大賞はANAセールス 長年のノウハウで受賞 ツアグリ2017

2017年10月11日(水) 配信

受賞式のようす

 ツアーグランプリ2017の国土交通大臣賞に、応募総数97件のなかからANAセールスの「アルザスふれあいウォーク」が輝いた。同社によると、今回の企画は全日空ワールドが1994年にグランプリを受賞したツアーが土台になっており、長年のノウハウが生かされたことが成功につながったと分析する。

 同ツアーは、数多くの観光地を駆け足で巡るツアーとは一線を画し、欧州平和のシンボルのフランス・ストラスブールを起点に、通常のツアーでは訪れないリクヴィルなど趣のある小さな村々を巡る行程。また、日本語を学ぶフランス人学生と共に“ウォーク”するという国際交流も盛り込んだ。

 ふれあいウォークは、94年の第1回ツアーグランプリでグランプリを受賞した長い歴史を持つ企画。1回目はドイツ・ノイシュバンシュタイン城近くのアルプ湖畔を歩くものだった。その後アメリカやアジア、中国など各地で開催されたが、ここ数年は実施されておらず、今回は久しぶりの復活だったという。本紙の取材に対し、同社担当者は「企画立案・実施に至るまでは相応に大変ではあったが、20年以上前のノウハウが忘れずに蓄積されていたことも成功の要因だったと思う。今後も企画性の高い商品を造成し、そのプレゼンスを高めていきたい」と喜びを語った。

 大賞以下の各受賞ツアーは次の通り。

 【観光庁長官賞】海外旅行部門 イタリアの美しい村と小さな街めぐり10日間(クラブツーリズム)▽国内・訪日旅行部門 北海道長期滞在の旅 自然豊かな街釧路で過ごす10日間(阪急交通社)【海外旅行部門グランプリパッケージ旅行部門】星空スイス8日間(HIS)【海外旅行部門グランプリデスティネーション開発部門】素朴で郷愁漂うルーマニア・モルドバ共和国・沿ドニエストル共和国・ガガウズ自治共和国を訪ねて11日間(ジャンボツアーズ)【海外旅行部門グランプリSIT部門】〈JALビジネスクラス・南アフリカ航空ビジネスクラス利用〉こだわりの豪華ロッジに連泊タンザニア・サファリ満喫10日間(ジャルパック)【国内・訪日旅行部門グランプリ】福島の今を知り、私たちの未来を考える2日間(HIS)【審査員特別賞】海外旅行部門 学生旅行ヨーロッパ(日本旅行)▽国内・訪日旅行部門 伝える 学びのプログラム熊本(JTB九州)▽同 Hidden Japan(Inside Japan Tours Ltd.)

過去のアンコールワットへタイムスリップVR体験、HISがコンテンツ共同開発

2017年10月11日(水) 配信

12世紀前半のアンコールワットを、資料を元に忠実に再現

エイチ・アイ・エス(HIS)は、Timelooper(タイムルーパー、米国ニューヨーク)とカンボジア観光省と連携し、世界遺産のアンコールワットの謎に包まれた歴史をVR(仮想現実)で体験できるコンテンツを共同開発した。

 本来、現地に行かなければできないVR 体験を、10 月7 日(土)から「シブヤVR ランド BY ハウステンボス」で、現地に先行してサービスを導入。VRを「旅のきっかけづくり」「旅先の具体化」を目的として展開してきた。今回は、収益の一部をカンボジア観光省を通じて、カンボジア国内の遺跡修復に充て、歴史的な観光地の保全にも努める。

謎に包まれたアンコール王朝の過去の歴史を再現

 アンコールワットは、年間220 万人以上の旅行者が訪れる。世界最大の旅行サイト「TripAdvisor®」(トリップアドバイザー)が、世界中の旅行客の口コミをもとに評価しランキング化した「トラベラーズチョイス™ 世界の人気観光スポット2017 ランドマーク編」で1 位となり、世界中の旅行者の耳目を集めている。

 同サービスでは、12 世紀前半のアンコールワットの建築のようすや、アンコールワットを上から見た際の全体像と周囲のようすを幾つかの年代に設定した内容で制作した。王朝時代の僧侶の沐浴や生活のようすもVRによって臨場感たっぷりに体験できる。

 未だ多くの謎が残るアンコールワットの過去に遡るタイムスリップ体験を提供するため、カンボジア観光省・文化省、アンコール地域遺跡保護管理機構監修の基に現存する資料に忠実に作り上げた。

Timelooper(タイムルーパー、米国ニューヨーク)

 世界中にある有名な観光地を訪れた際、「昔」の光景や出来事、「もしも歴史的出来事に立ち合うことができたのなら」という誰もが思うことを、VR 動画によって実現することを目指している。旅の感動の先にある過去の忘れられない出来事を人々に提供したいと、VR技術を使いモバイルアプリケーションで、タイムスリップ体験を提供するニューヨーク発のスタートアップ企業。

 

シブヤVR ランドBY ハウステンボス

 2017 年6 月から、「今日は渋谷で、現実逃避」をキャッチフレーズにして「スリル体験」や「シューティング」「ホラー」「リズムアクション」「恋愛シミュレーション」といった5 つのオリジナルコンテンツを展開。

 新たに「世界旅行」が加わり、全6 コンテンツを体験できる。「世界旅行」では、アンコールワットに加えTimelooper 社の持つニューヨーク、ロンドン、ベルリンのVR 体験も新たに展開する。

場所:東京都渋谷区 渋谷モディ / 営業時間:午前11:00~午後9:00

料金:2200 円(全6コンテンツを1回ずつ体験可能、利用時間:約60 分)

対象年齢:8 歳以上推奨

シブヤVRランド BY ハウステンボス | @MODI
http://www.huistenbosch.co.jp/vrland/
今日も渋谷で、現実逃避。国内外のVRコンテンツが大集合!ここでしか体験できないVRコンテンツがいっぱい!各メーカーの特色あるVRデバイスを一度に体験できちゃいます!渋谷VRランド 6.24 OPEN
 

「道」を楽しむ旅 危険が大きい旅の途中の道路環境

2017年10月11日(水) 配信

「道の駅どうし」には多くのオートバイが集う

 秋が訪れ、オートバイのエンジンに火を点けて、少し遠くまで旅をするのが楽しくなってきた。9月は埼玉県の秩父まで走った。10月に入って、東京都の奥多摩湖、そして山梨県の山中湖も行った。最近は早く起きて家を出る。新鮮な朝の空気を全身に感じながら、道路も空いていて気持ちいい。

 秩父や奥多摩湖、山中湖には近年足が遠のいていた。久しぶりに訪れてみると、私の記憶の中の印象とは随分かけ離れたものに変貌していた。

 神奈川県の津久井湖あたりから山梨県の山中湖付近まで続く道志みち(国道413号)では、オートバイの多さに驚いてしまった。ほぼ信号がないルートが続くため、激しい渋滞に日々苦悩する首都圏のライダーたちにとっては、理想的な道路である。道路沿いにはキャンプ場や温泉施設が散在している。長閑な田園風景や森、適度なワインディングロードもあり、退屈することなくツーリングを楽しむことができる。

 道志みちを走る主役はオートバイ。オートバイ10台に対してクルマ1台といった割合だ。途中道幅の狭い個所もあり、クルマでこの道を走ると、少しストレスを感じるかもしれない。

 道すがら、たまたま見知らぬツーリンググループの最後尾に並ぶ格好となり、しばらくそのグループの一団のように走った。これがまたすごく気持ちよかったのである。

 私は普段ソロツーリングばかり。10台以上のオートバイがゆったりとした走行ペースで縦に並び、峠道を走る楽しさは、一人ぼっちでは決して味わうことができない楽しさだった。

 その集団の先頭が「道の駅どうし」に入っていくと、後続車も続いた。だが、何とその集団は一つのグループではなかった。私を含め、皆バラバラだったのだ。年齢も、性別も違う、偶然に路上で出会った者同士であったが、同じ楽しみ方を共有する者が偶然に集い、〝楽器でハーモニーを奏でる〟ように共鳴し合った瞬間だった。

 道の駅どうしは、道志みちの途中に位置するオートバイの〝聖地〟である。広大な駐輪場に次から次にオートバイが入ってきて、軽く休憩して再び道路に向かう。私は小腹が空いていたので150円の熱々のコロッケを食べた。

 道志みちではオートバイだけでなく、ロードバイクに乗る人たちの姿を多く見かけた。

 奥多摩湖に向かう道は、オートバイよりもロードバイクの方が圧倒的に多かった。

 今夏、北海道の襟裳岬でロードバイクに乗る60代の男性に、「襟裳岬に到達した記念に写真を撮ってくれないか」と頼まれた。ふと見ると、その男性は腕に包帯を巻いていた。痛々しく血が滲んでいる。聞けば、途中のトンネルで転倒して近くの薬局で応急措置をしてもらったのだという。「もし、後ろにトラックが来ていたらと考えると、ぞっとします」と屈託のない笑顔で話した。

 今、日本各地でロードバイクが走りやすい環境づくりが進められている。オートバイやロードバイクの旅では、途中の「道」が何よりも大事である。しかしながら彼らが走る道は、狭い山道であったり、大型トラックが真横を追い抜いたりと、危険が大きい。安心・安全な道路環境の整備も、観光立国に向けた今後の大きな課題の一つである。

(編集長・増田 剛)

日本向け機能を充実化 国内利用者は30%増に(トリップアドバイザー)

2017年10月11日(水) 配信

牧野代表(左)と、神川氏

 トリップアドバイザー(牧野友衛代表)は9月29日に東京都内で会見を開き、事業報告や今後の取り組みを発表した。日本は利用者が昨年から約30%増え、国内施設は70数万件にまで伸びた。スマートフォンからの月間訪問者数も好調で、今年8月に600万人の大台を突破。ただ、旅行系サイトで国内利用者数トップのじゃらんは1200万人で倍近くの差がある。今後は日本人向け機能の充実化をはかり、日本市場で主導権を握りたい考えだ。

【平綿 裕一】

「より日本人向けに」

 今年5月末には日本を含めグローバルでサイトを全面リニューアル。「目的にあった情報を探すために、直観的に使えることを目指した」(グローバリゼーションチーム神川亜矢プロダクトマネージャー)。

 とくに国内利用者増加の要因には「日本向けサービスの充実化」が挙げられる。今年2月にLINE(ライン)のアカウントで、アプリとブラウザのログインを可能にした。フェイスブックとGoogle以外でのログイン対応は日本だけ。

日本人向けに使いやすさを

 検索の簡素化も行った。「日本語は文字を入力して変換と、ステップが多い。これを簡単にする機能を2つ取り入れた」(牧野代表)。

 1つ目はディレクトリ型の検索機能だ。これまでは「東京」と「ホテル」といったキーワード型の検索。ディレクトリ型は「東京」で検索すれば千代田区や渋谷区、そのあとに宿泊や観光など、分類・階層型で情報を表示させる。

 2つ目は「タイパーヘッド」。ひらがなを入力すると、マッチした施設情報を表示していく。Web検索で一般的な機能だが、サイト上の検索機能としてあるところは多くないという。

 同社のサービスの核となる「口コミ」は宿泊施設やレストランだけでなく、観光施設も他社サイトに提供を開始。牧野代表は「他社サイトに口コミ情報を出すことで、ユーザーへの接触率を上げていく」と話した。

 昨年1年は国内利用者数と、国内旅行での利用増加を行ってきた。来年は「日本人向けの機能や使いやすさを追求することが課題。まだ足りない部分が多い」(牧野代表)と強調。引き続き日本人の特徴に合わせたサイト構築をはかる考えだ。

インバウンド 動向を発表

 アジアの中で日本は、世界から最も注目されている旅行先。閲覧数はアジア全体の21%を占める。閲覧数が多い国は、米国が1位。中国、台湾、香港、豪州と続き、上位5カ国で全体の半数を超える。

 世界の旅行者が、日本と同時に検討する地域はアジア地域ばかりではない。米国は日本を見たあと、仏国、イタリア、英国をそれぞれ約10%の割合で見ている。このほか、中国や豪州もこれに近い数値で、「日本の旅行先の競合は欧州が多いことが分かった」(牧野代表)と報告した。

全国の高速道路乗り放題 訪日客向けパス販売へ(国交省)

2017年10月11日(水) 配信

全国の高速道路乗り放題

 国土交通省は、東日本高速道路(NEXCO東日本)などNEXCO3社と道路公社(宮城県、京都府、兵庫県)と共同で、レンタカーを利用する訪日外国人観光客向けに、10月13日から全国エリア対象の初の高速道路乗り放題パス「Japan Expressway Pass」を販売する。

 これまでも地域ごとに各高速道路会社が、訪日外国人観光客向けに無料乗り放題パスを展開しているが、今回の導入でエリアを跨いだ全国横断型の周遊が可能になる。なお、地域版乗り放題パスは今後も販売を継続する。

外国のパスポート所有者などに限定

 同パスは外国のパスポート所有者、または外国に永住権を持つ日本人が対象。ただし、日本で利用可能な運転免許証を所有している人に限られている。

 対象エリアはNEXCO東日本・中日本・西日本が管理する高速道路と、宮城県道路公社が管理する三陸自動車道(仙台松島道路)、京都府道路公社が管理する京都縦貫自動車道、兵庫県道路公社が管理する播但連絡道路など。

 なお首都高速道路や、阪神高速道路などは都市部の混乱回避のため、また北海道の高速道路は、他地域でのレンタカーの乗り捨てができないなどの理由から対象外となった。

7日間利用で2万円

 料金は、連続する最大7日間利用可能のものが2万円、14日間利用可能なものは3万4千円で販売。自動料金収受システム(ETC)を搭載した普通車で利用でき、全国275店舗(9月26日現在)のレンタカー会社で申し込みが可能だ。

 国土交通省道路局高速道路課への取材によると、このほど全国エリアでの高速道路乗り放題パスの販売に至った背景には、訪日外国人観光客によるレンタカー利用の増加が関わっているという。

 同省の調べでは、外国人のレンタカー利用は2011―15年の5年間で約4倍にも増加し、70万人を突破している。これまでの地域限定版乗り放題パスと異なり、同パスでは一部の道路を除き、パス1枚で全国を横断することができるため、ゴールデンルート以外の地方への誘客に期待がかかる。

 一方で、パスの対象者ではない人たちからは、不公平さに対する不満や、不慣れな運転で多発する事故に関する懸念も出ている。

 現段階では海外における同パスの周知方法は未定となっているが、今後観光部局などとも連携し、より効果的なプロモーション活動を行っていく方向だ。

No.474 JCHA 清水会長インタビュー “地域性”を感じられる宿に

2017年10月11日(水) 配信

 6月に開かれた通常総会で、全日本シティホテル連盟(JCHA、205会員)の新会長に清水嗣能氏(ホテルリバージュアケボノ社長)が就任。「国・会・人・宿づくり」を柱に会を運営していく方針を示した。「ホテル経営者は、地域の観光開発の立役者として課題解決に向けた提言を」と語る清水会長に、JCHAの今後の展開や、民泊問題、宿泊税導入に対する考え方からビジネスホテルのこれからのかたちまで、幅広く業界全体を俯瞰した考えを伺った。

【聞き手=増田 剛編集長、構成=後藤 文昭】

宿づくりは情報が命 地域の観光開発担う立役者に

 ――6月の総会で会長就任に当たり「国・会・人・宿づくりとジャンル分けし、分かりやすくJCHAを運営していく」と強調していました。そこで、JCHAの事業方針から、聞かせてください。

 これまでのJCHAの活動は、ホテル経営のための情報交換の場がメインで、どちらかというと内向きの組織でした。しかし、組織として生まれたからには、存在意義があるはずです。今後は、もっと外に目を向け、JCHAとして何ができるのかを真剣に考える時期にきています。我われは、ホテル業者が集まる団体として「国づくり」と「会づくり」、「人づくり」、「宿づくり」の4本柱を事業方針に掲げ、観光立国の実現を支えていきます。

国づくり

 ――宿泊団体は観光立国の実現のために、何を求められているのでしょうか。

 国内の人口が減少するなか、海外からの旅行者受け入れを拡大し、日本の経済成長に役立てることはとても重要です。国が進める観光立国の推進に対し、我われは宿泊施設団体として、地方で増加する外国人旅行者の受け皿づくりを進めることで貢献していけると思います。これが、4本柱の1つ目の「国づくり」です。会員であるホテルの経営者は、地方の観光協会や商工会議所で委員として、発言・提言をしていく。まさに自館が位置する地域における観光開発の立役者となるような役割を求められていると思います。

 ――「国づくり」を進めるうえで、今後必要なことは。

 国づくりは、言い換えればまちづくりであり、観光地、ホテルづくりの集合体です。

 例えば客室に備えるテレビのリモコンは日本語表記なので、海外のお客様は読めませんが、英語表記を加えたり案内を添えたりすることはできます。しかし、東京都心部などに比べると地方部はまだ外国人旅行者数も少ないため、外国人の宿泊需要が増加していることを十分に実感できていないのではないでしょうか。

 これからFIT(海外個人旅行者)が拡大するなかで、観光施設へのアクセス環境でも外国人旅行者が、公共交通機関を利用して移動することを想定している会社は少ないと感じています。

 これまで障害を持つ人でも住みやすい街づくりを官民あげて進めてきましたが、これからは、日本語の分からない外国人が安心して地方を旅行できるように、「多言語化」をキーワードに進めなければならないのです。

人づくり

 ――JCHAは台湾の輔仁大学と亞州大學とインターンシップ協定を結んでいますが、この取り組みも人づくり、国づくりに活かせますね。

 インターンシップ制度は、働き手が減少している状況で、会員が困らないように始めました。しかし、労働形態はさまざまです。知的労働者として海外の大学生を受け入れることは就職先として、また、外国人旅行者にもホテルがより選ばれるための理由づくりにもなるのではないでしょうか。

 福井県で私が経営するホテルでは今年の夏、アメリカからのインターン生を受け入れました。学生には通常のホテル業務ではなく、福井の観光地を回ってもらい、実際に外国人が旅行したときに何を感じるかの調査や、外国語サイトの立ち上げ、英語宿泊約款の作成、館内の英語サインのチェックなど多言語化作業をしてもらいました。インターン生を受け入れることは、「多言語化」への取り組みでも利点が大きいので、ぜひほかの会員にも取り入れてもらいたいです。

 一方で、インターン生を雇うときに必要な在留許可書の手続きには1―2カ月と、時間がかかります。この部分は「会づくり」にはなりますが、時間の短縮などにJCHAが取り組むべきだと思います。…

※ 詳細は本紙1688号または10月17日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

〝自館の強み〟探る キズナサミット2017開く 宿研

 

2017年10月11日(水) 配信

末吉秀典社長があいさつ

 宿泊予約経営研究所(末吉秀典社長、神奈川県横浜市)は9月26日、東京ソラマチ(墨田区)で宿研キズナサミット2017を開いた。「ブランドコンセプト」をテーマに、全国から参加した旅館の代表者らは基調講演やワークショップ、奥田政行シェフによる体験ディナーなどを通じて〝自館の強みは何か〟などを考えた。

ブランドコンセプトは主要な手段

 末吉社長は冒頭、「キズナサミットも今年6回目となった。今回のテーマ『ブランドコンセプト』といえば、大企業や一流企業などが行うものというイメージがあるかもしれないが、ビジネスをする限りブランドコンセプトはとても重要な手段になる」と強調した。

 基調講演では、ブランドコンサルタントで、ココカラ代表の江上隆夫氏が登壇。「ブランドとは記憶の集積である。ブランドづくりは記憶のマネジメント」と定義。そのうえで「ブランドは価格決定権を持っており、安売りをしなくていい」などの働きを説明。さらに、「ブランドは最終的にひと言に集約される」として「ボルボ=安全」「アップル=革新」など世界的な企業の事例も紹介した。

 グループに分かれたワークショップでは、架空の旅館を設定。ポジショニング・マップの作製や、「顧客ターゲットをどこに絞り、どのようにブランド化していくか」といった戦略を練って発表した。

 江上氏は「思考のアクセルを吹かしてアイデアをエスカレートすることが大事」とし、「小さくまとまるとつまらない。どのようなアイデアでもいいから何でも出すこと」の重要性を語った。

ワークショップで熱心にアイデアを出し合う参加者

【札幌観光バス・福村泰司社長に聞く】〝北海道を輝かせよう〟 就任5年、変わる企業の最前線で

2017年10月11日(水) 配信

福村泰司社長

 先日、札幌観光バスに訪問のアポイントをお願いすると、加えて翌日「新造したキッチンバスをぜひ見て欲しい」との依頼を受けた。1つ聞けば2つ、3つ返ってくる。同社の「積極的に売り込む姿勢」をここ数年、肌で感じてきた。気になっていた企業の変わりよう。その理由を、就任5年が過ぎた福村泰司社長に聞いた。
【鈴木 克範】

 2012年、副社長就任

 東京でコンサルティング会社を経営していた2012年、顧客の投資ファンドが保有する札幌観光バスの株式売却を打診された。これがすべての始まりだ。当時すでに、道東のバス会社3社の社外取締役を経験していた。各社の経営者が自社株を買い戻したことで社外取締役を辞したあとも、知床のバス会社との合弁でアウトドア会社を設立するなど、北海道との縁は続いていた。

 デューデリジェンスや譲渡価格の交渉を経て、札幌観光バスの株は自身が経営するコンサルティング会社の子会社が引き受けた。12年6月には代表権を持つ副社長に就任した。

 決め手は①バスの高稼働率を誇る営業力②バスガイドの新卒採用・育成に力を入れている③本社(車庫)が札幌市内や新千歳空港から30分程という地の利の良さ――の3点だった。

社員と1対1で話す

 就任直後の社内は、ファンドからファンドに売られた状況に、社員のやる気は底をついていた。そんななか、まずは「話すこと」から始めた。自分が何を考え、どういう方針なのかを伝える。社員は今何をしているのかを聞く。バスガイドやドライバー、営業、内勤職員に至るまで、1対1で話し合った。

 対話を受けて最初に改善したのは制服だ。個人任せで統一感のなかったバスガイドのコートやドライバーのジャンパーを新調した。女子社員のパンプスを黒で統一するために購入費の補助制度も新設。新人バスガイドの化粧講習会も開いた。取り組みを進めると、「夏用にスカーフが欲しい」など、前向きな声も上がり始めた。

 次に手を付けたのが職場空間の刷新だ。仕事中にそれぞれの顔が見えるよう間仕切りを取り払い、イス・テーブルも新しくした。環境が変わることで「これまでの時代にピリオドを打つ」といった心の変化も期待した。衣食住でいえば、「衣」と「住」を整えた格好だ。

オーナー会社の誕生

 改善を進めるなか、13年に2つの大きな決断をした。6月に予定される社長就任を前に、札幌観光バスの株式を個人として取得。さらに13年度の1年間で新車13台を一挙に導入した。現在、バスは供給不足で納車待ちが続いている。決断が数年遅ければ、実現しなかった。「絶妙なタイミング」で導入できた。

 商売道具が新しくなることで、社内の空気も一変。新しい会社に生まれ変わる転機になった。名実ともにオーナー企業としての札幌観光バスが誕生した。

賃金、福利厚生を 手厚く

 衣食住の改善も残すは本丸の「食」、社員が食べていくための賃金を残すのみだった。新しいバスを導入し、営業ががんばっている今こそと、2015年から2年かけて乗務員の年収を2割増やした。

 業界の深刻な人材不足を受け、定年も乗務員は60から63歳に引き上げた。今年度は長く勤めてもらうために退職金制度の設計も見直す。安全運転の報奨金、エコドライバー表彰などにも取り組んでいる。

 今後は福利厚生も手厚くする。3年前からドライバーのSAS(睡眠時無呼吸症候群)の検査に取り組んできた。今秋からはドライバー全員に会社負担で脳ドックも受けてもらう。会社も責任を持ち社員の健康管理に取り組む。

本格的な厨房を搭載したバス「クルーズキッチン」

ビジョンは「Brighten up Hokkaido」

 「Brighten up Hokkaido~北海道を、輝かせよう~」という言葉をビジョンとしている。「まだ出会っていない道内の観光資源に光を当て、自分たちのバスで案内しよう」という思いを込めた。

 今日も当社のバスが北海道各地を走っている。道内の観光を隅々まで知っているのはバスガイド。北海道ではインフラとして価値の高いバスだが、さらにハード・ソフト両面を磨き上げていきたい。その積み重ねが「北海道が輝く」ことにつながる。

観光コンテンツを どれだけ持つか

 15年には関連会社を設立し美瑛町にびえい和牛が売りの「ファームレストラン千代田」をリニューアルオープンした。3年後はオーベルジュもオープンする予定だ。富裕層向けチャーターリムジン「クールスター」を中心とした、カスタムメイド旅行の企画・販売にも取り組んでいる。昨年1月には旅行会社・クールスターも立ち上げた。今冬は実行委員会を組織し、札幌で期間限定の氷のホテルを中心とした「アイススターホテル」を実施した。

 観光や体験のできるコンテンツを自ら持ち企画する。あるいは他社に販売してもらう。インフラとしてのバスを生かすため、「観光コンテンツをどれだけ持ち、自社で運営できるか」ということに経営資源を集中させている。

キーワードは 食と観光

 今年8月、従来のレストランバスとは一線を画した本格的な厨房搭載バス「クルーズキッチン」がデビューした。9月に礼文島でJTB北海道が実施した、1日限りの野外レストラン「シェフズテーブル」に利用された。最北端の島を舞台に、ミシュランガイドで評価されたシェフが、地元の食材を用いた「島フレンチ」を提供。食器やワイングラスもレストランと同等のものを使い、コース料理としてサービスする。自ら会場を訪れ「今まで誰もできなかったシーン」を目に焼き付けた。

 キーワードは「食と観光」。言葉を具体的にする答えが「クルーズキッチン」だと確信した。

方針に変更なし IR実施法、早期成立へ IR議連

2017年10月11日(水) 配信

多くの参加者が集まった
細田博之会長

 国際観光産業振興議員連盟(IR議連)会長の細田博之氏は臨時国会冒頭の衆議院解散で審議が先送りになったIR実施法案に対し、早期成立を目指す方針に変更はないと表明。「日本のIRは、世界に観光大国日本の扉を開くもの」との見解を示した。

 IR議連幹事長の岩屋毅氏は「自民党は、IR実現を公約の1つに掲げ、選挙を戦う」とし、「選挙後与党は、速やかに特定複合観光施設区域の整備に関する法律案(IR実施法案)を審査し、次期国会に提出する」と、今後の予定を表明した。

 岩屋氏は、懸念されるギャンブル依存症対策に関し、「『ギャンブルなど依存症対策基本法』の必要性は多くの政党が認めている。国は、これまで以上にギャンブル依存症対策に本腰を入れている姿勢を国民に示し、法案を成立させるべき」とし、両法案をほぼ同時に成立させるのが理想とした。

 IRに関わる有識者6人がさまざまな角度から討論するセッションでは、IR推進会議の委員を務めた大阪商業大学の三原融教授が国民のカジノへの懸念に言及。「カジノは“大人が楽しむエンターテインメント”だと認識を転換させることが必要。これによって、観光をさらに幅広く成長させられることにもつながる」と述べた。また、海外カジノオペレーター4人からは、「IR施設の整備が地域雇用の創出にも効果がある」、「日本らしい演出が成功のカギになる」との提言がなされた。

 一連の発言はオータパブリケイションズが9月25日に東京都内で開いたシンポジウムで述べられたもの。

最大1千円程度か 関連業界から一定の理解 観光財源あり方検討会

2017年10月11日(水) 配信

観光財源あり方検討会

 観光庁は9月28日に第2回、10月5日に第3回の「次世代の観光立国に向けた観光財源のあり方検討会」後に、それぞれ航空・旅行・宿泊・海運・業界、自治体からのヒヤリング結果と、委員の意見を報告した。出国税などの観光財源確保で、受益と負担、使途を考慮すれば、関連業界からは「一定の理解を得られた」と見解を示した。航空業界のヒヤリングで負担額は「最大で1千円程度」との意見もあった。

 「出入国」「航空旅行」「宿泊」の3累計のうち出国税などの出入国時に課す負担以外は、それぞれの関連業界から「慎重な意見が多かった」(観光戦略課)という。反面、委員の中には「第2、3回の検討会を踏まえて、出入国の際に負担を求める方法が一番可能性はある」と、出国税などに積極的な声も挙がった。同庁も負担額を受益と負担、使途の関係をはっきりさせれば出入国時の負担は「1千円以内なら、検討できないこともない」と述べた。

 航空業界は、国内航空会社3社に「出入国」「航空旅客」、外国航空会社2社に「出入国」を、計5社から聞き取りを実施。別途、外国航空会社12社に事前に意見を徴収した。旅行業界には3累計、宿泊業界に「宿泊」、海運業界に「出入国」に関するヒヤリングを行った。

 宿泊業界は新たな負担に慎重な姿勢。国内旅行会社も明確に反対の姿勢を取った。航空・旅行業界は一定の理解を示すが「額はともあれ、短期的に需要の影響は避けられない」「海外旅行者にも影響がある」との声が多かった。

短期的な需要減補う効果も

 一方「長期的に需要を喚起する使途なら、短期的な需要減を補う効果が期待できる」(航空業界)。例えば、航空旅客が分かりやすい受益に「出入国の円滑化」「航空保安体制強化」などが挙げられた。

 事前調査した12社は、負担額は「最大でも1千円程度(4社)」、訪客の影響は「1千円程度であれば、影響はほぼない(4社)」などの回答があった。使途は4社が「訪客だけでなく、海外旅行者に対する支援もすべき」とし、旅行業界も同様の意見があった。

 地方自治体は全国知事会が、昨年6月の「新しい地方税源と地方税制を考える研究会」中間とりまとめ説明。観光財源について、出国税などを地方贈与税として地方団体への譲与などを検討してきた。ただ同税が一般財源となるため、懸念の声が強かった。

 なお10月14日の第4回と、10月24日の第5回で、これまでのヒヤリングや意見交換を踏まえ、論点整理を行う。具体的な負担額や、徴収方法、使途をより詰めていく方向だ。その後、秋ごろを目途に中間とりまとめを行う予定。