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〈旬刊旅行新聞10月1日号コラム〉コロナ禍の旅館の変化――音楽一つで客層も変える力がある  

2021年10月1日
編集部:増田 剛

2021年10月1日(金) 配信

 旅先で飲むお酒は、私にとって大きな楽しみの1つである。まだ子供が小さかったころ、安い旅館に宿泊し、4人の息子たちが重なり合って眠っている顔を眺めながら、妻とゆっくり広縁でお酒を飲むのが楽しかった。

 ビジネスホテルなどに宿泊し、街に出て美味しい料理屋や酒場をはしごするのも好きだが、温泉旅館で大浴場に入り、浴衣姿になって豪華な料理を食べることは、やはりいいなと思う。何と言っても、料理は旅館の華である。


 

 近年は、個室の食事処を用意する旅館が増えた。誕生日や結婚記念日などで旅館を利用するときに、静かな環境で、一品ずつ手の込んだ料理を提供される時間は、この上ないものとなる。実際に、記念日を祝う「ハレ」の日を大切にしている旅館も数多くある。素晴らしい思い出づくりができれば、毎年訪れるリピーターにもなりやすい。
 

 一方で、「もう少しくだけた旅館の使い方をしたい」お客もいる。その場合、コマ割りした大広間での食事が多い。そういえば、最近、大型の団体客がカラオケや酒を飲んで大声で騒ぐ“騒音”に遭遇することがなくなった。
 

 大広間では、知らない家族や小グループ、そして1人旅の宿泊客もごった混ぜで、食事会場はざわざわと話し声が聞こえてくる。私は、この大広間での食事がわりと好きなのである。
 

 というのは、奇遇の極みである同宿の旅人を色々と想像をすることが面白いからだ。旅館の大広間での食事ほど、それぞれの旅人の人間模様を垣間見ることができる空間を、私は他に知らない。
 

 「この家族はどこから来たのだろう」「まったく会話がないが、大丈夫だろうか」「この男女は歳が離れているが夫婦なのか、それとも……」など、さまざまな推理をしてみる。


 

 さて、コロナ禍になって旅館の大広間での食事風景も静かになった。「黙食」とまではいかないが、「必要以上におしゃべりをしない」というムードが漂う。

 このような風景は、コロナ禍以前にも目撃や経験したことがある。食事会場は宿の空気を象徴している。活気のない宿の特徴として、「料理が宿泊客に語るべき言葉を生まない」ことが共通している。これはとても悲しいことだ。

 「食べてしまうのがもったいないほど、綺麗」「これ、すごく美味しい!」「どうやって作ったのだろう」といった会話が生まれない。


 

 リゾートホテルの朝食会場にはクラシックや環境音楽などが静かに流れているが、旅館では無音のところが多かった。コロナ禍では、食事会場にBGM旅館を流す旅館も増えた。夕食では、趣味の良いジャズを流している秘湯の宿などもあり、主人のセンスとこだわりを感じることがある。

 音楽によって、酒の進み具合も違ってくる。バーなどでいい気持ちになり、2杯くらいで出るつもりが、3杯目を注文することもある。北の街の赤ちょうちんで、静かに八代亜紀や、森昌子、石川さゆりが流れ、ハマり過ぎて熱燗を数本求めたこともある。

 食事会場の音楽を大切にすれば、ムードも良くなり、お酒の量も増えるかもしれない。宿は音楽1つで客層も変える力がある。

(編集長・増田 剛)

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