のオリジナルランチも用意。地元農家の産直野菜販売も行う。乳房再建体験者を囲むお話し会も開催する。夜には「足湯」をピンクリボンライトアップ、宿泊者対象の「体験者を囲むお悩み相談会」なども開く。

 問い合わせ=電話:052(799)3715。

「意外と熱海」戦略開始、東京で温泉会議開く(熱海市)

開湯セレモニーを行う

 静岡県熱海市(齋藤栄市長)は8月26日、東京都墨田区押上エリアの銭湯「大黒湯」を会場に「ATAMI温泉会議」を開いた。同市は、今年度からJTB中部にプロモーション事業を委託し、「意外と熱海」をテーマに3年間の長期観光ブランド戦略を行う。今回はキックオフイベントで、浴衣をまとった齋藤市長自ら富士山の描かれた浴場内の特設ステージに登壇し、観光プレゼンテーションを行った。

 「良い意味で期待を裏切り、『思いもよらず良かった』という発見が顧客満足につながる」(JTB中部)ことを踏まえ、掲げられた3年間の統一テーマは「意外と熱海」。齋藤市長も「長期プロモーションを通し、熱海の本質的な魅力を伝えていきたい」と意気込む。

 当日は、秋のシーズンに向けた3つのキーワード、相模灘を望む絶景に建つMOA美術館をはじめとする「芸術」、伊豆山神社などの「恋愛」パワースポット、初島から望む「世界遺産」富士山を紹介し、意外な熱海の魅力をPR。今後もパンフレットの作成やメディアへの情報発信、SNSなどを活用し、四季折々の観光プロモーションを展開。効果を検証し、誘客促進へつなげていく。