海外メディア招請を、東北観光回復へ情報発信重要(久保観光庁長官)

 東日本大震災から3年が経過しても本格回復になかなか至らない東北のインバウンドについて、観光庁の久保成人長官は3月19日の会見で、海外メディアの招請や商談会など現地視察による情報発信の重要性を強調し、「回復の兆しから、震災前水準への本格的な回復へ支援していきたい」と話した。

 震災後の東北6県の外国人延べ宿泊者数は、2012年が23万3千人泊、13年が前年比17・8%増の27万4千人泊と、回復の兆しを見せているが、震災前の10年は50万人泊を超えており、震災前水準にはほど遠い。3月2日に宮城県仙台市で開かれた「東日本大震災から3年~東北観光がんばります!!」シンポジウムでは、集まった東北6県の知事から、情報発信の強化や予算の増強、観光庁の積極的な取り組みなどについての要望が出ていた。

 久保長官は会見で、「放射線量の正確な情報発信を続けることが大事」と強調。さらに「海外のメディアなどを招請し、実際に現地で動いて見てもらい、情報発信してもらうことが効果的」と話し、海外メディアの招請や商談会の実施、ビジット・ジャパン事業の地方連携事業などに積極的に取り組み、可能な限り早期の回復を目指し支援していくという。

 2月の訪日、好調維持
 スノーリゾート地人気

 2月の訪日外客数が前年同月比20・6%増の88万人、1―2月の累計では前年同期比30・5%増の182万3900人と過去最高を記録していることを受け、久保長官は「1月に引き続き好調を維持している」とコメント。大幅増の要因に、スキー旅行や冬の行楽に向けたプロモーション効果をあげた。

 同25・1%増と高い伸びを見せた豪州などに、ニセコ(北海道)や白馬(長野県)などのこれまでの人気訪問地に加え、野沢温泉(長野県)や妙高温泉(新潟県)などのスノーリゾート地の人気が高まっていることを紹介した。

 1―2月の累計が前年同期比92・0%増の29万4100人となり好調な中国については、同期間に7便のクルーズ船が寄港し、1万4600人が日本を訪れたことを報告し、クルーズ船寄港の影響の大きさについて触れた。

「日本の旅文化を創る会」へ、朝日旅行協力会が名称変更

佐藤好億会長
佐藤好億会長

 朝日旅行協力会(佐藤好億会長、466会員)は3月19日、東京都内で2014年度第47回通常総会を開いた。時代の大きな転換期を迎え、新たな変革を自ら起こす強固な組織づくりに向け、47年間続く会の名称を「日本の旅文化を創る会」に変更した。厳しい時代のなかで生き残りに向けて同会は、朝日旅行との協力体制の独自性の伝統を残しながら、“目的意識を明確にした”名称で、「個」から「組織のブランド力」で戦う会員組織を目指していく構えだ。
【増田 剛】

 
 
 
「組織のブランド力」で生き残る

 佐藤会長は冒頭、「朝日旅行協力会がJTB傘下になって今年で6年目を迎えるが、長い歴史のなかで、残さなければならないものや、失くしてはならない思いがある一方で、厳しい環境のなかで変革が必要なものもあり、会員の皆さんとともに確認していきたい」とあいさつした。そのうえで「我われの宿は地域の文化を作っている存在であり、これを今後も継続していかなければならない。我われが今、なすべきことはなにかを考え、10年先、20年先の『日本の旅文化の創造』へ、心を一つにして向かっていきたい」とし、47年間続いた「朝日旅行協力会」という名称を「日本の旅文化を創る会」へと変更することについて理解を求めた。

朝日旅行の井沢啓社長
朝日旅行の井沢啓社長

 名称変更に違和感を訴える一部会員もいたが、朝日旅行の井沢啓社長は「協力会のそれぞれの部会の有するブランド力を、より大きな相乗効果を生む組織へと進む道を考えるときに、協力会の皆さんと同じ方向だと思う」と述べ、「一つの方向に向かうことのできる組織名になれば、より強固な組織になれるという思いで、会社としても、発展的な変更ということで協力会の会員とともに名称変更を決断したい」と語った。

 さらに、井沢社長は「厳しい環境の中で、次のステップを踏むには何かを変える決断をしなければならない。今変えないと将来に禍根を残すものであれば、決断が必要だと思う」とし、「朝日旅行はJTBグループの一員であるが、47年間の歴史、独自性を堅持すべきであり、それぞれのブランドが一つにまとまればもっと大きなブランドとなって皆さんも戦いやすくなると思う。生き残るためにどう戦い、お客様にアピールし支持されていくか。変化へ対応だけでなく、変革への挑戦を皆さんとともにやっていきたい。朝日旅行もこの方向で邁進していきたい」と力強く語った。

 今年度は「日本の宿を守る会」(48会員)、「日本秘湯を守る会」(182会員)、「日本の食文化を守る会」(17会員)、「日本文化遺産を守る会」(27会員)、「日本源泉湯宿を守る会」(45会員)の5つの部会が宿泊キャンペーンの展開など、それぞれの部会ごとに新たな事業に取り組んでいく。

サッカーと訪日観光を結ぶ

 インドネシアで絶大な人気を誇るイルファン選手が山梨県のJリーグチーム・ヴァンフォーレ甲府に加入した。

 人口が2億4千万人と世界第4位のインドネシアは、経済成長とともに海外旅行者も増加している。山梨県はトップセールスを行うなど、かねてよりインドネシアからの観光客誘致を推進。スター選手の移籍は、さらなる相互交流の起爆剤となりそうだ。

 実際に昨年は、コンサドーレ札幌で活躍したベトナムのレ・コン・ビン選手が注目を集めた。北海道でプレーする国民的スターの姿を一目見ようと、ベトナムから海を渡りサッカー観戦に訪れる観光客も少なくなかったという。

 サッカー観戦の魅力は万国共通。波及効果を訪日観光に活かせるか。地域に根差すJリーグの展開に期待したい。

【森山 聡子】

春秋航空日本に出資、事業提携で旅行商品造成(JTB)

田川JTB社長(左)と王春秋グループ会長
田川JTB社長(左)と王春秋グループ会長

 JTB(田川博己社長)はこのほど、中国最大のLCC春秋航空股分Spring Airlines(王正華会長)の日本法人春秋航空日本Spring Airlines Japan(鵜飼博社長)に出資することを発表した。春秋グループと事業提携することで、同グループのLCCを使った旅行商品の造成により、日中双方向の人口交流拡大を目指す。

 JTBの田川社長と、春秋グループの王会長が出席した3月25日の会見で、田川社長は「出資額は数億円」、春秋航空日本の資本金60億円のうち「出資率は5%以内」と明かし、出資額は実質1―3億円の間とみられる。4月1日からは両社間の人的交流も行い、JTBから春秋航空日本へ出向し、旅行商品の造成も行うという。航空事業への参入はせず、あくまでLCCを組み合わせた旅行商品の造成で、中国からの訪日旅行と、日本からの海外旅行拡大を狙う。

 田川社長はLCC市場について「2012年の北東アジアのLCCシェア率は10%程度だが、東南アジアは52%に上る」と紹介。「北東アジアのオープンスカイが進展すれば、今後LCCシェア率は上がってくる」と語った。また、「欧はビジネスのレガシー、レジャーのチャーター、生活のLCCが3分の1ずつの割合で、日本も今後そうなってくる。それぞれを組み合わせての座席確保が、訪日・国内・海外旅行すべてで、今後大きな命題になる」と分析。中国について「交流人口拡大の大きなポテンシャルを有する市場」とし、「春秋が行う中国内のチャーター戦略を日本国内に持ち込めば、日本から中国への海外旅行客も増やせられる」と展望を語った。

20.6%増の88万人、スキーや冬の行楽人気(2月の訪日外客数)

2月の訪日外客数
 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)はこのほど、2月の訪日外客数推計値を発表した。2月の訪日外客数は前年同月比20・6%増の88万人で、これまで2月の過去最高だった13年を15万1千人も上回った。1―2月の累計では前年同期比30・5%増の182万3900人と過去最高のペースで推移している。

 昨年から続く東南アジアのビザ緩和効果や円安傾向にともなう割安感の浸透、スキー旅行や冬の行楽に向けた訪日旅行プロモーションが奏功した。市場別では、中国、台湾、香港、タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナム、インド、豪州が2月として過去最高を記録。豪州は引き続きスキーを中心とする訪日旅行の需要が拡大し、25・1%増と高い伸びを示し、欧米市場も順調に拡大した。

 重点市場をみると、全体の4分の1を占める市場の韓国は、同1・2%減の23万1500人。旧正月休暇が昨年は2月だった影響もありマイナスとなったが、1―2月の累計では前年同期比3・9%増の48万7千人と、08年、11年に次ぐ過去3番目の記録となった。13年10月以降3カ月続いたマイナス傾向が先月プラスに転じ、1―2月の累計でもプラスを維持。原発汚染水問題の報道の影響はほぼ収束した。

 台湾は同27・2%増の19万1200人と、2月の過去最高を更新。旧正月休暇が例年より短かったが、連休明けも訪日旅行需要が継続し、ピーク期を外した手ごろな商品の人気が高かった。LCCの新規就航・増便による座席供給量の増加、訪日旅行の割安感の浸透なども後押しした。1―2月の累計は同48・3%増の38万8100人。

 中国も同71・1%増の13万8400人と2月の過去最高を更新。上海発のクルーズの寄港や円安傾向によるショッピングの割安感の浸透が需要拡大に寄与した。1―2月の累計は同92・0%増の29万4100人。

 香港も同14・4%増の6万4700人と2月の過去最高を更新。旧正月休暇中は団体・個人旅行ともに好調で、需要拡大により訪日商品の価格が上昇しているにも関わらず、依然訪日旅行人気は高い。1―2月の累計は同45・9%増の12万8100人。

 そのほか、東南アジア諸国も好調で、タイは同72・4%増の3万4300人と2月の過去最高を更新。北海道方面が好調で、さっぽろ雪まつりや樹氷鑑賞、雪そり体験など、冬季ならではの体験ができる訪日ツアーが人気。企業のインセンティブ旅行も伸び、訪日タイ人増加を後押しした。

 なお、出国日本人数は同1・8%減の140万5千人となった。

インバウンド対応へ、“みなし”不可で時間管理徹底(TCSA)

 山田会長(右)と三橋専務理事
山田会長(右)と三橋専務理事

 日本添乗サービス協会(TCSA、山田隆英会長、48会員)は3月20日、東京都内で2014年度通常総会を開いた。その後、報道関係者を集めプレスインタビューを行い、今年度はインバウンドに対応するための人材育成や、添乗業務の時間管理への対応など添乗環境整備事業に注力することを発表した。

 山田会長は、今年1月、阪急トラベルサポートに最高裁判所が下した「添乗員のみなし労働は認められない」という判決結果を紹介し、「これにより労働時間管理が大きく変わってくる」と述べた。また、「労働者派遣法の改正が厚生労働省で検討されており、恐らく次の通常国会に提出されるだろう」とし、総会後の会員懇談会でこれらに関する会員からの意見や要望を聞いたことを報告した。

 三橋滋子専務理事は、今年度事業の説明のなかで、労働時間管理に触れ「労働時間は派遣先の旅行会社にきちんと管理してもらわなければならないことを説得していく」とし、「判決で添乗労働について始業、終業の考えが明記されたので、これをもとに実態とすり合わせながら協会統一のものを作らなければならない」と語った。一方、明確な時間管理が進むことで、これまで日当が出ていた仕事が2―3時間と計算され、結果として賃金が減少してしまうことが懸念されるが、「旅行会社はトライアルとして8時間分を支払うという考えを示してくれている」と述べた。

1級認定バッジ
1級認定バッジ

 このほか、今年度は人材育成事業のなかでインバウンドの添乗業務へも対応していく。初めて専用のカリキュラムを作成し、2020年の東京五輪時の対応を目指す。また、添乗員のモチベーションアップのための事業では、1996年から設置している「添乗員能力資格認定制度」の普及のため、2013年度に作成した1級認定バッジをこのほど、総合と国内合わせた700人の1級保持者に配布。これまで以上に普及啓発に取り組む。さらに、若年層へ広く添乗業務の魅力を発信するため、フェイスブックを活用した広報活動にも力を入れる。

最上級バス2台導入、24席の「ピアニシモⅢ」(はとバス)

ピアニシモⅢ
ピアニシモⅢ

 はとバス(金子正一郎社長)は4月、最上級バス「ピアニシモⅢ」を2台導入し、日帰りや宿泊コースのグレードの高いコースで運行する。

 「ピアニシモⅢ」は外観が目を引く。同社のイメージとして定着している黄色から、高級イメージの漆黒のカラーリングに変更。ボディサイドには日本伝統の水引をモチーフとした曲線(ゴールド、プラチナ)を施した。

 内装はベージュと木目を合わせたデザインで段差のないフラットなフロア。座席は総革張りのオリジナルシートで優しい座り心地。リクライニングはもちろんフットレスも付いた独立型3列シート。総座席数も24席に減らしゆとりを確保した。座席横に付く通路灯は、はばたく「はと」をデザインしたLED内蔵型のレリーフ式シェードを通して、足元をやわらかく照らす。全座席に100ボルトのコンセントも設置した。最後尾にある化粧室は床とカウンターをダーク色で統一、手すりに照明を内蔵し、年配の人も安心して利用できる。

 オーディオシステムは独自に開発した無線を導入。帰りの車内で貸し出すオーディオ受信機で4つのチャンネル(テレビ・ラジオ・CD2種)が楽しめる。このほか快適な車内を保つため、高濃度のプラズマイオンで空気を清浄する除菌イオン発生装置も備えた。

 安全面では3点式シートベルトを全座席に設置したほか、タイヤのパンクやバーストを未然に防止することに役立つタイヤ空気圧モニタリングシステムを採用した。

 なお、同社では「ピアニシモⅢ」と同時に36人乗り化粧室付きの「レガート」も導入した。レガートにも全座席に100ボルトコンセントが付く。

日光街道で広域連携、現地調査や商品検討実施(日光街道観光推進連絡会)

1日目のスタートは起点・日本橋から
1日目のスタートは起点・日本橋から

 日光街道観光推進連絡会はこのほど、観光庁が募集した「将来的な商品化に向けた観光資源磨きのモデル調査業務」の事業として、広域連携をテーマにした「日光歴史街道江戸から近代日本への旅」を企画した。日光街道は、東京都・日本橋を起点に栃木県・日光まで結ぶ江戸時代の五街道のひとつ。同会はこれまで数回にわたる現地目利き調査と商品検討会議を行っており、3月11―12日には関係者を含めたモデルツアーを行った。
【丁田 徹也】

 同連絡会に所属するのは日本観光振興協会と日光街道起点の東京都中央区商工観光課、中央区観光協会、中継地点として埼玉県越谷市と越谷市観光協会、終着地点として日光市観光部と日光地区観光協会連合会と日光東照宮。さらに東武鉄道とクラブツーリズム(CT)、ソフトバンクテレコム(SBTM)が関連事業者として所属する。

 モデルツアーではSBTMが開発中の日光ナビアプリ(5月リリース予定)を現地でテストをするなど、企業との連携を確認した。一方、各市区と観光協会は地域との連携でツアーをサポートした。また、目利きとして日本観光振興協会の総合調査研究所から丁野朗所長をはじめ、研究員らが同行した。

 ツアー1日目は東京都中央区の日本橋にある街道起点からスタート。ビルの間にある街道跡を辿り、隣接する歴史遺産を見物した。越谷市に入ると「くわい饅頭」や「鴨ネギそば」など越谷の名産物を利用した料理を堪能しながらの街道ツアーとなった。日光到着後には活動報告会を実施し、これまでの活動を総括したほか、参加自治体の増強、ツアーの維持や管理、自立など今後の課題についても討議した。2日目は徳川家にテーマを絞り、東照宮や近隣の寺社で徳川家の歴史を追ったほか、日光山麓の造り酒屋など地場産業にも立ち寄った。

活動報告会のようす
活動報告会のようす
「鴨ネギそば」
「鴨ネギそば」

 同事業は、旅行商品造成を手さぐりで行っている地域の現状に対して、国が将来的な商品化に向けた取り組みを実証し、商品化への方向性を示すための検証を行うというもの。3月13日には東京都内で、同事業の取り組み事例として日本観光振興協会総合調査研究所の研究調査部長・楡木慎一氏が登壇し、「新たな連携関係の構築による商品化の試み」と題し発表した。

日光東照宮内の五重塔を巫女が案内
日光東照宮内の五重塔を巫女が案内

ジャカルタ事務所開設、14カ所目の海外事務所(JNTO)

石崎雄久所長
石崎雄久所長

 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)は3月20日、インドネシアのジャカルタ市内に「ジャカルタ事務所」を開設した。同事務所はJNTOとして14カ所目の海外事務所となる。

 インドネシア市場はASEAN最大の人口を有し、13年の訪日外客数は前年比34・8%増の13万6797人と急成長中。同事務所は、インドネシアや周辺地域での訪日旅行促進をはかるため、(1)訪日旅行の市場分析とマーケティング(2)日本向けツアーの現地旅行会社による企画・販売の促進(3)現地メディアを通じた広報活動(4)旅行業界・消費者への情報発信(5)国際会議など(MICE)の誘致・開催支援――などを行っていく。

 職員は石崎雄久所長と伊東亮次長のほか、今後現地職員を3人ほど採用予定。

電話:(62)21(252)0742
ホームページ=http://www.jnto.or.id/

【4月22日】東伊豆温泉旅館、都内で就職ガイダンス開催

 静岡県の東伊豆町商工会は4月22日、東京都立産業貿易センター浜松町館で「東伊豆温泉旅館合同企業ガイダンス」を開く。旅館だけが集まり合同企業説明会を行うのは全国初の取り組み。

 参加企業は、稲取赤尾ホテル海諷廊、いなとり荘、稲取東海ホテル湯苑、稲取銀水荘、食べるお宿浜の湯、望水、奈良偲の里玉翠、熱川館、熱川大和館、熱川プリンスホテル、つるや吉祥亭。11時30分から各企業ブースにて説明会を、12時15分からは旅館の仕事をテーマにした基調講演を行う。

 主催する東伊豆町商工会の担当者は「首都圏の方に東伊豆の旅館を就職先としてアピールしたい。今後は取り組みを、伊豆エリア全体に広げていければ」と話す。

 参加希望者は東伊豆町商工会ホームページ(http://www.jibasan.info)から申し込みのこと。
当日参加も受け付ける。

 問い合わせ=TEL:0557(95)2167。